複合ナノ粒子
テスト分子の分配係数を測定する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:多孔表面を有するナノ粒子と第一の溶媒から成る組成物に、該分子を混合する工程において、第二の溶媒が多孔表面に吸収され、第一の溶媒は第二の溶媒に対して非混和性を有するものである工程;及び、該ナノ粒子と第一の溶媒とを分離する工程。第一の溶媒の中に残る分子の量は、分配係数の計算が可能となるように、決定される。分離を容易にするために、ナノ粒子は、磁性材料の芯を有していても良い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔表面を有するナノ粒子、かかるナノ粒子を製造する方法、並びに、分子の分配係数 (partition coefficient) の測定や、生物学的に活性な種の如き、触媒活性の種の封入における、それらの使用に関するものである。更に、成分を、ナノ粒子等の多孔材料の孔に析出 (depositing) させる方法にも、関連している。
【背景技術】
【0002】
「ナノ粒子 (nanoparticles)」という語は、ナノメートルの尺度の大きさを有する粒子について述べるために用いられている。一般的に、これらの粒子は、サイズが約1nm乃至1μmまでの範囲内であり得、通常は、1nmから2〜3百ナノメートルの直径を有している。このようにサイズが小さいことから、ナノ粒子は、表面積と体積との比が非常に大きい。この特徴は、ナノ粒子の多くの使用の場合に、多くの不均一触媒作用の如く、その工程において、できる限り少ない体積で、最大の表面積が必要とされる理由を明らかにしている。
【0003】
ナノ粒子は、その内部構造において、多様であり得る。最も単純な粒子が、単に一つの材料のみでできている一方で、より複雑な粒子は、異なる材料で形成された1つ又はそれ以上の異なる層が周りに配置された芯 (core) の領域を有する場合がある。
【0004】
ナノ粒子を製造するための多くの方法がある。それは、材料の単純なすり潰しや粉砕の技術から、マイクロエマルジョンからの析出 (deposition) 及びエマルジョンの重合を通じて、材料の電気アーク蒸発までの範囲に到る。用いられる方法は、必要とされる粒子の複雑さ、例えば、その粒子の異なる材料の層の数、異なる層が如何に相互作用するか、及び、その他の十分に定義された要因に基づいている。
【0005】
ナノ粒子を、単一の材料から単純な粉砕の技術によって製造することが、最も単純な製造方法であるが、粒子内部の芯を化学的又は物理的な劣化 (degradation)から保護するために、外側がコーティングされた粒子が、広く用いられている。
【0006】
様々に異なる芯材料及び表面層を有するナノ粒子の製造方法が、広く知られている。
US6,548,264は、外側にシリカコーティングを有する粒子の範囲、及びマイクロエマルジョンを用いたそれらの製造方法について、開示している。
【0007】
WO 03/057359として公開された国際出願PCT/GB2003/000029(Reading University)も、磁性の芯を有するシリカ粒子の製造方法について、記載している。アルミナ、チタニア、又はジルコニアのような、他のコートされた材料のナノ粒子を、ゾル・ゲル技術又は関連の技術によって製造する方法が、知られている。
【0008】
【特許文献1】US6,548,264
【特許文献2】WO 03/057359
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ナノ粒子の表面層の孔質 (porosity) を利用するものであり、かかる粒子を新しい用法に利用するものである。孔質は、該粒子を製造する際に、制御することができる。また、この製造方法は、多孔のコーティング又は層の内側で、粒子の芯に所望の分子の導入を許容するものであり、そして該粒子の孔質は、捕捉された分子へのアクセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様においては、ナノ粒子が、二つの非混和性の溶媒から成る溶媒系における分子の分配係数を決定するプロセスにおいて、調製され、使用される。分子の分配係数は、その中で測定される溶媒系に依存し、平衡状態にある該二つの溶媒間で分子がどのように分配されるかについての数値的評価を与える。これは、医薬品の発展における、一つの特別な用法を有する。
【0011】
分配係数の値を測定するための、現時点での技術は、"Pharmacokinetic Optimization in Drug Research: Biological, Physicochemical and Computational Strategies" (B. Testa, H. van de Waterbeemd, G. Folkers, R. Guy (editors), Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, 2001) に記載されている。最も一般的に適用されている測定においては、テスト分子が、第一の溶媒、例えば水に、公知の濃度で溶解せしめられている。この溶液の公知の量が、その後、公知の量の第二の溶媒、例えばn−オクタノールに添加され、そしてそれら二つの相は、十分に混ぜられる。この系は、それから、濃度平衡に到達するようにされる。最後に、第一の溶媒を含む相が、分離され、この溶液中のテスト分子の濃度が測定される。この値から、分配係数(P)が決定され得るのである。
【0012】
分配係数を決定するための、この方法により、幾つかの問題が発生する。非混和性のこれら二つの相が混ぜられると、濃度平衡に到達するには、長時間平衡させる必要がある。これは、二つの相の間の接触面積が、比較的少ないためである。また、二つの相の分離は、相の間の境界線(境界面)の位置を視覚的に評価することを、必要とするからである。ある分子が、一つの相に高度に可溶であると、その溶媒を非常に少ない量で用いることが必要となる場合があり、境界面の位置の評価が困難になる。更に、分配されるべき相のために境界面が認識できなければならない、という事実により、比較的多量の溶媒の使用を必要とする。これは、多量の有害な廃棄物を生み、その手順のためのコストを高める。
【0013】
これらの問題が組み合わさることにより、この工程は、特に産業規模で実施される場合に、コストと時間のかかるものとなる。
【0014】
本発明は、一つの態様において、テスト分子の分配係数の測定方法においてナノ粒子を用いることにより、上記の問題の克服を求めるものである。
【0015】
従って、第一の態様において、本発明は、第一の溶媒及びナノ粒子の本体 (body of nanoparticles) を含有する混合物中の二つの溶媒間の化学的化合物の分配係数を決定する方法を提供するのであり、そこにおいて、第二の溶媒は、ナノ粒子の孔 (pore) 内に吸収されている。それらに吸収された溶媒を有するナノ粒子の本体は、所定量の溶媒を提供することができ、その際の溶媒の量は極少量であり得、極度の分配係数の決定 (determination of extreme partition coefficients) を許容する。該ナノ粒子は、例えばナノ粒子が磁選を許容する磁性体の芯を有する際に、第一の溶媒から簡単に分離せしめられ得る。遠心分離や、ナノ粒子の沈殿を起すために、例えば別の溶媒を加えることによって、該系の誘電率を変えるという方法の如き、その他の分離方法も利用可能であるので、本発明の本態様にて採用されるナノ粒子は、多孔材料のみからなるものでもよい。
【0016】
分配係数の測定にナノ粒子を使用しても、その結果に影響を及ぼさない、すなわち、ナノ粒子は、得られる分配係数の値に、著しい影響を及ぼすことはない、ということが、示されてきた。測定された化合物の平衡分布が速やかに得られるので、その手順は速やかであり得、また簡単且つ効果的にナノ粒子が分離されるので、用いられるべき一方又は両方の溶媒が、少量となることにより、経済的と為し得るのである。
【0017】
分配係数の正確な決定のためには、第一の溶媒相が第二の溶媒相で予め飽和せしめられているか、あるいはその逆であることが、望ましい。従って、二つの溶媒は、互いに完全に不溶である必要はなく、重要なのは、それらが二つの非混和性の相を形成することであり、「非混和性の(immiscible)」との語は、ここでは、その意味にて用いられる。
【0018】
本発明は、また、分配係数を決定するための本方法において有用なナノ粒子を含む組成物にも、ある。ここでは、多孔の外側コーティングを有するナノ粒子及び第一の溶媒の混合物が提供され、そこで、第二の溶媒がナノ粒子の多孔コーティングに吸収されるのであり、その場合の第一の溶媒と第二の溶媒とは、非混和性である。このような組成物は、例えば第一の溶媒中の粒子のコロイド的な分散物として安定しており、長い貯蔵寿命を有し、そして所定量の第二の溶媒を、簡単に且つ正確に投与すること(dipensing)を許容する。この組成物においては、第二の溶媒相は、ナノ粒子中に完全に吸収されること、つまり、ナノ粒子の外側に自由に現われないことが、好ましい。
【0019】
従って、第一の溶媒の単位体積当たりの(すなわち、組成物全体の単位体積当たりでもある)、第二の溶媒を含むナノ粒子の量を、予め決めること、つまり、特定の組成物に関して知り、固定することができる。ナノ粒子は、第一の溶媒中に、コロイド溶液として、均一に分布せしめられ得る。そのため、二つの溶媒の体積の比は、前もって正確に決定される。従って、ある量の組成物の容量的投与 (volumetric dispensing)が実施され得、如何なる任意の量の二つの溶媒でも、簡単な方法で、所定の比率にて得られる。そして、高い精度が達成され得るのである。
【0020】
この組成物は、蒸発を避けるため、密閉容器にて保管されることが、好ましい。
【0021】
ナノ粒子が懸濁せしめられる第一の溶媒は、好ましくは、水性のもの、例えば、水又は水性溶液或いは含水相である。
【0022】
ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収される前記第二の溶媒は、例えば、水に対して非混和性である溶媒である。例えば、n−オクタノール、シクロヘキサン、アルカン(C6−C10)、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(propylene glycol dipelargonate: PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等である。
【0023】
二つの溶媒とも、好ましくは、何等の生物学的に活性な種を持つ化合物も、特に何等の薬学的に活性な化合物 (pharmaceutically active compound)も含んでいない。
【0024】
溶媒を含む粒子を形成するために、超臨界流体を用いて、この本発明の組成物を形成する方法は、以下に記述される。
【0025】
本発明によって提供される組成物の代替的な形式のもので、本文に記載された分配係数の決定の如き、定量的分析の手順において便利な形態をした所定の量の溶媒(すなわち、上記第二の溶媒と呼ばれる溶媒)の正確な投与に適したものも、夫々が多孔表面を有し、その孔の中に溶媒が吸収せしめられているナノ粒子を、組成物の単位重量当たり所定の量含んだ組成物である。この組成物は、自由溶媒(free solvent)が存在しない(すなわち、全てナノ粒子内に吸収せしめられている)ものであり、それによって、該溶媒が、効果的に微粒子的に固体(solid)であり、重さを量ることによって(重量測定法によって)必要量を投与することが可能(dispensable)であることが、好ましい。従って、溶媒の量は、組成物の単位重量当たり、事前に定められている。この組成物も、溶媒の蒸発を避けるため、密閉容器にて保管されることが好ましい。この溶媒は、実質的に溶質を含まないもの、例えば生物学的に活性な化合物を含まないものとすることができる。この組成物は、上記のように二つの溶媒の組成物を得るために、望ましい量の別の溶媒(上記で第一の溶媒と呼ばれているもの)と正確に混合されてよく、これは、例えばユーザーによって、使用の直前に行われてよいものである。超臨界流体を用いた、本発明のこの組成物の形成方法は、以下に記述される。
【0026】
本発明の第二の態様においては、触媒的に活性な種、特に生物学的に活性な種、特に生物学的触媒が、多孔のナノ粒子の芯に捕捉され得、その際、触媒反応を起すため、触媒活性が維持され、基質の分子が粒子の孔を通じてそこに接触可能であるということを、見出したことに、起因するものである。これは、多孔コーティングが、該生物学的に活性な種のサイズよりも小さい孔サイズを有することによるものである。一つの有利な点は、生理活性を持つ種が、化学的結合をすることなしに捕捉され得るため、本質的に、最適な性質の遊離状態(free state of optimum nature)にあるということである。従って、その活性は、分子が支持体に化学的に結合せしめられる公知の技術とは異なり、障害を受けたり、変更されたりすることがない。
【0027】
粒子サイズ、特に芯 (core) のサイズを制御することにより、捕捉された種を公知の再現可能な量にて含む、ナノ粒子の本体を提供することが可能となる。芯のサイズは、生理活性を持つ種の分子が、一つのみ存在する程度のサイズでもよく、その場合、ナノ粒子の集団において、触媒分子を全く含まないものもあれば、一つよりも多く含むものある。従って、触媒的に活性な種の分子を、粒子当たり平均で、多くて一つ含む、ナノ粒子の集団又は集合を、提供することが可能である。
【0028】
この捕捉による一つの利点は、不活性化の程度を低減するコーティングによって、生理活性を持つ種の会合又は凝集 (agglomerization)を低減する(二量体、三量体、四量体等の形成を低減する)ということである。
【0029】
本発明のかかる態様における、触媒的に活性な種を含むナノ粒子は、多くの用途、例えば酵素反応及びその他の触媒反応、分析方法(例えば、抗原−抗体反応、蛋白質−薬物結合、バイオレセプター−抗原結合、オリゴヌクレオチドの認識、ビオチン−ストレプトアビジン反応の如き、標的とする分子を捕捉された種に結合することによるもの)において、及び、バイオセンサー等として、採用され得る。重要な利点は、自由な形態の嵩高い生理活性を持つ種を、目的に合ったサイズの多孔コーティングを有するナノ粒子の芯の内部に捕捉するということである。これは、捕捉された種が、コーティングを通じて溶液に溶解されることを防ぐ。一方、コーティングの孔サイズは、捕捉された分子に自由に接近することを許容し、小さい分子(孔サイズよりも小さい)の交換を許容する。従って、捕捉された芯磁石 (core magnet) を用いて又はその他の手段によって、分離が達成され得る。その結果、複合ナノ粒子の多孔コーティングは、分子の認識及び分離のための「ナノメンブラン (nanomembrane)」であると考えられ得る。
【0030】
更に、触媒的に活性な種をカプセル化する本発明のナノ粒子は、触媒作用が小規模にて行われることを許容し、不均一系触媒からの生成物の簡単な分離を許容する。
【0031】
上記のように、本発明は、第一の溶媒中に存在し、その多孔コーティングに吸収された第二の溶媒を担持する多孔コーティングを有する、ナノ粒子の組成物を提供するものである。本発明は、更に、その孔に、組成物の単位重量当たり所定の量において吸収せしめられている溶媒を有するナノ粒子の組成物を、提供するものである。
【0032】
本発明者らは、ナノ粒子の孔において、溶媒液の如き材料を、高度な量的精度をもって析出する新規な方法を見出した。この方法は、ナノ粒子のみならず、大きな物体の表面、又は任意のサイズの粒子の表面等の、如何なる多孔表面における材料の析出にも、適用することができる。
【0033】
従って、本発明に従う更に別の態様によれば、多孔材料が超臨界流体中において或る成分の溶液に接触することによって、多孔材料の孔において該成分を析出又は分散させる方法が、提供される。好適には、かかる超臨界流体は、減圧し、そして蒸発を許容することによって、除去せしめられる。
【0034】
好適な超臨界流体は、容易に制御できる温度及び圧力において、超臨界となる二酸化炭素である(SC−CO2)。適切な超臨界流体を形成することのできる、その他の物質の例には、エタン、水、ブタン、アンモニア、並びに、Ar、Xe、及びKrの如き貴ガス (noble gas)がある。
【0035】
SC−CO2に可溶の成分は、例えば、炭化水素類(脂肪族及び芳香族の両者を含む)、ハロカーボン類、アルデヒド類、エステル類、ケトン類、及びn−オクタノールのように、炭素原子を1乃至12個有する脂肪族アルコール類等のアルコール類の如き有機分子である。特に、本発明の態様の一つにおいては、比較的低分子量(例えば≦200)の溶媒化合物に適用することができるが、本発明は、また、例えば分子量が≦500、特に200−500である生物学的種及び薬物分子等の大きな分子の如き、他の分子の析出又は分散をも含んでいる。二つ又はそれ以上の化合物が、同時に析出又は分散せしめられてもよい。
【0036】
本発明は、更に、上記の如き超臨界流体を用いた方法によって、所定の量で第一の成分を含む多孔粒子を調製する工程と、該第一の成分を含有する粒子を、液状の第二の成分に添加する工程とを含む、二つの成分を有する組成物の調製方法も、提供する。これら二つの成分は、一般的に、非混和性である。前記第二の成分は、例えば、水性であってよい。第二の成分が大過剰である場合に、例えば、重量比が100:1又はそれ以上、例えば、100:1乃至3000:1の範囲、好ましくは500:1乃至1500:1である場合にも、二つの成分の、正確な比率が成し遂げられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
多孔コートされたナノ粒子の形成及び特性
上記せるように、多孔のコーティングによって取り囲まれた芯を有する固体のナノ粒子は、以下の工程を含む方法によって、製造され得る:
a)芯となる種を含み、且つ、有機安定剤によってコロイド的に安定化せしめられているか、又は、ミセル凝集体(例えば、界面活性剤分子によって取り囲まれた、安定化せしめられた水滴)として安定化せしめられているコロイド粒子を、液状媒質中において形成する工程;及び
b)前記コロイド粒子又はミセル粒子と、前記液状媒質との界面区域内にて、前駆物質の化合物を加水分解することによって、前記コロイド粒子の周りに、多孔コーティングを形成する工程。
【0038】
好ましくは、多孔コーティングを所望の厚さにするために、ナノ粒子は、コロイド系から取り出される前に、例えば、1時間から数週間、好ましくは2−5日間、熟成される (aged) こととなる。
【0039】
粒子の芯の周りに形成される多孔コーティングは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、又はカーボンの如き多孔材料の部類から、形成されてよい。好ましくは、多孔コーティングは、コロイド懸濁液の界面領域で、シリコン含有化合物の加水分解により、シリカから形成される。
【0040】
この加水分解される化合物は、アルコキシシラン化合物、即ち、少なくとも一つのSi−OR結合を有する化合物 [但し、Rは、テトラエチルオルソシラン(TEOS、Si(OC2H5)4)の如く、好ましくは1−8個の炭素原子、更に好ましくは1−4個の炭素原子を有するアルキルである];及び、クロロ−、ブロモ−、ヒドロ−、及びメタロ−シラン(加水分解が起きる、Si−Cl、Si−Br、Si−H、又はSi−M結合を含有する)であり得る。その代わりとしては、加水分解される化合物は、チタニウムイソプロポキシド又はチタニウムテトラクロライドの如き、チタニウム、アルミニウム、又はジルコニウムの、類似アルコキシ、ハロ、ヒドロ化合物(又は金属間化合物)とすることができる。
【0041】
上記化合物の加水分解の後、前記の熟成の工程により、−OH種の相互縮合が許容されて、その中に粒子を取り囲む三次元ゲル(例えば、Si−O−Si又はTi−O−Tiの結合を伴うもの)を形成する。
【0042】
カーボンコーティングの形成のために、工程(a)で形成されたコロイド粒子は、コロイド懸濁液から分離せしめられ、そして熱分解されることにより、粒子の周りの有機界面活性剤のコーティングが分解して、ナノ粒子の芯の周りに多孔カーボンの外側コーティングが形成されるようになる。ポリビニルアルコール、フェノール/ポリフェノール、多糖類等の如き、その他のカーボン前駆物質(類)を、多孔カーボンの形成に用いることができる。
【0043】
工程(a)における方法の好ましい形態においては、コロイド粒子は、界面活性剤によって安定化せしめられた分散相の小滴又はミセルを有し、且つ芯材料の溶解された化合物を含むエマルジョンを形成し、そしてコア種の沈殿を惹起して、それによってミセルの内部にコロイド状の粒子を形成することにより、作られる。この沈殿は、アルカリ又はアンモニアの添加によって惹起され得る。
【0044】
コロイド粒子を安定化させるために用いられる好ましい界面活性剤には、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、オレイン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、及び、AOTやTX100等の如き非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0045】
前記多孔材料は、その表面に、生化学的又は生物学的種(例えば、ペプチド類、マーカー類 (markers)、同種の結合相手、可溶化剤類)の如き、他の種の化学的(例えば共有)結合のため、若しくは、リンカー分子を使用又は使用することなく、基質にナノ粒子を結合するために、官能基、例えば、OH基を有していてよい。また、静電相互作用によって、所定のpHでの荷電表面上の、荷電した種の固定化も、含まれる。
【0046】
異なる金属の、複数の金属含有種が、コロイド粒子中に、そしてそれ故に製造されたナノ粒子の芯中に含まれていてもよい。通常は、このような金属含有種は、金属、合金、金属酸化物、金属水酸化物、及び金属炭化物の中から選択される。好ましくは、この金属含有種は、強磁性 (ナノ粒子の磁気分離を可能にするもの)若しくは超常磁性であり、又は単一ドメインの磁性ナノ粒子が採用される。ナノ粒子の芯に含まれ得る磁性材料には、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)、及びFe2CoO4 が、含まれる。
【0047】
その代わりとして、又は、追加的に、ナノ粒子の芯は、触媒的に若しくは生物学的に活性な種を含有していてもよい。好適な生物学的活性の種は、酵素や蛋白質を含んでいる。その例は、血液/肝臓組織中にある、ラクターゼ、メタロチオニン、シトクロム(シトクロムb、シトクロムc、又はシトクロムP450等)、血清アルブミン(類)、カルボキシルエステラーゼ類、キナーゼ、短核酸オリゴマー類、抗体種及び酵素インジケータ類である。好適な触媒種には、ヘテロポリ酸類、メタロチオレイン類、コランド類(corands)、コラプレックス類(coraplexes)、スフェランド類、スフェラプレックス類(spheraplexes)、キャビタンド類、ホスト−ゲスト触媒類の如き無機触媒化合物(例えば、「定量的な合成(ship in a bottle chemistry)」によって形成されたもの)、及び介在 (intercalated) 触媒類などがある。
【0048】
ナノ粒子の芯が、触媒的又は生物学的活性の種を含む場合、多孔コーティングは、その触媒的又は生物学的活性の種よりも小さい孔サイズを持つようにし、それによって活性種がナノ粒子のコーティング内部に保持されるようにすることが、好ましい。
【0049】
さらに、ナノ粒子の多孔コーティングは、小さな分子がそこを通り抜けるのを許容できる程の大きさの孔サイズを有することが好ましい。特に、触媒活性の種が、ナノ粒子の芯においてカプセル化 (encapsulated) される時、多孔の外側コーティングの孔サイズは、触媒反応の反応剤及び生成物の何れのサイズよりも大きいことが、好ましい。この場合、反応剤分子は、ナノ粒子の多孔コーティングを通過して、ナノ粒子の内部に保持された触媒的又は生物学的活性の種と相互に作用することができ、その相互作用による生成物は、多孔コーティングを通過して出て行くことができる。
【0050】
前記ナノ粒子は、好ましくは1nm乃至1μm、更に好ましくは1乃至100nmの平均直径を有する。多孔コーティングは、所望の厚さを有してよいが、好ましくは1乃至100nm、更に好ましくは1乃至50nmの平均厚さを有する。ナノ粒子の芯が、触媒的又は生物学的活性の種を含む場合、芯の直径は、1乃至10nmとすることができ、好ましくは、1乃至5nmである。
【0051】
テスト分子の分配係数の測定における多孔コートされたナノ粒子の使用
本発明は、多孔ナノ粒子の使用を通じて、二つの非混和性の溶媒間のテスト分子の分配を達成するための方法を提供する。この方法は、テスト分子を、多孔の外側コーティングを有するナノ粒子を含むコロイド懸濁液である第一の溶媒と混合する工程を含み、そこでは、第二の溶媒が多孔の外側コーティング中に吸収せしめられており、ナノ粒子は、第二の溶媒に対して非混和性を有する第一の溶媒中に、懸濁せしめられている。このテスト分子は、第二の溶媒に部分的に溶解し、そしてナノ粒子の多孔の外側コーティングの中に保持され、また部分的には第一の溶媒の中に、保持せしめられる。
【0052】
テストされる化合物(検体)、ナノ粒子、ナノ粒子を含む第一の溶媒、及びナノ粒子の孔内の第二の溶媒を含む組成物を調製するための工程は、あらゆる好適な方法によって、実施されてよい。例えば、検体は、ナノ粒子の組成物に混合される緩衝剤等に、並びに第一及び第二の溶媒に、溶液として、導入される。検体溶液は、第一の溶媒に対する混和性を有し、両者は、共に、例えば水性である。代替的には、DMSOの如き少量の溶媒に溶解せしめられた公知の量の検体を、ナノ粒子並びに第一及び第二の溶媒の組成物に注入する。その他の代替法は、第二の溶媒を含むナノ粒子を、第一の溶媒中の検体の溶液に導入するというものである。
【0053】
テスト分子の分配を達成するための速度を最適化するために、二つの非混和性の溶媒の接触面積を最大限にすることが、望ましい。これは、表面積と体積との比率が高い粒子を形成することによって達成され得る。すなわち、粒子の直径が小さければ小さいほど、分配は早く達成されるのである。更に、ナノ粒子上の多孔コーティングは、テスト分子の分配速度を上げるため、できる限り多くの溶媒を吸収すべきである。このように、小さくて、孔の体積の大きい粒子が、好ましい。テスト分子の速やかな分配を好むという多孔コーティングの特徴が最適化されると、本発明のナノ粒子を用いて、分配時間を1−10分又はそれ以下の範囲にすることができる。これは、先行技術で達成された分配時間に比べて目覚しく改善されていることを意味する。
【0054】
この方法では、上記の溶媒とナノ粒子を含む組成物が、採用されてよい。
【0055】
二つの非混和性の溶媒間でテスト分子の分離を達成するための本発明の方法は、テスト分子の分配係数の値を決定するために、用いてもよい。
【0056】
以下の用語は、分配係数について論じる際に、用いられる:
【0057】
logPは、テスト分子の分配係数のために引用される標準値である[但し、P=[C]organic/[C]aqueousである]。その他に指定が無い限りは、これらの値は、電子的に中性の形態である分子を用いたオクタノール−水の二相系のために記録される。
【0058】
logDは、本明細書において、最も一般的に用いられる値である。これは、特定のpH値におけるテスト分子の分配係数に当てはまる。これらの値を計算する際に、Dについて、以下の関係が用いられる。
【0059】
【数1】
【0060】
テスト分子の分配係数(logP又はlogDの何れか)の値を測定するための一つの方法は、以下の工程を含んでいる:
a)多孔表面を有するナノ粒子と第一の溶媒からなる組成物にして、第二の溶媒が該ナ ノ粒子の多孔表面内に吸収されており、且つ、該第一の溶媒と該第二の溶媒が非混 和性である組成物を調製する工程;
b)テストされるべき分子を、工程a)の組成物に導入する工程;
c)工程b)の生成物を、二つの成分、即ちナノ粒子を含む第一のものと、前記第一の 溶媒を含む第二のものとに分離する工程;並びに、
d)分配係数の計算を可能とするために、前記第一の溶媒中に残る、テストされるべき 分子の量を決定する工程。
【0061】
この方法の工程c)は、混合物を、ナノ粒子と上澄み溶液とを含む二つの成分に分離するために、工程b)の生成物を、例えばろ過又は遠心分離することによって、或いは上記したその他の分離方法によって、達成され得る。ナノ粒子の芯が、磁性材料を有する場合には、上記方法の工程c)を実施するために、代替として磁界を用いることも可能である。この場合、工程b)の生成物に適用される磁界は、反応混合物からナノ粒子を沈殿させるように作用せしめられ得る。
【0062】
分配係数を測定するための方法における工程d)は、溶液中のテスト分子の濃度を決定し得るあらゆる分析技術によって達成され得る。それら技術は、核磁気共鳴(NMR)、滴定、UV−可視分光法、蛍光、リン光、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析(MS)、GC−MS、重量測定、表面プラズマ、及び電気分析法の技術を含み得る。好ましくは、工程d)で用いられる技術は、上澄み溶液の更なる工程を必要とするものではなく、また、反応槽からサンプルを取り除くことなく実施され得るものである。最も好適な態様において、工程d)にて用いられる技術は、UV−可視分光法である。
【0063】
上澄み溶液中のテスト分子の濃度を決定するために、UV−可視分光法が用いられる好適なケースにおいては、logDを計算するために、以下の式を用いることができる。
【0064】
【数2】
【0065】
本発明の方法によって測定されたlogDの値と、先行技術の方法によって測定されたlogDの値との相関関係が、図1及び図2に示されている。
【0066】
第二の溶媒(ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収されている)と第一の溶媒との体積比は、これら二つの溶媒におけるテスト分子のおよその溶解度(それが事前に知られていない場合には、推測により、又は実験によって決められてよい)に基づいて、選択される。本発明においては、第一の溶媒と第二の溶媒の比率は、3000:1乃至1:1とすることができる。一般的に、第一の溶媒と第二の溶媒の比率は、50:1よりも大きく、好ましくは100:1又はそれ以上、更に、500:1又はそれ以上と高く、例えば500:1乃至1500:1の範囲としてもよい。
【0067】
このような、テスト分子の分配係数を測定する方法は、先行技術の方法に比べて、幾つかの明確な利点を有している。
【0068】
第一に、テスト分子の分配は、前述の理由により、先行技術よりも早く達成される。
【0069】
第二に、ナノ粒子の芯が磁性材料を有する場合、分配係数を測定するために用いられる混合物は、溶液に磁界を適用することによって、ナノ粒子成分と上澄み溶液とに、容易に分離せしめられ得るのである。通常は、該混合物のそれら二つの成分の分離は、数秒の範囲で達成され得ることとなる。
【0070】
第三に、溶媒のうちの一つがナノ粒子の多孔コーティングに吸収されるので、測定中の揮発性の溶媒の蒸発による問題が、克服され得ることである。先行技術の方法では、揮発性の溶媒中で成分の分配について測定する際には、溶媒の蒸発を避けるために、測定中に溶媒の量を変更し、大いに注意を払わねばならず、分配係数の計算を、複雑にしていた。しかし、本方法では、揮発性の溶媒は、ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収され得るため、溶媒の蒸発速度を低下させる。テスト分子の、より速やかな分配と組み合わされて、全体的な測定時間が減少することになり、それによって、本発明の方法を用いたテスト分子の揮発性の溶媒への分配が許容されることになるのである。
【0071】
第四に、本方法では、分離は、例えば磁選、ろ過、又は遠心分離によるナノ粒子の分離によって、達成されるため、二つの溶媒の分離の達成のために溶媒の境界面の目視による判定に頼ることはない。そのため、テスト分子の分配係数を測定する本方法は、先行技術の方法に比べて、より少ない量の溶媒を用いて実施され得る。より少ない量の溶媒は、測定のコストを低下せしめ、工程の自動化を容易にする。更に、より少ない量の溶媒を用いた測定では、発生する有害な廃物の量も少なく、それによって、該工程のコスト及び環境に対する影響を、更に低下させる。
【0072】
最後に、本発明工程は、テスト分子が溶媒の何れか一つに高度に可溶である場合でさえも、分配係数を測定するために用いられ得る。上記のように、第一の溶媒と第二の溶媒との好適な比率は、各溶媒におけるテスト分子の溶解度によって決定される。本発明の方法にあっては、分配係数値の測定において、より広い範囲の第一の溶媒と第二の溶媒との比率が用いられ得る。これは、テスト分子の濃度測定の前の溶媒の分離が、第一及び第二の溶媒間の境界の、目視による決定を必要としないという事実によるものである。3000:1乃至1:1という比率において、第一の溶媒:第二の溶媒が、用いられ得る。少量の溶媒、テスト分子、及び複合ナノ粒子の使用と、上澄みにおけるテスト分子の濃度の速やかな分光光学的決定との組み合わせにより、分配係数の迅速な評価が許容される。従って、ロボットに適した(robot-friendly)方法において、幅広い種類のテスト分子の、高い流量でのスクリーニングが、確立され得る。
【0073】
多孔の外側コーティングを有するナノ粒子内に被包された触媒種
多孔の外側コーティング内に触媒的に活性な種を被包(カプセル化)するナノ粒子の有利な点は、様々な外側コーティングと触媒的に活性な種が考えられ得るため、多様である。生物学的に活性な種を含む使用もあるため、本発明の多孔コートがなされたナノ粒子の、不均一無機触媒における使用が、考えられる。
【0074】
一つの態様においては、磁性材料を含む芯を有するナノ粒子は、懸濁液においてその触媒活性が活用され、磁界を用いて反応生成物からの触媒の分離が容易に達成されるため、特に有用である。
【0075】
芯材料が生物学的に活性な種を含む場合に、本発明のナノ粒子の更なる有利な点は、生物学的に活性な種は、例えば、その種を基材に結合するための可溶化基または連結基の付加によって、その自由状態における場合に比べて、化学的に変化せしめられにくいということである。これは、含まれている種の物理的構造が、ペンダント基又はそれと同等のものへの結合によって変更されないということである。従って、本発明の、この態様において、前記の種は、被包されていない形態と同様の方法で活動をする。
【0076】
また、酵素分子の如く、生物学的に活性な分子の懸濁液は、かかる分子の濃度が特定の閾値よりも高められたときに、溶液の中で会合することも知られている。これは、生物学的に活性な種の、懸濁液中での高濃度での使用を制限する。というのも、会合は、分子の表面積と体積との比率の低下をもたらし、それ故、分子の相互作用のために利用可能な結合サイトの数を潜在的に低下させるからである。しかし、本発明では、生物学的に活性な種を取り巻く多孔の外側コーティングが、分子の会合を防ぎ、その種が懸濁液中に、先行技術の方法よりも、より高い濃度にて存在することを、許容する。
【0077】
前記被包方法の、様々な芯材料に対する広い適用可能性、及び潜在的な多孔の外側コーティングの範囲により、本発明のナノ粒子には、潜在的に莫大な種類の適用が得られる。適用として考えられるものには、様々な薬物分子の分析方法、分子結合定数の測定、(生物学的な系及び化学的な系の両方における)触媒反応、バイオセンサーの適用、抗体−抗原、蓄積及び開放などが含まれる。一つの例には、薬物/アルブミン相互作用、及び/又は、結合定数の決定について研究するための、アルブミンの被包(カプセル化)がある。
【実施例】
【0078】
実施例1: 多孔シリカコートがなされたFe3O4ナノ粒子の形成
脱イオン化水、予め乾燥させた過剰のトルエン、及びイオン性界面活性剤(CTAB)を用いて、マイクロエマルジョンの形成が、行われた。概して、実験は、室温にて行われた。このマイクロエマルジョンは、以下の通り形成された:トルエン中にCTABが十分に分散せしめられた懸濁液を作るため、勢いよく攪拌しつつ、0.02モルのCTAB(99%、Aldrich)を、100gの乾燥トルエン(99+%、Fisher)に添加した。0.3428gのFeCl2・4H2O及び0.9321gのFeCl3・6H2O(共に、99%、Aldrich)が、6.2gの水に、溶解せしめられた。この溶液は、窒素雰囲気中において、CTABのトルエン懸濁液に、ゆっくりと滴下することで、添加された。4時間攪拌した後、NH3溶液(18.1M、1ml、Fisher)が、該混合物に添加された。1時間後、系全体 (whole system)の色が、黒く変化した。これは、Fe2+、Fe3+、及びアンモニアの添加は、磁性Fe3O4の沈殿物を生成することを前もって示している。この時点で、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(99%、Aldrich)が、反応混合物に添加された。該混合物には、1時間の間、窒素のバブリングが行われた。このアンモニア溶液(高pH)は、TEOSの加水分解/縮合に触媒作用を及ぼし、シリカゲルと成した。このシリカの上層は、懸濁液中にて、5日間、熟成せしめられた。最後に、沈殿物が、磁気分離の手段によって隔離され、界面活性剤及び有機溶媒を除去するために、高温のエタノール、水、及びアセトンで、数回洗浄された。その後、沈殿物は、室温にて乾燥せしめられ、濃い茶色の粉末を得た。
【0079】
実施例2: 実施例1の生成物の分析
実施例1で得られた生成物が、様々な技術を用いて分析された。
【0080】
この粒子は、超常磁気応答を示す磁界への露呈によって、強力な磁気応答を示した(図3参照)。
【0081】
Fe3O4ナノ粒子は、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、直径が約12nmであることが示された(図4参照)。これに対して、X線回折(XRD)測定による計算は、該粒子の直径が17nm程度であることを示している(図5参照)。
【0082】
このナノ粒子の化学的組成物は、エネルギー分散分光法(EDS)によって測定された(表1参照)。
【0083】
【表1】
【0084】
表1からの計算は、シリカコートされたFe3O4の組成物の個々の粒子がFe3O4.24・1.74SiO2であることを示している。実施例1の方法を用いるものの、TEOSの濃度を変えた、粒子を形成するための更なる実験は、Fe3O4.1・0.21SiO2の組成を有するナノ粒子も得られ得るということを示唆している。これは、実施例1の方法を用いることによって、ナノ粒子上のシリカコーティングの厚さを、目的に合わせたものとすることが可能であることを、示している。
【0085】
実施例3: 実施例1で生成したナノ粒子上のシリカコーティングの多孔度の測定
実施例1の方法によって製造されたFe3O4 ナノ粒子のシリカコーティングの孔に捕捉され得るn−オクタノールの最大量の評価は、熱重量(TG)分析によって得ることが出来る(図6及び7参照)。実施例1の方法によって調製された生成物のTG分析によって得られた値は、シリカコーティングが、ナノ粒子1g当たり0.54mlまで吸収可能であることを示唆している。BET(シリカ1gm当たり300m2 超)及び孔サイズの測定(孔サイズの範囲0.5−3nm)も、複合ナノ粒子が、実際に多孔質であることを、示している。
【0086】
実施例4: 表面水酸基のキャッピング
実施例1の方法によって得られた、多孔シリカでコートされたFe3O4ナノ粒子は、シリカコーティング上の表面水酸基を、トリメチルシリル(−Si(CH3)3)基でキャップするために、更に変更せしめられた。過剰のCTMSが、120℃の窒素雰囲気中において、乾燥シリカゲルでコートしたFe3O4固定床を通じて流れるようにされた。CTMSによる処理の前後の、多孔シリカでコートされたFe3O4ナノ粒子のIRスペクトルは、図8に示されており、そして図は、Si−OHシグナル(〜967cm-1)の強度の減少、及び、シリカ表面上の−OH基のキャッピングを示すSi−CH3 シグナル(〜850cm-1〜1265cm-1)の発現を示している。
【0087】
実施例5: 多孔シリカでコートされたFe3O4の形成
実施例1と同じ方法によって、Fe2CoO4ナノ粒子が生成せしめられ、多孔シリカコーティングによってコートされた。この場合、等モル量のFeCl3・6H2O(実施例1に記載の使用量と同じ量)とCoCl2・xH2Oとが、実施例1と同じ方法で、CTABのトルエン懸濁液に添加された水に溶解せしめられた。Fe2CoO4 粒子のサイズは、実施例1で形成されたFe3O4粒子と略同じサイズのものとして、XRDにより測定された(図9)。
【0088】
実施例6: 多孔シリカでコートされたナノ粒子を用いたlogD値の測定
オルトリン酸二水素カリウム(99%、Aldrich)の0.1mM水溶液で、pH値が7.4に調整されたものが、以下の測定における緩衝溶液として、用いられた。ガラス瓶内で、n−オクタノールで予め予備飽和された緩衝溶液に、テスト分子が溶解せしめられた。このテスト分子の濃度は、約1×10-5Mに維持された。前記緩衝溶液にて予備飽和されたn−オクタノールの、10乃至100μlが、多孔シリカでコートされたFe3O4のナノ粒子(実施例1の方法によって得られたもの)に、毛管作用によって、物理的に吸収せしめられた。添加されたオクタノールの全てが、完全に吸着され、それを含むナノ粒子は、乾燥した粉末のように思われ、油性の小滴は、全く見られなかった。公知の量のn−オクタノールを含有しているナノ粒子が、公知の濃度のテスト分子溶液に分散するようにされた。この混合物中の水溶液とn−オクタノールとの体積比は、100:1に設定された。前記のガラス瓶は、密閉され、オービタル・シェーカーに入れられた。n−オクタノールの小滴が複合物から(視覚上)分離することを避けるため、振り混ぜ速度が、注意深く制御された。振り混ぜの後、外部の磁石が、瓶の底付近に置かれた。磁性によって誘発された沈殿が、2〜3分以内で起こった。この沈殿の前後の、上澄みの水性相内のテスト分子の検体のUV−可視吸収が、ベースライン補正 (baseline correction) を用いて測定された。その後、以下の式を用いて、logD値が得られた。
【0089】
【数3】
【0090】
他に記載が無い限り、第一の溶媒(水)と第二の溶媒(n−オクタノール)との体積比は、100:1に固定された。
【0091】
一部のテスト分子の検体の分配係数値は、キャップされていないナノ粒子と比較するために、トリメチルシリル(TMS)基にてキャップされたナノ粒子の表面−OH基を用いて測定された。
【0092】
比較の目的のため、各テスト分子の検体の分配係数は、先行技術の「振とうフラスコ」法により、同じテスト分子濃度及び相体積比率を用いて、個別に測定された。これらの測定の結果が、以下の表2乃至表4に示されている。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
実施例7: 酵素の芯を用いたナノ粒子の形成
第一の緩衝溶液が、500mlの脱イオン化水中に、リン酸二水素カリウムの0.01molと塩化ナトリウムの0.25molを含んで、調製された。緩衝pH値は、20℃での水酸化ナトリウム溶液の添加により、7.0に調整された。
【0097】
その後、ペニシリナーゼ(Bacillus cereusから精製されたβ−ラクタマーゼI、Sigma)が、酵素濃度が50nMとなるように、同じ組成物の第二の緩衝溶液に溶解せしめられた。連続的に攪拌しながら、第一の緩衝溶液の5.2gが、ゆっくりと滴下して添加されることで、実施例1と同様にして(100gの乾燥トルエン中に0.02molのCTAB)マイクロエマルジョンが形成された。第二の緩衝溶液(ペニシリナーゼを含む)の2mlが、4時間を越えて、添加された。その後、この混合物は、更に4時間攪拌されることで、マイクロエマルジョン系における酵素分子の均等な分散を、確実にした。酵素活性の比較のため、この混合物の200μlのサンプルが、除去された(実施例8を参照)。その後、6.94gのTEOSが、この系にゆっくりと添加せしめられ、それによって、水/トルエン界面での加水分解が起き、外側のシリカコーティングが形成された。
【0098】
実施例8: 実施例7の生成物に対する酵素活性の試験
検定された標準ペニシリンV(フェノキシメチルペニシリン酸)(3nM、Sigma)の加水分解を経ても、酵素が機能する(functional)か、どうかを確認するため、実施例7でのTEOSの添加の前に取り出された200μlの混合物のサンプルが、232nmでペニシリン (pencilling) のラクタム基の加水分解が理解できるUV−可視分光法を用いて、分析された。TEOSの添加から6日後に、実施例7の混合物から、更に200μlが、抽出され、同様の方法にて分析された。
【0099】
図10乃至12に、UV−可視スペクトルが示されている。このスペクトル曲線は、主に、ペニシリンVのUV−可視スペクトルを表している。典型的なUV−可視スペクトルの変化を示す、添加された自由状態のβ−ラクタマーゼIによるペニシリンVの加水分解が、図10にプロットされている。232nm(ラクタム基が吸収する領域)での吸収値が、5分を越えて減少するということは、ペニシリンVから対応のペニシロ酸への急速な転換が起きているということ(ラクタム基の加水分解)を、明確に示している。図11は、TEOSの添加の前に、反応混合物から抽出された200μlのサンプル(シリカコートなし)を添加した際の、ペニシリンV溶液の結果を示している。ラクタム基が位置している232nmでの吸光度の値は、ここでも、5分の間、減少が見られた。これは、混合物のミセルに導入された際にも、酵素が、なお活性であることを示している。図12も、実施例7(シリカコートされたナノ粒子)の混合物にTEOSを添加した6日後に抽出されたサンプルを用いた場合に、同様のスペクトルの変化が観察されたことを示している。232nmでの吸光度の値は、5分を越えて、2つのスペクトルの間で、明白に減少し続けた。
【0100】
これらの結果は、捕捉された酵素が、ミセル及びシリカコートされた複合環境の両方において、機能を有することを示している。
【0101】
次に、超臨界流体を用いて、成分を多孔材料、特にナノ粒子に析出させる本発明の方法の詳細について、説明する。
【0102】
ある化合物の超臨界状態は、その臨界値の、或いはそれ以上の温度及び圧力において、達成され得る。化合物の臨界温度は、それを超えると、適用される圧力如何に拘わらず、純粋な気体成分を液化せしめることができない温度として、定義される。それから、臨界圧力は、該臨界温度における蒸気圧として、定義される。気体及び液体の相が同一になる時の温度及び圧力が、臨界点である。超臨界環境においては、一つの相のみが、存在する。いわゆる流体は、気体又は液体の何れでも無く、それら二つの極値(extremes)の中間として、最も適切に表現される。この相は、液体に共通の溶媒の力のほか、気体に共通する輸送能力を、保持する。二酸化炭素は、最も一般的に知られる超臨界流体である。気体、液体、及び超臨界状態の違いを例示するために、二酸化炭素の圧力−温度のダイヤグラムが、図13に示されている。図13に見られるように、純粋なCO2は、31.06℃未満の温度においてのみ、圧縮によって液化せしめられ得る。この臨界温度Tc及び対応の臨界圧力Pc(73.8バール)を越えると、明確な液体相又は気体相は存在しない。これは、SC−CO2 が存在する超臨界領域として、言及される。
【0103】
SC−CO2の特性は、温度及び圧力に依存しているが、一般的に、気体の状態と液体の状態の中間体である。超臨界のCO2は、環境にやさしい溶媒であるという有利な点を有する。それが持つ主な特性のうちの一つには、化学的化合物を溶解する能力がある。SC−CO2における化学的化合物の溶解度は、温度及び圧力によって影響される。SC−CO2中でのn−オクタノールの溶解度については、2001年に調べられた (H. Nakaya, O. Miyawaki and K. Nakamura, Enz. Micro. Tech., 28, 176-182, 2001)。この研究において、n−オクタノール/水系中における超臨界CO2のlogPは、CO2におけるn−オクタノールの溶解度から、決定された。n−オクタノールにおけるSC−CO2の溶解度は、55バール、50℃において、約1.0Mである。圧力が増加せしめられると、溶解度が増加せしめられる。これは、n−オクタノールが、SC−CO2 において良好な溶解度を有することを、示している。SC−CO2は、液体CO2に比して、実質的に高い拡散率及び低い粘度を有する。その密度の故に、この粘度及び拡散率は、温度及び圧力に依存している。異なる圧力及び温度でのSC−CO2 の拡散率及び粘度の曲線は、M.A. McHugh and V.J. Krukonis, Supercritical Fluid Extraction-Principles and Practice, Butterworths, Boston, MA, 10, 1986 and S.V. Kamat, B. Iwaskewyct, E.J. Berkman and A.J. Russell, Proc. Natl. Acad. Sci., 90, 2940, 1993. に示されている。拡散率が、温度の増加又は圧力の低下に伴って増加することについても、示されている。拡散率とは異なり、粘度は、温度の増加又は圧力の低下に伴って減少することが、示される。
【0104】
SC−CO2の、高いn−オクタノールの溶解度、高い拡散率及び低い粘度という利点は、超臨界媒体を介したn−オクタノールの多孔ナノ複合体への運搬についての、以下の実施例において、採用されている。その結果となるものは、均一に装填されたオクタノールと共に磁性ナノ複合体を含む均質な溶液 (homogeneous solution)である。
【0105】
実施例9: SC−CO2 の運搬を介した多孔ナノ複合体へのn−オクタノールの装填及びストック溶液の準備
以下の実施例では、n−オクタノール(99%)、リン酸二水素カリウム、4−ニトロアニソール(97%)、4−ニトロベンジルアルコール(99%)、および4−ニトロフェノール(98%)が、Aldrichから入手された。イミプラミン、キノリン、クロルプロマジン、ベンズアミドについては、分析用の品質又はそれ以上のものが、Sigmaから入手された。これらの薬品は、全て、それ以上の精製を行うことなく用いられた。
【0106】
図14に示された設定を用いて、多孔ナノ複合体へのn−オクタノールの装填が行われた。
【0107】
図14は、高圧CO2がパイプ2を通じて運搬される、オートクレーブ1を示している。このオートクレーブ1は、圧力検出器3、及び、一定の温度を保つ為の温度コントローラ4を有している。オートクレーブ1は、弁付管5によって、水槽7に保持されたサンプルホルダー6に接続されている。
【0108】
上記実施例1で調製された、乾燥した多孔シリカ被包のナノ複合体0.0607gが、サンプルホルダー6内に置かれた。その後、マイクロピペットを用いて、30μLのn−オクタノールがホルダー6内に添加された。このオートクレーブ槽とサンプルホルダー(合計容量30ml)がCO2で満たされ、2つのコンパートメントの間の弁や外部排出口を開閉することによって、CO2 でフラッシュされた。これは、この槽が所望の圧力(150バール)に達する前に、2、3回行われた。少量のn−オクタノールの多孔粒子中への分散を許容するため、オートクレーブとサンプルホルダーの温度は、40℃に維持された。2時間後、この系の高圧は、大気中に、非常にゆっくりと、放出された。サンプルホルダーの重量変化を測定することによって、0.0155gのn−オクタノール(密度0.8240g/mL)が、粒子に吸着せしめられ、その量は、18.8μLとなることが判った。
【0109】
SC−CO2 におけるn−オクタノールの比較的高い溶解度により、n−オクタノールの一部は、除圧工程の間に、失われた。n−オクタノールを有する複合体の粉末は、溶媒を乾燥した粉末に直接に混合して調製されたサンプルとは異なり、軽くて且つ乾燥しているもののように見えた。図15のプロットは、幾つかの同様の実験において、測定された(獲得重量)n−オクタノールの吸収量と、同量の粒子に添加されたn−オクタノールの量との間の関係を示している。
【0110】
別の手順においては、n−オクタノールは、オートクレーブ1に置かれて、SC−CO2がサンプルホルダー6内の粒子と接触せしめられる前に、オートクレーブにおいてSC−CO2中に溶解する。二つの手順とも、同様の結果を生むと考えられる。
【0111】
理論に縛られたくはないが、気体の如き特徴を有するSC−流体は、粒子の孔内に(液体に比して)、非常に自由に浸透し、減圧時には、溶解された成分の溶解度の減少が、粒子の孔の広い表面区域(粒子の外側面区域又は反応槽の表面区域よりもかなり大きい)上に凝縮することを許容するものと、推定することが出来る。
【0112】
水性溶媒にn−オクタノールを担持するこれらの粒子のストック溶液を調製するために、pH=7.4で、0.1mMのリン酸二水素カリウムを含む緩衝溶液が、最初に調製され、分液漏斗に配置された。水相を覆うn−オクタノールの薄い層を提供するために、適性な量のn−オクタノールが、添加された(n−オクタノールの密度は、水よりも低い)。n−オクタノールと水との混合を行うため、5乃至10分間、漏斗が攪拌された。その後、この溶媒混合物を、光による劣化や蒸発から保護するため、漏斗は、アルミホイルで覆われた。二つの層の分離を許容するように、この漏斗は、直立の位置にて、3日間配置された。その後、水にて飽和せしめられたn−オクタノール相が、回収された。
【0113】
溶液1mL当たりのn−オクタノールが0.0038mLの濃度である均質なストック溶液を得るために、かかる飽和緩衝溶液5mL中に、ナノ複合体を含む粒子が、分散せしめられた。これと同じ方法にて調製されたストック溶液を用いて、分配係数の測定が、下記の通り行われた。
【0114】
実施例10: ストック溶液を用いた分配係数の決定
各実験において、SC−CO2を用いる方法によって調製された、ナノ粒子を含むn−オクタノールのストック溶液1mLが、マイクロピペットを用いて取り出され、3mLの検体溶液と混合された。その混合系を30分間攪拌した後、リアクター管の底部付近に置かれた外部の磁石によって、磁性ナノ複合体が、数分間で沈殿せしめられた。分配の前後両方の水性相における検体の吸収について判定するために、UV−可視分光法が用いられた。この方法によって、7つの検体の分配係数(logD)が測定され、従来から用いられている振とうフラスコ法によって決定されたpH=7.4での、これらの検体のlogD値と、上記実施例6で得られた結果と共に、下記の表5に示された。
【0115】
分配係数の決定のために、好適なn−オクタノール/ナノ粒子比率を用いて、ストック溶液が調製された。0.071gのナノ複合体に対して40μlのn−オクタノールという典型的な比率は、SC−CO2の運搬の後、実際に、ナノ複合体上に22.3μlのn−オクタノールを与えた。このストック溶液は、これらのn−オクタノールを予め吸収したナノ複合体を、5mlのリン酸カリウム緩衝溶液(pH=7.4)中に直接的に分散せしめることによって、調製された。ここで記載されている作業では、緩衝溶液中のn−オクタノールの典型的な容量濃度は、緩衝溶液1ml当たりn−オクタノール0.0045mlというものである。
【0116】
分配の前後の水系相中の薬物濃度を定量的に決定するために、UV−可視分光法が、用いられた。n−オクタノール/水の分配係数(logD)は、平衡状態にあるこれら二相における種の活性の比率として定義された。溶解が大きい時は、活性を置き換えるために、濃度を用いる。この定義は、以下の式によって表現され得る。
【0117】
【数4】
【0118】
前記のように、logDの測定のために、1mLのストック溶液が、初期の薬物溶液3mLと混合された。緩衝溶液中のn−オクタノールの濃度は、1mLのストック溶液当たり0.0045mLのn−オクタノールであるので、測定時の水/n−オクタノールの体積比は、約889:1である。この比率は、振とうフラスコ法で用いられる100:1という通常の比率よりもかなり高く、高いlogD値の、信頼性のある決定が、可能となる。振とうフラスコ法では、このように少量のn−オクタノール相を分離することは困難であるが、磁性ナノ複合体を用いることによって、極めて容易となると見受けられる。
【0119】
表5は、本実施例のストック溶液方法、振とうフラスコ法、及び実施例6の磁性ナノ複合体方法を用いて、独立して測定されたlogD値の結果のリストである。各薬物検体について、3種類の方法の全てによって、少なくとも5回測定され、その測定されたlogD値の平均が示されている。振とうフラスコ法においても、磁性ナノ複合体法と同様に、水/n−オクタノールの容積比率として、100が用いられている。統計信頼度は、95%である。文献から得られた各薬物検体のlogD値も、比較のために、リストアップされている。
【0120】
【表5】
【0121】
上記の結果から、これら三つの全ての方法によって、1.260乃至3.20の範囲内にある薬物分子のlogD値が、首尾よく測定された。このデータから分かるように、ストック溶液法によって得られたlogD値の殆どが、文献値に対して十分な相関関係を有している。我々の測定においては、水/n−オクタノールの高い体積比が用いられたことから、特に、低いlogD値を有するそれら薬物分子の感度が制限されることが、観察された。低いlogD値を有する薬物化合物で、n−オクタノール相への低い溶解度を示すものは、分配の後でさえも、水相中のそれらの濃度に、大きな変化を与えることは無い。その結果、低いlogD値の化合物に対する実験結果の精度は、用いられる相の比率(添加されるストック溶液の量に関連する)と、関与する検知技術の感度に、大きく左右される。濃度の測定におけるわずかな誤差は、最終的に得られるlogD値に重大な変化を惹起する。典型的な例は、pH=7.4の時のlogD値が0.66のベンズアミドである。分析方法の感度を高めること、又は、用いる水/n−オクタノールの体積比を減少させることによって、誤差の程度がより小さくされ得ることが期待される。
【0122】
この発明方法による結果及び文献から得られた値の相関曲線が、図16に示されている(ベンズアミドのデータは、除外されている)。このカーブの相関係数は、0.9958であることが見出される。図17は、本実施例のストック溶液方法の結果と、標準的な振とうフラスコ法の結果との相関曲線を示している。このカーブの相関係数は、0.987である。図8は、本実施例のストック溶液法の結果と実施例6の磁性ナノ複合体法との、相関曲線を示している。このカーブの相関係数は0.988である。これらは、全て、ストック溶液法の信頼性を示しており、超臨界二酸化炭素を用いることによって、n−オクタノールの多孔ナノ複合体への均質な分散/沈殿が、首尾よく行われ得ることを、はっきりと示している。表3においては、ストック溶液法によって測定されたlogD値の統計的偏差が、同じ信頼度にある他の二つの方法によるものよりも、わずかに大きくなっている。
【0123】
テストされた化合物のlogD値が分からない場合の手順においては、ストック溶液に含まれる第二の溶媒(例えばn−オクタノール)の量を、逆算によって確認するために、ナノ粒子を含む同じストック溶液を用いた公知のlogDの一つ又は複数の化合物に対する試験を並行して行うことが好ましいと言える。
【0124】
本発明については、上記した模範的な具体例に関連付けて記載してきたが、当業者であれば、ここで開示した内容を得た時に、数多くの同様な修正や変形を加え得ることは、明らかであろう。従って、上記で示した本発明の模範的な具体例は、あくまでも例示的なものであり、本発明を限定するものでは無いことが考慮されるべきである。記載された具体例には、本発明の精神や範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、ナノ粒子を用いた測定によって得られたlogDの結果と、文献値との相関関係を示している。
【図2】図2は、ナノ粒子を用いた測定によって得られたlogDの結果と、先行技術の方法を用いて得られた値との間の相関関係を示している。
【図3】図3は、実施例1の方法を用いて得られた粒子の磁場応答を示している。
【図4】図4は、実施例1の方法によって製造された、シリカでコートされた粒子の、透過型電子顕微鏡(TEM)による顕微鏡写真を示している。
【図5】図5は、実施例1で得られたシリカコートのFe3O4 ナノ粒子についての、1.54056nmの波長を用いて記録されたX線回析(XRD)パターンを示している。
【図6】図6は、実施例1で得られたシリカコートのFe3O4 ナノ粒子についての熱重量分析(TG)を示している。
【図7】図7は、シリカコートされたFe3O4 ナノ粒子であって、そのシリカコーティングがn−オクタノールにて飽和せしめられたものの熱重量分析(TG)を示している。
【図8】図8は、二つの赤外線(IR)スペクトルを示している:a)は、シリカでコートされたFe3O4 ナノ粒子のものであり;b)は、シリカでコートされたFe3O4 ナノ粒子で、クロロトリメチルシラン(CTMS)にて処理されたものについてのものである。
【図9】図9は、実施例5において得られたFe2CoO4ナノ粒子のXRDパターンを示している。
【図10】図10は、β−ラクタマーゼIの存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図11】図11は、β−ラクタマーゼIのミセル溶液の存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図12】図12は、多孔のシリカコーティング内にカプセル化されたβ−ラクタマーゼIの存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図13】図13は、二酸化炭素の圧力−温度のダイヤグラムである。
【図14】図14は、超臨界のCO2を用いた、粒子上への析出のための装置の概略図である。
【図15】図15は、添加されたオクタノール量に対する、吸収されたn−オクタノールのグラフである。
【図16】図16は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【図17】図17は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【図18】図18は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【符号の説明】
【0126】
1 オートクレーブ 2 パイプ
3 圧力検出器 4 温度コントローラ
5 弁付管 6 サンプルホルダー
7 水槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔表面を有するナノ粒子、かかるナノ粒子を製造する方法、並びに、分子の分配係数 (partition coefficient) の測定や、生物学的に活性な種の如き、触媒活性の種の封入における、それらの使用に関するものである。更に、成分を、ナノ粒子等の多孔材料の孔に析出 (depositing) させる方法にも、関連している。
【背景技術】
【0002】
「ナノ粒子 (nanoparticles)」という語は、ナノメートルの尺度の大きさを有する粒子について述べるために用いられている。一般的に、これらの粒子は、サイズが約1nm乃至1μmまでの範囲内であり得、通常は、1nmから2〜3百ナノメートルの直径を有している。このようにサイズが小さいことから、ナノ粒子は、表面積と体積との比が非常に大きい。この特徴は、ナノ粒子の多くの使用の場合に、多くの不均一触媒作用の如く、その工程において、できる限り少ない体積で、最大の表面積が必要とされる理由を明らかにしている。
【0003】
ナノ粒子は、その内部構造において、多様であり得る。最も単純な粒子が、単に一つの材料のみでできている一方で、より複雑な粒子は、異なる材料で形成された1つ又はそれ以上の異なる層が周りに配置された芯 (core) の領域を有する場合がある。
【0004】
ナノ粒子を製造するための多くの方法がある。それは、材料の単純なすり潰しや粉砕の技術から、マイクロエマルジョンからの析出 (deposition) 及びエマルジョンの重合を通じて、材料の電気アーク蒸発までの範囲に到る。用いられる方法は、必要とされる粒子の複雑さ、例えば、その粒子の異なる材料の層の数、異なる層が如何に相互作用するか、及び、その他の十分に定義された要因に基づいている。
【0005】
ナノ粒子を、単一の材料から単純な粉砕の技術によって製造することが、最も単純な製造方法であるが、粒子内部の芯を化学的又は物理的な劣化 (degradation)から保護するために、外側がコーティングされた粒子が、広く用いられている。
【0006】
様々に異なる芯材料及び表面層を有するナノ粒子の製造方法が、広く知られている。
US6,548,264は、外側にシリカコーティングを有する粒子の範囲、及びマイクロエマルジョンを用いたそれらの製造方法について、開示している。
【0007】
WO 03/057359として公開された国際出願PCT/GB2003/000029(Reading University)も、磁性の芯を有するシリカ粒子の製造方法について、記載している。アルミナ、チタニア、又はジルコニアのような、他のコートされた材料のナノ粒子を、ゾル・ゲル技術又は関連の技術によって製造する方法が、知られている。
【0008】
【特許文献1】US6,548,264
【特許文献2】WO 03/057359
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ナノ粒子の表面層の孔質 (porosity) を利用するものであり、かかる粒子を新しい用法に利用するものである。孔質は、該粒子を製造する際に、制御することができる。また、この製造方法は、多孔のコーティング又は層の内側で、粒子の芯に所望の分子の導入を許容するものであり、そして該粒子の孔質は、捕捉された分子へのアクセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様においては、ナノ粒子が、二つの非混和性の溶媒から成る溶媒系における分子の分配係数を決定するプロセスにおいて、調製され、使用される。分子の分配係数は、その中で測定される溶媒系に依存し、平衡状態にある該二つの溶媒間で分子がどのように分配されるかについての数値的評価を与える。これは、医薬品の発展における、一つの特別な用法を有する。
【0011】
分配係数の値を測定するための、現時点での技術は、"Pharmacokinetic Optimization in Drug Research: Biological, Physicochemical and Computational Strategies" (B. Testa, H. van de Waterbeemd, G. Folkers, R. Guy (editors), Verlag Helvetica Chimica Acta, Zurich, 2001) に記載されている。最も一般的に適用されている測定においては、テスト分子が、第一の溶媒、例えば水に、公知の濃度で溶解せしめられている。この溶液の公知の量が、その後、公知の量の第二の溶媒、例えばn−オクタノールに添加され、そしてそれら二つの相は、十分に混ぜられる。この系は、それから、濃度平衡に到達するようにされる。最後に、第一の溶媒を含む相が、分離され、この溶液中のテスト分子の濃度が測定される。この値から、分配係数(P)が決定され得るのである。
【0012】
分配係数を決定するための、この方法により、幾つかの問題が発生する。非混和性のこれら二つの相が混ぜられると、濃度平衡に到達するには、長時間平衡させる必要がある。これは、二つの相の間の接触面積が、比較的少ないためである。また、二つの相の分離は、相の間の境界線(境界面)の位置を視覚的に評価することを、必要とするからである。ある分子が、一つの相に高度に可溶であると、その溶媒を非常に少ない量で用いることが必要となる場合があり、境界面の位置の評価が困難になる。更に、分配されるべき相のために境界面が認識できなければならない、という事実により、比較的多量の溶媒の使用を必要とする。これは、多量の有害な廃棄物を生み、その手順のためのコストを高める。
【0013】
これらの問題が組み合わさることにより、この工程は、特に産業規模で実施される場合に、コストと時間のかかるものとなる。
【0014】
本発明は、一つの態様において、テスト分子の分配係数の測定方法においてナノ粒子を用いることにより、上記の問題の克服を求めるものである。
【0015】
従って、第一の態様において、本発明は、第一の溶媒及びナノ粒子の本体 (body of nanoparticles) を含有する混合物中の二つの溶媒間の化学的化合物の分配係数を決定する方法を提供するのであり、そこにおいて、第二の溶媒は、ナノ粒子の孔 (pore) 内に吸収されている。それらに吸収された溶媒を有するナノ粒子の本体は、所定量の溶媒を提供することができ、その際の溶媒の量は極少量であり得、極度の分配係数の決定 (determination of extreme partition coefficients) を許容する。該ナノ粒子は、例えばナノ粒子が磁選を許容する磁性体の芯を有する際に、第一の溶媒から簡単に分離せしめられ得る。遠心分離や、ナノ粒子の沈殿を起すために、例えば別の溶媒を加えることによって、該系の誘電率を変えるという方法の如き、その他の分離方法も利用可能であるので、本発明の本態様にて採用されるナノ粒子は、多孔材料のみからなるものでもよい。
【0016】
分配係数の測定にナノ粒子を使用しても、その結果に影響を及ぼさない、すなわち、ナノ粒子は、得られる分配係数の値に、著しい影響を及ぼすことはない、ということが、示されてきた。測定された化合物の平衡分布が速やかに得られるので、その手順は速やかであり得、また簡単且つ効果的にナノ粒子が分離されるので、用いられるべき一方又は両方の溶媒が、少量となることにより、経済的と為し得るのである。
【0017】
分配係数の正確な決定のためには、第一の溶媒相が第二の溶媒相で予め飽和せしめられているか、あるいはその逆であることが、望ましい。従って、二つの溶媒は、互いに完全に不溶である必要はなく、重要なのは、それらが二つの非混和性の相を形成することであり、「非混和性の(immiscible)」との語は、ここでは、その意味にて用いられる。
【0018】
本発明は、また、分配係数を決定するための本方法において有用なナノ粒子を含む組成物にも、ある。ここでは、多孔の外側コーティングを有するナノ粒子及び第一の溶媒の混合物が提供され、そこで、第二の溶媒がナノ粒子の多孔コーティングに吸収されるのであり、その場合の第一の溶媒と第二の溶媒とは、非混和性である。このような組成物は、例えば第一の溶媒中の粒子のコロイド的な分散物として安定しており、長い貯蔵寿命を有し、そして所定量の第二の溶媒を、簡単に且つ正確に投与すること(dipensing)を許容する。この組成物においては、第二の溶媒相は、ナノ粒子中に完全に吸収されること、つまり、ナノ粒子の外側に自由に現われないことが、好ましい。
【0019】
従って、第一の溶媒の単位体積当たりの(すなわち、組成物全体の単位体積当たりでもある)、第二の溶媒を含むナノ粒子の量を、予め決めること、つまり、特定の組成物に関して知り、固定することができる。ナノ粒子は、第一の溶媒中に、コロイド溶液として、均一に分布せしめられ得る。そのため、二つの溶媒の体積の比は、前もって正確に決定される。従って、ある量の組成物の容量的投与 (volumetric dispensing)が実施され得、如何なる任意の量の二つの溶媒でも、簡単な方法で、所定の比率にて得られる。そして、高い精度が達成され得るのである。
【0020】
この組成物は、蒸発を避けるため、密閉容器にて保管されることが、好ましい。
【0021】
ナノ粒子が懸濁せしめられる第一の溶媒は、好ましくは、水性のもの、例えば、水又は水性溶液或いは含水相である。
【0022】
ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収される前記第二の溶媒は、例えば、水に対して非混和性である溶媒である。例えば、n−オクタノール、シクロヘキサン、アルカン(C6−C10)、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(propylene glycol dipelargonate: PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等である。
【0023】
二つの溶媒とも、好ましくは、何等の生物学的に活性な種を持つ化合物も、特に何等の薬学的に活性な化合物 (pharmaceutically active compound)も含んでいない。
【0024】
溶媒を含む粒子を形成するために、超臨界流体を用いて、この本発明の組成物を形成する方法は、以下に記述される。
【0025】
本発明によって提供される組成物の代替的な形式のもので、本文に記載された分配係数の決定の如き、定量的分析の手順において便利な形態をした所定の量の溶媒(すなわち、上記第二の溶媒と呼ばれる溶媒)の正確な投与に適したものも、夫々が多孔表面を有し、その孔の中に溶媒が吸収せしめられているナノ粒子を、組成物の単位重量当たり所定の量含んだ組成物である。この組成物は、自由溶媒(free solvent)が存在しない(すなわち、全てナノ粒子内に吸収せしめられている)ものであり、それによって、該溶媒が、効果的に微粒子的に固体(solid)であり、重さを量ることによって(重量測定法によって)必要量を投与することが可能(dispensable)であることが、好ましい。従って、溶媒の量は、組成物の単位重量当たり、事前に定められている。この組成物も、溶媒の蒸発を避けるため、密閉容器にて保管されることが好ましい。この溶媒は、実質的に溶質を含まないもの、例えば生物学的に活性な化合物を含まないものとすることができる。この組成物は、上記のように二つの溶媒の組成物を得るために、望ましい量の別の溶媒(上記で第一の溶媒と呼ばれているもの)と正確に混合されてよく、これは、例えばユーザーによって、使用の直前に行われてよいものである。超臨界流体を用いた、本発明のこの組成物の形成方法は、以下に記述される。
【0026】
本発明の第二の態様においては、触媒的に活性な種、特に生物学的に活性な種、特に生物学的触媒が、多孔のナノ粒子の芯に捕捉され得、その際、触媒反応を起すため、触媒活性が維持され、基質の分子が粒子の孔を通じてそこに接触可能であるということを、見出したことに、起因するものである。これは、多孔コーティングが、該生物学的に活性な種のサイズよりも小さい孔サイズを有することによるものである。一つの有利な点は、生理活性を持つ種が、化学的結合をすることなしに捕捉され得るため、本質的に、最適な性質の遊離状態(free state of optimum nature)にあるということである。従って、その活性は、分子が支持体に化学的に結合せしめられる公知の技術とは異なり、障害を受けたり、変更されたりすることがない。
【0027】
粒子サイズ、特に芯 (core) のサイズを制御することにより、捕捉された種を公知の再現可能な量にて含む、ナノ粒子の本体を提供することが可能となる。芯のサイズは、生理活性を持つ種の分子が、一つのみ存在する程度のサイズでもよく、その場合、ナノ粒子の集団において、触媒分子を全く含まないものもあれば、一つよりも多く含むものある。従って、触媒的に活性な種の分子を、粒子当たり平均で、多くて一つ含む、ナノ粒子の集団又は集合を、提供することが可能である。
【0028】
この捕捉による一つの利点は、不活性化の程度を低減するコーティングによって、生理活性を持つ種の会合又は凝集 (agglomerization)を低減する(二量体、三量体、四量体等の形成を低減する)ということである。
【0029】
本発明のかかる態様における、触媒的に活性な種を含むナノ粒子は、多くの用途、例えば酵素反応及びその他の触媒反応、分析方法(例えば、抗原−抗体反応、蛋白質−薬物結合、バイオレセプター−抗原結合、オリゴヌクレオチドの認識、ビオチン−ストレプトアビジン反応の如き、標的とする分子を捕捉された種に結合することによるもの)において、及び、バイオセンサー等として、採用され得る。重要な利点は、自由な形態の嵩高い生理活性を持つ種を、目的に合ったサイズの多孔コーティングを有するナノ粒子の芯の内部に捕捉するということである。これは、捕捉された種が、コーティングを通じて溶液に溶解されることを防ぐ。一方、コーティングの孔サイズは、捕捉された分子に自由に接近することを許容し、小さい分子(孔サイズよりも小さい)の交換を許容する。従って、捕捉された芯磁石 (core magnet) を用いて又はその他の手段によって、分離が達成され得る。その結果、複合ナノ粒子の多孔コーティングは、分子の認識及び分離のための「ナノメンブラン (nanomembrane)」であると考えられ得る。
【0030】
更に、触媒的に活性な種をカプセル化する本発明のナノ粒子は、触媒作用が小規模にて行われることを許容し、不均一系触媒からの生成物の簡単な分離を許容する。
【0031】
上記のように、本発明は、第一の溶媒中に存在し、その多孔コーティングに吸収された第二の溶媒を担持する多孔コーティングを有する、ナノ粒子の組成物を提供するものである。本発明は、更に、その孔に、組成物の単位重量当たり所定の量において吸収せしめられている溶媒を有するナノ粒子の組成物を、提供するものである。
【0032】
本発明者らは、ナノ粒子の孔において、溶媒液の如き材料を、高度な量的精度をもって析出する新規な方法を見出した。この方法は、ナノ粒子のみならず、大きな物体の表面、又は任意のサイズの粒子の表面等の、如何なる多孔表面における材料の析出にも、適用することができる。
【0033】
従って、本発明に従う更に別の態様によれば、多孔材料が超臨界流体中において或る成分の溶液に接触することによって、多孔材料の孔において該成分を析出又は分散させる方法が、提供される。好適には、かかる超臨界流体は、減圧し、そして蒸発を許容することによって、除去せしめられる。
【0034】
好適な超臨界流体は、容易に制御できる温度及び圧力において、超臨界となる二酸化炭素である(SC−CO2)。適切な超臨界流体を形成することのできる、その他の物質の例には、エタン、水、ブタン、アンモニア、並びに、Ar、Xe、及びKrの如き貴ガス (noble gas)がある。
【0035】
SC−CO2に可溶の成分は、例えば、炭化水素類(脂肪族及び芳香族の両者を含む)、ハロカーボン類、アルデヒド類、エステル類、ケトン類、及びn−オクタノールのように、炭素原子を1乃至12個有する脂肪族アルコール類等のアルコール類の如き有機分子である。特に、本発明の態様の一つにおいては、比較的低分子量(例えば≦200)の溶媒化合物に適用することができるが、本発明は、また、例えば分子量が≦500、特に200−500である生物学的種及び薬物分子等の大きな分子の如き、他の分子の析出又は分散をも含んでいる。二つ又はそれ以上の化合物が、同時に析出又は分散せしめられてもよい。
【0036】
本発明は、更に、上記の如き超臨界流体を用いた方法によって、所定の量で第一の成分を含む多孔粒子を調製する工程と、該第一の成分を含有する粒子を、液状の第二の成分に添加する工程とを含む、二つの成分を有する組成物の調製方法も、提供する。これら二つの成分は、一般的に、非混和性である。前記第二の成分は、例えば、水性であってよい。第二の成分が大過剰である場合に、例えば、重量比が100:1又はそれ以上、例えば、100:1乃至3000:1の範囲、好ましくは500:1乃至1500:1である場合にも、二つの成分の、正確な比率が成し遂げられ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
多孔コートされたナノ粒子の形成及び特性
上記せるように、多孔のコーティングによって取り囲まれた芯を有する固体のナノ粒子は、以下の工程を含む方法によって、製造され得る:
a)芯となる種を含み、且つ、有機安定剤によってコロイド的に安定化せしめられているか、又は、ミセル凝集体(例えば、界面活性剤分子によって取り囲まれた、安定化せしめられた水滴)として安定化せしめられているコロイド粒子を、液状媒質中において形成する工程;及び
b)前記コロイド粒子又はミセル粒子と、前記液状媒質との界面区域内にて、前駆物質の化合物を加水分解することによって、前記コロイド粒子の周りに、多孔コーティングを形成する工程。
【0038】
好ましくは、多孔コーティングを所望の厚さにするために、ナノ粒子は、コロイド系から取り出される前に、例えば、1時間から数週間、好ましくは2−5日間、熟成される (aged) こととなる。
【0039】
粒子の芯の周りに形成される多孔コーティングは、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、又はカーボンの如き多孔材料の部類から、形成されてよい。好ましくは、多孔コーティングは、コロイド懸濁液の界面領域で、シリコン含有化合物の加水分解により、シリカから形成される。
【0040】
この加水分解される化合物は、アルコキシシラン化合物、即ち、少なくとも一つのSi−OR結合を有する化合物 [但し、Rは、テトラエチルオルソシラン(TEOS、Si(OC2H5)4)の如く、好ましくは1−8個の炭素原子、更に好ましくは1−4個の炭素原子を有するアルキルである];及び、クロロ−、ブロモ−、ヒドロ−、及びメタロ−シラン(加水分解が起きる、Si−Cl、Si−Br、Si−H、又はSi−M結合を含有する)であり得る。その代わりとしては、加水分解される化合物は、チタニウムイソプロポキシド又はチタニウムテトラクロライドの如き、チタニウム、アルミニウム、又はジルコニウムの、類似アルコキシ、ハロ、ヒドロ化合物(又は金属間化合物)とすることができる。
【0041】
上記化合物の加水分解の後、前記の熟成の工程により、−OH種の相互縮合が許容されて、その中に粒子を取り囲む三次元ゲル(例えば、Si−O−Si又はTi−O−Tiの結合を伴うもの)を形成する。
【0042】
カーボンコーティングの形成のために、工程(a)で形成されたコロイド粒子は、コロイド懸濁液から分離せしめられ、そして熱分解されることにより、粒子の周りの有機界面活性剤のコーティングが分解して、ナノ粒子の芯の周りに多孔カーボンの外側コーティングが形成されるようになる。ポリビニルアルコール、フェノール/ポリフェノール、多糖類等の如き、その他のカーボン前駆物質(類)を、多孔カーボンの形成に用いることができる。
【0043】
工程(a)における方法の好ましい形態においては、コロイド粒子は、界面活性剤によって安定化せしめられた分散相の小滴又はミセルを有し、且つ芯材料の溶解された化合物を含むエマルジョンを形成し、そしてコア種の沈殿を惹起して、それによってミセルの内部にコロイド状の粒子を形成することにより、作られる。この沈殿は、アルカリ又はアンモニアの添加によって惹起され得る。
【0044】
コロイド粒子を安定化させるために用いられる好ましい界面活性剤には、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、オレイン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、及び、AOTやTX100等の如き非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0045】
前記多孔材料は、その表面に、生化学的又は生物学的種(例えば、ペプチド類、マーカー類 (markers)、同種の結合相手、可溶化剤類)の如き、他の種の化学的(例えば共有)結合のため、若しくは、リンカー分子を使用又は使用することなく、基質にナノ粒子を結合するために、官能基、例えば、OH基を有していてよい。また、静電相互作用によって、所定のpHでの荷電表面上の、荷電した種の固定化も、含まれる。
【0046】
異なる金属の、複数の金属含有種が、コロイド粒子中に、そしてそれ故に製造されたナノ粒子の芯中に含まれていてもよい。通常は、このような金属含有種は、金属、合金、金属酸化物、金属水酸化物、及び金属炭化物の中から選択される。好ましくは、この金属含有種は、強磁性 (ナノ粒子の磁気分離を可能にするもの)若しくは超常磁性であり、又は単一ドメインの磁性ナノ粒子が採用される。ナノ粒子の芯に含まれ得る磁性材料には、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)、及びFe2CoO4 が、含まれる。
【0047】
その代わりとして、又は、追加的に、ナノ粒子の芯は、触媒的に若しくは生物学的に活性な種を含有していてもよい。好適な生物学的活性の種は、酵素や蛋白質を含んでいる。その例は、血液/肝臓組織中にある、ラクターゼ、メタロチオニン、シトクロム(シトクロムb、シトクロムc、又はシトクロムP450等)、血清アルブミン(類)、カルボキシルエステラーゼ類、キナーゼ、短核酸オリゴマー類、抗体種及び酵素インジケータ類である。好適な触媒種には、ヘテロポリ酸類、メタロチオレイン類、コランド類(corands)、コラプレックス類(coraplexes)、スフェランド類、スフェラプレックス類(spheraplexes)、キャビタンド類、ホスト−ゲスト触媒類の如き無機触媒化合物(例えば、「定量的な合成(ship in a bottle chemistry)」によって形成されたもの)、及び介在 (intercalated) 触媒類などがある。
【0048】
ナノ粒子の芯が、触媒的又は生物学的活性の種を含む場合、多孔コーティングは、その触媒的又は生物学的活性の種よりも小さい孔サイズを持つようにし、それによって活性種がナノ粒子のコーティング内部に保持されるようにすることが、好ましい。
【0049】
さらに、ナノ粒子の多孔コーティングは、小さな分子がそこを通り抜けるのを許容できる程の大きさの孔サイズを有することが好ましい。特に、触媒活性の種が、ナノ粒子の芯においてカプセル化 (encapsulated) される時、多孔の外側コーティングの孔サイズは、触媒反応の反応剤及び生成物の何れのサイズよりも大きいことが、好ましい。この場合、反応剤分子は、ナノ粒子の多孔コーティングを通過して、ナノ粒子の内部に保持された触媒的又は生物学的活性の種と相互に作用することができ、その相互作用による生成物は、多孔コーティングを通過して出て行くことができる。
【0050】
前記ナノ粒子は、好ましくは1nm乃至1μm、更に好ましくは1乃至100nmの平均直径を有する。多孔コーティングは、所望の厚さを有してよいが、好ましくは1乃至100nm、更に好ましくは1乃至50nmの平均厚さを有する。ナノ粒子の芯が、触媒的又は生物学的活性の種を含む場合、芯の直径は、1乃至10nmとすることができ、好ましくは、1乃至5nmである。
【0051】
テスト分子の分配係数の測定における多孔コートされたナノ粒子の使用
本発明は、多孔ナノ粒子の使用を通じて、二つの非混和性の溶媒間のテスト分子の分配を達成するための方法を提供する。この方法は、テスト分子を、多孔の外側コーティングを有するナノ粒子を含むコロイド懸濁液である第一の溶媒と混合する工程を含み、そこでは、第二の溶媒が多孔の外側コーティング中に吸収せしめられており、ナノ粒子は、第二の溶媒に対して非混和性を有する第一の溶媒中に、懸濁せしめられている。このテスト分子は、第二の溶媒に部分的に溶解し、そしてナノ粒子の多孔の外側コーティングの中に保持され、また部分的には第一の溶媒の中に、保持せしめられる。
【0052】
テストされる化合物(検体)、ナノ粒子、ナノ粒子を含む第一の溶媒、及びナノ粒子の孔内の第二の溶媒を含む組成物を調製するための工程は、あらゆる好適な方法によって、実施されてよい。例えば、検体は、ナノ粒子の組成物に混合される緩衝剤等に、並びに第一及び第二の溶媒に、溶液として、導入される。検体溶液は、第一の溶媒に対する混和性を有し、両者は、共に、例えば水性である。代替的には、DMSOの如き少量の溶媒に溶解せしめられた公知の量の検体を、ナノ粒子並びに第一及び第二の溶媒の組成物に注入する。その他の代替法は、第二の溶媒を含むナノ粒子を、第一の溶媒中の検体の溶液に導入するというものである。
【0053】
テスト分子の分配を達成するための速度を最適化するために、二つの非混和性の溶媒の接触面積を最大限にすることが、望ましい。これは、表面積と体積との比率が高い粒子を形成することによって達成され得る。すなわち、粒子の直径が小さければ小さいほど、分配は早く達成されるのである。更に、ナノ粒子上の多孔コーティングは、テスト分子の分配速度を上げるため、できる限り多くの溶媒を吸収すべきである。このように、小さくて、孔の体積の大きい粒子が、好ましい。テスト分子の速やかな分配を好むという多孔コーティングの特徴が最適化されると、本発明のナノ粒子を用いて、分配時間を1−10分又はそれ以下の範囲にすることができる。これは、先行技術で達成された分配時間に比べて目覚しく改善されていることを意味する。
【0054】
この方法では、上記の溶媒とナノ粒子を含む組成物が、採用されてよい。
【0055】
二つの非混和性の溶媒間でテスト分子の分離を達成するための本発明の方法は、テスト分子の分配係数の値を決定するために、用いてもよい。
【0056】
以下の用語は、分配係数について論じる際に、用いられる:
【0057】
logPは、テスト分子の分配係数のために引用される標準値である[但し、P=[C]organic/[C]aqueousである]。その他に指定が無い限りは、これらの値は、電子的に中性の形態である分子を用いたオクタノール−水の二相系のために記録される。
【0058】
logDは、本明細書において、最も一般的に用いられる値である。これは、特定のpH値におけるテスト分子の分配係数に当てはまる。これらの値を計算する際に、Dについて、以下の関係が用いられる。
【0059】
【数1】
【0060】
テスト分子の分配係数(logP又はlogDの何れか)の値を測定するための一つの方法は、以下の工程を含んでいる:
a)多孔表面を有するナノ粒子と第一の溶媒からなる組成物にして、第二の溶媒が該ナ ノ粒子の多孔表面内に吸収されており、且つ、該第一の溶媒と該第二の溶媒が非混 和性である組成物を調製する工程;
b)テストされるべき分子を、工程a)の組成物に導入する工程;
c)工程b)の生成物を、二つの成分、即ちナノ粒子を含む第一のものと、前記第一の 溶媒を含む第二のものとに分離する工程;並びに、
d)分配係数の計算を可能とするために、前記第一の溶媒中に残る、テストされるべき 分子の量を決定する工程。
【0061】
この方法の工程c)は、混合物を、ナノ粒子と上澄み溶液とを含む二つの成分に分離するために、工程b)の生成物を、例えばろ過又は遠心分離することによって、或いは上記したその他の分離方法によって、達成され得る。ナノ粒子の芯が、磁性材料を有する場合には、上記方法の工程c)を実施するために、代替として磁界を用いることも可能である。この場合、工程b)の生成物に適用される磁界は、反応混合物からナノ粒子を沈殿させるように作用せしめられ得る。
【0062】
分配係数を測定するための方法における工程d)は、溶液中のテスト分子の濃度を決定し得るあらゆる分析技術によって達成され得る。それら技術は、核磁気共鳴(NMR)、滴定、UV−可視分光法、蛍光、リン光、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析(MS)、GC−MS、重量測定、表面プラズマ、及び電気分析法の技術を含み得る。好ましくは、工程d)で用いられる技術は、上澄み溶液の更なる工程を必要とするものではなく、また、反応槽からサンプルを取り除くことなく実施され得るものである。最も好適な態様において、工程d)にて用いられる技術は、UV−可視分光法である。
【0063】
上澄み溶液中のテスト分子の濃度を決定するために、UV−可視分光法が用いられる好適なケースにおいては、logDを計算するために、以下の式を用いることができる。
【0064】
【数2】
【0065】
本発明の方法によって測定されたlogDの値と、先行技術の方法によって測定されたlogDの値との相関関係が、図1及び図2に示されている。
【0066】
第二の溶媒(ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収されている)と第一の溶媒との体積比は、これら二つの溶媒におけるテスト分子のおよその溶解度(それが事前に知られていない場合には、推測により、又は実験によって決められてよい)に基づいて、選択される。本発明においては、第一の溶媒と第二の溶媒の比率は、3000:1乃至1:1とすることができる。一般的に、第一の溶媒と第二の溶媒の比率は、50:1よりも大きく、好ましくは100:1又はそれ以上、更に、500:1又はそれ以上と高く、例えば500:1乃至1500:1の範囲としてもよい。
【0067】
このような、テスト分子の分配係数を測定する方法は、先行技術の方法に比べて、幾つかの明確な利点を有している。
【0068】
第一に、テスト分子の分配は、前述の理由により、先行技術よりも早く達成される。
【0069】
第二に、ナノ粒子の芯が磁性材料を有する場合、分配係数を測定するために用いられる混合物は、溶液に磁界を適用することによって、ナノ粒子成分と上澄み溶液とに、容易に分離せしめられ得るのである。通常は、該混合物のそれら二つの成分の分離は、数秒の範囲で達成され得ることとなる。
【0070】
第三に、溶媒のうちの一つがナノ粒子の多孔コーティングに吸収されるので、測定中の揮発性の溶媒の蒸発による問題が、克服され得ることである。先行技術の方法では、揮発性の溶媒中で成分の分配について測定する際には、溶媒の蒸発を避けるために、測定中に溶媒の量を変更し、大いに注意を払わねばならず、分配係数の計算を、複雑にしていた。しかし、本方法では、揮発性の溶媒は、ナノ粒子の多孔の外側コーティングに吸収され得るため、溶媒の蒸発速度を低下させる。テスト分子の、より速やかな分配と組み合わされて、全体的な測定時間が減少することになり、それによって、本発明の方法を用いたテスト分子の揮発性の溶媒への分配が許容されることになるのである。
【0071】
第四に、本方法では、分離は、例えば磁選、ろ過、又は遠心分離によるナノ粒子の分離によって、達成されるため、二つの溶媒の分離の達成のために溶媒の境界面の目視による判定に頼ることはない。そのため、テスト分子の分配係数を測定する本方法は、先行技術の方法に比べて、より少ない量の溶媒を用いて実施され得る。より少ない量の溶媒は、測定のコストを低下せしめ、工程の自動化を容易にする。更に、より少ない量の溶媒を用いた測定では、発生する有害な廃物の量も少なく、それによって、該工程のコスト及び環境に対する影響を、更に低下させる。
【0072】
最後に、本発明工程は、テスト分子が溶媒の何れか一つに高度に可溶である場合でさえも、分配係数を測定するために用いられ得る。上記のように、第一の溶媒と第二の溶媒との好適な比率は、各溶媒におけるテスト分子の溶解度によって決定される。本発明の方法にあっては、分配係数値の測定において、より広い範囲の第一の溶媒と第二の溶媒との比率が用いられ得る。これは、テスト分子の濃度測定の前の溶媒の分離が、第一及び第二の溶媒間の境界の、目視による決定を必要としないという事実によるものである。3000:1乃至1:1という比率において、第一の溶媒:第二の溶媒が、用いられ得る。少量の溶媒、テスト分子、及び複合ナノ粒子の使用と、上澄みにおけるテスト分子の濃度の速やかな分光光学的決定との組み合わせにより、分配係数の迅速な評価が許容される。従って、ロボットに適した(robot-friendly)方法において、幅広い種類のテスト分子の、高い流量でのスクリーニングが、確立され得る。
【0073】
多孔の外側コーティングを有するナノ粒子内に被包された触媒種
多孔の外側コーティング内に触媒的に活性な種を被包(カプセル化)するナノ粒子の有利な点は、様々な外側コーティングと触媒的に活性な種が考えられ得るため、多様である。生物学的に活性な種を含む使用もあるため、本発明の多孔コートがなされたナノ粒子の、不均一無機触媒における使用が、考えられる。
【0074】
一つの態様においては、磁性材料を含む芯を有するナノ粒子は、懸濁液においてその触媒活性が活用され、磁界を用いて反応生成物からの触媒の分離が容易に達成されるため、特に有用である。
【0075】
芯材料が生物学的に活性な種を含む場合に、本発明のナノ粒子の更なる有利な点は、生物学的に活性な種は、例えば、その種を基材に結合するための可溶化基または連結基の付加によって、その自由状態における場合に比べて、化学的に変化せしめられにくいということである。これは、含まれている種の物理的構造が、ペンダント基又はそれと同等のものへの結合によって変更されないということである。従って、本発明の、この態様において、前記の種は、被包されていない形態と同様の方法で活動をする。
【0076】
また、酵素分子の如く、生物学的に活性な分子の懸濁液は、かかる分子の濃度が特定の閾値よりも高められたときに、溶液の中で会合することも知られている。これは、生物学的に活性な種の、懸濁液中での高濃度での使用を制限する。というのも、会合は、分子の表面積と体積との比率の低下をもたらし、それ故、分子の相互作用のために利用可能な結合サイトの数を潜在的に低下させるからである。しかし、本発明では、生物学的に活性な種を取り巻く多孔の外側コーティングが、分子の会合を防ぎ、その種が懸濁液中に、先行技術の方法よりも、より高い濃度にて存在することを、許容する。
【0077】
前記被包方法の、様々な芯材料に対する広い適用可能性、及び潜在的な多孔の外側コーティングの範囲により、本発明のナノ粒子には、潜在的に莫大な種類の適用が得られる。適用として考えられるものには、様々な薬物分子の分析方法、分子結合定数の測定、(生物学的な系及び化学的な系の両方における)触媒反応、バイオセンサーの適用、抗体−抗原、蓄積及び開放などが含まれる。一つの例には、薬物/アルブミン相互作用、及び/又は、結合定数の決定について研究するための、アルブミンの被包(カプセル化)がある。
【実施例】
【0078】
実施例1: 多孔シリカコートがなされたFe3O4ナノ粒子の形成
脱イオン化水、予め乾燥させた過剰のトルエン、及びイオン性界面活性剤(CTAB)を用いて、マイクロエマルジョンの形成が、行われた。概して、実験は、室温にて行われた。このマイクロエマルジョンは、以下の通り形成された:トルエン中にCTABが十分に分散せしめられた懸濁液を作るため、勢いよく攪拌しつつ、0.02モルのCTAB(99%、Aldrich)を、100gの乾燥トルエン(99+%、Fisher)に添加した。0.3428gのFeCl2・4H2O及び0.9321gのFeCl3・6H2O(共に、99%、Aldrich)が、6.2gの水に、溶解せしめられた。この溶液は、窒素雰囲気中において、CTABのトルエン懸濁液に、ゆっくりと滴下することで、添加された。4時間攪拌した後、NH3溶液(18.1M、1ml、Fisher)が、該混合物に添加された。1時間後、系全体 (whole system)の色が、黒く変化した。これは、Fe2+、Fe3+、及びアンモニアの添加は、磁性Fe3O4の沈殿物を生成することを前もって示している。この時点で、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)(99%、Aldrich)が、反応混合物に添加された。該混合物には、1時間の間、窒素のバブリングが行われた。このアンモニア溶液(高pH)は、TEOSの加水分解/縮合に触媒作用を及ぼし、シリカゲルと成した。このシリカの上層は、懸濁液中にて、5日間、熟成せしめられた。最後に、沈殿物が、磁気分離の手段によって隔離され、界面活性剤及び有機溶媒を除去するために、高温のエタノール、水、及びアセトンで、数回洗浄された。その後、沈殿物は、室温にて乾燥せしめられ、濃い茶色の粉末を得た。
【0079】
実施例2: 実施例1の生成物の分析
実施例1で得られた生成物が、様々な技術を用いて分析された。
【0080】
この粒子は、超常磁気応答を示す磁界への露呈によって、強力な磁気応答を示した(図3参照)。
【0081】
Fe3O4ナノ粒子は、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、直径が約12nmであることが示された(図4参照)。これに対して、X線回折(XRD)測定による計算は、該粒子の直径が17nm程度であることを示している(図5参照)。
【0082】
このナノ粒子の化学的組成物は、エネルギー分散分光法(EDS)によって測定された(表1参照)。
【0083】
【表1】
【0084】
表1からの計算は、シリカコートされたFe3O4の組成物の個々の粒子がFe3O4.24・1.74SiO2であることを示している。実施例1の方法を用いるものの、TEOSの濃度を変えた、粒子を形成するための更なる実験は、Fe3O4.1・0.21SiO2の組成を有するナノ粒子も得られ得るということを示唆している。これは、実施例1の方法を用いることによって、ナノ粒子上のシリカコーティングの厚さを、目的に合わせたものとすることが可能であることを、示している。
【0085】
実施例3: 実施例1で生成したナノ粒子上のシリカコーティングの多孔度の測定
実施例1の方法によって製造されたFe3O4 ナノ粒子のシリカコーティングの孔に捕捉され得るn−オクタノールの最大量の評価は、熱重量(TG)分析によって得ることが出来る(図6及び7参照)。実施例1の方法によって調製された生成物のTG分析によって得られた値は、シリカコーティングが、ナノ粒子1g当たり0.54mlまで吸収可能であることを示唆している。BET(シリカ1gm当たり300m2 超)及び孔サイズの測定(孔サイズの範囲0.5−3nm)も、複合ナノ粒子が、実際に多孔質であることを、示している。
【0086】
実施例4: 表面水酸基のキャッピング
実施例1の方法によって得られた、多孔シリカでコートされたFe3O4ナノ粒子は、シリカコーティング上の表面水酸基を、トリメチルシリル(−Si(CH3)3)基でキャップするために、更に変更せしめられた。過剰のCTMSが、120℃の窒素雰囲気中において、乾燥シリカゲルでコートしたFe3O4固定床を通じて流れるようにされた。CTMSによる処理の前後の、多孔シリカでコートされたFe3O4ナノ粒子のIRスペクトルは、図8に示されており、そして図は、Si−OHシグナル(〜967cm-1)の強度の減少、及び、シリカ表面上の−OH基のキャッピングを示すSi−CH3 シグナル(〜850cm-1〜1265cm-1)の発現を示している。
【0087】
実施例5: 多孔シリカでコートされたFe3O4の形成
実施例1と同じ方法によって、Fe2CoO4ナノ粒子が生成せしめられ、多孔シリカコーティングによってコートされた。この場合、等モル量のFeCl3・6H2O(実施例1に記載の使用量と同じ量)とCoCl2・xH2Oとが、実施例1と同じ方法で、CTABのトルエン懸濁液に添加された水に溶解せしめられた。Fe2CoO4 粒子のサイズは、実施例1で形成されたFe3O4粒子と略同じサイズのものとして、XRDにより測定された(図9)。
【0088】
実施例6: 多孔シリカでコートされたナノ粒子を用いたlogD値の測定
オルトリン酸二水素カリウム(99%、Aldrich)の0.1mM水溶液で、pH値が7.4に調整されたものが、以下の測定における緩衝溶液として、用いられた。ガラス瓶内で、n−オクタノールで予め予備飽和された緩衝溶液に、テスト分子が溶解せしめられた。このテスト分子の濃度は、約1×10-5Mに維持された。前記緩衝溶液にて予備飽和されたn−オクタノールの、10乃至100μlが、多孔シリカでコートされたFe3O4のナノ粒子(実施例1の方法によって得られたもの)に、毛管作用によって、物理的に吸収せしめられた。添加されたオクタノールの全てが、完全に吸着され、それを含むナノ粒子は、乾燥した粉末のように思われ、油性の小滴は、全く見られなかった。公知の量のn−オクタノールを含有しているナノ粒子が、公知の濃度のテスト分子溶液に分散するようにされた。この混合物中の水溶液とn−オクタノールとの体積比は、100:1に設定された。前記のガラス瓶は、密閉され、オービタル・シェーカーに入れられた。n−オクタノールの小滴が複合物から(視覚上)分離することを避けるため、振り混ぜ速度が、注意深く制御された。振り混ぜの後、外部の磁石が、瓶の底付近に置かれた。磁性によって誘発された沈殿が、2〜3分以内で起こった。この沈殿の前後の、上澄みの水性相内のテスト分子の検体のUV−可視吸収が、ベースライン補正 (baseline correction) を用いて測定された。その後、以下の式を用いて、logD値が得られた。
【0089】
【数3】
【0090】
他に記載が無い限り、第一の溶媒(水)と第二の溶媒(n−オクタノール)との体積比は、100:1に固定された。
【0091】
一部のテスト分子の検体の分配係数値は、キャップされていないナノ粒子と比較するために、トリメチルシリル(TMS)基にてキャップされたナノ粒子の表面−OH基を用いて測定された。
【0092】
比較の目的のため、各テスト分子の検体の分配係数は、先行技術の「振とうフラスコ」法により、同じテスト分子濃度及び相体積比率を用いて、個別に測定された。これらの測定の結果が、以下の表2乃至表4に示されている。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
実施例7: 酵素の芯を用いたナノ粒子の形成
第一の緩衝溶液が、500mlの脱イオン化水中に、リン酸二水素カリウムの0.01molと塩化ナトリウムの0.25molを含んで、調製された。緩衝pH値は、20℃での水酸化ナトリウム溶液の添加により、7.0に調整された。
【0097】
その後、ペニシリナーゼ(Bacillus cereusから精製されたβ−ラクタマーゼI、Sigma)が、酵素濃度が50nMとなるように、同じ組成物の第二の緩衝溶液に溶解せしめられた。連続的に攪拌しながら、第一の緩衝溶液の5.2gが、ゆっくりと滴下して添加されることで、実施例1と同様にして(100gの乾燥トルエン中に0.02molのCTAB)マイクロエマルジョンが形成された。第二の緩衝溶液(ペニシリナーゼを含む)の2mlが、4時間を越えて、添加された。その後、この混合物は、更に4時間攪拌されることで、マイクロエマルジョン系における酵素分子の均等な分散を、確実にした。酵素活性の比較のため、この混合物の200μlのサンプルが、除去された(実施例8を参照)。その後、6.94gのTEOSが、この系にゆっくりと添加せしめられ、それによって、水/トルエン界面での加水分解が起き、外側のシリカコーティングが形成された。
【0098】
実施例8: 実施例7の生成物に対する酵素活性の試験
検定された標準ペニシリンV(フェノキシメチルペニシリン酸)(3nM、Sigma)の加水分解を経ても、酵素が機能する(functional)か、どうかを確認するため、実施例7でのTEOSの添加の前に取り出された200μlの混合物のサンプルが、232nmでペニシリン (pencilling) のラクタム基の加水分解が理解できるUV−可視分光法を用いて、分析された。TEOSの添加から6日後に、実施例7の混合物から、更に200μlが、抽出され、同様の方法にて分析された。
【0099】
図10乃至12に、UV−可視スペクトルが示されている。このスペクトル曲線は、主に、ペニシリンVのUV−可視スペクトルを表している。典型的なUV−可視スペクトルの変化を示す、添加された自由状態のβ−ラクタマーゼIによるペニシリンVの加水分解が、図10にプロットされている。232nm(ラクタム基が吸収する領域)での吸収値が、5分を越えて減少するということは、ペニシリンVから対応のペニシロ酸への急速な転換が起きているということ(ラクタム基の加水分解)を、明確に示している。図11は、TEOSの添加の前に、反応混合物から抽出された200μlのサンプル(シリカコートなし)を添加した際の、ペニシリンV溶液の結果を示している。ラクタム基が位置している232nmでの吸光度の値は、ここでも、5分の間、減少が見られた。これは、混合物のミセルに導入された際にも、酵素が、なお活性であることを示している。図12も、実施例7(シリカコートされたナノ粒子)の混合物にTEOSを添加した6日後に抽出されたサンプルを用いた場合に、同様のスペクトルの変化が観察されたことを示している。232nmでの吸光度の値は、5分を越えて、2つのスペクトルの間で、明白に減少し続けた。
【0100】
これらの結果は、捕捉された酵素が、ミセル及びシリカコートされた複合環境の両方において、機能を有することを示している。
【0101】
次に、超臨界流体を用いて、成分を多孔材料、特にナノ粒子に析出させる本発明の方法の詳細について、説明する。
【0102】
ある化合物の超臨界状態は、その臨界値の、或いはそれ以上の温度及び圧力において、達成され得る。化合物の臨界温度は、それを超えると、適用される圧力如何に拘わらず、純粋な気体成分を液化せしめることができない温度として、定義される。それから、臨界圧力は、該臨界温度における蒸気圧として、定義される。気体及び液体の相が同一になる時の温度及び圧力が、臨界点である。超臨界環境においては、一つの相のみが、存在する。いわゆる流体は、気体又は液体の何れでも無く、それら二つの極値(extremes)の中間として、最も適切に表現される。この相は、液体に共通の溶媒の力のほか、気体に共通する輸送能力を、保持する。二酸化炭素は、最も一般的に知られる超臨界流体である。気体、液体、及び超臨界状態の違いを例示するために、二酸化炭素の圧力−温度のダイヤグラムが、図13に示されている。図13に見られるように、純粋なCO2は、31.06℃未満の温度においてのみ、圧縮によって液化せしめられ得る。この臨界温度Tc及び対応の臨界圧力Pc(73.8バール)を越えると、明確な液体相又は気体相は存在しない。これは、SC−CO2 が存在する超臨界領域として、言及される。
【0103】
SC−CO2の特性は、温度及び圧力に依存しているが、一般的に、気体の状態と液体の状態の中間体である。超臨界のCO2は、環境にやさしい溶媒であるという有利な点を有する。それが持つ主な特性のうちの一つには、化学的化合物を溶解する能力がある。SC−CO2における化学的化合物の溶解度は、温度及び圧力によって影響される。SC−CO2中でのn−オクタノールの溶解度については、2001年に調べられた (H. Nakaya, O. Miyawaki and K. Nakamura, Enz. Micro. Tech., 28, 176-182, 2001)。この研究において、n−オクタノール/水系中における超臨界CO2のlogPは、CO2におけるn−オクタノールの溶解度から、決定された。n−オクタノールにおけるSC−CO2の溶解度は、55バール、50℃において、約1.0Mである。圧力が増加せしめられると、溶解度が増加せしめられる。これは、n−オクタノールが、SC−CO2 において良好な溶解度を有することを、示している。SC−CO2は、液体CO2に比して、実質的に高い拡散率及び低い粘度を有する。その密度の故に、この粘度及び拡散率は、温度及び圧力に依存している。異なる圧力及び温度でのSC−CO2 の拡散率及び粘度の曲線は、M.A. McHugh and V.J. Krukonis, Supercritical Fluid Extraction-Principles and Practice, Butterworths, Boston, MA, 10, 1986 and S.V. Kamat, B. Iwaskewyct, E.J. Berkman and A.J. Russell, Proc. Natl. Acad. Sci., 90, 2940, 1993. に示されている。拡散率が、温度の増加又は圧力の低下に伴って増加することについても、示されている。拡散率とは異なり、粘度は、温度の増加又は圧力の低下に伴って減少することが、示される。
【0104】
SC−CO2の、高いn−オクタノールの溶解度、高い拡散率及び低い粘度という利点は、超臨界媒体を介したn−オクタノールの多孔ナノ複合体への運搬についての、以下の実施例において、採用されている。その結果となるものは、均一に装填されたオクタノールと共に磁性ナノ複合体を含む均質な溶液 (homogeneous solution)である。
【0105】
実施例9: SC−CO2 の運搬を介した多孔ナノ複合体へのn−オクタノールの装填及びストック溶液の準備
以下の実施例では、n−オクタノール(99%)、リン酸二水素カリウム、4−ニトロアニソール(97%)、4−ニトロベンジルアルコール(99%)、および4−ニトロフェノール(98%)が、Aldrichから入手された。イミプラミン、キノリン、クロルプロマジン、ベンズアミドについては、分析用の品質又はそれ以上のものが、Sigmaから入手された。これらの薬品は、全て、それ以上の精製を行うことなく用いられた。
【0106】
図14に示された設定を用いて、多孔ナノ複合体へのn−オクタノールの装填が行われた。
【0107】
図14は、高圧CO2がパイプ2を通じて運搬される、オートクレーブ1を示している。このオートクレーブ1は、圧力検出器3、及び、一定の温度を保つ為の温度コントローラ4を有している。オートクレーブ1は、弁付管5によって、水槽7に保持されたサンプルホルダー6に接続されている。
【0108】
上記実施例1で調製された、乾燥した多孔シリカ被包のナノ複合体0.0607gが、サンプルホルダー6内に置かれた。その後、マイクロピペットを用いて、30μLのn−オクタノールがホルダー6内に添加された。このオートクレーブ槽とサンプルホルダー(合計容量30ml)がCO2で満たされ、2つのコンパートメントの間の弁や外部排出口を開閉することによって、CO2 でフラッシュされた。これは、この槽が所望の圧力(150バール)に達する前に、2、3回行われた。少量のn−オクタノールの多孔粒子中への分散を許容するため、オートクレーブとサンプルホルダーの温度は、40℃に維持された。2時間後、この系の高圧は、大気中に、非常にゆっくりと、放出された。サンプルホルダーの重量変化を測定することによって、0.0155gのn−オクタノール(密度0.8240g/mL)が、粒子に吸着せしめられ、その量は、18.8μLとなることが判った。
【0109】
SC−CO2 におけるn−オクタノールの比較的高い溶解度により、n−オクタノールの一部は、除圧工程の間に、失われた。n−オクタノールを有する複合体の粉末は、溶媒を乾燥した粉末に直接に混合して調製されたサンプルとは異なり、軽くて且つ乾燥しているもののように見えた。図15のプロットは、幾つかの同様の実験において、測定された(獲得重量)n−オクタノールの吸収量と、同量の粒子に添加されたn−オクタノールの量との間の関係を示している。
【0110】
別の手順においては、n−オクタノールは、オートクレーブ1に置かれて、SC−CO2がサンプルホルダー6内の粒子と接触せしめられる前に、オートクレーブにおいてSC−CO2中に溶解する。二つの手順とも、同様の結果を生むと考えられる。
【0111】
理論に縛られたくはないが、気体の如き特徴を有するSC−流体は、粒子の孔内に(液体に比して)、非常に自由に浸透し、減圧時には、溶解された成分の溶解度の減少が、粒子の孔の広い表面区域(粒子の外側面区域又は反応槽の表面区域よりもかなり大きい)上に凝縮することを許容するものと、推定することが出来る。
【0112】
水性溶媒にn−オクタノールを担持するこれらの粒子のストック溶液を調製するために、pH=7.4で、0.1mMのリン酸二水素カリウムを含む緩衝溶液が、最初に調製され、分液漏斗に配置された。水相を覆うn−オクタノールの薄い層を提供するために、適性な量のn−オクタノールが、添加された(n−オクタノールの密度は、水よりも低い)。n−オクタノールと水との混合を行うため、5乃至10分間、漏斗が攪拌された。その後、この溶媒混合物を、光による劣化や蒸発から保護するため、漏斗は、アルミホイルで覆われた。二つの層の分離を許容するように、この漏斗は、直立の位置にて、3日間配置された。その後、水にて飽和せしめられたn−オクタノール相が、回収された。
【0113】
溶液1mL当たりのn−オクタノールが0.0038mLの濃度である均質なストック溶液を得るために、かかる飽和緩衝溶液5mL中に、ナノ複合体を含む粒子が、分散せしめられた。これと同じ方法にて調製されたストック溶液を用いて、分配係数の測定が、下記の通り行われた。
【0114】
実施例10: ストック溶液を用いた分配係数の決定
各実験において、SC−CO2を用いる方法によって調製された、ナノ粒子を含むn−オクタノールのストック溶液1mLが、マイクロピペットを用いて取り出され、3mLの検体溶液と混合された。その混合系を30分間攪拌した後、リアクター管の底部付近に置かれた外部の磁石によって、磁性ナノ複合体が、数分間で沈殿せしめられた。分配の前後両方の水性相における検体の吸収について判定するために、UV−可視分光法が用いられた。この方法によって、7つの検体の分配係数(logD)が測定され、従来から用いられている振とうフラスコ法によって決定されたpH=7.4での、これらの検体のlogD値と、上記実施例6で得られた結果と共に、下記の表5に示された。
【0115】
分配係数の決定のために、好適なn−オクタノール/ナノ粒子比率を用いて、ストック溶液が調製された。0.071gのナノ複合体に対して40μlのn−オクタノールという典型的な比率は、SC−CO2の運搬の後、実際に、ナノ複合体上に22.3μlのn−オクタノールを与えた。このストック溶液は、これらのn−オクタノールを予め吸収したナノ複合体を、5mlのリン酸カリウム緩衝溶液(pH=7.4)中に直接的に分散せしめることによって、調製された。ここで記載されている作業では、緩衝溶液中のn−オクタノールの典型的な容量濃度は、緩衝溶液1ml当たりn−オクタノール0.0045mlというものである。
【0116】
分配の前後の水系相中の薬物濃度を定量的に決定するために、UV−可視分光法が、用いられた。n−オクタノール/水の分配係数(logD)は、平衡状態にあるこれら二相における種の活性の比率として定義された。溶解が大きい時は、活性を置き換えるために、濃度を用いる。この定義は、以下の式によって表現され得る。
【0117】
【数4】
【0118】
前記のように、logDの測定のために、1mLのストック溶液が、初期の薬物溶液3mLと混合された。緩衝溶液中のn−オクタノールの濃度は、1mLのストック溶液当たり0.0045mLのn−オクタノールであるので、測定時の水/n−オクタノールの体積比は、約889:1である。この比率は、振とうフラスコ法で用いられる100:1という通常の比率よりもかなり高く、高いlogD値の、信頼性のある決定が、可能となる。振とうフラスコ法では、このように少量のn−オクタノール相を分離することは困難であるが、磁性ナノ複合体を用いることによって、極めて容易となると見受けられる。
【0119】
表5は、本実施例のストック溶液方法、振とうフラスコ法、及び実施例6の磁性ナノ複合体方法を用いて、独立して測定されたlogD値の結果のリストである。各薬物検体について、3種類の方法の全てによって、少なくとも5回測定され、その測定されたlogD値の平均が示されている。振とうフラスコ法においても、磁性ナノ複合体法と同様に、水/n−オクタノールの容積比率として、100が用いられている。統計信頼度は、95%である。文献から得られた各薬物検体のlogD値も、比較のために、リストアップされている。
【0120】
【表5】
【0121】
上記の結果から、これら三つの全ての方法によって、1.260乃至3.20の範囲内にある薬物分子のlogD値が、首尾よく測定された。このデータから分かるように、ストック溶液法によって得られたlogD値の殆どが、文献値に対して十分な相関関係を有している。我々の測定においては、水/n−オクタノールの高い体積比が用いられたことから、特に、低いlogD値を有するそれら薬物分子の感度が制限されることが、観察された。低いlogD値を有する薬物化合物で、n−オクタノール相への低い溶解度を示すものは、分配の後でさえも、水相中のそれらの濃度に、大きな変化を与えることは無い。その結果、低いlogD値の化合物に対する実験結果の精度は、用いられる相の比率(添加されるストック溶液の量に関連する)と、関与する検知技術の感度に、大きく左右される。濃度の測定におけるわずかな誤差は、最終的に得られるlogD値に重大な変化を惹起する。典型的な例は、pH=7.4の時のlogD値が0.66のベンズアミドである。分析方法の感度を高めること、又は、用いる水/n−オクタノールの体積比を減少させることによって、誤差の程度がより小さくされ得ることが期待される。
【0122】
この発明方法による結果及び文献から得られた値の相関曲線が、図16に示されている(ベンズアミドのデータは、除外されている)。このカーブの相関係数は、0.9958であることが見出される。図17は、本実施例のストック溶液方法の結果と、標準的な振とうフラスコ法の結果との相関曲線を示している。このカーブの相関係数は、0.987である。図8は、本実施例のストック溶液法の結果と実施例6の磁性ナノ複合体法との、相関曲線を示している。このカーブの相関係数は0.988である。これらは、全て、ストック溶液法の信頼性を示しており、超臨界二酸化炭素を用いることによって、n−オクタノールの多孔ナノ複合体への均質な分散/沈殿が、首尾よく行われ得ることを、はっきりと示している。表3においては、ストック溶液法によって測定されたlogD値の統計的偏差が、同じ信頼度にある他の二つの方法によるものよりも、わずかに大きくなっている。
【0123】
テストされた化合物のlogD値が分からない場合の手順においては、ストック溶液に含まれる第二の溶媒(例えばn−オクタノール)の量を、逆算によって確認するために、ナノ粒子を含む同じストック溶液を用いた公知のlogDの一つ又は複数の化合物に対する試験を並行して行うことが好ましいと言える。
【0124】
本発明については、上記した模範的な具体例に関連付けて記載してきたが、当業者であれば、ここで開示した内容を得た時に、数多くの同様な修正や変形を加え得ることは、明らかであろう。従って、上記で示した本発明の模範的な具体例は、あくまでも例示的なものであり、本発明を限定するものでは無いことが考慮されるべきである。記載された具体例には、本発明の精神や範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、ナノ粒子を用いた測定によって得られたlogDの結果と、文献値との相関関係を示している。
【図2】図2は、ナノ粒子を用いた測定によって得られたlogDの結果と、先行技術の方法を用いて得られた値との間の相関関係を示している。
【図3】図3は、実施例1の方法を用いて得られた粒子の磁場応答を示している。
【図4】図4は、実施例1の方法によって製造された、シリカでコートされた粒子の、透過型電子顕微鏡(TEM)による顕微鏡写真を示している。
【図5】図5は、実施例1で得られたシリカコートのFe3O4 ナノ粒子についての、1.54056nmの波長を用いて記録されたX線回析(XRD)パターンを示している。
【図6】図6は、実施例1で得られたシリカコートのFe3O4 ナノ粒子についての熱重量分析(TG)を示している。
【図7】図7は、シリカコートされたFe3O4 ナノ粒子であって、そのシリカコーティングがn−オクタノールにて飽和せしめられたものの熱重量分析(TG)を示している。
【図8】図8は、二つの赤外線(IR)スペクトルを示している:a)は、シリカでコートされたFe3O4 ナノ粒子のものであり;b)は、シリカでコートされたFe3O4 ナノ粒子で、クロロトリメチルシラン(CTMS)にて処理されたものについてのものである。
【図9】図9は、実施例5において得られたFe2CoO4ナノ粒子のXRDパターンを示している。
【図10】図10は、β−ラクタマーゼIの存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図11】図11は、β−ラクタマーゼIのミセル溶液の存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図12】図12は、多孔のシリカコーティング内にカプセル化されたβ−ラクタマーゼIの存在下における、ペニシリンV溶液のUV−可視スペクトルを示している。
【図13】図13は、二酸化炭素の圧力−温度のダイヤグラムである。
【図14】図14は、超臨界のCO2を用いた、粒子上への析出のための装置の概略図である。
【図15】図15は、添加されたオクタノール量に対する、吸収されたn−オクタノールのグラフである。
【図16】図16は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【図17】図17は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【図18】図18は、表5に示された結果についての、相関関係のカーブである。
【符号の説明】
【0126】
1 オートクレーブ 2 パイプ
3 圧力検出器 4 温度コントローラ
5 弁付管 6 サンプルホルダー
7 水槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配係数を測定する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)前記化合物を含有し、且つ、多孔表面を有するナノ粒子と第一の溶媒を含む組成物にして、第二の溶媒が該ナノ粒子の孔内に吸収され、更に、該第一と第二の溶媒が非混和性であるものを調製する工程;
b)工程a)の生成物を、ナノ粒子を含む第一のものと前記溶媒を含む第二のものである、二つの成分に分離する工程;並びに、
c)前記第一の成分と第二の成分の間の前記化合物の分配から、前記分配係数を決定する工程。
【請求項2】
多孔表面を有するナノ粒子と、第一の溶媒とを含み、且つ第二の溶媒が、該ナノ粒子の孔内に吸収され、更に、前記第一及び該第二の溶媒が、非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、前記第一の溶媒中において、コロイド的に安定した懸濁液を形成している請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多孔表面が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはカーボンの何れか一つによって形成されている請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、更に磁性材料の芯を有する請求項2乃至請求項4の何れか1つに記載の組成物。
【請求項6】
前記磁性材料の芯が、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)、Fe2CoO4、強磁性の金属若しくは合金またはカーバイドから形成されている請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、2nm〜1μmの直径を有している請求項2乃至請求項6の何れか1つに記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の多孔表面層が、1nm〜100nmの厚さを有している請求項2乃至請求項7の何れか1つに記載の組成物。
【請求項9】
前記第一の溶媒が、水性、特に水である請求項2乃至請求項8の何れか1つに記載の組成物。
【請求項10】
前記第二の溶媒が、n−オクタノール、シクロヘキサン、C6−C10のアルカン、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等のうちの一つ、または、それらのうちの二つ若しくはそれ以上の単相の混合物である請求項2乃至請求項9の何れかに1つ記載の組成物。
【請求項11】
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との体積比が、3000:1〜1:1(好ましくは、500:1〜50:1の範囲内)である請求項2乃至請求項10の何れか1つに記載の組成物。
【請求項12】
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との体積比が、少なくとも100:1である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配を達成する方法にして、該化合物を、請求項2乃至請求項12の何れか1つに記載の組成物に組み入れる工程を含む方法。
【請求項14】
定量分析技術において用いるための組成物にして、それぞれが多孔表面を有するナノ粒子と、該組成物の単位重量当たり所定の量において該ナノ粒子の孔に吸着せしめられた溶媒とを含む組成物。
【請求項15】
前記多孔表面が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはカーボンのうちの何れか一つによって形成されている請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記ナノ粒子のそれぞれが、磁性材料の芯を有している請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒が、水に対して非混和性である請求項14乃至請求項16の何れか1つに記載の組成物。
【請求項18】
前記第二の溶媒が、n−オクタノール、シクロヘキサン、C6−C10のアルカン、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等のうちの一つ、または、それらのうちの二つ若しくはそれ以上の単相の混合物である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項14乃至請求項18の何れか1つに記載の組成物の、分配係数を決定する方法における使用。
【請求項20】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配係数を測定する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)前記化合物を、請求項2乃至請求項13の何れか1つに従う組成物に組み入れる工程;
b)工程a)の生成物を、ナノ粒子を含む第一のものと前記第一の溶媒を含む第二のものである、二つの成分に分離する工程;並びに、
c)前記第一の成分と第二の成分の間の前記化合物の分配から、前記分配係数を決定する工程。
【請求項21】
工程c)が、前記第一の溶媒中に残る前記化合物の量を決定することを含んでいる請求項1または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、生物活性の薬物分子である請求項1、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程b)が、ろ過、遠心分離、及び磁選のうちの何れかによって行われる請求項1及び請求項20乃至請求項22の何れか1つに記載の方法。
【請求項24】
工程c)が、前記上清溶液のUV可視スペクトルを記録することを含んでいる請求項1及び請求項20乃至請求項23の何れか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記分離工程b)を行う前に、更に、前記工程a)の組成物を振り混ぜることを含む請求項1及び請求項20乃至請求項24の何れか1つに記載の方法。
【請求項26】
触媒活性の種を含む芯と、該芯を取り囲み、該触媒活性の種が捕捉される孔サイズを有する多孔層とを有するナノ粒子。
【請求項27】
前記芯の触媒活性の種が、生物学的に活性な種、例えば酵素又はその他の蛋白質である請求項26に記載のナノ粒子。
【請求項28】
前記生物学的に活性な種が、血清アルブミン、β−ラクタマーゼI(ペニシリナーゼ)、キナーゼ、カルボキシルエステラーゼ、メタロチオニン、シトクロムb、c、P450等のうちの何れか1つである請求項27に記載のナノ粒子。
【請求項29】
前記多孔層が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はカーボンの何れかによって形成されている請求項26乃至請求項28の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項30】
前記芯が、更に、磁性材料を含んでいる請求項26乃至請求項29の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項31】
前記磁性の芯が、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)若しくはFe2CoO4、又は強磁性の金属若しくは合金(Fe−Pt、Fe−Co、Fe−Ni等)、金属カーバイド等から形成されている請求項30に記載のナノ粒子。
【請求項32】
前記ナノ粒子が、2nm〜1μmの平均直径を有する請求項26乃至請求項31の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項33】
前記ナノ粒子のコアが、1〜10nmの平均直径を有する請求項26乃至請求項32の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項34】
前記ナノ粒子上の多孔の外側コーティングが、1nm〜100nmの厚さを有している請求項26乃至請求項33の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項35】
少なくとも一部が請求項26乃至請求項34の何れか1つに記載のナノ粒子であるナノ粒子の集合体であって、該集合体のナノ粒子当たりの前記触媒活性の種の分子数の平均が、1を越えないナノ粒子の集合体。
【請求項36】
請求項26乃至請求項34の何れか1つに記載のナノ粒子を製造する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)液状媒体中において、ナノ粒子の芯に含有せしめられる前記触媒活性の種を含むコロイド粒子を、界面活性剤によってコロイド的に安定化せしめて、形成する工程;及び
b)前記コロイド粒子を、加水分解又は熱分解によって処理して、前記触媒活性の種を取り囲む多孔層を形成する工程。
【請求項37】
工程a)において、前記コロイド粒子が、磁性材料又は磁性材料の先駆物質を更に含んでいる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記コロイド粒子が、水に対して非混和性である溶媒中において水性のコロイド粒子を含んでいる請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
シリコン、アルミニウム、チタニウム、又はジルコニウムの塩を、工程a)の生成物に更に添加し、該コロイド境界での加水分解の際に対応の酸化化合物を形成する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記シリコンの塩が、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)であり、そして前記界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
多孔材料の孔の中に成分を析出させる方法にして、該多孔材料を、超臨界流体中において、該成分の溶液に接触させることによって行う方法。
【請求項42】
前記超臨界流体が、減圧し、気化を許容することによって、除去される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記成分が、液体である請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項44】
前記成分が、実質的に水に不溶性である請求項41乃至請求項43の何れか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記多孔材料が、多孔の粒子である請求項41乃至請求項44の何れか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記多孔粒子が、1μmを越えない粒子サイズを有するナノ粒子である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記多孔材料が、多孔のシリカ表面を有している請求項41乃至請求項46の何れか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記超臨界流体が、二酸化炭素である請求項41乃至請求項47の何れか1つに記載の方法。
【請求項49】
二つの成分を含有する組成物を調製する方法にして、請求項45乃至請求項48に記載の方法によって所定の量の第一の成分を含む多孔粒子を調製する工程と、かかる粒子を液体である第二の成分に添加する工程とを含む方法。
【請求項50】
前記第一及び第二の成分が、非混和性である請求項49に記載の方法。
【請求項1】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配係数を測定する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)前記化合物を含有し、且つ、多孔表面を有するナノ粒子と第一の溶媒を含む組成物にして、第二の溶媒が該ナノ粒子の孔内に吸収され、更に、該第一と第二の溶媒が非混和性であるものを調製する工程;
b)工程a)の生成物を、ナノ粒子を含む第一のものと前記溶媒を含む第二のものである、二つの成分に分離する工程;並びに、
c)前記第一の成分と第二の成分の間の前記化合物の分配から、前記分配係数を決定する工程。
【請求項2】
多孔表面を有するナノ粒子と、第一の溶媒とを含み、且つ第二の溶媒が、該ナノ粒子の孔内に吸収され、更に、前記第一及び該第二の溶媒が、非混和性であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、前記第一の溶媒中において、コロイド的に安定した懸濁液を形成している請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多孔表面が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはカーボンの何れか一つによって形成されている請求項2または請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、更に磁性材料の芯を有する請求項2乃至請求項4の何れか1つに記載の組成物。
【請求項6】
前記磁性材料の芯が、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)、Fe2CoO4、強磁性の金属若しくは合金またはカーバイドから形成されている請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、2nm〜1μmの直径を有している請求項2乃至請求項6の何れか1つに記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の多孔表面層が、1nm〜100nmの厚さを有している請求項2乃至請求項7の何れか1つに記載の組成物。
【請求項9】
前記第一の溶媒が、水性、特に水である請求項2乃至請求項8の何れか1つに記載の組成物。
【請求項10】
前記第二の溶媒が、n−オクタノール、シクロヘキサン、C6−C10のアルカン、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等のうちの一つ、または、それらのうちの二つ若しくはそれ以上の単相の混合物である請求項2乃至請求項9の何れかに1つ記載の組成物。
【請求項11】
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との体積比が、3000:1〜1:1(好ましくは、500:1〜50:1の範囲内)である請求項2乃至請求項10の何れか1つに記載の組成物。
【請求項12】
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との体積比が、少なくとも100:1である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配を達成する方法にして、該化合物を、請求項2乃至請求項12の何れか1つに記載の組成物に組み入れる工程を含む方法。
【請求項14】
定量分析技術において用いるための組成物にして、それぞれが多孔表面を有するナノ粒子と、該組成物の単位重量当たり所定の量において該ナノ粒子の孔に吸着せしめられた溶媒とを含む組成物。
【請求項15】
前記多孔表面が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、またはカーボンのうちの何れか一つによって形成されている請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記ナノ粒子のそれぞれが、磁性材料の芯を有している請求項14または請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒が、水に対して非混和性である請求項14乃至請求項16の何れか1つに記載の組成物。
【請求項18】
前記第二の溶媒が、n−オクタノール、シクロヘキサン、C6−C10のアルカン、クロロホルム、プロピレングリコールジペラゴネート(PGDP)、1,2−ジクロロエタン、オリーブオイル、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、テトラクロロメタン、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オール、ペンタン−1−オール、ペンタン−2−オール、イソブタノール、ブタン−1−オール、2−メチルブタン−2−オール、ブタン−2−オール、ブタン−2−オン、ジエチルエーテル、イソアミルアセテート、エチルアセテート等のうちの一つ、または、それらのうちの二つ若しくはそれ以上の単相の混合物である請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項14乃至請求項18の何れか1つに記載の組成物の、分配係数を決定する方法における使用。
【請求項20】
二つの非混和性溶媒間の化合物の分配係数を測定する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)前記化合物を、請求項2乃至請求項13の何れか1つに従う組成物に組み入れる工程;
b)工程a)の生成物を、ナノ粒子を含む第一のものと前記第一の溶媒を含む第二のものである、二つの成分に分離する工程;並びに、
c)前記第一の成分と第二の成分の間の前記化合物の分配から、前記分配係数を決定する工程。
【請求項21】
工程c)が、前記第一の溶媒中に残る前記化合物の量を決定することを含んでいる請求項1または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物が、生物活性の薬物分子である請求項1、請求項20または請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程b)が、ろ過、遠心分離、及び磁選のうちの何れかによって行われる請求項1及び請求項20乃至請求項22の何れか1つに記載の方法。
【請求項24】
工程c)が、前記上清溶液のUV可視スペクトルを記録することを含んでいる請求項1及び請求項20乃至請求項23の何れか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記分離工程b)を行う前に、更に、前記工程a)の組成物を振り混ぜることを含む請求項1及び請求項20乃至請求項24の何れか1つに記載の方法。
【請求項26】
触媒活性の種を含む芯と、該芯を取り囲み、該触媒活性の種が捕捉される孔サイズを有する多孔層とを有するナノ粒子。
【請求項27】
前記芯の触媒活性の種が、生物学的に活性な種、例えば酵素又はその他の蛋白質である請求項26に記載のナノ粒子。
【請求項28】
前記生物学的に活性な種が、血清アルブミン、β−ラクタマーゼI(ペニシリナーゼ)、キナーゼ、カルボキシルエステラーゼ、メタロチオニン、シトクロムb、c、P450等のうちの何れか1つである請求項27に記載のナノ粒子。
【請求項29】
前記多孔層が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はカーボンの何れかによって形成されている請求項26乃至請求項28の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項30】
前記芯が、更に、磁性材料を含んでいる請求項26乃至請求項29の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項31】
前記磁性の芯が、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γFe3O4)、グレイジャイト(Fe3S4)若しくはFe2CoO4、又は強磁性の金属若しくは合金(Fe−Pt、Fe−Co、Fe−Ni等)、金属カーバイド等から形成されている請求項30に記載のナノ粒子。
【請求項32】
前記ナノ粒子が、2nm〜1μmの平均直径を有する請求項26乃至請求項31の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項33】
前記ナノ粒子のコアが、1〜10nmの平均直径を有する請求項26乃至請求項32の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項34】
前記ナノ粒子上の多孔の外側コーティングが、1nm〜100nmの厚さを有している請求項26乃至請求項33の何れか1つに記載のナノ粒子。
【請求項35】
少なくとも一部が請求項26乃至請求項34の何れか1つに記載のナノ粒子であるナノ粒子の集合体であって、該集合体のナノ粒子当たりの前記触媒活性の種の分子数の平均が、1を越えないナノ粒子の集合体。
【請求項36】
請求項26乃至請求項34の何れか1つに記載のナノ粒子を製造する方法にして、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
a)液状媒体中において、ナノ粒子の芯に含有せしめられる前記触媒活性の種を含むコロイド粒子を、界面活性剤によってコロイド的に安定化せしめて、形成する工程;及び
b)前記コロイド粒子を、加水分解又は熱分解によって処理して、前記触媒活性の種を取り囲む多孔層を形成する工程。
【請求項37】
工程a)において、前記コロイド粒子が、磁性材料又は磁性材料の先駆物質を更に含んでいる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記コロイド粒子が、水に対して非混和性である溶媒中において水性のコロイド粒子を含んでいる請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
シリコン、アルミニウム、チタニウム、又はジルコニウムの塩を、工程a)の生成物に更に添加し、該コロイド境界での加水分解の際に対応の酸化化合物を形成する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記シリコンの塩が、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)であり、そして前記界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
多孔材料の孔の中に成分を析出させる方法にして、該多孔材料を、超臨界流体中において、該成分の溶液に接触させることによって行う方法。
【請求項42】
前記超臨界流体が、減圧し、気化を許容することによって、除去される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記成分が、液体である請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項44】
前記成分が、実質的に水に不溶性である請求項41乃至請求項43の何れか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記多孔材料が、多孔の粒子である請求項41乃至請求項44の何れか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記多孔粒子が、1μmを越えない粒子サイズを有するナノ粒子である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記多孔材料が、多孔のシリカ表面を有している請求項41乃至請求項46の何れか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記超臨界流体が、二酸化炭素である請求項41乃至請求項47の何れか1つに記載の方法。
【請求項49】
二つの成分を含有する組成物を調製する方法にして、請求項45乃至請求項48に記載の方法によって所定の量の第一の成分を含む多孔粒子を調製する工程と、かかる粒子を液体である第二の成分に添加する工程とを含む方法。
【請求項50】
前記第一及び第二の成分が、非混和性である請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−530397(P2007−530397A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520013(P2006−520013)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003103
【国際公開番号】WO2005/007284
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506014675)ザ ユニヴァーシティー オブ リーディング (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF READING
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003103
【国際公開番号】WO2005/007284
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506014675)ザ ユニヴァーシティー オブ リーディング (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF READING
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】
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