説明

複合圧電チップ及び複合圧電チップの製造方法

【課題】熱処理や耐湿試験後も複合圧電チップの圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップ及びその製造方法の提供。
【解決手段】圧電基板1と支持基板2とを貼り合わせた複合圧電基板3を細分化した複合圧電チップ4であって、該複合圧電チップ4は、前記複合圧電基板3を該複合圧電基板3の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れた後に細分化したものであり、該複合圧電チップ4の圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合化された圧電チップ(以下、複合圧電チップと表記)に関するものであり、特に弾性表面波デバイス等に用いられる複合圧電チップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の高周波通信において周波数調整・選択用の部品として、例えば圧電基板上に弾性表面波を励起するための櫛形電極が形成された弾性表面波(Surface Acoustic Wave、SAW)デバイスが用いられる。
【0003】
これに用いられる圧電基板材料は、電気信号から機械的振動への変換効率(以下、電気機械結合係数と記す)が大きいこと、また櫛形電極の電極間隔と弾性波の音速により決まるフィルタ等の中心周波数が温度により変動しないことが求められる(以下、周波数温度特性と記す)。
すなわち、大きな電気機械結合係数と小さな周波数温度係数を兼ね備えた圧電基板が有れば好ましい。こうした特性を実現する圧電基板の一例として、圧電基板と他の基板を接合した複合圧電基板がある。
【0004】
ここで、複合圧電基板を細分化して得られる複合圧電チップは、弾性表面波素子の周波数温度特性の改善効果を確保するため、圧電体の厚みを100μm以下、好ましくは30μm程度に薄くする必要がある。
そして、この複合圧電チップは、切断などの方法で複合圧電基板を細分化して得られるが、複合圧電チップの圧電体外周部(圧電体部側面)のカケは最小限に抑えるべきである。
なぜならば複合圧電チップは温度変化によりバイメタル効果により変形するが、複合圧電チップの圧電体外周部にカケがあると、動作温度−40℃〜85℃のヒートサイクルを繰り返したり、弾性表面波素子の実装時に260℃程度の加熱を繰り返すため前記複合圧電チップのカケ周辺に応力が集中し圧電体部にクラックが生じてしまうからである。
【0005】
このような問題に対し、以下特許文献1〜特許文献3には以下に説明する発明が開示されている。
【0006】
複合圧電基板を用いた弾性表面波素子の一例が特許文献1に開示されている。
特許文献1には、(a)一主面に一対の櫛形電極が形成され圧電性材料からなる第1の基板が、前記第1の基板とは異なる材料からなる第2の基板上に積層された積層基板を形成する工程と、(b)前記積層基板のうち前記櫛形電極の周囲の部分に溝を形成する工程と、(c)前記積層基板のうち前記溝の略中央部を前記溝よりも細い幅で切断する工程とを含む弾性表面波素子の製造方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には圧電性材料からなる第1の基板が前記第1の基板とは異なる材料からなる第2の基板上に積層された積層基板を備える弾性表面波素子であって、前記第1の基板の一主面上に形成された少なくとも1対の櫛形電極を備え、前記積層基板の前記第1の基板側の周縁部には、段差部または切り欠き部が形成され、前記段差部または前記切り欠き部が、前記第1の基板から前記第2の基板にわたって形成されていることを特徴とする弾性表面波素子が開示されている。
【0008】
特許文献1及び特許文献2では、厚さ数十ミクロンの圧電単結晶とガラス基板とを積層した積層構造を有する弾性表面波素子の取り扱いは困難であるという課題を解決している。例えば、上記弾性表面波素子をパッケージに実装する際、特に、弾性表面波素子をピックアップする際に、圧電単結晶層(圧電体部)にクラックや割れが発生する場合があり、ウェーハから個々の弾性表面波素子に分割する際に、ガラス基板に対応した切断ブレードで切断すると、その材料特性の違いにより、切断時に圧電単結晶部に割れや欠けが発生する、という問題を解決している。
【0009】
この特許文献1及び特許文献2では、圧電体結晶の研削(切断)には、例えば、厚さ0.2mm、砥粒の粒子径が8.5±0.7μm(累積高さ50%点での粒子径:JIS R6001、ISO8486−1、ISO8486−2)の切断ブレードを用いることができるとされている。
【0010】
また、前記ガラス基板を前記圧電単結晶と同様の切断ブレードで切断した場合には、切断ブレードの摩耗が激しく、また目詰まりを起こしてブレードが破損する場合があり、ガラス基板を切断する工程では、砥粒粒径の粗い、たとえば砥粒の粒子径が24.0±1.5μm程度(累積高さ50%点の粒子径)の切断ブレードで切断することが、切断ブレードを長寿命化することができることより好ましいという記載がある。
【0011】
次に、特許文献3ではニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウム(LT)の単結晶圧電基板と、前記圧電基板に接合され、前記圧電基板と異なる膨張係数の材質からなる支持基板と、前記圧電基板の面上に配置された弾性表面波を励振する櫛型電極とを備え、前記圧電基板の幅が前記支持基板の幅より狭くなる様に形成されていることを特徴とする弾性表面波装置が開示されている。
即ち、特許文献3では、タンタル酸リチウム(LT)基板の上面に、IDT電極からなる入力電極と出力とが配置されていて、このLT基板の幅は対応する支持基板の幅に比べ幅が狭い構造となっている。これは、最初、LTの分割に適した材質の回転刃でLTのみを分割し、次に、支持基板の分割に適した材質でLTを分割する回転刃より幅が狭い回転刃を用いることで実現することが出来ると記載されている。
【0012】
また、回転刃の幅の差を50μmとして、LTとSiN系のセラミックスとを接合した基板を上記の方法で分割した所、LTの欠けを10μm以下、セラミックスの欠けを10μm以下で分割することが出来、圧電基板の欠けを抑えることで、弾性表面波の送受信に寄与する圧電基板に損傷を与える事無く分割し、その周波数特性や温度特性を安定化出来ると共に、欠けによる信頼性低下を防止することが出来ることが開示されている。
また、前記特許文献3では圧電基板と支持基板とを、共にそれぞれの材質に適した異なる回転刃で分割することを例として挙げているが、圧電基板をレーザーやその他の方法で分割し、その後支持基板を回転刃で分割する方法や、その逆に、圧電基板を回転刃で分割し、その後、支持基板をレーザーやその他の方法で分割する方法においても同様に有効であるという記載がある。
【0013】
しかしながら、複合圧電チップにおいて、複合圧電チップの圧電体周辺部に段差部または切り欠き部を形成したり、前記圧電基板の幅が前記支持基板の幅より狭くなる様に形成したのみでは、複合圧電チップの信頼性が不十分であった。
【0014】
そこで、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−60846号公報
【特許文献2】特開2009−118504号公報
【特許文献3】特開2009−94661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、熱処理や耐湿試験後も複合圧電チップの圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明では、圧電基板と支持基板とを貼り合わせた複合圧電基板を細分化した複合圧電チップであって、該複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れた後に細分化したものであり、該複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下のものであることを特徴とする複合圧電チップを提供する。
【0018】
このように、複合圧電チップが、複合圧電基板を複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れた後に細分化したものであることによって、複合圧電基板の圧電体部の厚み方向全てを綺麗に切断(細分化)されたものとなり、複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下と圧電体部側面の平滑性が鏡面に近いレベルで滑らかとなっていることで、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップとなる。
【0019】
また、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下であることが好ましい。
【0020】
このような、圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下の複合圧電チップであれば、より確実に、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップとなる。
【0021】
また、前記複合圧電基板の切り込みは、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて切り込まれたものであることが好ましい。
【0022】
このように、複合圧電基板の切り込みが、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて入れられたものであると、より容易に複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下である複合圧電チップとすることができる。
【0023】
また、前記複合圧電基板は、表面に弾性表面波励振検出用の電極が形成されているものであることが好ましい。
【0024】
このように、前記複合圧電基板表面に弾性表面波励振検出用の電極が形成されている複合圧電基板から得られる複合圧電チップであると、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップとなる。
【0025】
また、前記複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深く切り込みを入れた後に細分化したものであることが好ましい。
【0026】
このように、前記複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深く切り込みを入れた後に細分化したものであれば、複合圧電基板の圧電体部の厚み方向全てを綺麗に切断(細分化)されたものとなり、また、複合圧電基板下部への切り込み量を制限することで、ブレード(ダイシングブレード)の消耗を抑えることができる。
【0027】
また、前記圧電基板は、厚さが100μm以下であることが好ましい。
【0028】
このように、圧電基板の厚さが100μm以下であると、加熱による反りが少なく割れのないものとすることができ、弾性表面波素子の周波数温度特性の改善効果を確実に確保することができる。
【0029】
また、前記圧電基板は、LiTaO、LiNbOのいずれかからなるものであることが好ましい。
【0030】
このように、圧電基板がLiTaO、LiNbOのいずれかからなるものであれば、電気機械結合係数が大きく、また、複合化された圧電基板の効果により、動作周波数の温度変動が抑制された安価な複合圧電基板を提供することができる。
【0031】
また、前記支持基板は、熱膨張率が前記圧電基板の熱膨張率より小さいものとすることができる。
【0032】
このように、支持基板を、熱膨張率が前記圧電基板の熱膨張率より小さいものとすることにより、温度変化に応じて圧電基板に応力が発生し、より確実に周波数温度特性を改善することができる。
【0033】
また、前記支持基板は、セラミックスであることが好ましい。
【0034】
このように、支持基板がセラミックスであると、圧電基板よりも熱膨張係数を小さくすることができ、また、セラミックスはパッケージ材料として汎用されている材料であることから、より安価で周波数温度特性が改善された高性能な複合圧電チップとすることができる。
【0035】
また、前記支持基板は、アルミナが主成分であることが好ましい。
【0036】
このように、支持基板としてアルミナが主成分であるものを用いると、熱処理した後の反りの増加量を更に小さくすることができ、また安価な複合圧電基板を得ることができる。
【0037】
また、前記支持基板は、絶縁体であることが好ましい。
【0038】
このように支持基板が絶縁体であることによって、弾性表面波素子としての電気的特性がより安定に保たれる複合圧電チップとなる。
【0039】
また、前記複合圧電基板は、前記圧電基板と前記支持基板とを接着剤を介して貼り合わせて複合化されたものとすることができる。
【0040】
このように、接着剤を介して貼り合わせたものであれば、比較的安価な複合圧電チップとなる。
【0041】
また、前記複合圧電基板は、前記圧電基板と前記支持基板とを無機薄膜層又はアモルファス層を介さず、室温において直接接合されて複合化されたものともすることができる。
【0042】
このように、無機薄膜層又はアモルファス層を介さずに圧電基板と支持基板とを接合したものであっても、室温において直接接合された複合圧電基板であると、反りの発生を低減することができる。
【0043】
また、前記支持基板は抵抗率が1,000Ω・cm以上のP型のシリコン基板であることが好ましい。
【0044】
このように、P型のシリコン基板ではCZ法とFZ法を組み合わせることにより比較的安価に高抵抗のシリコン基板を得られる為好ましい。また、このように支持基板が高抵抗なシリコン基板であれば、支持基板の電気的絶縁性を向上させるものとなり、好ましい。
【0045】
また、本発明では、圧電基板と支持基板を貼り合わせた複合圧電基板を細分化する複合圧電チップの製造方法であって、少なくとも、前記複合圧電基板を、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することによって、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が0.15μm以下である複合圧電チップを得ることを特徴とする複合圧電チップの製造方法を提供する。
【0046】
このように、少なくとも、前記複合圧電基板を、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することによって、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が0.15μm以下である複合圧電チップを得る複合圧電チップの製造方法を用いれば、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップを得ることができる。
【0047】
また、前記複合圧電基板の細分化を、前記複合圧電基板を前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深い切り込みを入れるために用いるブレードよりも研磨微粉の粒度が粗いブレードを用いて行うことが好ましい。
【0048】
このように、複合圧電基板の細分化を、複合圧電基板を前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深い切り込みを入れるために用いるブレードよりも研磨微粉の粒度が粗いブレードを用いて行うことによって、ブレードを長寿命化することができ、生産性良く低コストに複合圧電チップを得ることができる。
【0049】
また、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下である複合圧電チップを得ることが好ましい。
【0050】
このように、複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下である複合圧電チップを得ると、より確実に、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップを得ることができる。
【0051】
また、前記複合圧電基板の表面に、弾性表面波励振検出用の電極を形成することが好ましい。
【0052】
このように、複合圧電基板の表面に、弾性表面波励振検出用の電極を形成し、該複合圧電基板を細分化することで、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップを得ることができる。
【0053】
また、前記圧電体部の切り込みは、前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深い切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することが好ましい。
【0054】
このように、複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深く切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化して複合圧電チップを得ることによって、複合圧電基板の圧電体部を厚み方向全てを綺麗に切断(細分化)することができ、また、複合圧電基板下部への切り込み量を制限することで、ブレードの消耗を抑えることができる。
【発明の効果】
【0055】
以上説明したように、本発明によれば、熱処理や耐湿試験後も複合圧電チップの圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の複合圧電チップ及びその製造方法の一例を示した工程フロー図である。
【図2】実施例1〜6における複合圧電チップの加熱処理前後の共振特性(S11)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた、また、安価な複合圧電チップ及びその製造方法が望まれていた。
【0058】
従来、複合圧電チップにおいて、動作温度−40℃〜85℃のヒートサイクルを繰り返したり、弾性表面波素子の実装時に260℃程度の加熱を繰り返すため前記複合圧電チップのカケ周辺に応力が集中し圧電体部にクラックが生じてしまうという問題に対し、上記特許文献1〜3のように数々の発明がなされてきた。
しかしながら、上記発明のように、複合圧電チップにおいて、複合圧電チップの圧電体周辺部に段差部または切り欠き部を形成したり、前記圧電基板の幅が前記支持基板の幅より狭くなる様に形成したのみでは、複合圧電チップの信頼性が不十分であった。
【0059】
そこで本発明者らは、圧電基板と支持基板とを貼り合わせた複合圧電基板を細分化した複合圧電チップであって、該複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れた後に細分化したものであり、該複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下である複合圧電チップであると、該複合圧電チップよりなる弾性表面波素子が熱処理や耐湿試験後も圧電体にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性も安定に保たれる信頼性に優れたものとなることを見出した。
【0060】
以下、本発明に係る複合圧電チップについて図1を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る複合圧電チップ4は、圧電基板1と支持基板2とを貼り合わせた複合圧電基板3を細分化してチップ形状に加工したものである。そして、本発明の複合圧電チップ4は、複合圧電基板3を複合圧電基板3の圧電体部5の厚みよりも深く切り込み6を入れた後に細分化したものであり、該複合圧電チップ4の圧電体部の側面5’の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下の複合圧電チップ4である。
【0061】
このような複合圧電チップ4であれば、圧電体部の厚み方向全てを綺麗に切断(細分化)されたものとなり、複合圧電チップ4の圧電体部の側面5’の平滑性が鏡面に近いレベルで滑らかとなっていることで、熱処理や耐湿試験後も圧電体部にワレ・カケや剥離が生じず、弾性表面波素子としての電気的特性が安定に保たれる信頼性に優れた複合圧電チップ4となる。
【0062】
尚、複合圧電チップ4の圧電体部の側面5’の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下である複合圧電チップ4であると更に好ましく、より確実にワレ・カケや剥離の発生を抑制することができる。
【0063】
また、本発明における複合圧電チップ4の圧電体部の側面5’の表面粗さは、レーザ顕微鏡(KEYENCE社製VK8700)にて評価し、レーザ顕微鏡による表面粗さ(Ra)の定義はJIS B 0601−2001(ISO4287−1997準拠)にて倍率1000倍、高さ方向は0.01μmステップでデータを蓄積して算出したものである。
【0064】
また、複合圧電基板の切り込み6は、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて形成することができる。そして、この切り込み6は、複合圧電基板3の圧電体部5の厚みよりも5μm〜20μm深く切り込み、その後細分化することによって、複合圧電チップ4は、圧電体部の厚み方向全てを綺麗に切断(細分化)されたものとなり、また、複合圧電基板下部への切り込み量を制限することで、ブレードの消耗を抑えることができる。
【0065】
本発明の複合圧電チップ4を得るために用いる圧電基板1としては、LiTaO、LiNbOのいずれかからなるものを用いることができる。圧電基板1がLiTaO、LiNbOのいずれかであれば、電気機械結合係数が大きく、また、複合化された圧電基板の効果により、動作周波数の温度変動が抑制された安価な複合圧電基板を提供することができる。
また、圧電基板1の厚さを100μm以下とすることで、加熱による反りが少なく割れのないものとすることができ、より確実に弾性表面波素子の周波数温度特性を確保することができる。圧電基板1の厚さをこの範囲の値とするためには、例えば、上記複合圧電基板3を形成後に、圧電基板を研削、ラップ、ポリッシュ(研磨)加工などをすれば良い。
【0066】
また、本発明の複合圧電チップ4を得るために用いる支持基板2としては、熱膨張率が圧電基板1の熱膨張率より小さいものを用いることができる。支持基板2を、熱膨張率が圧電基板1の熱膨張率より小さいものとすることにより、温度変化に応じて圧電基板に応力が発生し、周波数温度特性を改善することができる。
また、支持基板2を、セラミックスとすることができる。支持基板2がセラミックスであると、圧電基板1よりも熱膨張係数を小さくすることができ、また、セラミックスはパッケージ材料として汎用されている材料であることから、より安価で周波数温度特性が改善された高性能な複合圧電チップとすることができる。
【0067】
また、支持基板2としては、アルミナが主成分のもの、絶縁体を用いることができる。このように、支持基板としてアルミナが主成分であるものを用いると、熱処理した後の反りの増加量を更に小さくすることができ、また安価な複合圧電基板を得ることができる。また、支持基板2が絶縁体であることによって、弾性表面波素子としての電気的特性がより安定に保たれる複合圧電チップとなる。
【0068】
また、複合圧電基板3は、上記圧電基板1を上記支持基板2と接着剤を介して貼り合せて複合化したものとすることができる。このように接着剤を介して貼り合わせたものであれば、比較的安価な複合圧電チップとすることができる。このような接着剤を介した複合圧電基板は、例えば、圧電基板1と支持基板2の一方又は両方に接着剤を塗布し、真空下で貼り合わせ強固に接合することにより作製することができる。このとき、接着面に異物が混入しないように貼り合わせ前に各基板の表面を洗浄することが好ましく、また、表面をアンモニア−過酸化水素水溶液等で親水化処理をしたり、またはプラズマ処理をしたり基板を100℃に加熱し波長200nm以下の短波UV光及び高濃度オゾンにより前処理することにより接着力を高めても良い。
【0069】
そして、接着剤としては、例えばエポキシメタクリレートを主成分とする光硬化接着剤であれば、スピンコーティングやその他の塗布方法で容易に均一な接着層とできる。このように接着層が均一とできれば、複合圧電チップ4は均一に接着された高品質なものとなる。そして、光硬化性であるため、室温で光照射により圧電基板1と支持基板2とを強固に貼り合わせ接合することができ、高温にしなくてもよいので、貼り合わせ時に圧電基板1が高温で変形せず室温でフラットな形状を保つために好ましい。
【0070】
また、前記複合圧電基板3は、圧電基板1と支持基板2とを無機薄膜層又はアモルファス層を介さず、室温において直接接合されて複合化されたものとすることができる。このように、室温において直接接合されて複合化された複合圧電基板であると、無機薄膜層又はアモルファス層を介さずに圧電基板と支持基板と接合したものであっても、反りの発生を低減することができる。このとき、特に、接着面に異物が混入しないように貼り合わせ前に各基板の表面を洗浄することが好ましく、また、表面をアンモニア−過酸化水素水溶液等で親水化処理をしたり、またはプラズマ処理をしたり基板を100℃に加熱し波長200nm以下の短波UV光及び高濃度オゾンにより前処理することにより接着力を高めることができる。
【0071】
また、支持基板2は抵抗率が1,000Ω・cm以上のP型のシリコン基板とすることができる。このように、P型のシリコン基板は、CZ法とFZ法を組み合わせることにより比較的安価に高抵抗のシリコン基板を得られるので好ましい。また、このように支持基板が高抵抗なシリコン基板であれば、支持基板の電気的絶縁性を向上させることができ、無機薄膜層又はアモルファス層を介さなくても、弾性表面波素子としての電気的特性をより安定に保つことができる。
【0072】
また、本発明に係る複合圧電チップの製造方法を図1を参照して説明する。
本発明の複合圧電チップ4の製造方法は、まず圧電基板1と支持基板2とを貼り合わせ、複合圧電基板3を得る(図1(A))。尚、用いる圧電基板1や支持基板2、貼り合わせ方法等は上記と同様に行うことができる。
そして、複合圧電基板3を、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて、複合圧電基板3の圧電体部5の厚みよりも深く切り込みを入れ(図1(B))、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することによって(図1(C))、複合圧電チップ4の圧電体部の側面5’の面粗さ(Ra)が0.15μm以下である複合圧電チップを得ることができる。
尚、圧電体部の側面5’の面粗さ(Ra)を0.1μm以下とするためには、更に研磨微粉の粒度の小さいブレードを用いて切り込み6を入れるようにすればよい。
【0073】
尚、複合圧電基板3の細分化を、複合圧電基板3を前記複合圧電基板の圧電体部5の厚みよりも深い切り込み6を入れるために用いるブレードよりも研磨微粉の粒度が粗いブレードを用いて行うことによって、ブレードを長寿命化することができ、細分化を高速化できるので、生産性良く低コストに複合圧電チップ4を得ることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1〜5)
支持基板として、直径4インチ(100mm)で厚さが215μm、貼り合わせ面とその反対側の面のそれぞれの表面粗さRaが共に0.3μm、ヤング率が340GPa、抵抗率が1015Ω・cmであるアルミナ基板を用意した。
また、圧電基板として、導電率が2×10−11[Ω−1・cm−1]であり、直径4インチ(100mm)の36°回転Yカットタンタル酸リチウム(LiTaO、以後LTとも表記)基板を用意して、この圧電基板の厚さが160μmとなるよう両面粗研磨により表裏面の粗さが0.13μmとなるよう仕上げた。
【0076】
そして、前記アルミナ基板にエポキシを主成分とする紫外線硬化接着剤をスピンコートによって貼り合わせ面上に均一に塗布した。
また、前記LiTaO基板の貼り合わせ面を洗浄し、前述の接着剤を同様に塗布し、アルミナ基板の接着剤塗布面とLiTaO基板の接着剤塗布面を貼り合わせた。
【0077】
次に、この貼り合わせた複合圧電基板に、照度50mW/cmの紫外線を5分間照射し、接着剤を硬化させた。このとき貼り合わせた基板面内で接着剤の層の厚さは一様に5μmだった。
そして、この複合圧電基板を面取り加工した後、この貼り合わせ基板を120℃の温度で2時間キュア処理をおこなった。さらにポリッシュによりLiTaO基板の厚さが30μmになるようにした。
【0078】
この複合圧電基板の反りを周囲温度23℃の雰囲気下にて測定したところ、30μmであった。
【0079】
次に前記の複合圧電基板を表面のLiTaO基板側から歯厚0.15mmの表1に示す種々の砥粒の粒子径のダイシングブレードを用いて40μmの深さだけ1mm角に切り込んだ。
続いて、歯厚0.13mmであり、砥粒の粒子径が48.0±3μm(累積高さ50%点での粒子径:JIS R6001)のダイシングブレードにて表面のLiTaO基板側から320μmの深さだけ1mm角に切断して細分化し、1mm角の複合圧電チップを得た。
複合圧電チップの形状を観察すると、基板側の周縁部には、明確な段差部または切り欠き部はなく、ほぼストレートに切断されていた。
【0080】
作製した1mm角の複合圧電チップの、圧電体部端面のチッピング及び圧電体部側面の表面粗さをレーザ顕微鏡(KEYENCE社製VK8700)にて評価した。
その後、種々の細分化された複合圧電チップを260℃のリフローを3回通した後、−40℃及び125℃を交互に100サイクルかけ、前記の複合圧電チップを顕微鏡によりクラックの発生有無を観察した。試料数は各切断方法毎500チップである。観察結果を表1に示す。また、表1に示すチップを更に85℃/85%RH(相対湿度)・1000時間、125℃・1000時間、121℃/100%RH・100時間の環境にさらしてもLTにクラックや剥離は生じなかった。
【0081】
また、前記複合圧電基板に弾性表面波共振子を作成して、上記と同様に細分化した複合圧電チップについて、前記加熱処理後の電気的特性をマイクロ波プローバーを介してネットワークアナライザにて共振特性(S11)を測定した結果を図2に示す。尚、前記加熱処理前の前記複合圧電チップの弾性表面波共振子特性も図2と同様であった。
また、本発明の複合圧電チップよりなる共振子の反共振周波数の温度依存性を25℃と85℃にて測定したところ周波数温度係数は−28ppm/℃であった。
【0082】
【表1】

【0083】
(実施例6)
支持基板として、直径4インチ(100mm)で厚さが210μmであり抵抗率が1000Ω・cmのP型シリコン基板を用意した。
また、圧電基板として、導電率が2×10−11[Ω−1・cm−1]であり、直径4インチ(100mm)の36°回転Yカットタンタル酸リチウム(LiTaO、以後LTとも表記)基板を用意して、この圧電基板の厚さが160μmとなるよう両面研磨により厚みを調整した。
【0084】
そして、清浄に洗浄した前記P型シリコン基板と前記LiTaO基板を間隔を5mmほど離して減圧プラズマ下に対向させて配置し、前記プラズマ処理後減圧のまま室温にて直接接合し、その後大気圧に戻し、複合圧電基板の母材を得た。
そして、この複合圧電基板を面取り加工した。さらにポリッシュによりLiTaO基板の厚さが30μmになるようにした。この貼り合わせ基板を200℃の温度で2時間熱処理をおこなった。この複合圧電基板の反りを周囲温度23℃の雰囲気下にて測定したところ、30μmであった。
【0085】
この複合圧電基板の接合面を透過電子顕微鏡で観測したところ、無機薄膜層およびアモルファス層は観測されなかった。
次に前記の複合圧電基板を表面のLiTaO基板側から歯厚0.15mmであり研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が3.0±0.4μmであるダイシングブレードにて1mm/sのスピードで40μmの深さだけ1mm角に切り込んだ。続いて、歯厚0.13mmであり研磨微粉の粒度が累積高さ50%点での粒子径48.0±3μmのダイシングブレードにて前記の切り込み部と同じ箇所を表面のLiTaO基板側から320μmの深さだけ1mm角に切断して細分化し、1mm角の複合圧電チップを得た。
【0086】
得られた複合圧電チップの形状を観察すると基板側の周縁部には、明確な段差部または切り欠き部はなく、ほぼストレートに切断されていた。
また、得られた複合圧電チップの圧電体部端面のチッピングは、最大で4μmであった。また、複合圧電チップの前記圧電体部側面の表面粗さをレーザ顕微鏡(KEYENCE社製VK8700)にて評価したところ、Raは0.03μmとほぼ鏡面に近かった。
その後、細分化により得られた複合圧電チップを260℃のリフローを3回通した後、−40℃及び125℃を交互に100サイクルかけ、前記の複合圧電チップを顕微鏡によりクラックの発生有無を観察した。試料数は500チップである。その結果、LTにクラックや剥離は生じなかった。
【0087】
また、前記複合圧電チップを更に85℃/85%RH・1000時間、125℃・1000時間、121℃/100%RH・100時間の環境にさらしてもLTにクラックや剥離は生じなかった。
また、前記の複合圧電基板に弾性表面波共振子を作成して、上記と同様に切断した複合圧電チップの前記加熱処理前後の電気的特性をマイクロ波プローバーを介してネットワークアナライザにて共振特性を測定した結果は図2と同様であった。
また、本発明の複合圧電チップよりなる共振子の反共振周波数の温度依存性を25℃と85℃にて測定したところ周波数温度係数は−25ppm/℃であった。
【0088】
(比較例1〜4)
前記の実施例1〜5と同様にして、作成した複合圧電基板をLiTaO基板側から歯厚0.15mmであり表2に示す種々の砥粒の粒子径のダイシングブレードにて40μmの深さだけ1mm角に切り込みを入れた。あとは実施例と同様の手順で細分化して1mm角の複合圧電チップを作製し、その後、種々の複合圧電チップを260℃のリフローを3回通した後、−40℃及び125℃を交互に100サイクルかけ、前記の複合圧電チップを顕微鏡によりクラックの発生有無を観察した。試料数は各切断方法毎500チップである。観察結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

その結果、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μmより大きい複合圧電チップは、熱処理後に多数のチップのLTにワレが生じた。
【0090】
(比較例5)
実施例6と同様にして複合化されたP型シリコンとLiTaO基板を得た。
次に前記の複合圧電基板を表面のLiTaO基板側から歯厚0.15mmであり研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が14.0±1.0μmであるダイシングブレードにて5mm/sのスピードで40μmの深さだけ1mm角に切り込みを入れた。
続いて、歯厚0.13mmであり研磨微粉の粒度が累積高さ50%点での粒子径48.0±3μmのダイシングブレードにて、前記切り込み部と同じ箇所を表面のLiTaO基板側から320μmの深さだけ1mm角に切断して細分化し、1mm角の複合圧電チップを得た。
チップの形状を観察すると基板側の周縁部には、明確な段差部または切り欠き部はなく、ほぼストレートに切断されていた。前記複合圧電チップの前記圧電体端面のチッピングは、最大で20μmであった。
【0091】
また、複合圧電チップの前記圧電体部側面の表面粗さをレーザ顕微鏡(KEYENCE社製VK8700)にて評価したところ、Raは0.65μmであった。その後、切断により得られた複合圧電チップを260℃のリフローを3回通した後、−40℃及び125℃を交互に100サイクルかけ、前記の複合圧電チップについて顕微鏡によりクラックの発生有無を観察した。試料数は500チップである。その結果、13%の前記複合圧電チップのLTにクラックが生じた。
【0092】
(比較例6)
実施例1と同様にして複合化されたアルミナとLiTaOの接合基板を得た。次にこの複合圧電基板を表面のLiTaO基板側から歯厚0.15mmであり、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が3.0±0.4μmであるダイシングブレードにて1mm/sのスピードで表面のLiTaO基板側から20μmの深さだけ1mm角に切り込みを入れた。
続いて、歯厚0.10mmであり研磨微粉の粒度が累積高さ50%点での粒子径48.0±3μmのダイシングブレードにて前記切り込み部と同じ箇所を表面のLiTaO基板側から320μmの深さだけ1mm角に切断し、1mm角の複合圧電チップを得た。前記チップの形状を観察すると基板側の周縁部には、LiTaOの段差部が形成されていた。
【0093】
前記複合圧電チップの前記LiTaOの上面端部のチッピングは、最大で5μmであった。しかし、LiTaOの段差部の下段のチッピングは最大約100μm程度あった。
また、前記複合圧電チップの前記LiTaOの段差部側面の表面粗さをレーザ顕微鏡(KEYENCE社製VK8700)にて評価したところ、Raは0.04μmであった。
その後、前記切断方法により得られた複合圧電チップを260℃のリフローを3回通した後、−40℃及び125℃を交互に100サイクルかけ、前記の複合圧電チップを顕微鏡によりクラックの発生有無を観察した。試料数は500チップである。その結果、19%の前記複合圧電チップのLTにクラックが生じた。
【0094】
実施例1〜5に比べ、上記比較例6は圧電体部の側面に段差部を有しており、圧電体チップの圧電体部の側面全面の面粗さが0.15μm以下でなければ圧電体部にクラックが生じてしまうことが判った。一方、実施例1〜5のように、圧電体チップの圧電体部の側面全面の面粗さが、0.15μm以下のものであれば、クラックが生じないことが判った。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0096】
1…圧電基板、 2…支持基板、 3…複合圧電基板、 4…複合圧電チップ、 5…複合圧電基板の圧電体部、 5’…複合圧電チップの圧電体部の側面、 6…切り込み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と支持基板とを貼り合わせた複合圧電基板を細分化した複合圧電チップであって、該複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れた後に細分化したものであり、該複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.15μm以下のものであることを特徴とする複合圧電チップ。
【請求項2】
前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合圧電チップ。
【請求項3】
前記複合圧電基板の切り込みは、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて切り込まれたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合圧電チップ。
【請求項4】
前記複合圧電基板は、表面に弾性表面波励振検出用の電極が形成されているものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の複合圧電チップ。
【請求項5】
前記複合圧電チップは、前記複合圧電基板を該複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深く切り込みを入れた後に細分化したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の複合圧電チップ。
【請求項6】
前記圧電基板は、厚さが100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項7】
前記圧電基板は、LiTaO、LiNbOのいずれかからなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項8】
前記支持基板は、熱膨張率が前記圧電基板の熱膨張率より小さいものであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項9】
前記支持基板は、セラミックスであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項10】
前記支持基板は、アルミナが主成分であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項11】
前記支持基板は、絶縁体であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の複合圧電チップ。
【請求項12】
前記複合圧電基板は、前記圧電基板と前記支持基板とを接着剤を介して貼り合わせて複合化されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の複合圧電チップ。
【請求項13】
前記複合圧電基板は、前記圧電基板と前記支持基板とを無機薄膜層又はアモルファス層を介さず、室温において直接接合されて複合化されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の複合圧電チップ。
【請求項14】
前記支持基板は抵抗率が1,000Ω・cm以上のP型のシリコン基板であることを特徴とする請求項13に記載の複合圧電チップ。
【請求項15】
圧電基板と支持基板を貼り合わせた複合圧電基板を細分化する複合圧電チップの製造方法であって、少なくとも、前記複合圧電基板を、研磨微粉の粒度がJIS R6001で規定される累積高さ50%点での粒子径が4.5μm以下であるブレードを用いて前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深く切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することによって、前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が0.15μm以下である複合圧電チップを得ることを特徴とする複合圧電チップの製造方法。
【請求項16】
前記複合圧電基板の細分化を、前記複合圧電基板を前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも深い切り込みを入れるために用いるブレードよりも研磨微粉の粒度が粗いブレードを用いて行うことを特徴とする請求項15に記載の複合圧電チップの製造方法。
【請求項17】
前記複合圧電チップの圧電体部側面の面粗さ(Ra)が、0.10μm以下である複合圧電チップを得ることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の複合圧電チップの製造方法。
【請求項18】
前記複合圧電基板の表面に、弾性表面波励振検出用の電極を形成することを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか一項に記載の複合圧電チップの製造方法。
【請求項19】
前記圧電体部の切り込みは、前記複合圧電基板の圧電体部の厚みよりも5μm〜20μm深い切り込みを入れ、その後該切り込みを入れた複合圧電基板を細分化することを特徴とする請求項15乃至請求項18のいずれか一項に記載の複合圧電チップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−124628(P2011−124628A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278375(P2009−278375)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】