説明

補強内張が設けられた自動車のフード

本発明は、一部分が可視側を形成する外板(2)から、一部分が外板と端部が互いに組つけられた内張(3)から形成され、内張は概ね平行な細長い凹部(5)と浮き彫り(9)とを交互に有し、凹んだ部分が外板へ向けられた凹部(5)がフードの面の大部分に分布された自動車のフード(1)に関する。本発明の自動車のフードは、各凹部(5)が、それぞれが概ね平らな底壁(8)を介して接続された2つの概ね平らな側壁(6、7)から形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強内張が設けられた自動車のフードに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフードは、通常、可視側を形成する外板と、不可視側を形成する補強部材すなわち内張(lining)からなる。フードがその幾何学形状を維持し、静的剛性を有するために、内張と外板は、接着と、フードの周囲への嵌めこみとの少なくとも一方を施され、通常は低強度のパテからなる、固定、調整用の填め物が、フードの残りの部分の外板と内張の面との間の接続を可能にする。
【0003】
フード、特に内張は、歩行者の頭部がフードに衝突したときの衝撃を和らげるようにも設計される。このため、欧州自動車安全性強化委員会(European Enhanced Vehicle Safety Committee)は、自動車のフードに対して、HIC(Head Injury Criterion)を定めている。HIC値は、規則によって定められているように、打撃領域の約1/3に亘って約2000以下であり、打撃領域の約2/3に亘って約1000以下である必要がある。
【0004】
従って、自動車メーカは、歩行者に対する自動車のフードの安全性を強化するために、HIC値の低下に努めている。
【0005】
このために、文献EP−1 357 018においては、内張が波型の断面を有するフードが提案されている。内張の湾曲した波型部は互いに平行で、内張の全面の領域を占める。内張のこれらの波型部は、フードの剛性を増加し、HIC値を減少させることを可能にする。この構造は、衝突時における頭部の減速度を減少させることも可能にする。上記の文献は、このような構造は、衝突の際における頭部の降下量が短いにもかかわらず、HIC値を減少させることを可能にすることを示している。しかしながら、この内張の波型形状は、衝撃時におけるフード全体の変形をもたらし、充分ではあるが極めて遅い減速をもたらす。この極めて遅い減速は、フードの下方への運動に影響を及ぼし、このため内張とエンジンコンパートメントの中の部品とが接触する、無視できないリスクが存在するようになる。このような接触は、頭部の急激な減速をもたらし、このことは、身体の損傷の悪化をもたらすので望ましくない。
【特許文献1】EP−1 357 018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フードの降下量と内張の降下量の少なくとも一方を減少させるように、内張の構造が、フードの変形を衝撃が生じた領域に制限することを可能にするフードを提供することによって、従来技術におけるこれらの問題を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、一部分が可視側を形成する外板から、一部分が上記外板と端部が互いに組つけられた内張から形成され、上記内張は概ね平行な細長い凹部と浮き彫りとを交互に有し、凹んだ部分が上記外板へ向けられた上記凹部がフードの面の大部分に分布された自動車のフードに関し、上記フードは、各上記凹部が、それぞれが概ね平らな底壁を介して接続された2つの概ね平らな側壁から形成されることを特徴とする。
【0008】
上記内張の横方向の断面は、このようにして、EP−1 357 018における曲線ではなく、直線の線分から形成される。このため、一方では、衝撃波は隣接する上記凹部へほとんど又は全く伝達されず、衝撃は、衝撃を受けた上記凹部に概ね局所化されたままに留まり、他方では、上記凹部は、断面が彎曲している凹部よりも剛性が高い。衝撃時に、上記凹部の形状が、衝撃の最初から剛性を提供することによって上記フードの降下量を制限しながら、衝突した頭部の適正な減速度を維持する。従って、上記内張とエンジンコンパートメントの中の部品とが接触するリスクが減少される。さらに、上記凹部の上記フードの全面の領域に亘る存在は、上記フードの均一な挙動を得ることを可能にする。
【0009】
各上記浮き彫りは、両側に隣接する2つの上記凹部の、隣接する上記側壁を接続する、概ね平らな面から形成されることが望ましい。
【0010】
各上記凹部の、上記底壁と各上記側壁との間の角度と寸法は、上記フードのHIC値が、衝撃のタイプに対して規格化された値に合致し、上記衝撃のタイプにおける上記フードと上記内張との少なくとも一方の降下量が最小であるように有利に決められる。このようにして、HIC値と上記フードの降下量が同時に最適化される。このように、本発明は、歩行者の衝突時におけるHIC値と降下コースが最適化されたフードを提供する。
【0011】
各上記凹部の上記底壁と各上記側壁との間の上記角度は、90°以上であること有利である。
【0012】
上記内張の上記凹部は、その最も長い部分の方向が、上記フードが上記自動車に装着されたときに、上記フードが用いられる上記自動車の縦方向に概ね平行であるように向けられる。従って、上記凹部の長さは小さく、このことは上記凹部の剛性を改良することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
非限定的な添付図面を参照して本発明を説明する。これらの図面において:
−図1は、本発明によるフードの分解斜視図であり;
−図2は、図1のA−A線に沿って切断された横方向断面模式図であり;
−図3は、内張の空洞と起伏を通る断面の拡大図である。
【0014】
これらの図において、方向X、Y、Zは、それぞれ自動車の縦、横、垂直方向を表わし、縦方向は、自動車の前から後へ向かう方向である。フードの様々な部品が、自動車に装着されたときのフードの位置に対応する向きで示されている。
【0015】
図1は、フードの外側部分を形成する外板2と、内張3から形成された、自動車のフード1を示す。内張3は、周知の方法で、外板2の端部4の周りの外板の内面へ取り付けられる。従来技術と同様に、固定、調整用の填め物(図示しない)が内張と外板の間に配置される。
【0016】
内張3は、フードと同一の寸法を有する、薄い、概ね平らなシートの形状をなす。内張は、その概ね全面に、フードの縦方向Xに概ね平行に伸びる、複数の細長い凹部5を有する。
【0017】
各凹部5は、2つの平らな縦方向の側壁6、7と、1つの平らな底壁8から形成される。従って、内張の断面は、図2に示すような、一種の方形関数に類似の形状をなす。凹部5は、フードの縦方向Xに概ね平行に伸びる、細長い浮き彫り9を形成する面によって分離される。この例においては、浮き彫り9の面は、概ね平らで、内張の端部4と概ね同じ面にある(図2)。
【0018】
この例においては、内張は金属板の型打ち成型によって形成される。しかしながら、内張を、その材料に適した他の技術によって製作してもよい。
【0019】
以下の記述においては、凹部5に関する幾何学的な特長について述べる。これらの特徴は、浮き彫り9にも相補的に適用される(図3)。
【0020】
各凹部5について、以下のように定義する(図3):
−α、β;それぞれ、底壁8と一方の縦方向の側壁6との間の角度と、底壁8と他方の縦方向の側壁6との間の角度、
−L;凹部の長さに直交する横方向の底壁8の幅、
−P;凹部の垂直方向の深さ。
【0021】
角度αおよびβは、内張に対するに凹部の位置応じて、また凹部の所望の剛性に応じて、同一であるときと同一でないときがある。
【0022】
同様に、α’、β’は、浮き彫り9の面と隣接する凹部の側壁との間の角度を示す。少なくとも1つの浮き彫り9についてのこれらの角度(α’、β’)は、少なくとも1つの凹部の角度(α、β)と等しいか、あるいはこれらの角度と異なる。更に、L’は、浮き彫り9の面の幅を示す。
【0023】
各凹部について、角度α、βおよびL、Pの値は、フードの対応する領域の所望の剛性、より正確には、フードの所望のHIC値と所望の降下量に対して適応化される。
【0024】
各凹部の寸法と形状は、衝撃時のHIC値に適合し、フードと内張との少なくとも一方の衝撃によってもたらされる垂直方向Zの降下量を最小化するように決定されることが望ましい。
【0025】
このため、凹部のα、βおよびL、Pの値が異なる内張を作成し、組み立てられたフードを、衝撃時のフードの降下速度と、衝撃によってもたらされるフード(および内張との少なくとも一方)の降下距離を適当なセンサによって測定するためにテストする。このようにして、目標HIC値について、フードと内張との少なくとも一方の、フードの様々な箇所における降下量を最小化するために、α、βおよびL、Pの最適値が求められる。
【0026】
例えば、フードの側方領域においては、2000以下のHIC値が望ましく、一方、フードの中央領域においては、1000以下のHIC値が望ましい。各領域において、選定されたHIC値についての、フードと内張との少なくとも一方の最小降下量に相当するα、βおよびL、Pの値が、テストと計算によって決定される。
【0027】
すなわち、凹部の剛性を増加させるためには、角度α、βを90°に近づけることと、幅Lを減少させることと、深さPを増加させることとの、少なくとも一方が目標となる。反対に、凹部の剛性を減少させるためには、角度α、βを90°よりも大きくすることと、幅Lを増加させることと、深さPを減少させることとの、少なくとも一方が目標となる。
【0028】
各凹部の剛性は、内張とフードとの間の接続または接触点、またはフードと車体との間の接続または接触点(フードが直接または、ストッパー、補強部材または受け座等を介して車体に支持される点)の近接によっても変更される。これらの領域においては、フードの剛性を局部的に強化するこれらの接続または接触点が存在するために、剛性の高い凹部の必要性は小さく、したがって、より浅い、またはより開いた凹部が作られる。勿論、凹部の剛性を調整するために、凹部の寸法および開度を、凹部の縦方向に沿って変化させることができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部分が可視側を形成する外板(2)から、一部分が上記外板と端部が互いに組つけられた内張(3)から形成され、上記内張は概ね平行な細長い凹部(5)と浮き彫り(9)とを交互に有し、凹んだ部分が上記外板へ向けられた上記凹部(5)がフードの面の大部分に分布された自動車のフード(1)において、各上記凹部(5)は、それぞれが概ね平らな底壁(8)を介して接続された2つの概ね平らな側壁(6、7)から形成されることを特徴とする、自動車のフード。
【請求項2】
各上記浮き彫り(9)は、両側に隣接する2つの上記凹部(5)の、隣接する上記側壁を接続する、概ね平らな面から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の自動車のフード。
【請求項3】
各上記凹部(5)の、上記底壁と各上記側壁との間の角度(α、β)及び寸法(L、P)は、上記フードのHIC値が、衝撃のタイプに対して規格化された値に合致し、上記衝撃のタイプにおける上記フードと上記内張との少なくとも一方の降下量が最小であるように決められることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車のフード。
【請求項4】
各上記凹部(5)の上記底壁と各上記側壁との間の上記角度(α、β)は、90°以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車のフード。
【請求項5】
少なくとも1つの上記浮き彫りについて、上記浮き彫り(9)の上記面と上記凹部(5)の隣接する上記側壁(6、7)との間の角度(α′、β′)が、少なくとも1つの上記凹部(5)の上記底壁と各上記側壁との間の角度(α、β)と同じであることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のフード。
【請求項6】
少なくとも1つの上記浮き彫りについて、上記浮き彫り(9)の上記面と上記凹部(5)の隣接する上記側壁(6、7)との間の角度(α′、β′)が、少なくとも1つの上記凹部(5)の上記底壁と各上記側壁との間の角度(α、β)と異なることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車のフード。
【請求項7】
上記内張の上記凹部は、その最も長い部分の方向が、上記フードが上記自動車に装着されたときに、上記フードが用いられる上記自動車の縦方向に概ね平行であるように向けられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の自動車のフード。

【公表番号】特表2008−514478(P2008−514478A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532934(P2007−532934)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050614
【国際公開番号】WO2006/032800
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】