説明

補助材料を導入するための方法と装置

本発明は、粗ガス流(120)を少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通過させて塗料スプレーしぶきをその粗ガス流(120)から除去する前に湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流(120)の流路に補助材料を導入する方法に関する。本発明の目的は、不適切な動作のときでさえ、塗装作業場の付着領域(108)に補助材料が導入されるのを信頼性よく阻止する上記のタイプの方法を提供することである。本発明の方法は、少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通って流れる粗ガス流が十分であるかどうかを検出するステップと;粗ガス流が不十分であることが検出された場合には、粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を停止するステップを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗ガス(crude gas)流を少なくとも1つのフィルタ要素を通過させて塗料スプレーしぶき(overspray) をその粗ガス流から分離する前に、湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流の流路に補助材料を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば特許文献1から公知である。
この公知の装置では、スプレー・ブースの粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを乾式分離することが、“下塗り”材料として知られる流動性のある粒子状補助材料をノズル装置によってあらかじめ粗ガス流の中に供給した後にフィルタ装置の中で実行される。
【0003】
この補助材料の目的は、フィルタ要素の表面に障壁層として堆積させ、付着する塗料スプレーしぶき粒子によってその領域がべたべたした状態になるのを防止することである。フィルタ装置のフィルタ要素を定期的に清掃することにより、補助材料と湿った塗料スプレーしぶきの混合物はフィルタ要素を通って補助材料収容容器に入る。その容器からその混合物を取り出してノズル装置に供給することで、補助材料として再利用することができる。補助材料収容容器の中にある補助材料と湿った塗料スプレーしぶきの混合物はさらに、圧縮空気ランスからの圧縮空気パルスによって巻き上がった状態にできるため、補助材料収容容器からフィルタ要素まで上昇してそこに堆積される可能性がある。
【0004】
この公知の方法では、補助材料の取り扱いが不適切だと、粗ガス流に湿った塗料スプレーしぶきを組み込む塗装作業場の付着領域に補助材料が侵入する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許10 2005 048 579 A1
【特許文献2】日本国特開平02−123025
【特許文献3】日本国特開平06−278868
【特許文献4】国際公開03/024612
【特許文献5】欧州特許1 427 536 B1
【特許文献6】国際公開2004/087331 A1
【特許文献7】ドイツ特許101 30 173 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の裏にある目的は、冒頭に記載したタイプの方法において、補助材料の取り扱いが不適切な場合でさえ、塗装作業場の付着領域に補助材料が入るのを信頼性よく阻止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この特徴は、請求項1の前文の特徴を持つ方法において、本発明に従い、以下のステップ、すなわち
− 少なくとも1つのフィルタ要素を通過する粗ガス流が十分であるかどうかを検出するステップと;
− 粗ガス流が十分でないと判断された場合には、粗ガス流の流路への補助材料の導入を停止するステップ
によって達成される。
【0008】
この明細書では、十分な粗ガス流とは、塗料スプレーしぶきを分離するため、単位時間に所定の最少量の粗ガスが少なくとも1つのフィルタ要素を通過するような粗ガス流を意味する。
【0009】
そのように十分な粗ガス流が少なくとも1つのフィルタ要素を通過しない場合には、粗ガス流の流路に導入される補助材料が正常な流れの方向に逆らって塗装作業場の付着領域に入る危険性がある。
【0010】
本発明では粗ガス流が十分でないときに補助材料が粗ガス流の流路に入るのが阻止されるため、そのように十分に機能しない場合でさえ、補助材料が塗装作業場の付着領域に入ることが信頼性よく阻止される。
【0011】
補助材料収容容器の中にある補助材料をスワール装置によって巻き上げられた状態にして補助材料を粗ガス流に導入する場合には、粗ガス流が十分でないときにそのスワール装置の動作を停止させることが好ましい。
【0012】
少なくとも1つのフィルタ要素を清掃して補助材料を除去することによって補助材料を粗ガス流に導入する場合には、粗ガス流が十分でないときにその少なくとも1つのフィルタ要素の清掃を停止することが好ましい。
【0013】
ノズル装置を用いて供給することによって補助材料を粗ガス流に導入する場合には、粗ガス流が十分でないときにそのノズル装置の動作を停止させることが好ましい。
【0014】
粗ガス流が十分でないことを検出するには多くの可能な方法がある。
【0015】
粗ガス流が十分でないことは、例えば少なくとも1つのフィルタ要素の位置における圧力低下に基づいて検出できる。測定された圧力低下が小さすぎる場合には、粗ガス流が十分でない。
【0016】
その代わりに、またはそれに加えて、少なくとも1つのフィルタ要素の下流に配置された送風機の動作状態に基づいて粗ガス流が十分でないことを検出できる。
【0017】
この目的のため、送風機の動作状態の監視を、例えば電流を監視することによって、および/または周波数変換器によって、および/または送風機の位置における圧力低下を測定することによって実行できる。
【0018】
その代わりに、またはそれに加えて、特に少なくとも1つのフィルタ要素の下流に配置できる流量計によっても粗ガス流が十分でないことを検出できる。
【0019】
本発明の方法は、異常事態が発生したときにプロセスが安定な状態をより長く継続させるため、正常に作動しないときに塗装作業場の敏感な諸部品を保護するのに利用される。
【0020】
本発明の方法は、自動車産業と一般的な工業的塗装作業場の分野のスプレー・ブースのための湿った塗料スプレーしぶき乾式分離システムで使用して塗装プロセスを維持し、損害を回避する、または少なくとも減らすのに適している。
【0021】
本発明はさらに、湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流の流路に補助材料を導入した後、その粗ガス流を少なくとも1つのフィルタ要素を通過させて塗料スプレーしぶきをその粗ガス流から分離する装置に関する。
【0022】
本発明の裏にある目的は、正常に作動しない場合でさえ、塗装作業場の付着領域に補助材料が入るのを信頼性よく阻止する装置を提供することである。
【0023】
請求項11の前文の特徴を有する装置において、この目的は、本発明に従い、
− 少なくとも1つのフィルタ要素を通過する粗ガス流が十分であるかどうかを検出するための検出装置と;
− その検出装置が、粗ガス流が十分でないと判断した場合には、その粗ガス流の流路への補助材料の導入を停止させる停止装置を備える装置により達成される。
【0024】
この場合、この装置は、特に、粗ガス流が十分であるかどうかを検出する検出装置および/または粗ガス流の流路への補助材料の導入を停止する停止装置として用いる制御装置を備えている。
【0025】
本発明による装置のさらに特別な展開例は請求項13から21の主題であり、その特徴と利点は、本発明による方法の特別な展開例との関連ですでに説明した。
【0026】
湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流の流路に補助材料を導入するための本発明の装置は、塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離する装置で用いるのに特に適している。この装置は、塗料スプレーしぶきを粗ガス流から分離するための少なくとも1つのフィルタ要素と、湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流の流路に補助材料を導入するための本発明による少なくとも1つの装置を備えている。
【0027】
湿った塗料スプレーしぶきを分離するための本発明の装置は、製品(特に車体)に塗装するための設備で用いるのに特に適しており、塗装する製品の表面に湿った塗料を付着させるための少なくとも1つの付着領域と、湿った塗料スプレーしぶきを分離するための本発明による少なくとも1つの装置を備えている。
【0028】
本発明のさらに別の特徴と利点は、実施態様に関する以下の説明と図面の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】スプレー・ブースの概略斜視図である。このスプレー・ブースの下には、塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離する装置が配置されており、この装置は、スプレー・ブースの下に配置された流れチェンバーを備えるとともに、その流れチェンバーのそれぞれの側に3つのフィルタ・モジュールを備えている。
【図2】図1の設備の鉛直概略断面図である。
【図3】図1の設備に関する図2と同様の鉛直概略断面図だが、ここではそれに加え、粗ガス、フィルタ・モジュールを出ていく放出ガス、横断空気カーテンを作り出すために供給されて流れチェンバーに入る導入ガスが流れるそれぞれの方向が、矢印で示されている。
【図4】図1〜図3の設備の概略上面図である。
【図5】図1〜図4の設備の概略側面図である。
【図6】塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置の概略斜視図である。この装置は図1〜図5の設備のスプレー・ブースの下に配置されており、その流れチェンバーの長手方向に沿ってその流れチェンバーを順番に部分に分割する横断方向の分割壁を有する。
【図7】個別のフィルタ・モジュール(中央モジュール)の概略斜視図であり、このフィルタ・モジュールは、隣り合った別の2つのフィルタ・モジュールの間に配置される。
【図8】個別のフィルタ・モジュール(コーナー用モジュール)の概略斜視図であり、このフィルタ・モジュールは別のフィルタ・モジュールと並べて配置され、反対側では1つのフィルタ・モジュール列の一端を形成する。
【図9】フィルタ・モジュールの鉛直概略断面図である。
【図10】1つのフィルタ・モジュールと流れチェンバーでそれに対応する領域の鉛直概略断面図であり、この領域における粗ガス流の局所的なそれぞれの流れ方向が矢印で示されている。
【図11】フィルタ・モジュールの取り込み用開口部の縁部領域の概略斜視図である。
【図12】フィルタ・モジュールの概略正面図である。
【図13】レベル・センサーとスワール装置が内部に配置された補助材料収容容器の鉛直概略断面図である。
【図14】図13の補助材料収容容器の点検用扉の概略側面図であり、レベル・センサーとスワール装置がその点検用扉に取り付けられている。
【図15】図14の点検用扉の外側の概略平面図である。
【図16】図13の補助材料収容容器の中に配置された回収スクリーンの概略上面図である。
【図17】動作位置にある図13に示したタイプの補助材料収容容器に供給容器から新鮮な補助材料を供給するための装置の概略図である。
【図18】塗料スプレーしぶきが混合した補助材料を補助材料収容容器から回収容器に移すための移動装置の概略図である。
【図19】フィルタ・モジュールと、そのフィルタ・モジュールの下流に配置された送風機を有する空気放出ラインと、送風機の動作状態を監視するためのさまざまな装置と、フィルタ・モジュールのフィルタ要素とスワール装置と流動床に圧縮空気を供給するための装置の概略図である。
【図20】塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離する装置の第2の実施態様の鉛直概略断面図であり、この装置は、横断方向の空気流を方向づける傾斜したバッフルと、フィルタ・モジュールの間にあって傾斜した上面を持つ通路を備えている。
【図21】補助材料収容容器の別の一実施態様の鉛直概略断面図であり、この補助材料収容容器には、その中にある材料を完全に混合してその材料を均一化するため空気圧で動作する撹拌装置が設けられている。
【図22】空気圧で動作する図21の撹拌装置を有する補助材料収容容器の概略上面図である。
【図23】補助材料収容容器のさらに別の実施態様の鉛直概略断面図であり、この補助材料収容容器には、電気駆動式シャフトと、補助材料収容容器の中にある材料を完全に混合してその材料を均一化するパドルが設けられている。
【図24】図23の電気駆動式シャフトを有する補助材料収容容器の概略上面図である。
【0030】
どの図面でも、同じ要素、または機能が同等な要素は、同じ参照番号で表わしてある。
【発明を実施するための形態】
【0031】
車体102にスプレー塗装するための設備を図1〜図19に示してあり、その全体を100で表わす。この設備は純粋に概略図として描いた移送装置104を備えており、その移送装置によって車体102は移送方向106に沿って移動し、全体を110で示したスプレー・ブースの付着領域108を通過することができる。
【0032】
付着領域108はスプレー・ブース110の内側であり、水平な横断方向112に沿ってスプレー・ブース110の長手方向に対応する移送方向106に直角に延びていて、ブースの壁114によって移送装置104のそれぞれの側が規定されている。
【0033】
スプレー・ブース110の中には、例えば塗装ロボットの形態のスプレー塗装装置116が移送装置104の両側に配置されている。
【0034】
空気再循環回路(断面図にだけ図示)によって空気流が作り出され、その空気流が、実質的に鉛直な付着領域108を上から下まで通り抜ける。それを図3に矢印118で示してある。
【0035】
付着領域108では、この空気流が、塗料スプレーしぶき粒子の形態になった塗料スプレーしぶきを取り込む。本発明の文脈における“粒子”という用語には、固体粒子と液体粒子(特に液滴)の両方が含まれる。
【0036】
湿式塗装を利用する場合には、湿った塗料スプレーしぶきは、塗料の液滴からなる。たいていの塗料スプレーしぶき粒子は、この領域における最大サイズが約1μm〜約100μmである。
【0037】
以下の説明では、塗料スプレーしぶき粒子を含んだ状態で付着領域108から出る空気流を粗ガス流と呼ぶ。粗ガス流の流れの方向を図3と図10に矢印120で示してある。
【0038】
粗ガス流はスプレー・ブース110から下向きに出ていき、粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置の中に入る。この装置はその全体を126で示してあり、付着領域108の下に配置されている。
【0039】
装置126は、実質的に直方体の流れチェンバー128を備えている。この流れチェンバー128は、スプレー・ブース110の全長にわたって移送方向106に延びていて、横断方向112が鉛直な側壁130によって規定されている。側壁130はスプレー・ブース110のブース側壁114と実質的に揃っているため、流れチェンバー128はスプレー・ブース110と実質的に同じ水平方向の断面積を持ち、実質的に全体がスプレー・ブース110の底部の鉛直投射面の中に位置している。
【0040】
図6から最もよくわかるように、流れチェンバー128のそれぞれの側には複数(例えば3つ)のフィルタ・モジュール132が配置されていて、湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置126の長手方向134(移送方向106と同じ)に延びる2つのモジュール列136を形成している。
【0041】
それぞれのモジュール列136は、モジュール列136の一端をそれぞれが形成する2つのコーナー用モジュール138と、隣接した2つのフィルタ・モジュール132の間に配置された少なくとも1つの中間モジュール140を備えている。
【0042】
流れチェンバー128の長手方向134に沿って粗ガス流が長手方向に流れないようにするため、そして粗ガス流が個々のフィルタ・モジュール132の間を流れないようにするため、横断方向112に延びる横断方向分割壁142を設けることができる。横断方向分割壁142は、それぞれ、長手方向134に順番に配置された2つのフィルタ・モジュール132の間に配置されていて、流れチェンバー128を、長手方向134に沿って順番に配置された流れチェンバー部144に分割している。
【0043】
これらの横断方向分割壁142により、各フィルタ・モジュール132のために粗ガス流を明確に調節することが、他のフィルタ・モジュール132の中を通過する粗ガス流とは独立に可能になる。
【0044】
図2から最もよくわかるように、操作者がアクセスできる通路146が、2つのモジュール列136の間に設けられている。
【0045】
連続した流れチェンバー部144の中に配置されている通路146の部分に連続的にアクセスできるようにするため、通り抜け用の扉148が横断方向分割壁142に設けられている(図6)。
【0046】
流れチェンバー128を前端と後端で閉じる流れチェンバー128の末端壁150にはアクセス用扉152が設けられていて、操作者は、その扉を通って外から流れチェンバー128の中に入ることができる。
【0047】
それぞれのフィルタ・モジュール132は、あらかじめ組み立てられたユニット154の形態である。このユニットは、塗装作業場の設置場所から離れた場所で製造され、ユニットとして塗装作業場の設置場所に運ばれる。あらかじめ組み立てられたユニット154は、設置場所において予定された作業位置に配置され、隣にある1つ以上のあらかじめ組み立てられたユニット154に接続されるか、その間にある横断方向分割壁142と付着領域108の支持構造に接続される。
【0048】
以下に、例示した中間モジュール140を利用したフィルタ・モジュール132の構成について、図7と図9〜図16を参照して説明する。
【0049】
このモジュールは、2つの鉛直な後方支持体158と2つの鉛直な前方支持体160からなる支持構造156を備えている。それぞれの前方支持体160は、上端が、水平な横断部材162によって一方の後方支持体158に接続されている(図7)。
【0050】
前方支持体160はさらに、上端が、別の横断部材(図示せず)によって互いに接続されている。
【0051】
後方支持体158も、横断部材(図示せず)または接続用フレーム(図示せず)によって互いに接続されている。
【0052】
支持構造156の上端にある横断部材は、水平な上壁164を有する。
【0053】
前方支持体160の前面には、フィルタ・モジュール132の鉛直な前壁166が取り付けられている。
【0054】
上壁164と前壁166はフィルタ・モジュール132の分割壁168を形成していて、フィルタ・モジュール132の中に位置するフィルタ要素収容スペース170を、フィルタ・モジュール132の外部に位置する流れチェンバー128の領域から隔てている。
【0055】
フィルタ・モジュール132のフィルタ要素収容スペース170には、複数(例えば10個)のフィルタ要素172が上下2段にして配置されていて、後方支持体158の裏側に取り付けられた共通の基体174から水平方向に突起している。
【0056】
フィルタ要素172は、例えば焼結ポリエチレンからなるプレートの形態を取ることができ、このプレートの外面にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の膜を設ける。
【0057】
PTFEコーティングを利用してフィルタ要素172のフィルタのグレードを上げる(すなわち透過性を小さくする)とともに、粗ガス流から分離される湿った塗料スプレーしぶきが永続的に固着するのを阻止する。
【0058】
フィルタ要素172の基本材料とそのPTFEコーティングの両方とも多孔性であり、粗ガスが孔を通過してそれぞれのフィルタ要素172の中に入ることができる。
【0059】
フィルタ要素には、フィルタの表面が詰まるのを避けるため、粗ガス流の中に放出される補助材料からなる障壁層がさらに設けられている。
粒子状であることが好ましいこの補助材料は、一般に“下塗り”材料として知られている。
【0060】
障壁層は装置126の動作中に発達し、粗ガス流の中に放出される補助材料がフィルタの表面に堆積してフィルタの表面が湿った塗料スプレーしぶきの固着によって詰まるのを阻止する。
【0061】
粗ガス流120からの補助材料はフィルタ・モジュール132の上壁164と前壁166の内側にも堆積され、その場所に湿った塗料スプレーしぶきが固着するのを同様に阻止する。
【0062】
補助材料として、湿った塗料スプレーしぶきの液体成分を取り込むことのできる任意の媒体を基本的に使用できる。
【0063】
特に、可能な材料として、例えば石灰、ロック・ミール、ケイ酸アルミニウム、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、コーティング用粉末などがある。
【0064】
その代わりに、またはそれに加えて、塗料スプレーしぶきの取り込みおよび/または結合のための補助材料として、空洞構造を持つとともに大きさの割に広い内面を持つ粒子(例えばゼオライト)や、それ以外の中空のもの(例えばポリマー、ガラス、ケイ酸アルミニウム、天然繊維、合成繊維でできた球体)を用いることが可能である。
【0065】
その代わりに、またはそれに加えて、塗料スプレーしぶきの取り込みおよび/または結合のための補助材料として、塗料スプレーしぶきと化学反応する粒子を用いることも可能であり、例えば、アミン基、エポキシド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基のいずれかを有する化学反応性粒子や、オクチルシラン、固体モノマー、液体モノマー、オリゴマー、ポリマー、シラン、シラノール、シロキサンのいずれかで後処理したアルミニウム酸化物からなる化学反応性粒子がある。
【0066】
補助材料は、直径の平均が例えば約10μm〜約100μmの範囲にある複数の補助材料粒子を含んでいることが好ましい。
【0067】
補助材料が塗装作業場100の付着領域108に入る危険性なしに補助材料を粗ガス流に付加できるようにするため、それぞれのフィルタ・モジュール132には補助材料収容容器176が設けられている。補助材料収容容器176は支持構造156に取り付けられていて、例えば先端が切断されたピラミッドを逆さにした形態の漏斗状の形になっている(図13)。
【0068】
補助材料収容容器176の4つある台形状側壁178は、鉛直方向に対して少なくとも約60°傾いている。
【0069】
補助材料収容容器176の高さは例えば約1.1mである。
【0070】
側壁178の上縁部が補助材料収容容器176のアクセス用開口部180を取り囲んでいる。塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流120がこのアクセス用開口部を通じて補助材料収容容器176の中に入り、出ていくことができる。
【0071】
実質的に水平にされた底部182は、多孔性流動床184の形態を取る。この流動床184は、ガス媒体(特に圧縮空気)でパージすることにより、補助材料収容容器176の内部186にある補助材料を流動化させるとともに、補助材料収容容器176の内部に充填されている補助材料の局所的な高さの違いを均すことができる。
【0072】
設備100の動作中、流動床が間欠的に動作状態になる。例えば1分間に3回、それぞれ約2秒間、動作状態になる。
【0073】
落ちてくるより大きな粒子によって流動床184が損傷しないようにするため、流動床184の例えば20cm上方に回収スクリーンまたは捕捉スクリーン187が配置されている。この捕捉スクリーン187は、補助材料収容容器176の内部186の断面全体にわたって水平方向に延びるとともに、補助材料が捕捉スクリーン187を通過できるようにするための蜂の巣形または長方形の複数の貫通孔189を備えている。貫通開口部189が段ごとに互いにずらして配置されており、そのサイズは例えば約30mm×30mmである(図16)。
【0074】
メンテナンスのために補助材料収容容器176の内部186にアクセスできるようにするため、側壁178の1つには点検用開口部が設けられていて、フィルタ・モジュール132の動作中は、取っ手190を有する点検用扉188によって閉じられる(図13〜図15)。
【0075】
図15からわかるように、点検用扉188は、つまみナット194を備えた締め具192により、補助材料収容容器176の対応する側壁178に取外し可能に取り付けられている。
【0076】
点検用扉188には、スワール装置198に通じる圧縮空気パイプライン196が取り付けられている(図14)。
【0077】
スワール装置198を用いて圧縮空気パルスが下にある補助材料の中に供給されてこの補助材料を巻き上がらせ、補助材料収容容器176の中を通過しつつある粗ガス流の中に補助材料を導入する。
【0078】
補助材料がスワール装置198によって巻き上げられた状態にされるため、補助材料と、それに結合した塗料スプレーしぶきとの混合物の均一化が補助材料収容容器176の中でさらに達成される。
【0079】
設備100の動作中、スワール装置198が間欠的に動作状態になる。例えば1分間に4回、それぞれ約5秒間、動作状態になる。
【0080】
スワール装置198は、圧縮空気用に円錐形ノズルの形態をした複数(例えば2つ)の放出ノズル200を備えている。放出ノズル200はそれぞれが円錐形の圧縮空気を作り出すことができ、その形が補助材料収容容器176の底部182の方向に進むにつれて広がっていく。
【0081】
それぞれの放出ノズル200は、円錐形をしたその各ノズル200によって作り出される円錐形の圧縮空気が合わさって補助材料収容容器176の底部領域を完全に掃引するように設計され、配置されることが好ましい。
【0082】
圧縮空気パイプライン196にはさらに、レベル・センサー204の取り付け具202が配置されている。レベル・センサー204は、ロッド状のセンサー要素206と、センサーのハウジング208とを備えており、このハウジングの中に電子センサー装置が収容される(図14)。
【0083】
レベル・センサー204は、特に容量性のアナログ式センサーの形態を取っており、多数の離散したレベル高からなる値の1つに対応する信号、または連続したレベル高に対応する信号を発生させるのに用いられる。そのため補助材料収容容器176の中にある補助材料のレベルを可能な限り正確に測定することができる。
【0084】
レベル・センサー204のロッド状のセンサー要素206は実質的に鉛直な方向を向いていて、レベル・センサー204の測定結果が縁部の効果によって損なわれることができるだけ少なくなるよう、補助材料収容容器176の側壁178からできるだけ離し、補助材料収容容器176の内部186の中央付近に配置されている(図13)。
【0085】
レベル・センサー204のロッド状のセンサー要素206は、補助材料収容容器176の水平な底部182に対して実質的に垂直な方向を向いている。
【0086】
レベル・センサー204から発生した信号は、信号線(図示せず)を通じてフィルタ要素172の基体174の表面に配置されたフィルタ・モジュール132の電気端子ボックス209に送られ(図7参照)、次いでそこから設備100の(図19に参照番号210で示した)制御装置に送られる。
【0087】
フィルタ・モジュール132に入る粗ガス流を特に補助材料収容容器176の内部186に向かわせるため、そして粗ガス流が流れチェンバー128からフィルタ要素172に向かって直接出ていかないようにするため、各フィルタ・モジュール132にはさらに、スロットの形をした取り込み用開口部212が設けられている。この取り込み用開口部212は取り込みチャネル214の形態をしており、特に図9からわかるように、例えば粗ガス流の流れ方向に沿って狭隘点240に向かって狭くなっていく流れ断面を有する。
【0088】
その代わりに、またはそれに加えて、取り込みチャネル214は、粗ガス流の流れ方向に沿って狭隘点240から広がっていく流れ断面を持つようにすることもできる。
【0089】
取り込みチャネル214は、下流方向が、取り込み斜面216と底部バッフル218によって規定されている。取り込み斜面216は、支持構造156の前方支持体160から斜め上方に傾斜角が例えば水平方向に対して約40°〜65°で延びている。底部バッフル218は取り込み斜面216の下端と接合されていて、水平方向に対して取り込み斜面216よりも大きく傾いている。その角度は例えば約55°〜約70°である。底部バッフル218はさらに、補助材料収容容器176の側壁178の実質的に鉛直な方向を向いた上部220から張り出し、補助材料収容容器176の内部186に突起している。
【0090】
したがって底部バッフル218は保持要素222として機能し、補助材料収容容器176からの補助材料を取り込み用開口部212から離れた状態に保持するとともに、補助材料が取り込み用開口部212の近くで巻き上がって補助材料収容容器176から側壁178に沿って出ていくのを阻止している。
【0091】
底部バッフル218はさらに、粗ガス流が取り込み斜面216を通過した後に離れることを阻止し、補助材料収容容器176の中に向かうことを保証している。
【0092】
底部バッフル218は深さ(すなわち粗ガス流の流れ方向の長さ)が例えば約100mmである。
【0093】
取り込み斜面216と底部バッフル218は、流れチェンバー128の長手方向134に沿って実質的に取り込み用開口部212の全体にわたって例えば1mまたは2mの長さがある。この長さは、フィルタ・モジュール132の長手方向134に沿ったほぼ全長に対応する。
【0094】
取り込み斜面216の上面と底部バッフル218の上面は合わさって取り込み用開口部212の底部ガイド面224を形成し、その取り込み用開口部212の下方を規定している。底部ガイド面224の上部226は取り込み斜面216によって形成されていて、水平方向に対して約40°〜約65°傾いている。底部ガイド面224の底部228は底部バッフル218によって形成されていて、水平方向に対して約55°〜約70°と傾斜がより急になっている。
【0095】
取り込み用開口部212は上方が前方壁166の下縁部と上部バッフル230によって規定されている。上部バッフル230は、前壁166の下縁部から斜め下向きに突起し、フィルタ・モジュール132の内部に入っている。
【0096】
上部バッフル230は、底部バッフル218と同様、水平方向に対して例えば約55°〜約70°の角度傾いていて、長手方向134に沿って実質的に取り込み用開口部212の全体にわたって例えば1mまたは2mの長さがある。
【0097】
上部バッフル230は深さ(すなわち粗ガス流の流れ方向の長さ)が例えば約150mmである。
【0098】
上部バッフル230の下面は上部ガイド面232を形成し、取り込み用開口部212の上方を規定している。上部ガイド面232は、水平方向に対して例えば約55°〜約70°の角度傾いている。
【0099】
粗ガス流のためのこの上部バッフル230によって実現される効果は、粗ガス流がフィルタ・モジュール132の前方壁166で離れず、ガイドされて補助材料収容容器176の中に向かうことである。
【0100】
上部バッフル230はさらに、フィルタ遮蔽要素234としても機能する。なぜなら上部バッフル230は、フィルタ・モジュール132に入る粗ガス流が直接フィルタ要素172に向かって流れるのを阻止するように設計されて取り込み用開口部212の位置に配置されているからである。
【0101】
上部バッフル230はさらに、偏向要素236としても機能する。この偏向要素236により、補助材料とそれに結合した塗料スプレーしぶき粒子を含んでいて清掃によってフィルタ要素170から除去された材料が、取り込み用開口部212から離れた状態に維持される。
【0102】
それよりはむしろ、フィルタ要素172から落ちてきて上部バッフル230の上面に載る材料が、上部バッフル230の傾斜に導かれて補助材料収容容器176の中に入る。
【0103】
フィルタ・モジュール132の動作中は、上部バッフル230の上部ガイド面232と上面の両方とも補助材料の被覆を有するため、上部バッフル230のこれらの領域は清掃が容易であり、上部バッフル230に塗料スプレーしぶきが直接固着することはない。
【0104】
図12から最もよくわかるように、フィルタ・モジュール132はほぼ三角形のカバー・プレートの形態になった2つの被覆要素238をさらに備えていて、それらが取り込み用開口部212の左下隅と右下隅の領域を覆っているため、粗ガス流からの補助材料と塗料スプレーしぶきが取り込み用開口部212の隅に位置するこれらの領域から離れた状態が維持され、補助材料と塗料スプレーしぶき粒子が、隅に位置するこれらの領域に堆積することと、フィルタ・モジュール132の外側で取り込み斜面216の上に堆積することが阻止される。
【0105】
被覆要素238の上面は鉛直方向と水平方向に対して斜めになっており、それぞれ、面の法線が、上を向いていてフィルタ・モジュール132の外側に行く。
【0106】
取り込み用開口部212が上に説明した幾何学的構成であることによる効果は、取り込み用開口部212が狭隘点240を持っていて、その位置で取り込み用開口部212の流れ断面積が最小になるため、粗ガスの速度が最大になることである。
【0107】
狭隘点における粗ガスの速度は、約2m/秒〜約8m/秒であること、その中でも特に約3m/秒〜約5m/秒であることが好ましい。
【0108】
このようにして、閉じた箱を形成しているフィルタ・モジュール132の内部から補助材料が流れチェンバー128の中に向かい、そこから付着領域108の中に入ることが、うまく阻止される。したがって補助材料収容容器176の中にある補助材料の巻き上げとフィルタ要素172の清掃を、フィルタ・モジュール132への粗ガスの供給を中断することなく、それどころか付着領域108におけるスプレー塗装装置116の動作を中断させることさえなしに、望む任意のときに実行することができる。
【0109】
粗ガス流は、取り込み用開口部212を去るとき、補助材料収容容器176の中に入るよう方向づけられているため、補助材料収容容器176の内部186で粗ガス流が偏向することがさらに保証される。その結果、補助材料収容容器176の中にある供給源から巻き上げによって生成される十分な量の補助材料が粗ガス流に伴われる。
【0110】
流れチェンバー128からの粗ガス流が取り込み用開口部212を通ってフィルタ・モジュール132に入る様子を流れのシミュレーション結果として図10に示してある。この図から、フィルタ・モジュール132の内部では回転流が発達し、その水平方向に延びる軸は、補助材料収容容器176の上縁部よりもわずかに下の位置にあることがはっきりとわかる。
【0111】
補助材料収容容器176で取り込み用開口部212とは反対の側では、補助材料を含む粗ガス流が逆向きに流れて補助材料収容容器176から出ていき、フィルタ要素収容スペース170の深さ全体に分布する。そのため渦がフィルタ要素172のまわりに発達する。狭隘点240において粗ガス流が受け取るエネルギーは大きいため、補助材料が個々のフィルタ要素172に一様に分布することが保証される。
【0112】
入ってくる粗ガス流の流路に位置するフィルタ・モジュール132の部品はほとんどないため、その部品に粘着性の塗料が付着することが大いに回避される一方で、濾過にとって有利なフィルタ要素172に逆らう流れが得られる。
【0113】
狭隘点240を通ってフィルタ・モジュール132の中に入る粗ガス流の流れの平均的な方向は水平方向に対して40°を超える角度傾いているため、フィルタ要素収容スペース170の底部領域で空気ロックが発達することが阻止される。空気ロックがあると、清掃によってフィルタ要素172から除去された材料が直ちにフィルタ要素172へと運ばれ、互いに反対向きの空気の渦がフィルタ・モジュール132の中に形成される可能性がある。
【0114】
1つのモジュール列136に単純かつ安定な方法で互いに並べて配置した2つのフィルタ・モジュール132を接続できるようにするため、または1つのフィルタ・モジュール132を付随する横断方向分割壁142に接続できるようにするため、各フィルタ・モジュール132の支持構造156は、実質的に平坦な接触面242を持つ少なくとも1つの後方支持体158を備えている。この接触面242は鉛直な方向を向いていて横断方向112に延びており、隣のフィルタ・モジュール132の対応する接触面242と接触させて、または隣の横断方向分割壁142と接触させて配置することができる(図7)。
【0115】
接触面242には、締め付け手段を通すための貫通開口部244が設けられている。その締め付け手段により、接続要素246として機能する後方支持体158を、隣のフィルタ・モジュール132の接続要素246、または隣の横断方向分割壁142に接続することができる。
【0116】
接続要素246として機能する後方支持体158は、ほぼU字形の輪郭を有することが好ましい。
【0117】
図7からわかるように、それぞれの中間モジュール140は、U字形の輪郭を持っていて接続要素246として機能する2つの後方支持体158を備えている。これら後方支持体158の開いた側は互いに向かい合っているため、中間モジュール140の両側を隣にある別のフィルタ・モジュール132に、または横断方向分割壁142に接続することができる。
【0118】
図8からわかるように、それぞれのコーナー用モジュール138は、U字形の輪郭を持っていて接続要素246として配置された後方支持体158を1つしか備えていない。反対側の後方支持体158aは隣のフィルタ・モジュール132または隣の横断方向分割壁142に接続する必要がなく、機械的強度を大きくするためにU字形の輪郭ではなく例えばT字形の輪郭にすることができる。
【0119】
それ以外は、コーナー用モジュール138は、上に詳述した中間モジュール140と構造および機能が同じである。
【0120】
各フィルタ・モジュール132の動作中、粗ガス流120はフィルタ要素172のフィルタ面をすべて掃引する。そのとき、伴われる補助材料と伴われる湿った塗料スプレーしぶきの両方ともフィルタ面において分離され、濾過された粗ガスは、放出空気流として多孔性フィルタ面を通過してフィルタ要素172の内部に入る。フィルタ要素172は基体174から突起していて、その基体174の内側の空洞にフィルタ要素172の内部がつながっている。クリーンにされた放出空気流は、この空洞から対応する1つの空気放出パイプ248に入る。この空気放出パイプ248は、各フィルタ・モジュール132のフィルタ要素172の基体174から空気放出チャネル250へと通じている。空気放出チャネル250は、流れチェンバー128の下方にあってそのほぼ中心に位置し、流れチェンバー128の長手方向134に平行に延びている(特に図2と図3参照)。
【0121】
図19の概略図からわかるように、湿った塗料スプレーしぶきを除去されて放出される空気は、空気放出チャネル250を通過して空気放出送風機252に向かい、そこから、クリーンにされて放出される空気が冷却用積層体(図示せず)と供給ライン(図示せず)を通過し、付着領域108の上方に配置された空気チェンバー(図示せず)(いわゆるプレナム)に供給される。
【0122】
この空気チェンバーから出るクリーンにされて放出された空気は、フィルタ・カバーを通過して付着領域108に戻る。
【0123】
供給ラインから空気放出ライン(図示せず)が分岐している。クリーンにされて放出された空気の一部がその空気放出ラインによって(例えば煙突を通じて)環境中に排気される。
【0124】
環境中に排気されるこの一部の放出空気流は、2つの空気カーテン発生装置254によって流れチェンバー128に供給される新鮮な空気で置き換えられる。空気カーテン発生装置254は、それぞれが1つの空気取り込みライン256によって空気取り込み設備(図示せず)に接続されている(図1〜図3)。
【0125】
それぞれの空気カーテン発生装置254は、空気取り込みチェンバーを備えている。空気取り込みチェンバーは流れチェンバー128の長手方向134に延びていて、空気取り込みライン256を通じて取り込まれた空気が供給されてギャップ258から放出される。ギャップ258は長手方向134に沿って延びていて、鉛直方向の長さが例えば約15cm〜約50cmであり、流れチェンバー128の上部260に収まっている。その上部260は、上方が付着領域108によって規定され、下方がフィルタ・モジュール132の上壁164によって規定されている。
【0126】
それぞれの空気取り込みチェンバーのギャップ258はフィルタ・モジュール132の上壁164の直上に位置するため、空気取り込みチェンバーからフィルタ・モジュール132の上壁164の上面に沿って実質的に水平な方向に流れる取り込まれた空気は、それぞれのフィルタ・モジュール132の上側を導かれて空気カーテンを形成する。この空気カーテンは、対応するそれぞれの空気カーテン発生装置254から、互いに向かい合ったモジュール列136の上縁部の間にある狭隘点262まで延びているため、湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流が付着領域108からフィルタ・モジュール132の上側に行くことが阻止されるとともに、粗ガス流からの湿った塗料スプレーしぶきがフィルタ・モジュール132の上側に堆積することが阻止される。
【0127】
流れチェンバー128の狭隘点262では、粗ガス流が通過できる流れチェンバー128の水平方向の断面積が突然小さくなるため、粗ガス流の流速は、この狭隘点262の下に位置する流れチェンバー128の底部263では、この狭隘点262の上に位置する流れチェンバー128の上部260におけるよりも著しく大きい。
【0128】
フィルタ・モジュール132の上側で空気カーテン発生装置254によって生成される横断方向空気カーテンの中の空気流の平均的な方向を図3に矢印264で示してある。
【0129】
したがって付着領域108を通って運ばれる空気の大半は、再循環空気回路の中に運ばれる。この再循環空気回路に含まれるのは、付着領域108と、流れチェンバー128と、フィルタ・モジュール132と、空気放出パイプ248と、空気放出チャネル250と、空気放出送風機252のほか、供給ラインと、付着領域108の上にある空気チェンバーである。付着領域108では、空気カーテン発生装置254を通じて新鮮な空気が供給されることにより、再循環空気回路の中に運ばれる空気が常に加熱されることが阻止される。
【0130】
フィルタ要素172による粗ガス流からの湿った塗料スプレーしぶきの分離は乾式プロセスであるため、すなわち洗浄液を用いた洗い流しを伴わないため、再循環空気回路の中に運ばれる空気は湿った塗料スプレーしぶきの分離中に湿潤になることはなく、それに伴う結果として、再循環空気回路の中に運ばれる空気から水分を除去するための装置がまったく不要になる。
【0131】
洗い流すための洗浄液から湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置も不要である。
【0132】
流れチェンバー128で狭隘点262の下に位置する底部263にフィルタ・モジュール132が設けられている結果として、流れチェンバー128で粗ガス流が通過できる水平方向の断面積は、流れチェンバー128の上部260におけるよりも著しく小さいため(例えば底部263では、上部260における流れチェンバー128の水平方向の断面積のほんの約35%〜約50%)、付着領域108から流れチェンバー128を通って取り込み用開口部212に至る経路に沿った粗ガス流の流速は連続的に増大し、そのことによって粗ガス流の上昇する速度プロファイルが得られる。
【0133】
速度プロファイルがこのように上昇する結果として、フィルタ・モジュール132を去る粒子は付着領域108に入ることができない。
【0134】
この場合、付着領域108と流れチェンバー128の上部260における粗ガス流の速度は、例えば約0.6m/秒までであるのに対し、流れチェンバーの底部263では、例えば約0.6m/秒〜約3m/秒の範囲になり、フィルタ・モジュール132の取り込み用開口部212では、約3m/秒〜約5m/秒の最大値になる。
【0135】
フィルタ要素172は完全にフィルタ・モジュール132の中に収容されているため、塗装プロセスが付着領域108で進行しているとき、補助材料を付着させることによるフィルタ要素172の活性化とフィルタ要素172の清掃がいつでも可能である。
【0136】
スプレー・ブース110の幅、すなわち横断方向112の長さが変化する場合にも、同じサイズのフィルタ・モジュール132が相変わらず使用される。湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置の調節は、この場合、単に、2つのモジュール列136の間の距離を大きくし、通路146を広くすることによってなされる。
【0137】
スプレー・ブース110がこのように広げられると、粗ガス流の速度は、通路146までの領域でだけ変化する。そしてそこからは、すなわち特にフィルタ・モジュール132の取り込み用開口部212を通過している間、粗ガス流の速度プロファイルは、単位時間当たりに流れる粗ガスの量にだけ依存するが、流れチェンバー128の幾何学的形状には依存しない。
【0138】
メンテナンス上の理由で、スプレー・ブース110を通って運ばれる車体102の下縁部からフィルタ・モジュール132の(通路となる)上壁164までの間隔は、少なくとも約1.5mである。
【0139】
フィルタ要素172は、湿った塗料スプレーしぶきが詰まったり、補助材料が所定のレベルに到達したりしたとき、特定の時間間隔で圧縮空気パルスによって清掃される。
【0140】
この清掃は、(フィルタ要素172の位置における圧力低下の発生に応じ)1回の8時間勤務ごとに例えば1〜6回、すなわち1〜8時間ごとに実施することができる。
【0141】
必要な圧縮空気パルスは、各フィルタ・モジュール132のフィルタ要素172の基体174の表面に配置されたパルス出力ユニット266によって生成される。パルス出力ユニット266は、圧縮空気パルスを圧縮空気パイプに供給することができる。圧縮空気パイプは、それぞれの基体174の内側を延びていて、パルス出力ユニット266からフィルタ要素172の内部へと通じている(図19)。
【0142】
圧縮空気パルスは、フィルタ要素172の内部から多孔性フィルタの表面を通過してフィルタ要素収容スペース170の中に入る。このフィルタ要素収容スペース170では、フィルタの表面に形成されていて補助材料と湿った塗料スプレーしぶきを堆積された状態で含む障壁層がフィルタの表面から離れ、そのことによってフィルタの表面が元のクリーンな状態に戻る。
【0143】
パルス出力ユニット266はパルス出力弁268を備えている。パルス出力ユニット266は、圧縮空気供給ライン270からそのパルス出力弁268を通じて圧縮空気を供給することができる。なお圧縮空気供給ライン270は、圧縮機272から供給を受ける(図19参照)。
【0144】
スワール装置198の放出ノズル200に通じる圧縮空気パイプライン196も圧縮空気弁274を介してこの圧縮空気供給ライン270に接続されている。
【0145】
それぞれの補助材料収容容器176の流動床184はさらに、圧縮空気弁276が取り付けられた圧縮空気ライン278によって圧縮空気供給ライン270にも接続されている。
【0146】
パルス出力弁268、圧縮空気弁274、圧縮空気弁276を開くと、交互に、または同時に、フィルタ要素172の清掃、および/または補助材料収容容器176の中での補助材料の巻き上げ、および/または補助材料収容容器176の中での流動床184による補助材料の流動化を行なうことができる。
【0147】
圧縮空気供給ライン270には、圧縮空気弁と圧縮機272の間に、ローカル制御ステーションにある制御装置210によって制御できる停止弁280が存在している。
【0148】
制御装置210は、フィルタ要素172を通過する粗ガス流が十分でないと判断すると、停止弁280を閉じることにより、圧縮機272から1つまたはすべてのフィルタ・モジュール132の上記圧縮空気ユニットへの圧縮空気の供給を停止させる。
【0149】
フィルタ要素172を通過する十分な粗ガス流があるかどうかを検出するため、例えば制御装置210が空気放出送風機252の動作状態を監視できるようにする。
【0150】
空気放出送風機252の動作状態のこのような監視は、例えば空気放出送風機252の排気端と吸引側の圧力低下を測定する差圧計(PDIA)282によって実現できる。
【0151】
その代わりに、またはそれに加えて、空気放出送風機252の動作状態は、制御装置210によって監視することや、電流監視装置(ESA)284および/または周波数変換器(SC)286によって監視することができる。
【0152】
フィルタ要素172を通過する十分な粗ガス流がないことは、空気放出チャネル250または1つ以上の空気放出パイプ248を通過するガス流を測定する流量計(FIA)288によって検出することも可能である。
【0153】
フィルタ要素172を通過する十分な粗ガス流がないことは、1つまたはすべてのフィルタ・モジュール132のフィルタ要素172の位置における圧力低下を測定して検出することも可能である。
【0154】
差圧計282、および/または電流監視装置284、および/または周波数変換器286、および/または流量計288によって伝えられる信号に基づき、制御装置210が、フィルタ要素172を通過する粗ガス流が所定の閾値よりも小さいと判断すると、停止弁280を閉じることによって少なくとも1つのフィルタ・モジュール132への圧縮空気の供給を停止させる。
【0155】
すると補助材料は、スワールユニット198による巻き上げ、またはフィルタ要素172の清掃、または補助材料収容容器176の中に供給された補助材料の流動化の結果として粗ガスの流路に入ること、特にフィルタ・モジュール132の取り込み用開口部212を通って流れチェンバー128の中に入り、そこから付着領域108の中に入ることが阻止される。
【0156】
圧縮空気の供給のこのような停止は、すべてのフィルタ・モジュール132で同時に、または個々のフィルタ・モジュール132で互いに別々に実行することができる。後者の場合、フィルタ要素172を通過する十分な粗ガス流がないことの検出は、それぞれのフィルタ・モジュール132について別々に実施され、各フィルタ・モジュール132に独自の圧縮機272が設けるか、個々のフィルタ・モジュール132への圧縮空気供給ライン270を、互いに別々に作動させることのできる停止弁280によって開閉させることができる。
【0157】
湿った塗料スプレーしぶきを分離するための上記の装置126の場合、それぞれの補助材料収容容器176の中で補助材料を巻き上げることによってフィルタ・モジュール132の内側でだけ補助材料を粗ガス流に添加する。
【0158】
フィルタ・モジュール132の内側で常に動作状態にある補助材料収容容器176に新鮮な補助材料を供給できるようにするため、湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置126は、補助材料供給装置290を備えている。この補助材料供給装置290の概略を図17に示してあり、ブローポットまたは単純な流動化容器の形態にできる供給容器292を備えている。
【0159】
ブローポットは、例えば特許文献2と特許文献3によって公知であり、スパッタリング・ユニットの近くに位置する付着用容器に被覆粉末を供給するための被覆設備で用いられてきた。ブローポットは、空気が透過できる基部を有する比較的小さな密封可能容器であり、その基部を通った空気が粉末を流動化させ、その粉末を容器の中に供給する。
【0160】
ブローポットは流動化用の空気の圧力によって空にできるが、そうでない場合には、流動化容器の下流に、材料を供給するための粉末添加ポンプ293が配置される(図1参照)。粉末添加ポンプ293としては、例えば特許文献3に記載されているいわゆるDDFポンプ、または密な流れの原理に従って吸引と加圧を交互にして供給する別の添加ポンプ(例えば特許文献4、または特許文献5、または特許文献6の図3から公知になっているもの)がある。
【0161】
供給容器292に充填するため、その上方に、新鮮な補助材料のためのより大きな貯蔵容器(充填ドラムまたは“大きな袋”)294が配置されている。材料は、最も簡単な場合には、この貯蔵容器から、シャッターによって閉じることのできる開口部を通って供給容器(サイロ)292の中に少しずつ入ることができる。しかし材料を供給している間でさえ供給容器292に連続的に再充填できるようにするため、そして動作中の時間の損失をなくすため、機械式移送装置296(例えばセルラー・ホイール流量調節装置またはコンベア・ワーム)が貯蔵容器294と供給容器292の間に配置されることが好ましい。このような移送装置を使用するとして、セルラー・ホイール流量調節装置の場合には、セルごとにあらかじめ充填量を決定することで望む充填量に調節できることも望ましい。
【0162】
供給容器292は、主要ライン300によってそれぞれの補助材料収容容器176に接続されている。主要ライン300は2つの分岐ライン298a、298bに分かれていて、そこからそれぞれの突起ライン302が1つの補助材料収容容器176に通じている。この場合、主要ライン300の各分岐ライン298a、298bは、1つのモジュール列136の補助材料収容容器176に通じている。
【0163】
主要ライン300は可撓性のあるチューブで製造することが好ましい。
【0164】
そうするため、内径が約14mmまでで特に約6mm〜約12mmのチューブを用いることができる。
【0165】
突起ライン302はチューブ状にすることができ、それぞれの突起ライン302には、機械式ピンチ弁304が設けられている。そしてそれぞれの突起ライン302が分岐している点の下流で補助材料が流れていく方向には、第2のピンチ弁306が配置されている。
【0166】
さらに、主要ライン302の2つの分岐ライン298a、298bが分岐する位置にはピンチ弁309が配置され、必要に応じてこれら2つの分岐ライン298a、298bを開閉できるようにされている。
【0167】
補助材料供給装置290の動作中、主要ライン300とすべての突起ライン302は最初は空である。特定の1つの補助材料収容容器176に新鮮な補助材料が装填されると、対応するそれぞれのピンチ弁306を閉じることによって対応する突起ライン302の分岐点の下流では主要ラインがブロックされ、次いで関係する突起ライン302が、対応するピンチ弁304を開けることによって開通することで、補助材料が供給容器292から関係する補助材料収容容器176に供給される。
【0168】
次に、関係する補助材料収容容器176に通じる上記ラインの経路が空にされた後、パージされる。これは、被覆量を常に正確に決定して添加できるという利点と、充填された補助材料収容容器176へのパージ操作が常に行なわれるためにラインの経路がブロックされることはないという利点を提供する。
【0169】
それぞれの突起ライン302は、好ましくは補助材料収容容器176の上縁部に近い領域において、対応するそれぞれの補助材料収容容器176の側壁178の1つに向かって開いている。そのため突起ライン302を通じて可能な限り多くの補助材料を供給することができる。
【0170】
1つのモジュール列136の最後の補助材料収容容器176に通じる突起ライン302にはピンチ弁を設ける必要がない。なぜならこの最後の補助材料収容容器176に装填するには、主要ライン300上でこの補助材料収容容器176の上流に配置されたすべてのピンチ弁306と309を開くだけでよいからである。
【0171】
上記のピンチ弁の代わりに、従来技術で知られているような機械式閉鎖タイプの分配ガイド、または他の形態の粉末分配ガイドを、補助材料ライン・システムの分岐点に設けることができる。
【0172】
新鮮な補助材料を補助材料収容容器176に供給する前に、補助材料収容容器176の中に回収済みの塗料スプレーしぶきと混合された補助材料を取り出して廃棄またはリサイクルするため、湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置126は、図18に概略を示した補助材料取り出し装置308をさらに備えている。
【0173】
補助材料取り出し装置308は、吸引ファン310(例えばダスト吸引ファン)を備えている。吸引ファン310は、2つの分岐ライン314a、314bに分割された主要ライン312から出てくる消費された補助材料を、その吸引ファン310の下に配置された回収容器316の中に供給する。
【0174】
それぞれの場合に主要ライン312の分岐ライン314a、314bの一方が1つのモジュール列136の補助材料収容容器176につながっていて、ピンチ弁320によって閉じることのできる各突起ライン318により、対応するモジュール列136のそれぞれの補助材料収容容器176に接続されている。
【0175】
主要ライン312のそれぞれの分岐ライン314a、314bの端部にはボール弁322が配置されていて、必要な場合にはそのボール弁を通じて供給空気を主要ライン312に供給することで、主要ライン312から吸引ファン310へと補助材料を取り出しやすくする。
【0176】
それぞれの突起ライン318は、流動床184の直上でそれぞれの補助材料収容容器176の内部186に向かって開いている。好ましいのは、それぞれの突起ライン318が、補助材料収容容器176で2つの側壁178が出会うコーナー領域の近くにおいて開いていることである。
【0177】
有効な消費された補助材料をできるだけ完全に取り出すには、突起ライン318が分岐して2つの取り出しラインになり、そのそれぞれが異なるコーナー領域において補助材料収容容器176の内部186に向かって開いていることが特に望ましい。
【0178】
塗料スプレーしぶきと混合された消費された補助材料が特定の補助材料収容容器176から空にされるとき、対応するそれぞれの突起ライン318のピンチ弁320が開放され、補助材料収容容器176の中にある材料が吸引ファン310によって突起ライン318を通じて吸引され、回収容器316の中に供給される。
【0179】
取り出す操作は、対応するそれぞれのピンチ弁320を閉じることによって終了する。
【0180】
取り出す操作の間、関係する補助材料収容容器176の流動床184は連続動作状態に設定される。すなわち流動床184は、取り出す操作の間を通じて圧縮空気で掃引され、取り出される材料が流動化されて流動性が非常に大きくされる。
【0181】
消費された補助材料の補助材料収容容器176から取り出す操作は、取り出す操作の実施中に関係する補助材料収容容器176のスワール装置198を連続動作または間欠動作(例えば1分につき6×5秒間)させることによってさらに支援することができる。なぜなら取り出される材料は、スワール装置198の放出ノズル200を通過した圧縮空気によって上方から作用するため、材料はほぐれて突起ライン318の取り込み用開口部の方向に移動するからである。
【0182】
1つの補助材料収容容器176から消費された補助材料を取り出す操作がうまくいっていないことは、対応するレベル・センサー204によって検出できる。そのときレベル・センサー204は、レベルがもはや低下していないことを示している。その場合にも、湿った塗料スプレーしぶきを分離するための装置126の動作を中断する必要がない。補助材料は、その代わりに主要ライン312の同じ分岐ライン314aまたは314bに接続された別の補助材料収容容器176から取り出すことができる。そうすることにより、ブロックされた補助材料収容容器176から供給される材料がブロックした状態を多くの場合に解除し、その結果、以前にブロックした補助材料収容容器176から材料を取り出すことができる。
【0183】
補助材料収容容器176から取り出されて補助材料と塗料スプレーしぶき粒子を含んでいる材料は、被覆設備から廃棄すること、または必要に応じては処理した後に少なくとも一部を被覆設備でリサイクルすることができる。
【0184】
さらに、補助材料の諸物質は、被覆設備で使用した後に加工品の被覆以外の目的で使用できるように選択することができる。例えば消費された補助材料は、絶縁材料として、またはレンガ産業やセメント産業において熱源として使用できる。その場合、補助材料に結合した湿った塗料スプレーしぶきは、生産に必要な燃焼プロセスにおけるエネルギー源としても使用できる。
【0185】
消費された補助材料を補助材料収容容器176から取り出した後、その補助材料収容容器176には、すでに説明した補助材料供給装置290によって新鮮な補助材料が充填される。すなわち、補助材料収容容器176の全容量の例えば約50%という初期充填レベルまで充填される。
【0186】
補助材料収容容器176の中にある補助材料と塗料スプレーしぶきの混合物には補助材料よりも密度が小さい湿った塗料スプレーしぶきが豊富に含まれているため、フィルタ・モジュール132の動作中は、この混合物の密度が連続的に低下する。その結果、フィルタ・モジュール132のフィルタ要素172の表面に形成される障壁層が徐々に大きな体積を持つようになる。
【0187】
したがって、フィルタ要素172の清掃作業を行なう直前の補助材料収容容器176の中にある材料のレベルは徐々に低くなる。
【0188】
所定の残留レベル(例えば補助材料収容容器176の容量の約10%に対応する残留レベル)になると、塗料スプレーしぶきと混合された補助材料は、上に説明したようにして補助材料収容容器176から取り出される。フィルタ要素172の清掃作業の前に取り出しを行なうことによって実現される効果は、補助材料収容容器176から取り出されるのが主に、使用できなくなって補助材料収容容器176に回収され、フィルタ要素172の表面に障壁層を形成しない材料であるというものである。
【0189】
この手続きの代わりに、フィルタ・モジュール132のフィルタ要素172の清掃作業を実施するごとに補助材料収容容器176中の材料のレベルを測定し、所定の最大レベル(例えば補助材料収容容器176の最大容量の90%)に達していた場合に取り出す操作を開始することもできよう。
【0190】
いずれの場合にも、取り出す操作を開始させる補助材料収容容器176中の材料のレベルは、それぞれの補助材料収容容器176の中に配置されたレベル・センサー204によって決定される。
【0191】
車体102を塗装するための図20に概略断面図として示した設備100の第2の実施態様がすでに説明した第1の実施態様と異なっているのは、フィルタ・モジュール132の上方に別々の横断方向空気カーテン・バッフル324が配置されていて、それらを用いて空気カーテン発生装置254によって供給される取り込まれた空気を流れチェンバー128の上部260と底部263の間の狭隘点262に向かわせている点である。
【0192】
横断方向空気カーテン・バッフル324は、それぞれ、水平方向に対して例えば約1°〜約3°の角度だけ流れチェンバー128の側壁130に向かって傾いているため、上方から横断方向空気カーテン・バッフル324を通過する液体は、狭隘点262に向かってではなく、側壁130に向かって流れる。
【0193】
こうなることで、例えばチューブの破裂または消火用の水のために付着領域108から流出してきた塗料が流れチェンバー128の底部263に入り、そこからフィルタ・モジュール132に入ることはできず、その代わりに流れチェンバー128の側部から流出できるようにすることが保証される。
【0194】
さらに、この実施態様では、モジュール列136に挟まれた通路146は、2つの半通路328a、328bに分割されている。これらの半通路328a、328bは、流れチェンバー128の鉛直長手方向の中心線326に対して実質的に鏡像対称に設計されていて、長手方向の中心線326の方向で水平線に対して例えば約1°〜約3°の角度傾いている。そのため、上方から通路146に落ちてくる液体(例えば塗料または消火用の水)は、通路146の側縁部330を超えてフィルタ・モジュール132の取り込み用開口部212に達することはなく、通路146の中央に保持される。
【0195】
通路146と横断方向空気カーテン・バッフル324の両方とも、流れチェンバー128の長手方向134に沿って水平方向に対してさらに傾けることができるため、これら要素の上に位置する液体は、重力の影響を受けて排気用開口部へと流れる。
【0196】
それ以外は、車体102を塗装するための図20に概略断面図として示した設備100の第2の実施態様は、図1〜図19に示した第1の実施態様と構造および機能が同じである。この点に関しては、第1の実施態様に関する上の説明を参照されたい。
【0197】
前に説明した車体102を塗装するための設備100のフィルタ・モジュール132の補助材料収容容器176は、図13に示した流動床184の代わりに、またはそれに加えて、補助材料収容容器176の中にある材料を完全に混合するための他の装置332も備えることができる。それは例えば空気圧で動作する撹拌装置334であり、図21と図22に概略を示してある。
【0198】
空気圧で動作する撹拌装置334は、実質的に鉛直方向を向いた撹拌シャフト338に回転不能にして固定された少なくとも2つの撹拌パドル340を有する撹拌器336と、図21と図22に概略だけを示した撹拌タービン342を備えている。撹拌タービン342により、鉛直軸のまわりに撹拌シャフト338を回転させることができる。
【0199】
撹拌パドル340は、撹拌シャフト338の軸方向に沿って、互いに例えば約180°の角度ずらして撹拌シャフト338に取り付けられている。
【0200】
圧縮空気供給ライン344を通じて圧縮空気を撹拌タービン342に供給することができる。
【0201】
圧縮空気供給ライン344を通じて圧縮空気が撹拌タービン342に供給されると、供給された圧縮空気は撹拌タービン342を鉛直軸のまわりに回転させる。その結果、撹拌タービン342に回転不能に固定して接続された撹拌シャフト338も同様に回転する。
【0202】
この場合、補助材料収容容器176の中にある材料は、回転する撹拌パドル340によって完全に混合され、補助材料収容容器176の中にある材料の表面は滑らかになる。補助材料収容容器176の中に埋もれていることによって形成された材料のブリッジが壊れる。
【0203】
このようにして、補助材料収容容器176の中にある材料を効率的に完全に混合することと、補助材料収容容器176の中にある材料のレベルを均すことが実現される。
【0204】
撹拌装置334を空気圧で動作させる結果として、補助材料収容容器176の中でのスパークが回避され、爆発に対する十分な保護が保証される。
【0205】
補助材料収容容器176の中にある材料を完全に混合するための装置332の別の一実施態様を図23と図24に示してあるが、この装置は、補助材料収容容器176の横に隣接して配置した電動モータ346を備えている。この電動モータ346の出力シャフト348は補助材料収容容器176の側壁178を貫通しており、出力シャフト348に回転不能に固定された複数(例えば4つ)のパドル350を有する。これらのパドル350は、出力シャフト348の方向に沿って互いに例えば約90°ずらしてある。
【0206】
出力シャフト348が電動モータ346によって実質的に水平な軸のまわりを回転するため、パドル350は回転し、その結果としてパドル350は、補助材料収容容器176の中にある材料を完全に混合し、この材料の表面を滑らかにし、補助材料収容容器176の中で生じた材料のブリッジを壊す。
【0207】
塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離するための既存の装置の変換は、上に説明した設備100のフィルタ・モジュール132を用いて以下のように実施することができる。
【0208】
第1に、既存の装置の一部を分解し、動作位置にあるフィルタ・モジュール132が占めるスペースを清掃する。
【0209】
次にフィルタ・モジュール132をこのようにして清掃した動作位置に配置した後、付着領域108のための支持構造に、その中でも特にスプレー・ブース110のブース壁114に接続する。
【0210】
その後、すべてのフィルタ・モジュール132が動作位置に配置され、付着領域108のための支持構造に接続されるまで、これらのステップを繰り返す。
【0211】
このようにして、例えば湿った塗料スプレーしぶきを湿式分離するための既存の装置を、湿った塗料スプレーしぶきを乾式分離するためのモジュール設計にされた上述の装置126で置き換えることが、車体102を塗装するための設備100の付着領域108をこの目的で分解することなく可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗ガス流(120)を少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通過させて塗料スプレーしぶきをその粗ガス流(120)から分離する前に、湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流(120)の流路に補助材料を導入する方法であって、
− 少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通過する粗ガス流が十分であるかどうかを検出するステップと;
− 粗ガス流が十分でないと判断された場合には、粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を停止するステップと、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を、補助材料収容容器(176)の中にある補助材料をスワール装置(198)によって巻き上げることによって実行し、
粗ガス流が十分でない場合には、そのスワール装置(198)の動作を停止させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を、少なくとも1つのフィルタ要素(172)を清掃して補助材料を除去することによって実行し、
粗ガス流が十分でない場合には、その少なくとも1つのフィルタ要素(172)の清掃を中止する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
粗ガス流が十分でないことを、少なくとも1つのフィルタ要素(172)の位置における圧力低下に基づいて明らかにする、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
粗ガス流が十分でないことを、少なくとも1つのフィルタ要素(172)の下流に配置した送風機(252)の動作状態に基づいて明らかにする、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
送風機(252)の動作状態を電流の監視によって監視する、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
送風機(252)の動作状態を周波数変換器(286)によって監視する、ことを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
送風機(252)の動作状態を、その送風機(252)の圧力低下を測定することによって監視する、ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
粗ガス流が十分でないことを流量計(288)によって明らかにする、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのフィルタ要素(172)の下流に配置した流量計(288)を用いる、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流(120)の流路に補助材料を導入した後、その粗ガス流(120)を少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通過させて塗料スプレーしぶきをその粗ガス流(120)から分離する装置であって、
− 少なくとも1つのフィルタ要素(172)を通過する粗ガス流が十分であるかどうかを検出するための検出装置と;
− その検出装置が、粗ガス流が十分でないと判断した場合には、その粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を停止させる停止装置と、を備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
粗ガス流が十分であるかどうかを検出する検出装置および/または粗ガス流(120)の流路への補助材料の導入を停止する停止装置として用いる制御装置(210)を備える、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
補助材料収容容器(176)の中にある補助材料を巻き上げるための少なくとも1つのスワール装置(198)を備え、
粗ガス流が十分でない場合にそのスワール装置(198)の動作を停止できる、
ことを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つのフィルタ要素(172)から補助材料を清掃して除くためのクリーニング装置(266)を備え、
粗ガス流が十分でない場合にそのクリーニング装置(266)の動作を停止できる、
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも1つのフィルタ要素(172)の位置で圧力低下を測定する圧力センサーを備える、ことを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つのフィルタ要素(172)の下流に配置した送風機(252)の動作状態を監視する少なくとも1つの装置を備える、ことを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
送風機(252)の動作状態を監視するための電流監視装置(284)を備える、ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
送風機(252)の動作状態を監視するための周波数変換器(286)を備える、ことを特徴とする請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
送風機(252)の圧力低下を監視するための差圧計(282)を備える、ことを特徴とする請求項16から18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの流量計(288)を備える、ことを特徴とする請求項11から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
少なくとも1つの流量計が、少なくとも1つのフィルタ要素(172)の下流に配置されている、ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
塗料スプレーしぶき粒子を含む粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離する装置であって、
粗ガス流から湿った塗料スプレーしぶきを分離するための少なくとも1つのフィルタ要素(172)と、
湿った塗料スプレーしぶきを含む粗ガス流の流路に補助材料を導入するための請求項11から21のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置と、を備える、
ことを特徴とする装置。
【請求項23】
製品、その中でも特に車体(102)に塗装するための設備であって、
塗装すべきその製品に湿った塗料を付着させるための少なくとも1つの付着領域(108)と、
湿った塗料スプレーしぶきを分離するための請求項22に記載の少なくとも1つの装置(126)と、を備える、
ことを特徴とする設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−536545(P2010−536545A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521323(P2010−521323)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005482
【国際公開番号】WO2009/026986
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(504389784)デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (54)
【Fターム(参考)】