説明

製鋼スラグ用バインダー

【課題】製鋼スラグは、通常の天然石骨材と比較して多孔質で凹凸の多いキメの表面であるため、アスファルトがスラグ表面に十分に被覆されないという性質がある。また、天然石骨材よりCaO成分が非常に多く、表面電位が−と+(酸性と塩基性)の両性であるため、酸性に効果のあるアミン系界面活性剤では水による剥離を防止できない。そこで、より被覆しやすく、耐水性の高い被覆を形成するバインダー、多孔質スラグ表面に浸透しやすく、均一で厚い被覆を形成することができる製鋼スラグ用バインダーを提供する。
【解決手段】ストレートアスファルト100重量部に対して、改質用ポリマーを5〜15重量部、石油系炭化水素を1〜5重量部、更に界面活性剤を0.1〜0.5重量部混合したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼スラグ用バインダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼スラグとは、製鋼工程で生成するスラグである。粗鋼1tあたり110kg程度の製鋼スラグが生成するといわれている。これは、従来からアスファルトやコンクリートの骨材として使用されているものである。
【0003】
バインダーとは、骨材を固着する接着剤のようなものであり、樹脂モルタルの樹脂、アスファルト混合物のアスファルト等をいう。
製鋼スラグは、通常の天然石骨材と比較して多孔質で凹凸があるため、アスファルトがスラグ表面に十分に被覆されないという性質がある。また、製鋼スラグは天然骨材に含まれるSiO、Alの他に天然石骨材よりCaO成分が非常に多く、表面電位が−と+(酸性と塩基性)の両性であるため、酸性に効果のあるアミン系界面活性剤では水による剥離を防止できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、より被覆しやすく、耐水性の高い被覆を形成するバインダー、多孔質でキメの凹凸の多いスラグ表面に浸透しやすく、均一で厚い被覆を形成することができるバインダーが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上のような現状に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果本発明製鋼スラグ用バインダーを完成したものであり、その特徴とするところは、ストレートアスファルト100重量部に対して、改質用ポリマーを5〜15重量部、石油系炭化水素を1〜5重量部、更に界面活性剤を0.1〜0.5重量部混合したものである点にある。
【0006】
ストレートアスファルトとは、原油の減圧蒸留でえられたそのままのものをいう。
【0007】
改質用ポリマーとは、SBS(スチレン・ブタジエンブロック共重合体)、SBR(スチレン・ブタジエン共重合体)、SIS(スチレン・イソプレン共重合体)等であり、その重合度や分子量は通常アスファルトの改質用に使用されている程度のものでよい。なかでも、SBSが好適であった。
この改質ポリマーの混合量は、ストレートアスファルト100重量部に対して、5〜15重量部である。5以下では効果がなく15以上では粘度が高くなりすぎるためである。
【0008】
石油系炭化水素とは、常温で液体又は半固体で、引火点が200℃以上の炭化水素であり、パラフィン系とナフテン系、アロマ系がある。なかでもパラフィン系またはナフテン系の260℃以上の引火点のものが好ましい。
本発明はこの炭化水素を混合することがポイントであり、従来のバインダーにはないものである。これを加える目的は、改質アスファルトの常温付近の粘弾性性質を損ねることなく、改質アスファルトの高温時の粘性を適度に下げることができるためである。また、ポーラス混合物の耐久性や強度を低下させることなく、多孔質表面に浸透しやすく均一な厚い皮膜を形成できる。
【0009】
この石油系炭化水素の混合量は1〜5重量部である。1重量部以下では、ほとんど効果がなく、5重量部以上では粘度が下がりすぎる。
【0010】
ここでいう界面活性剤は、両性界面活性剤か、又はカチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との混合物かである。両性界面活性剤は、分子内にプラスイオンとマイナスイオンの両方を有するものである。例えば、アミノ酸の塩が代表的なものである。
【0011】
また、両性界面活性剤に代えて、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との混合物でもよい。即ち、1分子内にはマイナスイオンかプラスイオンしかないが、混合物にすると同じように、両性が存在すると考えられるためである。よって、カチオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤とは同じモル数が望ましい。例えば、アミン系界面活性剤と、高級脂肪酸等である。
【0012】
このような界面活性剤を使用するのは、スラグ表面のマイナスとプラスの両方に吸着でき、スラグに耐水性の高い被覆を形成できるためである。これにより剥離が大きく軽減できる。
【0013】
この界面活性剤は0.1〜0.5重量部混合する。0.1以下では効果がなく、0.5以上は骨材表面に必要な量を超え過剰なため逆効果である。
【0014】
次に本発明バインダーの製造方法について説明する。
ストレートアスファルトを180〜190℃に昇温し、ポリマーを投入し、十分に攪拌し均一に混合する。ポリマーが相溶し、熟成(養生)が完成する間際に炭化水素及び界面活性剤を混合し完成である。
【0015】
本発明バインダーの物性について説明する。
本発明と舗装設計施工指針の値と比較する。括弧内が指針の値である。
軟化点(℃):91.0(80以上)
伸度(15℃、cm):75(50以上)
タフネス(25℃、N・m):21(20以上)
針入度(25℃、1/10mm):53(40以上)
薄膜加熱質量変化率(%):0.05(0.6以下)
薄膜加熱針入度残留率(%):77.4(65以上)
引火点(℃):338(260以上)
密度(15℃、g/cm3):1.031
【0016】
本発明バインダーは、製鋼スラグを骨材として混合するのであるが、その用途は、通常のアスファルト舗装路だけでなく、小粒径・高空隙のポーラスアスファルト混合物に最適である。また、高耐久性を要求される路線のポーラスアスファルト混合物にも好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明バインダーには、次のような大きな利点がある。
(1) 本発明バインダーを用いた製鋼スラグを骨材として用いたアスファルト混合物は高温時の耐流動性に優れている。
(2) 同混合物は、広い温度領域での骨材飛散抵抗性に優れている。
(3) 交通車両のねじれ抵抗性に優れている。
(4) 把握力、粘着力に優れている。
(5) 膜厚を確保するための必要な粘度を有する。
(6) 耐水性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下好適な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例
次の成分を使用した。
ストレートアスファルト60/80:100重量部
SBS:6.5重量部
ステアリルベタイン:0.2重量部
パラフィン系炭化水素(引火点約260℃):2重量部
【0020】
ストレートアスファルトを190℃まで昇温し、SBSを投入し十分に攪拌し均一に混合する。ポリマーが相溶し、熟成(養生)が完成する間際にパラフィン系炭化水素及びステアリルベタインを混合した。
【0021】
このバインダーを製鋼スラグを骨材として混合してポーラスアスファルト混合物を作成した。この性状を以下に示す。
骨材サイズ:10mmトップ
空隙率: 23〜25%
動的安定度(回/mm):7000程度
標準カンタブロ損失率:14.3%(試験条件:20℃養生、20℃試験)
水浸カンタブロ損失率:17.6%(水浸条件:60℃、48hr)
水浸カンタブロ増加率:123%(水浸カンタブロ損失率/標準カンタブロ損失率×100)
【0022】
動的安定度の通常の目標値は3000以上であり大きく越えている。また、標準カンタブロ損失率と水浸カンタブロ損失率のそれは20以下であり、これも十分クリアしている。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレートアスファルト100重量部に対して、改質用ポリマーを5〜15重量部、石油系炭化水素を1〜5重量部、更に界面活性剤を0.1〜0.5混合したものであることを特徴とする製鋼スラグ用バインダー。



【公開番号】特開2010−6636(P2010−6636A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167471(P2008−167471)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(502217997)昭和瀝青工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】