説明

複合シートの製造方法及び装置

【課題】特定の凹凸形状を有する複合シートを好適に製造することが可能な複合シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、シート2、3が接合されて多数の凹状部1Bが形成されているとともに、シート2には凹状部1B以外の部分の一部に、凸状部1Aが形成されている複合シート1の製造方法であり、凹凸部を有するロール11及びロール12を互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転させながら両ロールの間にシート2を供給して凹凸形状を賦形するに際し、ロール11の凹部へのロール12の凸部によるシート2の押し込み位置において、ロール12の凸部を、ロール11の凹部におけるロール11の回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心に対して非対称となるように設けておき、シート2に凹凸形状を賦形した後に、ロール11にシート2を保持した状態で、シート3を重ね合わせるように供給して両シートを部分的に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸形状が賦形された複合シートの製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のシート状物が部分的に接合されて多数の接合部が形成され、第1のシート状物が該接合部以外の部分において突出して、内部が空洞となっている多数の凸部を形成している複合シートの製造に関し、出願人は、種々提案している(例えば、特許文献1参照)。斯かる複合シートは、表面に多数の凹凸形状が形成されているため、吸収性物品の表面シートに使用した場合に、液漏れ防止性や隠蔽性に優れる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−174234号公報参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上述のような複合シートの製造において、シートへの凹凸形状の賦形に関して種々検討し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は、特定の凹凸形状を有する複合シートを好適に製造することが可能な複合シートの製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分の少なくとも一部に、凸状部が形成されている複合シートの製造方法であって、周面部に凹凸部を有する第1ロール及び第2ロールを互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転させながら両ロールの間に第1シートを供給して凹凸形状を賦形するに際し、第1ロールの凹部への第2ロールの凸部による第1シートの押し込み位置において、第2ロールの凸部を、第1ロールの前記凹部における第1ロールの回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心に対して非対称となるように設けておき、第1シートに凹凸形状を賦形した後に、第1ロールに第1シートを保持した状態で、第1シートに第2シートを重ね合わせるように供給して両シートを部分的に接合する複合シートの製造方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分に、凸状部が形成されている複合シートを製造する装置であって、周面部に凹凸部を有し互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転する第1ロール及び第2ロールを備えており、第1ロールの凹部への第2ロールの凸部による第1シートの押し込み位置において、第2ロールの凸部が、第1ロールの前記凹部における第1ロールの回転軸方向及び/又は該方向と交差する方向の中心に対して非対称となるように設けられている複合シートの製造装置を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記本発明の複合シートの製造装置を用いて製造された複合シートであって、第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分に、凸状部が形成されており、前記凸状部は該凸状部の相対向する壁部の傾斜が異なっている複合シートを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記本発明の複合シートが、表面シートに使用されている吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合シートの製造方法及び装置によれば、特定の凹凸形状を有する複合シートを好適に精度よく安定して容易に製造することができる。本発明により製造される複合シートは、賦形される凹凸形状によって液の流れの制御が可能であり、それを表面シートに使用した本発明の吸収性物品は、液漏れ性がより高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の複合シートの製造装置(以下、製造装置ともいう。)を好ましい実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の製造装置10は、後述するように、第1シート(以下、シートともいう。)2と、第2シート(以下、シートともいう。)3とが部分的に接合されて多数の凹状部1Bが形成されているとともに、シート2には凹状部1B以外の部分の一部に、凸状部1A、A’が形成されている複合シート1を製造する装置である。なお、後述するように、複合シート1において、凸状部1Aは、相対向する壁部の傾斜が異なっており、凸状部1A’は、このような壁部を有していない。また、複合シート1の凹状部1B内には、シート2とシート3とが接合された接合部1Cが形成されている。
【0013】
製造装置10は、周面部に凹凸部を有し互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転する第1ロール(以下、ロールともいう。)11と、第2ロール(以下、ロールともいう。)12と、アンビルロール13とを備えている。ロール11とアンビルロール13とは、ロール11の凸部11Aの頂部がアンビルロール13の周面と当接するように配置されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、ロール11は、平歯車からなる歯車111と歯車状のスペーサー112を複数枚組み合わせ、これらを回転軸113に同心状に取り付けてロール状に形成したものである。歯車111とスペーサー112は何れも同じ歯幅を有している。歯車111及びスペーサー112はその中心が開口しており、その開口部に回転軸113が挿入される。歯車111及びスペーサー112並びに回転軸113にはそれぞれ切り欠き部(図示せず)が形成されており、該切り欠き部にキー(図示せず)が挿入される。これによって歯車111、スペーサー112の空回りが防止される。
【0015】
スペーサー112の歯先円直径は、歯車111の歯先円直径よりも小さくなっている。また歯車111の歯数はスペーサー112の歯数の整数倍となっている。
【0016】
ロール11においては、1枚のスペーサー112に対してその両側にそれぞれ1枚ずつ歯車111が配されて、これらを一組とした歯車群110が複数組配されている。なお、図2では、便宜上3組の歯車群110及び両側に歯車111を備えた構成で示しているが、歯車群の数は、シート2の幅、賦形する凹凸形状等に応じて設定される。
【0017】
各歯車群110においては、歯車111及びスペーサー112は、それぞれの歯がロールの回転軸方向に並列するように配されている。これによって各歯車群110においては、ロール11の回転方向に沿って凸部11Aと凹部11Bとが交互に形成される。凸部11Aは、2枚の歯車及びスペーサーのそれぞれの歯がロール11の回転軸方向に並列して形成されたものであるか、或いは2枚の歯車111の歯がロールの回転軸方向に並列して形成されたものである。一方、凹部11Bは、2枚の歯車111の歯間で形成されたものである。凸部11Aの幅は、複合シート1の凹状部1Bの幅方向(Y方向)の寸法を決定する。
【0018】
ロール11においては、各歯車群110は、隣り合う歯車群110、110における凹凸部のピッチが互いに異なるように配される。本実施形態においては、隣り合う歯車群110どうしは凹凸部が半ピッチずれている。
図2及び図4に示すように、ロール11では、3組の歯車群110の両側に歯車111が半ピッチずれて配されており、各歯車111の各歯6つ(図2及び4では便宜上表面に斜線を付している。)に囲まれて凹部11Bが形成されている。
【0019】
図2に示すように、各歯車群110においては、2枚の歯車111間に、ロール11の回転方向に沿って、一定の間隔をおいて空隙部114が複数形成されている。各空隙部114は、2枚の歯車111と、これらの間に位置するスペーサー112とで形成されている。更に詳細には、各空隙部114は、2枚の歯車111の相対向する側面と、スペーサー112における隣り合う2つの歯によって画定される。従って空隙部114は、スペーサー112の歯数と同数形成されることになる。空隙部114は、先に述べた凹部11Bにおいて外部に向かって開口している。
【0020】
ロール11には、空隙部114がシート2の両側より外側にも配されるように、歯車群110が組み込まれていることがより好ましい。このような構成では、シート2の両側部に空隙部114から吸引力が作用するため、凹凸形状の賦形加工中やその後のロール11周面上の搬送において、シート2の両側部の折れ曲がりが防止される。
【0021】
歯車111には、回転軸113が挿入される中心の開口部を取り囲むように複数の吸引口115が形成されている。各吸引口115は同径であり、歯車の中心からそれぞれ等距離の位置に形成されている。隣り合う吸引口115どうしと歯車の中心とがなす角度は何れも等しくなっている。各歯車111における吸引口115の個数は、スペーサー112の歯数と同数になっている。そして、各歯車群110を組み付ける場合には、各吸引口115が、スペーサー112における隣り合う歯間にそれぞれ位置するように、歯車111及びスペーサー112を配置する。このように各歯車群110を組み付け、更にそれぞれの歯車群110を凹凸部のピッチが互いに異なるように配した状態においては、それぞれの歯車111の吸引口115が、ロール11の回転軸方向に連なって、該回転軸方向に延びる複数の吸引路116がロール11の内部に形成される。そして各吸引路116は、先に述べた空隙部114と連通する。従って、空隙部114は、吸引路116の一部を構成しているとみなすことができる。
【0022】
吸引路116の少なくとも一端は、ブロワや真空ポンプなどの吸気源(図示せず)に通じている。従って、吸気源を作動させて吸引操作を行うと、空隙部114から吸引路116を通じて吸気が行われる。ロール116の両側には、吸引ポート(図示せず)が配されている。この吸引ポートは、ロール11、12によるシート2への凹凸形状の賦形位置からロール11とアンビルロール13とによるシート2、3の接合位置に亘って、ロール11の周面部にシート2が吸着されるように、吸引路116と前記吸気源とを連通させ、それ以外の部分では、吸引路116と該吸気源との連通を遮断する。
【0023】
本実施形態のロール11は特に小ピッチで小凸部を多数形成する場合に有効であり、小ピッチで且つ歯の大きさが小さい歯車である低モジュールな平歯車を用いても、スペーサー112の歯幅を大きくしたり、また歯数を少なくしたりすることにより空隙部114を大きくできる。その結果、ロール11、12の噛み合いにより凹凸形状を賦形したシート2に対して、その賦形状態を保持する吸引力の発現を充分に確保することができる。更に、歯車の組み合わせや幅を変更するだけの簡単な操作で、凸部のピッチや大きさを自由に変更できるという利点もある。
【0024】
図4に示すように、ロール12は、ロール11と噛み合ったときの、ロール11の凹部11Bへのロール12の凸部によるシート2の押し込み位置において、ロール2の少なくとも一部の凸部が、ロール11の凹部11Bにおけるロール11の回転軸方向の中心Y11B及び/又は該方向と交差する方向の中心X11Bに対して非対称となるように位置がずれて設けられ、ロール11とともに回転して両ロールの間に供給されるシート2に凹凸形状を賦形できるものであれば、その構造に特に制限はない。なお、以下の説明において、ロール12におけるこの位置のずれた凸部を12A、位置のずれていない凸部を12A’で示す。なお、図4において、X方向は、ロール11、12の回転方向(回転軸に交差する方向)、Y方向はロール11、12の回転軸方向を示しており、凹凸形状が賦形されるシート2との関係では、X方向はシートの長さ方向、Y方向がシートの幅方向である。
【0025】
図5に示すように、ロール12は、凸部12Aにおけるロール12の回転軸方向の中心Y12A及び/又は該方向に交差する方向の中心X12Aを、ロール11の凹部11Bにおけるロール11の回転軸方向の中心Y11B又は該方向に交差する方向の中心X11Bからずらすことが好ましい。ロール12の凸部12AにおけるX12Aとロール11の凹部11BのX11Bとのずれ量、ロール12の凸部12AにおけるY12Aとロール11の凹部11BのY11Bとのずれ量については、凹部11B及び凸部12Aの回転軸方向また回転軸方向に交差する寸法や使用するシート2の材質、目的とする凸状部の形状に応じて設定される。
【0026】
図5に示すように、本実施形態においては、ロール11の凹部11Bへのロール12の凸部12Aによるシート2の押し込み位置において、ロール12の凸部12Aは、ロール11の凹部11Bに接触しないように隙間を有して配置される。前記位置において、ロール12の凸部12Aは、ロール11の凹部11Bの前記回転軸方向の両端面に接触しないように隙間を有して配置されているが、この隙間は、0.05mm以上、特に、0.2mm以上とすることが、シート2に無用な損傷を与えないようにする観点から好ましい。またロール11とロール12は、ロール11の凹部底面とロール12の凸部頂部が接触しないように配置することが望ましい。
【0027】
本実施形態では、ロール12は、上述のようにロール11と噛み合ったときに特定の押し込み位置が得られるように、ロール11と同様に複数の歯車群が組み合わされて形成される。ロール12に歯車群を組み合わせた構造を採用することで、ロール11の凹部11Bにおけるロール12に自由度を与えられる点から好ましい。また、歯車111及びスペーサー112を加工する時の厚みの誤差がロールに集積されるので、ロール12のスペーサーの厚みを修正するのみで、ロール11の誤差に対応可能であり、ロールの凹凸部の押し込み位置が容易で、かつ最小の部品加工で対応することができる。ロール12では、各歯車及びスペーサーの歯先の円直径は、ロール11よりも小さく、その分歯の数が少なくなっている。なお、ロール12には、ロール11のような吸引路は形成されていない。
【0028】
アンビルロール13は、加熱手段(図示せず)を備えている。そしてこの加熱手段で加熱された状態のアンビルロール13の周面とロール11の凸部11Aとの間でシート2とシート3を挟持したときに、シート2とシート3同士が熱融着されて接合され、接合部1Cが形成される。
【0029】
図には示していないが、製造装置10は、ロール11、12及びアンビルロール13を所定の回転速度で回転駆動させる駆動源を備えている。ロール12についてはロール11との噛合い回転に対する、連れ回り回転であってもよい。
【0030】
次に、本発明の複合シート及びその製造方法(以下、製造方法ともいう。)を、前記製造装置10を使用した吸収性物品の表面シートの製造に適用した一実施形態に基づいて説明する。
【0031】
本実施形態の製造方法によって製造される複合シートは、図6(a)及び(b)に示すように、シート2とシート3とが部分的に接合されて多数の凹状部1Bが形成されているとともに、シート2には凹状部1B以外の部分の一部に、凸状部1A、1A’が形成されている。図6(a)に示すように、複合シート1の一つの凹状部1B内には、シート2とシート3とが接合された接合部1Cが形成されている。
【0032】
凸状部1Aは、前述のように急斜面部21及び緩斜面部22を有しており、底面部は矩形状の形態とされ、全体として稜線が丸みを帯びた形態とされている。
図7に示すように、凸状部1Aは、シート幅方向における垂直断面形状において、接合部間に引いたベースラインと該ベースラインの垂直二等分線とで囲まれる領域において、急斜面部側の面積S21と緩斜面部側の面積S22とが、S21/S22=1.1〜10、特に1.1〜5であることが好ましい。
【0033】
また、凸状部1Aの壁部の急斜面部の角度θ21は、緩斜面部の角度θ22よりも大きく設定される。急斜面部の角度θ21は、30〜90°が好ましく、50〜85°が特に好ましい。緩斜面部の角度θ22は、10〜50°が好ましく、20〜35°が特に好ましい。凸状部1Aのシート長さ方向における前後の斜面部23の角度θ23は、20〜90°が好ましく、45〜85°が特に好ましい。
【0034】
凸状部1Aはその高さHが、0.3〜10mm、特に0.7〜5mmであることが好ましい。また、シート長さ方向(X方向)における凸状部1Aの底部寸法(L)は1.5〜30mm、特に2〜5mmであることが好ましく、シート幅方向(Y方向)における底部寸法(W21+W22)は1.5〜30mm、特に2〜10mmであることが好ましい。凸状部1Aの底面積は2.25〜900mm2、特に4〜50mm2であることが好ましい。
【0035】
複合シート1においては、緩斜面部22の傾斜方向が二方向に揃えられており、急斜面部21が対向し且つ緩斜面部22が外側に臨むように凸状部1Aが複合シート1の幅方向(Y方向)の両側に形成されている。
【0036】
凸状部1Aの間に形成された凸状部1A’は、全体として稜線が丸みを帯びた扁平な直方体又は截頭四角錐体となっている。凸状部1A’の壁部の角度θ24は、20〜90°が好ましく、45〜85°が特に好ましい。凸状部1A’の高さは凸状部1Aと同じ高さとすることが好ましい。また、シート長さ方向(X方向)における凸状部1A’の底部寸法、シート幅方向における底部寸法、及び凸状部1A’の底面積は凸状部1Aと同じとすることが好ましい。
【0037】
複合シート1においては、急斜面部21の坪量が、緩斜面部22の坪量に比べて低い。急斜面部21と緩斜面部22の坪量は、急斜面部21と緩斜面部22を切り取り、切り取り面積と重量を測定し算出する。測定には、急斜面部及び緩斜面部を複数(好ましくは10個以上)切り取ってそれぞれ坪量を算出し、その平均値で急斜面部21と緩斜面22の坪量が異なるか否か比較する。また、急斜面部21の坪量が緩斜面部22の坪量に比べて低いか否かは、これらの部位を顕微鏡観察により、繊維本数の測定をすることなどによって判断することができる。
【0038】
凹状部1B内に形成される接合部1Cの形態は、ロール11の凸部11Aの先端面に対応しており、平面視してほぼ矩形となっている。
【0039】
複合シート1においては、凸状部1A、1A’と凹状部1Bとがシートの長さ方向(X方向)の列において交互に現れ、シートの長さ方向(X方向)において隣り合う凸状部1A、A’の列は、半ピッチずつシートの長さ方向(X方向)にずれた千鳥配列となっている。凹状部1Bも、半ピッチずつシートの長さ方向にずれた千鳥配列となっている。このシートの長さ方向は、製造装置10による複合シート1の製造工程における流れ方向と一致し、また後述するように複合シート1が吸収性物品に組み込まれたときの該吸収性物品の長手方向と一致している。凸状部1A、1A’及び凹状部1Bがこのように配置されていることで、複合シート1を表面シートとして具備する吸収性物品においては液漏れが極めて効果的に防止される。
【0040】
複合シート1を構成するシート2には、特に制限はないが、吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、一般に使用される材質のシートが使用される。シート2の具体的な材質としては、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布が挙げられる。不織布の構成繊維の繊度は1〜20dtex、特に1.5〜4dtexであることが、複合シート1の強度確保、肌触りの向上等の点から好ましい。シート2の坪量は、10〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
【0041】
また、複合シート1を構成するシート3にも、特に制限はないが、吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、同様に、一般に使用される材質のシートが使用される。シート3の具体的な材質としては、不織布としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等が挙げられる。フィルムを使用する場合には、これを穿孔して多数の開孔を設け液透過可能とすることが好ましい。また不織布とフィルムのラミネートシートを用いることもできる。他シート3の坪量は、5〜50g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。シート2及び他シート3を含めた複合シート1の全体の坪量は、15〜150g/m2、特に20〜60g/m2であることが好ましい。
【0042】
上記シート2及び3を使用した複合シート1の製造に当たっては、まず、製造装置10において、ロール11及びロール12を所定の回転速度で回転させながらそれらの噛み合い部分にシート2を供給し、凹凸形状を賦形する。
【0043】
このロール11、12による凹凸形状の賦形によって、図6に示す凸状部1A、1A’が形成される。本実施形態では、ロール12の両側の凸部12Aによるロール11の凹部11Bへのシート2の押し込みにおいて、凸状部1Aを形成する部分であるロール11の凹部11Bに対し、ロール12の凸部12Aの押し込み位置をずらす。本実施形態では、凹部11Bにおけるロール11の回転軸方向の中心に対してロール11の内側にずらしているため、シート2が凸部12Aによって凹部11Bの中に押し込まれて凸形状が賦形される際に、凸状部1Aを形成する壁部に坪量差が生じる。
【0044】
即ち、凹部11Bに対して凸部12Aがずれた方向に位置して形成された部分の坪量は、その逆方向に位置して形成された部分の坪量に対して低くなる。この理由は、凸部がずれた方向に位置しているシート2は、ロール12の凸部12Aと、ロール11の凹部11B壁との隙間が、その対向する側より狭くなり、凸状部1Aを形成する壁部の傾きが急になり、凸部12Aによって凹部11B押し込まれるシート2の変形量が、その対向する側よりも大きくなるためである。これに対して、凸部12Aと凹部11Bの隙間が広く設定された側においては、凸状部1Aの壁部は比較的に緩やかであり、凸部の押し込みによるシート2の変形量も少なくなる。このため、坪量の変化は少なく、坪量の低下が抑えられる。また、凸部12Aの形状を非対称形状にして押し込みにおけるシートの変形量を変えることによっても、凹凸形状が賦形されたシートに上記と同様の坪量の変化を発現させることができる。このようなロール11、12によるシート2への凹凸形状の賦形のメカニズムによって、凸状部2の急斜面部21の坪量が緩斜面部22の坪量よりも低くなる。
【0045】
凹凸形状の賦形後は、前記吸引路116を通じた吸引力によってロール11の周面にシート2を吸引保持した状態でアンビルロール13によるシート3との接合位置まで移送する。これにより、シート3との接合までに、ロール11の周面からのシート2の浮き上がりを抑えることができ、所望の凹凸形状を維持した状態で、シート3と接合を行うことができるので、所望の凹凸形状を有する複合シートが得られる。
【0046】
そして、このシート2と重ね合わせるようにシート3を供給し、ロール11とアンビルロール13との間でこれらのシートを熱融着させて部分的に接合し、図6及び図7に示すように、シート2とシート3とが部分的に接合されて多数の凹状部1Bが形成されているとともに、シート2の凹状部1B以外の部分に内部が空洞の凸状部1Aが形成され、シート2、3が接合部1Cで接合された複合シート1が製造される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の製造装置10を用いた複合シート1の製造方法によれば、ロール11及び12を回転させながらシート2に凹凸形状を賦形した後、ロール11、ロール13間でシート2とシート3とを接合させるだけで、相対向する壁部の傾斜の異なる凸状部が形成された複合シートを好適に製造することができる。
【0048】
上述の製造方法によって製造される本実施形態の複合シート1は、緩斜面部22と急斜面部21とを有する凸状部を具備しているため、液の流れの制御が可能となり、また肌触り性やクッション性に優れる。また、急斜面部21においては緩斜面部22よりも坪量が低いため通液性が高く、一方、緩斜面部22では坪量が高いため液の堰き止め効果が高い。このため、急斜面部21から凸状部1Aの内部に入った液は緩斜面部22によって表面液流れを抑制し、下方への液の移動が促進される。よって、複合シート1を表面シートに使用した吸収性物品は、液漏れ性がより高められる。
【0049】
図8は、本発明の吸収性物品の一実施形態を示したものである。
図8に示す吸収性物品100においては、表面シートとしての複合シート1’と、裏面シート4との間に吸収性本体5が配されている。
【0050】
複合シート1’では、前記実施形態の複合シート1における、急斜面部及び緩斜面部を有する凸状部1Aが幅方向の両側に二列、急斜面部及び緩斜面部を有していない凸状部1A’が中央部に三列、千鳥配置で形成され、凸状部A、A’の間に凹状部1Bが形成されている。複合シート1’を構成するシートには、前記実施形態の複合シート1と同様のシート2及びシート3と同じシートが使用される。
【0051】
裏面シート4及び吸収性本体5には、従来から吸収性物品に使用されているものが使用される。
【0052】
本実施形態の吸収性物品100は、その表面シートに、液の流れの制御が可能で且つ通液性に優れる凸状部1Aがその幅方向の両側に複数列で形成されている複合シート1’が使用されているため、液漏れ性がより高められる。
【0053】
本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、前記実施形態では、図4(a)に示したようにシート2をロール11の凹部11Bに押し込むロール12の凸部12Aの位置を、ロール12の凹部11Bにおける回転軸方向の中心に対して非対称になるよう配置にしたが、本発明の製造装置は、図9に示すように、シート2をロール11の凹部11Bに押し込むロール12の凸部12Aを、ロール11の回転軸と交差する方向の中心に対して非対称となるように設けることによって、複合シート1の凸状部1Aを形成することもできる。
【0054】
本発明の製造方法及び装置は、ロール12(第2ロール)の凸部12Aの形状を、ロール12の凸部12Aにおけるロール12の回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心に対して非対称となるよう形成することができる。例えば、図10に示すように、ロール12の凸部12Aが先端に進むにつれて先細るように凸部12Aの片側を傾斜させてもよいし、両側を傾斜させてもよい。この場合、図11に示すように、賦形に際してシートへのダメージが少なくなるように、凸部12Aの形状に沿ってシートが賦形されるように、凸部を形成することもできる。さらに、図12に示すように、ロール12の凸部の形状をロール12の回転方向の中心X12Aに対して非対称な形状とすることもできる。
【0055】
本発明の製造装置は、図13に示すように、1枚の歯車111と1枚のスペーサー112を一組とした歯車群110を複数組用意し、歯車111とスペーサー112とが交互になるように回転軸に取り付け、且つロール11の軸方向に隣り合う歯車111の歯を半ピッチずれるように配して第1のロール11’とすることもできる。この場合には、ロール11’の周面の4つの歯(ロール11’においては各歯が凸部11Aとなる)により、凹部11Bが形成される。
【0056】
本発明の製造方法及び装置は、シートに凹凸形状を賦形する第1、第2ロールは、前述のような凹凸部が互いに噛み合ったときに特定の押し込み位置が得られる限り特に制限はない。例えば、何れか一方又は両方をスペーサーを用いずに歯車のみでロールを構成することもできる。また、本発明の製造方法及び装置は、第1、第2ロールとして一体的に形成した、例えば、彫刻ロールを用いることもできる。
【0057】
また、本発明の複合シートは、凸部の緩斜面部の傾斜方向は、複合シートの用途に応じ、一方向にのみ揃えてもよいし、三方向以上に揃えてよい。
【0058】
また、本発明の複合シートは、急斜面部と緩斜面部を有する凸状部のみで形成されていてもよい。
【0059】
また、本発明の複合シートは、前記実施形態の複合シート1におけるように、凸状部1Aと凹状部1Bの列が、隣り合う列と半ピッチずつずれて配置されていることが好ましいが、半ピッチ以外のピッチで配置されていてもよく、同ピッチ(同位相)でもよい。
【0060】
また、前記実施形態においては、複合シート1はシート2及びシート3の2層構造であったが、シート3の下側に、複合シート1に所定の機能を付与する一又は二以上の別のシートを更に積層や接合をしてもよい。
【0061】
また、本発明の複合シートは、前記実施形態におけるような、シート2とシート3とを熱融着によって接合することに代えて、接着剤による接着や超音波接合によってこれらのシートどうしを接合して接合部を形成してもよい。
【0062】
また、本発明は、前記実施形態におけるような、シートの長さ方向(X方向)が吸収性物品の長手方向と一致している形態に限らない。例えば幅の広い複合シートを形成して、所定長さに切断した後に90度方向を変えることによって、複合シートのY方向を該吸収性物品の長手方向と一致させてもよい。
【0063】
本発明の複合シートは、前記実施形態のような吸収性物品の表面シート以外に、吸収性物品の外装材等の他の構成部材、使い捨ての着衣用のシートとしても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の複合シートの製造装置の一実施形態における要部を複合シートの製造方法とともに示す模式図である。
【図2】図1に示す複合シートの製造装置における第1ロールの一形態を示す斜視図である。
【図3】第1ロールの分解斜視図である。
【図4】第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態を示す図であり、(a)はロールの凹部と凸部の先端形状との関係を示すロール部分展開平面図、(b)は要部の縦断面図ある。
【図5】第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態における凸部と凹部との位置関係を説明するための平面図である。
【図6】本発明の複合シートの一実施形態を示す模式図であり、(a)は複合シートの幅方向の断面図、(b)は複合シートの側面図である。
【図7】本発明の複合シート一実施形態における凸状部の形態を示す模式図である。
【図8】本発明の吸収性物品の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の複合シートの製造装置の他の実施形態における、第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態を示す図であり、ロールの凹部と凸部の形状との関係を示すロール部分展開平面図である。
【図10】本発明の複合シートの製造装置の他の実施形態における、第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態を示す図であり、要部の縦断面図である。
【図11】本発明の複合シートの製造装置の他の実施形態における、第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態を示す図であり、要部の縦断面図である。
【図12】本発明の複合シートの製造装置の他の実施形態における、第2ロールの凸部による第1ロールの凹部へのシートの押し込み状態を示す図であり、要部の側面図である。
【図13】本発明の複合シートの製造装置における第1ロールの他の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 複合シート
1A、1A’ 凸状部
1B 凹状部
1C 接合部
2 第1シート
21 急斜面部
22 緩斜面部
3 第2シート
10 複合シートの製造装置
11 第1ロール
11A 凸部
11B 凹部
12 第2ロール
12A、12A’ 凸部
12B 凹部
13 アンビルロール
100 吸収性物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分の少なくとも一部に、凸状部が形成されている複合シートの製造方法であって、
周面部に凹凸部を有する第1ロール及び第2ロールを互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転させながら両ロールの間に第1シートを供給して凹凸形状を賦形するに際し、
第1ロールの凹部への第2ロールの凸部による第1シートの押し込み位置において、第2ロールの凸部を、第1ロールの前記凹部における第1ロールの回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心に対して非対称となるように設けておき、
第1シートに凹凸形状を賦形した後に、第1ロールに第1シートを保持した状態で、第1シートに第2シートを重ね合わせるように供給して両シートを部分的に接合する複合シートの製造方法。
【請求項2】
第2ロールの前記凸部における、第2ロールの回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心を、第1ロールの前記凹部における第1ロールの回転軸方向又は該方向に交差する方向中心からずらす請求項1に記載の複合シートの製造方法。
【請求項3】
第2ロールの前記凸部の形状を、第2ロールの前記凸部における第2ロールの回転軸方向及び/又は該方向に交差する方向の中心に対して非対称となるよう形成する請求項1に記載の複合シートの製造方法。
【請求項4】
第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分に、凸状部が形成されている複合シートを製造する装置であって、
周面部に凹凸部を有し互いの凹部と凸部とが噛み合うように回転する第1ロール及び第2ロールを備えており、
第1ロールの凹部への第2ロールの凸部による第1シートの押し込み位置において、第2ロールの凸部が、第1ロールの前記凹部における第1ロールの回転軸方向及び/又は該方向と交差する方向の中心に対して非対称となるように設けられている複合シートの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の複合シートの製造装置を用いて製造された複合シートであって、
第1及び第2シートが部分的に接合されて多数の凹状部が形成されているとともに、第1シートには凹状部以外の部分に、凸状部が形成されており、
前記凸状部は該凸状部の相対向する壁部の傾斜が異なっている複合シート。
【請求項6】
前記凸状部の前記壁部に急斜面部と緩斜面部を有しており、該緩斜面部の傾斜方向が一方向に揃えられている請求項5に記載の複合シート。
【請求項7】
前記凸状部の前記壁部に急斜面部と緩斜面部を有しており、該緩斜面部の傾斜方向が複数の方向に揃えられている請求項5に記載の複合シート。
【請求項8】
前記壁部における前記急斜面部どうしが対向し且つ前記緩斜面部が外側に臨むように前記凸状部が形成されている請求項7に記載の複合シート。
【請求項9】
前記壁部における急斜面部の坪量が、緩斜面部の坪量に比べて低い請求項5に記載の複合シート。
【請求項10】
請求項5〜9の何れかに記載の複合シートが、表面シートに使用されている吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−248491(P2009−248491A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100822(P2008−100822)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】