説明

製茶用発酵機

【目的】 本発明は、発酵効率を格段と向上させ、極めて良好な紅茶を製造すること。
【構成】 発酵機本体Aの内部に、葉ざらい4を所定間隔に複数設けた回転軸5が横設され、発酵機本体Aの下側は、葉ざらい4の先端の回転軌跡と一致するように円弧状の円弧底部11が形成されていること。発酵機本体Aの背面側の長手方向全体に亘って、加熱空気が円弧底部11を吹き付けるように構成され、且つ水蒸気が下方に噴出される複数の噴出部81aが設けられた蒸気配管81が設けられていること。発酵機本体A上には、該発酵機本体Aの密閉を適宜開放可能とする開閉蓋3が備えられてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵効率を格段と向上させ、極めて良好な紅茶を製造できる製茶用発酵機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、茶は製茶方法の違いによって緑茶、紅茶、半発酵茶(ウーロン茶)などに分けられており、それぞれの茶種に適した品種を使用している。特に、紅茶の製茶方法のオーソドックス製法としては、生葉が、萎凋、揉捻、玉解き、ふるい分け、発酵、乾燥の工程順に処理されてゆく。紅茶における発酵は、主としてタンニンの酸化によるものであり、萎凋工程からスタートし、揉捻工程で急激に進むものである。この揉捻葉を冷涼で多湿な所(温度20℃〜26℃程度)に静置するのが発酵工程である。この発酵工程は、発酵そのものを促進させるより、紅茶特有の香味、水色などの適切な発現を調節する場としての意義が大きい。
【0003】
また、特許文献1では、発酵方法が開示されている。具体的には、略密閉された筐体内に、複数段のケースが設けられ、該ケースには揉捻工程を終えた原料茶葉が配置され、前記筐体内部に温水もしくは水蒸気を供給することで、筐体内部の温度並びに湿度を制御して、タンニンの含有量が少なくまた酸化酵素の活性を促すことが行われているが、前記ケースは、静置された状態であり、能率的な発酵工程とは言い難かった。つまり、量産ができない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227210
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、玉解きをスムーズにすると共に、発酵が均一にできるようにして、能率的な発酵工程が求められており、このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、これらを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、発酵機本体の内部に、葉ざらいを所定間隔に複数設けた回転軸が横設され、前記発酵機本体の下側は、前記葉ざらい先端の回転軌跡と一致するように円弧状の円弧底部が形成されると共に、前記発酵機本体の背面側の長手方向全体に亘って、加熱空気が前記円弧底部を吹き付けるように構成され、且つ水蒸気が下方に噴出される複数の噴出部が設けられた蒸気配管が設けられ、前記発酵機本体上には、該発酵機本体の密閉を適宜開放可能とする開閉蓋が備えられてなることを特徴とする製茶用発酵機としたことにより、前記課題を解決した。
【0007】
請求項2の発明を、請求項1において、前記回転軸には所定間隔に複数の揉手が設けられると共に、該揉手と前記葉ざらいとが交互に配置されてなることを特徴とする製茶用発酵機としたことにより、前記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記加熱空気が前記円弧底部を吹き付けるように前記発酵機本体の背面側に風導部が設けられてなることを特徴とする製茶用発酵機としたことにより、前記課題を解決した。
【0008】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3において、前記噴出部からの水蒸気は、前記加熱空気と共に前記円弧底部に吹きつけられるように構成されてなることを特徴とする製茶用発酵機としたことにより、前記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4において、前記噴出部からの水蒸気噴出時間を所定時間とすると共に、噴出時間経過後には前記開閉蓋が開放されるように制御されてなることを特徴とする製茶用発酵機としたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明においては、特に、発酵効率を格段と向上させ、良好な紅茶を製造できる。具体的には、従来のように、固定棚上に静置された塊状茶葉に対して発酵作用を促す構成ではなく、回転する葉ざらいにて、玉解きされ、攪拌される茶葉に対して加熱空気及び水蒸気とで発酵作用を促す構成であり、茶葉の発酵が均一化され、各段と能率的な発酵作業ができるとともに、良好な発酵作業ができ、優れた紅茶を製造できる最大の利点がある。請求項2の発明では、複数の揉手とともに、乾燥工程において水分を絞り出す作用を呈し、さらに良好な紅茶を製造できる。
【0010】
また、請求項3の発明では、前記加熱空気が前記円弧底部を吹き付けるように前記発酵機本体の背面側に風導部が設けられているため、特に、効率的な発酵ができる。さらに、請求項4の発明では、水蒸気は、前記加熱空気と共に前記円弧底部に吹きつけられているため、特に、請求項3の発明と同様に効率的な発酵ができる。請求項5の発明では、前記噴出部からの水蒸気噴出時間を所定時間とすると共に、噴出時間経過後には前記開閉蓋が開放されるように制御されているため、発酵工程を自動化できる効果がある。また、請求項2乃至5の発明では、請求項1と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は本発明の一部切除した正面図、(B)は(A)の横断面図である。
【図2】(A)は本発明の一部切除した要部斜視図、(B)は蒸気配管の一部斜視図である。
【図3】(A)及び(B)は本発明の作用を示す要部状態図、(C)は本発明の別の実施形態の固定胴及び風導部の断面図、(D)は葉ざらい箇所の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図3に基づいて説明する。深さの深い樋状とした固定胴1と、該固定胴1の長手方向の両端側の略U字状の端部板2,2と、密閉用の開閉蓋3とで発酵機本体Aとして構成されている。つまり、前記固定胴1と端部板2,2と開閉蓋3とで密閉状態と開放状態とが構成されている。前記固定胴1には、葉ざらい4の先端の回転軌跡と一致するように円弧状の円弧底部11が形成されると共に、該円弧底部11の一部に樋状で長さ略全体に開閉可能な取出扉12を有している。
【0013】
前記固定胴1の背面側の上部には、壁板14が垂下して設けられ、該壁板14と背面部15とで、風導部16が構成されている。該風導部16には、前記発酵機本体Aの外側に設置された熱風送風機7に連結された送風部71からの加熱空気が送風され、さらに前記風導部16箇所の加熱空気が前記円弧底部11を吹き付けるように構成されている。特に、前記風導部16は、前記風導部16の長手方向の全長に亘って設けられている。81は蒸気配管であって、前記発酵機本体Aの外側に設置された水蒸気ボイラ8からの外部配管82を介して前記発酵機本体Aの風導部16箇所内に横設されている。前記蒸気配管81には、所定間隔(例えば、約10cm内外)に噴出部81aが複数設けられている。該噴出部81aは、図2(B)に示すように、ノズルの場合もあるし、或いは、孔形成のみの場合もある。
【0014】
前記葉ざらい4は、複数本(図面では6組)の葉ざらい本体4aと葉ざらい取付部4bとで構成されている。前記葉ざらい4は、前記固定胴1内に横設された回転軸5に、図2(A)に示すように直交して、前記葉ざらい取付部4bを介してボルト・ナットなどにて固定されている。さらに、前記回転軸5の同一位置で、適度な位相差が生ずるようにして揉手6が所定間隔を有して複数取り付けられている。つまり、前記葉ざらい4の回転方向の前部側に位置するように揉手6が設けられている。また、該揉手6は、揉手本体6aと揉手取付部6bとで構成され、板バネなどの弾性体にて、前記揉手本体6aは先端側が外方に弾発するように構成されている。つまり、図1(B)において、揉手本体6aの背面で、前記固定胴1内の前記円弧底部11の内面に蒲鉾状に多数並設された膨出条11a,11a,…の面に押圧するように作用する。
【0015】
前記葉ざらい4及び揉手6は、図2(A)に示すように、前記回転軸5方向に所定間隔を有し、且つ隣接相互で、約180度の位相差が生ずるように設けられている。さらに、前記葉ざらい4は、具体的には、図3(D)に示すように、前記回転軸5の長手方向の軸線をnとし、前記葉ざらい本体4aの左右対称の両側先端相互の線分をmとすると、軸線nと線分mとは並行又は所定の角度となって取り付けられている。
【0016】
また、図3(C)に示したのは、前記固定胴1及び風導部16とは、別の実施形態であって、該風導部16が、前記固定胴1の外側に設けられている。この場合の前記風導部16箇所の加熱空気は、前記円弧底部11の中間部箇所を吹き付ける構成であるが、この場合でも、前記円弧底部11を吹き付けるように構成される概念に包含される。
【0017】
製茶用発酵機としては、多くは前記葉ざらい4と揉手6とで構成されているが(図1及び図2参照)、該前記葉ざらい4のみで構成されることもある(図3参照)。また、図1に示すように、前記発酵機本体Aの長手方向の端部側の端部板2に端部投入口91が設けられている。該端部投入口91には、図示しない揉捻機からの塊状茶葉が移送される移送コンベア92が設けられている。さらに、前記固定胴1の下方に、振動コンベアなどの取出側搬送装置99が配設されている。
【0018】
その発酵作用について説明する。まず、開閉蓋3は閉じておき、揉捻工程を経て、移送コンベア92から流れてくる塊状茶葉に対して、前記発酵機本体A内において、加熱空気(例えば、約80℃乃至約110℃)及び水蒸気が加えられる。具体的には、図3(A)及び(B)が動作直後の状態である。すなわち、図3(A)及びこの直後の図3(B)において、複数の噴出部81aから水蒸気が噴出されつつ、該水蒸気は、加熱空気によって前記円弧底部11を吹きつけるようにされるために、前記葉ざらい4の先端で、掻き上げられた塊状茶葉が、ほぐされつつ(分解されつつ)、攪拌され、そこに水蒸気と加熱空気とでさらに均一な発酵が行われる。このような作業が数十分行われる。このとき、前記水蒸気と加熱空気とで、密閉された発酵機本体A内では、水蒸気は飽和状態となっている。
【0019】
このような作業によって、玉解き(茶葉がばらばら状態)は行われつつ発酵作用が進行し、かなりの湿度(水分)を含んだ状態となっている。そして、今度は、水蒸気の吹きつけを停止すると共に、前記発酵機本体A内の開閉蓋3を開けて、飽和蒸気を放出しつつ、加熱空気にて茶葉の乾燥を進める。このような発酵及び乾燥工程では、従来技術である特許文献1(特開平7−227210)の場合の棚発酵及び棚乾燥と比較して、数倍乃至十数倍の効率にできる最大利点がある。
【符号の説明】
【0020】
A…発酵機本体、1…固定胴、11…円弧底部、16…風導部、3…開閉蓋、
4…葉ざらい、5…回転軸、6…揉手、81…蒸気配管、81a…噴出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵機本体の内部に、葉ざらいを所定間隔に複数設けた回転軸が横設され、前記発酵機本体の下側は、前記葉ざらい先端の回転軌跡と一致するように円弧状の円弧底部が形成されると共に、前記発酵機本体の背面側の長手方向全体に亘って、加熱空気が前記円弧底部を吹き付けるように構成され、且つ水蒸気が下方に噴出される複数の噴出部が設けられた蒸気配管が設けられ、前記発酵機本体上には、該発酵機本体の密閉を適宜開放可能とする開閉蓋が備えられてなることを特徴とする製茶用発酵機。
【請求項2】
請求項1において、前記回転軸には所定間隔に複数の揉手が設けられると共に、該揉手と前記葉ざらいとが交互に配置されてなることを特徴とする製茶用発酵機。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記加熱空気が前記円弧底部を吹き付けるように前記発酵機本体の背面側に風導部が設けられてなることを特徴とする製茶用発酵機。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、前記噴出部からの水蒸気は、前記加熱空気と共に前記円弧底部に吹きつけられるように構成されてなることを特徴とする製茶用発酵機。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4において、前記噴出部からの水蒸気噴出時間を所定時間とすると共に、噴出時間経過後には前記開閉蓋が開放されるように制御されてなることを特徴とする製茶用発酵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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