説明

複写装置及び複写装置の制御プログラム

【課題】ラインセンサーで原稿を長辺方向に沿って読み取ることにより取得した画像データに基づく画像を、記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致するように横向きで給紙して印刷するための原稿複写処理の所要時間を短縮することができる複写装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る複写装置は、記録用紙の向きとして、記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致する横向き(LEF)が選択された場合に(S104のYES)、ラインセンサーをユーザー設定による第1の速度(V1)よりも高速である第2の速度(V2)で移動させることにより、ユーザー設定による第1の解像度(R1)よりも小さい第2の解像度(R2)で原稿を読み取るように読取部を制御し(S106)、さらに、画像データを横向きに回転する回転処理(S109)及び画像データの解像度を第1の解像度R1に変換する解像度変換処理(S110)を実行済みの画像データに基づく画像を印刷するように印刷部を制御する(S111)ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインセンサーと原稿とを当該原稿の長辺方向に相対移動させながら原稿画像を読み取ることにより取得した画像データに基づく画像を印刷する複写装置、及び当該複写装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、プリンター、イメージスキャナー、ファクシミリ等の機能を有する複合機(MFP)が普及しており、多くのMFPは、イメージスキャナー内の読取り位置に向かって原稿を搬送するための自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder:ADF)を備えている。
【0003】
そして、MFPの中には、ADFにより原稿の短辺方向とイメージスキャナーに設けられたラインセンサーの配列方向とが一致するように縦向き(Short Edge Feed:SEF)で搬送された原稿のみを読み取り可能であるものも存在する。このようなMFPにより原稿を複写する場合、ユーザーは、プリンターへの給紙向きとして、記録用紙の短辺方向と印刷主走査方向とが一致するように縦向き(SEF)で給紙するか、又は記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致するように横向き(Long Edge Feed:LEF)で給紙するかを選択することになる。なお、印刷主走査方向とは、レーザープリンターでいえば感光体ドラム上をレーザビームが走査移動する方向のことを指し、LEDプリンターでいえばLEDヘッドの長手方向のことを指している。即ち、印刷主走査方向は、印刷用紙の搬送方向と直行する方向を指している。
【0004】
ここで、ユーザーにより記録用紙の給紙向きとして縦向き(SEF)が選択された場合、MFPはラインセンサーにより読み取った箇所から順次印刷を開始することができるので、最初の印刷物が出力されるまでの時間(First Copy Output Time:FCOT)を短くすることができるという利点がある。他方、記録用紙の長辺は短辺に対して約1.4倍の長さがあるため、給紙向きとして縦向き(SEF)が選択された場合はプリンターへの用紙搬送時間も約1.4倍となり、印刷処理の所要時間が長期化することになる。
【0005】
そこで、多くのMFPは、印刷処理の所要時間を短縮するために、ADFにより縦向き(SEF)で搬送された原稿を、プリンターに横向き(LEF)で給紙された記録用紙に印刷する機能を備えている。ただし、ADFにより縦向き(SEF)で搬送された原稿の画像データを横向き(LEF)で給紙された記録用紙に印刷するためには、印刷処理に先立ち画像データを記録用紙の向きに合わせて横向きに回転する処理が別途必要となる。そのため、ユーザーにより記録用紙の向きとして横向き(LEF)が選択された場合は、印刷処理の所要時間を短縮することができるが、MFPによる原稿複写処理全体の所要時間を短縮することはできなかった。
【0006】
これに関連して、下記の特許文献1には、印刷データに基づく画像を記録用紙に印刷する際に、横向き/縦向きで給紙される記録用紙に対する印刷処理の時間差と、画像データの回転処理の所要時間とを考慮して、印刷処理の所要時間が短くなる方の給紙向きを選択する技術が開示されている。しかし、同技術を用いたとしても印刷処理を短時間で終了するための最適な給紙向きを選択することができるにすぎず、MFPによる原稿複写処理全体の所要時間を短縮することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−322326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ラインセンサーで原稿を長辺方向に沿って読み取ることにより取得した画像データに基づく画像を、記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致するように横向きで給紙して印刷するための原稿複写処理の所要時間を短縮することができる複写装置、及び当該複写装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0010】
(1)原稿の長辺方向に沿って当該原稿とラインセンサーとを相対的に移動させることにより前記原稿を読み取る読取部と、前記読取部により読み取った前記原稿の画像データを生成するデータ生成部と、前記データ生成部により生成した前記画像データに基づく画像を記録用紙に印刷する印刷部と、前記印刷部に給紙される前記記録用紙の向きとして、前記記録用紙の短辺方向と前記記録用紙の給紙方向に直交する印刷主走査方向とが一致する縦向き、及び前記記録用紙の長辺方向と前記印刷主走査方向とが一致する横向きのいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部により縦向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを第1の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って第1の解像度で前記原稿を読み取り、横向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを前記第1の速度よりも大きい第2の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って前記第1の解像度よりも小さい第2の解像度で前記原稿を読み取るように前記読取部を制御する読取制御部と、前記選択部により横向きが選択された場合に、前記画像データを横向きに回転する回転処理、及び前記原稿の長辺方向に沿った前記画像データの解像度を前記第1の解像度に変換する解像度変換処理を含む画像処理を実行する画像処理部と、前記選択部により横向きが選択された場合に、前記画像処理部による前記画像処理済みの前記画像データに基づく画像を印刷するように前記印刷部を制御する印刷制御部と、を有する複写装置。
【0011】
(2)前記画像処理部は、前記印刷主走査方向に沿ったラインごとに前記解像度変換処理を実行することを特徴とする上記(1)に記載の複写装置。
【0012】
(3)前記印刷部は、前記画像データのうち前記画像処理部による前記解像度変換処理が完了した部分から印刷を開始することを特徴とする上記(1)に記載の複写装置。
【0013】
(4)前記印刷部は、前記選択部により縦向きが選択された場合に、前記画像データのうち前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した部分から印刷を開始することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の複写装置。
【0014】
(5)前記画像処理部は、前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した後に前記画像処理を実行することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の複写装置。
【0015】
(6)前記画像処理部は、PWM(Pulse Width Modulation)回路により前記解像度変換処理を実行することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の複写装置。
【0016】
(7)原稿の長辺方向に沿って当該原稿とラインセンサーとを相対的に移動させて前記原稿を読み取る読取部、前記読取部により読み取った前記原稿の画像データを生成するデータ生成部、及び前記データ生成部により生成した前記画像データに基づく画像を記録用紙に印刷する印刷部を有する複写装置の制御プログラムであって、前記印刷部に給紙される前記用紙の向きとして、前記記録用紙の短辺方向と前記記録用紙の給紙方向に直交する印刷主走査方向とが一致する縦向き、及び前記記録用紙の長辺方向と前記印刷主走査方向とが一致する横向きのいずれか一方を選択する手順(A)と、前記手順(A)で縦向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを第1の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って第1の解像度で前記原稿を読み取り、横向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを前記第1の速度よりも大きい第2の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って前記第1の解像度よりも小さい第2の解像度で前記原稿を読み取るように前記読取部を制御する手順(B)と、前記手順(A)で横向きが選択された場合に、前記画像データを横向きに回転する回転処理、及び前記原稿の長辺方向に沿った前記画像データの解像度を前記第1の解像度に変換する解像度変換処理を含む画像処理を実行する手順(C)と、前記手順(A)で横向きが選択された場合に、前記手順(C)での前記画像処理済みの前記画像データに基づく画像を印刷するように前記印刷部を制御する手順(D)と、を前記複写装置の動作を制御する制御装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【0017】
(8)前記手順(C)では、前記印刷主走査方向に沿ったラインごとに前記解像度変換処理が実行されることを特徴とする上記(7)に記載のプログラム。
【0018】
(9)前記印刷部は、前記画像データのうち前記手順(C)での前記解像度変換処理が完了した部分から印刷を開始することを特徴とする上記(8)に記載のプログラム。
【0019】
(10)前記印刷部は、前記手順(A)で縦向きが選択された場合に、前記画像データのうち前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した部分から印刷を開始することを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載のプログラム。
【0020】
(11)前記手順(C)では、前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した後に前記画像処理が実行されることを特徴とする上記(7)〜(10)のいずれか1つに記載のプログラム。
【0021】
(12)前記解像度変換処理は、PWM(Pulse Width Modulation)回路により実行されることを特徴とする上記(7)〜(11)のいずれか1つに記載のプログラム。
【0022】
(13)上記(7)〜(12)のいずれか1つに記載のプログラムが記録されたコンピューター読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る複写装置によると、記録用紙の給紙向きとして横向き(LEF)が選択された場合に、ユーザー指定の読取解像度に対応する第1の速度V1よりも大きい第2の速度V2でラインセンサーを原稿に対して相対的に移動させることができる。よって、本発明に係る複写装置によると、ラインセンサーで原稿を長辺方向に沿って両者を相対移動させながら読み取ることにより取得した画像データに基づく画像を、記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致するように横向き(LEF)で給紙して印刷するための原稿複写処理の所要時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るMFPの外観を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るMFPの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るMFPにより実行される原稿複写処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るMFPにより実行される原稿複写処理の所要時間を示すタイムチャートの一例である。
【図5】本発明の一実施形態に係るMFPにより実行される原稿複写処理の所要時間を示すタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る複写装置としてのMFP100の外観を示す正面図であり、図2は、MFP100の構成を示すブロック図である。なお、MFP100は、図1、2に示される構成要素以外のものを含んでいてもよいし、図1、2に示される構成要素の一部を含んでいなくてもよい。
【0026】
図1、2のように、MFP100は、制御部110、操作パネル部120、原稿読取部130、給紙部140、印刷部150、及び後処理部160を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス170を介して相互に接続されている。
【0027】
制御部110は、メインCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ハードディスク104、第1画像処理回路105、第2画像処理回路106、及び通信インターフェース107を備えている。
【0028】
メインCPU101は、プログラムに従って上記各部の制御や各種の演算処理を行う。ROM102は、各種プログラムや各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。特に、RAM103は、通信インターフェース107を介して受信した印刷ジョブや、メインCPU101による各種演算処理結果や、原稿読取部130により取得した複写用原稿の画像データ等を一時的に記憶するために使用される。
【0029】
ハードディスク104は、MFP100の基本動作を制御する各種プログラムや各種データを格納する。また、ハードディスク104は不揮発性の記憶領域であるため、通信インターフェース107を介して受信した印刷ジョブや、原稿読取部130により取得した複写用原稿の画像データ等を長期間にわたり記憶するために使用される。
【0030】
第1画像処理回路105は、原稿読取部130のCCDイメージセンサー132から取得した信号に基づき複写用原稿の画像データを生成する。第2画像処理回路106は、第1画像処理回路105により生成された複写用原稿の画像データに対する各種画像処理を実行する。ここでいう画像処理には、第1画像処理回路105により生成された画像データの向きを印刷部150に給紙される記録用紙の向きに合わせて回転する処理(回転処理)や、当該画像データの解像度を適宜変換する処理(解像度変換処理)等が含まれる。これらの画像処理についてはさらに後述する。第2画像処理回路106による画像処理後の画像データは印刷処理のために印刷部150に送信される。
【0031】
通信インターフェース107は、他の機器と通信するためのインターフェースであり、ネットワークインターフェースおよびUSB(Universal Serial Bus)インターフェースを含んでいる。ネットワークインターフェースは、ネットワークを介して他の機器と通信するためのインターフェースであり、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)等の規格に準拠している。USBインターフェースは、USBメモリ等のUSB規格に準拠した外部機器と通信するためのインターフェースである。
【0032】
操作パネル部120は、タッチパネル、テンキー、スタートボタン、及びストップボタン等を備えたオペレーションパネルであり、ユーザーに各種情報を表示したり、ユーザーから各種動作指示を取得したりするために用いられる。
【0033】
原稿読取部130は、スキャナーCPU131、CCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサー132、IR/ADFモーター133、及びモータードライバー134を備えたイメージスキャナーである。原稿読取部130は、ADF(不図示)により所定の搬送速度で搬送される原稿に蛍光ランプ等の光源から光を照射し、その反射光をCCDイメージセンサー132により電子信号に変換する。そして、CCDイメージセンサー132による変換後の電気信号は第1画像処理回路105に送信され、これに基づき複写用原稿の画像データが生成される。
【0034】
ここで、CCDイメージセンサー132は、ADFによる原稿搬送方向に直交する方向に沿って配列された複数のCCDからなるラインセンサーであり、以下の説明において、CCDイメージセンサー132におけるラインセンサーの配列方向のことを原稿読取部130の「読取主走査方向」と称することにする。
【0035】
原稿読取部130は、ADFにより原稿の短辺方向と読取主走査方向とが一致するように縦向き(SEF)で搬送された原稿のみを読み取ることができる。すなわち、原稿読取部130は、ADFにより搬送された原稿の長辺方向に沿ってラインセンサー(CCDイメージセンサー132)を相対的に移動させることにより縦向き(SEF)の画像データを生成する。なお、以下の説明において、読取主走査方向と直交する方向(すなわち、ADFによる原稿搬送方向)のことを「読取副走査方向」と称することにする。
【0036】
スキャナーCPU131は、プログラムに従って上記各部の制御や各種の演算処理を行う。IR/ADFモーター133は、読取装置(Image Reader:IR)としてのCCDイメージセンサー132及びADFを駆動するためのモーターであり、モータードライバー134は、IR/ADFモーター133を制御するための制御装置である。
【0037】
モータードライバー134は、制御部の指示に従ってIR/ADFモーター133による原稿搬送速度を調整することができる。ここで、ADFによる原稿搬送速度と原稿読取部130による読取副走査方向の読取解像度とは反比例するので、例えば、ADFによる原稿搬送速度が2倍にされた場合には、原稿読取部130により取得される画像データの読取副走査方向に沿った解像度は1/2にされる。
【0038】
給紙部140は、印刷用の記録用紙をサイズごとに収容している。給紙部140は、複数の給紙トレイ140a〜140c及び手差しトレイ140dを備えており、給紙トレイ140a〜140c及び手差しトレイ140dに収容された記録用紙を1枚ずつ印刷部150に送り出す。複数の給紙トレイ140a〜140cには、複数種類の記録用紙がサイズごと又は給紙向き(SEF/LEF)ごとに収容されている。
【0039】
本例において、第1の給紙トレイ140aには、A4サイズの記録用紙が収容されており、その短辺方向と印刷部150の印刷主走査方向とが一致するように縦向き(SEF)で給紙されるものとする。一方、第2の給紙トレイ140bには、A4サイズの記録用紙が収容されており、その長辺方向と印刷部150の印刷主走査方向とが一致するように横向き(LEF)で給紙されるものとする。ここで、印刷主走査方向とは、後述する印刷部150の感光体ドラム上をレーザー光が移動する方向のことを指している。
【0040】
印刷部150は、第2画像処理回路106から受信した画像データに基づく印刷処理を実行する印刷エンジンである。より具体的に、印刷部150は、感光体ドラムを帯電させる帯電工程、レーザー光で感光体ドラム上を走査することにより静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラム上の静電潜像にトナーを付着させてトナー画像を形成する現像工程、感光体ドラム上のトナー画像を転写ベルトにより記録用紙に転写する転写工程、記録用紙に転写済みのトナー画像を定着ローラにより加熱・定着させる定着工程を含む電子写真方式の印刷処理を実行する。
【0041】
ただし、印刷部150により採用される印刷方式は、上述した電子写真方式に限定されず、印刷主走査方向に沿ったラインごとに画像を形成する工程を含む印刷方式であればいかなるものであってもよく、例えば、インクジェット方式であってもよい。なお、以下の説明において、印刷主走査方向に直交する方向(すなわち、感光体ドラムの回転方向であり、記録用紙の給紙方向でもある)のことを「印刷副走査方向」と称することにする。
【0042】
後処理部160は、印刷部150による印刷処理済みの記録用紙を排出するフィニッシャーである。後処理部160は、複数の排紙トレイを備えており、印刷処理済みの記録用紙は所定の排紙トレイに排出される。また、後処理部160は、印刷処理済みの記録用紙に対してステープル処理やパンチ処理等の各種後処理を施すための機構(不図示)を備えている。
【0043】
以上のような構成を有するMFP100は、ADFにより原稿の短辺方向と画像読取部130の読取主走査方向とが一致するように縦向き(SEF)で搬送された原稿を読み取って画像データを生成し、当該画像データに基づく画像を、記録用紙の短辺方向と印刷主走査方向とが一致するように縦向き(SEF)で給紙された記録用紙、又は記録用紙の長辺方向と印刷主走査方向とが一致するように横向き(LEF)で給紙された記録用紙に印刷する処理を実行する。以下の説明において、MFP100による上述した処理のことを「原稿複写処理」と称することにする。
【0044】
次に、本実施形態に係るMFP100の動作の概要について説明する。図3は、MFP100による原稿複写処理の手順を示すフローチャートである。図3のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、MFP100のハードディスク104に制御プログラムとして記憶されている。なお、原稿複写処理に先立ち、原稿読取部130のADFには複写用原稿が縦向き(SEF)で搬送されるようにセットされているものとする。
【0045】
先ず、MFPは、ADFに原稿がセットされたことを確認したら(S101)、操作パネル部120によりユーザーから各種コピー設定を受け付ける(S102)。S102で受け付けたコピー設定に関する情報はRAM103に記憶される。ここでいうコピー設定には、印刷部150による印刷部数に関する部数設定や、原稿読取部130による読取解像度に関する解像度設定や、給紙部140により印刷部150に給紙される記録用紙のサイズ及び向き(SEF/LEF)に関する用紙設定が含まれる。なお、以下の説明において、S102で受け付けたユーザーの解像度設定による読取解像度を「第1の解像度R1」と称し、第1の解像度R1に対応するADFの原稿搬送速度(すなわち、CCDイメージセンサー132の読取副走査方向に沿った移動速度)を「第1の速度V1」と称することにする。
【0046】
続いて、MFP100は、コピー開始指示を受け付けたら(S103)、S102で受け付けた用紙設定を参照して、印刷部150に給紙される記録用紙の向きが横向き(LEF)であるか否かを判定する(S104)。そして、MFP100は、S104での判定結果に応じて以降の処理を分岐する(S105〜S112又はS113〜S118)。先ず、記録用紙の向きが横向き(LEF)ではなく縦向き(SEF)であった場合(S104のNO)の手順について以下に説明する(S113〜S118)。
【0047】
先ず、MFP100は、第1画像処理回路105により生成される画像データの回転処理を行なわないよう(回転処理をOFFにするよう)第2画像処理回路106に指示する(S113)。その後、MFP100は、原稿読取部130による原稿の読み取り(スキャン)を開始する(S114)。このときのADFによる原稿搬送速度は、S102で受け付けた第1の読取解像度R1に対応する第1の速度V1とされる。そして、第1画像処理回路105により読取副走査方向に沿った解像度がR1である画像データが生成されることになる。
【0048】
その後、MFP100は、読取副走査方向に沿った原稿の所定位置までスキャンが完了したか否かを判定し(S115)、所定位置までスキャンが完了するまで待機する(S115のNO)。そして、MFP100は、所定位置までのスキャンが完了したら(S115のYES)、印刷部150による画像データの印刷処理を開始する(S116)。このように、ADFにより縦向き(SEF)で搬送された原稿を縦向き(LEF)で給紙された記録用紙に印刷する場合には、印刷処理に先立ち画像データの回転処理を実行する必要がないため、原稿読取部130により読み取った部分から順次印刷処理を開始することができる。
【0049】
その後、MFP100は、原稿全体のスキャンが完了したか否かを判定し(S117)、原稿全体のスキャンが完了するまで待機する(S117のNO)。そして、MFP100は、原稿全体のスキャンが完了したら(S117のYES)、ADFに次の原稿がセットされているか否かを判定する(S118)。そして、次の原稿がセットされている場合は(S118のYES)、前述のS115に戻り、次の原稿がセットされていない場合は(S118のNO)、原稿複写処理を終了する(エンド)。
【0050】
続いて、印刷部150に給紙される記録用紙の向きが横向き(LEF)であった場合(S104のYES)の手順について説明する(S105〜S112)。先ず、MFP100は、S102で受け付けた解像度設定(R1)による第1の速度V1よりも高速である第2の速度V2(V2>V1)で原稿を搬送するようモータードライバー134に指示する(S105)。ここで、第2の速度V2に対応する読取副走査方向の読取解像度を第2の解像度R2とする。上述のように、ADFによる原稿搬送速度と原稿読取部130による読取副走査方向に沿った読取解像度とは反比例するので、第2の解像度R2はユーザーの解像度設定による第1の解像度R1よりも小さくなる(R2<R1)。
【0051】
続いて、MFP100は、第1画像処理回路105により生成される画像データの回転処理を行なうよう(回転処理をONにするよう)第2画像処理回路106に指示する(S106)。そして、MFP100は、原稿読取部130による原稿の読み取り(スキャン)を開始する(S107)。
【0052】
このときのADFによる原稿搬送速度は、ユーザーの解像度設定による第1の速度V1よりも高速である第2の速度V2とされる(S105参照)。これにより原稿読取部130は、記録用紙の向きが縦向き(LEF)である場合と比較して短時間でスキャンを完了することができる。例えば、第2の速度V2が第1の速度V1の2倍である場合、原稿読取部130は1/2の時間で原稿のスキャンを完了することができる。
【0053】
そして、S107で原稿のスキャンが開始されると、第1画像処理回路105により読取副走査方向に沿った解像度が第1の解像度R1よりも小さい第2の解像度R2である画像データが生成されることになる。例えば、第2の速度V2が第1の速度V1の2倍である場合、原稿副走査方向に沿った画像データの解像度(第2の解像度R2)は、ユーザーの解像度設定による第1の解像度R1の1/2とされる(R2=R1/2)。
【0054】
その後、MFP100は、原稿全体のスキャンが完了したか否かを判定し(S108)、原稿全体のスキャンが完了するまで待機する(S108のNO)。そして、MFP100は、原稿全体のスキャンが完了したら(S108のYES)、第1画像処理回路105により生成した画像データに対して、第2画像処理回路106により画像回転処理(S109)及び解像度変換処理(S110)を実行する。これらの画像処理について以下に詳細に説明する。
【0055】
先ず、画像回転処理(S109)とは、第1画像処理回路105により生成された縦向き(SEF)の画像データを印刷部150に給紙される記録用紙の向き(LEF)に合わせて回転するための処理のことである。この画像回転処理により、第1画像処理回路105により生成された画像データは、印刷部150に給紙される記録用紙の向きに合わせて横向き(LEF)に回転される。そして、解像度変換処理(S110)とは、第1画像処理回路105により生成された画像データの読取副走査方向に沿った解像度(第2の解像度R2)をユーザーの解像度設定による第1の解像度R1に変換するための処理のことである。この解像度変換処理により、第1の画像処理回路105により生成された画像データの解像度は、読取副走査方向及び読取主走査方向の双方においてユーザーの解像度設定による第1の解像度R1と一致することになる。
【0056】
なお、S110での解像度変換処理は、例えば、第2画像処理回路106に設けられたPWM(Pulse Width Modulation)回路によって実行される。ここで、S110での解像度変換処理は、画像データの読取副走査方向と一致する印刷主走査方向に沿った走査ラインごとに実行されることが好ましい。これにより、第2画像処理回路106は、1走査ライン分のラインバッファのみを用いて解像度変換処理を実行することができるので、複数ライン分のラインバッファを搭載することによるコストアップを回避することができる。他方、画像データの印刷副走査方向に沿って解像度変換を実行しようとすると、第2画像処理回路106に複数ライン分のラインバッファを搭載する必要があるためコストアップが避けられない。
【0057】
その後、MFP100は、画像回転処理(S109)及び解像度変換処理(S110)を実行済みの画像データに基づき印刷処理を開始する(S111)。ここで、S110での解像度変換処理は画像データの印刷主走査方向に沿った走査ラインごとに実行されるので、MFP100は、画像データのうち第2画像処理回路106による解像度変換処理が完了した部分から順次印刷を開始することができる。
【0058】
その後、MFP100は、ADFに次の原稿がセットされているか否かを判定する(S112)。そして、次の原稿がセットされている場合は(S112のYES)、前述のS107に戻り、次の原稿がセットされていない場合は(S112のNO)、原稿複写処理を終了する(エンド)。
【0059】
次に、本実施形態に係るMFP100による原稿複写処理の所要時間について説明する。図4は、MFP100による原稿複写処理の所要時間を示すタイムチャートである。図中(B)は、記録用紙が印刷部150に横向き(LEF)で給紙される場合の所要時間を示しており、図中(C)は、記録用紙が印刷部150に縦向き(SEF)で給紙される場合の所要時間を示している。なお、図中(A)は、本実施形態との比較のために、記録用紙が横向き(LEF)で給紙される場合の従来技術による原稿複写処理の所要時間を示すタイムチャートである。
【0060】
図中(B)のように、本実施形態に係るMFP100は、記録用紙が横向き(LEF)で給紙される場合には、ユーザーの解像度設定による第1の速度V1よりも高速である第2の速度V2(V2>V1)で原稿を搬送するため、スキャンの所要時間を従来例と比較して大幅に短縮することができる。例えば、第2の速度V2が第1の速度V1の2倍である場合(V2=2×V1)、MFP100は1/2の所要時間でスキャンを完了することができる。
【0061】
そして、ADFが第2の速度V2で原稿を搬送することにより、CCDイメージセンサー132は第2の速度V2で原稿に対して移動することになる。よって、第1画像処理回路105は、読取副走査方向に沿った解像度がユーザーの解像度設定による第1の解像度R1よりも小さい第2の解像度R2(R2<R1)である画像データを生成することになる。その結果、第2画像処理回路106による画像回転処理の所要時間も従来例と比較して短縮されることになる。
【0062】
他方、本実施形態に係る原稿複写処理によると従来例においては不要であった解像度変換処理が新たに必要となる。しかし、本実施形態に係る解像度変換処理は画像データの印刷主走査方向(すなわち、読取副走査方向)に沿ったラインごとに実行されるので、MFP100は画像データのうち解像度変換処理が完了した部分から順次印刷を開始することができる。よって、本実施形態によると、第2の速度V2を適切に選択することにより従来例と比較して原稿複写処理全体の所要時間を大幅に短縮することができる。ここで、第2の速度V2が過度に大きくされると印刷主走査方向に沿った印刷画質が劣化するため、第1の速度V1に対する第2の速度V2の倍率(V2/V1)は、2.0〜3.0倍とされることが好ましい。
【0063】
図5は、本実施形態に係るMFP100において、原稿読取部130によるスキャンと印刷部150による印刷処理とを並行して行なった場合の原稿複写処理の所要時間を示すタイムチャートである。図中(B)は、記録用紙が印刷部150に横向き(LEF)で給紙される場合の所要時間を示しており、図中(C)は、記録用紙が印刷部150に縦向き(SEF)で給紙される場合の所要時間を示している。そして、図中(A)は、本実施形態との比較のために、記録用紙が横向き(LEF)で給紙される場合の従来技術による原稿複写処理の所要時間を示している。図5のように、スキャンと印刷処理とを並行して行なった場合においても同様に原稿複写処理全体の所要時間を大幅に短縮することができる。
【0064】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。例えば、上述した実施形態では、本発明に係る複写装置として原稿読取部130及び印刷部150を備えたMFP100を採用したが、本発明に係る複写機は、イメージスキャナー等の原稿読取装置及びプリンター等の印刷装置を備えた複写システムであってもよい。
【0065】
なお、本発明に係る複写装置は、上記手順を実行するための専用のハードウェア回路によっても、上記手順を記述したプログラムをCPUが実行することによっても実現可能である。後者により本発明を実現する場合、複写装置を作動させるプログラムは、フロッピー(登録商標)ディスクやCD−ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。ここで、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、記録装置に内蔵されたROMやハードディスク等に転送される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、複写装置の一機能としてソフトウェアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0066】
100 MFP、
101 メインCPU、
102 ROM、
103 RAM、
104 ハードディスク、
105 第1画像処理回路、
106 第2画像処理回路、
107 通信インターフェース、
110 制御部、
120 操作パネル部、
130 原稿読取部、
140 給紙部、
150 画像形成部、
160 後処理部、
170 バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の長辺方向に沿って当該原稿とラインセンサーとを相対的に移動させることにより前記原稿を読み取る読取部と、
前記読取部により読み取った前記原稿の画像データを生成するデータ生成部と、
前記データ生成部により生成した前記画像データに基づく画像を記録用紙に印刷する印刷部と、
前記印刷部に給紙される前記記録用紙の向きとして、前記記録用紙の短辺方向と前記記録用紙の給紙方向に直交する印刷主走査方向とが一致する縦向き、及び前記記録用紙の長辺方向と前記印刷主走査方向とが一致する横向きのいずれか一方を選択する選択部と、
前記選択部により縦向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを第1の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って第1の解像度で前記原稿を読み取り、横向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを前記第1の速度よりも大きい第2の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って前記第1の解像度よりも小さい第2の解像度で前記原稿を読み取るように前記読取部を制御する読取制御部と、
前記選択部により横向きが選択された場合に、前記画像データを横向きに回転する回転処理、及び前記原稿の長辺方向に沿った前記画像データの解像度を前記第1の解像度に変換する解像度変換処理を含む画像処理を実行する画像処理部と、
前記選択部により横向きが選択された場合に、前記画像処理部による前記画像処理済みの前記画像データに基づく画像を印刷するように前記印刷部を制御する印刷制御部と、を有する複写装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記印刷主走査方向に沿ったラインごとに前記解像度変換処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の複写装置。
【請求項3】
前記印刷部は、前記画像データのうち前記画像処理部による前記解像度変換処理が完了した部分から印刷を開始することを特徴とする請求項2に記載の複写装置。
【請求項4】
前記印刷部は、前記選択部により縦向きが選択された場合に、前記画像データのうち前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した部分から印刷を開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の複写装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した後に前記画像処理を実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の複写装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、PWM(Pulse Width Modulation)回路により前記解像度変換処理を実行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の複写装置。
【請求項7】
原稿の長辺方向に沿って当該原稿とラインセンサーとを相対的に移動させて前記原稿を読み取る読取部、前記読取部により読み取った前記原稿の画像データを生成するデータ生成部、及び前記データ生成部により生成した前記画像データに基づく画像を記録用紙に印刷する印刷部を有する複写装置の制御プログラムであって、
前記印刷部に給紙される前記用紙の向きとして、前記記録用紙の短辺方向と前記記録用紙の給紙方向に直交する印刷主走査方向とが一致する縦向き、及び前記記録用紙の長辺方向と前記印刷主走査方向とが一致する横向きのいずれか一方を選択する手順(A)と、
前記手順(A)で縦向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを第1の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って第1の解像度で前記原稿を読み取り、横向きが選択された場合に、前記ラインセンサーを前記第1の速度よりも大きい第2の速度で移動させることにより前記原稿の長辺方向に沿って前記第1の解像度よりも小さい第2の解像度で前記原稿を読み取るように前記読取部を制御する手順(B)と、
前記手順(A)で横向きが選択された場合に、前記画像データを横向きに回転する回転処理、及び前記原稿の長辺方向に沿った前記画像データの解像度を前記第1の解像度に変換する解像度変換処理を含む画像処理を実行する手順(C)と、
前記手順(A)で横向きが選択された場合に、前記手順(C)での前記画像処理済みの前記画像データに基づく画像を印刷するように前記印刷部を制御する手順(D)と、を前記複写装置の動作を制御する制御装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記手順(C)では、前記印刷主走査方向に沿ったラインごとに前記解像度変換処理が実行されることを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記印刷部は、前記画像データのうち前記手順(C)での前記解像度変換処理が完了した部分から印刷を開始することを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記印刷部は、前記手順(A)で縦向きが選択された場合に、前記画像データのうち前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した部分から印刷を開始することを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項11】
前記手順(C)では、前記読取部による前記原稿の読み取りが完了した後に前記画像処理が実行されることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項12】
前記解像度変換処理は、PWM(Pulse Width Modulation)回路により実行されることを特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1つに記載のプログラムが記録されたコンピューター読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−21491(P2013−21491A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153005(P2011−153005)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】