説明

複合分解菌集積保持担体及びその製造方法、新規細菌、並びに汚染環境の浄化方法及びその装置

【課題】 複数の有機汚染物質に汚染された環境下にあっても、それらの汚染物質を同時に分解することができる安定性のある複合微生物系を得ること、及び、PCNBやシマジンなどの難分解性の有機汚染物質をより効果的に分解すること。
【解決手段】 多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体を製造した。分解菌AがPCNB分解菌、特にノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む分解菌とし、分解菌Bがシマジン分解菌、特にベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む分解菌とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農耕地土壌や地下水などに含まれる有機汚染物質の分解除去技術に関し、特に、土壌細菌を利用して、複数の有機汚染物質で汚染されている土壌や地下水などから汚染物質を分解除去する技術及び難分解性の有機汚染物質を分解する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農耕地土壌等に広く低濃度で分布しているPOPs等の難分解性有機汚染物質の分解除去技術として細菌などの微生物の自然分解能力を利用して汚染土壌などを浄化、無害化するバイオレメディエーション技術が注目されている。しかし、これまでのバイオレメディエーション技術は、細菌などの微生物を有効に活用しようとしても、有機汚染物質を有効に分解する分解菌の発見が困難であったり、発見できたとしてもその微生物独自の生存環境が存在するため、自然のままの状態では分解菌の密度が低く、汚染物質が環境中に残留したり拡散するのを効果的に防止するまでには至らなかった。特に、汚染土壌などへの適用を考えた場合、汚染土壌の理化学性の影響を受けたり、汚染土壌中の原生動物からの捕食などにより、分解菌が死滅してしまう問題があった。そのため、バイオレメディエーション技術の有効活用が叫ばれてはいるが、望まれる程には実現されていないのが実情である。
【0003】
一方、本発明者らは、所定の吸着定数や比表面積を有する多孔質材が、有機汚染物質の分解菌のすみかとして活用することができることや、特定の種類の分解菌を集積、単離する技術を開発してきた(特許第3030370号公報:特許文献1、特許第2904432号公報:特許文献2、再表00/078923号公報:特許文献3参照)。これらの技術によれば、農薬などに用いられるある種の有機汚染物質を分解することができる分解菌を高密度で集積、純化させることにより、土壌などの環境中に残留するこの有機汚染物質を分解除去することを可能とした。
【特許文献1】特許第3030370号公報
【特許文献2】特許第2904432号公報
【特許文献3】再表00/078923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、土壌汚染、水質汚染などの環境汚染は、複数の有機汚染物質が原因となって汚染されている場合が多く、これらの汚染物質を同時に原位置で分解除去する技術は開発されていない。
【0005】
また、非常に分解されにくい有機塩素系農薬PCNB(キントゼン;ペンタクロロニトロベンゼン)や、半減期が長くまた土壌吸着係数が低いシマジン(2−クロロ−4,6−ビス(エチルアミノ)−1,3,5−トリアジン)などの土壌汚染や水質汚染の原因物質の一つとなる有機汚染物質の分解は困難であり、より効果的に分解する技術が求められている。
【0006】
そこで本発明は、複数の有機汚染物質に汚染された環境下にあっても、それらの汚染物質を同時に分解することができる安定性のある複合微生物系を得ることを目的としてなされたものである。
【0007】
また本発明は、特にPCNBやシマジンなどの難分解性の有機汚染物質をより効果的に分解することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明は、多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体を提供する。
【0009】
多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体であるため、2種以上の有機汚染物質を分解除去することができる。ここで、分解菌Aと分解菌Bは異なる種類の分解菌であることを意味する。一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aや他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bは、単独の分解菌とすることが可能であり、また、1種以上の共生菌と組み合わせた菌群でなるものとすることも可能である。この複合分解菌集積保持担体は、汚染土壌中に混和させることにより、または汚染水を通すことにより、トリアジン系農薬や有機塩素系農薬などの有機汚染物質を分解することができる。
【0010】
そして、前記分解菌AをPCNB分解菌とすることができ、また、前記分解菌Bをシマジン分解菌とすることができる。このようにすれば、少なくともPCNB分解菌若しくはシマジン分解菌の一方、または少なくともその両方を多孔質材中に集積させた複合分解菌集積保持担体とすることができ、処理対象物からPCNB若しくはシマジン、またはPCNBとシマジンの両方を分解することが可能である。
【0011】
さらに、分解菌AをノカルディオイデスエスピーPD653(Nocardioides sp. PD653)(以下「PD653」と略記する場合もある)の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌を含む分解菌とすることができ、また、分解菌BをベータプロテオバクテリアCDB21(β-Proteobacteria CDB21)の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌を含む分解菌とすることができる。このようにすれば、少なくともノカルディオイデスエスピーPD653若しくはベータプロテオバクテリアCDB21の一方、または少なくともその両方を多孔質材中に集積させた複合分解菌集積保持担体とすることができ、処理対象物からPCNB若しくはシマジン、またはPCNBとシマジンの両方を分解することが可能である。
【0012】
ここで、分解菌Aを1種以上の共生菌と組み合わされた菌群とすることができ、また、分解菌Bを1種以上の共生菌と組み合わされた菌群とすることができる。すなわち、分解菌Aや分解菌Bが単独の細菌である場合だけでなく、複数の菌類を含んでなる菌群とすることができる。そして、分解菌Aや分解菌Bが共生菌と組み合わされた複合微生物系(コンソーシア)を形成すれば、単なる菌群の混合物ではなく、有機汚染物質の分解、資化、及び生育に必須な栄養因子を互いに補完しあう機能を有し、有機汚染物質に対する分解能を高めることができる。
【0013】
例えば、分解菌AをPCNB分解菌PD3(以下「PD3」と略記する場合もある)とし、また、分解菌Bを、シマジン分解菌CD7(以下「CD7」と略記する場合もある)かシマジン分解菌2Mix(以下「2Mix」と略記する場合もある)の何れかとすることができる。ここでPD3とは、ノカルディオイデスエスピーPD653、バークホルデリアセパシアKTYY97(Burkholderia cepacia KTYY97)(以下「KTYY97」と略記する場合もある)、及びその他の複数の細菌群を含んでなるコンソーシアであり、CD7とは、ベータプロテオバクテリアCDB21(β-Proteobacteria CDB21)(以下「CDB21」と略記する場合もある)、ブラディリゾビウムジャポニカムCSB1(Bradyrhizobium japonicum CSB1)(以下「CSB1」と略記する場合もある)、及びアルスロバクターエスピーCD7w(Arthrobacter sp. CD7w)(以下「CD7w」と略記する場合もある)を含んでなるコンソーシアであり、2Mixとは、ベータプロテオバクテリアCDB21とブラディリゾビウムジャポニカムCSB1とを含んでなるコンソーシアである。
【0014】
本発明で用いる多孔質材は、吸着定数が分解菌が生息する土壌の吸着定数よりも数十倍以上で且つ1万倍以下であるか、又は比表面積が50m /g以上で且つ600m /g以下である多孔質材とすることができる。多孔質材の吸着定数が分解菌が生息する土壌の吸着定数よりも数十倍以上で且つ1万倍以下であるか、又は比表面積が50m /g以上で且つ600m /g以下であれば、分解菌が利用しやすい形態に資化材が吸着されやすく、担体への分解菌の安定的な集積が可能となる。
【0015】
また、本発明で用いる多孔質材は、分解菌の定着を可能とするサイズの細孔の細孔全体に対する容積比率が10%以上とすることができる。分解菌の定着を可能とするサイズの細孔の細孔全体に対する容積比率が10%以上である多孔質材とすれば、分解菌の繁殖が容易で、また、安定的な生育が可能となるからである。この条件を満たすためには、2μm〜50μm、より好ましくは5μm〜20μmの大きさの細孔が容積比率で10%以上あることが好ましい。
【0016】
多孔質材は木質炭化素材とすることができる。木質炭化素材とすれば、分解菌が住み着きやすく、安定的な繁殖、生育が可能だからである。
【0017】
また、本発明は、有機塩素系農薬PCNBを効果的に分解する細菌を提供する。この細菌は、ノカルディオイデス属に属する細菌であり、配列番号1に記載の塩基配列を含む16S rRNA(16SリボソームRNA)遺伝子を有し、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターにFERMP−20557として寄託されたノカルディオイデス属に属するノカルディオイデスエスピーPD653や、このノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌を含む。これらの細菌によれば、PCNBを実効的に完全分解することができる。
【0018】
また、本発明は、トリアジン系農薬、特にシマジンを効果的に分解するベータプロテオバクテリアCDB21(FERMP−19395)と共生する細菌で、トリアジン系農薬、特にシマジンに対する分解能向上に寄与するアルスロバクター属に属する細菌であり、配列番号2に記載の塩基配列を含む16S rRNA遺伝子を有し、独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターにFERMP−20371として寄託されたアルスロバクターエスピーCD7wや、このアルスロバクターエスピーCD7wの有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌を含む。これらの細菌によれば、シマジン分解菌ベータプロテオバクテリアCDB21などと共生してコンソーシアとして機能し、多孔質材への親和性を高めて、シマジン分解菌群の多孔質材への集積を高めることができる。これにより、ベータプロテオバクテリアCDB21だけの場合に比べてトリアジン系農薬、特にシマジンの分解能を高める事が可能となる。
【0019】
さらに本発明は、一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bを、多孔質材が積層した多孔質材層に接種する工程と、多孔質材層に、前記一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Aと、前記他の一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Bとを添加する際に、前記多孔質材中での分解菌Aと分解菌Bの集積速度に応じて、前記各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する工程と、を実行し、分解菌Aと分解菌Bとを前記多孔質材に集積保持させることを特徴とする複合分解菌集積保持担体の製造方法を提供する。
【0020】
一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bを、多孔質材が積層した多孔質材層に接種する工程と、多孔質材層に、前記一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Aと、前記他の一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Bとを添加する際に、前記多孔質材中での分解菌Aと分解菌Bの集積速度に応じて、前記各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する工程と、を実行し、分解菌Aと分解菌Bとを前記多孔質材に集積保持させることとしたため、分解菌Aと分解菌Bの生育速度が異なっていても、多孔質材中に所要量の分解菌Aと分解菌Bとを担持させることができる。
【0021】
より具体的には、分解菌Aと分解菌Bとの多孔質材中での集積速度に応じて、各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する前記工程について、前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか一方を多孔質材層に一度に添加し、前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか他方を多孔質材層に還流して添加する工程とする複合分解菌集積保持担体の製造方法とすることができる。
【0022】
分解菌Aと分解菌Bとの多孔質材中での集積速度に応じて、各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する前記工程について、前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか一方を多孔質材層に一度に添加し、前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか他方を多孔質材層に還流して添加したため、例えば、生育の早い分解菌Bの資化材となる無機塩培地Bは還流液を通じて供給し、生育の遅い分解菌Aの資化材となる無機塩培地Aは最初に一度に多孔質材に添加することで、生育の早い分解菌だけがニッチ(分解菌のすみか)を占有することなく、生育の遅い分解菌も十分に繁殖させて生育させることができる。そのため、分解菌Aと分解菌Bの両者を所要量共存させた複合分解菌集積保持担体を得ることができる。なおここで生育速度とは、多孔質材中での菌類の生育や増殖の速度をいうものとする。
【0023】
そして、前記分解菌AをPCNB分解菌とすることができ、前記分解菌Bをシマジン分解菌とすることができる。このようにすれば、PCNB分解菌とシマジン分解菌の両者を所要量多孔質材中に保持させた複合分解菌集積保持担体とすることができる。
【0024】
さらに、分解菌AをノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む分解菌とし、分解菌BをベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む分解菌とした複合分解菌集積保持担体の製造方法とすることができる。このようにすれば、ノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌とベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌の両者を必要量多孔質材中に保持させた複合分解菌集積保持担体とすることができる。
【0025】
ここで、分解菌Aや分解菌Bは、単独の分解菌とすることが可能であり、また、1種以上の共生菌と組み合わされた菌群とすることができる。1種以上の共生菌と組み合わされたコンソーシアを形成すれば、単なる菌群の混合物ではなく、有機汚染物質の分解、資化、及び生育に必須な栄養因子を互いに補完しあう機能を有し、有機汚染物質に対する分解能が高い複合分解菌集積保持担体を製造することができる。
【0026】
具体的には、例えば、PCNB分解菌がノカルディオイデスエスピーPD653とその共生菌であるバークホルデリアセパシアKTYY97、その他の細菌群からなる分解菌であるPCNB分解菌PD3であり、シマジン分解菌がベータプロテオバクテリアCDB21とその共生菌であるブラディリゾビウムジャポニカムCSB1、アルスロバクターエスピーCD7wの3種を含む細菌群であるシマジン分解菌CD7か、または、シマジン分解菌がベータプロテオバクテリアCDB21とその共生菌であるブラディリゾビウムジャポニカムCSB1の2種を含む細菌群であるシマジン分解菌2Mixのいずれかであるものとすることができる。
【0027】
また本発明は、多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解する分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解する分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体を用いることを特徴とする汚染環境の浄化方法を提供する。
【0028】
多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解する分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解する分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体を用いたため、少なくとも2以上の有機汚染物質の分解除去が可能となり、汚染環境を浄化することができる。
【0029】
そして、一の有機汚染物質を分解する分解菌AをPCNB分解菌、他の一の有機汚染物質を分解する分解菌をシマジン分解菌とすることができ、さらに、分解菌AがノカルディオイデスエスピーPD653や、その細菌の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌、分解菌BがベータプロテオバクテリアCDB21や、その細菌の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌とした汚染環境の浄化方法とすることができる。
【0030】
また、分解菌Aを1種以上の共生菌と組み合わされた菌群とすることができ、また、分解菌Bを1種以上の共生菌と組み合わされた菌群とした汚染環境の浄化方法とすることができる。すなわち、分解菌Aや分解菌Bが単独の細菌である場合だけでなく、複数の菌類を含んでなる菌群とすることができる。そして、分解菌Aや分解菌Bが共生菌と組み合わされた複合微生物系(コンソーシア)を形成すれば、単なる菌群の混合物ではなく、有機汚染物質の分解、資化、及び生育に必須な栄養因子を互いに補完しあう機能を有し、有機汚染物質に対する分解能を高めた汚染環境の浄化方法とすることができる。
【0031】
分解菌AをPCNB分解菌、分解菌Bをシマジン分解菌とすれば少なくとも有機汚染物質であるPCNBとシマジンとを分解することができる。また、分解菌AがノカルディオイデスエスピーPD653やその細菌の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌、若しくはPCNB分解菌PD3、分解菌BがベータプロテオバクテリアCDB21やその細菌の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する細菌、若しくはシマジン分解菌CD7や2Mixとすれば、PCNBとシマジンとをほぼ完全に90%以上分解できるだけでなく、PCP(ペンタクロロフェノール)やHCB(ヘキサクロロベンゼン)などの有機塩素系汚染物質やアトラジン(2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン)などのトリアジン系有機汚染物質をも分解することができる。
【0032】
さらに本発明は、複合分解菌集積保持担体に対して処理対象水を通し、処理対象水中の有機汚染物質を分解除去する汚染環境の浄化方法を提供する。
【0033】
複合分解菌集積保持担体に対して、有機汚染物質を含有する処理対象水を通すこととしたため、処理対象水中の有機汚染物質が複合分解菌集積保持担体に集積した分解菌によって分解除去され、処理対象水中の浄化を行うことができる。したがって、処理対象水を複合分解菌集積保持担体に通す簡単な処理を行うだけで汚染された処理対象水を浄化することができる。
【0034】
さらにまた本発明は、複合分解菌集積保持担体を処理対象土壌中に混和して、処理対象土壌中の有機汚染物質を分解除去する汚染環境の浄化方法を提供する。
【0035】
複合分解菌集積保持担体を処理対象土壌中に混和したため、雨水などにより土壌中に含まれる有機汚染物質が複合分解菌集積保持担体に運ばれて分解される。そのため、有機汚染物質に汚染された土壌中に複合分解菌集積保持担体を混和するという簡単な処理を行うだけで、汚染土壌中の有機汚染物質を分解除去して汚染土壌を浄化することができる。
【0036】
そして本発明は、複合分解菌集積保持担体を含有してなる汚染環境の浄化装置を提供する。この汚染環境の浄化装置によれば、複合分解菌集積保持担体を含有するため、有機汚染物質の分解除去を容易に行うことができ、汚染環境を浄化することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の複合分解菌集積保持担体によれば、汚染された土壌や地下水などに含まれる複数の有機汚染物質を同時に分解することができ、その分解能力を安定的に持続させることができる。
【0038】
本発明の細菌によれば、難分解性のPCNBやシマジンの完全分解に寄与することができる。
【0039】
本発明の複合分解菌集積保持担体の製造方法によれば、多孔質材に異なる有機汚染物質を分解することが可能な2種類以上の分解菌を集積保持した複合分解菌集積保持担体を簡単に製造することができる。
【0040】
本発明の汚染環境の浄化方法や汚染環境の浄化装置によれば、複雑な処理工程が不要で簡単に二種以上の有機汚染物質を分解除去して汚染環境を浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の複合分解菌集積保持担体や細菌について以下に詳しく説明する。本発明でいう「複合分解菌集積保持担体」とは、多孔質材中に分解を目的とする有機汚染物質を分解する2種類以上の分解菌を高密度に集積させたものである。
【0042】
以下に複合分解菌集積保持担体に用いられる担体と分解菌について説明する。
【0043】
担体
【0044】
有機汚染物質を分解する分解菌を保持する担体となるのは、この分解菌のすみかとなるマイクロハビタットである。マイクロハビタットは、多数の細孔、高い吸着係数を有し、分解菌が入り込むことができる有効表面積の大きな多孔質材を選択することができる。すなわち、比表面積では、好ましくは50m/g〜600m/gであり、細孔の大きさでは、好ましくは2μm〜50μm、より好ましくは5μm〜20μmである。そして、このような大きさの細孔が細孔全体に対して容積比率で10%以上あることが好ましい。このような多孔質材としては、木質炭化素材などを挙げることができる。本発明者が開発した木質炭化素材A(広葉樹を500℃で通常焼成した木質炭化素材の5mm〜10mm砕片であり、pHが8、比表面積が100m /g、直径5μm〜20μmの細孔の容積が全細孔容積の10%以上、特許第2904432号明細書に記載がある)などは優れたマイクロハビタットである。木質炭化素材は2mm〜15mm程度の大きさに砕片化して用いることが好ましい。なお、活性炭のような炭化物は分解菌のすみかとして適切ではなく、一時的には有機汚染物質の吸着が可能であるけれどもすぐに吸着飽和に達してしまい交換の必要性が生じる。そのため、長期間の安定的な使用に耐えうるものではない。
【0045】
分解菌
【0046】
特定の種類の有機汚染物質を分解する分解菌を利用することができる。このような分解菌には遺伝子組み換え技術を利用して得た分解能の増強された分解菌や新たに作出された分解菌を利用することもできるが、組み換え微生物の野外放出の安全性評価に関しては今でも研究や議論が続けられており、パブリックアクセプタンスも得にくい状況にある。
【0047】
一方、本発明者らの提案している改良した土壌還流法に基づき得られた分解菌を用いることは好ましい。この方法により得られた分解菌は土壌に生息する分解菌であり、安全性に対する問題は少ないからである。改良した土壌還流法は、集積させるべき分解菌が生息する土壌にマイクロハビタットとなる多孔質材を混和させて集積用土壌層を形成し、この分解菌が分解する有機汚染物質のみを炭素源、窒素源とする無機塩培地を所定日数還流させ、次に、この集積用土壌層からマイクロハビタットを取り出し、別に用意したマイクロハビタットに接種してマイクロハビタットだけによる集積用層を形成し、この集積用層に対して改めてこの分解菌が分解する有機汚染物質のみを炭素源、窒素源とする無機塩培地を還流させて、多孔質材中に目的の分解菌を集積させるものである。また、これらの方法以外の方法により土壌より採取された分解菌を用いることも可能である。
【0048】
改良した土壌還流法に基づいて多孔質材中に集積させた分解菌の単離は、希釈平板法などにより行うことができる。例えば、分解菌が集積済みの多孔質材を粉砕し、リン酸緩衝液で適当に希釈し、所定の有機汚染物質を高濃度に含む寒天培地にこの希釈液を接種して培養する。平板培地中に生じたクリアゾーンから釣菌し、さらに新たな上記寒天培地に接種し培養する。このようにして所望の分解菌コロニーを単離する。
【0049】
具体的な分解菌として、次の分解菌を挙げることができる。
【0050】
PCNB分解菌PD3: PCNB分解菌PD3は、ノカルディオイデスエスピーPD653(Nocardioides sp. PD653)と、バークホルデリアセパシアKTYY97(Burkholderia cepacia KTYY97)、その他の複数細菌の複合系からなる細菌群である。
【0051】
PCNB分解菌PD3からのPD653、KTYY97、その他の細菌群の単離は、PD3のコロニーから、これをPCNBを含むR2A寒天培地平板に接種し、単コロニー分離を行う一方、得られたコロニーの一部はチューブ培養を行って系統を得る。最後にフラスコ培養して単離する。
【0052】
ノカルディオイデスエスピーPD653は、本発明者らによって発見された新規な細菌であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERMP−20557(受領番号FERMAP−20557)として寄託されている。PCNBに対する分解能を有し、種の定まっていないノカルディオイデス属に属する。
【0053】
PD653は次の菌学的性質を有する。培養条件は、R2A寒天培地、30℃にて3〜7日、好気培養を行う。形態的特徴は、胞子形成は無く、上記培養3日で直径1.0mm、淡黄色、円形、半レンズ状隆起状態、全縁スムーズで不透明、バター様の粘稠度を有するコロニーを形成する。変異や培養条件、生理的状態によるコロニー形態の変化は認められない。細胞形態は、大きさ0.7〜0.8×1.0〜1.2μm程度の桿菌であり、運動性なし、グラム染色:−である。生理的性質は、カタラーゼ:+、オキシダーゼ:−、酸/ガス産生(グルコース):−/−、O/Fテスト(グルコース):−/−、GC含量:70.8%である(+:陽性、−:陰性)。
【0054】
PD653菌株の表現形質による分類学的性質に基づき、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol.1, N.R. Krieg, J.G. Holt (ed.), Williams & Wilkins, Baltimore (1984)を参考に分類・同定を行ったが、PD653と類似の性状を示す分類群を絞り込むには至らなかった。
【0055】
次いで本PD653菌株の16S rRNAの部分塩基配列に基づく分子系統解析を行った結果、PD653の16S rRNAの塩基配列のうち連続した1487塩基を決定し、FASTAとBLASTを用いてDNAデータベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対して相同性検索をしたところ、種の定まっていないNocardioides sp. OS4と最も高い相同性97.1%を示した。この結果は表現形質による分類学的性質とほぼ矛盾がないことから、PD653をノカルディオイデスエスピー(Nocardioides sp.)と帰属した。上記1487塩基を配列番号1とした配列表に示す。
【0056】
有機汚染物質に対するPD653の有する分解能を調べるため、0.01%トリプトンを含む培地に初期濃度10ppmのPCNBを添加し、PD653を30℃、暗所、120rpmで振とう培養し、生じた塩素イオン濃度を測定した。PCNBが分解されればそれに伴って塩素イオンが生じるので、塩素イオン濃度はPCNB分解の尺度となる。この条件で4日間振とう培養したところ、4.5ppmの塩素イオンが生じた。また、10ppmに代えて初期濃度を25ppmとしてPCNBを添加し、同様の条件で16日間振とう培養したところ、13.3ppmの塩素イオンが生じた。このようにPD653は、単独でPCNBに対する分解能を有している。また、PCNBに代えて初期濃度5ppmのHCBを添加して、同様の条件で16日間振とう培養すると、4.0ppmの塩素イオンが生じた。このことから、PD653は、単独でHCBに対する分解能も有していることがわかる。
【0057】
一方、バークホルデリアセパシアKTYY97はFERMP−16809として寄託された後、国際寄託に移管され、独立行政法人 産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所)にFERMBP−6721として寄託されている。この細菌に対する詳細は、特許第2904432号に記載されている。
【0058】
PCNB分解菌PD3は、PD653やKTYY97などの複数の細菌が複合してコンソーシアを形成している。多孔質材に、PD653とKTYY97、PD653のみをそれぞれ集積させた分解菌集積保持担体に、初期濃度6ppmのPCNBアセトン溶液を加えて、25℃、暗所、120rpmで振とう培養したときの経過日数ごとの塩素イオン濃度の変化を図1に示した。PD653はPCNB分解能を有するが、図1からわかるように、少なくともKTYY97と組み合わせると、PCNBがより多く分解することがわかる。
【0059】
PCNB分解能を有するPD653などとともにコンソーシアを構成することができる共生菌としては、KTYY97の他、メチロバクテリウムエスピーP4、ミクロバクテリウムエスピーP42、カウロバクターエスピーP43などが挙げられが、これら以外にも分解菌の生育補助やPCNB分解を促進する能力を有する細菌が挙げられる。
【0060】
上述のPCNB分解菌PD3を構成するPD653やKTYY97は、改良した土壌還流法を用いて集積し単離したものであるが、これらに限定されるものではなく、PD653は、ノカルディオイデス属に属する細菌であって、PCNB分解能を有する細菌、または、PD653の菌学的特徴の一部又は全部を有する細菌とすることができ、KTYY97は、バークホルデリア属に属する細菌であって、KTYY97の菌学的特徴の一部又は全部を有する細菌とすることができる。
【0061】
シマジン分解菌CD7: シマジン分解菌CD7は、ベータプロテオバクテリアCDB21(β-Proteobacteria CDB21)、ブラディリゾビウムジャポニカムCSB1(Bradyrhizobium japonicum CSB1)、アルスロバクターエスピーCD7w(Arthrobacter sp. CD7w)の3種複合系からなる細菌群である。
【0062】
シマジン分解菌CD7からのCDB21、CSB1及びCD7wの単離は、CD7のコロニーから、これをシマジンを含むバクトトリプトン寒天培地平板に接種し、単コロニー分離を行う。CDB21、CSB1及びCD7wは、それぞれ形態の異なる3種のコロニーとして得ることができる。
【0063】
ベータプロテオバクテリアCDB21は、いかなる既知の属種にも帰属しないベータプロテオバクテリアに属する本発明者らによって発見された新規な細菌であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERMP−19395として寄託されている。シマジン分解菌CD7の有するシマジン分解能はCDB21のみが保有している。
【0064】
ブラディリゾビウムジャポニカムCSB1は、ブラディリゾビウムジャポニカムの範疇に属し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERMP−19394として寄託された細菌である。
【0065】
アルスロバクターエスピーCD7wも、新規な細菌であり独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERMP−20371(受領番号FERMAP−20371)として寄託された細菌である。
【0066】
CD7wは、次に示す菌学的性質を示す細菌である。培養条件は、NA培地、30℃にて2〜3日、好気培養を行う。形態的特徴は、胞子形成は無く、上記培養2日で直径1〜3mm、淡黄色、円形、半レンズ状隆起状態、全縁スムーズで不透明、バター様の粘稠度を有するコロニーを形成する。変異や培養条件、生理的状態によるコロニー形態の変化は認められない。細胞形態は、大きさ0.8×1.2μm程度の桿菌であり、運動性あり、グラム染色:+である。生理的性質は、カタラーゼ:+、オキシダーゼ:−、O/Fテスト:−、硝酸還元:−、ピラジナミダーゼ:+、ピロリドニルアリルアミダーゼ:−、アルカリフォスファターゼ:−、β−グルクロニダーゼ:−、β−ガラクトシダーゼ:−、N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ:−、エスクリン(グルコシダーゼ):+、ウレアーゼ:−、ゼラチンの液化:+、炭水化物の発酵性はブドウ糖:−、リボース:−、キシロース:−、マンニトール:−、マルトース:−、乳糖:−、白糖:+、グリコーゲン:−である(+:陽性、−:陰性)。
【0067】
CD7wの表現形質による分類学的性質に基づき、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Vol.1, N.R. Krieg, J.G. Holt (ed.), Williams & Wilkins, Baltimore (1984)及びBergey’s Manual of Determinative Bacteriology (9th ed.), J.G. Holt, N.R. Krieg, P.H.A. Sneath, J.T. Staley, S.T. Williams (ed.), Williams & Wilkins, Baltimore (1994)を参考に分類・同定を行った結果、CD7wはアルスロバクター(Arthrobacter)属と判断された。
【0068】
また、CD7wについて16S rRNAの塩基配列に基づく分子系統解析を行い、CD7wの16S rRNAの塩基配列のうち連続した831塩基を決定し、FASTA及びBLASTを用いてDNAデータベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対して相同性検索をしたところ、種の定まっていないArthrobacter sp. Ellin146と最も高い相同性99.9%を示した。そして、CD7wをアルスロバクターエスピー(Arthrobacter sp.)と帰属した。上記831塩基を配列番号2とした配列表に示す。
【0069】
CDB21、CSB1、CD7wの何れも単独ではシマジンを唯一の炭素源、窒素源とする無機塩培地で生育しにくく、明確なコロニーを形成しない。これらの組合せでは、少なくともCDB21とCSB1を組み合わせたときにコロニーが出現する。したがって、シマジン分解菌CD7は、単なる細菌の混合物ではなく、シマジンの分解、資化と生育に必須な栄養因子を互いに補完しあう機能をもったコンソーシアを形成している。
【0070】
シマジン分解菌CD7の多孔質材中の存在を調べると、そのうち、CD7wは、多孔質材の表面にはほとんど存在せず、内部に高度に集積する。そのため、CD7wは、CDB21などとのコンソーシアにおいて、CDB21などだけでは不足する多孔質材への親和性を高め、多孔質材中に高密度で集積する機能を有しているものと考えられる。
【0071】
シマジン分解能を有するCDB21などとともにコンソーシアを構成することができる共生菌としては、CSB1などのブラディリゾビウムジャポニカムや、CD7wなどのアルスロバクテリアの他、ロドコッカスロドクラウス、ステノトロフォモナスマルトフィリア、ノカルディオイデスジェンセニ、ノカルディオイデスフルヴス、ノカルディオイデスシンプレックス、シュードモナスエルギノーサなどが挙げられが、これら以外にも分解菌の生育補助やシマジン分解を促進する能力を有する細菌が挙げられる。
【0072】
上述のシマジン分解菌CD7を構成するCDB21、CSB1、CD7wは、改良した土壌還流法を用いて集積し単離したものであるが、これらに限定されるものではなく、CDB21は、ベータプロテオバクテリアに属する細菌であって、シマジン分解能を有する細菌、または、CDB21の菌学的特徴の一部又は全部を有する細菌とすることができ、CSB1は、ブラディリゾビウムジャポニカムに属する細菌であって、CSB1の菌学的特徴の一部又は全部を有する細菌とすることができ、さらに、CD7wは、アルスロバクターに属する細菌であって、シマジンの分解や共生菌の生育を補助する能力を有し、CD7wの菌学的特徴の一部又は全部を有する細菌とすることができる。
【0073】
シマジン分解菌2Mix: シマジン分解菌2Mixは、ベータプロテオバクテリアCDB21とブラディリゾビウムジャポニカムCSB1の2種複合系からなる細菌群であり、シマジン分解菌CD7から、CD7wを欠いたシマジン分解菌である。シマジン分解菌2Mixは、CD7wを欠くもののシマジン分解能を有し、シマジン分解菌としての機能を発揮する。
【0074】
複合分解菌集積保持担体の製造方法
【0075】
次に、上記の多孔質材と分解菌を用いた本発明の複合分解菌集積保持担体の製造方法について説明する。例えば図2に示した還流装置1の焼結ガラスフィルター2上に、マイクロハビタットととなる多孔質材3を充てんして滅菌処理を行っておく。この多孔質材3には、集積すべき分解菌のうち生育が遅い分解菌の資化物となる有機汚染物質のみを溶かして添加する。次に、集積すべき一の分解菌と、他の一の分解菌をこの多孔質材3に接種する。その後、集積すべき分解菌のうち生育が早い分解菌の資化物となる有機汚染物質のみを唯一の炭素源、窒素源とする無機塩培地4を適当期間還流する。還流は、多孔質材3が乾くことなく、また無機塩培地4が多孔質材3からあふれることがない程度に、多孔質材3中を定常量の無機塩培地4で循環させるものである。この還流液は1週間に1度程度の頻度で新しいものに交換することが好ましい。また、還流液の交換の際には、生育が遅い分解菌の資化物となる有機汚染物質も還流開始時と同じように多孔質材3に添加する。この有機汚染物質の添加と還流とを繰り返すことで目的の複合分解菌集積保持担体を得る。なお、複合分解菌集積保持担体の製造方法は、本装置を用いて行うものに限定されず、有機汚染物質の添加と還流を繰り返すことができる装置であれば良い。
【0076】
汚染環境の浄化方法
【0077】
有機汚染物質によって汚染された環境を複合分解菌集積保持担体を用いて浄化するには次のような利用法が挙げられる。
【0078】
汚染土壌における有機汚染物質の除去に関しては、本発明の複合分解菌集積保持担体を汚染土壌中に埋設して混和する利用法がある。土壌中に埋設しておくことで、既に含まれている有機汚染物質は雨水などとともに移動(拡散、移行)して複合分解菌集積保持担体に吸着されるとともに分解菌によって分解される。また、新たに散布等される有機汚染物質も複合分解菌集積保持担体に吸着されて同様に分解され、土壌中への残留や拡散が防止される。この方法によれば、土壌中の有機汚染物質が地下水に混入することも避けられ、地下水汚染の防止も図ることが可能となる。この技術の応用として、環境汚染物質等の存在する表層及び下層土壌への混入、ゴルフ場のグリーン面の下層土壌への混入、産業破棄物処理場の下層土壌への混入、工場等における有機廃液置き場の下層土壌への混入などにより、有機汚染物質の処理を行うことができる。
【0079】
また、本発明の複合分解菌集積保持担体を通気性のある筐体内に詰め込むなどして担体集積層を形成すれば簡単にバイオリアクターとして、有機汚染物質の分解除去装置とすることができ、該装置を、生活排水路、水田地帯の農業排水路、ゴルフ場の排水路などの水路の一部に設けることにより、水中に溶解、分散した有機汚染物質を分解除去し、汚染環境を浄化することができる。また、流出油汚染などの緊急の場合には本発明の複合分解菌集積保持担体を汚染地帯に直接散布して適用することも考えられる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0081】
1.分解菌集積保持担体の製造:
【0082】
PD3とCD7が担持された複合分解菌集積保持担体: マイクロハビタットとなる木質炭化素材A(広葉樹を500℃で通常焼成した木質炭化素材の5mm〜10mm砕片であり、pHが8、比表面積が100m /g、直径5μm〜20μmの細孔の容積が全細孔容積の10%以上、特許第2904432号明細書に記載がある)3を図2に示した還流装置1に約7.5g充てんし、超純水で洗浄後滅菌処理を行った。この多孔質材3に3000ppmPCNBアセトン溶液0.5mlを添加後、PCNB分解菌PD3と、シマジン分解菌CD7を、2コロニーずつ接種した。そして、5ppmシマジン無機塩培地(リン酸2アンモニウム,リン酸2カリウム,リン酸1ナトリウム,硫酸マグネシウムなどを含む培液)4300mlを25℃で還流した。この還流液は1週間に1度新たなものに交換し、還流液の交換の際には改めて3000ppmPCNBアセトン溶液0.5mlを多孔質材3に添加した。還流は3週間行った。このようにして木質炭化素材A3中にPCNB分解菌PD3とシマジン分解菌CD7が集積した本発明の複合分解菌集積保持担体を得た。
【0083】
PCNB分解菌PD3の資化材となるPCNBは、アセトンに溶解した全量を最初に多孔質材中に直接添加するのに対し、シマジン分解菌CD7の資化材となるシマジンは、低濃度(5ppm)で無機塩培地に含有させて還流させることで与えている。このように、PCNBもシマジンも多孔質材に与える量は同量であるが、その投与法を変えているのは、PCNB分解菌PD3と、シマジン分解菌CD7との生育速度が異なるためである。このように資化材の投与法を変えることによって、PCNB分解菌PD3もシマジン分解菌CD7も、ともに必要量が木質炭化素材Aに担持された複合分解菌集積保持担体が得られる。ところが、もし仮に、PCNBとシマジンを一度に多孔質材に投与すれば、生育速度の速いシマジン分解菌CD7が多孔質材を独占し、生育速度の遅いPCNB分解菌PD3の集積がほとんど見られなくなってしまう。シマジンを無機塩培地に溶かして還流させることによって、多孔質材への吸着の速度を制御して、シマジン分解菌CD7の集積を遅らせているのである。
【0084】
PD3と2Mixが担持された複合分解菌集積保持担体: PCNB分解菌PD3とシマジン分解菌2Mixとの複合微生物系が構築された複合分解菌集積保持担体の製造を行った。上記PD3とCD7の複合分解菌集積保持担体の製造において、CD7に代えて2Mixを用いる以外は同様にして、PD3と2Mixが担持された複合分解菌集積保持担体を得た。
【0085】
PD3、CD7、2Mixがそれぞれ単独で担持された分解菌集積保持担体: PCNB分解菌PD3、シマジン分解菌CD7、シマジン分解菌2Mixがそれぞれ単独で集積した分解菌集積保持担体(以下「単独区」という。)を製造した。単独区の製造も上記PD3とCD7の複合分解菌集積保持担体の製造と同様に行うが、多孔質材に接種するのは集積目的の分解菌のみを2コロニーとし、目的の分解菌の資化材のみを提供するようにした。即ち、還流前の3000ppmPCNBアセトン溶液の添加は行わず、PCNB分解菌PD3の製造の場合はPCNB5ppm無機塩培地300mlのみを還流し、シマジン分解菌CD7や2Mixの場合は5ppmシマジン無機塩培地300mlのみを還流して分解菌を集積させた。
【0086】
得られた分解菌集積保持担体に対して以下に示す確認、評価を行った。
【0087】
2.多孔質材中への分解菌の集積状況の確認〔図3〜図5〕:
【0088】
多孔質材中への分解菌の集積状況を確認するために、PCNBやシマジンの分解産物である塩素イオン濃度の測定を還流の開始から終了までの間で行った。還流日数に対する塩素イオン濃度を図3に示す。一方、PCNB濃度とシマジン濃度の測定も行った。PCNBの消失状況を図4に、シマジンの消失状況を図5にそれぞれ示す。PCNBとシマジンが完全に分解した場合の塩素イオン濃度は3.9ppmであることから、図4や図5で示すように、2週間〜3週間も還流を行えばPCNBやシマジンがほぼ完全に分解していることがわかる。細菌の成育環境や、他の細菌との競合の場合におけるニッチの獲得、共役代謝、共存の可能性などはその細菌固有の問題であるが、PCNB分解菌PD3やシマジン分解菌CD7、2Mixは、PCNBやシマジンを分解するのに十分な程度に多孔質材中に集積していることがわかる。これは、PCNBやシマジンの消失状況からも裏付けられる。
【0089】
3.多孔質材中へ集積した分解菌の菌数の評価〔図6、図7〕:
【0090】
複合分解菌集積保持担体に集積した分解菌の分解菌数の評価も行った。複合分解菌集積保持担体中に集積する分解菌数の評価は、還流操作終了後の多孔質材を2g取り出し、リン酸緩衝液18mlを加え、2分間超音波処理して木質炭化素材Aの表面に付着した分解菌を木質炭化素材Aから除去し、液から木質炭化素材Aを取り出して「10希釈液」を得る。一方、取り出した木質炭化素材Aをすりつぶし、粉砕物1.0gにリン酸緩衝液9mlを加え、30分間振とうした後、1分間超音波処理して「10希釈液」を得る。各々の10倍希釈液を適宜さらに希釈して、5段階の希釈液を得る。その各希釈液から1mlずつを取り出し、5ppmシマジン無機塩培地、5ppmPCNB無機塩培地の入った各試験管5本、合計10本にそれぞれ加える。そして、これらを25℃で2週間培養した後、塩素イオン濃度を測定した。0.5ppm以上のものを「+」とし、MPN法により、木質炭化素材Aの表面と内部の分解菌数を各々測定した。
【0091】
各種分解菌を担持させた各種複合分解菌集積保持担体の表面、内部におけるPCNB分解菌の菌数を図6に、シマジン分解菌の菌数を図7にそれぞれ示す。上記測定より、分解菌数レベルは、10CFU/g乾物〜10CFU/g乾物であることが分かる。また、各分解菌は、多孔質材表面(素材表面)よりも多孔質材内部(素材内部)の方がより高密度で集積していることがわかる。
【0092】
4.有機汚染物質に対する分解能の評価(1)〔図8〜図11〕:
【0093】
複合分解菌集積保持担体に汚染水を通して浄化する方法を想定し、各種有機汚染物質に対する複合分解菌集積保持担体の分解能を次のようにして評価した。まず、図2で示した還流装置1を用意した。そして、複合分解菌集積保持担体6.25g(乾物2.5g相当)を還流装置1に充填し、シマジン:5ppm、アトラジン:5ppm、PCP:2.5ppm、HCB:2.5ppmを含む無機塩培地150mlを還流液として複合分解菌集積保持担体に還流した。還流液は1週おきに交換して合計3週間還流し、還流液中の各種有機汚染物質濃度と塩素イオン濃度を測定することで複合分解菌集積保持担体の有機汚染物質分解能を評価した。
【0094】
還流日数と塩素イオン濃度との関係を図8に示す。また、還流日数に対するシマジン濃度、アトラジン濃度、PCP濃度の関係を図9〜図11にそれぞれ示す。
【0095】
PD3とCD7や2Mixの複合系でなる複合分解菌集積保持担体は、各種有機汚染物質の濃度の低下から、シマジン、アトラジン、PCPが分解されていることがわかる。なお、HCBについては還流装置1で用いた焼結ガラスフィルター2に吸着されてしまうため、分解能を十分に評価することができなかったが、少なくとも分解能を有していることはわかる。
【0096】
各種有機汚染物質の濃度の低下から、単独区の場合に比較して複合分解菌集積保持担体の場合の方が、多孔質材中の分解菌数は1/100〜1/10程度に減少することがわかる。しかしながら、各種有機汚染物質の分解結果から、有機汚染物質の分解能は十分である。特にPD3とCD7を担持させた複合分解菌集積保持担体(以下「PD3/CD7保持担体」ともいう)とPD3と2Mixを担持させた複合分解菌集積保持担体(以下「PD3/2Mix保持担体」ともいう)は、PCNBとシマジンを共に90%以上分解し、PCNBとシマジン以外の有機汚染物質であるアトラジンやPCPも90%以上分解する。
【0097】
なお、PD3/2Mix保持担体をPD3/CD7保持担体と比較すると、塩素イオンの生成量の差から、PD3/CD7保持担体の方が、PD3/2Mix保持担体よりも高密度で分解菌が集積していることがわかる。
【0098】
5.有機汚染物質に対する分解能の評価(2)〔表1、図12、図13〕:
【0099】
土壌中に複合分解菌集積保持担体を混和して汚染土壌を浄化する方法を想定し、各種有機汚染物質に対する複合分解菌集積保持担体の分解能を上記(1)とは別に評価した。シマジン(SI):5ppm、アトラジン(AT):5ppm、PCP:5ppm、HCB:5ppmを混和した畑土壌80g(土性:L、pH:6.2、T−C:0.9%、乾土59.6g相当)と複合分解菌集積保持担体15g(乾物6.0g相当)を混和し、カラム(5φ×7.5cm)に充てんした。25℃で4週間静置し、その間、1週間に1度15〜30ml散水し、浸透水を採取し、各薬剤濃度を測定した。また、4週間後(試験終了後)の土壌と複合分解菌集積保持担体中の各薬剤濃度と、複合分解菌集積保持担体の表面と内部の各分解菌数を上記の方法と同様にしてMPN法で測定した。結果を表1、図12、及び図13に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
表1からわかるように、PD3とCD7の複合分解菌集積保持担体、PD3と2Mixの複合分解菌集積保持担体はともに、シマジン、アトラジン、PCPに対して土壌中で75%程度の非常に高い分解除去能を示した。しかし、HCBに対しては50%程度に低下した。この原因は、HCBの水溶解度が0.005ppmで他の薬剤と比べ極端に低いため、水の移行・拡散に伴って多孔質材に吸着される量が35%程度低下するため(対照区参照)だと考えられる。また、図12、図13から、PCNB分解菌PD3もシマジン分解菌CD7も、土壌埋設後の菌数は、土壌に埋設する前に比べて殆ど変化がなく高密度で集積しており、実質的な菌数の減少は起こっていないことがわかる。また、多孔質材表面(素材表面)よりも多孔質材内部(素材内部)の方がより高密度で分解菌が集積していることがわかる。さらに、CD7wを含むCD7を集積させた多孔質材の方が、CD7wを含まない2Mixを集積させた多孔質材よりも、多孔質材内部における総菌数が多く、CD7wが多孔質材内部への集積を高めていることがわかる。
【0102】
6.多孔質材への分解菌の集積〔図14〕:
【0103】
土壌に混和する前と後とでの各種複合分解菌集積保持担体から、先に示した方法と同様にしてリン酸緩衝液での10希釈液とし、菌体および多孔質材を遠心により集めた。多孔質材表面試料はFastDNAkit (Qbiogene社)を用い、多孔質材内部試料(約0.3g)は125μLのSuperBlock (PIERCE社)を加えFastDNAkit for SOIL (Qbiogene社)を用いてDNAを抽出した。抽出DNAに対してMuyzer法によりPCR−DGGEを行い、多孔質材への分解菌の集積と変遷を検討・解析した。
【0104】
図14で示すように、PCR−DGGEにより多孔質材へのPCNB分解菌PD3を構成するPD653、シマジン分解菌CD7を構成するCDB21、CSB1、CD7wの集積が確認された。PD653の存在比は少ないがPCNBの分解には十分な量であると考えられる。CD7wは、多孔質材表面には殆ど存在せず、多孔質材内部に高度に集積されていることが明らかとなった。これより、細菌群の多孔質材への親和性を高めているものと考えられる。複合分解菌集積保持担体を土壌に混和する前後で集積した細菌群の構成に変化はなく、土壌細菌の多孔質材への付着、侵入は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】PCNB分解菌の培養日数と塩素イオン濃度の関係を示すグラフ図である。
【図2】還流装置の外観図である。
【図3】分解菌集積保持担体製造時における還流日数と塩素イオン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】分解菌集積保持担体製造時における還流日数とPCNB濃度との関係を示すグラフ図である。
【図5】分解菌集積保持担体製造時における還流日数とシマジン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図6】分解菌集積保持担体に集積したPCNB分解菌の菌数を示すグラフ図である。
【図7】分解菌集積保持担体に集積したシマジン分解菌の菌数を示すグラフ図である。
【図8】分解菌集積保持担体に有機汚染物質を還流した際の還流日数と塩素イオン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図9】分解菌集積保持担体に有機汚染物質を還流した際の還流日数とシマジン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図10】分解菌集積保持担体に有機汚染物質を還流した際の還流日数とアトラジン濃度との関係を示すグラフ図である。
【図11】分解菌集積保持担体に有機汚染物質を還流した際の還流日数とPCP濃度との関係を示すグラフ図である。
【図12】有機汚染物質分解試験前後のPCNB分解菌の菌数を示すグラフ図である。
【図13】有機汚染物質分解試験前後のシマジン分解菌の菌数を示すグラフ図である。
【図14】PCR−DGGEによる複合分解菌集積保持担体中の構成細菌を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
1 還流装置
2 焼結ガラスフィルター
3 多孔質材
4 無機塩培地(還流液)
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体。
【請求項2】
分解菌AがPCNB分解菌である請求項1記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項3】
分解菌AがノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む請求項1または請求項2記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項4】
分解菌Aが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群である請求項1〜請求項3何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項5】
分解菌Bがシマジン分解菌である請求項1記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項6】
分解菌BがベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む請求項1または請求項5記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項7】
分解菌Bが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群である請求項1、請求項5、または請求項6記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項8】
吸着定数が分解菌が生息する土壌の吸着定数よりも数十倍以上で且つ1万倍以下であるか、又は比表面積が50m /g以上で且つ600m /g以下である多孔質材を用いた請求項1〜請求項7何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項9】
分解菌の定着を可能とするサイズの細孔の細孔全体に対する容積比率が10%以上である多孔質材を用いた請求項1〜請求項8何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項10】
多孔質材が木質炭化素材である請求項1〜請求項9何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体。
【請求項11】
PCNBに対する分解能を有するノカルディオイデス属に属する細菌。
【請求項12】
FERMP−20557として寄託されたノカルディオイデスエスピーPD653である請求項11記載の細菌。
【請求項13】
トリアジン系農薬に対する分解能を有するベータプロテオバクテリアCDB21と共生し、トリアジン系農薬に対する分解能向上に寄与するアルスロバクター属に属する細菌。
【請求項14】
FERMP−20371として寄託されたアルスロバクターエスピーCD7wである請求項13記載の細菌。
【請求項15】
一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bを、多孔質材が積層した多孔質材層に接種する工程と、
多孔質材層に、前記一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Aと、前記他の一の有機汚染物質のみを炭素源及び窒素源とする無機塩培地Bとを添加する際に、前記多孔質材中での分解菌Aと分解菌Bの集積速度に応じて、前記各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する工程と、
を実行し、分解菌Aと分解菌Bとを前記多孔質材に集積保持させることを特徴とする複合分解菌集積保持担体の製造方法。
【請求項16】
分解菌Aと分解菌Bとの多孔質材中での集積速度に応じて、各無機塩培地中の各有機汚染物質濃度を調整して各無機塩培地を添加する前記工程において、
前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか一方を多孔質材層に一度に添加し、前記無機塩培地Aと前記無機塩培地Bの何れか他方を多孔質材層に還流して添加する工程とする請求項15記載の複合分解菌集積保持担体の製造方法。
【請求項17】
分解菌AがPCNB分解菌であり、分解菌Bがシマジン分解菌である請求項15または請求項16記載の複合分解菌集積保持担体の製造方法。
【請求項18】
分解菌AがノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含み、分解菌BがベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む請求項15〜請求項17何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体の製造方法。
【請求項19】
分解菌Aが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群であり、分解菌Bが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群である請求項15〜請求項18何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体の製造方法。
【請求項20】
多孔質材に少なくとも一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Aと、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bとを集積させた複合分解菌集積保持担体を用いることを特徴とする汚染環境の浄化方法。
【請求項21】
一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌AがPCNB分解菌であり、他の一の有機汚染物質を分解することが可能な分解菌Bがシマジン分解菌である請求項20記載の汚染環境の浄化方法。
【請求項22】
分解菌AがノカルディオイデスエスピーPD653の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含み、分解菌BがベータプロテオバクテリアCDB21の有する菌学的性質の一部又は全部の性質を有する分解菌を含む請求項20または請求項21記載の汚染環境の浄化方法。
【請求項23】
分解菌Aが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群であり、分解菌Bが1種以上の共生菌と組み合わされた菌群である請求項20〜請求項22何れか1項記載の汚染環境の浄化方法。
【請求項24】
請求項1〜請求項10何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体に対して処理対象水を通し、処理対象水中の有機汚染物質を分解除去する請求項20〜請求項23何れか1項記載の汚染環境の浄化方法。
【請求項25】
請求項1〜請求項10何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体を処理対象土壌中に混和し、処理対象土壌中の有機汚染物質を分解除去する請求項20〜請求項23何れか1項記載の汚染環境の浄化方法。
【請求項26】
請求項1〜請求項10何れか1項記載の複合分解菌集積保持担体を含有してなる汚染環境の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−14202(P2007−14202A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189986(P2005−189986)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年3月10日 日本農薬学会発行の「日本農薬学会 第30回記念大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【出願人】(598064451)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(000222875)東洋電化工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】