製管装置
【課題】 既設管の断面形状が非円形の形状である場合にも、アウターローラやインナーローラの破損等を防止しつつ接合機構部を円滑に周回移動させて、短時間で精度よく管更生作業を行えるようにする。
【解決手段】 製管装置1は、既設管200の内面に沿って周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、帯状部材100の接合部を接合する接合機構部5とを備える。接合機構部5には、互いに逆方向に回転するインナーローラ51とアウターローラ52とが備えられ、アウターローラ52の回転軸は、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回動可能に設けられている。
【解決手段】 製管装置1は、既設管200の内面に沿って周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、帯状部材100の接合部を接合する接合機構部5とを備える。接合機構部5には、互いに逆方向に回転するインナーローラ51とアウターローラ52とが備えられ、アウターローラ52の回転軸は、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回動可能に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水管、下水道管、上水道管、ガス管などの既設管内に、長尺の帯状部材を用いてライニング管を形成することにより前記既設管を更生する製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されている老朽化した管を更生するため、両側縁部に接合部を備える帯状部材を用いて既設管内をライニングする更生工法が行われている。この工法では、帯状部材を既設管内に引込み、製管装置によって螺旋状に巻回するとともに、巻回した帯状部材の接合部同士を接合して管状体を形成する。また、この管状体に対して、引き続き帯状部材を巻回及び接合していくことで、付加的に管状体を形成する。
【0003】
この種の工法においては、例えば特許文献1に開示されているように、製管装置が、剛性を有するガイドフレームと、案内子を介して規制フレームの外周を移動可能な周回フレームとを備えて、多様な断面形状のライニング管を形成することができる。図12に例示するように、製管装置9には、複数個の案内子96が、成形フレーム97と規制フレーム98との間に介装されている。案内子96は、成形フレーム97の軌道を規制フレーム98の外周に沿って規定する。
【0004】
既設管200の更生作業中には、管路内の流体を堰き止めたり迂回させたりする場合がある。その場合、地上の交通に影響があるため、できるだけ短時間で作業を済ませ、精度よくかつ安全に作業することが求められる。しかし、前記従来の製管装置9では、アウターローラ971が既設管の内面の凹凸等に接触した場合、製管作業を中断し、アウターローラ971が円滑に回転するように修理したり交換したりしなければならず、作業時間が長期化してしまうという問題があった。
【0005】
また、帯状部材100を巻回してライニング管を形成するにあたり、既に管状体となった部分と、製管装置9との間で抵抗力を生じやすく、製管装置9が作動しにくくなるおそれがある。このような場合、生じた抵抗力は、図示しないインナーローラとアウターローラ971との回転を妨げるように作用する。そうすると、既に形成されたライニング管よりも、大きい径で帯状部材100が巻回されることになり、製管作業を進めるにつれて除々にライニング管が巻き太る現象を生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、出願人は特許文献2に開示するように、アウターローラが円形断面の既設管の内面に接触せずに円滑に回転することを可能にした製管装置を開発している。この製管装置では、アウターローラが既設管の内面から離れた状態で維持され、既設管内の凹凸等に引っかかる不都合が解消するので、円滑に製管することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−144744号公報
【特許文献2】国際公開第2011/013636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既設管の断面形状が非円形の形状である場合には、製管装置の接合機構部は、既設管のハンチ部又は角部を経由して、ライニング管の外壁下部と既設管の内壁底部とが面接触している部位に進入していく必要がある。しかし、接合機構部の周回軌道が直線からアール形状へ急激に変化するハンチ部等では、接合機構部の駆動状況が変化し、インナーローラと、ともに回転するアウターローラとに作用する負荷が大きく、回転トルクが大きくなり、接合機構部が進入しにくくなる傾向がある。
【0009】
そのため、既設管のハンチ部では、インナーローラ又はアウターローラが引っ掛かったり、接合機構部の周回移動が停止したりしやすくなり、結果として円滑なライニング管の形成が困難となり、製管作業が中断されるという不都合も生じる場合がある。また、インナーローラやアウターローラに過大な負荷がかかって破損したり、変形したりするおそれもある。したがって、既設管の断面形状のハンチ部では、接合機構部の周回移動を停止させて調整作業を行う必要があった。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、既設管の断面形状が非円形の形状である場合にも、アウターローラやインナーローラの破損等を防止しつつ接合機構部を円滑に周回移動させて、製管作業を短時間で精度よく進めることのできる新規な製管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を、螺旋状に巻回し及び接合して管状に形成する製管装置を前提とする。この製管装置に対し、既設管の内面に沿って周回する周回フレームと、前記周回フレームの内周側に配設され、該周回フレームの周回軌道を規定するガイドフレームと、前記周回フレームに取り付けられ、帯状部材の一側縁と周回遅れで隣接した後方の帯状部材の他側縁との双方の接合部を接合する接合機構部とを備えさせ、前記接合機構部に、前記帯状部材を挟み込んで対をなし、互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとを具備させ、前記アウターローラの回転軸を、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設けている。
【0012】
この特定事項により、非円形断面の既設管の製管作業に際し、前記接合機構部が既設管のハンチ部や角部等に差し掛かったとき、前記アウターローラ及びインナーローラに作用する荷重によって、前記アウターローラがインナーローラの回転軸の軸まわりに回動し、過大な負荷を逃がす作用をなす。そのため、当該ハンチ部においても前記接合機構部が円滑に周回移動し、調整作業を要することなく円滑に製管作業を進めることができる。また、前記アウターローラ及びインナーローラの破損や変形を未然に防ぐことができる。
【0013】
前記製管装置のより具体的な構成として次のものが挙げられる。つまり、前記アウターローラを、前記インナーローラの回転軸に対して揺動自在に設けた支持部材を介して前記接合機構部に備えさせ、前記支持部材を、前記アウターローラの回転軸を回動可能に支持させた構成とすることが好ましい。
【0014】
これにより、前記接合機構部にアウターローラが安定的に備えられるとともに、アウターローラ及びインナーローラの回転駆動を妨げることなく、アウターローラをインナーローラの回転軸の軸まわりに回転可能に設けることができる。
【0015】
また、前記構成の製管装置において、前記支持部材には、2本のリンク部材からなる連結リンクを備えさせ、前記連結リンクは、一端を前記接合機構部に枢着し、他端を前記周回フレームに枢着して、連結点を前記支持部材に摺動可能に設けることが好ましい。
【0016】
これにより、前記支持部材の動作が連結リンクにより規制されて、前記接合機構部に対して一定の範囲内で揺動することとなる。したがって、前記アウターローラがインナーローラの回転軸の軸まわりに揺動しても、アウターローラ及びインナーローラの各回転軸が互いにずれることなく、円滑に帯状部材を送り出す作用を維持することができる。
【0017】
また、前記構成の製管装置において、前記インナーローラの回転軸は、一端部を、前記接合機構部に回転自在に支持させ、他端部を、前記接合機構部に固定され当該回転軸と平行に延設された固定フレームに回転自在に支持させることが好ましい。
【0018】
これにより、前記インナーローラの回転軸にかかる荷重を、前記固定フレーム及び接合機構部に分散させ、当該インナーローラを安定的に支持することができる。その結果、前記アウターローラとともに当該インナーローラの破損や変形を防ぐことができ、短時間で円滑に製管作業を進めることが可能となる。
【0019】
また、前記構成の製管装置において、前記接合機構部は、前記周回フレームの複数箇所に設けられてもよい。
【0020】
これにより、製管装置として、帯状部材を送り出す駆動力を増加させることができるので、既設管のハンチ部又は角部の内面にあっても周回フレームを良好に周回させることができ、製管作業の推進力を増大させることが可能となる。この場合、複数の接合機構部のいずれにおいても帯状部材の接合がなされる必要はなく、帯状部材を挟み込んで互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとの作用により、既に接合された帯状部材の接合部にあっては、接合凸部と接合凹部との嵌合状態がより良好で確かなものとされて、精度よく製管作業を進めることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、製管装置における接合機構部のアウターローラの回転軸を、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設け、また前記インナーローラの回転軸を接合機構部及び固定フレームに支持させるので、既設管の断面形状が非円形の形状である場合にも、アウターローラやインナーローラの破損等を防止しつつ、製管作業を精度よく安定的に進めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る製管装置を用いて既設管を更生する状況を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、実施形態に係る製管装置を示す正面図である。
【図3】図3は、前記製管装置におけるガイドフレームの断面図である。
【図4】図4は、前記製管装置における周回フレームのリンク体を示し、図4(a)は正面図、図4(b)は一部破断して示す上面図である。
【図5】図5は、前記製管装置における接合機構部を一部破断して示す側面図である。
【図6】図6は、前記製管装置における接合機構部を示し、該接合機構部が既設管内面の角部に位置するときの様子を示す正面図である。
【図7】図7は、前記接合機構部及び周回フレームを示す背面図である。
【図8】図8は、前記接合機構部を一部破断して示す上面図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る製管装置を示す正面図である。
【図10】図10(a)は帯状部材の一例を示す断面図、図10(b)は帯状部材を接合する様子を示す断面図、図10(c)は接合された帯状部材を示す断面図である。
【図11】図11(a)は、他の形態に係る帯状部材を示す断面図であり、図11(b)は、前記帯状部材を接合する様子を部分拡大して示す斜視図である。
【図12】図12は、従来の製管装置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る製管装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
例示の形態に係る製管装置1は、帯状部材100を保持して既設管200の内面に沿って周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の内側に配設されて周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、周回フレーム2に取り付けられ、帯状部材100の接合部を接合する接合機構部5とを備える。
【0025】
製管装置1を説明するに先立ち、この製管装置1に供給されて、ライニング管10を構成する帯状部材100について説明する。
【0026】
−帯状部材−
図10(a)〜図10(c)は、帯状部材100の一例を示し、帯状部材100の接合部同士を接合する様子を示した断面図である。図10(a)に示す帯状部材100は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂系材料を長尺帯状に成形して形成され、可撓性を有する。
【0027】
帯状部材100は、帯板状の基板101の一方の面(ライニング管10の外周面となる面)に複数条のリブ10が立設されている。リブ102は、先端の断面略T字状の部分が基板101とほぼ平行となるように形成されている。帯状部材100は、接合部として、一側縁に接合凸部103を備え、他側縁に接合凹部105を備えている。
【0028】
帯状部材100には、接合凹部105に隣接して、傾斜リブ106が形成されている。また、接合凹部105が設けられた部分は、基板101の他方の面が、基板101の厚み分だけ凹んだ凹部104を備えている。凹部104には、隣接した帯状部材100の基板101が重ね合わされて、接合凹部105に、隣接した帯状部材100の接合凸部103が接合される。
【0029】
また、帯状部材100には、補強材107が装着されている。補強材107は、長手方向に連続した帯板状の鋼板を断面略W字状に折曲形成したものであり、帯状部材100に設けられた複数条のリブ102から選択された、隣接するリブ102間に装着されている。補強材107は、形成されるライニング管10の強度を高める
帯状部材100は、後述する製管装置1により螺旋状に巻き回される。これにより、先行する帯状部材100の一側縁と、周回遅れで後続する帯状部材100の他側縁とが接合される。この場合、図10(b)に示すように、帯状部材100の接合は、螺旋状に巻き回すことによって隣接した帯状部材100の、一方の接合凹部105に、他方の接合凸部103を嵌め込むことによって行われる。また、図10(c)に示すように、帯状部材100の傾斜リブ106は押圧され、隣接する帯状部材100のリブ102の先端部に嵌め込まれて係止する。これにより、帯状部材100同士が相互に接合されてライニング管10が形成される。
【0030】
ライニング管を構成する帯状部材100は、図11(a)及び図11(b)に示すように、コネクタ120を介して接合される帯状部材100Aであってもよい。図11(a)は、帯状部材100Aを示す断面図であり、図11(b)は帯状部材100Aの接合部及びコネクタ120の斜視図である。
【0031】
この帯状部材100Aは、帯状体110と、隣接する帯状体110の側縁部同士を接合するコネクタ120とからなる。帯状体110は、基板111に複数条のリブ112を備え、長尺の帯板状に成形された部材である。帯状部材100Aの両側縁部には、凹形状の接合部113が、長手方向に沿って連続的に設けられている。接合部113は、巻回により帯状体110と帯状体110とが隣接すると、2つの接合部113、113は突き合わされて凸形状となる。
【0032】
コネクタ110は、一対の接合凸部121、121を備える。一対の接合凸部121は、121は、長手方向に沿って連続的に形成され、突き合わされた帯状体110の接合部113、113の凸形状に対応して形成されている。
【0033】
帯状部材100Aは、製管過程で帯状体110、110が互いに隣接し、その両側縁部の接合部113、113にまたがってコネクタ120が嵌め込まれ、相互に接合される。
【0034】
−製管装置−
次に、実施形態に係る製管装置1について説明する。
【0035】
図1に示すように、製管装置1は、既設管200内に設置してライニング管10の形成に用いられる。図2に示すように、製管装置1は、既設管200内を周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の内側に配設され、周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、帯状部材100を接合する接合機構部5とを備える。
【0036】
・周回フレーム2
図2及び図4に示すように、周回フレーム2は、一定の幅を有して環状に形成されている。例示の形態の周回フレーム2は、複数個のリンク体21が連結されて環状に形成されている。
【0037】
リンク体21は、図4(a)及び(b)に示すように、一組のリンクフレーム(第1リンクフレーム22と、第2リンクフレーム23)が連結軸24を介して回動自在に連結されている。図4(b)に示すように、第1リンクフレーム22は、対向する一対の第1リンクプレート221と、これらの第1リンクプレート221を対向させた状態に結合する第1連結プレート222とから構成される。第2リンクフレーム23は、対向する一対の第2リンクプレート231と、これらの第2リンクプレート231を対向させた状態に結合する第2連結プレート232とから構成される。
【0038】
リンク体21は、第1リンクフレーム22における一対の第1リンクプレート221の各端部に、第2リンクフレーム23における一対の第2リンクプレート231の各端部を、それぞれ重ね合わせ、連結軸24を介して回動自在に連結して形成されている。リンク体21は、一つのリンク体21における第1連結プレート222に、他のリンク体21における第1連結プレート222を突き合わせて固定される。また、一つのリンク体21における第2連結プレート232に更に他のリンク体21における第2連結プレート232を突き合わせて固定される。
【0039】
第1リンクプレート221における連結軸24側の端部には、回動規制片26が設けられている。第2リンクプレート231における連結軸24側の端部には、回動規制片26に対応する切欠部27が設けられている。切欠部27は、連結軸24の回動中心を中心とする設定半径上の一定範囲にわたって形成されている。これにより、一組のリンクフレーム22、23の相互の回動動作を、回動規制片26と切欠部27とが当接するまでの角度範囲に規制し、リンク体21が内方あるいは外方へ極端に屈曲することを防止している。
【0040】
周回フレーム2の各連結軸24には、案内ローラ28が装着されている。案内ローラ28は、合成樹脂製又は金属製であり、軸受25を介して連結軸24の軸回りに回転自在に支持されている。案内ローラ28は、ライニング管10の製管時に、ライニング管10の内面に接触して回転する。
【0041】
・ガイドフレーム3
図2及び図3に示すように、ガイドフレーム3は、例えば鋼材等の高い剛性を有する材料から形成されている。ガイドフレーム3は、矩形又は馬蹄形等の非円形断面の既設管200の形状に合わせて、既設管200の断面形状と略相似形の外形状に形成されている。図2に示す形態では、ガイドフレーム3は、略矩形断面の既設管200に対応して、略矩形状の外形を有する。ガイドフレーム3は、周方向にいくつかの部分に分解することが可能であり、既設管200内で略矩形状に組み立てられる。
【0042】
ガイドフレーム3は、周回フレーム2の内周側に配設される。ガイドフレーム3は、周回フレーム2の幅寸法に比べ、細い幅で形成されている。図3に示すように、ガイドフレーム3は、周回フレーム2に対向するよう外方へ向けて開口する溝31を有する。
【0043】
溝31には、ローラステー4の基軸の両端に回転自在に取り付けられたローラ42が嵌入される。このガイドフレーム3の溝31の内側は、ローラステー4の走行路となる。溝31の開口縁には、ローラ42の抜け止めを図る突出部32が形成されている。
【0044】
ローラステー4は、周回フレーム2をガイドフレーム3の外周に沿うように案内し、周回フレーム2の周回軌道を規定する。かかるローラステー4は、周回フレーム2に複数個が固定されている。各ローラステー4は、ガイドフレーム3と周回フレーム2との間にそれぞれ介装されている。
【0045】
前述の周回フレーム2は、複数個のリンク体21が連結されることによって環状に形成されたものであり、各リンク体21には、案内ローラ28が回転自在に設けられている。周回フレーム2は、ローラステー4の連結板41の他端が固定されていることによって、ローラステー4を介してガイドフレーム3に取り付けられている。したがって、周回フレーム2は、その周回軌道が、ガイドフレーム3によって略矩形に規制される。
【0046】
・接合機構部5
図5〜図8に示すように、接合機構部5は、周回フレーム2に取り付けられている。接合機構部5は、インナーローラ51とアウターローラ52とが組となったピンチローラ部を主体に構成されている。
【0047】
接合機構部5は、図5及び図6に示すように、ギヤボックス53に、インナーローラ51及びアウターローラ52との同期回転を図る歯車機構54、インナーローラ51並びにアウターローラ52の回転駆動源としての油圧モータ55、及びアウターローラ52を支持する支持部材6を備えている。
【0048】
インナーローラ51は円筒形状を有し、その軸心方向の長さが帯状部材100の幅寸法に対し、少なくとも2倍以上の長さとなるように設定されている。インナーローラ51は、帯状部材100の内面(リブ102の立設されていない面)に接触して回転する。
【0049】
例示の形態では、インナーローラ51は、その回転軸の両端部が支持されている。すなわち、図8に示すように、インナーローラ51の回転軸は、一端部が、接合機構部5のギヤボックス53に、軸受を介して回転自在に支持されている。また、他端部は、インナーローラ51の回転軸と平行に延設された固定フレーム29に対し、軸受を介して回転自在に支持されている。
【0050】
固定フレーム29は、一端が接合機構部5のギヤボックス53に接合されて、片持ち状に支持されている。また、固定フレーム29は、角形鋼管等により形成され、十分な強度を有するとともに、第1及び第2リンクフレーム22、23と平行に延設されている。固定フレーム29の他端は、第1及び第2リンクフレーム22、23と同様に、インナーローラ51の回転軸を回転自在に支持している。例示の形態では、ギヤボックス53の重心部に固定フレーム29が安定的に取り付けられている。
【0051】
ギヤボックス53の前面部には、油圧モータ55が設けられている。油圧モータ55は、図1に示したように、油圧ユニット93から圧油ホース931を介して供給される圧油によって駆動する。油圧ユニット93は、発電機95から供給される電力に寄って駆動している。油圧ユニット93から伸びる圧油ホース931は、回転継手を介して油圧モータ55に接続されている。これにより、周回フレーム2の周回移動に影響することなく、圧油を供給することができる。
【0052】
油圧モータ55を駆動することによって、ギヤボックス53内の歯車機構54が回転する。すなわち、油圧モータ55を駆動すると、その出力軸と、インナーローラ51の回転軸と、アウターローラ52の回転軸とにそれぞれ固定されて互いに噛み合った複数の歯車を有する歯車機構54を介して、インナーローラ51及びアウターローラ52が互いに逆方向に回転する。
【0053】
アウターローラ52は、円柱状の軸部523周りに、複数の円盤状の第1ローラ521と、第2ローラ522とが、所定の間隔を開けて設けられた形状を有する。製管時において、第1ローラ521は、帯状部材100における補強材107が装着されていないリブ102間に挿入される。一方、第2ローラ522は、補強材107の装着されたリブ102間に挿入される。なお、第2ローラ522には、その外周面に沿って、帯状部材100の補強材107の凸部に嵌り合う凹溝が設けられている。
【0054】
アウターローラ52は、帯状部材100の各リブ102の先端部を軸部523の外周面に接触させた状態で回転する。アウターローラ52の外周面にはローレット加工が施されており、これによってアウターローラ52は、帯状部材100に対して滑ることなく回転できる。
【0055】
歯車機構54が駆動されると、インナーローラ51及びアウターローラ52は、帯状部材100を挟み込んで回転し、その反作用でガイドフレーム3に沿って接合機構部5及び周回フレーム2が既設管200の内周に沿って周回移動する。製管装置1に供給された帯状部材100は、インナーローラ51及びアウターローラ52の間に挟み込まれることによって送り出される。インナーローラ51の回転軸及びアウターローラ52の回転軸は、帯状部材100を螺旋状に供給しようとするリード角に対して軸線方向が直交するように配置されている。
【0056】
例示の形態において、アウターローラ52はその回転軸が、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回動可能に設けられている。図5及び図6に示すように、アウターローラ52は、インナーローラ51の回転軸に対し揺動自在に設けられた支持部材6を介して接合機構部5に備えられている。
【0057】
図5に示すように、支持部材6は、インナーローラ51の回転軸に対して回動可能とされた第1支持部61と、この第1支持部61に結合されて一体的に動作し、アウターローラ52の回転軸を回動可能に支持する第2支持部66とを備える。
【0058】
第1支持部61は、ギヤボックス53の前面側に配置された前面板62、背面側に配置された背面板63、及び上面側に架設された上面板64との門型フレームを有する。前面板62の下端はインナーローラ51の回転軸に対して回転可能に取り付けられている。例示の形態では、第1支持部61の前面板62は、ギヤボックス53の前面にて、インナーローラ51の回転軸にすべり軸受651を介して回転自在に取り付けられた連結部65を備えている。背面板63は、インナーローラ51の回転軸を挿通させる開口631を有する。これにより、第1支持部61は、接合機構部5のギヤボックス53の前面及び背面の双方に跨るように配設されている。
【0059】
第2支持部66は、ギヤボックス53の最前面に設けられ、第1支持部61の前面板62に取付レール663を介して結合されている。この第2支持部66は、下端部にアウターローラ52の回転軸を、軸受を介して回転自在に支持するとともに、中間部に開口部661を備えて連結部65と干渉させないように形成されている。さらに、第2支持部66は支持アーム662を備え、連結部65を回避するように湾曲して形成され、アウターローラ52の回転軸を軸方向に沿って一体的に支持している。
【0060】
これにより、支持部材6は、インナーローラ51の回転軸に対して揺動自在に設けられ、その結果、アウターローラ52の回転軸を、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回転可能に支持している。図6に示すように、支持部材6は、アウターローラ52に作用する応力を受けて、ギヤボックス53の外側で振り子のように揺動するものとなる。
【0061】
かかる第1支持部61の上面板64と、第2支持部66の上部との間には、スプリング71を有する衝撃吸収部材7が設けられている。この衝撃吸収部材7は、既設管200の内面に凹凸等が存在していても、インナーローラ51とアウターローラ52の相互間隔が維持されるように作用する。
【0062】
また、支持部材6は、2本のリンク部材81、82からなる連結リンク8を備えている。図7に示すように、連結リンク8は、ギヤボックス53の背面側に配設されている。連結リンク8はリンク部材81の一端が、接合機構部5のギヤボックス53の背面板に枢着されている。他方のリンク部材82の一端は、周回フレーム2のリンク体21に枢着されている。リンク部材81、82は、他端が連結点83で相互に結合されている。
【0063】
第1支持部61の背面板63には、一組の板状材からなるガイド632が、インナーローラ51の回転軸と直交する方向に設けられている。連結リンク8の連結点83は、第1支持部61の背面板63のガイド632の内側に、スライダ831を介して摺動可能に取り付けられている。これにより、連結リンク8の連結点83の摺動域が規定されている。連結点83は、ガイド632に沿って、インナーローラ51の回転軸に直交する方向に摺動する。
【0064】
したがって、リンク体21に結合されたリンク部材82の一端は、1自由度の連鎖により一定の範囲を回転するものとなる。また、連結リンク8の連結点83の摺動に伴って、支持部材6の揺動角度が一定の範囲に規制される。
【0065】
以上のような構成の製管装置1によれば、既設管200の断面形状が非円形の形状である場合に、インナーローラ51及びアウターローラ52に作用する荷重に対する十分な耐力を備えさせることができ、かつ、アウターローラ52をインナーローラ51に対して一定の範囲で揺動する振り子様に支持することが可能となる。これにより、接合機構部5を円滑に駆動させて、周回フレーム2を周回移動させることが可能となる。よって、ライニング管10を精度よく形成することができる。
【0066】
なお、製管装置1は、図9に示すように、接合機構部5の周回方向の前後に、複数の回転支持体20を設けた構成であってもよい。すなわち、車輪等の回転支持体20が周回フレーム2に対して取り付けられている。これらの回転支持体20は、製管時において、接合機構部5の周回移動に伴って、既設管200の内周面を周回するものであり、この際、周回フレーム2を既設管200の内面から離間させるとともに、接合機構部5における特にアウターローラ52を既設管200の内面から離間させて支持する。また、接合機構部5は、周回フレーム2の複数箇所に設けられていてもよく、これにより帯状部材100を送り出す駆動力を増加させることができ、既設管200のハンチ部又は角部の内面にあっても良好な周回が可能となる。この場合、複数箇所の接合機構部5の全てにおいて帯状部材100の接合を行うのではなく、帯状部材100を挟み込んで互いに逆方向に回転するインナーローラ51とアウターローラ52とによって、既に接合された帯状部材100の接合凸部103と接合凹部105との嵌合状態をより確かなものとする作用をなす。
【0067】
また、本実施形態においては、接合機構部5の駆動源として油圧モータ55を採用しているが、これに限られるものではなく、例えば、電動モータや水圧モータなどを用いても良い。また、衝撃吸収部材7は、インナーローラ51とアウターローラ52の相互間隔が維持される場合には必ずしも設けられる必要はなく、また、かかる相互間隔を維持し得る手段であればどのような構成であってもよい。
【0068】
−ライニング管の施工方法−
次に、上述の製管装置1を用いて既設管200を更生する施工手順について説明する。
【0069】
既設管200には、所定スパンでマンホール91、92が設けられている。図1では、施工対象領域(更生領域)の上流側のマンホールをマンホール91、下流側のマンホールをマンホール92として示している。既設管200の更生工法では、例えば、これらのマンホール91、92を利用して、既設管200内にライニング管10を形成する。ライニング管10は、上流側マンホール91から下流側マンホール92に向けて製管される。
【0070】
図1に示すように、更生対象の既設管200内には、上流側端部に製管装置1及び油圧ユニット93を搬入し設置する。上流側マンホール91の地上には、帯状部材100(もしくは帯状部材100A)を巻き重ねた回転台付きドラム94を設置する。下流側マンホール92の地上には、発電機95を設置する。
【0071】
製管装置1は、矩形断面の既設管200内に、上流側マンホール91を介して搬入される。製管装置1の周回フレーム2及びガイドフレーム3は、分解可能かつ組み立て可能であることから、上流側マンホール91内へ容易に搬入することができ、搬入後、組み立てられる。接合機構部5は、周回フレーム2に後付け可能であり、組み立てられた周回フレーム2に取り付けられる。組み立てられた製管装置1では、周回フレーム2がローラステー4を介してガイドフレーム3の拘束を受け、ガイドフレーム3の回りに矩形状に配置される。
【0072】
このような準備作業が完了すると、地上のドラム94から帯状部材100を既設管200内へ引き込む。そして、帯状部材100を、製管装置1の接合機構部5のインナーローラ51とアウターローラ52との間に挿通させる。
【0073】
次いで、帯状部材100を案内ローラ28の外側へ送り出す。また、送り出した帯状部材100を既設管200の内周面との間に挟み込んだ状態で、製管装置1を軸心回りに回転させ、帯状部材100を周回フレーム2の周囲に2〜3周分、巻回する。これにより、製管開始用のライニング管10を形成する。
【0074】
続いて、製管装置1の接合機構部5を駆動し、インナーローラ51及びアウターローラ52を回転させる。インナーローラ51及びアウターローラ52は、帯状部材100を挟み込んで送り出す。また、接合機構部5は相対的に帯状部材100に沿って、その送り出し方向とは逆方向に周回移動(公転)する。周回フレーム2は、ローラステー4を介してガイドフレーム3の形状に沿って矩形状に規制されつつ周回移動する。
【0075】
接合機構部5では、帯状部材100がその接合凸部103と接合凹部105とを嵌合させながら、相互に接合されていく。つまり、先行する帯状部材100の接合凹部105に、周回遅れで後続する帯状部材100の接合凸部103が嵌入する。また、先行する帯状部材100の凹部104に、後続の帯状部材100の基板101の側縁部が重なり合う。帯状部材100の傾斜リブ106は、後続の帯状部材100のリブ102に係止する。これによりライニング管10を付加形成する。
【0076】
ここで、周回フレーム2に対し接合機構部5が複数個設けられている場合には、前記のとおり、帯状部材100を送り出す駆動力を増加させることができる。したがって、製管過程における製管作業を一層確実に進めることができ、製管装置1の推進力も増大させることが可能となり、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0077】
かかる製管過程において、接合機構部5が周回して既設管200のハンチ部又は角部の内面に到達すると、周回軌道が直線方向から曲線部へと変化するので、インナーローラ51に作用するトルクが増加する。そのため、インナーローラ51の周回移動に僅かな遅れが生じる。これに対し、インナーローラ51の周回軌道の外側を周回するアウターローラ52は、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回転自在に支持されていることから、インナーローラ51の周回移動の速度に左右されず、インナーローラ51との相互間隔を維持しつつ軸まわりに回転して、増加したトルクを逃がすように作動しつつ周回移動する。
【0078】
このように、インナーローラ51が既設管200のハンチ部又は角部を通過する間、図6に示すように、支持部材6は一定の角度範囲内で揺動し、アウターローラ52に過大な負荷が作用するのを回避させつつアウターローラ52を回転自在に支持する。これにより、アウターローラ52の破損や変形が回避される。また、インナーローラ51も、回転軸の両端が固定フレーム29及びギヤボックス53にそれぞれ支持されているので、ハンチ部等の内面で作用する荷重に対しても、十分な耐力を有し、破損や変形を回避することができる。したがって、接合機構部5の円滑な周回移動が維持されて、安定的に製管作業を進めることができる。
【0079】
製管作業が円滑に進めば、既設管200内において人的作業を行う機会を減らすことができる。作業者は、専ら地上において円滑に進む製管作業をモニター等で監視するだけ良くなり、製管作業時の安全性も向上させることができる。
【0080】
ライニング管10が下流側マンホール92に到達すると、製管装置1の駆動を停止する。そして、製管装置1を解体し、分解した状態で下流側マンホール92から搬出する。ライニング管10と既設管200との間隙には、硬化性モルタル等の裏込め材を注入し、硬化させることでこれらが一体化し、既設管200が更生される。
【0081】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、老朽化した下水道管、上水道管、農業用水管、ガス管などの既設管を、帯状部材を用いて更生するための製管装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 製管装置
2 周回フレーム
21 リンク体
28 案内ローラ
29 固定フレーム
3 ガイドフレーム
4 ローラステー
5 接合機構部
51 インナーローラ
52 アウターローラ
53 ギヤボックス
54 歯車機構
55 油圧モータ
6 支持部材
61 第1支持部
65 連結部
66 第2支持部
7 衝撃吸収部材
8 連結リンク
10 ライニング管
100 帯状部材
102 リブ
103 接合凸部
105 接合凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水管、下水道管、上水道管、ガス管などの既設管内に、長尺の帯状部材を用いてライニング管を形成することにより前記既設管を更生する製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されている老朽化した管を更生するため、両側縁部に接合部を備える帯状部材を用いて既設管内をライニングする更生工法が行われている。この工法では、帯状部材を既設管内に引込み、製管装置によって螺旋状に巻回するとともに、巻回した帯状部材の接合部同士を接合して管状体を形成する。また、この管状体に対して、引き続き帯状部材を巻回及び接合していくことで、付加的に管状体を形成する。
【0003】
この種の工法においては、例えば特許文献1に開示されているように、製管装置が、剛性を有するガイドフレームと、案内子を介して規制フレームの外周を移動可能な周回フレームとを備えて、多様な断面形状のライニング管を形成することができる。図12に例示するように、製管装置9には、複数個の案内子96が、成形フレーム97と規制フレーム98との間に介装されている。案内子96は、成形フレーム97の軌道を規制フレーム98の外周に沿って規定する。
【0004】
既設管200の更生作業中には、管路内の流体を堰き止めたり迂回させたりする場合がある。その場合、地上の交通に影響があるため、できるだけ短時間で作業を済ませ、精度よくかつ安全に作業することが求められる。しかし、前記従来の製管装置9では、アウターローラ971が既設管の内面の凹凸等に接触した場合、製管作業を中断し、アウターローラ971が円滑に回転するように修理したり交換したりしなければならず、作業時間が長期化してしまうという問題があった。
【0005】
また、帯状部材100を巻回してライニング管を形成するにあたり、既に管状体となった部分と、製管装置9との間で抵抗力を生じやすく、製管装置9が作動しにくくなるおそれがある。このような場合、生じた抵抗力は、図示しないインナーローラとアウターローラ971との回転を妨げるように作用する。そうすると、既に形成されたライニング管よりも、大きい径で帯状部材100が巻回されることになり、製管作業を進めるにつれて除々にライニング管が巻き太る現象を生じるおそれがあった。
【0006】
そこで、出願人は特許文献2に開示するように、アウターローラが円形断面の既設管の内面に接触せずに円滑に回転することを可能にした製管装置を開発している。この製管装置では、アウターローラが既設管の内面から離れた状態で維持され、既設管内の凹凸等に引っかかる不都合が解消するので、円滑に製管することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−144744号公報
【特許文献2】国際公開第2011/013636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既設管の断面形状が非円形の形状である場合には、製管装置の接合機構部は、既設管のハンチ部又は角部を経由して、ライニング管の外壁下部と既設管の内壁底部とが面接触している部位に進入していく必要がある。しかし、接合機構部の周回軌道が直線からアール形状へ急激に変化するハンチ部等では、接合機構部の駆動状況が変化し、インナーローラと、ともに回転するアウターローラとに作用する負荷が大きく、回転トルクが大きくなり、接合機構部が進入しにくくなる傾向がある。
【0009】
そのため、既設管のハンチ部では、インナーローラ又はアウターローラが引っ掛かったり、接合機構部の周回移動が停止したりしやすくなり、結果として円滑なライニング管の形成が困難となり、製管作業が中断されるという不都合も生じる場合がある。また、インナーローラやアウターローラに過大な負荷がかかって破損したり、変形したりするおそれもある。したがって、既設管の断面形状のハンチ部では、接合機構部の周回移動を停止させて調整作業を行う必要があった。
【0010】
そこで本発明は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、既設管の断面形状が非円形の形状である場合にも、アウターローラやインナーローラの破損等を防止しつつ接合機構部を円滑に周回移動させて、製管作業を短時間で精度よく進めることのできる新規な製管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を、螺旋状に巻回し及び接合して管状に形成する製管装置を前提とする。この製管装置に対し、既設管の内面に沿って周回する周回フレームと、前記周回フレームの内周側に配設され、該周回フレームの周回軌道を規定するガイドフレームと、前記周回フレームに取り付けられ、帯状部材の一側縁と周回遅れで隣接した後方の帯状部材の他側縁との双方の接合部を接合する接合機構部とを備えさせ、前記接合機構部に、前記帯状部材を挟み込んで対をなし、互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとを具備させ、前記アウターローラの回転軸を、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設けている。
【0012】
この特定事項により、非円形断面の既設管の製管作業に際し、前記接合機構部が既設管のハンチ部や角部等に差し掛かったとき、前記アウターローラ及びインナーローラに作用する荷重によって、前記アウターローラがインナーローラの回転軸の軸まわりに回動し、過大な負荷を逃がす作用をなす。そのため、当該ハンチ部においても前記接合機構部が円滑に周回移動し、調整作業を要することなく円滑に製管作業を進めることができる。また、前記アウターローラ及びインナーローラの破損や変形を未然に防ぐことができる。
【0013】
前記製管装置のより具体的な構成として次のものが挙げられる。つまり、前記アウターローラを、前記インナーローラの回転軸に対して揺動自在に設けた支持部材を介して前記接合機構部に備えさせ、前記支持部材を、前記アウターローラの回転軸を回動可能に支持させた構成とすることが好ましい。
【0014】
これにより、前記接合機構部にアウターローラが安定的に備えられるとともに、アウターローラ及びインナーローラの回転駆動を妨げることなく、アウターローラをインナーローラの回転軸の軸まわりに回転可能に設けることができる。
【0015】
また、前記構成の製管装置において、前記支持部材には、2本のリンク部材からなる連結リンクを備えさせ、前記連結リンクは、一端を前記接合機構部に枢着し、他端を前記周回フレームに枢着して、連結点を前記支持部材に摺動可能に設けることが好ましい。
【0016】
これにより、前記支持部材の動作が連結リンクにより規制されて、前記接合機構部に対して一定の範囲内で揺動することとなる。したがって、前記アウターローラがインナーローラの回転軸の軸まわりに揺動しても、アウターローラ及びインナーローラの各回転軸が互いにずれることなく、円滑に帯状部材を送り出す作用を維持することができる。
【0017】
また、前記構成の製管装置において、前記インナーローラの回転軸は、一端部を、前記接合機構部に回転自在に支持させ、他端部を、前記接合機構部に固定され当該回転軸と平行に延設された固定フレームに回転自在に支持させることが好ましい。
【0018】
これにより、前記インナーローラの回転軸にかかる荷重を、前記固定フレーム及び接合機構部に分散させ、当該インナーローラを安定的に支持することができる。その結果、前記アウターローラとともに当該インナーローラの破損や変形を防ぐことができ、短時間で円滑に製管作業を進めることが可能となる。
【0019】
また、前記構成の製管装置において、前記接合機構部は、前記周回フレームの複数箇所に設けられてもよい。
【0020】
これにより、製管装置として、帯状部材を送り出す駆動力を増加させることができるので、既設管のハンチ部又は角部の内面にあっても周回フレームを良好に周回させることができ、製管作業の推進力を増大させることが可能となる。この場合、複数の接合機構部のいずれにおいても帯状部材の接合がなされる必要はなく、帯状部材を挟み込んで互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとの作用により、既に接合された帯状部材の接合部にあっては、接合凸部と接合凹部との嵌合状態がより良好で確かなものとされて、精度よく製管作業を進めることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、製管装置における接合機構部のアウターローラの回転軸を、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設け、また前記インナーローラの回転軸を接合機構部及び固定フレームに支持させるので、既設管の断面形状が非円形の形状である場合にも、アウターローラやインナーローラの破損等を防止しつつ、製管作業を精度よく安定的に進めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る製管装置を用いて既設管を更生する状況を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、実施形態に係る製管装置を示す正面図である。
【図3】図3は、前記製管装置におけるガイドフレームの断面図である。
【図4】図4は、前記製管装置における周回フレームのリンク体を示し、図4(a)は正面図、図4(b)は一部破断して示す上面図である。
【図5】図5は、前記製管装置における接合機構部を一部破断して示す側面図である。
【図6】図6は、前記製管装置における接合機構部を示し、該接合機構部が既設管内面の角部に位置するときの様子を示す正面図である。
【図7】図7は、前記接合機構部及び周回フレームを示す背面図である。
【図8】図8は、前記接合機構部を一部破断して示す上面図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る製管装置を示す正面図である。
【図10】図10(a)は帯状部材の一例を示す断面図、図10(b)は帯状部材を接合する様子を示す断面図、図10(c)は接合された帯状部材を示す断面図である。
【図11】図11(a)は、他の形態に係る帯状部材を示す断面図であり、図11(b)は、前記帯状部材を接合する様子を部分拡大して示す斜視図である。
【図12】図12は、従来の製管装置の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る製管装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
例示の形態に係る製管装置1は、帯状部材100を保持して既設管200の内面に沿って周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の内側に配設されて周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、周回フレーム2に取り付けられ、帯状部材100の接合部を接合する接合機構部5とを備える。
【0025】
製管装置1を説明するに先立ち、この製管装置1に供給されて、ライニング管10を構成する帯状部材100について説明する。
【0026】
−帯状部材−
図10(a)〜図10(c)は、帯状部材100の一例を示し、帯状部材100の接合部同士を接合する様子を示した断面図である。図10(a)に示す帯状部材100は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂系材料を長尺帯状に成形して形成され、可撓性を有する。
【0027】
帯状部材100は、帯板状の基板101の一方の面(ライニング管10の外周面となる面)に複数条のリブ10が立設されている。リブ102は、先端の断面略T字状の部分が基板101とほぼ平行となるように形成されている。帯状部材100は、接合部として、一側縁に接合凸部103を備え、他側縁に接合凹部105を備えている。
【0028】
帯状部材100には、接合凹部105に隣接して、傾斜リブ106が形成されている。また、接合凹部105が設けられた部分は、基板101の他方の面が、基板101の厚み分だけ凹んだ凹部104を備えている。凹部104には、隣接した帯状部材100の基板101が重ね合わされて、接合凹部105に、隣接した帯状部材100の接合凸部103が接合される。
【0029】
また、帯状部材100には、補強材107が装着されている。補強材107は、長手方向に連続した帯板状の鋼板を断面略W字状に折曲形成したものであり、帯状部材100に設けられた複数条のリブ102から選択された、隣接するリブ102間に装着されている。補強材107は、形成されるライニング管10の強度を高める
帯状部材100は、後述する製管装置1により螺旋状に巻き回される。これにより、先行する帯状部材100の一側縁と、周回遅れで後続する帯状部材100の他側縁とが接合される。この場合、図10(b)に示すように、帯状部材100の接合は、螺旋状に巻き回すことによって隣接した帯状部材100の、一方の接合凹部105に、他方の接合凸部103を嵌め込むことによって行われる。また、図10(c)に示すように、帯状部材100の傾斜リブ106は押圧され、隣接する帯状部材100のリブ102の先端部に嵌め込まれて係止する。これにより、帯状部材100同士が相互に接合されてライニング管10が形成される。
【0030】
ライニング管を構成する帯状部材100は、図11(a)及び図11(b)に示すように、コネクタ120を介して接合される帯状部材100Aであってもよい。図11(a)は、帯状部材100Aを示す断面図であり、図11(b)は帯状部材100Aの接合部及びコネクタ120の斜視図である。
【0031】
この帯状部材100Aは、帯状体110と、隣接する帯状体110の側縁部同士を接合するコネクタ120とからなる。帯状体110は、基板111に複数条のリブ112を備え、長尺の帯板状に成形された部材である。帯状部材100Aの両側縁部には、凹形状の接合部113が、長手方向に沿って連続的に設けられている。接合部113は、巻回により帯状体110と帯状体110とが隣接すると、2つの接合部113、113は突き合わされて凸形状となる。
【0032】
コネクタ110は、一対の接合凸部121、121を備える。一対の接合凸部121は、121は、長手方向に沿って連続的に形成され、突き合わされた帯状体110の接合部113、113の凸形状に対応して形成されている。
【0033】
帯状部材100Aは、製管過程で帯状体110、110が互いに隣接し、その両側縁部の接合部113、113にまたがってコネクタ120が嵌め込まれ、相互に接合される。
【0034】
−製管装置−
次に、実施形態に係る製管装置1について説明する。
【0035】
図1に示すように、製管装置1は、既設管200内に設置してライニング管10の形成に用いられる。図2に示すように、製管装置1は、既設管200内を周回する周回フレーム2と、周回フレーム2の内側に配設され、周回フレーム2の周回軌道を規定するガイドフレーム3と、帯状部材100を接合する接合機構部5とを備える。
【0036】
・周回フレーム2
図2及び図4に示すように、周回フレーム2は、一定の幅を有して環状に形成されている。例示の形態の周回フレーム2は、複数個のリンク体21が連結されて環状に形成されている。
【0037】
リンク体21は、図4(a)及び(b)に示すように、一組のリンクフレーム(第1リンクフレーム22と、第2リンクフレーム23)が連結軸24を介して回動自在に連結されている。図4(b)に示すように、第1リンクフレーム22は、対向する一対の第1リンクプレート221と、これらの第1リンクプレート221を対向させた状態に結合する第1連結プレート222とから構成される。第2リンクフレーム23は、対向する一対の第2リンクプレート231と、これらの第2リンクプレート231を対向させた状態に結合する第2連結プレート232とから構成される。
【0038】
リンク体21は、第1リンクフレーム22における一対の第1リンクプレート221の各端部に、第2リンクフレーム23における一対の第2リンクプレート231の各端部を、それぞれ重ね合わせ、連結軸24を介して回動自在に連結して形成されている。リンク体21は、一つのリンク体21における第1連結プレート222に、他のリンク体21における第1連結プレート222を突き合わせて固定される。また、一つのリンク体21における第2連結プレート232に更に他のリンク体21における第2連結プレート232を突き合わせて固定される。
【0039】
第1リンクプレート221における連結軸24側の端部には、回動規制片26が設けられている。第2リンクプレート231における連結軸24側の端部には、回動規制片26に対応する切欠部27が設けられている。切欠部27は、連結軸24の回動中心を中心とする設定半径上の一定範囲にわたって形成されている。これにより、一組のリンクフレーム22、23の相互の回動動作を、回動規制片26と切欠部27とが当接するまでの角度範囲に規制し、リンク体21が内方あるいは外方へ極端に屈曲することを防止している。
【0040】
周回フレーム2の各連結軸24には、案内ローラ28が装着されている。案内ローラ28は、合成樹脂製又は金属製であり、軸受25を介して連結軸24の軸回りに回転自在に支持されている。案内ローラ28は、ライニング管10の製管時に、ライニング管10の内面に接触して回転する。
【0041】
・ガイドフレーム3
図2及び図3に示すように、ガイドフレーム3は、例えば鋼材等の高い剛性を有する材料から形成されている。ガイドフレーム3は、矩形又は馬蹄形等の非円形断面の既設管200の形状に合わせて、既設管200の断面形状と略相似形の外形状に形成されている。図2に示す形態では、ガイドフレーム3は、略矩形断面の既設管200に対応して、略矩形状の外形を有する。ガイドフレーム3は、周方向にいくつかの部分に分解することが可能であり、既設管200内で略矩形状に組み立てられる。
【0042】
ガイドフレーム3は、周回フレーム2の内周側に配設される。ガイドフレーム3は、周回フレーム2の幅寸法に比べ、細い幅で形成されている。図3に示すように、ガイドフレーム3は、周回フレーム2に対向するよう外方へ向けて開口する溝31を有する。
【0043】
溝31には、ローラステー4の基軸の両端に回転自在に取り付けられたローラ42が嵌入される。このガイドフレーム3の溝31の内側は、ローラステー4の走行路となる。溝31の開口縁には、ローラ42の抜け止めを図る突出部32が形成されている。
【0044】
ローラステー4は、周回フレーム2をガイドフレーム3の外周に沿うように案内し、周回フレーム2の周回軌道を規定する。かかるローラステー4は、周回フレーム2に複数個が固定されている。各ローラステー4は、ガイドフレーム3と周回フレーム2との間にそれぞれ介装されている。
【0045】
前述の周回フレーム2は、複数個のリンク体21が連結されることによって環状に形成されたものであり、各リンク体21には、案内ローラ28が回転自在に設けられている。周回フレーム2は、ローラステー4の連結板41の他端が固定されていることによって、ローラステー4を介してガイドフレーム3に取り付けられている。したがって、周回フレーム2は、その周回軌道が、ガイドフレーム3によって略矩形に規制される。
【0046】
・接合機構部5
図5〜図8に示すように、接合機構部5は、周回フレーム2に取り付けられている。接合機構部5は、インナーローラ51とアウターローラ52とが組となったピンチローラ部を主体に構成されている。
【0047】
接合機構部5は、図5及び図6に示すように、ギヤボックス53に、インナーローラ51及びアウターローラ52との同期回転を図る歯車機構54、インナーローラ51並びにアウターローラ52の回転駆動源としての油圧モータ55、及びアウターローラ52を支持する支持部材6を備えている。
【0048】
インナーローラ51は円筒形状を有し、その軸心方向の長さが帯状部材100の幅寸法に対し、少なくとも2倍以上の長さとなるように設定されている。インナーローラ51は、帯状部材100の内面(リブ102の立設されていない面)に接触して回転する。
【0049】
例示の形態では、インナーローラ51は、その回転軸の両端部が支持されている。すなわち、図8に示すように、インナーローラ51の回転軸は、一端部が、接合機構部5のギヤボックス53に、軸受を介して回転自在に支持されている。また、他端部は、インナーローラ51の回転軸と平行に延設された固定フレーム29に対し、軸受を介して回転自在に支持されている。
【0050】
固定フレーム29は、一端が接合機構部5のギヤボックス53に接合されて、片持ち状に支持されている。また、固定フレーム29は、角形鋼管等により形成され、十分な強度を有するとともに、第1及び第2リンクフレーム22、23と平行に延設されている。固定フレーム29の他端は、第1及び第2リンクフレーム22、23と同様に、インナーローラ51の回転軸を回転自在に支持している。例示の形態では、ギヤボックス53の重心部に固定フレーム29が安定的に取り付けられている。
【0051】
ギヤボックス53の前面部には、油圧モータ55が設けられている。油圧モータ55は、図1に示したように、油圧ユニット93から圧油ホース931を介して供給される圧油によって駆動する。油圧ユニット93は、発電機95から供給される電力に寄って駆動している。油圧ユニット93から伸びる圧油ホース931は、回転継手を介して油圧モータ55に接続されている。これにより、周回フレーム2の周回移動に影響することなく、圧油を供給することができる。
【0052】
油圧モータ55を駆動することによって、ギヤボックス53内の歯車機構54が回転する。すなわち、油圧モータ55を駆動すると、その出力軸と、インナーローラ51の回転軸と、アウターローラ52の回転軸とにそれぞれ固定されて互いに噛み合った複数の歯車を有する歯車機構54を介して、インナーローラ51及びアウターローラ52が互いに逆方向に回転する。
【0053】
アウターローラ52は、円柱状の軸部523周りに、複数の円盤状の第1ローラ521と、第2ローラ522とが、所定の間隔を開けて設けられた形状を有する。製管時において、第1ローラ521は、帯状部材100における補強材107が装着されていないリブ102間に挿入される。一方、第2ローラ522は、補強材107の装着されたリブ102間に挿入される。なお、第2ローラ522には、その外周面に沿って、帯状部材100の補強材107の凸部に嵌り合う凹溝が設けられている。
【0054】
アウターローラ52は、帯状部材100の各リブ102の先端部を軸部523の外周面に接触させた状態で回転する。アウターローラ52の外周面にはローレット加工が施されており、これによってアウターローラ52は、帯状部材100に対して滑ることなく回転できる。
【0055】
歯車機構54が駆動されると、インナーローラ51及びアウターローラ52は、帯状部材100を挟み込んで回転し、その反作用でガイドフレーム3に沿って接合機構部5及び周回フレーム2が既設管200の内周に沿って周回移動する。製管装置1に供給された帯状部材100は、インナーローラ51及びアウターローラ52の間に挟み込まれることによって送り出される。インナーローラ51の回転軸及びアウターローラ52の回転軸は、帯状部材100を螺旋状に供給しようとするリード角に対して軸線方向が直交するように配置されている。
【0056】
例示の形態において、アウターローラ52はその回転軸が、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回動可能に設けられている。図5及び図6に示すように、アウターローラ52は、インナーローラ51の回転軸に対し揺動自在に設けられた支持部材6を介して接合機構部5に備えられている。
【0057】
図5に示すように、支持部材6は、インナーローラ51の回転軸に対して回動可能とされた第1支持部61と、この第1支持部61に結合されて一体的に動作し、アウターローラ52の回転軸を回動可能に支持する第2支持部66とを備える。
【0058】
第1支持部61は、ギヤボックス53の前面側に配置された前面板62、背面側に配置された背面板63、及び上面側に架設された上面板64との門型フレームを有する。前面板62の下端はインナーローラ51の回転軸に対して回転可能に取り付けられている。例示の形態では、第1支持部61の前面板62は、ギヤボックス53の前面にて、インナーローラ51の回転軸にすべり軸受651を介して回転自在に取り付けられた連結部65を備えている。背面板63は、インナーローラ51の回転軸を挿通させる開口631を有する。これにより、第1支持部61は、接合機構部5のギヤボックス53の前面及び背面の双方に跨るように配設されている。
【0059】
第2支持部66は、ギヤボックス53の最前面に設けられ、第1支持部61の前面板62に取付レール663を介して結合されている。この第2支持部66は、下端部にアウターローラ52の回転軸を、軸受を介して回転自在に支持するとともに、中間部に開口部661を備えて連結部65と干渉させないように形成されている。さらに、第2支持部66は支持アーム662を備え、連結部65を回避するように湾曲して形成され、アウターローラ52の回転軸を軸方向に沿って一体的に支持している。
【0060】
これにより、支持部材6は、インナーローラ51の回転軸に対して揺動自在に設けられ、その結果、アウターローラ52の回転軸を、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回転可能に支持している。図6に示すように、支持部材6は、アウターローラ52に作用する応力を受けて、ギヤボックス53の外側で振り子のように揺動するものとなる。
【0061】
かかる第1支持部61の上面板64と、第2支持部66の上部との間には、スプリング71を有する衝撃吸収部材7が設けられている。この衝撃吸収部材7は、既設管200の内面に凹凸等が存在していても、インナーローラ51とアウターローラ52の相互間隔が維持されるように作用する。
【0062】
また、支持部材6は、2本のリンク部材81、82からなる連結リンク8を備えている。図7に示すように、連結リンク8は、ギヤボックス53の背面側に配設されている。連結リンク8はリンク部材81の一端が、接合機構部5のギヤボックス53の背面板に枢着されている。他方のリンク部材82の一端は、周回フレーム2のリンク体21に枢着されている。リンク部材81、82は、他端が連結点83で相互に結合されている。
【0063】
第1支持部61の背面板63には、一組の板状材からなるガイド632が、インナーローラ51の回転軸と直交する方向に設けられている。連結リンク8の連結点83は、第1支持部61の背面板63のガイド632の内側に、スライダ831を介して摺動可能に取り付けられている。これにより、連結リンク8の連結点83の摺動域が規定されている。連結点83は、ガイド632に沿って、インナーローラ51の回転軸に直交する方向に摺動する。
【0064】
したがって、リンク体21に結合されたリンク部材82の一端は、1自由度の連鎖により一定の範囲を回転するものとなる。また、連結リンク8の連結点83の摺動に伴って、支持部材6の揺動角度が一定の範囲に規制される。
【0065】
以上のような構成の製管装置1によれば、既設管200の断面形状が非円形の形状である場合に、インナーローラ51及びアウターローラ52に作用する荷重に対する十分な耐力を備えさせることができ、かつ、アウターローラ52をインナーローラ51に対して一定の範囲で揺動する振り子様に支持することが可能となる。これにより、接合機構部5を円滑に駆動させて、周回フレーム2を周回移動させることが可能となる。よって、ライニング管10を精度よく形成することができる。
【0066】
なお、製管装置1は、図9に示すように、接合機構部5の周回方向の前後に、複数の回転支持体20を設けた構成であってもよい。すなわち、車輪等の回転支持体20が周回フレーム2に対して取り付けられている。これらの回転支持体20は、製管時において、接合機構部5の周回移動に伴って、既設管200の内周面を周回するものであり、この際、周回フレーム2を既設管200の内面から離間させるとともに、接合機構部5における特にアウターローラ52を既設管200の内面から離間させて支持する。また、接合機構部5は、周回フレーム2の複数箇所に設けられていてもよく、これにより帯状部材100を送り出す駆動力を増加させることができ、既設管200のハンチ部又は角部の内面にあっても良好な周回が可能となる。この場合、複数箇所の接合機構部5の全てにおいて帯状部材100の接合を行うのではなく、帯状部材100を挟み込んで互いに逆方向に回転するインナーローラ51とアウターローラ52とによって、既に接合された帯状部材100の接合凸部103と接合凹部105との嵌合状態をより確かなものとする作用をなす。
【0067】
また、本実施形態においては、接合機構部5の駆動源として油圧モータ55を採用しているが、これに限られるものではなく、例えば、電動モータや水圧モータなどを用いても良い。また、衝撃吸収部材7は、インナーローラ51とアウターローラ52の相互間隔が維持される場合には必ずしも設けられる必要はなく、また、かかる相互間隔を維持し得る手段であればどのような構成であってもよい。
【0068】
−ライニング管の施工方法−
次に、上述の製管装置1を用いて既設管200を更生する施工手順について説明する。
【0069】
既設管200には、所定スパンでマンホール91、92が設けられている。図1では、施工対象領域(更生領域)の上流側のマンホールをマンホール91、下流側のマンホールをマンホール92として示している。既設管200の更生工法では、例えば、これらのマンホール91、92を利用して、既設管200内にライニング管10を形成する。ライニング管10は、上流側マンホール91から下流側マンホール92に向けて製管される。
【0070】
図1に示すように、更生対象の既設管200内には、上流側端部に製管装置1及び油圧ユニット93を搬入し設置する。上流側マンホール91の地上には、帯状部材100(もしくは帯状部材100A)を巻き重ねた回転台付きドラム94を設置する。下流側マンホール92の地上には、発電機95を設置する。
【0071】
製管装置1は、矩形断面の既設管200内に、上流側マンホール91を介して搬入される。製管装置1の周回フレーム2及びガイドフレーム3は、分解可能かつ組み立て可能であることから、上流側マンホール91内へ容易に搬入することができ、搬入後、組み立てられる。接合機構部5は、周回フレーム2に後付け可能であり、組み立てられた周回フレーム2に取り付けられる。組み立てられた製管装置1では、周回フレーム2がローラステー4を介してガイドフレーム3の拘束を受け、ガイドフレーム3の回りに矩形状に配置される。
【0072】
このような準備作業が完了すると、地上のドラム94から帯状部材100を既設管200内へ引き込む。そして、帯状部材100を、製管装置1の接合機構部5のインナーローラ51とアウターローラ52との間に挿通させる。
【0073】
次いで、帯状部材100を案内ローラ28の外側へ送り出す。また、送り出した帯状部材100を既設管200の内周面との間に挟み込んだ状態で、製管装置1を軸心回りに回転させ、帯状部材100を周回フレーム2の周囲に2〜3周分、巻回する。これにより、製管開始用のライニング管10を形成する。
【0074】
続いて、製管装置1の接合機構部5を駆動し、インナーローラ51及びアウターローラ52を回転させる。インナーローラ51及びアウターローラ52は、帯状部材100を挟み込んで送り出す。また、接合機構部5は相対的に帯状部材100に沿って、その送り出し方向とは逆方向に周回移動(公転)する。周回フレーム2は、ローラステー4を介してガイドフレーム3の形状に沿って矩形状に規制されつつ周回移動する。
【0075】
接合機構部5では、帯状部材100がその接合凸部103と接合凹部105とを嵌合させながら、相互に接合されていく。つまり、先行する帯状部材100の接合凹部105に、周回遅れで後続する帯状部材100の接合凸部103が嵌入する。また、先行する帯状部材100の凹部104に、後続の帯状部材100の基板101の側縁部が重なり合う。帯状部材100の傾斜リブ106は、後続の帯状部材100のリブ102に係止する。これによりライニング管10を付加形成する。
【0076】
ここで、周回フレーム2に対し接合機構部5が複数個設けられている場合には、前記のとおり、帯状部材100を送り出す駆動力を増加させることができる。したがって、製管過程における製管作業を一層確実に進めることができ、製管装置1の推進力も増大させることが可能となり、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0077】
かかる製管過程において、接合機構部5が周回して既設管200のハンチ部又は角部の内面に到達すると、周回軌道が直線方向から曲線部へと変化するので、インナーローラ51に作用するトルクが増加する。そのため、インナーローラ51の周回移動に僅かな遅れが生じる。これに対し、インナーローラ51の周回軌道の外側を周回するアウターローラ52は、インナーローラ51の回転軸の軸まわりに回転自在に支持されていることから、インナーローラ51の周回移動の速度に左右されず、インナーローラ51との相互間隔を維持しつつ軸まわりに回転して、増加したトルクを逃がすように作動しつつ周回移動する。
【0078】
このように、インナーローラ51が既設管200のハンチ部又は角部を通過する間、図6に示すように、支持部材6は一定の角度範囲内で揺動し、アウターローラ52に過大な負荷が作用するのを回避させつつアウターローラ52を回転自在に支持する。これにより、アウターローラ52の破損や変形が回避される。また、インナーローラ51も、回転軸の両端が固定フレーム29及びギヤボックス53にそれぞれ支持されているので、ハンチ部等の内面で作用する荷重に対しても、十分な耐力を有し、破損や変形を回避することができる。したがって、接合機構部5の円滑な周回移動が維持されて、安定的に製管作業を進めることができる。
【0079】
製管作業が円滑に進めば、既設管200内において人的作業を行う機会を減らすことができる。作業者は、専ら地上において円滑に進む製管作業をモニター等で監視するだけ良くなり、製管作業時の安全性も向上させることができる。
【0080】
ライニング管10が下流側マンホール92に到達すると、製管装置1の駆動を停止する。そして、製管装置1を解体し、分解した状態で下流側マンホール92から搬出する。ライニング管10と既設管200との間隙には、硬化性モルタル等の裏込め材を注入し、硬化させることでこれらが一体化し、既設管200が更生される。
【0081】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、老朽化した下水道管、上水道管、農業用水管、ガス管などの既設管を、帯状部材を用いて更生するための製管装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 製管装置
2 周回フレーム
21 リンク体
28 案内ローラ
29 固定フレーム
3 ガイドフレーム
4 ローラステー
5 接合機構部
51 インナーローラ
52 アウターローラ
53 ギヤボックス
54 歯車機構
55 油圧モータ
6 支持部材
61 第1支持部
65 連結部
66 第2支持部
7 衝撃吸収部材
8 連結リンク
10 ライニング管
100 帯状部材
102 リブ
103 接合凸部
105 接合凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を、螺旋状に巻回し及び接合して管状に形成する製管装置であって、
既設管の内面に沿って周回する周回フレームと、
前記周回フレームの内周側に配設され、該周回フレームの周回軌道を規定するガイドフレームと、
前記周回フレームに取り付けられ、帯状部材の一側縁と周回遅れで隣接した後方の帯状部材の他側縁との双方の接合部を接合する接合機構部とを備え、
前記接合機構部には、前記帯状部材を挟み込んで対をなし、互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとが備えられ、
前記アウターローラの回転軸は、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設けられていることを特徴とする製管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の製管装置において、
前記アウターローラは、前記インナーローラの回転軸に対し揺動自在に設けられた支持部材を介して前記接合機構部に備えられ、前記支持部材は、前記アウターローラの回転軸を回動可能に支持することを特徴とする製管装置。
【請求項3】
請求項2に記載の製管装置において、
前記支持部材は、2本のリンク部材からなる連結リンクを備え、
前記連結リンクは、一端が前記接合機構部に枢着され、他端が前記周回フレームに枢着され、連結点が前記支持部材に摺動可能に設けられていることを特徴とする製管装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の製管装置において、
前記インナーローラの回転軸は、一端部が、前記接合機構部に回転自在に支持され、他端部が、前記接合機構部に固定され当該回転軸と平行に延設された固定フレームに回転自在に支持されていることを特徴とする製管装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の製管装置において、
前記接合機構部は、前記周回フレームの複数箇所に設けられたことを特徴とする製管装置。
【請求項1】
両側縁部に接合部を備える長尺の帯状部材を、螺旋状に巻回し及び接合して管状に形成する製管装置であって、
既設管の内面に沿って周回する周回フレームと、
前記周回フレームの内周側に配設され、該周回フレームの周回軌道を規定するガイドフレームと、
前記周回フレームに取り付けられ、帯状部材の一側縁と周回遅れで隣接した後方の帯状部材の他側縁との双方の接合部を接合する接合機構部とを備え、
前記接合機構部には、前記帯状部材を挟み込んで対をなし、互いに逆方向に回転するインナーローラとアウターローラとが備えられ、
前記アウターローラの回転軸は、前記インナーローラの回転軸の軸まわりに回動可能に設けられていることを特徴とする製管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の製管装置において、
前記アウターローラは、前記インナーローラの回転軸に対し揺動自在に設けられた支持部材を介して前記接合機構部に備えられ、前記支持部材は、前記アウターローラの回転軸を回動可能に支持することを特徴とする製管装置。
【請求項3】
請求項2に記載の製管装置において、
前記支持部材は、2本のリンク部材からなる連結リンクを備え、
前記連結リンクは、一端が前記接合機構部に枢着され、他端が前記周回フレームに枢着され、連結点が前記支持部材に摺動可能に設けられていることを特徴とする製管装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の製管装置において、
前記インナーローラの回転軸は、一端部が、前記接合機構部に回転自在に支持され、他端部が、前記接合機構部に固定され当該回転軸と平行に延設された固定フレームに回転自在に支持されていることを特徴とする製管装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の製管装置において、
前記接合機構部は、前記周回フレームの複数箇所に設けられたことを特徴とする製管装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−111870(P2013−111870A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260719(P2011−260719)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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