説明

製紙機械用の多層布

【課題】
紙を製造する上で有効な布の提供。
【解決手段】
その布は、第1および第2の層を備える。それらの各層は互いに織り込んだ縦方向(MD)の糸および横方向(CD)の糸をもつ。多数のバインダー対が第1および第2の層を結び付けている。バインダー対は、完全に第1の層の一部となり、第1の層の構成に寄与するように織り込まれる。バインダー対は、第2の層とは統合されておらず、第2の層の構成には寄与していない。繰り返しパターンの中において、一つのバインダー対の2つのバインダー糸の少なくとも一つは、第1の層の糸と一体に織り、しかも、第2の層の2つの不連続な糸の外側表面を走る。その結果、「二重こぶし」の結合構造が形作られる。この結合構造は、布を通るバインダー糸の長さを縮小するので、結果として生じる複合布の完全性を増進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般には製紙技術に関し、具体的には、製紙機械に用いる布に関する。
【発明の背景】
【0002】
製紙プロセスにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、製紙機械の成形部分を移動する成形布上に繊維状のスラリー、つまりセルロース繊維の水性分散液を堆積させることによって形作る。スラリーからは成形布を通して多量の水が排水され、成形布の表面に
セルロースを含む繊維状のウェブを残す。
【0003】
新しく作られたセルロースを含む繊維状のウェブは、成形部分からプレス部分へと移る。プレス部分には、連続したプレスニップがある。セルロースを含む繊維状のウェブは、プレス布、あるいは、しばしばはそのようなプレス布の2つの間に支持されたプレスニップを通って行く。プレスニップにおいて、セルロースを含む繊維状のウェブは、圧縮力を受けて水を搾り出し、さらに、ウェブ中のセルロース繊維を互いに付着し、セルロースを含む繊維状のウェブを紙シートに変える。一枚あるいは複数枚のプレス布が水を受け入れ、理想的には、水を紙シートに戻すことがない。
【0004】
紙シートは、最後に乾燥部分に移る。乾燥部分には、少なくとも一連続の回転乾燥ドラムあるいはシリンダがあり、それらのドラムあるいはシリンダの内部はスチームで加熱される。新しく作られた紙シートは、乾燥布によって連続したドラムのそれぞれの周りを順次曲がりくねるようにして進む。乾燥布は、紙シートをドラム表面に密着させるように保持する。加熱ドラムは、蒸発によって紙シートの水分量を低減し、好ましいレベルにする。
【0005】
成形、プレス、乾燥の布は、すべて製紙機械上で無端ループの形態であり、コンベヤのように働く。さらに、紙の製造は、かなりの速度で進行する連続的なプロセスであることを認識されたい。すなわち、パルプは、成形部分の成形布上に連続的に堆積し、また同時に、新しく作られた紙シートは、乾燥部分から出た後、ロールに連続的に巻き取られる。
【0006】
織り布は、多くのいろいろな形態である。たとえば、無端の織りもあるし、あるいはフラット織りの後で縫合で無端の形態にすることもある。
【0007】
成形布は、紙の製造プロセスの中で重大な役割を演じる。役割の一つは、上に暗示したように、製造されつつある製紙用製作物を成形し、プレス部分に運ぶことである。しかし、成形布を設計するとき、水を除去することおよびシート組織(地合)を抑制することに取り組むことが必要である。すなわち、成形布は、水が通り抜けるように(つまり、排水速度のコントロール)し、しかも同時に繊維や他の固形物が水と一緒に通り抜けないように設計されるべきである。もしも排水が速すぎたり遅すぎたりすれば、シートの特性や製造効率を損なう。排水をコントロールするため、成形布の内部に排水のための空所(通常、空隙体積という)を適正に作らなければならない。
【0008】
現代の成形布は、製造すべき紙の品質に応じて、取り付けるべき製紙機械の要求に適合するように広範囲な多様性をもって製造される。一般に、それらの成形布は、モノフィラメントで織ったベース布を備え、また、それらは、単一の層あるいは多層である。糸は、通常、たとえばポリアミドやポリエステル樹脂のような合成樹脂の一つから押出し成形され、製紙機械の布技術の分野の当業者がこの目的で用いる。
【0009】
さらに、成形布を設計するときには、必要とする繊維支持性と布安定性との間のバランスを考慮しなければならない。布のメッシュが細かければ、好ましい紙表面および繊維支持特性を得ることができる。しかし、そのような設計では、必要とする安定性に欠き、布寿命を短くする。それとは反対に、布のメッシュが粗ければ、安定性と長寿命を得ることができるが、繊維支持性および模様付けに難点がある。設計上の問題を最小限にし、しかもまた、支持性と安定性とを最適化するために、多層の布が開発された。たとえば、2層あるいは3層の布において、形成面についてシートおよび繊維支持を良くするように、また、着用面について安定性、空隙体積および着用耐性を良くするようにする。
【0010】
この分野の当業者であれば、織りによって布を作ること、およびそのような布の織りパターンが、縦糸つまり縦方向(MD)および横糸つまり横方向(CD)の繰り返しであることを理解するであろう。
【0011】
たとえば3層の布のような多層布は、使用するとゆるみが生じ、構成内部に受け入れがたいレベルの摩耗を生じる原因となる。この発明は、そのような欠点を軽減あるいは解消することができる布を提供する。
【発明の開示】
【発明のサマリー】
【0012】
この発明の実際の実施例にしたがって、紙を製造する上で有効な布を提供する。その布は、第1および第2の層を備える。それらの各層は互いに織り込んだ縦方向(MD)の糸および横方向(CD)の糸をもつ。多数のバインダー対が第1および第2の層を結び付けている。バインダー対は、完全に第1の層の一部となり、第1の層の構成に寄与するように織り込まれる。バインダー対は、第2の層とは統合されておらず、第2の層の構成には寄与していない。繰り返しパターンの中において、一つのバインダー対の2つのバインダー糸の少なくとも一つは、第1の層の糸と一体に織り、しかも、第2の層の2つの不連続な糸の外側表面を走る。その結果、「二重こぶし(double knuckle)」の結合構造が形作られる。この結合構造は、布を通るバインダー糸の長さを縮小するので、結果として生じる複合布の完全性を増進する。
【0013】
この発明の特徴および利点(以上に述べたものおよびその他のものを含む)については、次に述べるこの発明の好適な実施例の詳しい説明からより明らかになるであろう。
【好適な実施例の詳細な説明】
【0014】
さて、図1を見ると、バインダー糸の対について断面が示されている。バインダー糸対は、この発明の一実施例である複合布100の一部を形作っている。布100は、製紙プロセスに有利に使用することができるが、その構成には、多数の縦方向(MD)糸(縦糸)および横方向(CD)糸(横糸)を備える。符号1〜20で示すMD糸は2層の配列である。糸1〜10が下層(つまり、機械側あるいは「着用側」の層)に並び、糸11〜20が同様に上層(つまり、紙あるいは形成側の層)に並ぶ。
【0015】
CD糸PAとPBとが一緒になって一対のバインダー糸を構成する。その一対のバインダー糸については、この発明の一実施例によるバインダー対のセグメントパターン30で示す。バインダー糸PA,PBは、上層(L1)の縦糸を下層(L2)の縦糸に結び付け、複合織り布100を構成するように機能する。この実施例では、横方向の経路を走るバインダー糸PAが結び付きを行っている。バインダー糸PAは、上層L1の多数の縦糸を織り込んだ後、下層L2に交差して下層の多数の縦糸を織り込み、続いて上層に戻るように交差し、同じことあるいは同様のパターンを繰り返す。同じく、バインダー糸PB、これはバインダー糸PAに並び近接して走り、またバインダー糸PAに絡み合う糸であるが、この糸も同様に上層と下層の縦糸を結び付け、好ましくは、バインダー糸PAと互いに補足し合う。すなわち、バインダー糸PAとPBとの交差点を適切に配列することによって、上側の層表面を実質的に均一にすることができる。そのような均一な層表面は、紙側の層として用いる上で好ましい。結果として、バインダー糸対30は、上層L1の構造の一部を作り上げる。それによって、そのバインダー対は、上層の構造に寄与し上層に不可欠な部分となり、「本質的な」タイプのバインダー対と考えることができる。しかし、そのバインダー対は、下層の構造に寄与せず下層の構造には非統合的な部分である。なお、他の実施例では、符号PA,PBで示すようなバインダー糸対は、CD方向に代わりMD方向に走り結び付きを行っていることに留意されたい。
【0016】
図1に示す布部分には、2つの「繰り返しパターン」が示されている。第1の繰り返しパターンは、20の縦糸1〜20を結び付ける糸PA,PBの部分から構成される。また、第2の繰り返しパターンは、MD糸1’〜20’を結び付けている。各繰り返しパターンは、10の糸の「コラム(列、colums)」を取り巻くものとして考えることができる。その場合、各コラムごとの2つの層と、2つのCDバインダー糸PA,PBとが一緒になって両層における横糸の「列(row)」の少なくとも一部を構成する。さらに、バインダー糸PA,PBは、互いに近接してCD方向に走る。布100の上から見ると、バインダー糸PA,PBはは一方を他方の上に置くように、すなわち、それらはほぼ垂直に整列するようになっている。ここで、「コラム(列、colums)」および「列(rows)」という用語は、説明の便宜上用いているだけである。そのような用語によって、必然的に直交するMD糸およびCD糸に限定しようとするものではない。たとえば、複数のMD糸を互いに斜めにすることができる。縦糸は、たとえば図に示す糸1〜20のように、断面形状をほぼ均一にし、しかも、上層と下層とを間隔をおいて並べることができる。しかし、上層、下層の縦糸として、断面および形状が異なるもの(たとえば、円筒形、楕円形、非円あるいは矩形断面)を用いることも全く可能である。CD方向に横糸を配列するとき、引き続く列のパターンを異ならせることができるし、N列ごとに異なるパターンを繰り返すように設計することができる。それらについては、後で述べる。CD糸については、縦糸と同じか、あるいは異なる形状および直径にすることができるし、同じ材料あるいは異なる材料で構成することができる。
【0017】
バインダー糸対30の特有の特徴は、DK1あるいはDK2のような「二重こぶし(double knuckle)」構造を構成していることである。すなわち、二重こぶしDK2は、糸PAが一方の側の上糸15および他方の側の上糸11’に向かって横断し、しかもまた、その糸PAが2つの連続しない縦糸7,9の外側表面の周りにループ(こぶし)を形作ることに応じて構成されている。二重こぶしDK1は、同様に糸2と4との間に形作られている。図に示す二重こぶしDK1,DK2では、その周り(たとえば、糸7と9)にループを作る2つの不連続な糸について、その間にバインダー糸が上を通り過ぎない外側(下)表面をもつ糸(たとえば、糸8)を機械側の層にたった一つ存在するように構成している。しかし、この発明の他のバインダー例では、二重こぶし構造の「こぶし」の間に2以上の機械側の層の糸が存在している。
【0018】
とにかく、二重こぶし構造は、布を通るバインダー糸の長さを縮小することによって、結果として生じる複合布の完全性を改善あるいは増進する。すなわち、この構造は、バインダー糸についての「内部浮織り(internal floats)」を短くする。今までの設計に比べて、層間をより良く接触させることができ、糸と糸との接触が少なくなり、結果的に、内部摩耗が小さくなる。もう一つの利点は、バインダーがより対称的になり、したがって、他で問題となるカールをなくすように作用する。二重こぶしは、また、多数のMD糸との接触を増すので、第2の層の所定部分にかみ合う。これは、単一のMD糸に沿って幾分かスライドする自由度をもつ今までのバインダー糸とは異なる。さらに、二重こぶしは、布の縫合強度を改善する。
【0019】
バインダー材料は、しばしば収縮が中位から大きい材料であり、それに対し、裏側のシュート(たとえば、後で述べる層L2の横糸W1)は、標準的には収縮が小さい。その組み合わせにより、今までのものでは、かなりのカールが生じる。材料のバランスを図るため、この発明の実施例では、下の材料としてより収縮しやすいものを用いることができる。しかし、その場合、裏側の外部摩耗耐性が反対の影響を受ける(縦糸/シュートの明らかな違いが小さくなる)。そのロスを埋め合わせするため、より長い(たとえば、10−ひ口(shed))浮織りをもつ代わりの裏側パターンを用いることができる。
【0020】
この発明で用いるバインダーについては、短いか最小の長さの「内部浮織り」をもつようにすることができる。ここで用いる内部浮織りという用語は、複合布の上下層間を横断するときのような、糸が複合布の上下の縦糸間を走る距離を指す。各バインダーに対し、短い内部浮織りを利用することによって、結果として生じる複合布の信頼性を良くすることができる。たとえば、図1の実施例では、バインダー糸PAは、糸11の上、糸12の下、糸13の上、糸14の下および糸15の上を通って、縦糸11〜15に織り込まれている。糸PAは、それから2つの層の距離(CD方向)を走り、上層L1から下層L2へと横切る。2つの層の距離は、各側の短い距離を加えた1本の縦糸に相当する。このように、バインダー糸PAの内部浮織りF1は、上下の縦糸の各側の短い内部糸距離に加えて、糸が一つの上および下のMD糸(たとえば、縦糸6と16との間のように、この実施例では、それらは同じコラムにある)の間を走る距離と見なすことができる。
【0021】
図1の実施例において、バインダー糸PBは、糸PAの内部浮織りF1よりも長い内部浮織り(つまり、浮織りF2)をもつ。すなわち、バインダー糸PBは、縦糸1〜4を織り込んでから、下層L2から上層L1へと横切っている。そのとき、糸PBは、糸4の下から糸5,15間の内部領域へと走り、それから糸6,16の間に入ってから上の糸17に到着する。糸PBは、その後、糸17〜20を織り込む。したがって、糸PBの内部浮織りF2は、各側の短い内部糸距離に加えて、糸5と15の間および糸6と16との間を横切る内部領域のCD距離である。このように、内部浮織りF2は、2つの縦糸(各側の短い内部糸距離を加えた)に相当する長さである。
【0022】
上に述べた内部浮織りの設計を伴うバインダー糸対30は、層L1の上部表面(一般には、紙側の表面)を均一にする上で役立つ。すなわち、糸PAは上層の縦糸11〜15に対し、縦糸11,13および15が交互にバインダー糸PAの下に位置するように織り込まれ、また、糸PBは上層の縦糸17〜20に対し、糸17および19が交互に糸PBの下に位置するように織り込まれる。結果として、交互のあるいは交番的な糸11,13,15,17および19がバインダー対糸の下に位置する。それによって、上部表面について、実質的に連続する平織りタイプの織りパターンを得ることができる。バインダー糸対30は、上層L1表面の不可欠な部分とし、その構造に寄与するものということができる。しかし、バインダー糸対30は、下層L2表面に対しては、不可欠な部分と見なすことができず、その構造には寄与しない。その点、今後の説明から明らかになるであろう。
【0023】
図2は、布100の横(CD)糸W1およびW2の断面を示している。それらの糸は、一緒になって繰り返し織りパターン50の中を走り、縦糸1〜20に織り込まれている。横糸W2は上糸11〜20だけに織り込まれ、また、横糸W1は下糸1〜10だけに織り込まれている。図3は布100の着用側(下)を示す写真であるが、その写真に示すように、横糸W1およびW2は、バインダー糸対30に散在するように走っている。図に示す例では、下層の横糸W1の方が上層の横糸W2よりも厚みがある(図3には、着用側の糸W1だけがはっきりと見える)。
【0024】
図2のセグメントパターン50について、糸W1の経路を見ると、糸W1は、MD糸1の上、MD糸2〜5の下、MD糸6の上、およびMD糸7〜10を走っている。このように、糸W1のパターンは、5つの糸ごとに単一の縦糸(たとえば、糸1および6)の上を通っている(つまり、「輪郭を囲んでいる」)。そのパターンは、糸W1がそれぞれのN番目の縦糸の上を通るように変えることができる。ここで、Nは、5よりも大きいか、小さい値である。また、糸W1は、図に示すような単一の縦糸ではなく、連続する複数の糸の上を通るようにすることができる。糸W1の断面領域、形(たとえば、円形、楕円形、非円、矩形)および材料については、前に述べたCDバインダー糸に用いたものと同じにすることもできるし、異ならせることもできる。
【0025】
図1および2の糸は、2:1のシュート比をもつ複合布に結合することができる。それらの糸パターンを含む典型的な布の全体について、図7を参照しながら後で説明する。
【0026】
図4は、布100の断面を示す写真であり、横糸W1,W2、バインダー糸PA,PBおよび縦糸1〜20の間の代表的な関係を示している。横糸W1は、この実施例において、他の横糸よりも著しく大きい。結果として、下層L2の厚さは、上層L1のそれよりも大きい。それによって、下層L2は、紙製造プロセスの機械側用として耐久性がある。さらに、糸W1およびバインダー糸PA,PBの織り込みによって、下層の縦糸1〜10は、前に図1に示したような水平方向の整列がもはやないことが分かる。他方、上層L1の縦糸11〜20は、適切に整列されており、それによって、ほぼ均一な上層表面が得られている。
【0027】
図5は、布100の一部をCD方向に見た断面であり、下層L2を示している。その図に示すように、たとえば糸1などのようなMD糸は、水平面を連続的に走っていない。むしろ、それらのMD糸は、下層の横糸の織り込みに起因して、地点AおよびBで周期的に沈下している。MD方向に見ると、PAのようなバインダー糸に横糸W1が交互に散在されているように見える。
【0028】
次に、図6を見ると、代わりの横糸の配列/パターン60が示されている。これは、上に述べた図2の横糸配列50の代わりに用いることができる。すなわち、図1および6の糸を結合し、複合布の別の実施例を構成することができる(それらの糸を含む典型的な布の全体について、後で述べる図8に示す)。横糸配列60は、第3の横糸であるW3が加わったことが異なる。第3の横糸W3は、糸W2に近接して走り、上層の縦糸11〜20に織り込まれている。第3の横糸W3は、第2の横糸W2と互いに補足し合うように縦糸11〜20の周りにを走っている。たとえば、第2の横糸W2が糸12の下、糸13の上などを走るのに対し、第3の横糸W3は糸12の上、糸13の下などを走る。横糸W3は、明確にするため破線で示しているが、この糸の構成および寸法を横糸W2と同様、あるいは同一にすることができる。また、理解しやすくするため、図6の断面にバインダー糸対30を示していない。しかし、代表的な配列において、一つの横糸配列60には、一つのバインダー対30と協力して3:1のシュート比を実現するようになっている。すなわち、下層の横糸W1のそれぞれに対し、上層の3つの糸パターンが用いられている。上層の3つのパターンは、糸W2、糸W3およびバインダー対30の糸PA,PBで構成される。この3:1のシュート配列については、図8〜10に関連してさらに後で説明する。
【0029】
次に、図7を見ると、複合布100のより大きな部分についての例が示されている。それらの図は、列ごとの横糸パターン配置例であり、図7は断面図であり、図3は底面図である。図3に6列R1〜R5の横パターンが示され、それらが列R1〜R5について図7の断面図に示されている(図をわかりやすくするため、縦糸の断面にはそれらの実際の符号11,12などに取り替えている)。
【0030】
図7に示す典型的な横糸シークエンスにおいて、たとえばR1のような各列は、4つのCD糸(つまり、W1、W2、PAおよびPB)を含むと考える。列R1にはパターン50に符号W1およびW2を付けた糸のほか、パターン30に符号PA,PBを付けたバインダー糸が含まれるなど。また、図7のシークエンスにおける40の糸のそれぞれに対し、糸番号Y1〜Y40を付けている。この例では、40の糸Y1〜Y40によって、MD方向の繰り返しパターンを作り上げることができる。このように、列R1〜R10はMD方向に連続的に配置し、そして、同じ列R1〜R10の別のセットが同じようにそれに続く。一般に、着用層側の横糸W1は紙側の横糸W2およびバインダー糸PA,PBよりも厚い。それにより、紙側の2つの織りパターン(つまり、糸W2の織りパターンおよびバインダー対30の織りパターン)が、着用側の糸W1のそれぞれに対して用いられる。
【0031】
引き続く列R1,R2その他では、着用側の糸W1はCD方向に置き換わる。したがって、たとえば、列R1のパターン50では糸W1が縦糸1および6の上に輪を作りながら進むが、列R2のパターン50では糸W1が縦糸3および8の上に輪を作りながら進む。以下同様である。このようにして、下層の糸のすべてを織り込む。同様に、バインダー糸パターンは、列から列へと入れ替わる。各繰り返しパターン30〜3010は、図1の2つ組み合わせた繰り返しパターン30の異なる部分としてそれぞれ考えることができる。たとえば、繰り返しパターン30は図1のひ口1〜20間のパターン30と同じである。それに対し、繰り返しパターン30は図1のひ口9,19および9’,19’間のパターン30と同じである。このように、バインダー糸パターンは、列から列へ入れ替わり、上層と下層との結び付きが完成する。
【0032】
さて、図8を見ると、別の横糸シークエンスが示されている。このシークエンスは、横糸配列50を図6の配列60に置き換え、上に述べた3:1のシュート比になっている点が異なる。特に、3つの上層(紙側)横糸パターン(すなわち、横糸W2,W3のパターンおよび対になったバインダー30のパターン)が下層(着用側の層)横糸W1ごとに置き換わっている。そこで、列1〜R10のそれぞれが5つの糸を含むと考えることができ、それによって、50の糸Y1〜Y50がMD方向の各繰り返しパターンに含まれる。
【0033】
図9および10は、実際の布の紙側および着用側についての各写真である。布には符号100aを付けてあり、その布は図8の織りパターンシークエンスを含む。上面図から分かるように、R1などの各列は、糸W2,W3およびパターン30のバインダーPA,PBから作られる3つの近接した上層織りパターンを含む。着用側から見ると、R1などの各列は、一つの下層横糸W1を含むことが分かる。このように、各列Riが一つの織り配列60iと対となったバインダー30iの一つとを含む。
【0034】
この発明のさらに他の変形において、上に述べたバインダー対および横糸パターンのどれかを列あるいは特定の場所に差し入れることによって、二重交差平行(ダブルクロスパラレル、double cross parallel:DCP)型のバインダー対を用いることができる。そのようなDCP型のバインダー対については、発明の名称「二重交差平行バインダー布」米国特許出願番号第10/334,166号が示している。参照によって、その特許出願
の内容をここに組み入れる。DCPバインダー対における2つのバインダーは、繰り返しパターンの内部で層(たとえば、紙側の層)の外側表面の少なくとも一つの共通の(同じ)糸の上を通る。
【0035】
次に示すこの発明の実施例が、DCPバインダー対を含む。特に、次の実施例は、紙製造プロセスに利用することができる3層布のような布に関する。そのような3層布は、第1の(上)層および第2の(下)層を含み、それら第1および第2の層のそれぞれを縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とを織り込んだ織り組織である。第1の層は紙側つまり上側であり、紙製造プロセスのとき、セルロースを含む紙/繊維スラリーをその上に堆積する。また、第2の層は機械側つまり背面側の層である。第1および第2の層は、多数の縫い合わせあるいはバインダー糸を用いることによって、一緒に保持される。そのような縫い合わせ糸が多数のCDおよび/またはMD糸である。たとえば、多数のCD糸の対について、各対の2つの糸を互いに近接させ平行に作用させる。一対のそのようなCD糸は、第1および第2の層のいずれか一方あるいは両方の織りパターンの不可欠な部分となったりならなかったりし、また、2つの層を一緒に結び付ける。
【0036】
図11Aは、バインダー対88の繰り返しパターンの一部を示している。より具体的には、図11Aは、布100’の一部の断面を示し、布100’は第1の(紙側)層L14と第2の(機械側)層L16とを含む。さらに、紙側の層L14には複数のMD糸21〜38、機械側の層L16には複数のMD糸41〜58があり、そして、それらのMD糸を織り込むCD90,92をそれぞれもつバインダー対88が多数ある。そこに示すように、CD糸90は、紙側の層L14のMD糸21,24,28および32の上を通り、しかもまた、MD糸22,26,31,34および38の下を通り、さらに、機械側の層L16のMD糸56の下を通る。CD糸92は、紙側の層L14のMD糸21,32および36の上を通り、MD糸22,24,28,31,34および38の下を通り、さらに、機械側の層L16のMD糸42,44,48,51の上を通り、MD糸46の下を通る。
【0037】
複数のバインダー対88は、図11D(布の紙側を示す)および図11E(布の機械側を示す)に示すように、布100’中に織り込まれている。さらに、多数のCD対66もまた布100’中に織り込まれ、バインダー対88の近接するものの間に配置されている。CD対のそれぞれがCD糸62,64をもち、それらのCD糸は、図11Cに示すように、紙側の層L14および機械側の層L16のMD糸に織り込まれる。さらにまた、それぞれがCD糸72,74を含む多数の対70もまた、たとえば図11Bに示すように、布100’の紙側の層L14および機械側の層L16のMD糸に織り込まれる。
【0038】
したがって、布100’において、バインダー対88の糸90,92のそれぞれが紙側の層L14の外側表面のMD糸21,32の上を通る。そのようなタイプのバインダー対を以下二重交差平行(DCP)型のバインダー対と称する。それゆえ、布100’は、複数のDCP型のバインダー対で一緒に保持されたCDおよびMD糸の2つの織込み層をもつ。そのようなバインダー対のそれぞれの2つの糸は、繰り返しパターンの中で紙側の層L14の外側表面の2つのMD糸の上を通る。
【0039】
次に、図12A〜12Dを参照しながら、他の布について説明する。
【0040】
図12Aは、布200のバインダー対108の一部あるいは繰り返しパターンを示し、布200は第1の(紙側)層114と第2の(機械側)層116とを含む。より具体的には、図12Aは、紙側の層114の複数のMD糸120〜138、機械側の層116の複数のMD糸140〜158、ならびにMD糸に織り込んだCD糸110,112をもつバインダー対108の断面を示す。図12Aに示すように、バインダー対108におけるCD糸110は、紙側の層114のMD糸120,128,132および136の上を通り、しかもまた、MD糸122,126,130,134および138の下を通り、さらに、機械側の層116のMD糸144の下を通る。CD糸112は、紙側の層114のMD糸120,124および128の上を通り、MD糸122,126,130,132,136および138の下を通り、さらに、機械側の層116のMD糸152,156および158の上を通り、MD糸154の下を通る。多数のバインダー対108は、図12C(布の紙側を示す)および図12D(布の機械側を示す)に示すように、布200中に織り込まれている。
【0041】
その上、それぞれがCD糸160,162をもつ多数のバインダー対106もまた、布200のMD糸に織り込まれ、バインダー対108と交互にその中に配列されている。各バインダー対106(支持シュートバインダー(SSB)型ということができる)はCD糸160,162をもち、それらは、図12Bに示すように、紙側の層114および機械側の層116のMD糸に織り込まれる。図12Bに示すように、CD糸160,162は、紙側の層114の外側表面上、1または2以上の同じMD糸の上を通ることがない。さらに、多数のCD糸170もまた布200に織り込まれ、たとえば図12Cに示すように、CD糸のそれぞれがバインダー対106,108のどちらかの側に位置するように配列される。CD糸170は、図11Cに示すCD糸62,64と同様である。
【0042】
したがって、布200において、バインダー対108のそれぞれの糸110,112は、紙側の層114の外側表面のMD糸120,128の上を通る。このように、バインダー対108はDCP型のバインダー対である。それゆえ、布200は、複数のDCP型のバインダー対によって一緒に保持されたCDおよびMD糸の2つの織り込み層を備える。その中で、そのようなバインダー対のそれぞれの2つの糸は、繰り返しパターンの中で紙側114の外側表面の2つのMD糸の上を通る。さらに、布200のバインダー配列は、他と比べて大きな透過性をもたらす。
【0043】
次に、図13A〜13Dを参照しながら、別の布について説明する。
【0044】
図13Aは、バインダー対208の一部あるいは繰り返しパターンを示し、それは第1の(紙側)層214と第2の(機械側)層216とを含む。より具体的には、図13Aは、布300の一部の断面であり、そこには、紙側の層214の複数のMD糸220〜238、機械側の層216の複数のMD糸240〜258、ならびにMD糸に織り込んだCD糸210,212をもつバインダー対208を示す。そこに示すように、CD糸212は、紙側の層214のMD糸220,224,228,232および236の上を通り、しかもまた、MD糸222,226,234および238の下を通り、さらに、機械側の層216のMD糸250の下を通る。CD糸210は、紙側の層214のMD糸228,232の上を通り、MD糸230,234の下を通り、さらに、機械側の層216のMD糸240,244,246,256および258の上を通り、MD糸240の下を通る。多数のバインダー対208は、図13C(布の紙側を示す)および図13D(布の機械側を示す)に示すように、布300中に織り込まれている。
【0045】
その上、多数のバインダー対206が布300に織り込まれ、バインダー対208と交互にその中に配列されている。各バインダー対206(SSB型のバインダー)はCD糸260,262をもち、それらは、図13Bに示すように、紙側の層214および機械側の層216のMD糸に織り込まれる。図13Bに示すように、CD糸260,262は、紙側の層214の外側表面上、1または2以上の同じMD糸の上を通ることがない。
【0046】
さらに、多数のCD糸270もまた布300に織り込まれ、たとえば図13Cに示すように、CD糸のそれぞれがバインダー対208およびCD対206のどちらかの側に位置するように配列される。CD糸270は、図11Cに示すCD糸62,64と同様である。
【0047】
したがって、布300において、バインダー対208の糸210,212のそれぞれは、紙側の層214の外側表面のMD糸228,232の上を通る。このように、バインダー対208はDCP型のバインダー対である。それゆえ、布300は、複数のDCP型のバインダー対およびSSB型のバインダー対によって一緒に保持されたCDおよびMD糸の2つの織り込み層を備える。その中で、各DCP型バインダーの2つの糸は、繰り返しパターンの中で紙側214の外側表面の2つのMD糸の上を通る。さらに、布300のバインダー配列は、上から下への直接的な通路を提供し、他の配列の布に比べて布の内部摩耗耐性を良くすることができる。
【0048】
次に、図14A〜14Dを参照しながら、さらに別の布について説明する。
【0049】
図14Aは、布400のバインダー対308の一部あるいは繰り返しパターンを示し、それは第1の(紙側)層314と第2の(機械側)層316とを含む。より具体的には、図14Aは、紙側の層314の複数のMD糸320〜338、機械側の層316の複数のMD糸340〜358、ならびにMD糸に織り込んだCD糸310,312をもつバインダー対308の断面を示す。そこに示すように、CD糸312は、紙側の層314のMD糸320,324および328の上を通り、しかもまた、MD糸322,326および330の下を通り、さらに、機械側の層316のMD糸354の下を通る。CD糸310は、紙側の層314のMD糸328の上を通り、MD糸330の下を通り、さらに、機械側の層316のMD糸342,344および346の上を通り、MD糸340の下を通る。多数のバインダー対308は、図14C(布の紙側を示す)および図14D(布の機械側を示す)に示すように、布400中に織り込まれている。
【0050】
その上、多数のバインダー対306もまた、布400に織り込まれ、バインダー対308と交互にその中に配列されている。各バインダー対306(SSB型バインダーである)はCD糸360,362をもち、それらは、図14Bに示すように、紙側の層314および機械側の層316のMD糸に織り込まれる。図14Bに示すように、CD糸260,262は、紙側の層314の外側表面上、1または2以上の同じMD糸の上を通ることがない。
【0051】
さらに、多数のCD糸370もまた布400に織り込まれ、たとえば図14Cに示すように、CD糸370のそれぞれがバインダー対306,308のどちらかの側に位置するように配列される。CD糸370は、図11Cに示すCD糸62,64と同様である。
【0052】
したがって、バインダー対308の糸310,312のそれぞれは、紙側の層314の外側表面のMD糸328の上を通る。このように、バインダー対308はDCP型のバインダー対である。
【0053】
それゆえ、布400は、複数のDCP型のバインダー対およびSSB型のバインダー対によって一緒に保持されたCDおよびMD糸の2つの織り込み層を備える。その中で、各DCP型バインダーの2つの糸は、繰り返しパターンの中で紙側314の外側表面のたった一つのMD糸の上を通る。結果として、MDつまり縦方向の糸は盛り上がりがなく、しかも、対称的なバインダー輪郭を得ることができる。さらに、そのような配列により、交差する数を最小にし、模様の高さを減じ、厚さを小さくし、他の配列の布に比べて縫い合わせ性を良くすることができる。
【0054】
上に説明した布において、DCP型バインダー対のCD糸は、変化する上層のMD糸の下を通るので、互いに交差することがない。その代わり、そのようなCD糸は、1または2以上の同じMD糸の上を通るので、互いに隣接する。
【0055】
特定のパターンについて、上に説明したが、この発明はそれに限定されない。たとえば、繰り返しパターンの中にDCP型のバインダー対とSSBバインダー対の組み合わさったもの(たとえば、図15に示す)をバインダー対として用いることができる。より具体的にいうと、図15は、布500の一部の断面を示し、布500には第1(紙側)の層514と第2(機械側)の層516があり、その中に複数のMD糸およびそれぞれがCD糸510,520をもつ多数のバインダー対がある。図15に示すように、CD一510,520はそれぞれMD糸530,532の上を通る。図15のバインダー対は、多数のDCP部分550およびSSB部分540を含む。図16は、バインダー対を用いる布の一つの織りパターンを示す。さらに、上(紙側)の層の織りパターンについては、平織りあるいは他のパターンにすることができる。同様に、下(機械側)について、4,5あるいは6のひ口、あるいは他の配列を用いることができる。
【0056】
図17Aは、この発明によるさらに他のバインダー対630の断面を示し、バインダー対は複合糸600の一部を構成する。バインダー糸610,620は、一緒になってバインダー対630を構成し、そのバインダー対は紙側の層L1と着用(機械)側の層L2とを一緒に結び付ける。バインダー対630は、上に述べたバインダー30の二重こぶし構造とこれもまた上に述べたDCPバインダーとの組み合わせを提供している、ということができる。図に示すバインダー対630のパターンは、CD方向に繰り返す繰り返しパターンである。糸610が、糸2〜4の周りに二重こぶしDKを形作り、その二重こぶしが前に述べた利点、たとえば、布を通るバインダー糸の長さを縮小することによって、結果として生じる複合布の完全性の改善、布の縫合強度の改善などをもたらす。さらに、バインダー糸610,620が共に縦糸11,17の上の位置するので、たとえば、付随する利点をもつDCP型バインダーをバインダー対に与える。
【0057】
バインダー対630は、たとえば図17Bに示すバインダー対30(これは、図1に示すバインダー対と同じである)などの他のバインダーを入れた複合布に実施することができる。たとえば、着用側を示す図3を考慮すると、バインダー対630については、上から下へ示すパターンが50,30,50,30,50,30,50,30,・・・から50,30,50,630,50,30,50,630,・・・に変わるように入れることができる。その代わりに、バインダー対630を単一のバインダータイプの布として用いることができる。
【0058】
図18Aおよび18Bは、この発明による他の布680に用いることができる、バインダー対108と670をそれぞれ示す。このように、バインダー108,670を布680の内部に互いに差し入れるよう、たとえば交互に入れるように利用することができる。バインダー対108は、図12Aに関連して前に述べたものと同じであるため、その説明はここでは繰り返さない。図18Bに示すように、バインダー対670は、糸665と675とを含む。図に示す繰り返しパターンにおいて、糸665は、糸1,2の上を動いた後、縦糸3の下を通り、糸4,5および6の上を動き、その後、図に示すように上層の糸17〜20に織り込まれる。糸675は、糸11〜15に織り込んだ後、糸6,7の上を動き、糸8の下を回り、そして糸9,10の上を動いことにより、繰り返しパターンを完結する。バインダー対108,670については、布680の中で横糸に差し入れるように用いることができる。たとえば、図2に示す横糸、あるいは図6に示す横糸に差し入れることによって、複合布680を形作ることができる。
【0059】
次に、図19を見ると、この発明による他のバインダー対730が断面で示されている。そのバインダー対730は、複合布700の一部を構成する。バインダー糸710,720が一緒になってバインダー対730を構成し、それらは同様に紙側の層l1と着用(機械)側の層l2とを一緒に結び付ける。バインダー対730はまた、上に述べたバインダー30の二重こぶし構造とこれもまた上に述べたDCPバインダーとの組み合わせを提供している、ということができる。図に示すバインダー対730のパターンは、CD方向に繰り返す繰り返しパターンである。糸710が、糸3〜5の周りに二重こぶしDKを形作り、その二重こぶしが前に述べた利点をもたらす。糸720もまた、縦糸8,10の周りに二重こぶしDKを形作る。さらに、バインダー糸710,720が共に縦糸11,17の上の位置するので、たとえば、付随する利点をもつDCP型バインダーをバインダー対に与える。糸720が上の縦糸17から下の縦糸8に向かって鋭く降下していることに留意されたい。それにより、バインダー糸の内部浮織りをさらに小さくすることになる。バインダー対630の場合のように、バインダー対730をたとえば図1(あるいは17B)に示すバインダー対30、あるいは図11〜18に示すもののいずれかなどの他のバインダーを入れた複合布に実施することができる。その代わりに、バインダー対730を単一のバインダータイプの布700として用いることができる。上の場合と同様に、図19のバインダー対を、たとえば図2〜図6に示すもののような、布700の中の縛りのない横糸(図示しない)に差し入れるように用いることができる。
【0060】
さらに、上に述べた実施例のさらなる変形として、布の中の多数のバインダー対について、そのような対の中の2つの糸をすべてのバインダー対に対して同じに並べて(つまり、まっすぐに)配列するように織ることができる。そしてまた、布内部の多数のバインダー対について、そのような対の中の2つの糸を交番的にあるいは反対に並べるように織ることができる。一例として、SSBバインダー対をもつ上に述べた布において、SSBバインダー対をまっすぐに、あるいは逆になるように配列することができる。
【0061】
さらには、この発明の実施例について、紙側の層の外側表面の1または2つのMD糸の上を通るCD糸から構成されるバインダー対をもつものとして説明してきたが、この発明はそれに限定されるわけではない。すなわち、他の配列もまた利用することができる。たとえば、繰り返しパターン内の紙側の層の外側表面の2を越える数(3以上)のMD糸の上を通るCD糸で構成することができる。他には、バインダー対が、繰り返しパターン内の1あるいはそれ以上の同じCD糸の上を通る2つのMD糸を含む例もある。さらに、バインダー糸が、繰り返しパターン内の機械側の層の外側表面の1あるいはそれ以上の同じCD(あるいはMD)糸の上を通る2つのMD糸を含む別の例がある。
【0062】
さらにまた、この発明が製紙プロセスに有用なものとして説明したが、この発明はそれに限定されずに、他の用途にも利用することができる。
【0063】
この発明による布は、モノフィラメントの糸で構成することができる。CD糸は、ポリエステルモノフィラメントで構成することができるし、中には、ポリエステルあるいはポリイミドで構成することができる。CD糸およびMD糸について、1またはそれ以上の数の異なる径をもつ円形断面形状にすることができる。さらに、円形断面形状に加えて、糸の中の1またはそれ以上の数のものについて、たとえば、矩形断面形状、楕円あるいは他の非円形な断面形状など、他の断面形状にすることができる。
【0064】
いわゆる当業者にとって、以上に述べた各実施例は、典型例にすぎないこと、および、この発明の開示内容からいろいろな変形をすることができることは自明である。そのような変形は、特許請求の範囲に定める考え方の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1の布の一部についてのMD方向の断面図であり、この発明によるバインダー対を示している。
【図2】第1の布の別の部分についてのMD方向における断面図であり、横方向(CD)糸を示している。
【図3】第1の布の着用面の写真である。
【図4】第1の布のMD方向における断面の写真である。
【図5】第1の布の一部についてのCD方向の断面図であり、下方の層を示している。
【図6】この発明による第2の布についてのCD糸の配列を示す断面図である。
【図7A】第1の布のCD糸織りパターンの第1部分を模式的に示す断面図解図である。
【図7B】第1の布のCD糸織りパターンの第2部分を模式的に示す断面図解図である。
【図7C】第1の布のCD糸織りパターンの第3部分を模式的に示す断面図解図である。
【図7D】第1の布のCD糸織りパターンの第4部分を模式的に示す断面図解図である。
【図8A】第2の布のCD糸織りパターンの第1部分を模式的に示す断面図解図である。
【図8B】第2の布のCD糸織りパターンの第2部分を模式的に示す断面図解図である。
【図8C】第1の布のCD糸織りパターンの第3部分を模式的に示す断面図解図である。
【図8D】第2の布のCD糸織りパターンの第4部分を模式的に示す断面図解図である。
【図8E】第2の布のCD糸織りパターンの第5部分を模式的に示す断面図解図である。
【図9】第2の布の紙側を写した写真である。
【図10】第2の布の着用面を写した写真である。
【図11A】この発明の他の実施例についての布の断面図解図である。
【図11B】この発明の他の実施例についての布の断面図解図である。
【図11C】この発明の他の実施例についての布の断面図解図である。
【図11D】この発明にしたがって織った布の紙側を示す図である。
【図11E】この発明にしたがって織った布の機械側を示す図である。
【図12A】この発明のさらに他の実施例についての布の断面図解図である。
【図12B】この発明のさらに他の実施例についての布の断面図解図である。
【図12C】この発明にしたがって織った布の紙側を示す図である。
【図12D】この発明にしたがって織った布の機械側を示す図である。
【図13A】この発明の別の実施例についての布の断面図解図である。
【図13B】この発明の別の実施例についての布の断面図解図である。
【図13C】この発明にしたがって織った布の紙側を示す図である。
【図13D】この発明にしたがって織った布の機械側を示す図である。
【図14A】この発明のさらに別の実施例についての布の断面図解図である。
【図14B】この発明のさらに別の実施例についての布の断面図解図である。
【図14C】この発明にしたがって織った布の紙側を示す図である。
【図14D】この発明にしたがって織った布の機械側を示す図である。
【図15】この発明の他の実施例についての布の断面図解図である。
【図16】この発明の実施例についての布パターンを示す図である。
【図17A】この発明によるバインダー対の他の実施例を示している。
【図17B】図17Aのバインダー対を伴う布に利用することができるバインダー対を示している。
【図18A】この発明による布に用いることができるバインダー対を示している。
【図18B】この発明による布に用いることができるバインダー対を示している。
【図19】この発明によるバインダー対のさらに他の実施例を示している。
【符号の説明】
【0066】
100 布
PA,PB バインダー糸
L1 上層
L2 下層
30 バインダー糸対
DK1,DK2 二重こぶし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のa、bおよびcの構成を備え、しかも、dの条件を満足する布。
(a)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第1の層
(b)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第2の層
(c)前記第1の層と前記第2の層とを一緒に結び付けるためのものであり、そこに織り込むことにより、(i)完全に前記第1の層の一部になり、その第1の層の構成に寄与し、しかも、(ii)前記第2の層には統合されず、その第2の層の構成に寄与しない、第1タイプのバインダー糸の複数対(ここで、前記第1タイプのバインダー対のそれぞれが、第1のバインダー糸と第2のバインダー糸とをもつ)
(d)繰り返しパターン中、第1タイプの対の前記第1のバインダー糸が、前記第1の層の糸と一体に織られ、しかも、前記第2の層の2つの不連続な糸の外側表面の上を通る
【請求項2】
製紙プロセスにおける成形、プレス、および乾燥の作用の少なくとも一つに用いることができる、請求項1の布。
【請求項3】
前記第1の層が紙側の層であり、前記第2の層が機械側の層であり、前記第1のバインダー糸が前記機械側の層の2つの不連続な糸の外側表面の上を通る、請求項2の布。
【請求項4】
前記2つの不連続な糸がその間に前記機械側の層の単一の糸をもち、前記第1のバインダー糸がその外側表面の上を通らない、請求項3の布。
【請求項5】
繰り返しパターン中、第1タイプの対の前記第2のバインダー糸が、前記第1のつまりは紙側の層の糸と一体に織られ、しかも、前記第2のつまりは機械側の層の2つの不連続な糸の外側表面の上を通る、請求項3の布。
【請求項6】
前記第1タイプの対の前記第1および第2のバインダー糸が前記第1の層に平織りパターンを形作る、請求項5の布。
【請求項7】
前記第1および第2のバインダー糸が前記CD糸に対し平行になるように配列される、請求項2の布。
【請求項8】
前記第1および第2のバインダー糸が前記MD糸に対し平行になるように配列される、請求項2の布。
【請求項9】
前記MDおよびCD糸の少なくともあるものがモノフィラメント糸である、請求項2の布。
【請求項10】
前記MD糸の少なくともあるものが、ポリアミド糸あるいはポリエステル糸である、請求項2の布。
【請求項11】
前記CD糸の少なくともあるものが、ポリアミド糸あるいはポリエステル糸である、請求項2の布。
【請求項12】
前記MDおよびCD糸の少なくともあるものが、円形断面形状、矩形断面形状および非円形断面形状の中の一つをもつ、請求項2の布。
【請求項13】
第2タイプのバインダー糸の複数対をさらに備え、そのバインダー糸のそれぞれは、前記第1の層と前記第2の層とを一緒に結び付けるために第1のバインダー糸と第2のバインダ糸とをもち、そして、少なくとも一つの第2タイプの対の前記第1および第2のバインダー糸が、前記第1の層および前記第2の層の一方の外側表面上、少なくとも一つの共通の糸の上を通るように前記第1および第2の層に織り込まれる、請求項2の布。
【請求項14】
前記第1の層が紙側の層であり、前記少なくとも一つの第2タイプの対の前記第1のバインダー糸および前記第2のバインダー糸が、繰り返しパターンの中で前記紙側の層の外側表面上、2つの共通の糸の上を通る、請求項13の布。
【請求項15】
前記第1タイプのバインダー糸の対と前記第2タイプのバインダー糸の対とが、互い違いに配列されており、前記第1タイプのバインダー糸のそれぞれ一つの対が前記第2タイプの糸の2つの対の間に位置し、前記第2タイプのバインダー糸のそれぞれ一つの対が前記第1タイプの糸の2つの対の間に位置するようになっている、請求項13の布。
【請求項16】
前記第1および第2タイプのバインダー糸の多数の対のそれぞれが、2つのCD糸の間にそれぞれ位置しており、第1タイプのバインダー糸の一対が2つの各CD糸の間に位置し、その2つの各CD糸の一方が第2タイプのバインダー糸の一対に隣接し、また、その第2タイプのバインダー糸の一対はもう一方のCD糸に隣接し、そのもう一方のCD糸が第1タイプのバインダー糸の他の対に隣接するように位置する、請求項15の布。
【請求項17】
少なくとも一つの第1タイプの対の前記第1および第2のバインダー糸が、繰り返しパターンの中で、前記第1の層および前記第2の層の一方の外側表面上、少なくとも一つの共通の糸の上を通るように前記第1および第2の層に織り込まれる、請求項2の布。
【請求項18】
前記第1の層が紙側の層であり、少なくとも一つの第1タイプの対の前記第1および第2のバインダー糸が、繰り返しパターンの中で、前記紙側の層の外側表面上の2つの共通の糸の上を通る、請求項17の布。
【請求項19】
前記第1タイプのバインダー糸の対が実際上前記第1の層のCD糸であり、その布のシュート比が3:1である(ここで、シュート比は、前記第2の層のCD糸の数に対する、前記CD糸および前記第1の層の前記実際上のCD糸の数の比である)、請求項2の布。
【請求項20】
紙の製造に用いる布であって、それが次のa、bおよびcの構成を備え、しかも、dの条件を満足する布。
(a)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第1の層
(b)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第2の層
(c)前記第1の層と前記第2の層とを一緒に結び付けるためのものであり、そこに織り込むことにより、(i)完全に前記第1の層の一部になり、その第1の層の構成に寄与し、しかも、(ii)前記第2の層には統合されず、その第2の層の構成に寄与しない、第1タイプの複数のバインダー糸
(d)繰り返しパターン中、前記第1のバインダー糸の少なくとも一つが、前記第1の層の糸と一体に織られ、しかも、前記第2の層の2つの不連続な糸の外側表面の上を通る
【請求項21】
前記第1の層が紙側の層であり、前記第2の層が機械側の層であり、繰り返しパターンの中で、前記少なくとも一つのバインダー糸が前記第2のつまり機械側の層の2つの不連続な糸の外側表面の上を通る、請求項20の布。
【請求項22】
前記2つの不連続な糸がその間に前記機械側の層の単一の糸をもち、前記少なくとも一つのバインダー糸がその外側表面の上を通らない、請求項21の布。
【請求項23】
繰り返しパターンの中で、前記第1の層および前記第1の層の一方の外側表面上、少なくとも一つの共通の糸の上を通るように、2つのバインダー糸が前記第1および第2の層に織り込まれる、請求項20の布。
【請求項24】
前記第1の層が紙側の層であり、繰り返しパターンの中で、前記2つのバインダー糸が前記紙側の層の外側表面上、2つの共通の糸の上を通る、請求項23の布。
【請求項25】
紙の製造に用いる布であって、それが次のa、bおよびcの構成を備え、しかも、dおよびeの条件を満足する布。
(a)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第1の層
(b)縦方向(MD)糸と横方向(CD)糸とをそれに織り込んだ第2の層
(c)前記第1の層と前記第2の層とを一緒に結び付けるためのものであり、そこに織り込むことにより、(i)完全に前記第1の層の一部になり、その第1の層の構成に寄与し、しかも、(ii)前記第2の層には統合されず、その第2の層の構成に寄与しない、バインダー糸の複数対(ここで、前記バインダー対のそれぞれが、第1のバインダー糸と第2のバインダー糸とをもつ)
(d)繰り返しパターン中の特定の場所で、対を構成する一方の第1のバインダー糸が、ただ2つの連続する第1の層の糸と2つの連続する第2の層の糸との中間を通る
(e)繰り返しパターン中の特定の場所で、前記対を構成する他方の第2のバインダー糸が、ただ一つの第1の層の糸と一つの第2の層の糸との中間を通る
【請求項26】
一対を構成する前記第1および第2のバインダー糸が互いに交差し、と同時に上下層の糸の中間を通る、請求項25の布。
【請求項27】
前記第1の層が紙側の層であり、前記第2の層が機械側の層である、請求項26の布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【公表番号】特表2006−512513(P2006−512513A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508591(P2005−508591)
【出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/039814
【国際公開番号】WO2004/061210
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(597098947)オルバニー インターナショナル コーポレイション (31)
【Fターム(参考)】