複合光導波路、波長可変フィルタ、波長可変レーザ、および光集積回路
【課題】従来よりも小型で低損失であり、設計の自由度の高い光導波路を提供すること。
【解決手段】複合光導波路1は、シリカ系コアを有する第1光導波路9と第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路11とを有し、第1光導波路9は、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、第2光導波路11は、第1光導波路9の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部13を有する。
【解決手段】複合光導波路1は、シリカ系コアを有する第1光導波路9と第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路11とを有し、第1光導波路9は、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、第2光導波路11は、第1光導波路9の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部13を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合光導波路、波長可変フィルタ、波長可変レーザ、および光集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアがSiO2またはSiON或いはSiOx等、クラッドがSiO2等を有するシリカ系光導波路は、0.01〜0.05dB/cmと低損失であり、単一モード光ファイバー(SMF)や半導体レーザ(LD)とも低損失で結合可能であるため、PLC(Planar Lightwave Circuit)技術として確立され、波長多重光通信方式における合分波器(AWG)や、FTTH(Fiber To The Home)におけるスプリッタなど、様々な光デバイスに適用されている(特許文献1)。
【0003】
一方、コアがSi半導体等、クラッドがSiO2等を有するSi系光導波路は、コアとクラッド間での非常に大きな屈折率差のためにコアへの光の閉じ込めが強く、最小曲げ半径が僅か数μmである。そのため、光デバイスを大幅に小型化できる可能性を有している。
【0004】
実際、Si系光導波路による極微小AWGや熱光学(T−O)光スイッチが試作されている。
【0005】
さらにSi系光導波路は、コアが半導体Siを有するために、電界印加や電流注入による電気光学(E−O)効果光デバイスも実現できる。
【0006】
実際、それらの効果を利用して、Si光導波路を用いた光変調器(非特許文献1)や光減衰器(非特許文献2)などが試作されている。
【0007】
なお、特許文献1では、Si系光導波路とシリカ系光導波路を組み合わせて用いることが示唆されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−157530号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】William M. Green, Michael J. Rooks, Lidija Sekaric, and Yurii A. Vlasov “Ultra-compact, low RF power, 10 Gb/s silicon Mach-Zehnder modulator”, Optics Express, Vol. 15, Issue 25, (2007) pp. 17106-17113
【非特許文献2】H. Nishi et al., SSDM2009 Extended Abstract, I-1-2, (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、シリカ系光導波路は、最小曲げ半径が数100μm〜数mmとSi系光導波路よりもはるかに大きく、これを用いて光デバイスを実現しようとすると、数mm角から大きいものでは数cm角となる。
【0011】
従って、シリカ系光導波路からなる光デバイスのみによって光集積回路を構成しようとすると、小型化が困難となる。
【0012】
また、前述のように、光導波路には、熱を加えることにより屈折率が変化する熱光学(T−O)効果、および電界印加や電流注入によって屈折率が変化する電気光学(E−O)効果があることが知られているが、シリカ系材料は絶縁体であるため、熱光学(T−O)効果デバイスは実現できるが、電気光学(E−O)効果デバイスは実現できない。
【0013】
そのため、シリカ系光導波路では、応答速度の遅いT−O光スイッチなどは実現できるが、速い応答速度が求められる光変調器などは実現できない。
【0014】
それに対して、Si系光導波路は最小曲げ半径が僅か数μmであるが、現状では伝搬損失が1dB/cm程度とシリカ系光導波路に比べて非常に大きく、光配線としてはシリカ系光導波路よりも長く引き回すことはできない。
【0015】
また、Si系光導波路には、光ファイバーとの直接結合で6dB程度という、シリカ系光導波路よりもはるかに大きな結合損失を生じるという問題もある。
【0016】
このように、Si系光導波路で短所とされている特性はシリカ系光導波路では長所とされている特性であり、その逆も成り立っており、双方の長所を兼ね備えた光導波路は無いのが現状である。
【0017】
一方、特許文献1にはSi系光導波路とシリカ系光導波路を組み合わせて用いることが示唆されているが、組み合わせの具体的な例については何ら開示されていない。
【0018】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、従来よりも小型で低損失であり、設計の自由度の高い光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様は、シリカ系コアを有する第1光導波路と、前記第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路と、を有し、前記第1光導波路は、前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、前記第2光導波路は、前記第2光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部を有することを特徴とする複合光導波路である。
【0020】
ここで、「第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長」とは、第2光導波路において許容される最大挿入損失における第2光導波路の導波路長以上の長さを意味し、例えば、許容される最大挿入損失が0.1dBであり、第2光導波路の伝播損失が1dB/cmであった場合、「第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長」は1mm以上になる。
【0021】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の複合光導波路を有することを特徴とする波長可変フィルタである。
【0022】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の波長可変フィルタを有することを特徴とする波長可変レーザである。
【0023】
本発明の第4の態様は第3の態様に記載の波長可変レーザを用いたレーザの発振方法である。
【0024】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の複合光導波路を有することを特徴とする光集積回路である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来よりも小型で低損失であり、設計の自由度の高い光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る複合光導波路1の構成の概略を示す斜視図であり、オーバークラッド層7は透明に描き、かつその外周を点線で表している。
【図2】図1の2方向矢視図である。
【図3】図1の平面図であり、オーバークラッド層7は記載を省略している。
【図4】図1の第1光導波路9と第2光導波路11の接合部分の拡大斜視図であり、オーバークラッド層7および第1光導波路9は透明に描き、かつ、オーバークラッド層7の外周を点線で表している。
【図5】図4の平面図であり、オーバークラッド層7は記載を省略している。
【図6】複合光導波路1を有する波長可変レーザ101を示す斜視図であり、オーバークラッド層7は透明に描き、かつその外周を点線で表している。
【図7】図6の半導体光増幅器チップ27の拡大図である。
【図8】図7を裏面から見た斜視図である。
【図9】図6の波長可変フィルタ21に係る部分のみを記載した図である。
【図10】リング共振器の半径と共振波長間隔(FSR)の関係を示す図である。
【図11】複合光導波路1を有する光集積回路51を示す平面図であり、オーバークラッド層7および断熱溝73は記載を省略している。
【図12】図11のヒータ71a(71b)付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0028】
まず、図1〜図5を参照して本発明の第1の実施形態に係る複合光導波路1の概略構造について説明する。
【0029】
図1〜3に示すように、複合光導波路1はSi等の基板3、基板3上に設けられたSiO2等の埋め込み層5、(アンダークラッド層)、埋め込み層5上に設けられた第1光導波路9(コア層)、第2光導波路11(コア層)、および埋め込み層5上に設けられ、第1光導波路9と第2光導波路11を覆うSiO2等のオーバークラッド層7を有している。
【0030】
次に、図1〜図5を参照して複合光導波路1の構成要素のうち、第1光導波路9と第2光導波路11についてより詳細に説明する。
【0031】
図1〜図3に示すように、複合光導波路1は第1光導波路9と、第1光導波路9と接合された第2光導波路11を有している。
【0032】
図4および図5に示すように、第2光導波路11は、その先端部分が、徐々に幅が狭くなるテーパ部15を形成しており、テーパ部15が第1光導波路9に入り込むような形になっている。
【0033】
なお、第1光導波路9を構成する材料は、極力、伝搬損失が小さいものを用い、少なくとも第2光導波路11を構成する材料よりも伝播損失が小さいものを用いる。
【0034】
一方、第2光導波路11を構成する材料は、極力、最小曲げ半径が小さいものを用い、少なくとも第1光導波路9を構成する材料よりも最小曲げ半径が小さいものを用いる。
【0035】
具体的には、第1光導波路9として、SiO2、SiON、SiOx等のシリカ系材料を有するシリカ系コアを用い、第2光導波路11を構成する材料として、Si半導体等のSi系材料を有するSi系コアを用いる。
【0036】
ここで、図3に示すように、複合光導波路1は、急峻に曲がっている部分、具体的には第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径よりも小さい半径(図3の半径10参照)を有する急峻曲がり部13を有するが、急峻曲がり部13には第2光導波路11が用いられる。換言すれば、第2光導波路11は急峻曲がり部13を有している。
【0037】
なお、長く引き回す必要がある部分については、なるべく伝播損失を低く抑えるために第1光導波路9を用いる。図3では直線部分、即ち半径が無限大の部分に第1光導波路9を用いている。
【0038】
ただし、電気光学効果や熱光学効果を起こすための後述するヒータ71a、71bや電極69と接続される部分には第2光導波路11が用いられる場合もある(詳細は後述)。
【0039】
即ち、前述のように、シリカ系材料はSi系材料と比べて伝搬損失は小さいが、最小曲げ半径が大きく、逆にSi系材料はシリカ系材料と比べて伝搬損失が大きいが、最小曲げ半径は小さい。
【0040】
そこで、第1の実施形態に係る複合光導波路1は、急峻に曲がっている部分にSi系コアの第2光導波路11を用い、長く引き回す必要のある部分にはシリカ系コアの第1光導波路9を用いている。
【0041】
このように、導波路の形状(この場合は半径の大小)や引き回す導波路の長さによって導波路の材料を使い分ける構成とすることにより、単一の材料で導波路を構成する場合と比較して、複合光導波路1は設計の自由度が大きく、低損失で小型となる。
【0042】
また、第2光導波路11は、その先端部分が、幅が、徐々に狭くなるテーパ部15を形成しており、テーパ部15が第1光導波路9に入り込むように形になっている。
【0043】
そのため、複合光導波路1は低損失のビームスポットサイズ変換器(SSC)として用いることもできる。
【0044】
具体的には、シリカ系コアを第1光導波路9に用い、Si系コアを第2光導波路11に用いた場合、両光導波路間での結合損失の値としては0.1dB以下となる。そのため、両光導波路を10カ所程度接合したとしても、それによる損失の増加は1dB程度である。
【0045】
このように、第1の実施形態によれば、複合光導波路1は第1光導波路9と、第1光導波路9と接合された第2光導波路11を有しており、急峻曲がり部13には第2光導波路11が用いられている。
【0046】
そのため、単一の材料で導波路を構成する場合と比較して、複合光導波路1は設計の自由度が大きく、低損失で小型となる。
【0047】
次に、第2の実施形態について図6〜図10を参照して説明する。
【0048】
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る複合光導波路1を波長可変フィルタ21および半導体光増幅器チップ27を用いた波長可変レーザ101に用いたものである。
【0049】
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、第2の実施形態に係る波長可変レーザ101は、複合光導波路1を有する波長可変フィルタ21と、半導体光増幅器(SOA)チップ27とを有している。
【0051】
図7および図8に示すように半導体光増幅器チップ27はクラッド29、クラッド29の内部に設けられた活性層31、クラッド29の表面に設けられた位置合わせマーカー35、37、電極33、39を有している。
【0052】
図9に示すように、波長可変フィルタ21は第1リング共振器23、第1リング共振器23に接合された第2リング共振器25、および、第1リング共振器23と第2リング共振器25に接合され、これらの共振器と半導体光増幅器チップ27を接合する接合部28を有している。
【0053】
第1リング共振器23は第2リング共振器25よりも半径が大きく、かつ第2リング共振器25において許容される損失に対応した、第2リング共振器25を構成する導波路の長さ以上の長さの周回長を有するリング9aを有する(即ち、第2リング共振器25を構成する、伝播損失の大きな導波路で実現しようとすると損失が大きくなり過ぎてしまうような大きな直径を有するリング9aを有する)。
【0054】
具体的には、第1リング共振器23には、シリカ系コアの第1光導波路9が用いられており、具体的なリング9aの寸法は例えば直径100μm以上である。
【0055】
第2リング共振器25は第1リング共振器23よりも半径が小さく、かつ第1リング共振器23を構成する材料の最小曲げ半径よりも小さい半径を有するリング11aを用いた共振器である。
【0056】
具体的には、第2リング共振器25には、Si系コアの第2光導波路11が用いられており、具体的なリング11aの寸法は例えば直径100μm未満(望ましくは直径数10μm以下)である。
【0057】
また、接合部28は、シリカ系コアの第1光導波路9で構成されている。
【0058】
なお、第1光導波路9と第2光導波路11は、第1の実施形態と同様に、テーパ型のSSCによって低損失に結合されている。
【0059】
図9から明らかなように、波長可変フィルタ21は、第1の実施形態の複合光導波路1を用いた構造となっており、急峻に曲がっている部分(例えば第2リング共振器25)にSi系コアの第2光導波路11を用い、長く引き回す必要がある部分(第1リング共振器23)にシリカ系コアの第1光導波路9を用いている。なお、ここでいう「長く引き回す必要がある部分」とは、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路長以上の長さで引き回す必要がある部分を意味する。
【0060】
即ち、波長可変フィルタ21は、第1光導波路9の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する部分には第2光導波路11を用い、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路よりも長い周回長のリング共振器を必要とする部分には第1光導波路9を用いている。
【0061】
このように、曲げ半径や長さに応じて第1光導波路9と第2光導波路11を臨機応変に組み合わせて用いることにより、直径10μm〜数mmまでの複数のリング共振器を有する波長可変フィルタ21を構成することが可能となる。
【0062】
従って、本発明の複合光導波路1を用いれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21の設計の自由度を高めることができる。
【0063】
また、直径の異なる複数のリング共振器を組み合わせることにより、波長可変レーザ101は効果的に波長を選択することができる。
【0064】
即ち、図10に示すように、共振波長間隔(FSR)は、リング共振器のリングの直径が小さくなるほど大きくなり、逆に直径が大きくなるほどFSRは小さくなる。
【0065】
そのため、両者を組み合わせることにより効果的に波長を選択することができ、波長可変レーザ101は大きな波長可変幅と安定な連続発振動作を両立させることができる。
【0066】
さらに、波長可変フィルタ21は、接合部28に第1光導波路9を用いている。換言すれば、第1光導波路9は接合部28を有している。
【0067】
これは、以下の理由によるものである。
【0068】
波長可変レーザ101は、波長可変フィルタ21と半導体光増幅器チップ27がなるべく低損失で結合されていることが望ましい、また、両者の結合部分に極僅かでも光反射があり、反射戻り光がSOAに入射すると発振動作が不安定となる。
【0069】
一方で前述のように、Si系の第2光導波路11と半導体光増幅器チップ27を光学結合すると大きな結合損失が伴い、また同時に反射も大きくなる。
【0070】
そのため、接合部28は、Si系コアの第2光導波路11ではなく、小さな結合損失が得られるシリカ系コアの第1光導波路9を用いるのが望ましい。
【0071】
このように、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101は波長可変フィルタ21と半導体光増幅器チップ27を有し、波長可変フィルタ21は複合光導波路1を有している。
【0072】
従って、第1の実施形態と同等の効果を奏する。
【0073】
また、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21は第1リング共振器23および第1リング共振器23のリング9aよりも半径の小さいリング11aを有する第2リング共振器25を有し、第1リング共振器23は第1光導波路9で構成され、第2リング共振器25は第2光導波路11で構成されている。
【0074】
そのため、波長可変レーザ101は、2つのリング共振器を組み合わせることにより効果的に波長を選択することができ、大きな波長可変幅と安定な連続発振動作を両立させることができる。
【0075】
さらに、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21は、半導体光増幅器チップ27との接合部28に第1光導波路9を用いている。
【0076】
そのため、結合による損失および反射を最小限に抑えることができる。
【0077】
次に、第3の実施形態に係る光集積回路51の構成について、図11を参照して説明する。
【0078】
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る複合光導波路1を用いて光集積回路51を構成し、さらにT−O効果やE−O効果により屈折率を変化させる屈折率制御部として、熱光学装置と電気光学装置を設けたものである。
【0079】
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0080】
図11に示すように、光集積回路51は一対のリング共振器55a、55b、E−O部59、リング共振器55a、55bとE−O部59を接合する接合部61a、61b、リング共振器55aとリング共振器55bを接合する接合部57、リング共振器55a、55bと外部の光ファイバー65a、65b(もしくは図示しない半導体レーザ等)を接合する外部接合部53a、53bを有している。
【0081】
リング共振器55a、55bには光導波路の屈折率を変化させる熱光学装置を構成するヒータ71a、71bが設けられており、ヒータ71a、71bにはヒータ71a、71bに駆動電流を流すための電極67が設けられている。電極67は図示しない電源に接続されている。
【0082】
即ち、図示しない電源によりヒータ71a、71bが通電され、通電されたヒータ71a、71bがリング共振器55a、55bを加熱することにより、リング共振器55a、55bを構成する光導波路の屈折率が変化する。
【0083】
また、E−O部59には光導波路の屈折率を変化させる光学装置を構成する電極69が設けられており、電極69は図示しない他の電源に接続されている。
【0084】
即ち、図示しない電源により電極69が通電され、通電された電極69が光導波路に電界印加や電流注入を行うことにより、E−O部59の光導波路の屈折率が変化する。
【0085】
ここで、光集積回路51では、リング共振器55a、55bを構成する光導波路はSi系コアの第2光導波路11が用いられている。
【0086】
これは、シリカ系コアの第1光導波路9よりもSi系コアの第2光導波路11の方が、熱光学効果が大きく、より少ない加熱、即ち少ない電力によって透過波長を大きく変えることができるためである。(一般にSi系コアの熱光学効果はシリカ系コアの熱光学効果よりも大きい)。
【0087】
さらに、図12に示すように、ヒータ71a、71bの周囲には埋め込み層5およびオーバークラッド層7を切り欠いて形成した断熱溝73が設けられている。
【0088】
このように、断熱溝73を設けることにより、第2光導波路11周辺に効率的に熱を閉じ込めることで、さらに少ない電力により透過波長を大きく変えることができる(即ち、消費電力を低減できる)。
【0089】
また、E−O部59を構成する光導波路もSi系コアの第2光導波路11が用いられている。
【0090】
これは、第2光導波路11はコアが半導体であるSiであるため、電界印加や電流注入によって導波路の屈折率を変化させることができるためである。なお、電気光学効果は熱光学効果よりも高速に応答するために、E−O部59を設けることにより、高速で波長を変化させることができる。
【0091】
一方、外部接合部53a、53bは第1光導波路9で構成されている。
【0092】
これは、第2の実施形態と同様の理由、即ち、Si系コアの第2光導波路11よりもシリカ系コアの第1光導波路9の方が、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)との結合損失が小さいからである。
【0093】
さらに、接合部57、61a、61bについては、第1、第2の実施形態と同様に、第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径以上の半径を有する部分(図11では直線部分)については、第1光導波路9を用い、第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径より小さい半径を有する急峻曲がり部13には第2光導波路11を用いた複合光導波路1としている。
【0094】
このように、T−O効果やE−O効果が必要となる部分には第2光導波路11を用い、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)と接合する必要がある部分には第1光導波路9を用いること、即ち、両者を組み合わせて用いることにより、各々の光導波路を単独で用いた場合には実現できなかった小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が得られる光集積回路51が得られる。
【0095】
このように、第3の実施形態によれば、光集積回路51は複合光導波路1を有している。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0096】
また、第3の実施形態によれば、光集積回路51はヒータ71a、71bおよびE−O部59を有し、T−O効果やE−O効果が必要となる部分には第2光導波路11を用い、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)と接合する必要がある部分には第1光導波路9を用いている。
【0097】
そのため、光集積回路51は、各々の光導波路を単独で用いた場合と比べ、小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
上記した実施形態では、本発明を、波長可変フィルタ21、波長可変レーザ101、および光集積回路51に適用した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が求められる全ての光機能デバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1……………複合光導波路
3……………基板
5……………埋め込み層(アンダークラッド層)
7……………オーバークラッド層
9……………第1光導波路(コア層)
10…………半径
11…………第2光導波路(コア層)
13…………急峻曲がり部
15…………テーパ部
21…………波長可変フィルタ
23…………第1リング共振器
25…………第2リング共振器
27…………半導体光増幅器(SOA)チップ
28…………接合部
29…………クラッド
31…………活性層
33…………電極
35…………位置合わせマーカー
37…………位置合わせマーカー
39…………電極
51…………光集積回路
53a………外部接合部
53b………外部接合部
55a………リング共振器
55b………リング共振器
57…………接合部
59…………E−O部
61a………接合部
61b………接合部
65a………光ファイバー
65b………光ファイバー
67…………電極
71a………ヒータ
71b………ヒータ
73…………断熱溝
101………波長可変レーザ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合光導波路、波長可変フィルタ、波長可変レーザ、および光集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアがSiO2またはSiON或いはSiOx等、クラッドがSiO2等を有するシリカ系光導波路は、0.01〜0.05dB/cmと低損失であり、単一モード光ファイバー(SMF)や半導体レーザ(LD)とも低損失で結合可能であるため、PLC(Planar Lightwave Circuit)技術として確立され、波長多重光通信方式における合分波器(AWG)や、FTTH(Fiber To The Home)におけるスプリッタなど、様々な光デバイスに適用されている(特許文献1)。
【0003】
一方、コアがSi半導体等、クラッドがSiO2等を有するSi系光導波路は、コアとクラッド間での非常に大きな屈折率差のためにコアへの光の閉じ込めが強く、最小曲げ半径が僅か数μmである。そのため、光デバイスを大幅に小型化できる可能性を有している。
【0004】
実際、Si系光導波路による極微小AWGや熱光学(T−O)光スイッチが試作されている。
【0005】
さらにSi系光導波路は、コアが半導体Siを有するために、電界印加や電流注入による電気光学(E−O)効果光デバイスも実現できる。
【0006】
実際、それらの効果を利用して、Si光導波路を用いた光変調器(非特許文献1)や光減衰器(非特許文献2)などが試作されている。
【0007】
なお、特許文献1では、Si系光導波路とシリカ系光導波路を組み合わせて用いることが示唆されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−157530号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】William M. Green, Michael J. Rooks, Lidija Sekaric, and Yurii A. Vlasov “Ultra-compact, low RF power, 10 Gb/s silicon Mach-Zehnder modulator”, Optics Express, Vol. 15, Issue 25, (2007) pp. 17106-17113
【非特許文献2】H. Nishi et al., SSDM2009 Extended Abstract, I-1-2, (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、シリカ系光導波路は、最小曲げ半径が数100μm〜数mmとSi系光導波路よりもはるかに大きく、これを用いて光デバイスを実現しようとすると、数mm角から大きいものでは数cm角となる。
【0011】
従って、シリカ系光導波路からなる光デバイスのみによって光集積回路を構成しようとすると、小型化が困難となる。
【0012】
また、前述のように、光導波路には、熱を加えることにより屈折率が変化する熱光学(T−O)効果、および電界印加や電流注入によって屈折率が変化する電気光学(E−O)効果があることが知られているが、シリカ系材料は絶縁体であるため、熱光学(T−O)効果デバイスは実現できるが、電気光学(E−O)効果デバイスは実現できない。
【0013】
そのため、シリカ系光導波路では、応答速度の遅いT−O光スイッチなどは実現できるが、速い応答速度が求められる光変調器などは実現できない。
【0014】
それに対して、Si系光導波路は最小曲げ半径が僅か数μmであるが、現状では伝搬損失が1dB/cm程度とシリカ系光導波路に比べて非常に大きく、光配線としてはシリカ系光導波路よりも長く引き回すことはできない。
【0015】
また、Si系光導波路には、光ファイバーとの直接結合で6dB程度という、シリカ系光導波路よりもはるかに大きな結合損失を生じるという問題もある。
【0016】
このように、Si系光導波路で短所とされている特性はシリカ系光導波路では長所とされている特性であり、その逆も成り立っており、双方の長所を兼ね備えた光導波路は無いのが現状である。
【0017】
一方、特許文献1にはSi系光導波路とシリカ系光導波路を組み合わせて用いることが示唆されているが、組み合わせの具体的な例については何ら開示されていない。
【0018】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、従来よりも小型で低損失であり、設計の自由度の高い光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様は、シリカ系コアを有する第1光導波路と、前記第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路と、を有し、前記第1光導波路は、前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、前記第2光導波路は、前記第2光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部を有することを特徴とする複合光導波路である。
【0020】
ここで、「第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長」とは、第2光導波路において許容される最大挿入損失における第2光導波路の導波路長以上の長さを意味し、例えば、許容される最大挿入損失が0.1dBであり、第2光導波路の伝播損失が1dB/cmであった場合、「第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長」は1mm以上になる。
【0021】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の複合光導波路を有することを特徴とする波長可変フィルタである。
【0022】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の波長可変フィルタを有することを特徴とする波長可変レーザである。
【0023】
本発明の第4の態様は第3の態様に記載の波長可変レーザを用いたレーザの発振方法である。
【0024】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の複合光導波路を有することを特徴とする光集積回路である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来よりも小型で低損失であり、設計の自由度の高い光導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る複合光導波路1の構成の概略を示す斜視図であり、オーバークラッド層7は透明に描き、かつその外周を点線で表している。
【図2】図1の2方向矢視図である。
【図3】図1の平面図であり、オーバークラッド層7は記載を省略している。
【図4】図1の第1光導波路9と第2光導波路11の接合部分の拡大斜視図であり、オーバークラッド層7および第1光導波路9は透明に描き、かつ、オーバークラッド層7の外周を点線で表している。
【図5】図4の平面図であり、オーバークラッド層7は記載を省略している。
【図6】複合光導波路1を有する波長可変レーザ101を示す斜視図であり、オーバークラッド層7は透明に描き、かつその外周を点線で表している。
【図7】図6の半導体光増幅器チップ27の拡大図である。
【図8】図7を裏面から見た斜視図である。
【図9】図6の波長可変フィルタ21に係る部分のみを記載した図である。
【図10】リング共振器の半径と共振波長間隔(FSR)の関係を示す図である。
【図11】複合光導波路1を有する光集積回路51を示す平面図であり、オーバークラッド層7および断熱溝73は記載を省略している。
【図12】図11のヒータ71a(71b)付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
【0028】
まず、図1〜図5を参照して本発明の第1の実施形態に係る複合光導波路1の概略構造について説明する。
【0029】
図1〜3に示すように、複合光導波路1はSi等の基板3、基板3上に設けられたSiO2等の埋め込み層5、(アンダークラッド層)、埋め込み層5上に設けられた第1光導波路9(コア層)、第2光導波路11(コア層)、および埋め込み層5上に設けられ、第1光導波路9と第2光導波路11を覆うSiO2等のオーバークラッド層7を有している。
【0030】
次に、図1〜図5を参照して複合光導波路1の構成要素のうち、第1光導波路9と第2光導波路11についてより詳細に説明する。
【0031】
図1〜図3に示すように、複合光導波路1は第1光導波路9と、第1光導波路9と接合された第2光導波路11を有している。
【0032】
図4および図5に示すように、第2光導波路11は、その先端部分が、徐々に幅が狭くなるテーパ部15を形成しており、テーパ部15が第1光導波路9に入り込むような形になっている。
【0033】
なお、第1光導波路9を構成する材料は、極力、伝搬損失が小さいものを用い、少なくとも第2光導波路11を構成する材料よりも伝播損失が小さいものを用いる。
【0034】
一方、第2光導波路11を構成する材料は、極力、最小曲げ半径が小さいものを用い、少なくとも第1光導波路9を構成する材料よりも最小曲げ半径が小さいものを用いる。
【0035】
具体的には、第1光導波路9として、SiO2、SiON、SiOx等のシリカ系材料を有するシリカ系コアを用い、第2光導波路11を構成する材料として、Si半導体等のSi系材料を有するSi系コアを用いる。
【0036】
ここで、図3に示すように、複合光導波路1は、急峻に曲がっている部分、具体的には第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径よりも小さい半径(図3の半径10参照)を有する急峻曲がり部13を有するが、急峻曲がり部13には第2光導波路11が用いられる。換言すれば、第2光導波路11は急峻曲がり部13を有している。
【0037】
なお、長く引き回す必要がある部分については、なるべく伝播損失を低く抑えるために第1光導波路9を用いる。図3では直線部分、即ち半径が無限大の部分に第1光導波路9を用いている。
【0038】
ただし、電気光学効果や熱光学効果を起こすための後述するヒータ71a、71bや電極69と接続される部分には第2光導波路11が用いられる場合もある(詳細は後述)。
【0039】
即ち、前述のように、シリカ系材料はSi系材料と比べて伝搬損失は小さいが、最小曲げ半径が大きく、逆にSi系材料はシリカ系材料と比べて伝搬損失が大きいが、最小曲げ半径は小さい。
【0040】
そこで、第1の実施形態に係る複合光導波路1は、急峻に曲がっている部分にSi系コアの第2光導波路11を用い、長く引き回す必要のある部分にはシリカ系コアの第1光導波路9を用いている。
【0041】
このように、導波路の形状(この場合は半径の大小)や引き回す導波路の長さによって導波路の材料を使い分ける構成とすることにより、単一の材料で導波路を構成する場合と比較して、複合光導波路1は設計の自由度が大きく、低損失で小型となる。
【0042】
また、第2光導波路11は、その先端部分が、幅が、徐々に狭くなるテーパ部15を形成しており、テーパ部15が第1光導波路9に入り込むように形になっている。
【0043】
そのため、複合光導波路1は低損失のビームスポットサイズ変換器(SSC)として用いることもできる。
【0044】
具体的には、シリカ系コアを第1光導波路9に用い、Si系コアを第2光導波路11に用いた場合、両光導波路間での結合損失の値としては0.1dB以下となる。そのため、両光導波路を10カ所程度接合したとしても、それによる損失の増加は1dB程度である。
【0045】
このように、第1の実施形態によれば、複合光導波路1は第1光導波路9と、第1光導波路9と接合された第2光導波路11を有しており、急峻曲がり部13には第2光導波路11が用いられている。
【0046】
そのため、単一の材料で導波路を構成する場合と比較して、複合光導波路1は設計の自由度が大きく、低損失で小型となる。
【0047】
次に、第2の実施形態について図6〜図10を参照して説明する。
【0048】
第2の実施形態は、第1の実施形態に係る複合光導波路1を波長可変フィルタ21および半導体光増幅器チップ27を用いた波長可変レーザ101に用いたものである。
【0049】
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、第2の実施形態に係る波長可変レーザ101は、複合光導波路1を有する波長可変フィルタ21と、半導体光増幅器(SOA)チップ27とを有している。
【0051】
図7および図8に示すように半導体光増幅器チップ27はクラッド29、クラッド29の内部に設けられた活性層31、クラッド29の表面に設けられた位置合わせマーカー35、37、電極33、39を有している。
【0052】
図9に示すように、波長可変フィルタ21は第1リング共振器23、第1リング共振器23に接合された第2リング共振器25、および、第1リング共振器23と第2リング共振器25に接合され、これらの共振器と半導体光増幅器チップ27を接合する接合部28を有している。
【0053】
第1リング共振器23は第2リング共振器25よりも半径が大きく、かつ第2リング共振器25において許容される損失に対応した、第2リング共振器25を構成する導波路の長さ以上の長さの周回長を有するリング9aを有する(即ち、第2リング共振器25を構成する、伝播損失の大きな導波路で実現しようとすると損失が大きくなり過ぎてしまうような大きな直径を有するリング9aを有する)。
【0054】
具体的には、第1リング共振器23には、シリカ系コアの第1光導波路9が用いられており、具体的なリング9aの寸法は例えば直径100μm以上である。
【0055】
第2リング共振器25は第1リング共振器23よりも半径が小さく、かつ第1リング共振器23を構成する材料の最小曲げ半径よりも小さい半径を有するリング11aを用いた共振器である。
【0056】
具体的には、第2リング共振器25には、Si系コアの第2光導波路11が用いられており、具体的なリング11aの寸法は例えば直径100μm未満(望ましくは直径数10μm以下)である。
【0057】
また、接合部28は、シリカ系コアの第1光導波路9で構成されている。
【0058】
なお、第1光導波路9と第2光導波路11は、第1の実施形態と同様に、テーパ型のSSCによって低損失に結合されている。
【0059】
図9から明らかなように、波長可変フィルタ21は、第1の実施形態の複合光導波路1を用いた構造となっており、急峻に曲がっている部分(例えば第2リング共振器25)にSi系コアの第2光導波路11を用い、長く引き回す必要がある部分(第1リング共振器23)にシリカ系コアの第1光導波路9を用いている。なお、ここでいう「長く引き回す必要がある部分」とは、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路長以上の長さで引き回す必要がある部分を意味する。
【0060】
即ち、波長可変フィルタ21は、第1光導波路9の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する部分には第2光導波路11を用い、第2光導波路11において許容される伝播損失に対応した導波路よりも長い周回長のリング共振器を必要とする部分には第1光導波路9を用いている。
【0061】
このように、曲げ半径や長さに応じて第1光導波路9と第2光導波路11を臨機応変に組み合わせて用いることにより、直径10μm〜数mmまでの複数のリング共振器を有する波長可変フィルタ21を構成することが可能となる。
【0062】
従って、本発明の複合光導波路1を用いれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21の設計の自由度を高めることができる。
【0063】
また、直径の異なる複数のリング共振器を組み合わせることにより、波長可変レーザ101は効果的に波長を選択することができる。
【0064】
即ち、図10に示すように、共振波長間隔(FSR)は、リング共振器のリングの直径が小さくなるほど大きくなり、逆に直径が大きくなるほどFSRは小さくなる。
【0065】
そのため、両者を組み合わせることにより効果的に波長を選択することができ、波長可変レーザ101は大きな波長可変幅と安定な連続発振動作を両立させることができる。
【0066】
さらに、波長可変フィルタ21は、接合部28に第1光導波路9を用いている。換言すれば、第1光導波路9は接合部28を有している。
【0067】
これは、以下の理由によるものである。
【0068】
波長可変レーザ101は、波長可変フィルタ21と半導体光増幅器チップ27がなるべく低損失で結合されていることが望ましい、また、両者の結合部分に極僅かでも光反射があり、反射戻り光がSOAに入射すると発振動作が不安定となる。
【0069】
一方で前述のように、Si系の第2光導波路11と半導体光増幅器チップ27を光学結合すると大きな結合損失が伴い、また同時に反射も大きくなる。
【0070】
そのため、接合部28は、Si系コアの第2光導波路11ではなく、小さな結合損失が得られるシリカ系コアの第1光導波路9を用いるのが望ましい。
【0071】
このように、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101は波長可変フィルタ21と半導体光増幅器チップ27を有し、波長可変フィルタ21は複合光導波路1を有している。
【0072】
従って、第1の実施形態と同等の効果を奏する。
【0073】
また、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21は第1リング共振器23および第1リング共振器23のリング9aよりも半径の小さいリング11aを有する第2リング共振器25を有し、第1リング共振器23は第1光導波路9で構成され、第2リング共振器25は第2光導波路11で構成されている。
【0074】
そのため、波長可変レーザ101は、2つのリング共振器を組み合わせることにより効果的に波長を選択することができ、大きな波長可変幅と安定な連続発振動作を両立させることができる。
【0075】
さらに、第2の実施形態によれば、波長可変レーザ101の波長可変フィルタ21は、半導体光増幅器チップ27との接合部28に第1光導波路9を用いている。
【0076】
そのため、結合による損失および反射を最小限に抑えることができる。
【0077】
次に、第3の実施形態に係る光集積回路51の構成について、図11を参照して説明する。
【0078】
第3の実施形態は、第1の実施形態に係る複合光導波路1を用いて光集積回路51を構成し、さらにT−O効果やE−O効果により屈折率を変化させる屈折率制御部として、熱光学装置と電気光学装置を設けたものである。
【0079】
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0080】
図11に示すように、光集積回路51は一対のリング共振器55a、55b、E−O部59、リング共振器55a、55bとE−O部59を接合する接合部61a、61b、リング共振器55aとリング共振器55bを接合する接合部57、リング共振器55a、55bと外部の光ファイバー65a、65b(もしくは図示しない半導体レーザ等)を接合する外部接合部53a、53bを有している。
【0081】
リング共振器55a、55bには光導波路の屈折率を変化させる熱光学装置を構成するヒータ71a、71bが設けられており、ヒータ71a、71bにはヒータ71a、71bに駆動電流を流すための電極67が設けられている。電極67は図示しない電源に接続されている。
【0082】
即ち、図示しない電源によりヒータ71a、71bが通電され、通電されたヒータ71a、71bがリング共振器55a、55bを加熱することにより、リング共振器55a、55bを構成する光導波路の屈折率が変化する。
【0083】
また、E−O部59には光導波路の屈折率を変化させる光学装置を構成する電極69が設けられており、電極69は図示しない他の電源に接続されている。
【0084】
即ち、図示しない電源により電極69が通電され、通電された電極69が光導波路に電界印加や電流注入を行うことにより、E−O部59の光導波路の屈折率が変化する。
【0085】
ここで、光集積回路51では、リング共振器55a、55bを構成する光導波路はSi系コアの第2光導波路11が用いられている。
【0086】
これは、シリカ系コアの第1光導波路9よりもSi系コアの第2光導波路11の方が、熱光学効果が大きく、より少ない加熱、即ち少ない電力によって透過波長を大きく変えることができるためである。(一般にSi系コアの熱光学効果はシリカ系コアの熱光学効果よりも大きい)。
【0087】
さらに、図12に示すように、ヒータ71a、71bの周囲には埋め込み層5およびオーバークラッド層7を切り欠いて形成した断熱溝73が設けられている。
【0088】
このように、断熱溝73を設けることにより、第2光導波路11周辺に効率的に熱を閉じ込めることで、さらに少ない電力により透過波長を大きく変えることができる(即ち、消費電力を低減できる)。
【0089】
また、E−O部59を構成する光導波路もSi系コアの第2光導波路11が用いられている。
【0090】
これは、第2光導波路11はコアが半導体であるSiであるため、電界印加や電流注入によって導波路の屈折率を変化させることができるためである。なお、電気光学効果は熱光学効果よりも高速に応答するために、E−O部59を設けることにより、高速で波長を変化させることができる。
【0091】
一方、外部接合部53a、53bは第1光導波路9で構成されている。
【0092】
これは、第2の実施形態と同様の理由、即ち、Si系コアの第2光導波路11よりもシリカ系コアの第1光導波路9の方が、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)との結合損失が小さいからである。
【0093】
さらに、接合部57、61a、61bについては、第1、第2の実施形態と同様に、第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径以上の半径を有する部分(図11では直線部分)については、第1光導波路9を用い、第1光導波路9を構成する材料の最小曲げ半径より小さい半径を有する急峻曲がり部13には第2光導波路11を用いた複合光導波路1としている。
【0094】
このように、T−O効果やE−O効果が必要となる部分には第2光導波路11を用い、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)と接合する必要がある部分には第1光導波路9を用いること、即ち、両者を組み合わせて用いることにより、各々の光導波路を単独で用いた場合には実現できなかった小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が得られる光集積回路51が得られる。
【0095】
このように、第3の実施形態によれば、光集積回路51は複合光導波路1を有している。
従って、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0096】
また、第3の実施形態によれば、光集積回路51はヒータ71a、71bおよびE−O部59を有し、T−O効果やE−O効果が必要となる部分には第2光導波路11を用い、光ファイバー65a、65b(および/または半導体レーザ)と接合する必要がある部分には第1光導波路9を用いている。
【0097】
そのため、光集積回路51は、各々の光導波路を単独で用いた場合と比べ、小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
上記した実施形態では、本発明を、波長可変フィルタ21、波長可変レーザ101、および光集積回路51に適用した場合について説明したが、本発明は、何等、これに限定されることなく、小型で低損失かつ低駆動電力で高速、さらには安定動作が求められる全ての光機能デバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0099】
1……………複合光導波路
3……………基板
5……………埋め込み層(アンダークラッド層)
7……………オーバークラッド層
9……………第1光導波路(コア層)
10…………半径
11…………第2光導波路(コア層)
13…………急峻曲がり部
15…………テーパ部
21…………波長可変フィルタ
23…………第1リング共振器
25…………第2リング共振器
27…………半導体光増幅器(SOA)チップ
28…………接合部
29…………クラッド
31…………活性層
33…………電極
35…………位置合わせマーカー
37…………位置合わせマーカー
39…………電極
51…………光集積回路
53a………外部接合部
53b………外部接合部
55a………リング共振器
55b………リング共振器
57…………接合部
59…………E−O部
61a………接合部
61b………接合部
65a………光ファイバー
65b………光ファイバー
67…………電極
71a………ヒータ
71b………ヒータ
73…………断熱溝
101………波長可変レーザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系コアを有する第1光導波路と、
前記第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路と、
を有し、
前記第1光導波路は、前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、
前記第2光導波路は、前記第1光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部を有することを特徴とする複合光導波路。
【請求項2】
前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路よりも長い周回長のリングを有する第1リング共振器と、
前記第1光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径のリングを有する第2リング共振器と、
を有し、
前記第1リング共振器は前記第1光導波路で構成され、
前記第2リング共振器は前記第2光導波路で構成されていることを特徴とする請求項1記載の複合光導波路。
【請求項3】
前記第1リング共振器のリングは直径100μm以上であり、
前記第2リング共振器のリングは直径100μm未満であることを特徴とする請求項2記載の複合光導波路。
【請求項4】
前記第1光導波路は、前記第1リング共振器のリングの直径以上の長さを有する部分を有することを特徴とする請求項2または3のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項5】
前記第2光導波路に設けられ、前記第2光導波路の屈折率を変化させる屈折率制御部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項6】
前記屈折率制御部は、
電気光学効果により前記第2光導波路の屈折率を変化させる電気光学装置を有することを特徴とする請求項4記載の複合光導波路。
【請求項7】
前記電気光学装置は、前記第2光導波路に電界印加や電流注入を行うための電極を有することを特徴とする請求項6記載の複合光導波路。
【請求項8】
前記屈折率制御部は、熱光学効果により前記第2光導波路の屈折率を変化させる熱光学装置を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項9】
前記熱光学装置は、前記第2光導波路を加熱するヒータを有することを特徴とする請求項8に記載の複合光導波路。
【請求項10】
前記ヒータの周囲に設けられた消費電力低減のための断熱溝を有することを特徴とする請求項9記載の複合光導波路。
【請求項11】
前記第1光導波路は、光ファイバーおよび/または半導体レーザに接合される接合部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項12】
前記シリカ系コアは、SiO2、SiON、SiOxの少なくとも1種を有するコアであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項13】
前記Si系コアはSi半導体を有するコアであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合光導波路を有することを特徴とする波長可変フィルタ。
【請求項15】
請求項14記載の波長可変フィルタを有することを特徴とする波長可変レーザ。
【請求項16】
請求項15記載の波長可変レーザを用いたレーザの発振方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合光導波路を有することを特徴とする光集積回路。
【請求項1】
シリカ系コアを有する第1光導波路と、
前記第1光導波路に接合され、Si系コアを有する第2光導波路と、
を有し、
前記第1光導波路は、前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路長を有し、
前記第2光導波路は、前記第1光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径を有する急峻曲がり部を有することを特徴とする複合光導波路。
【請求項2】
前記第2光導波路において許容される伝播損失に対応した導波路よりも長い周回長のリングを有する第1リング共振器と、
前記第1光導波路の最小曲げ半径よりも小さい半径のリングを有する第2リング共振器と、
を有し、
前記第1リング共振器は前記第1光導波路で構成され、
前記第2リング共振器は前記第2光導波路で構成されていることを特徴とする請求項1記載の複合光導波路。
【請求項3】
前記第1リング共振器のリングは直径100μm以上であり、
前記第2リング共振器のリングは直径100μm未満であることを特徴とする請求項2記載の複合光導波路。
【請求項4】
前記第1光導波路は、前記第1リング共振器のリングの直径以上の長さを有する部分を有することを特徴とする請求項2または3のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項5】
前記第2光導波路に設けられ、前記第2光導波路の屈折率を変化させる屈折率制御部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項6】
前記屈折率制御部は、
電気光学効果により前記第2光導波路の屈折率を変化させる電気光学装置を有することを特徴とする請求項4記載の複合光導波路。
【請求項7】
前記電気光学装置は、前記第2光導波路に電界印加や電流注入を行うための電極を有することを特徴とする請求項6記載の複合光導波路。
【請求項8】
前記屈折率制御部は、熱光学効果により前記第2光導波路の屈折率を変化させる熱光学装置を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項9】
前記熱光学装置は、前記第2光導波路を加熱するヒータを有することを特徴とする請求項8に記載の複合光導波路。
【請求項10】
前記ヒータの周囲に設けられた消費電力低減のための断熱溝を有することを特徴とする請求項9記載の複合光導波路。
【請求項11】
前記第1光導波路は、光ファイバーおよび/または半導体レーザに接合される接合部を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項12】
前記シリカ系コアは、SiO2、SiON、SiOxの少なくとも1種を有するコアであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項13】
前記Si系コアはSi半導体を有するコアであることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合光導波路。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合光導波路を有することを特徴とする波長可変フィルタ。
【請求項15】
請求項14記載の波長可変フィルタを有することを特徴とする波長可変レーザ。
【請求項16】
請求項15記載の波長可変レーザを用いたレーザの発振方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合光導波路を有することを特徴とする光集積回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−164406(P2011−164406A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27852(P2010−27852)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]