複写装置および画像処理方法
【課題】印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置を提供する。
【解決手段】原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、画像データから輝度データを抽出し、抽出した輝度データに基づいて、画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、評価結果に応じて、原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備える。
【解決手段】原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、画像データから輝度データを抽出し、抽出した輝度データに基づいて、画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、評価結果に応じて、原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置に係り、特に、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ライン型のインクジェットヘッドを備えた印刷装置が知られている。ライン型のインクジェットヘッドは、印刷用紙幅に対応したサイズを有し、印刷装置本体に固定されており、ライン方向(主走査方向)に垂直な方向(副走査方向)に搬送される印刷用紙に対してインクを吐出することで画像を形成する。
【0003】
図10(a)は、ライン型のインクジェットヘッドの構成の一例と吐出されるインクドットを説明する図である。本図に示すように、解像度を高めるために所定の数単位(本図では3個)で斜めに配置されたノズルがライン方向に多数設けられたノズルユニット240a、240bが張り合わされて1つのブロック230が形成される。そして、図10(b)に示すように、このブロック230がライン方向に複数個(本図では1ブロック〜6ブロックの6個)並べられてライン型のインクジェットヘッド220が形成される。
【0004】
図10(a)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとは、ライン方向に間隔p1でずらして張り合わされている。間隔p1は、ノズルのピッチdpの1/2となるように設定されており、ライン方向においてノズルユニット240aのノズルとノズルの中間にノズルユニット240bのノズルが配置されるようになっている。これにより、ノズルユニット240aの各ノズルとノズルユニット240bの各ノズルから吐出されるインク滴によって、等間隔で濃度むらのないドットが形成される。
【0005】
インクジェットヘッド220は、工業製品であるから製品毎に多少のバラツキが生じる。このため、図10(c)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとの間隔p2が、ノズルのピッチdpの1/2よりも広かったり、狭かったりするブロックが存在し得る。このようなブロック230では、ノズルピッチに周期的な偏りが生じる。すなわち、隣り合う2個のノズルがセットとなって、セット内のドットの間隔が狭まり、セット間のドットの間隔が広まることになる。
【0006】
図10(d)に示すように、ブロック230がライン方向に対して傾いて配置される場合も起こり得る。このようなブロック230でもノズルピッチに周期的な偏りが生じる。すなわち、隣り合う2個のノズルがセットとなって、セット内のドットの間隔が狭まり、セット間のドットの間隔が広まることになる。
【0007】
また、図10(e)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとの間隔p1が適切であり、ブロック230が適切に配置されている場合でも、ノズル241a、ノズル241bのように、インク吐出量が少ないノズルがあるとき、あるいは図ロック230全体としてインク吐出量が少ない場合には、ドットの間隔が広まることになる。
【0008】
ドットの間隔が空くと、その部分で印刷結果にスジが生じることになる。例えば、図11(a)に示すようなべた塗りの元画像を、ドットの間隔が空いたライン型インクジェットヘッド220を用いて印刷すると、図11(b)に示すように用紙搬送方向にスジが生じることになる。また、ライン型インクジェットヘッド以外の印刷装置を用いて印刷を行なった場合にも、種々の理由で一方向に不要なスジが生じた印刷結果が得られることがある。
【特許文献1】特開平8−132645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなスジが生じた印刷結果を、複写装置を用いて複写印刷を行なう場合、図11(c)に示すように、スジがそのまま、あるいは、強調されて印刷されることになり、複写画質が劣化してしまう。特に、複写装置もライン型インクジェットヘッドを採用している場合には、図11(d)に示すように、さらにスジが増えてしまうことも起こり得る。また、スジの方向は、印刷方向と読取方向との関係で読み取った画像データの縦方向にも横方向にも発生し得る。スジを目立たなくするために、読み取った画像データを一律に平滑化することも考えられるが、全体的にぼけて劣化した印刷結果が得られてしまう。
【0010】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である複写装置は、原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なうため、一律に平滑化を行なう場合よりも画像劣化を抑えることができる。すなわち、スジの方向に応じた平滑化を行なうので画像劣化を抑えつつ原稿に含まれるスジを目立たなくすることができる。
【0013】
より具体的には、前記判定手段は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて、前記縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価することができる。すなわち、輝度、エッジ量とも所定範囲内の画素を検出対象とすることで、本来必要なスジと印刷によって生じた不要なスジとを判別することができるようになる。ここで、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出する際の所定の範囲は、ユーザからの指示に基づいて調整可能とすることができる。
【0014】
また、前記判定手段が評価する縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、前記画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合とすることができる。すなわち、スジは濃度の濃い部分で目立ち、濃度の濃い部分は原稿に応じて変化するため、縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、濃度の濃い画素に対する割合によって評価することが望ましい。なお、縦エッジ画素量は、実施例でいえばEdge_rate_vが相当し、横エッジ画素量は、実施例でいえばEdge_rate_hが相当する。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である複写装置における画像処理方法は、原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置における画像処理方法であって、読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定処理と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像補正処理とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る複写装置10の構成を示すブロック図である。複写装置10は、画像読取部110と印刷機構部120とを備えており、画像読取部110で読み取った原稿の画像データに基づいて印刷機構部120で印刷を行なうことで原稿の複写を行なうことができる。
【0018】
画像読取部110は、原稿を載置するための原稿台、CCD等の受光素子をライン上に並べたラインセンサ、光源、ラインセンサを搭載したキャリッジ、キャリッジを搬送するモータ等を備えている。印刷機構部120は、印刷エンジン、給排紙機構等を備えている。本実施形態における印刷機構部120が備える印刷エンジンは、ライン型のインクジェット方式を採用しているものとする。本発明は、ライン型のインクジェット方式で印刷した原稿を、ライン型のインクジェット方式で複写印刷する場合に特に効果的に適用することができる。ただし、本発明の複写装置は、ライン型のインクジェット方式に限られず、シリアル型のインクジェット方式、レーザ方式等種々の方式を用いることができる。
【0019】
また、複写装置10は、ユーザインタフェース部130と制御部140とを備えている。ユーザインタフェース部130は、液晶表示装置、操作パネル等により構成され、ユーザから各種操作を受け付けたり、複写装置10に関する各種情報を表示したりする。制御部140は、CPU・メモリ・画像処理装置・通信処理装置等により構成され、後述するような複写装置10における各種処理の制御を行なう。
【0020】
本図に示すように本実施形態では、制御部140に、読取制御部141、特殊複写判定部142、画像処理部143、印刷制御部144、記憶部145が構成される。読取制御部141は、画像読取部110における画像読取処理を制御する。
【0021】
特殊複写判定部142は、画像読取部110で画像データを読み取った原稿が、所定の特性を有した印刷物、具体的には、一方向にスジが生じている印刷物であるかどうかを判定する。
【0022】
具体的には、読み取った画像データから輝度データを抽出し、抽出した輝度データに基づいて、読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、評価結果に応じて、原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する。縦エッジ画素量および横エッジ画素量の評価は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて行なうことができる。ここで、縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合である。
【0023】
一方向にスジが生じている印刷物は、例えば、ライン型のインクジェット方式の印刷装置で印刷された印刷物が代表的である。このようなスジは印刷の際に生じるものであり本来不要なものである。
【0024】
画像処理部143は、画像読取部110で読み取ったRGB形式の画像データをCMYK形式に変換するとともに、必要な画像処理や、中間調処理等を行なう。また、画像処理部143は、特殊複写用処理部146を含んでいる。
【0025】
特殊複写用処理部146は、特殊複写判定部142が所定の特性を有した印刷物であると判定した場合に、その画像データに対してスジを目立たなくする処理を行なう。具体的には、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する
印刷制御部144は、印刷機構部120における印刷処理を制御する。記憶部145は、メモリにより構成され画像データ、印刷データ等を格納したり、CPUの作業領域として用いられる。
【0026】
次に、本実施形態の複写処理について図2のフローチャートを参照して説明する。複写処理では、まず、画像読取部110が原稿台に載置された原稿をRGB形式の画像データとして読み取る(S101)。なお、読取に先立ち、ユーザインタフェース部130を介して、複写処理の詳細な設定、例えば、拡大・縮小、複写品質、部数等の指定を受け付けるようにしてもよい。
【0027】
読み取った画像はRGB形式のまま記憶部145に格納する(S102)。次いで、特殊複写判定部142が、読み取った原稿が一方向にスジが生じている印刷物であるかどうかを判定する。このための前準備として、RGB形式の画像データをYCbCr形式に変換する(S103)。ここで、YCbCr形式は、色をY(輝度)とCbCr(色差)で表現する形式である。一般に、印刷の際に生じる不要なスジは濃度の濃い部分(輝度の低い部分)で目立つ。このため、本実施形態では、RGB形式の画像データをYCbCr形式に変換し、判定にY(輝度)を用いるようにしている。
【0028】
なお、RGB形式からYCbCr形式への変換は、例えば、数1に従って行なうことができる。ここでは、RGB各8ビットの場合を示している。ただし、他の方法を用いてYCbCr形式に変換してもよい。また、Y(輝度)が取得できれば他の色表現形式であってもよい。
【数1】
YCbCr形式に変換すると、Y(輝度)データを抽出する(S103)。すなわち、スジに関する処理は、Y(輝度)データを対象に行ない、CbCr(色差)データに対しては処理を行なわない。そして、抽出したY(輝度)データに基づいて、原稿に横スジが発生しているか(S105〜S107)、縦スジが発生しているか(S108〜S110)の判定を行なう。これらの判定は独立に行なわれ、本フローチャートに示すように並行して行なってもよいし、連続して行なってもよい。
【0029】
まず、横スジが発生しているかどうかの判定について説明する。この判定では、対象横エッジの画素を検出する(S105)。また、この検出に併せて濃度カウンタの計測を行なう(S105)。図3は、対象横エッジ検出および濃度カウンタ計測処理を説明するフローチャートである。ここで、対象横エッジとは、横方向の輪郭線である横エッジの内、不要な横スジに由来する横エッジを意味する。すなわち、本実施形態では不要な横スジに由来する横エッジが検出の対象となり、罫線、文字等の必要な横線に由来する横エッジは検出対象とならないようにしている。
【0030】
また、濃度カウンタは、画像データの内、濃度の濃い画素の数を示すものである。一般に、印刷の際に生じる不要なスジは濃度の濃い部分で目立つ。このため、濃度の濃い画素数をカウントしておき、スジが生じている画素の濃度の濃い画素に対する割合を後に評価するためである。
【0031】
本処理を開始の際には、濃度の濃い画素をカウントするための変数である濃度カウンタDens_cntを0に初期化する(S201)。次いで、注目画素hを設定する(S202)。注目画素は画像データを構成する画素の内、評価対象となる画素である。
【0032】
そして、注目画素hの輝度Yhが所定の閾値Th_densより小さいかどうかを判定する(S203)。ここで、8ビットでY(輝度)が表わされている場合、255は黒を示し、0は白を示す。すなわち、数値が小さいほど輝度が高いことになるため、ここでは、注目画素hの輝度が所定値より高いかどうか、言い換えれば、濃度が所定値より薄いかどうかを判定する。
【0033】
ところで、濃度の濃い部分で本実施例が対象としているスジが発生している場合、ドットが抜けているわけではないので、スジ部分の濃度は無印刷の部分のようには明るくない。このため、一般に、濃度の濃い部分とスジ部分の濃度差は大きいものではない。このとき、Th_densをスジ部分の濃度より小さく設定すれば、濃度が濃い画素のカウントにスジ部分の画素も含めることが可能となる。具体的には、開発時において、濃度の濃い部分にスジが発生している印刷結果のサンプルを採取し、スジ部分の濃度の傾向を調査することで閾値Th_densを設定することができる。
【0034】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さい場合(S203:Yes)、すなわち、注目画素hの濃度が薄い場合は、不要な横スジに由来する横エッジの画素ではないものとして、非対象横エッジであると判断する(S208)。これは、不要な横スジは濃度の濃い部分で目立つからである。
【0035】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さくない場合(S203:No)、すなわち、注目画素hの濃度が濃い場合は、濃度カウンタDens_cntを1増やす(S204)。さらに、不要な横スジに由来する横エッジであるかどうかを判定するために、注目画素hの横エッジ量を算出する(S205)。ここで横エッジ量は、注目画素hが横方向の輪郭線を構成している度合いを示す値である。
【0036】
横エッジの画素の検出は従来の方法を用いることができる。代表的にはラプラシアンフィルタを用いて各画素の輝度を評価し、その評価値に基づいて横エッジであるかどうかの判断を行なうことができる。
【0037】
本実施形態では、簡単のため、図4(a)に示すような係数を持つフィルタを用いて、図4(b)に示すような横長の矩形を構成する画素群を対象に注目画素(図4(b)のh)の評価を行なう。すなわち、図4(b)のa〜oの15個の画素の輝度に対して、数2に示す図4(a)のフィルタ係数を用いた演算を行なうことにより、注目画素hの横エッジ量を算出する。図3(a)のフィルタ係数は、注目画素hについて横方向の輝度値に高い重み付けを設定している。本実施形態は、スジの箇所を厳密に判定するのではなく、スジの存在の傾向を把握すれば足りるため、簡易な方法でエッジの判定を行なえば十分である。
【数2】
そして、算出された横エッジ量が所定の閾値Th1より大きい場合に、その注目画素が横エッジの画素であると判断する(S206)。ただし、この条件だけだと罫線等の必要な横線に由来する横エッジも含まれてしまう。そこで、さらに閾値Th2(>閾値Th1)を用いて不要な横スジに由来する対象横エッジを抽出するようにしている(S207)。必要な横線に由来する横エッジは、一般に周辺画素との濃度差が大きいため、閾値Th2以上の横エッジ量を除去することで、対象となる横エッジ画素を検出している。すなわち、横エッジ量>Th1 かつ 横エッジ量<Th2を満たす場合に、その注目画素が対象横エッジであると判定する(S209)。
【0038】
なお、閾値Th1、閾値Th2は、開発時において種々の横エッジ量の線が印刷された印刷物を用意し、不要な横スジと判定すべき横エッジ量と、必要な横線に由来する横エッジ量とを実験的に区分することで設定することができる。
【0039】
この注目画素hに対する判定を画像データに含まれる全画素、あるいは所定領域内の画素に対して行なうことにより(S210)、対象横エッジの画素を検出することができる。すなわち、注目画素hを次々にシフトさせて横エッジ判定処理を行なうことで、全画素に対する横エッジ判定処理を行なうようにする。ここで、不要な横スジは濃度の濃い部分で目立つ。このため、ある濃度以上の領域を抽出して、抽出された領域を対象に、上述の対象横エッジ検出を行なうようにしてもよい。
【0040】
図2のフローチャートに戻って、次に、連続横エッジの検出を行なう(S106)。連続横エッジの検出は、図5に示すように、注目画素hについて、横方向に連続する参照画素(図中の網掛け部分の画素)のすべてが対象横エッジ画素である場合に、注目画素hは連続横エッジ画素であると判定する。この判断をすべての対象横エッジ画素に対して行なうことで、連続横エッジが検出される。
【0041】
そして、連続横エッジのカウントを行なう(S107)。連続横エッジのカウントは、処理(S106)で連続横エッジと判定された画素の数をRun_edge_cnt_hとしてカウントすることで行なう。原稿によって不要な横スジの目立つ濃度の濃い領域の大小が変化するため、数をカウントした後、Run_edge_cnt_hを数3に従って正規化する。
【数3】
ここでは、Edge_rate_hの最大値を1000%として正規化を行なっている。Edge_rate_hは、原稿中の濃度の濃い領域における単位面積当りの不要な横スジの割合を示すことになる。
【0042】
次に、縦スジが発生しているかどうかの判定について説明する。この判定では、まず、対象縦エッジの画素を検出する(S108)。図6は、対象縦エッジ検出を説明するフローチャートである。濃度カウンタ計測処理は対象横エッジ検出処理で既に行なっているため不要である。ここで、対象縦エッジとは、縦方向の輪郭線である縦エッジの内、不要な縦スジに由来する縦エッジを意味する。すなわち、本実施形態では不要な縦スジに由来する縦エッジが検出の対象となり、罫線、文字等の必要な縦線に由来する縦エッジは検出対象とならないようにしている。
【0043】
本処理を開始すると、注目画素hを設定する(S301)。注目画素は画像データを構成する画素の内、評価対象となる画素である。そして、注目画素hの輝度Yhが所定の閾値Th_densより小さいかどうかを判定する(S302)。
【0044】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さい場合(S302:Yes)、すなわち、注目画素hの濃度が薄い場合は、不要な縦スジに由来する縦エッジの画素ではないものとして、非対象縦エッジであると判断する(S306)。
【0045】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さくない場合(S302:No)、すなわち、注目画素hの濃度が濃い場合は、さらに、不要な縦スジに由来する縦エッジであるかどうかを判定するために、注目画素hの縦エッジ量を算出する(S303)。ここで縦エッジ量は、注目画素hが縦方向の輪郭線を構成している度合いを示す値である。
【0046】
縦エッジの画素の検出は従来の方法を用いることができる。代表的にはラプラシアンフィルタを用いて各画素の輝度を評価し、その評価値に基づいて縦エッジであるかどうかの判断を行なうことができる。
【0047】
本実施形態では、簡単のため、図7(a)に示すような係数を持つフィルタを用いて、図7(b)に示すような縦長の矩形を構成する画素群を対象に注目画素(図7(b)のh)の評価を行なう。すなわち、図7(b)のa〜oの15個の画素の輝度に対して、数4に示す図7(a)のフィルタ係数を用いた演算を行なうことにより、注目画素hの縦エッジ量を算出する。図7(a)のフィルタ係数は、注目画素hについて縦方向の輝度値に高い重み付けを設定している。
【数4】
そして、算出された縦エッジ量が所定の閾値Th3より大きい場合に、その注目画素が縦エッジの画素であると判断する(S304)。ただし、この条件だけだと罫線等の必要な縦線に由来する縦エッジも含まれてしまう。そこで、さらに閾値Th4(>閾値Th3)を用いて不要な縦スジに由来する対象縦エッジを抽出するようにしている(S305)。必要な縦線に由来する縦エッジは、一般に周辺画素との濃度差が大きいため、閾値Th4以上の縦エッジ量を除去することで、対象となる縦エッジ画素を検出している。すなわち、縦エッジ量>Th3 かつ 縦エッジ量<Th4を満たす場合に、その注目画素が対象縦エッジであると判定する(S307)。
【0048】
なお、閾値Th3、閾値Th4は、種々の縦エッジ量の線が印刷された印刷物を用意し、不要な縦スジと判定すべき縦エッジ量と、必要な縦線に由来する縦エッジ量とを実験的に区分することで設定することができる。
【0049】
この注目画素hに対する判定を画像データに含まれる全画素、あるいは所定領域内の画素に対して行なうことにより(S308)、対象縦エッジの画素を検出することができる。すなわち、注目画素hを次々にシフトさせて縦エッジ判定処理を行なうことで、全画素に対する縦エッジ判定処理を行なうようにする。なお、対象縦エッジ検出処理においてもある濃度以上の領域を抽出して、抽出された領域を対象に検出処理を行なうようにしてもよい。
【0050】
図2のフローチャートに戻って、次に、連続縦エッジの検出を行なう(S109)。連続縦エッジの検出は、図8に示すように、注目画素hについて、縦方向に連続する参照画素(図中の網掛け部分の画素)のすべてが対象縦エッジ画素である場合に、注目画素hは連続縦エッジ画素であると判定する。この判断をすべての対象縦エッジ画素に対して行なうことで、連続縦エッジが検出される。
【0051】
そして、連続縦エッジのカウントを行なう(S110)。連続縦エッジのカウントは、処理(S109)で連続縦エッジと判定された画素の数をRun_edge_cnt_vとしてカウントすることで行なう。原稿によって不要な縦スジの目立つ濃度の濃い領域の大小が変化するため、数をカウントした後、Run_edge_cnt_vを数5に従って正規化する。
【数5】
ここでは、Edge_rate_vの最大値を1000%として正規化を行なっている。Edge_rate_vは、原稿中の濃度の濃い領域における単位面積当りの不要な縦スジの割合を示すことになる。
【0052】
上記の手順によってEdge_rate_hおよびEdge_rate_vが求められると、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であるかどうかの判断を行なう(S111)。この判断は、以下に示すように自動に行なうようにしてもよいし、ユーザインタフェース部130を介してユーザから設定を受け付けることで判断してもよい。
【0053】
自動的に判断する場合には、以下の条件1、条件2のいずれかを満たす場合に、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断する。ここでは、判断基準となる閾値としてTh_edge_cntを用いている。なお、Th_edge_cntは、縦方向または横方向のどちらか一方に偏って連続エッジがカウントされているかを判別するための閾値である。この値は、開発時において不要なスジの入った印刷物を複数枚用意し、それぞれ上記の手順によってEdge_rate_hと、Edge_rate_vとを求め、以下に示す(条件1)および(条件2)で、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物と判定できるように調整することで決定することができる。
(条件1)Edge_rate_h>Th_edge_cntかつEdge_ratevv<Th_edge_cnt
(条件2)Edge_rate_h<Th_edge_cntかつEdge_rate_v>Th_edge_cnt
すなわち、Edge_rate_hおよびEdge_rate_vのいずれか一方が閾値Th_edge_cntを超えている場合に、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断する。印刷の際に生じる不要なスジは、一般に、縦あるいは横のいずれか一方に顕著に発生するからである。このため、スジ方向の偏りが大きいほど印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物である可能性が高くなる。そこで、上記条件に、差分閾値Th_subを用いた下記の条件3をAND条件として加えてもよい。
【0054】
ここで、差分閾値Th_subは、Edge_rate_hと、Edge_rate_vとがいずれもTh_edge_cntに近い値の場合に、誤判定を避けるために用いる閾値である。例えば、Edge_rate_h=21%、Edge_rate_v=19%、Th_edge_cnt=20%の場合には、(条件1)を満たすが、Edge_rate_hとEdge_rate_vとの差分が少なく、エッジの方向(不要なスジの向き)が偏っているとは言い切れない。
【0055】
そこで、差分閾値Th_subを用いて、(条件1)と(条件2)に加え、下記の(条件3)をAND条件として判断することで、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物と判定できるようにすることができる。
(条件3)|Edge_rate_h−Edge_rate_v|>Th_sub
なお、差分閾値Th_subは、あらかじめ不要なスジの入った印刷物、および、ノズルに由来するスジが生じないレーザビームプリンタが出力したカラー網点印刷物等を複数枚用意し、それぞれ上述の手順により、Edge_rate_hと、Edge_rate_vとを求め、(条件1)と(条件2)に加え、(条件3)をAND条件とした場合に、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物だけが条件を満たせるように調整することで決定することができる。
【0056】
この結果、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断した場合(S111:Yes)には、生じている不要なスジが縦スジであるか横スジであるかを判断する(S112)。ここで、条件1を満たしている場合には横スジであり、条件2を満たしている場合には縦スジであると判断することができる。
【0057】
横スジが発生していると判断した場合には、特殊複写用処理部146が、Y(輝度)データに対して、横スジ用の画像処理を施す(S113)。横スジ用の画像処理は、全画素に対して縦方向の平滑化を行なう。図9(a)は、横スジ用の画像処理の一例を示す図である。本図の例では、注目画素hの輝度Yhについて、上下方向に隣接した画素aの輝度Yaと画素cの輝度Ycとを用いて、Yh=(Ya+Yc)/2とすることで平滑化を行なうようにしている。ただし、他の平滑化方法を用いてもよい。また、本実施形態では、この処理は横スジと判定された画素のみならず、画像データに含まれる全画素を対象に行なうようにしているが、横スジと判定された画素に対してのみ行なうようにしてもよい。
【0058】
縦スジが発生していると判断した場合には、特殊複写用処理部146が、Y(輝度)に対して、縦スジ用の画像処理を施す(S114)。縦スジ用の画像処理は、全画素に対して横方向の平滑化を行なう。図9(b)は、縦スジ用の画像処理の一例を示す図である。本図の例では、注目画素hの輝度Yhについて、左右方向に隣接した画素aの輝度Yaと画素cの輝度Ycとを用いて、Yh=(Ya+Yc)/2とすることで平滑化を行なうようにしている。ただし、他の平滑化方法を用いてもよい。また、本実施形態では、この処理は縦スジと判定された画素のみならず、画像データに含まれる全画素を対象に行なうが、縦スジと判定された画素に対してのみ行なうようにしてもよい。
【0059】
このように、本実施形態では、スジと垂直な1方向について平滑化を行なうことで過度の画像ぼけを防ぎつつ、スジが目立たないようにしている。
【0060】
一方、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物でないと判断した場合(S111:No)には、Y(輝度)に対する処理は行なわない。
【0061】
いずれの場合も、YCbCr形式に変換された画像データをRGB形式に再変換する(S115)。この際、平滑化によりY(輝度)データが変更された場合は、平滑化後のY(輝度)データを用いてRGB形式に変換する。なお、YCbCr形式からRGB形式への変換は、例えば、数6に従って行なうことができる。ただし、他の方法を用いてRGB形式に変換してもよい。
【数6】
その後は、CMYK形式への変換、中間調処理等の従来通りの画像処理を行なって(S116)、印刷を実行する(S117)。これにより、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を得ることができる。
【0062】
なお、上記の例では、ライン型のインクジェットヘッドの印刷装置で印刷された原稿における不要なスジの有無を想定していたが、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置でも不要なスジが発生した印刷結果が得られる場合もある。例えば、ドットゲインの小さい印刷用紙に対して印刷を行なった場合には、印字されるドット間に隙間が発生しやすいため、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置でも横スジが発生する場合がある。このような状況には、例えば、上記の閾値等を変更することで対応することができる。具体的には、上述のように実験的に定めることができるTh_edge_cnt等の閾値を、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置で印刷した原稿を用いて実験的に調整することで、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置に適した値を設定することができる。
【0063】
また、上記の例において、縦横エッジの検出、スジの有無の判定等に用いた閾値は、開発時の実験等によってあらかじめ設定しておくようにしていた。これらの閾値をユーザからの指示に基づいて調整可能なようにしてもよい。ユーザの使用環境、装置の個体差等により、開発時の設定値が最適であるとは限らない可能性もあるからである。ユーザからの指示は、ユーザインタフェース部130を介したメニュー操作で受け付けることができる。
【0064】
例えば、スジが目立たないにもかかわらず、スジが発生していると判定されて画像が平滑化され、印刷結果のシャープさが失われる傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、スジ判定の感度を下げるように閾値を調整することができる。具体的には、エッジ判定に用いる閾値Th1、Th3の値を大きくする。あるいは、スジの有無の判定に用いる閾値Th_edge_cntの値を大きくするようにしてもよい。
【0065】
逆に、スジが発生しているにもかかわらず、スジが発生していないと判定されて画像が平滑化されず、スジが目立つ傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、スジ判定の感度をあげるように閾値を調整することができる。具体的には、エッジ判定に用いる閾値Th1、Th3の値を小さくする。あるいは、スジの有無の判定に用いる閾値Th_edge_cntの値を小さくするようにしてもよい。
【0066】
また、罫線等の本来必要な線がスジと判定されてしまい、画像が平滑化され、印刷結果のシャープさが失われる傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、エッジ判定に用いる閾値Th2、Th4の値を大きくするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】複写装置の構成を示すブロック図である。
【図2】複写処理について説明するフローチャートである。
【図3】対象横エッジ検出および濃度カウンタ計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】横エッジの画素の検出について説明するための図である。
【図5】連続横エッジの検出について説明するための図である。
【図6】対象縦エッジ検出を説明するフローチャートである。
【図7】縦エッジの画素の検出について説明するための図である。
【図8】連続縦エッジの検出について説明するための図である。
【図9】平滑化について説明するための図である。
【図10】ライン型のインクジェットヘッドを説明する図である。
【図11】印刷の際に不要なスジが生じた原稿について説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10…複写装置、110…画像読取部、120…印刷機構部、130…ユーザインタフェース部、140…制御部、141…読取制御部、142…特殊複写判定部、143…画像処理部、144…印刷制御部、145…記憶部、146…特殊複写用処理部、220…ライン型インクジェットヘッド、230…ブロック、240…ノズルユニット、241…ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置に係り、特に、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、ライン型のインクジェットヘッドを備えた印刷装置が知られている。ライン型のインクジェットヘッドは、印刷用紙幅に対応したサイズを有し、印刷装置本体に固定されており、ライン方向(主走査方向)に垂直な方向(副走査方向)に搬送される印刷用紙に対してインクを吐出することで画像を形成する。
【0003】
図10(a)は、ライン型のインクジェットヘッドの構成の一例と吐出されるインクドットを説明する図である。本図に示すように、解像度を高めるために所定の数単位(本図では3個)で斜めに配置されたノズルがライン方向に多数設けられたノズルユニット240a、240bが張り合わされて1つのブロック230が形成される。そして、図10(b)に示すように、このブロック230がライン方向に複数個(本図では1ブロック〜6ブロックの6個)並べられてライン型のインクジェットヘッド220が形成される。
【0004】
図10(a)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとは、ライン方向に間隔p1でずらして張り合わされている。間隔p1は、ノズルのピッチdpの1/2となるように設定されており、ライン方向においてノズルユニット240aのノズルとノズルの中間にノズルユニット240bのノズルが配置されるようになっている。これにより、ノズルユニット240aの各ノズルとノズルユニット240bの各ノズルから吐出されるインク滴によって、等間隔で濃度むらのないドットが形成される。
【0005】
インクジェットヘッド220は、工業製品であるから製品毎に多少のバラツキが生じる。このため、図10(c)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとの間隔p2が、ノズルのピッチdpの1/2よりも広かったり、狭かったりするブロックが存在し得る。このようなブロック230では、ノズルピッチに周期的な偏りが生じる。すなわち、隣り合う2個のノズルがセットとなって、セット内のドットの間隔が狭まり、セット間のドットの間隔が広まることになる。
【0006】
図10(d)に示すように、ブロック230がライン方向に対して傾いて配置される場合も起こり得る。このようなブロック230でもノズルピッチに周期的な偏りが生じる。すなわち、隣り合う2個のノズルがセットとなって、セット内のドットの間隔が狭まり、セット間のドットの間隔が広まることになる。
【0007】
また、図10(e)に示すように、ノズルユニット240aとノズルユニット240bとの間隔p1が適切であり、ブロック230が適切に配置されている場合でも、ノズル241a、ノズル241bのように、インク吐出量が少ないノズルがあるとき、あるいは図ロック230全体としてインク吐出量が少ない場合には、ドットの間隔が広まることになる。
【0008】
ドットの間隔が空くと、その部分で印刷結果にスジが生じることになる。例えば、図11(a)に示すようなべた塗りの元画像を、ドットの間隔が空いたライン型インクジェットヘッド220を用いて印刷すると、図11(b)に示すように用紙搬送方向にスジが生じることになる。また、ライン型インクジェットヘッド以外の印刷装置を用いて印刷を行なった場合にも、種々の理由で一方向に不要なスジが生じた印刷結果が得られることがある。
【特許文献1】特開平8−132645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなスジが生じた印刷結果を、複写装置を用いて複写印刷を行なう場合、図11(c)に示すように、スジがそのまま、あるいは、強調されて印刷されることになり、複写画質が劣化してしまう。特に、複写装置もライン型インクジェットヘッドを採用している場合には、図11(d)に示すように、さらにスジが増えてしまうことも起こり得る。また、スジの方向は、印刷方向と読取方向との関係で読み取った画像データの縦方向にも横方向にも発生し得る。スジを目立たなくするために、読み取った画像データを一律に平滑化することも考えられるが、全体的にぼけて劣化した印刷結果が得られてしまう。
【0010】
本発明はこのような状況を鑑みてなされたものであり、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である複写装置は、原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なうため、一律に平滑化を行なう場合よりも画像劣化を抑えることができる。すなわち、スジの方向に応じた平滑化を行なうので画像劣化を抑えつつ原稿に含まれるスジを目立たなくすることができる。
【0013】
より具体的には、前記判定手段は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて、前記縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価することができる。すなわち、輝度、エッジ量とも所定範囲内の画素を検出対象とすることで、本来必要なスジと印刷によって生じた不要なスジとを判別することができるようになる。ここで、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出する際の所定の範囲は、ユーザからの指示に基づいて調整可能とすることができる。
【0014】
また、前記判定手段が評価する縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、前記画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合とすることができる。すなわち、スジは濃度の濃い部分で目立ち、濃度の濃い部分は原稿に応じて変化するため、縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、濃度の濃い画素に対する割合によって評価することが望ましい。なお、縦エッジ画素量は、実施例でいえばEdge_rate_vが相当し、横エッジ画素量は、実施例でいえばEdge_rate_hが相当する。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である複写装置における画像処理方法は、原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置における画像処理方法であって、読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定処理と、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像補正処理とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を、画像劣化を抑えつつ得ることができる複写装置および画像処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る複写装置10の構成を示すブロック図である。複写装置10は、画像読取部110と印刷機構部120とを備えており、画像読取部110で読み取った原稿の画像データに基づいて印刷機構部120で印刷を行なうことで原稿の複写を行なうことができる。
【0018】
画像読取部110は、原稿を載置するための原稿台、CCD等の受光素子をライン上に並べたラインセンサ、光源、ラインセンサを搭載したキャリッジ、キャリッジを搬送するモータ等を備えている。印刷機構部120は、印刷エンジン、給排紙機構等を備えている。本実施形態における印刷機構部120が備える印刷エンジンは、ライン型のインクジェット方式を採用しているものとする。本発明は、ライン型のインクジェット方式で印刷した原稿を、ライン型のインクジェット方式で複写印刷する場合に特に効果的に適用することができる。ただし、本発明の複写装置は、ライン型のインクジェット方式に限られず、シリアル型のインクジェット方式、レーザ方式等種々の方式を用いることができる。
【0019】
また、複写装置10は、ユーザインタフェース部130と制御部140とを備えている。ユーザインタフェース部130は、液晶表示装置、操作パネル等により構成され、ユーザから各種操作を受け付けたり、複写装置10に関する各種情報を表示したりする。制御部140は、CPU・メモリ・画像処理装置・通信処理装置等により構成され、後述するような複写装置10における各種処理の制御を行なう。
【0020】
本図に示すように本実施形態では、制御部140に、読取制御部141、特殊複写判定部142、画像処理部143、印刷制御部144、記憶部145が構成される。読取制御部141は、画像読取部110における画像読取処理を制御する。
【0021】
特殊複写判定部142は、画像読取部110で画像データを読み取った原稿が、所定の特性を有した印刷物、具体的には、一方向にスジが生じている印刷物であるかどうかを判定する。
【0022】
具体的には、読み取った画像データから輝度データを抽出し、抽出した輝度データに基づいて、読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、評価結果に応じて、原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する。縦エッジ画素量および横エッジ画素量の評価は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて行なうことができる。ここで、縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合である。
【0023】
一方向にスジが生じている印刷物は、例えば、ライン型のインクジェット方式の印刷装置で印刷された印刷物が代表的である。このようなスジは印刷の際に生じるものであり本来不要なものである。
【0024】
画像処理部143は、画像読取部110で読み取ったRGB形式の画像データをCMYK形式に変換するとともに、必要な画像処理や、中間調処理等を行なう。また、画像処理部143は、特殊複写用処理部146を含んでいる。
【0025】
特殊複写用処理部146は、特殊複写判定部142が所定の特性を有した印刷物であると判定した場合に、その画像データに対してスジを目立たなくする処理を行なう。具体的には、縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する
印刷制御部144は、印刷機構部120における印刷処理を制御する。記憶部145は、メモリにより構成され画像データ、印刷データ等を格納したり、CPUの作業領域として用いられる。
【0026】
次に、本実施形態の複写処理について図2のフローチャートを参照して説明する。複写処理では、まず、画像読取部110が原稿台に載置された原稿をRGB形式の画像データとして読み取る(S101)。なお、読取に先立ち、ユーザインタフェース部130を介して、複写処理の詳細な設定、例えば、拡大・縮小、複写品質、部数等の指定を受け付けるようにしてもよい。
【0027】
読み取った画像はRGB形式のまま記憶部145に格納する(S102)。次いで、特殊複写判定部142が、読み取った原稿が一方向にスジが生じている印刷物であるかどうかを判定する。このための前準備として、RGB形式の画像データをYCbCr形式に変換する(S103)。ここで、YCbCr形式は、色をY(輝度)とCbCr(色差)で表現する形式である。一般に、印刷の際に生じる不要なスジは濃度の濃い部分(輝度の低い部分)で目立つ。このため、本実施形態では、RGB形式の画像データをYCbCr形式に変換し、判定にY(輝度)を用いるようにしている。
【0028】
なお、RGB形式からYCbCr形式への変換は、例えば、数1に従って行なうことができる。ここでは、RGB各8ビットの場合を示している。ただし、他の方法を用いてYCbCr形式に変換してもよい。また、Y(輝度)が取得できれば他の色表現形式であってもよい。
【数1】
YCbCr形式に変換すると、Y(輝度)データを抽出する(S103)。すなわち、スジに関する処理は、Y(輝度)データを対象に行ない、CbCr(色差)データに対しては処理を行なわない。そして、抽出したY(輝度)データに基づいて、原稿に横スジが発生しているか(S105〜S107)、縦スジが発生しているか(S108〜S110)の判定を行なう。これらの判定は独立に行なわれ、本フローチャートに示すように並行して行なってもよいし、連続して行なってもよい。
【0029】
まず、横スジが発生しているかどうかの判定について説明する。この判定では、対象横エッジの画素を検出する(S105)。また、この検出に併せて濃度カウンタの計測を行なう(S105)。図3は、対象横エッジ検出および濃度カウンタ計測処理を説明するフローチャートである。ここで、対象横エッジとは、横方向の輪郭線である横エッジの内、不要な横スジに由来する横エッジを意味する。すなわち、本実施形態では不要な横スジに由来する横エッジが検出の対象となり、罫線、文字等の必要な横線に由来する横エッジは検出対象とならないようにしている。
【0030】
また、濃度カウンタは、画像データの内、濃度の濃い画素の数を示すものである。一般に、印刷の際に生じる不要なスジは濃度の濃い部分で目立つ。このため、濃度の濃い画素数をカウントしておき、スジが生じている画素の濃度の濃い画素に対する割合を後に評価するためである。
【0031】
本処理を開始の際には、濃度の濃い画素をカウントするための変数である濃度カウンタDens_cntを0に初期化する(S201)。次いで、注目画素hを設定する(S202)。注目画素は画像データを構成する画素の内、評価対象となる画素である。
【0032】
そして、注目画素hの輝度Yhが所定の閾値Th_densより小さいかどうかを判定する(S203)。ここで、8ビットでY(輝度)が表わされている場合、255は黒を示し、0は白を示す。すなわち、数値が小さいほど輝度が高いことになるため、ここでは、注目画素hの輝度が所定値より高いかどうか、言い換えれば、濃度が所定値より薄いかどうかを判定する。
【0033】
ところで、濃度の濃い部分で本実施例が対象としているスジが発生している場合、ドットが抜けているわけではないので、スジ部分の濃度は無印刷の部分のようには明るくない。このため、一般に、濃度の濃い部分とスジ部分の濃度差は大きいものではない。このとき、Th_densをスジ部分の濃度より小さく設定すれば、濃度が濃い画素のカウントにスジ部分の画素も含めることが可能となる。具体的には、開発時において、濃度の濃い部分にスジが発生している印刷結果のサンプルを採取し、スジ部分の濃度の傾向を調査することで閾値Th_densを設定することができる。
【0034】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さい場合(S203:Yes)、すなわち、注目画素hの濃度が薄い場合は、不要な横スジに由来する横エッジの画素ではないものとして、非対象横エッジであると判断する(S208)。これは、不要な横スジは濃度の濃い部分で目立つからである。
【0035】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さくない場合(S203:No)、すなわち、注目画素hの濃度が濃い場合は、濃度カウンタDens_cntを1増やす(S204)。さらに、不要な横スジに由来する横エッジであるかどうかを判定するために、注目画素hの横エッジ量を算出する(S205)。ここで横エッジ量は、注目画素hが横方向の輪郭線を構成している度合いを示す値である。
【0036】
横エッジの画素の検出は従来の方法を用いることができる。代表的にはラプラシアンフィルタを用いて各画素の輝度を評価し、その評価値に基づいて横エッジであるかどうかの判断を行なうことができる。
【0037】
本実施形態では、簡単のため、図4(a)に示すような係数を持つフィルタを用いて、図4(b)に示すような横長の矩形を構成する画素群を対象に注目画素(図4(b)のh)の評価を行なう。すなわち、図4(b)のa〜oの15個の画素の輝度に対して、数2に示す図4(a)のフィルタ係数を用いた演算を行なうことにより、注目画素hの横エッジ量を算出する。図3(a)のフィルタ係数は、注目画素hについて横方向の輝度値に高い重み付けを設定している。本実施形態は、スジの箇所を厳密に判定するのではなく、スジの存在の傾向を把握すれば足りるため、簡易な方法でエッジの判定を行なえば十分である。
【数2】
そして、算出された横エッジ量が所定の閾値Th1より大きい場合に、その注目画素が横エッジの画素であると判断する(S206)。ただし、この条件だけだと罫線等の必要な横線に由来する横エッジも含まれてしまう。そこで、さらに閾値Th2(>閾値Th1)を用いて不要な横スジに由来する対象横エッジを抽出するようにしている(S207)。必要な横線に由来する横エッジは、一般に周辺画素との濃度差が大きいため、閾値Th2以上の横エッジ量を除去することで、対象となる横エッジ画素を検出している。すなわち、横エッジ量>Th1 かつ 横エッジ量<Th2を満たす場合に、その注目画素が対象横エッジであると判定する(S209)。
【0038】
なお、閾値Th1、閾値Th2は、開発時において種々の横エッジ量の線が印刷された印刷物を用意し、不要な横スジと判定すべき横エッジ量と、必要な横線に由来する横エッジ量とを実験的に区分することで設定することができる。
【0039】
この注目画素hに対する判定を画像データに含まれる全画素、あるいは所定領域内の画素に対して行なうことにより(S210)、対象横エッジの画素を検出することができる。すなわち、注目画素hを次々にシフトさせて横エッジ判定処理を行なうことで、全画素に対する横エッジ判定処理を行なうようにする。ここで、不要な横スジは濃度の濃い部分で目立つ。このため、ある濃度以上の領域を抽出して、抽出された領域を対象に、上述の対象横エッジ検出を行なうようにしてもよい。
【0040】
図2のフローチャートに戻って、次に、連続横エッジの検出を行なう(S106)。連続横エッジの検出は、図5に示すように、注目画素hについて、横方向に連続する参照画素(図中の網掛け部分の画素)のすべてが対象横エッジ画素である場合に、注目画素hは連続横エッジ画素であると判定する。この判断をすべての対象横エッジ画素に対して行なうことで、連続横エッジが検出される。
【0041】
そして、連続横エッジのカウントを行なう(S107)。連続横エッジのカウントは、処理(S106)で連続横エッジと判定された画素の数をRun_edge_cnt_hとしてカウントすることで行なう。原稿によって不要な横スジの目立つ濃度の濃い領域の大小が変化するため、数をカウントした後、Run_edge_cnt_hを数3に従って正規化する。
【数3】
ここでは、Edge_rate_hの最大値を1000%として正規化を行なっている。Edge_rate_hは、原稿中の濃度の濃い領域における単位面積当りの不要な横スジの割合を示すことになる。
【0042】
次に、縦スジが発生しているかどうかの判定について説明する。この判定では、まず、対象縦エッジの画素を検出する(S108)。図6は、対象縦エッジ検出を説明するフローチャートである。濃度カウンタ計測処理は対象横エッジ検出処理で既に行なっているため不要である。ここで、対象縦エッジとは、縦方向の輪郭線である縦エッジの内、不要な縦スジに由来する縦エッジを意味する。すなわち、本実施形態では不要な縦スジに由来する縦エッジが検出の対象となり、罫線、文字等の必要な縦線に由来する縦エッジは検出対象とならないようにしている。
【0043】
本処理を開始すると、注目画素hを設定する(S301)。注目画素は画像データを構成する画素の内、評価対象となる画素である。そして、注目画素hの輝度Yhが所定の閾値Th_densより小さいかどうかを判定する(S302)。
【0044】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さい場合(S302:Yes)、すなわち、注目画素hの濃度が薄い場合は、不要な縦スジに由来する縦エッジの画素ではないものとして、非対象縦エッジであると判断する(S306)。
【0045】
注目画素hの輝度Yhが閾値Th_densより小さくない場合(S302:No)、すなわち、注目画素hの濃度が濃い場合は、さらに、不要な縦スジに由来する縦エッジであるかどうかを判定するために、注目画素hの縦エッジ量を算出する(S303)。ここで縦エッジ量は、注目画素hが縦方向の輪郭線を構成している度合いを示す値である。
【0046】
縦エッジの画素の検出は従来の方法を用いることができる。代表的にはラプラシアンフィルタを用いて各画素の輝度を評価し、その評価値に基づいて縦エッジであるかどうかの判断を行なうことができる。
【0047】
本実施形態では、簡単のため、図7(a)に示すような係数を持つフィルタを用いて、図7(b)に示すような縦長の矩形を構成する画素群を対象に注目画素(図7(b)のh)の評価を行なう。すなわち、図7(b)のa〜oの15個の画素の輝度に対して、数4に示す図7(a)のフィルタ係数を用いた演算を行なうことにより、注目画素hの縦エッジ量を算出する。図7(a)のフィルタ係数は、注目画素hについて縦方向の輝度値に高い重み付けを設定している。
【数4】
そして、算出された縦エッジ量が所定の閾値Th3より大きい場合に、その注目画素が縦エッジの画素であると判断する(S304)。ただし、この条件だけだと罫線等の必要な縦線に由来する縦エッジも含まれてしまう。そこで、さらに閾値Th4(>閾値Th3)を用いて不要な縦スジに由来する対象縦エッジを抽出するようにしている(S305)。必要な縦線に由来する縦エッジは、一般に周辺画素との濃度差が大きいため、閾値Th4以上の縦エッジ量を除去することで、対象となる縦エッジ画素を検出している。すなわち、縦エッジ量>Th3 かつ 縦エッジ量<Th4を満たす場合に、その注目画素が対象縦エッジであると判定する(S307)。
【0048】
なお、閾値Th3、閾値Th4は、種々の縦エッジ量の線が印刷された印刷物を用意し、不要な縦スジと判定すべき縦エッジ量と、必要な縦線に由来する縦エッジ量とを実験的に区分することで設定することができる。
【0049】
この注目画素hに対する判定を画像データに含まれる全画素、あるいは所定領域内の画素に対して行なうことにより(S308)、対象縦エッジの画素を検出することができる。すなわち、注目画素hを次々にシフトさせて縦エッジ判定処理を行なうことで、全画素に対する縦エッジ判定処理を行なうようにする。なお、対象縦エッジ検出処理においてもある濃度以上の領域を抽出して、抽出された領域を対象に検出処理を行なうようにしてもよい。
【0050】
図2のフローチャートに戻って、次に、連続縦エッジの検出を行なう(S109)。連続縦エッジの検出は、図8に示すように、注目画素hについて、縦方向に連続する参照画素(図中の網掛け部分の画素)のすべてが対象縦エッジ画素である場合に、注目画素hは連続縦エッジ画素であると判定する。この判断をすべての対象縦エッジ画素に対して行なうことで、連続縦エッジが検出される。
【0051】
そして、連続縦エッジのカウントを行なう(S110)。連続縦エッジのカウントは、処理(S109)で連続縦エッジと判定された画素の数をRun_edge_cnt_vとしてカウントすることで行なう。原稿によって不要な縦スジの目立つ濃度の濃い領域の大小が変化するため、数をカウントした後、Run_edge_cnt_vを数5に従って正規化する。
【数5】
ここでは、Edge_rate_vの最大値を1000%として正規化を行なっている。Edge_rate_vは、原稿中の濃度の濃い領域における単位面積当りの不要な縦スジの割合を示すことになる。
【0052】
上記の手順によってEdge_rate_hおよびEdge_rate_vが求められると、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であるかどうかの判断を行なう(S111)。この判断は、以下に示すように自動に行なうようにしてもよいし、ユーザインタフェース部130を介してユーザから設定を受け付けることで判断してもよい。
【0053】
自動的に判断する場合には、以下の条件1、条件2のいずれかを満たす場合に、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断する。ここでは、判断基準となる閾値としてTh_edge_cntを用いている。なお、Th_edge_cntは、縦方向または横方向のどちらか一方に偏って連続エッジがカウントされているかを判別するための閾値である。この値は、開発時において不要なスジの入った印刷物を複数枚用意し、それぞれ上記の手順によってEdge_rate_hと、Edge_rate_vとを求め、以下に示す(条件1)および(条件2)で、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物と判定できるように調整することで決定することができる。
(条件1)Edge_rate_h>Th_edge_cntかつEdge_ratevv<Th_edge_cnt
(条件2)Edge_rate_h<Th_edge_cntかつEdge_rate_v>Th_edge_cnt
すなわち、Edge_rate_hおよびEdge_rate_vのいずれか一方が閾値Th_edge_cntを超えている場合に、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断する。印刷の際に生じる不要なスジは、一般に、縦あるいは横のいずれか一方に顕著に発生するからである。このため、スジ方向の偏りが大きいほど印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物である可能性が高くなる。そこで、上記条件に、差分閾値Th_subを用いた下記の条件3をAND条件として加えてもよい。
【0054】
ここで、差分閾値Th_subは、Edge_rate_hと、Edge_rate_vとがいずれもTh_edge_cntに近い値の場合に、誤判定を避けるために用いる閾値である。例えば、Edge_rate_h=21%、Edge_rate_v=19%、Th_edge_cnt=20%の場合には、(条件1)を満たすが、Edge_rate_hとEdge_rate_vとの差分が少なく、エッジの方向(不要なスジの向き)が偏っているとは言い切れない。
【0055】
そこで、差分閾値Th_subを用いて、(条件1)と(条件2)に加え、下記の(条件3)をAND条件として判断することで、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物と判定できるようにすることができる。
(条件3)|Edge_rate_h−Edge_rate_v|>Th_sub
なお、差分閾値Th_subは、あらかじめ不要なスジの入った印刷物、および、ノズルに由来するスジが生じないレーザビームプリンタが出力したカラー網点印刷物等を複数枚用意し、それぞれ上述の手順により、Edge_rate_hと、Edge_rate_vとを求め、(条件1)と(条件2)に加え、(条件3)をAND条件とした場合に、縦方向または横方向どちらか一方に不要なスジの入った印刷物だけが条件を満たせるように調整することで決定することができる。
【0056】
この結果、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物であると判断した場合(S111:Yes)には、生じている不要なスジが縦スジであるか横スジであるかを判断する(S112)。ここで、条件1を満たしている場合には横スジであり、条件2を満たしている場合には縦スジであると判断することができる。
【0057】
横スジが発生していると判断した場合には、特殊複写用処理部146が、Y(輝度)データに対して、横スジ用の画像処理を施す(S113)。横スジ用の画像処理は、全画素に対して縦方向の平滑化を行なう。図9(a)は、横スジ用の画像処理の一例を示す図である。本図の例では、注目画素hの輝度Yhについて、上下方向に隣接した画素aの輝度Yaと画素cの輝度Ycとを用いて、Yh=(Ya+Yc)/2とすることで平滑化を行なうようにしている。ただし、他の平滑化方法を用いてもよい。また、本実施形態では、この処理は横スジと判定された画素のみならず、画像データに含まれる全画素を対象に行なうようにしているが、横スジと判定された画素に対してのみ行なうようにしてもよい。
【0058】
縦スジが発生していると判断した場合には、特殊複写用処理部146が、Y(輝度)に対して、縦スジ用の画像処理を施す(S114)。縦スジ用の画像処理は、全画素に対して横方向の平滑化を行なう。図9(b)は、縦スジ用の画像処理の一例を示す図である。本図の例では、注目画素hの輝度Yhについて、左右方向に隣接した画素aの輝度Yaと画素cの輝度Ycとを用いて、Yh=(Ya+Yc)/2とすることで平滑化を行なうようにしている。ただし、他の平滑化方法を用いてもよい。また、本実施形態では、この処理は縦スジと判定された画素のみならず、画像データに含まれる全画素を対象に行なうが、縦スジと判定された画素に対してのみ行なうようにしてもよい。
【0059】
このように、本実施形態では、スジと垂直な1方向について平滑化を行なうことで過度の画像ぼけを防ぎつつ、スジが目立たないようにしている。
【0060】
一方、読み取った原稿が、印刷の際に生じる不要なスジを含む印刷物でないと判断した場合(S111:No)には、Y(輝度)に対する処理は行なわない。
【0061】
いずれの場合も、YCbCr形式に変換された画像データをRGB形式に再変換する(S115)。この際、平滑化によりY(輝度)データが変更された場合は、平滑化後のY(輝度)データを用いてRGB形式に変換する。なお、YCbCr形式からRGB形式への変換は、例えば、数6に従って行なうことができる。ただし、他の方法を用いてRGB形式に変換してもよい。
【数6】
その後は、CMYK形式への変換、中間調処理等の従来通りの画像処理を行なって(S116)、印刷を実行する(S117)。これにより、印刷の際に不要なスジが生じた原稿の複写処理において、スジの目立たない印刷結果を得ることができる。
【0062】
なお、上記の例では、ライン型のインクジェットヘッドの印刷装置で印刷された原稿における不要なスジの有無を想定していたが、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置でも不要なスジが発生した印刷結果が得られる場合もある。例えば、ドットゲインの小さい印刷用紙に対して印刷を行なった場合には、印字されるドット間に隙間が発生しやすいため、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置でも横スジが発生する場合がある。このような状況には、例えば、上記の閾値等を変更することで対応することができる。具体的には、上述のように実験的に定めることができるTh_edge_cnt等の閾値を、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置で印刷した原稿を用いて実験的に調整することで、シリアル型のインクジェットヘッドを用いた印刷装置に適した値を設定することができる。
【0063】
また、上記の例において、縦横エッジの検出、スジの有無の判定等に用いた閾値は、開発時の実験等によってあらかじめ設定しておくようにしていた。これらの閾値をユーザからの指示に基づいて調整可能なようにしてもよい。ユーザの使用環境、装置の個体差等により、開発時の設定値が最適であるとは限らない可能性もあるからである。ユーザからの指示は、ユーザインタフェース部130を介したメニュー操作で受け付けることができる。
【0064】
例えば、スジが目立たないにもかかわらず、スジが発生していると判定されて画像が平滑化され、印刷結果のシャープさが失われる傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、スジ判定の感度を下げるように閾値を調整することができる。具体的には、エッジ判定に用いる閾値Th1、Th3の値を大きくする。あるいは、スジの有無の判定に用いる閾値Th_edge_cntの値を大きくするようにしてもよい。
【0065】
逆に、スジが発生しているにもかかわらず、スジが発生していないと判定されて画像が平滑化されず、スジが目立つ傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、スジ判定の感度をあげるように閾値を調整することができる。具体的には、エッジ判定に用いる閾値Th1、Th3の値を小さくする。あるいは、スジの有無の判定に用いる閾値Th_edge_cntの値を小さくするようにしてもよい。
【0066】
また、罫線等の本来必要な線がスジと判定されてしまい、画像が平滑化され、印刷結果のシャープさが失われる傾向がある場合には、ユーザからの指示に基づいて、エッジ判定に用いる閾値Th2、Th4の値を大きくするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】複写装置の構成を示すブロック図である。
【図2】複写処理について説明するフローチャートである。
【図3】対象横エッジ検出および濃度カウンタ計測処理を説明するフローチャートである。
【図4】横エッジの画素の検出について説明するための図である。
【図5】連続横エッジの検出について説明するための図である。
【図6】対象縦エッジ検出を説明するフローチャートである。
【図7】縦エッジの画素の検出について説明するための図である。
【図8】連続縦エッジの検出について説明するための図である。
【図9】平滑化について説明するための図である。
【図10】ライン型のインクジェットヘッドを説明する図である。
【図11】印刷の際に不要なスジが生じた原稿について説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10…複写装置、110…画像読取部、120…印刷機構部、130…ユーザインタフェース部、140…制御部、141…読取制御部、142…特殊複写判定部、143…画像処理部、144…印刷制御部、145…記憶部、146…特殊複写用処理部、220…ライン型インクジェットヘッド、230…ブロック、240…ノズルユニット、241…ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、
読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、
縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備えることを特徴とする複写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複写装置であって、
前記判定手段は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて、前記縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価することを特徴とする複写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の複写装置であって、
前記縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出する際の所定の範囲は、ユーザからの指示に基づいて調整可能であることを特徴とする複写装置。
【請求項4】
請求項1に記載の複写装置であって、
前記判定手段が評価する縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、前記画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合であることを特徴とする複写装置。
【請求項5】
原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置における画像処理方法であって、
読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定処理と、
縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像補正処理とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置であって、
読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定手段と、
縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像処理手段とを備えることを特徴とする複写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複写装置であって、
前記判定手段は、所定の輝度範囲内の画素毎に、所定のフィルタを用いて縦および横エッジ量を算出し、縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出し、検出された画素の連続性に基づいて、前記縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価することを特徴とする複写装置。
【請求項3】
請求項2に記載の複写装置であって、
前記縦または横エッジ量が所定の範囲内である画素を検出する際の所定の範囲は、ユーザからの指示に基づいて調整可能であることを特徴とする複写装置。
【請求項4】
請求項1に記載の複写装置であって、
前記判定手段が評価する縦エッジ画素量および横エッジ画素量は、所定条件を満たす縦エッジ画素数および横エッジ画素数の、前記画像データに含まれる所定濃度以上の濃さを有する画素の数に対する割合であることを特徴とする複写装置。
【請求項5】
原稿の画像データを読み取る画像読取手段と、画像データに基づいて印刷を行なう印刷手段とを備えた複写装置における画像処理方法であって、
読み取った画像データから輝度データを抽出し、前記抽出した輝度データに基づいて、前記読み取った画像データに含まれる所定条件を満たす縦エッジ画素量および横エッジ画素量を評価し、前記評価結果に応じて、前記原稿に縦方向あるいは横方向のスジが含まれているかどうかを判定する判定処理と、
縦方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して横方向の平滑化処理を行ない、横方向のスジが含まれていると判定された場合に、前記抽出した輝度データに対して縦方向の平滑化処理を行なって前記読み取った画像データを補正する画像補正処理とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−16488(P2010−16488A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172690(P2008−172690)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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