説明

複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板

【課題】高周波数帯域の信号の通過特性が良い複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板を提供する。
【解決手段】本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、信号入力用ランド10と、AM/FM帯域通過フィルタ20と、高周波帯域通過フィルタ30と、高周波帯域用配線40と、AM/FM帯域用配線50とからなる。AM/FM帯域通過フィルタ20は、複合信号のうちのAM/FM帯域の信号を送る。高周波帯域通過フィルタ30は、複合信号のうちのAM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号を送る。高周波帯域用配線40は、信号入力用ランド10から高周波帯域通過フィルタ30まで延在する。AM/FM帯域用配線50は、高周波帯域通過フィルタ30から見たAM/FM帯域通過フィルタ20までの配線が、高周波帯域用配線と同等又は短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板に関し、特に、異なる周波数帯域の回路を基板に配置する複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術の発展により、多くの情報通信機器が車両に搭載される事例が増加している。例えば、AM/FMラジオや、TV放送、GPS等、多岐にわたる機器が車両に搭載されている。これらは、用いられる周波数帯が違うため、それぞれ個別のアンテナや電気回路が必要となる。しかしながら、多数のアンテナをそれぞれ配置すると、美観が損なわれたり、配置が複雑になったりするという問題がある。このため、種々の複合型アンテナの開発が行われ、実用化が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラジオ、テレビ、GPS等のアンテナをフィルムアンテナとして一体化し、エアスポイラに収めた複合型のアンテナ装置及びアンテナシステムが開示されている。特許文献1に開示のアンテナシステムは、それぞれのアンテナ素子の出力を混合する混波回路を有するアンプユニットや、アンプユニットの出力を分波する分波ユニット等を備えている。
【0004】
また、例えば特許文献2には、衛星ラジオ、AM/FMが一体化されたアンテナ装置が開示されている。特許文献2に開示のアンテナ装置は、衛星ラジオ、AM/FMの各アンテナユニットを並設させ、各回路基板を別体として積載している。これにより、1枚の回路基板上に周波数帯の違う信号の増幅回路を形成した場合の問題点である、AM/FM側のノイズが衛星ラジオ側、即ち、高周波帯域側に流れ出て高周波帯域の特性が悪化するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−102826号公報
【特許文献2】特開2008−78709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアンテナシステムは、各周波数帯に対応する電気回路について、高周波帯域の回路に対する低周波帯域の回路の影響等は考慮されていなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載のアンテナ装置は、各回路基板をそれぞれ別体として積載しているため、装置が高さ方向に大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、回路基板上に低周波帯域の回路と高周波帯域の回路が設けられても、高周波数帯域の信号の通過特性が良い複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、複合型ルーフマウントアンテナからの複合信号が入力される信号入力用ランドと、複合信号のうちのAM/FM帯域の信号を送るための、AM/FM帯域通過フィルタと、複合信号のうちのAM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号を送るための、高周波帯域通過フィルタと、信号入力用ランドから高周波帯域通過フィルタまで延在する高周波帯域用配線と、信号入力用ランドからAM/FM帯域通過フィルタまで延在するAM/FM帯域用配線であって、該AM/FM帯域用配線は、高周波帯域通過フィルタから見たAM/FM帯域通過フィルタまでの配線が、高周波帯域通過フィルタの通過特性に影響を与えない程度に、高周波帯域用配線と同等又はより短い、AM/FM帯域用配線と、を具備するものである。
【0010】
ここで、AM/FM帯域用配線は、高周波帯域用配線から分岐される配線であっても良い。
【0011】
さらに、複数の脚部を有する信号入力ピンを具備し、信号入力用ランドには、信号入力ピンの複数の脚部のうちの1本のみがはんだ付けされれば良い。
【0012】
また、高周波帯域通過フィルタの、AM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号は、GSM帯域(850/900/1800/1900MHz帯域)であれば良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板には、回路基板上に低周波帯域の回路と高周波帯域の回路が設けられても、高周波数帯域の信号の通過特性が良いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の基板レイアウトを説明するための概略上面図である。
【図2】図2は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の他の基板レイアウトを説明するための概略上面図である。
【図3】図3は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の信号入力用ランドと信号入力ピンを説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の基板レイアウトを説明するための概略上面図である。図示の通り、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、信号入力用ランド10と、AM/FM帯域通過フィルタ20と、高周波帯域通過フィルタ30と、高周波帯域用配線40と、AM/FM帯域用配線50とから主に構成されるものである。なお、これらの構成要素がエポキシ樹脂等の基板1上に配置されている。
【0016】
信号入力用ランド10には、複合型ルーフマウントアンテナ11からの複合信号が入力されている。即ち、信号入力用ランド10には、回路基板外に設けられた複合型ルーフマウントアンテナ11がケーブル等を介して接続される。したがって、複合型ルーフマウントアンテナ11からの高周波帯域とAM/FM帯域の複合信号が、信号入力用ランド10に入力される。信号入力用ランド10からは、後述する高周波帯域用配線40やAM/FM帯域用配線50が延在している。
【0017】
AM/FM帯域通過フィルタ20は、複合信号のうちのAM/FM帯域の信号を送るためのものである。即ち、AM/FM帯域通過フィルタ20は、複合信号から高周波帯域の信号を除去し、AM/FM帯域の信号を通過させるものである。これは、例えば、コンデンサと抵抗からなるローパスフィルタである。AM/FM帯域通過フィルタ20はAM/FM回路21に接続されている。即ち、AM/FM帯域通過フィルタ20を通ったAM/FM信号は、AM/FM回路21に入力される。そして、AM/FM回路21の出力が、例えば車載されているオーディオユニット(図示せず)等に出力される。なお、図示例では、AM/FM帯域通過フィルタ20やAM/FM回路21はブロックで表したが、これらは実際には抵抗やコンデンサ、アンプ回路等の部品で適宜構成されるものである。
【0018】
高周波帯域通過フィルタ30は、複合信号のうちのAM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号を送るためのものである。即ち、高周波帯域通過フィルタ30は、複合信号から低周波帯域であるAM/FM帯域の信号を除去し、AM/FM帯域よりも高い高周波帯域の信号を通過させるものである。これは、例えばコンデンサと抵抗からなるハイパスフィルタである。ここで、AM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号は、例えばGSM帯域(850/900/1800/1900MHz帯域)である。高周波帯域通過フィルタ30は、高周波回路31に接続されている。即ち、高周波帯域通過フィルタ30を通った高周波信号は、高周波回路31に入力される。そして、高周波回路31の出力が、例えば車載されている携帯電話ユニット(図示せず)等に出力される。なお、図示例では、高周波帯域通過フィルタ30や高周波回路31はブロックで表したが、これらは実際には抵抗やコンデンサ、アンプ回路等の部品で適宜構成されるものである。
【0019】
そして、高周波帯域用配線40は、信号入力用ランド10から高周波帯域通過フィルタ30まで延在している。したがって、高周波帯域用配線40には信号入力用ランド10からの複合信号が通過し、複合信号のうち高周波帯域の信号のみが高周波帯域通過フィルタ30により取り出される。
【0020】
また、AM/FM帯域用配線50は、信号入力用ランド10からAM/FM帯域通過フィルタ20まで延在している。AM/FM帯域用配線50にも、信号入力用ランド10からの複合信号が通過し、複合信号のうちAM/FM帯域の信号のみがAM/FM帯域通過フィルタ20により取り出される。ここで、AM/FM帯域用配線50は、高周波帯域通過フィルタ30から見たAM/FM帯域通過フィルタ20までの配線が、高周波帯域通過フィルタ30の通過特性に影響を与えない程度に、高周波帯域用配線40と同等又はより短く構成される。より具体的には、AM/FM帯域用配線50の配線長が高周波帯域用配線40と同じ程度の長さか、高周波帯域用配線40よりも短いものである。これは、高周波帯域通過フィルタ30から信号入力用ランド10を介してAM/FM帯域通過フィルタ20への配線長が、高周波帯域通過フィルタ30の通過特性に影響を及ぼしているためである。AM/FM帯域通過フィルタ20までの配線長が長い場合には、高周波帯域で不要な負荷として見えてしまい、高周波帯域の通過ロスの原因となってしまう。このように、信号入力用ランド10から延在するAM/FM帯域用配線50の長さが長いと高周波帯域通過フィルタ30の通過特性に悪影響を及ぼすため、この部分の影響を小さくするために、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板では、AM/FM帯域用配線50を高周波帯域用配線40と同じ程度の長さか短く構成している。
【0021】
本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、このような構成とすることで、回路基板上に低周波帯域の回路と高周波帯域の回路が設けられても、高周波数帯域の信号の通過特性を改善可能となる。
【0022】
図1に示される複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の基板レイアウトでは、信号入力用ランド10から高周波帯域用配線40及びAM/FM帯域用配線50がそれぞれ延在している例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、以下、図示例と共に説明するように、AM/FM帯域用配線が高周波帯域用配線から分岐されるものであっても良い。図2は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の他の基板レイアウトを説明するための概略上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、詳説は省略する。
【0023】
図2に示される例では、AM/FM帯域用配線50aが、高周波帯域用配線40aから分岐される配線となっている。即ち、AM/FM帯域用配線50aは、高周波帯域用配線40aの途中から分岐した配線である。信号入力用ランド10からの配線は、一部が共通配線となり、信号入力用ランド10からの複合信号が高周波帯域用配線40aに流れると共に、AM/FM帯域用配線50aにも流れる。ここで、高周波帯域通過フィルタ30から見たAM/FM帯域通過フィルタ20までの配線が、高周波帯域通過フィルタ30の通過特性に影響を与えない程度に、分岐点はなるべく高周波帯域通過フィルタ30に近いところであることが好ましい。なお、図示例ではAM/FM帯域用配線50aが高周波帯域用配線40aから分岐したラインで示され、その後にAM/FM帯域通過フィルタ20が接続されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、AM/FM帯域通通過フィルタ20を直接高周波帯域良配線40aに接続し、AM/FM帯域用配線50aの長さを実質的にゼロとすることも可能である。
【0024】
このように、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、AM/FM帯域用配線及び高周波帯域用配線について、AM/FM帯域用配線が高周波帯域用配線と同等又はより短ければ、信号入力用ランドから延在するものであっても、途中で分岐する構成であっても良いものである。
【0025】
次に、上述のように構成された本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の信号入力用ランドに設けられる信号入力ピンについて説明する。図3は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の信号入力用ランドと信号入力ピンを説明するための概略斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしているため、小説は省略する。なお、図3では、信号入力ピンとその周辺のみを示した。また、信号入力ピンや抵抗、コンデンサ等の各素子は模式的に表したものであり、本発明はこれらの図示例に限定されるものではない。
【0026】
図3に示されるように、例えば複数の脚部を有する信号入力ピン12を用いる。なお、図示例の信号入力ピン12は、挟み込み端子の一例である。このとき、信号入力用ランド10には、信号入力ピン12の複数の脚部のうち1本のみがはんだ付けされれば良い。このように構成することにより、信号入力ピン12による不要な負荷を最小限に抑えることが可能となる。なお、信号入力ピン12の複数の脚部のうち、信号入力用ランド10にはんだ付けされる脚部以外の他の脚部は、信号入力ピン12を固定するために、空きランドにはんだ付けされれば良い。
【0027】
さて、このように構成された本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板の信号通過特性について説明する。以下の表1は、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板のGSM帯域の信号通過特性である。この特性は、図1の回路基板を用いて測定したものである。より具体的には、信号入力用ランド10中心からの高周波帯域用配線40の長さが4.2mmで、信号入力用ランド10中心からのAM/FM帯域用配線50の長さが4.4mmとした場合の測定結果である。比較例として、高周波帯域用配線40の長さはそのままでAM/FM帯域用配線50の長さを9.4mmとした場合の測定結果も示した。
【表1】

【0028】
表1から分かる通り、2170MHzの通過特性において、約2dBの改善効果があることが分かる。
【0029】
さらに、表2に、図2の回路基板を用いて測定した信号通過特性を示す。より具体的には、信号入力用ランド10中心からの高周波帯域用配線40aの長さが7.3mmで、信号入力用ランド10中心からのAM/FM帯域用配線50aの長さが0.5mmとした場合の測定結果である。比較例として、高周波帯域用配線40aの長さはそのままでAM/FM帯域用配線50aの長さを10.1mmとした場合の測定結果も示した。
【表2】

【0030】
表2から分かる通り、1710MHzの通過特性において1dBの、2170MHzの通過特性において4dBの改善効果があることが分かる。
【0031】
このように、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板によれば、特に高周波帯域の信号の通過特性が良くなることが分かる。
【0032】
なお、本発明の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
10 信号入力用ランド
11 複合型ルーフマウントアンテナ
12 信号入力ピン
20 AM/FM帯域通過フィルタ
21 AM/FM回路
30 高周波帯域通過フィルタ
31 高周波回路
40,40a 高周波帯域用配線
50,50a AM/FM帯域用配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型ルーフマウントアンテナ用の回路基板であって、該回路基板は、
複合型ルーフマウントアンテナからの複合信号が入力される信号入力用ランドと、
複合信号のうちのAM/FM帯域の信号を送るための、AM/FM帯域通過フィルタと、
複合信号のうちのAM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号を送るための、高周波帯域通過フィルタと、
信号入力用ランドから高周波帯域通過フィルタまで延在する高周波帯域用配線と、
信号入力用ランドからAM/FM帯域通過フィルタまで延在するAM/FM帯域用配線であって、該AM/FM帯域用配線は、高周波帯域通過フィルタから見たAM/FM帯域通過フィルタまでの配線が、高周波帯域通過フィルタの通過特性に影響を与えない程度に、高周波帯域用配線と同等又はより短い、AM/FM帯域用配線と、
を具備することを特徴とする複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板において、前記AM/FM帯域用配線は、高周波帯域用配線から分岐される配線であることを特徴とする複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板であって、さらに、複数の脚部を有する信号入力ピンを具備し、前記信号入力用ランドには、信号入力ピンの複数の脚部のうちの1本のみがはんだ付けされることを特徴とする複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板において、前記高周波帯域通過フィルタの、AM/FM帯域よりも高い周波数帯域の信号は、GSM帯域(850/900/1800/1900MHz帯域)であることを特徴とする複合型ルーフマウントアンテナ用回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−60563(P2012−60563A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204186(P2010−204186)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】