説明

複合微粒子およびその製造方法

【課題】ナノサイズの平板状シリカ微粒子をコアとし含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーをシェルとするコア/シェル状複合粒子、その製造方法およびその用途の提供。
【解決手段】表面が含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーで被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなり、かつ該平板状シリカ微粒子の割合が1〜70質量%である複合微粒子。平板状シリカ微粒子が界面活性剤の存在下に水性媒体中に分散している重合系中で含フッ素モノマーをラジカル重合することによる該複合微粒子の製法。および、該複合微粒子を含む成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が特定の含フッ素ポリマーで被覆された平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子、その複合微粒子を製造する方法、およびその用途に関する。特に、電子部品等における低誘電率絶縁性回路基板材料、防湿絶縁性封止材料として用いられる。
【背景技術】
【0002】
有機ポリマーに微粒子状シリカからなる粉末を配合してその物性を改良することができる。例えば、微粒子状シリカを配合し、有機ポリマーの熱膨張率の低減、耐熱性の向上、機械的強度の向上、硬さの向上などを図ることができる。このような物性改良を微粒子状シリカの少量の配合で効率よく行いかつ多量の配合による他の物性低下を防止するためには、有機ポリマーに微粒子状シリカを均一に配合すること、有機ポリマーと微粒子状シリカの親和性を向上することなどが必要であると考えられる。
【0003】
微粒子状シリカは凝集しやすく、有機ポリマー中に均一に単分散させることは困難である。また、微粒子状シリカの表面は通常親水性であり、通常疎水性である有機ポリマーとの親和性は低い。このため、微粒子状シリカを予めカップリング剤などで表面処理し、この表面処理した微粒子状シリカを有機ポリマーに配合する手段が採用されている。しかし、この手段では、微粒子状シリカが極めて微細な場合には凝集を充分に防止することは困難であり、また有機ポリマーに配合する際の機械的、熱的衝撃により表面処理の効果が低下しやすい。
【0004】
微粒子状シリカは凝集を防止し、有機ポリマーとの親和性を向上する手段として、微粒子状シリカ表面を有機ポリマーで被覆することが知られている。微粒子状シリカ表面を有機ポリマーで被覆し、単分散状態の被覆微粒子を製造する方法としては、機械的被覆方法や微粒子状シリカをシードとするシード重合で被覆する方法などが知られている。機械的被覆方法の例としてはシリカ微粒子表面を含フッ素ポリマーで被覆する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、シリカ微粒子が極めて微細な場合にはこの方法で被覆を行うことは困難である。
【0005】
シード重合法により微粒子状シリカがコアで有機ポリマーがシェルであるコア/シェル状複合微粒子を製造することは公知である(例えば、特許文献2および特許文献3参照。)。しかし、この方法でフッ素含量の高い含フッ素ポリマーがシェルであるコア/シェル状複合微粒子を製造することは知られていない。
【0006】
また、ナノサイズの平板状シリカ微粒子を有機ポリマーで被覆した例も知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平7−43728号公報
【特許文献2】特開平9−194208号公報
【特許文献3】特開平2001−98164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フッ素含量の高い含フッ素ポリマーは通常極めて疎水性の高い有機ポリマーであり、その原料である含フッ素モノマーも同様に極めて疎水性の高いモノマーである。このため、前記公知のシード重合法を単に適用するのみでは良好なコア/シェル状複合微粒子を製造することは困難である。特に含フッ素モノマーとして重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーを使用した場合、公知のシード重合法で含フッ素ポリマーをシェルとするコア/シェル状複合微粒子を製造することはできない。
【0009】
また、平板状シリカは形状的な特徴から粒子間の接触面積が大きいため球状の物に比べて凝集しやすい。したがって、二次凝集を抑えて、含フッ素ポリマー中に分散複合化することは極めて困難である。
【0010】
本発明は、フッ素含量の高い含フッ素ポリマーで表面が被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子、水性媒体中でのラジカル重合法による該複合微粒子の製造方法、および、該複合微粒子の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特定の含フッ素ポリマーで表面が被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子、その製造法、その複合粒子を含む成形材料およびその成形材料の成形物に係わる下記発明である。
【0012】
表面が含フッ素ポリマー(A)で被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子であり、該含フッ素ポリマー(A)は重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーであり、かつ該複合微粒子中の平板状シリカ微粒子の割合が1〜70質量%であることを特徴とする複合微粒子。
【0013】
ナノサイズの平板状シリカ微粒子が界面活性剤の存在下に水性媒体中に分散している重合系中で含フッ素モノマーをラジカル重合することにより、表面が下記含フッ素ポリマー(A)で被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子を製造することを特徴とする複合微粒子の製造方法。
【0014】
含フッ素ポリマー(A):重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマー。
【0015】
上記複合粒子の粉末を含む成形材料。
【0016】
上記成形材料を成形してなる成形物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法により、ナノサイズの平板状シリカ微粒子をコアとし疎水性の高い含フッ素ポリマーをシェルとするコア/シェル状複合粒子が得られる。得られた複合粒子からなる粉末は、平板状シリカ微粒子が均一に分散した含フッ素ポリマー成形物を製造するための成形材料として優れ、成形物中のシリカ微粒子含有量が比較的少量であっても熱膨張率を低下させる効果が発揮される。同時に、シリカ含量が少ないためマトリクスの含フッ素ポリマーの低誘電率特性を保持している。また、得られた複合粒子からなる粉末は各種ポリマー材料の添加剤として使用でき、かかる粉末を含む成形材料は、無機質微粒子添加効果を発揮させるに必要な添加量を少なくすることができることより、添加剤を多量に配合することにより生じる欠点を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における複合微粒子はコア/シェル状の複合微粒子であり、コア部分はナノサイズの平板状シリカ微粒子からなり、シェル部分は含フッ素ポリマー(A)からなる。この複合微粒子における平板状シリカ微粒子の割合は1〜70質量%であり、含フッ素ポリマー(A)は重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーである。
【0019】
本発明におけるナノサイズの平板状シリカ微粒子とは、その大きさが200nm未満で厚さが5nm以下である薄片状の形状を有するシリカ微粒子である。この平板状シリカ微粒子としては、その最大長さが平均100nm以下であり、最大長さ200nm以上のものは実質的に含まないものが好ましい。特に、最大長さの平均は10〜100nmであることが好ましい。最大長さを含む面の形状は円や多角形に近い形状であり、最大長さを有する方向と直角方向の長さも1〜50nm(ただし、最大長さ以下)で線状ではないものが好ましい。また、この平板状シリカ微粒子の平均の厚さは0.1〜1nmであることが好ましい。さらに、最大長さ/厚さの比は10以上、特に20以上が好ましい。
【0020】
上記平板状シリカ微粒子の粉末は有機溶媒に安定に分散し、該有機溶媒溶液中のシリカ微粒子が細孔径0.2μmのフィルターを通過し得るものであることが好ましい。また、この平板状シリカ微粒子は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロペンタフルオロプロパン/ヘキサフルオロイソプロパノール=9/1(容量比))によりポリメチルメタクリレート換算で測定される微分分子量分布曲線の面積比で分子量が100万以上の成分の割合が10%以下であり、上記測定で求められる数平均分子量が1500〜10万であるものが好ましい。さらに下記製造法で説明するように、この平板状シリカ微粒子は、その表面にトリオルガノシリル基を有することが好ましい。
【0021】
本発明における出発原材料の平板状シリカ微粒子は、カチオン系界面活性剤の存在する水中で4官能性加水分解性シラン化合物を加水分解縮合重合反応させ、かつ該反応の途中で該反応を1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物で停止して得られる固体状のシリカ微粒子であることが好ましい。そのほか、珪酸アルカリ水溶液を脱アルカリして得られるシリカゾルを水熱処理することにより平板状シリカ微粒子を得ることもできる(特開平11−29317号公報参照)。以下、前者の平板状シリカ微粒子を製造する方法を説明する。
【0022】
カチオン系界面活性剤の存在する水中で4官能性加水分解性シラン化合物を加水分解縮合重合(以下、単に縮合重合ともいう)することにより、平板状のシリカ微粒子が形成されると考えられる。平板状になる機構は定かでないが、縮合重合反応の際カチオン系界面活性剤の長鎖アルキル基等の疎水性相互作用とNおよびSiO間の静電引力によるコンプレックス形成により二次元的に集合しながら縮合重合反応が進行するためと思われる。このような反応過程で縮合重合反応を1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物で停止することにより、生成するシリカ微粒子の分子量を制御し、適切な分子量の平板状シリカ微粒子が得られる。
【0023】
また、1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を選択することにより、平板状シリカ微粒子の表面特性(有機溶媒親和性など)を変化させることができる。この分子量や表面特性の制御により、得られる平板状シリカ微粒子粉末を有機溶媒に安定に分散しうるものとすることができ、有機溶媒に分散している平板状シリカ微粒子の全量が細孔径0.2μmのフィルターを通過し得るものとすることができる。細孔径0.2μmのフィルターを通過し得ることより、この平板状シリカ微粒子の粉末は200nm以上の長さを持つ形状の微粒子を含まないと考えられる。なお、細孔径0.2μmのフィルターとしてADVANTEC社製ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルター(商品名:DISMIC-25JP020AN)を使用した。また、この平板状シリカ微粒子の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)による粒子形状の観察に基づくものである。
【0024】
4官能性加水分解性シラン化合物は、ケイ素原子に加水分解性基が4個結合した化合物である。加水分解性基としては、炭素数6以下のアルコキシ基、炭素数6以下のアルコキシアルキルオキシ基、炭素数6以下のアルケニルオキシ基、炭素数6以下のアシルオキシ基、塩素原子、アミノ基、炭素数6以下のジアルキルアミノ基、オキシム基、イソシアネート基などがある。4官能性加水分解性シラン化合物は、これらの加水分解性基の1種以上が4個ケイ素原子に結合した化合物である。特に、炭素原子4以下のアルコキシ基が4個ケイ素原子に結合した化合物、即ち、テトラアルコキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシ)シランが挙げられる。
【0025】
4官能性加水分解性シラン化合物における加水分解性基は水と反応してシラノール基となり、シラノール基どうしが脱水縮合重合してシリカが生成する。この反応の途中にある4官能性加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合重合物もまたシリカ生成原材料として使用しうる。この部分加水分解縮合重合物は平均分子量500以下のものが好ましい。本発明における平板状シリカ微粒子は特に部分加水分解縮合重合物ではない単量体のテトラアルコキシシランから生成するシリカ微粒子であることが好ましい。
【0026】
1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物により縮合重合反応を停止させたことにより、平板状シリカ微粒子はその表面にトリオルガノシリル基を有し、4官能性加水分解性シラン化合物の加水分解性基の加水分解で生成したシラノール基の少なくとも一部がこのトリオルガノシリル基で封鎖されているものとすることができる。このトリオルガノシリル基による封鎖は、平板状シリカ微粒子形成においてその分子量を制御して所定の大きさを超える高分子量の分子の生成を抑制し、また有機溶媒親和性や表面反応性などの表面特性発揮のために行われる。
【0027】
上記平板状シリカ微粒子は有機溶媒に安定に分散し、凝集することなく単一分子として有機溶媒中に存在していると考えられる。有機溶媒の種類に対する分散性は平板状シリカ微粒子表面のトリオルガノシリル基の種類や量により変化する。また、1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物とともに、2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を用いて平板状シリカ微粒子の表面特性を変化させることもできる。2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の使用により表面にジオルガノシリル基やモノオルガノシリル基が結合した平板状シリカ微粒子が生成すると考えられる。
【0028】
上記オルガノシリル基(モノ〜トリオルガノシリル基の総称)の種類や量により有機溶媒の種類に対する平板状シリカ微粒子の親和性を変化させることができる。例えば、トリアルキルシリル基が結合したシリカ微粒子はアルコールやTHF(テトラヒドロフラン)などの極性有機溶媒に高い親和性を有し、フッ素含量の高いフルオロアルキル基を有するオルガノシリル基が結合した平板状シリカ微粒子はフッ素系有機溶媒に高い親和性を有する。このようにオルガノシリル基の種類や量を変化させることにより、平板状シリカ微粒子の有機溶媒の種類に対する親和性を変化させることができる。
【0029】
上記平板状シリカ微粒子は、カチオン系界面活性剤の存在する水中で4官能性加水分解性シラン化合物を加水分解縮合重合反応させ、所定のシリカ粒子を生成させるために該縮合重合反応の途中で1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応系に加えて該縮合重合反応を停止させて製造される。1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応系に加えることによりシラノール基の封鎖と反応の停止を同時に行う。1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応系に加える前に、2〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応系に加えてシリカ微粒子の表面修飾を行うこともできる。1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物では入手の困難な種々の有機基を有する2〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用することにより、シリカ微粒子表面に種々の有機基を導入して表面特性を変化させることができる。そのような有機基として、例えば反応性基を有する有機基や疎水性の高いフルオロアルキル基などがある。2〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物では縮合重合反応を停止することが困難であるので、2〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させた後に1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させて加水分解縮合重合反応を停止する。
【0030】
前記のように、上記方法においては、カチオン系界面活性剤の存在下に縮合重合反応を行うことによりコンプレックス形成を伴う二次元的なSiO連鎖の成長が起こり、平板状の形状を有するシリカ微粒子が生成すると考えられる。カチオン系界面活性剤の存在しない条件下では平板状の微粒子は生成せず、球状の微粒子が生成すると考えられる。
【0031】
カチオン系界面活性剤としては、アミン塩、エステル結合アミン、アミド結合アミン、エーテル結合アミン、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、などのカチオン系界面活性剤が好ましい。カチオン系界面活性剤は疎水性基を含み、疎水性基としては長鎖炭化水素基、長鎖フルオロアルキル基、フェニル基などの1価有機基が好ましい。疎水性基としては、特に長鎖アルキル基やフルオロアルキル基含有1価有機基が好ましい。長鎖アルキル基としては、炭素数6以上、特に8〜20のアルキル基が好ましく、フルオロアルキル基としては炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基を有する1価有機基としては、例えば、CF(CF−(CH−、CF(CF−CONH−(CH−、CF(CF−SONH−(CH−などが好ましい(pは3〜10の整数、qは2〜6の整数)。なお、このようなフルオロアルキル基含有1価有機基を有する界面活性剤を以下カチオン系フッ素系界面活性剤という。
【0032】
具体的なカチオン系界面活性剤としては下記のカチオン系界面活性剤がある(Rは炭素数4以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xは酸の残基を表す)。
【0033】
デシルアミン塩酸塩、テトラデシルアミン塩酸塩、ヘキサデシルアミン塩酸塩、オクタデシルアミン塩酸塩、ドデシルジメチルアミン塩酸塩、テトラデシルジメチルアミン塩酸塩、ヘキサデシルジメチルアミン塩酸塩、オクタデシルジメチルアミン塩酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド。
【0034】
CF(CF−CONH−(CH−N(R・HCl、CF(CF−SONH−(CH−N(R・HCl、CF(CF−SONH−(CH−N(R・X
【0035】
1〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物としては、下記式(1)で表されるヘキサオルガノジシロキサン(1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物)、下記式(2)で表されるヘキサオルガノジシラザン(1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物)、下記式(3)で表される1〜3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物などが好ましい。なお、ヘキサオルガノジシロキサンやヘキサオルガノジシラザンは加水分解により2分子のモノシラノール化合物が生成することより、本発明における1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物である。
【0036】
(RSi−O−Si(R (1)、
(RSi−NH−Si(R (2)、
SiY4−n (3)。
【0037】
、R、Rはそれぞれ独立に1価の非加水分解性の有機基を、Yは1価の加水分解性基を、nは1〜3の整数を表す。Rが2個または3個存在する場合各Rは異なっていてもよく、6個のRや6個のRについても同様である。R、R、Rはそれぞれケイ素原子に結合する結合手が炭素原子の結合手である1価の有機基であり、特にアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルアルキル基、ハロアルキル基、官能基含有アルキル基、官能基含有シクロアルキル基が好ましい。
【0038】
上記アルキル基としては炭素数20以下のアルキル基が好ましく、特に炭素数4以下のアルキル基(以下、低級アルキル基という)が好ましい。アルケニル基としては、ビニル基やアリル基などの炭素数4以下のアルケニル基が、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基が、アリール基としてはフェニル基や低級アルキル基等で置換されたフェニル基が、アルアルキル基としてはベンジル基などのフェニル基含有低級アルキル基が、ハロアルキル基としては炭素数16以下のフルオロアルキル基が好ましい。官能基含有アルキル基としては、水酸基、エポキシ基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロアルキル基、アミノ基、N−アミノアルキルアミノ基、N−フェニルアミノ基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基などの官能基を有する炭素数6以下のアルキル基が好ましい。
【0039】
式(1)〜(3)で表される化合物において、同一ケイ素原子に複数の有機基が結合している場合、それら有機基の全てが低級アルキル基であるかそのうちの1個が低級アルキル基以外の有機基であることが好ましい。また、式(3)で表される化合物においてnが1の場合も、その1個のRは低級アルキル基以外の有機基であることが好ましい。低級アルキル基以外の有機基としては、炭素数5以上のアルキル基、フェニル基、フルオロアルキル基含有1価有機基、および官能基含有アルキル基が好ましい。フルオロアルキル基含有1価有機基としては、炭素数4〜20のパーフルオロアルキル基を有する1価有機基が好ましい。特に、CF(CF−(CH−、CF(CF−CONH−(CH−、CF(CF−SONH−(CH−などのパーフルオロアルキル部分を有するフルオロアルキル基含有1価有機基が好ましい(pは3〜10の整数、qは2〜6の整数)。なお、このようなフルオロアルキル基含有1価有機基を有する加水分解性オルガノシラン化合物を以下フッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物という。
【0040】
前記式(3)で表される化合物において、Yは1価の加水分解性基である。ケイ素原子に結合するYの数(即ち、4−n)がこの加水分解性オルガノシラン化合物の官能性を表す。Yはアルコキシ基等の前記の加水分解性基であり、好ましいYは低級アルコキシ基である。特に好ましいYはメトキシ基とエトキシ基である。Yの数が2または3の場合、複数のYは異なっていてもよいが、通常は同一の基である。
【0041】
前記式(1)で表される化合物としてはヘキサメチルジシロキサンが好ましく、前記式(2)で表される化合物としてはヘキサメチルジシラザンが好ましい。前記式(3)で表される化合物としては下記化合物が好ましい。
【0042】
1官能性化合物:トリメチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、n−ヘキシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキシルジメチルメトキシシラン、トリフェニルアミノシラン、3−(パーフルオロ−n−ブチル)プロピルジメチルメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)プロピルジメチルメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)プロピルジエチルメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−オクチル)プロピルジメチルメトキシシラン。
【0043】
2官能性化合物:ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−ヘキシルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−メタクロイルオキシメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ブチル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン。
【0044】
3官能性化合物:メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−オクタデシルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクロイルオキシトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ブチル)プロピルトリメトキシシラン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(2−(ビニルベンジンアミノ)エチル)−3−アミノプルピルトリメトキシシラン、下記の3官能性のフッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物。
【0045】
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CFCOO(CHSi(OCH
CF(CFCONH(CHSi(OC
CF(CFSONH(CHSi(OCH
【0046】
カチオン系界面活性剤の存在する水中で4官能性加水分解性シラン化合物を加水分解縮合重合する場合、水に対するカチオン系界面活性剤の量は、水100質量部に対しカチオン系界面活性剤1〜10質量部が好ましく、特に3〜5質量部が好ましい。カチオン系界面活性剤が少なすぎる場合は球状のような溶解性の低い形状の粒子が生成するなどの問題があり、多すぎる場合は高粘度となり、4官能性加水分解性シラン化合物を均一に混合することが困難となるなどの問題がある。また、水に対する4官能性加水分解性シラン化合物の量は、水100質量部に対し4官能性加水分解性シラン化合物5〜20質量部が好ましく、特に10〜15質量部が好ましい。4官能性加水分解性シラン化合物が少なすぎる場合は粒子成長に時間がかかるなどの問題があり、多すぎる場合はゲル化が起こるなどの問題がある。
【0047】
加水分解縮合重合反応は、前記平板状シリカ微粒子を形成するために上記カチオン系界面活性剤や原料化合物の量以外に、反応温度、PH、反応時間等の反応条件を制御して行う。反応温度が高すぎる場合、PHが高すぎる場合、反応時間は長すぎる場合には分子量の高すぎるシリカが生成し、ゲル化成分が生成して目的の溶媒分散可能な平板状シリカ微粒子が生成しない。反応温度は室温から100℃程度が好ましいが、ゲル化抑制および反応時間の観点から室温〜60℃がより好ましい。加水分解縮合重合反応を促進するために通常は酸や塩基が使用される。本発明では、酸を使用することが好ましく、適切量の酸を使用して反応速度を制御する。酸の使用量は水溶液のPHを調節することにより行うことが好ましい。pHは2〜5であることが好ましいが、ゲル化抑制および反応時間の観点からpH4〜5が好ましい。例えば、反応温度40℃、pH4においては反応時間10〜40時間、反応温度40℃、pH4.5においては反応時間5〜20時間が好ましい。これらの条件はカチオン系界面活性剤の種類や量により変る場合もある。なお、PHの調整は通常塩酸などの酸を添加することによって行われる。
【0048】
所定の分子量の平板状シリカ微粒子が生成した段階で上記加水分解反応を停止し、生成した平板状シリカ微粒子のシラノール基を封鎖する。縮合重合反応を停止するためには1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させることによって行う。1官能性加水分解性シラン化合物を添加して反応を停止させる際、酸などの触媒を添加しておよび/または反応温度を高めて反応を促進し、速やかに反応を停止することが好ましい。この場合添加する酸としては特に濃塩酸が好ましい。速やかに反応を停止するためには、1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の溶液に反応生成物を含む水溶液を添加して停止反応を行う方法も使用できる。
【0049】
オルガノシリル基によるシリカ微粒子の表面修飾のためには、1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物以外に2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用することが好ましい。シリカ表面に疎水性基や反応性基等を導入するためには1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物のみの使用では不充分な場合がある。したがって、特定の表面修飾のためには2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用することが好ましく、かつ反応停止ために1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用する。2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用しても加水分解反応は停止せずシリカの分子量は増大しつづけるので、所定の目的分子量で反応を停止するためには、まず表面修飾のために2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させ、その後1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させて加水分解縮合重合反応を停止させることが好ましい。
【0050】
2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させて表面修飾を行う場合、4官能性加水分解性シラン化合物の加水分解でシリカ微粒子が形成された後に反応系に2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を添加する。その添加時点のシリカ微粒子の平均分子量は1000以上であることが好ましい。添加した後は分子量の成長が実質的に起こらないようにアルコールで2〜5倍に希釈を行うことが好ましい。希釈しない場合、オルガノシラン化合物由来のシラノールの分だけ全体のシラノール濃度が高まるために急激なゲル化が起こりやすくなる。原料4官能性加水分解性シラン化合物1モルに対して使用する2または3官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の量は、特に限定されるものではないが、0.8モル以下、特に0.3モル以下が好ましい。ただし使用した量全て反応しなくてもよい。
【0051】
必要により上記修飾を行った後、目的とする平均分子量に近い平板状シリカ微粒子が生成した段階で、1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させて縮合重合反応を停止させる。1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の量は、反応停止後のシリカ微粒子の表面に存在するシラノール基(未反応の加水分解性基が残存している場合もある)がさらに反応してゲル状成分が生成することがないように、反応停止前の平板状シリカ微粒子の表面に存在するシラノール基(未反応の加水分解性基が残存している場合もある)の大部分がトリオルガノシリル基で封鎖される量であることが必要である。通常は、実質的に全てのシラノール基が封鎖されるように過剰当量の1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を反応させることが好ましい。多くの場合、シラノール基の量を測定することなく大過剰の1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を用いて反応を停止させる。原料4官能性加水分解性シラン化合物1モルに対して使用する1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の量は、生成するシリカの平均分子量によるが、通常は0.1モル以上、特に0.5モル以上であって、上記の過剰量となる量であることが好ましい。
【0052】
水中の反応で得られた平板状シリカ微粒子は水に不溶であり、したがって濾過や沈殿物回収などで固体を水から分離して反応系から分離できる。また、反応停止の際1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の溶液を使用した場合、この溶媒と水との混合溶媒に対してシリカ微粒子が不溶となるように、適切量の水を添加したり、上記溶媒の種類や量を選択することが好ましい。1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の溶液における溶媒としては、イソプロピルアルコールのような水と相溶性がありかつ平板状シリカ微粒子の溶解性が高すぎない溶媒が好ましい。その後必要により、水などの不溶解性溶媒で洗浄し精製することもできる。得られた粉末は平板状シリカ微粒子の集合体であり、またこの粉末は前記のように有機溶媒に分散させて分散液とすることができる。
【0053】
平板状シリカ微粒子の有機溶媒分散液に用いられる有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの液状炭化水素あるいはヘキサフロロメタキシレンやジクロロペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロベンゼンなどのフッ素系有機溶媒などがある。後述複合微粒子を製造するために使用される有機溶媒としては、水溶性のアルコールと非水溶性の有機溶媒との混合溶媒が好ましい。即ち、次の工程において界面活性剤水溶液中に平板状シリカ微粒子を分散させるために、有機溶媒としては平板状シリカ微粒子表面の疎水化処理に用いたオルガノシリル基の種類や量に応じてアルコールと非水溶性溶媒の混合物を使用することが望ましい。アルコール含量が少ないと親和性が乏しくなり、また、多すぎると界面活性剤を含む水溶液中への分散が低下することより、疎水化処理に用いたオルガノシリル基の種類や量に応じて混合比率を調整することが好ましい。
【0054】
後述本発明の複合微粒子を製造するための原材料としての平板状シリカ微粒子は、前記カチオン系界面活性剤としてカチオン系フッ素系界面活性剤を使用して得られる平板状シリカ微粒子が好ましい。前記製造に使用されたカチオン系界面活性剤は得られた平板状シリカ微粒子には含有されていないと考えられるが、実際上は微量のカチオン系界面活性剤が微粒子表面に存在していると考えられる。この微粒子に含まれるカチオン系界面活性剤が炭化水素系のカチオン系界面活性剤であると後述含フッ素モノマーの重合を阻害するおそれがある。一方、カチオン系フッ素系界面活性剤は含フッ素モノマーの重合を阻害するおそれがなく、したがって、微粒子にカチオン系界面活性剤が残存するおそれがある場合にはカチオン系フッ素系界面活性剤の使用が好ましい。
【0055】
また、後述のように本発明の複合微粒子を製造するための原材料としての平板状シリカ微粒子は、表面が疎水化されている必要がある。そのため、前記平板状シリカ微粒子の製造において加水分解性オルガノシラン化合物の少なくとも一部として疎水性の高い加水分解性オルガノシラン化合物の使用が好ましい。その疎水性の高い加水分解性オルガノシラン化合物としては特にフッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物が好ましい。フッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物として1官能性の化合物は通常容易に入手することが困難なことが少なくない。その場合は前記のように、非フッ素系の1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物を使用しそれを反応系に加える前に、2〜3官能性のフッ素系加水分解性オルガノシラン化合物を反応系に加えて平板状シリカ微粒子の表面修飾を行うことが好ましい。原料4官能性加水分解性シラン化合物1モルに対して使用する2または3官能性のフッ素系加水分解性オルガノシラン化合物の量は、0.05〜0.8モル、特に0.1〜0.3モルが好ましい。また、平板状シリカ微粒子に対するフッ素系加水分解性オルガノシラン化合物の量は、1〜50質量%が好ましく、特に5〜30質量%が好ましい。
【0056】
また、ナノサイズの平板状シリカ微粒子を含む有機溶媒分散液を製造した後、1〜3官能性のフッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物でその平板状シリカ微粒子の表面を処理して疎水化し、疎水化された平板状シリカ微粒子を得ることもできる。この場合、平板状シリカ微粒子の表面にはある程度以上の活性点(通常シラノール基)を有することが必要と考えられ、平板状シリカ微粒子の製造における1官能性の加水分解性オルガノシラン化合物の使用量はある程度の反応点が残るような量であることが好ましい。あらかじめ製造された平板状シリカ微粒子の表面を修飾する方法としては、通常、平板状シリカ微粒子の分散液にフッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物を添加して反応させる方法が使用される。その際、分散液を酸性化するなどの方法で加水分解を促進することが好ましい。また、平板状シリカ微粒子の分散液における液状媒体はアルコールなどの有機溶媒であることが好ましい。平板状シリカ微粒子の有機溶媒分散液に酸性水溶液を少量添加した後、フッ素系の加水分解性オルガノシラン化合物を添加し、加熱撹拌を行って表面修飾することが好ましい。
【0057】
本発明における複合微粒子はコア/シェル状の複合微粒子であり、コア部分はナノサイズの平板状シリカ微粒子からなり、シェル部分は含フッ素ポリマー(A)からなる。この複合微粒子は、平板状シリカ微粒子が界面活性剤の存在下に水性媒体中に分散している重合系中で含フッ素モノマーをラジカル重合することにより製造することができる。通常疎水化されたナノサイズの平板状シリカ微粒子が界面活性剤により均一分散された水分散液中に含フッ素モノマーを分散させ、次いでコア/シェル重合を行い平板状シリカ微粒子表面にフッ素ポリマー(A)を形成して製造される。平板状シリカ微粒子が均一分散された水分散液は前記平板状シリカ微粒子の有機溶媒分散液から溶媒置換により製造されることが好ましい。即ち、有機溶媒分散液を水性媒体中に分散し、次いで有機溶媒を留去することにより水分散液が得られる。水分散液中の平板状シリカ微粒子の分散安定性を高め、含フッ素モノマーを平板状シリカ微粒子表面で重合させるためには通常界面活性剤を必要とする。この界面活性剤を含む水分散液は、この界面活性剤を含む有機溶媒分散液から溶媒置換により得ることが好ましい。この際、水性媒体中にもあらかじめ界面活性剤を添加しておくことも好ましい。この界面活性剤としては、後述のように、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤が好ましく、特にフッ素系のこれら界面活性剤が好ましい。
【0058】
上記製造方法においては、コアとなる平板状シリカ微粒子の表面で含フッ素モノマーが重合し、平板状シリカ微粒子の表面に含フッ素ポリマー(A)の層が形成されて、複合微粒子が得られる。水性媒体中で界面活性剤は表面が疎水化されている平板状シリカ微粒子の表面に配位して界面活性剤配位平板状シリカ微粒子(以下、配位微粒子という)が形成され、含フッ素モノマーはこの配位微粒子の界面活性剤と平板状シリカ微粒子の界面に取り込まれてそこで重合する。平板状シリカ微粒子は表面が疎水化されても極性基を有するため、疎水性の含フッ素モノマーは配位微粒子に取り込まれにくく、また、平板状シリカ微粒子と含フッ素モノマーの親和性が低いことより含フッ素モノマーが取り込まれた配位微粒子の安定性が低い。さらに、含フッ素モノマーは通常のモノマーに比較してはるかに高い疎水性を有するため、通常の界面活性剤では良好な配位微粒子が形成されにくい。このような問題があることより、界面活性剤は通常よりはるかに高い疎水性基を有する界面活性剤であることが好ましい。さらに、前記のように平板状シリカ微粒子は予め表面が高度に疎水化され、その疎水化の程度も通常よりはるかに高いことが好ましい。
【0059】
平板状シリカ微粒子を水性媒体中に分散させ含フッ素モノマーをその表面で重合させるために通常界面活性剤が使用される。界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤が好ましい。アニオン系界面活性剤の親水基としてはカルボン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸塩、ホスホン酸塩などがあり、カルボン酸塩が好ましい。対イオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどがあり、本発明においては特にアンモニウムイオンが好ましい。金属イオンは複合粒子中に残存すると含フッ素ポリマーの物性に悪影響を与えるおそれがあり、また用途によっては用途先に不都合を来たすおそれがある(例えば、半導体関連用途では材料中のアルカリ金属イオンの残存は好ましくない)。
【0060】
上記のように界面活性剤としては通常よりはるかに高い疎水性基を有する界面活性剤であることが好ましい。このような界面活性剤としては含フッ素疎水性基を有する界面活性剤があり、特にアニオン系フッ素系界面活性剤やノニオン系フッ素系界面活性剤が好ましい。これらフッ素系界面活性剤は疎水性基として、フッ素化炭化水素基を有する界面活性剤であり、このような疎水性基としては、前記フルオロアルキル基含有1価有機基が好ましい。特にフルオロアルキル基含有1価有機基を有するカルボン酸の塩やフルオロアルキル基含有1価有機基とポリオキシエチレン鎖とを有するノニオン性界面活性剤が好ましい。特に好ましいフッ素系界面活性剤は、フルオロアルキル基含有1価有機基を有するカルボン酸のアンモニウム塩やアルカノールアミン塩などのアミン塩である。具体的なこれらフッ素系界面活性剤としては以下のような化合物がある(ただし、rは1以上の整数)。
CF(CFCOONH
CF(CFCOONH
CF(CFCOONH
CF(CFCOONH(CHCHOH)
CF(CF(CHCOONH
CF(CF(CHCOONH
CF(CF(CHCOONH
CF(CF(CHCOONH
CF(CFSONH
CF(CFSON(CH)CHCOONH
CF(CFCON(CH)CHCOONH
CF(CFCON(CH)(CHCHO)H。
【0061】
上記界面活性剤の使用量は、通常平板状シリカ微粒子の使用量に従う。しかし、平板状シリカ微粒子の粒子径によりその表面積が異なるなど、必ずしも平板状シリカ微粒子の使用量のみに限定されるものではない。少なくとも安定な配位微粒子が形成される量以上で、かつ平板状シリカ微粒子が包含されていないミセルができるだけ少なくなるような量が採用される。通常は平板状シリカ微粒子に対して10〜75質量%が好ましく、特に20〜50質量%が好ましい。
【0062】
上記のようにして得られた平板状シリカ微粒子分散水性媒体に含フッ素モノマーを加え、平板状シリカ微粒子表面で含フッ素モノマーを重合して表面が含フッ素ポリマー(A)で被覆された複合微粒子を得る。含フッ素モノマーは通常ラジカル重合により重合されるためにラジカル重合開始剤が重合開始剤として使用される。
【0063】
本発明においてラジカル重合開始剤としては過硫酸ナトリウムや過硫酸アンモニウムなどの水溶性無機過酸化物や油溶性のパーオキサイドやアゾ化合物が使用される。また、必要により亜硫酸塩、第一鉄塩などのレドックス剤やアミン類などの促進剤を併用することもできる。油溶性のラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、パーオキシカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類などの有機パーオキサイド類、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などがある。また、ポリフルオロジアシルパーオキサイド類などの含フッ素パーオキサイドも使用できる。好ましくはパーオキシカーボネート類、ハイドロパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類などの有機パーオキサイド類が使用される。
【0064】
含フッ素モノマーは水性媒体中の配位微粒子の界面活性剤と平板状シリカ微粒子との界面に取り込まれて、その場で重合することが必要であるので、水性媒体中に添加された含フッ素モノマーを平板状シリカ微粒子に充分に接触させるとともに、平板状シリカ微粒子を含まない含フッ素モノマーの液滴が少なくかつ多数の平板状シリカ微粒子を含んだ液滴が生じないように、含フッ素モノマーを水性媒体中に分散させる必要がある。このためには、含フッ素モノマーを充分微細な粒子となるように水性媒体中に分散させる必要があり、その具体的手段としては、含フッ素モノマーを添加した水性媒体を、含フッ素モノマーが微細な粒子となるように充分激しく撹拌する、超音波を照射して含フッ素モノマーを分散させる、高圧乳化機により分散させる、などの分散手段がある。
【0065】
特に、撹拌下に超音波を照射して分散する手段の使用が好ましい。気体状の含フッ素モノマーは平板状シリカ微粒子の表面に液状の含フッ素モノマーなどの疎水性層が存在するとそこに取り込まれるため、気体状の含フッ素モノマーを分散させるための特別な手段は通常必要としない。なお、含フッ素モノマーを水性媒体に分散させる工程においては重合開始剤が反応しない温度下で行われることが好ましく、そのため重合温度が低い場合は冷却しながら分散を行うことが好ましい。
【0066】
含フッ素モノマーを分散した後含フッ素モノマーの重合を行う。重合は重合開始剤の反応温度以上、すなわちラジカル重合開始剤の場合はラジカル重合開始剤が開裂してラジカルが生じる温度以上、で行われる。ラジカル重合開始剤の半減期が3〜10時間程度となる温度で重合を行うことが好ましい。重合は常圧下で行うことができ、加圧下または減圧下で行うこともできる。重合温度は、特に限定されるものではないが、0〜100℃が適当であり、20〜95℃が好ましい。特に好ましい重合温度は30〜80℃である。
【0067】
シェル部分が多層構造の含フッ素ポリマー(A)を含む複合微粒子を製造する場合は、重合を多段で行い、各重合段階でモノマーの種類を変えることにより多層構造のポリマーシェルを形成することができる。モノマーの種類を変えるとは、複数のモノマーを共重合させる場合はモノマーの共重合割合を変えることも意味する。前記と同様の方法でモノマーの重合を行って平板状シリカ微粒子の表面にポリマーの層を形成し、前段の重合が終了した後新たにモノマーを水性媒体に添加し前段と同様に重合を行うことが好ましい。新たなモノマーが液状のモノマーである場合は前記のように重合開始剤を溶解したモノマーを充分微細な粒子となるように水性媒体中に分散させ、前段の重合により生成したポリマー被覆平板状シリカ微粒子の表面に新たなモノマーを取り込ませて重合を行い第2のポリマー層を形成することが好ましい。同様な重合を繰り返すことにより3層以上のポリマー層を有する平板状シリカ微粒子を得ることができる。
【0068】
なお、新たなポリマー層を形成する前のポリマー被覆平板状シリカ微粒子は水性媒体中に安定に分散していることが好ましい。ポリマー被覆平板状シリカ微粒子の径が大きくなっていくと分散安定性が低下する傾向があり、分散安定性の低いポリマー被覆平板状シリカ微粒子が分散した水性媒体中で新たな重合を行うことは困難が伴いやすい。したがって、最終的に大きな径の複合微粒子を製造する場合は最外層のポリマー層の厚さを厚くすることによって製造することが好ましい。
【0069】
本発明における含フッ素ポリマー(A)は、重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーである。含フッ素モノマーは重合性不飽和基の2個の炭素原子の少なくとも一方に少なくとも1個のフッ素原子が結合していることが必要である。含フッ素モノマーは2個以上の重合性不飽和基を有していてもよく、この場合、2個以上の重合性不飽和基の少なくとも1個の重合性不飽和基が上記フッ素原子を有している重合性不飽和基である必要がある。
【0070】
含フッ素モノマーは重合性不飽和基を1個有するモノマー(以下、モノエンともいう)であるか、重合性不飽和基を2個有するモノマー(以下、ジエンともいう)であることが好ましい。後述の架橋性の含フッ素モノマーとしては、重合性不飽和基を3個以上有するモノマー(以下、ポリエンともいう)を使用できるが、架橋性の含フッ素モノマーは含フッ素ジエンであることが好ましい。なお、本発明における含フッ素ジエンは、架橋性の含フッ素ジエンと非架橋性の含フッ素ジエンの2種があり、後者は環化重合して線状のポリマーを形成しうる(以下環化重合性という)モノマーである。含フッ素ポリエンは通常架橋性である。
【0071】
本発明における含フッ素モノマーは、CF=C<または−CF=CR−で表される重合性不飽和基を有する含フッ素モノマー(ただし、Rはフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を表す)であることが好ましい。含フッ素モノエンはこれら重合性不飽和基のいずれかを有する化合物である。含フッ素ジエンや含フッ素ポリエンはこれら重合性不飽和基を少なくとも1個有し、他の重合性不飽和基はこれら重合性不飽和基以外の重合性不飽和基であってもよい。好ましくは、含フッ素ジエンや含フッ素ポリエンはこれら重合性不飽和基を2個または3個以上有する。
【0072】
本発明における含フッ素モノマーとしては、フッ素含量の高い含フッ素モノマーが好ましい。含フッ素モノマー中の炭素原子に結合したフッ素原子と水素原子の合計数に対するフッ素原子の数は75%以上、特に80%以上が好ましい。最も好ましい含フッ素モノマーは、炭素原子に結合した水素原子を実質的に有しない含フッ素モノマーである。以下、炭素原子に結合した水素原子を実質的に有しない含フッ素モノマーをパーフルオロモノマーという。パーフルオロモノマーにおける炭素原子に結合したフッ素原子の一部は塩素原子に置換されていてもよい。塩素原子を有するパーフルオロモノマーの場合、パーフルオロモノマー中のフッ素原子と塩素原子の合計数に対する塩素原子の数は25%以下、特に20%以下が好ましい。最も好ましいパーフルオロモノマーは炭素原子に結合した塩素原子を実質的に有しないパーフルオロモノマーである。
【0073】
本発明における含フッ素ポリマー(A)は、含フッ素モノマーのホモポリマー、2種以上の含フッ素モノマーのコポリマー、含フッ素モノマーの1種以上と含フッ素モノマー以外のモノマーの1種以上とのコポリマーなどがある。フッ素含量の高い含フッ素ポリマー(A)としては、含フッ素モノマーのホモポリマーや2種以上の含フッ素モノマーのコポリマーが好ましく、コモノマーとしてフッ素原子を有しないモノマーは実質的に使用されないことが好ましい。本発明における含フッ素ポリマー(A)としては、パーフルオロモノマーが全モノマーに対して50モル%以上、特に75モル%以上、のモノマーを重合して得られる含フッ素ポリマーが好ましい。特に好ましくは実質的にパーフルオロモノマーのみからなるモノマーを重合して得られる含フッ素ポリマー(以下、パーフルオロポリマーともいう)が好ましい。
【0074】
本発明における含フッ素ポリマー(A)としてはフッ素含有量の高い含フッ素ポリマーが好ましい。含フッ素ポリマー(A)のフッ素含有量は30質量%以上であることが好ましく、特に50〜76質量%が好ましい。
【0075】
本発明におけるコア/シェル状の複合微粒子のシェル部分は含フッ素ポリマー(A)からなり、このシェル部分は多層構造の含フッ素ポリマー(A)からなっていてもよい(すなわち、2種以上の含フッ素ポリマー(A)の層からなっていてもよい)。この含フッ素ポリマー(A)の少なくとも一部は架橋された含フッ素ポリマーであることが好ましく、シェル部分が1層のみからなる場合はその含フッ素ポリマー(A)は架橋された含フッ素ポリマーであることが好ましい。シェル部分が2層以上の含フッ素ポリマー(A)からなる場合は、少なくとも内層(平板状シリカ微粒子の表面に接する層)は架橋された含フッ素ポリマーからなることが好ましい。内層以外の層は架橋していない実質的に線状の含フッ素ポリマーからなっていてもよい。特にシェル部分が比較的厚い場合は、シェル部分を2層以上の構造とし、内層を架橋された含フッ素ポリマーの層とし、内層以外の層を実質的に線状の含フッ素ポリマーの層とすることが好ましい。以下、実質的に線状の含フッ素ポリマー(A)を含フッ素ポリマー(A−1)、架橋された含フッ素ポリマー(A)を含フッ素ポリマー(A−2)ともいう。
【0076】
また、本発明におけるコア/シェル状の複合微粒子のシェル部分が2層以上のポリマー層からなる場合、ポリマー層の一部は含フッ素ポリマー(A)以外のポリマーからなっていてもよい。含フッ素ポリマー(A)以外のポリマーは含フッ素ポリマー(A)以外の含フッ素ポリマーであってもよい。これらの場合であってもポリマー層全体としては含フッ素ポリマー(A)を主体とするポリマーであることが好ましく、ポリマー層全体のポリマーに対する含フッ素ポリマー(A)の割合は50質量%以上、特に80質量%以上であることが好ましい。最も好ましくは、ポリマー層のすべてのポリマーが含フッ素ポリマーからなり、かつ全ポリマーに対する含フッ素ポリマー(A)の割合が80質量%以上であるポリマー層からなる。
【0077】
実質的に線状の含フッ素ポリマー(A)、すなわち含フッ素ポリマー(A−1)は、含フッ素モノエンのホモポリマーやコポリマー、環化重合性含フッ素ジエンのホモポリマーやコポリマー、または含フッ素モノエンと環化重合性含フッ素ジエンとのコポリマーが好ましい。架橋された含フッ素ポリマー(A)、すなわち含フッ素ポリマー(A−2)は、含フッ素モノエンや環化重合性含フッ素ジエンとともに架橋性含フッ素ジエンを共重合させて得られるコポリマーが好ましい。含フッ素ポリマー(A−2)を製造する場合、架橋性含フッ素ジエンなどの架橋性モノマーの量は、通常全モノマーに対して50モル%以下であり、20モル%以下が好ましい。架橋性モノマーの量が多すぎると含フッ素ポリマー(A−2)が脆くなるおそれがあり、また未反応の重合性不飽和基が残存してポリマーの耐熱性が低下するおそれが生じる。架橋性モノマーの量の下限は特に限定されないが、0.1モル%が好ましい。
【0078】
含フッ素ポリマー(A)を製造するために好ましい含フッ素モノマーの前記重合性不飽和基におけるRとしては、フッ素原子、炭素数4以下のパーフルオロアルキル基および炭素数4以下のパーフルオロアルコキシ基が好ましい。環化重合性含フッ素ジエンおよび架橋性含フッ素ジエンはCF=C<で表される重合性不飽和基を2個有する化合物が好ましい。このような含フッ素モノマーとしては、以下の(a)〜(e)の含フッ素モノマーが好ましい。(a)〜(d)は含フッ素モノエンである。
(a)含フッ素オレフィン類
(b)含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー
(c)含フッ素ジオキソール系モノマー
(d)含フッ素ビニルエーテル系モノマー
(e)環化重合性含フッ素ジエン。
【0079】
含フッ素オレフィン類(a)としては炭素数2〜4の含フッ素オレフィン類が好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンなどがあり、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのパーフルオロモノマーが好ましい。
【0080】
含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)としては下記式(1)で表される化合物が好ましく、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)としては下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0081】
【化1】

【0082】
式(1)、式(2)において、R11〜R14およびR16〜R18は、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数8以下のフルオロアルキル基または炭素数8以下のフルオロアルコキシ基を表す。式(1)において、R11とR13はいずれもフッ素原子であることが好ましく、R12とR14は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。式(2)において、R16はフッ素原子、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基であることが好ましく、R17とR18はそれぞれ独立にフッ素原子または炭素数6以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0083】
具体的な式(1)で表される含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)としては、例えば下記の化合物がある。パーフルオロ(2−メチレン−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−エチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−n−プロピル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4−n−ブチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン)、パーフルオロ(2−メチレン−4,5−ジエチル−1,3−ジオキソラン)。
【0084】
具体的な式(2)で表される含フッ素ジオキソール系モノマー(c)としては、例えば下記の化合物がある。パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−1,3−ジオキソール、パーフルオロ(2−メチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−エチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−n−プロピル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−n−ブチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(2−n−ペンチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(4−メトキシ−1,3−ジオキソール)。
【0085】
含フッ素ビニルエーテル系モノマー(d)としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
CF=CFO−R21 (3)
21は、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数16以下のフルオロアルキル基、環の炭素数が4〜8で環にフルオロアルキル基等の置換基を有していてもよい全炭素数16以下のフルオロシクロアルキル基、このフルオロシクロアルキル基で置換された上記フルオロアルキル基、または、−R22−X基(ただし、R22は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数16以下のフルオロアルキレン基、Xは官能基を表す)を表す。R21としては、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数8以下のパーフルオロアルキル基、環の炭素数が5または6で環に炭素数4以下のパーフルオロアルキル基を有していてもよい全炭素数10以下のフルオロシクロアルキル基、および、−R23−YX’基(R23は炭素原子間にエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数8以下のパーフルオロアルキレン基、Yは単結合または炭素数1〜4のアルキレン基、X’は−SOF、−COOR26、−CN、−NH、−SiR27(OR283−mを表す。ただし、R26は水素原子または炭素数4以下のアルキル基、R27は炭素数4以下のアルキル基、R28は炭素数4以下のアルキル基またはアルコキシアルキル基、mは0〜2の整数を表す。)が好ましい。特に好ましいR21は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、−R24−X’基(R24は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基、この場合のX’は−SOFまたは−COOR26を表す。)である。
【0086】
環化重合性含フッ素ジエン(e)は、CF=C<を2個有するかCF=C<と他の重合性不飽和基とを有する含フッ素ジエンであって、両重合性不飽和基を結合する連結基の長さが特定範囲にある含フッ素ジエンが好ましい。連結基の長さが特定範囲外にある含フッ素ジエンは架橋性含フッ素ジエンとなる。環化重合性含フッ素ジエン(e)としては、下記式(4)で表される化合物の内特定長さの連結基を有する化合物が好ましい。
CF=CR31−Q−CR32=CR3334 (4)
式(4)において、R31、R32は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、R33、R34は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表し、Qは連結基を表す。R31、R32は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子であることが好ましく、R33、R34はいずれもフッ素原子であることが好ましい。
【0087】
は連結基であり、原子数で表したその長さ(側鎖原子を除く)は2〜4であり、2または3であることが好ましく、3であることが最も好ましい。連結基は炭素原子または炭素原子と酸素原子とからなることが好ましく、酸素原子が存在する場合は連結基の片末端または両末端に存在することが好ましい。炭素原子には水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基などの炭素数4以下のアルキル基、トリフルオロメチル基やトリクロロメチル基などの炭素数4以下のハロアルキル基が結合していることが好ましい。
【0088】
環化重合性含フッ素ジエン(e)は下記式(4−1)または式(4−2)で表される化合物が好ましい。より好ましい環化重合性含フッ素ジエン(e)は下記式(4−1)で表される化合物である。最も好ましい化合物は、式(4−1)で表されかつパーフルオロの(すなわち、炭素原子に結合した水素原子を有しない)環化重合性含フッ素ジエンである。
CF=CF−O−R41−CR42=CF (4−1)
CF=CF−OC(R43O−CR42=CF (4−2)
41は、側鎖を除いた炭素数が1または2であり全炭素数が4以下の、アルキレン基、フルオロアルキレン基またはクロロフルオロアルキレン基を表し、R42は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表し、R43は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数2以下のフルオロアルキル基または炭素数2以下のクロロフルオロアルキル基を表す。
【0089】
環化重合性含フッ素ジエン(e)の具体的化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。
CF=CF−OCFCF−CF=CF
CF=CF−OCHCF−CF=CF
CF=CF−OCClCF−CF=CF
CF=CF−OCFCF−CH=CF
CF=CF−OCFCF−CCl=CF
CF=CF−OCFCHF−CF=CF
CF=CF−OCFCFCl−CF=CF
CF=CF−OCFCF−CF=CFCl
CF=CF−OCFCF(CF)−CF=CF
CF=CF−OCFCF(CF)−CH=CF
CF=CF−OCFCF(CF)−CCl=CF
CF=CF−OC(CFCF−CF=CF
CF=CF−OCF−CF=CF
CF=CF−OCF(CF)−CF=CF
CF=CF−OCFO−CF=CF
CF=CH−OCFO−CH=CF
CF=CCl−OCFO−CCl=CF
CF=CF−OCHO−CF=CF
CF=CF−OCClO−CF=CF
CF=CF−OC(CFO−CF=CF
含フッ素ポリマー(A)は、上記(a)〜(e)の含フッ素モノマーから選ばれる1種のホモポリマーまたは2種以上のコポリマーからなる。場合によってはこれらモノマー以外のモノマーを上記(a)〜(e)の含フッ素モノマーと共重合させることもできる。ここでいう他のモノマーは非架橋性のモノマーであり、通常はモノエンである。他のモノマーとしては、例えば、(パーフルオロアルキル)ビニルエーテルなどの重合性不飽和基にフッ素原子を有しない含フッ素モノマー、エチレンやプロピレンなどのオレフィン類、アルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル類、酢酸ビニルなどのビニルエステル類などがある。これら他のモノマーを使用する場合、他のモノマーは全モノマーに対して50モル%未満が好ましく、20モル%未満が特に好ましい。
【0090】
上記した各種モノマーから得られる含フッ素ポリマー(A−1)は実質的に線状のポリマーであり、通常熱可塑性である。また多くの場合溶媒可溶性である。環化重合性含フッ素ジエン(e)の重合においては、2個の重合性不飽和基の一方の重合性不飽和基の炭素原子の1個と他方の重合性不飽和基の炭素原子の1個が結合して環を形成するとともに、環形成に関与しなかった2個の炭素原子はそれぞれ結合手を形成して2価のモノマー単位が形成される。環化重合性含フッ素ジエン(e)から形成されるモノマー単位が2価であることより、モノエンから形成される2価のモノマー単位と同様、このモノマーからは線状のポリマーが形成される。
【0091】
含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)および環化重合性含フッ素ジエン(e)からは、主鎖に環構造を有するポリマーが得られる。重合性不飽和基を有するモノマーから得られるポリマーの主鎖は炭素原子の連鎖からなる。この主鎖の炭素原子は重合性不飽和基の炭素原子から形成され、環化重合性ジエンのポリマーにおいても2個の重合性不飽和基の4個の炭素原子から主鎖が形成される。主鎖に環構造を有するとは、環を構成する炭素原子の少なくとも1個が主鎖の炭素原子であることを意味する。前記モノマーの構造が示すように、環は1または2個の酸素原子を有する炭素環であることが好ましい。含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)から形成されるモノマー単位ではジオキソラン環中の1個の炭素原子が主鎖の炭素原子となり、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)から形成されるモノマー単位ではジオキソール環中の2個の炭素原子が主鎖の炭素原子となる。環化重合性含フッ素ジエン(e)から形成されるモノマー単位では重合性不飽和基の4個の炭素原子の内2〜4個が環の炭素原子となる。連結基Qに酸素原子を有する場合は酸素原子と炭素原子からなる環が形成され、炭素原子のみからなる場合は炭素環が形成される。ジオキソラン環やジオキソール環を含めこれら酸素原子を有する場合もある炭素環を以下脂肪族環という。
【0092】
含フッ素ポリマー(A)は主鎖に脂肪族環を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。すなわち、含フッ素ポリマー(A−1)、含フッ素ポリマー(A−2)のいずれも主鎖に脂肪族環を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。この含フッ素ポリマーにおける全モノマー単位に対する脂肪族環を有するモノマー単位の割合は20モル%以上が好ましく、特に50モル%以上が好ましい。
【0093】
前記のように含フッ素ポリマー(A)の少なくとも一部は架橋された含フッ素ポリマーであることが好ましい。架橋された含フッ素ポリマーである含フッ素ポリマー(A−2)は、前記のような線状ポリマーを形成するモノマーと重合性不飽和基を2個以上有するモノマー(ただし、環化重合性を有しないモノマー)を共重合して得られるポリマーが好ましい。重合性不飽和基を2個以上有するモノマーとしては架橋性含フッ素ジエンが好ましい。その他フッ素原子を有しないジエンやフッ素原子を有していてもよいポリエンを使用することもできる。
【0094】
架橋性含フッ素ジエンとしては下記式(5)で表される化合物が好ましい。このような含フッ素ジエンは、連結基Qの長さが短すぎるまたは長すぎることより環化重合が困難なジエンである。このため2個の重合性不飽和基はそれぞれ他のモノマー分子と結合することより、架橋構造が形成される。
CF=CR51−Q−CR52=CR5354 (5)
式(5)において、R51、R52は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、R53、R54は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表し、Qは連結基を表す。R51、R52は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または塩素原子であることが好ましく、R53、R54はいずれもフッ素原子であることが好ましい。
【0095】
は連結基であり、原子数で表したその長さ(側鎖原子を除く)は1または5以上であり、5〜16であることが好ましく、6〜12であることが最も好ましい。連結基は炭素原子または炭素原子と酸素原子とからなることが好ましく、酸素原子が存在する場合は連結基の片末端または両末端に存在することが好ましい。炭素原子には水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基などの炭素数2以下のアルキル基、トリフルオロメチル基やトリクロロメチル基などの炭素数2以下のハロアルキル基が結合していることが好ましい。好ましい式(5)で表される化合物はパーフルオロの化合物であり、特に好ましい式(5)で表される化合物は下記式(5−1)で表される化合物(ただし、nは4〜10の整数)である。
CF=CF−O(CFO−CF=CF (5−1)。
【0096】
架橋性含フッ素ジエンとしてさらに他の構造の架橋性含フッ素ジエンを使用することもできる。例えば、上記式(5)における重合性不飽和基を他の重合性不飽和基含有有機基に置換した架橋性含フッ素ジエンやパーフルオロジビニルエーテルなどがある。
【0097】
本発明の複合微粒子の大きさは特に限定されない。しかし、複合微粒子は特定の大きさの平板状シリカ微粒子の表面を含フッ素ポリマー(A)で被覆したものであることより、その大きさを複合微粒子中の平板状シリカ微粒子の割合で表した場合には複合微粒子中の平板状シリカ微粒子の割合は1〜70質量%である。より好ましい割合は3〜50質量%である。その割合が70質量%を超える場合には、無機質微粒子の表面が含フッ素ポリマー(A)で充分被覆されず、複合微粒子が凝集し易くなりまた有機ポリマーとの親和性が不充分となりやすい。また、その割合が1質量%未満場合には、複合微粒子の利用において平板状シリカ微粒子に由来する特性の発揮が困難となりやすい。
【0098】
複合微粒子における含フッ素ポリマー(A)が実質的に含フッ素ポリマー(A−2)のみからなる場合、この複合微粒子における平板状シリカ微粒子の割合は5〜70質量%が好ましく、特に10〜50質量%が好ましい。複合微粒子における含フッ素ポリマー(A)が含フッ素ポリマー(A−1)と含フッ素ポリマー(A−2)からなる場合、この複合微粒子における平板状シリカ微粒子の割合は1〜50質量%が好ましく、特に3〜30質量%が好ましい。この複合微粒子中の含フッ素ポリマー(A−1)と含フッ素ポリマー(A−2)の比は特に限定されるものではないが、平板状シリカ微粒子と含フッ素ポリマー(A−2)の合計に対する平板状シリカ微粒子の割合が90質量%以下となる量の含フッ素ポリマー(A−2)を含むことが好ましい。
【0099】
本発明の複合微粒子は、水性媒体や他の液状媒体に分散した分散体の形態で成形材料として種々の用途に使用し得る。また、液状媒体と分離して得られる粉末の形態で成形材料として種々の用途に使用し得る。
【0100】
複合微粒子が液状媒体に分散された分散体は、必要に応じ他の添加成分を分散ないし溶解させて、コーティング剤としてコーティング、キャスト成形などの用途に使用し得る。他の添加成分としては後述マトリックスポリマーやマトリックスポリマーとなり得る硬化性樹脂などのバインダーなどがある。液状媒体としては、複合微粒子の製造に使用された水性媒体に限られず、他の液状媒体を使用することができる。たとえば、溶媒置換法や粉末化した複合微粒子を液状媒体に分散させる方法などで種々の液状媒体を使用した分散体を製造し得る。液状媒体としては、複合微粒子表面のポリマーに親和性のある液状媒体が好ましい。複合微粒子表面のポリマーが含フッ素ポリマー(A)の場合、疎水性の高い液状媒体、たとえばフッ素系溶媒など、が好ましい。液状媒体が含フッ素ポリマーを溶解しやすい液状媒体であっても、複合微粒子表面のポリマーが架橋ポリマーである場合にはシリカ微粒子表面が露出するなどのおそれはない。
【0101】
複合微粒子の粉末は前記製法で得られた複合微粒子分散水性媒体から複合微粒子を分離することにより得られる。必要により、洗浄等を行って、複合微粒子を精製し得る。複合微粒子の粉末は各種成形材料として使用し得る。この場合、複合微粒子中のシリカの割合は1〜50質量%であることが好ましく、特に1〜20質量%であることが好ましい。またこの場合、複合微粒子は少なくとも表面層のポリマーは架橋されていないポリマーであることが成形性の面で好ましく、特に平板状シリカ微粒子の表面に接した層を除き、ポリマーのほとんどの部分は含フッ素ポリマー(A−1)からなることが好ましい。
【0102】
複合微粒子の粉末はまた他の材料と複合化して各種成形材料として使用できる。特に各種ポリマーに配合し成形材料として使用することが好ましい。各種ポリマー(以下マトリックスポリマーという)としては含フッ素ポリマー(A−1)やそれと同種の含フッ素ポリマーが好ましいが、これに限定されない。複合微粒子の粉末とマトリックスポリマーとを複合した成形材料においては、複合微粒子とマトリックスポリマーの合計に対する複合微粒子中のシリカの割合は0.1〜30質量%であることが好ましく、特に1〜20質量%であることが好ましい。成形材料中には複合微粒子とマトリックスポリマー以外に種々の添加剤を配合することもでき、その配合量は添加剤の種類や配合目的に応じて選択され、特に限定されるものではない。
【0103】
またこの用途に使用する複合微粒子中の平板状シリカ微粒子の割合は複合微粒子とマトリックスポリマーの量比によって1〜70質量%から選択される。マトリックスポリマーに複合微粒子を配合する主たる目的がシリカ微粒子の均一な配合である場合には比較的高いシリカ微粒子割合の複合微粒子を使用することが好ましい。また、比較的高いシリカ微粒子割合の複合微粒子における実質的にすべての含フッ素ポリマー(A)は含フッ素ポリマー(A−2)であることが好ましい。比較的高い無機質微粒子割合の複合微粒子としては、無機質微粒子の割合が30〜90質量%、特に50〜70質量%の複合微粒子が好ましい。
【0104】
上記マトリックスポリマーとしての含フッ素ポリマーとしては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル系コポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系コポリマー(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン系コポリマー(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン系コポリマー(ECTFE)などの汎用含フッ素ポリマーのほか、熱可塑性含フッ素エラストマーや軟質含フッ素ポリマーなどがある。また、含フッ素ポリイミド樹脂や含フッ素エポキシ樹脂などの含フッ素硬化性樹脂にこの複合微粒子の粉末を配合することができる。さらに前記した含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)、環化重合性含フッ素ジエン(e)などのモノマーに由来する単位を含む含フッ素ポリマー、すなわち主鎖に脂肪族環を有する含フッ素ポリマー、に配合することもできる。好ましい含フッ素ポリマーは熱可塑性含フッ素ポリマーである。
【0105】
複合微粒子の粉末はまた含フッ素ポリマー以外の熱可塑性や硬化性のポリマーからなるマトリックスポリマーに配合して使用し得る。また、硬化してマトリックスポリマーとなり得る硬化性樹脂に配合し得る。たとえば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンチオエーテル、ポリスルホン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化性ポリイミド樹脂などがある。
【0106】
複合微粒子の粉末とマトリックスポリマーを含む成形材料は加熱成形、加熱加圧成形、押出し成形、射出成形などの各種成形法で成形物とすることができる。複合微粒子中のポリマーの少なくとも一部が架橋されたポリマーである場合、マトリックスポリマーが溶融して成形される成形法であっても複合微粒子中の架橋されたポリマーは溶融することがなく、複合微粒子中のシリカ微粒子表面が露出して溶融マトリックスポリマーに接するおそれは少ない。したがって、溶融成形においても複合微粒子は非溶融性の充填剤として機能し、平板状シリカ微粒子の凝集や偏在がなく、平板状シリカ微粒子がマトリックスポリマー中に均一に単分散した成形物が得られる。
【0107】
さらに、官能基を有するポリマーの表面層を有する複合微粒子を使用することにより、マトリックスポリマーに対する親和性を向上させることもでき、複合微粒子表面の官能基のないポリマーとマトリックスポリマーとの親和性が低い場合でも両者の親和性を向上させ、両者を相分離させることなく均一に混合することもできる。官能基を有するポリマーとしては、たとえば前記−SOFや−COOR25などの官能基を有する含フッ素ビニルエーテル系モノマー(d)の単位を有する含フッ素ポリマー(A)がある。
【0108】
本発明の複合微粒子を含有する成形材料(複合微粒子からなるものや複合微粒子とマトリックスポリマーとからなるもの)から得られるポリマー成形体は、平板状シリカ微粒子に由来する機能を発揮し得るポリマー成形体となる。たとえば、ポリマー成形体の剛性や強度の向上、熱膨張率の低減、耐熱性の向上などの物理的特性の向上に有効である。
【0109】
マトリックスポリマーとしては特に架橋していない含フッ素ポリマーが好ましい。特に前記した含フッ素オレフィン類(a)、含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)、含フッ素ビニルエーテル系モノマー(d)、環化重合性含フッ素ジエン(e)などのモノマーに由来する単位を含む含フッ素ポリマーが好ましい。さらに好ましくは、含フッ素メチレンジオキソラン系モノマー(b)、含フッ素ジオキソール系モノマー(c)または環化重合性含フッ素ジエン(e)に由来する単位を全繰り返し単位の20モル%以上(特に50モル%以上)含む含フッ素ポリマーが好ましい。この含フッ素ポリマーが他の繰り返し単位を含む場合はテトラフルオロエチレンなどの含フッ素オレフィン類(a)や含フッ素ビニルエーテル系モノマー(d)が好ましく、含フッ素ビニルエーテル系モノマー(d)としては官能基を有する化合物であってもよい。以下この含フッ素ポリマーを含フッ素ポリマー(B)という。含フッ素ポリマー(B)は主鎖に脂肪族環構造を有していることより他の含フッ素ポリマーに比較して透明性が高く、透明フッ素樹脂として知られているポリマーであり、光学用途にも使用される含フッ素ポリマーである。
【0110】
複合粒子における含フッ素ポリマー(A)やマトリックスポリマーである含フッ素ポリマー(B)は実質的にパーフルオロポリマーであることが好ましい。従来、パーフルオロポリマーに平板状シリカ微粒子を凝集なく均一に配合することは困難であった。本発明の複合粒子を配合することによりパーフルオロポリマーに平板状シリカ微粒子を凝集なく均一に配合することが可能となり、比較的少量の平板状シリカ微粒子の配合によってシリカ微粒子配合による特性を発揮させることができる。
【0111】
パーフルオロポリマーやフッ素含有量の高い含フッ素ポリマーは絶縁材料として低誘電性(低誘電率、低誘電正接)、電気絶縁性、耐熱性などに優れた特性を有し、特に高周波用絶縁材料として知られている。そのため、たとえば、電子回路基板、LSI素子基板、電子部品、電線被覆などにおける絶縁材料として使用される。しかし代表的パーフルオロポリマーであるPTFEは剛性が低く、熱膨張率が高いなど機械的特性が充分ではない。機械的特性改良のためは比較的多量のガラス繊維やシリカなどの無機質充填材などを配合が必要となり、その結果低誘電性が犠牲となる。本発明の複合微粒子をフッ素含有量の高い含フッ素ポリマー、特にパーフルオロポリマー、に配合した材料は、比較的少量の平板状シリカ微粒子の配合により剛性や熱膨張率などの機械的特性が改良され、球状のナノサイズシリカ微粒子と比較しても、より少量の配合で熱膨張率の低下が発現される。したがってシリカ配合による低誘電性特性の低下も少ないという特徴を有する。また、上記以外の機械的特性、電気的特性、成形性、加工性、耐熱性、化学的安定性、低吸水性などの含フッ素ポリマー本来の特性の低下も少なくなる。
【0112】
平板状シリカ微粒子を含む本発明の複合微粒子は特に低誘電率の電気絶縁材料用の材料として優れた特性を有する。含フッ素ポリマー(A)の割合が高い本発明複合微粒子の粉末はそのまま成形材料として使用して、加熱加圧成形、押出し成形、射出成形等でシート、フィルム、その他の成形物に成形できる。また、本発明複合微粒子の粉末を含フッ素ポリマー(B)などのパーフルオロポリマーやフッ素含有量の高い含フッ素ポリマーに配合した成形材料を使用して同様な成形物に成形できる。これら成形物中の複合微粒子に由来するシリカの量は全含フッ素ポリマーに対して0.5〜25質量%が好ましく、特に1〜15質量%が好ましい。このような成形物は電子回路基板として優れた特性を有する。たとえば、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素ポリマー(A)を有する複合微粒子と含フッ素ポリマー(B)からなるマトリックスとを組み合わせた成形材料より電子回路基板等に有用な成形物を得ることができる。
【0113】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。以下の例において「%」は特に言及しない限り質量%を示す。複合微粒子中のシリカ微粒子の含有割合は熱重量分析(TGA)による600℃昇温後の残存重量から求めた含有割合である。また、使用した原材料は以下のとおりである。
フルオロアルキルシランA:CF(CFCHCHSi(OCH(GE東芝シリコーン社製TSL8257)。
フッ素系界面活性剤A:CF(CFCONHCN(CH)・HCl。
フッ素系界面活性剤B:CF(CFCOONH
PBVE:CF=CFOCFCFCF=CF;パーフルオロ(3−ブテニルビニルエーテル)。
HMDVE:CF=CFO(CFOCF=CF;パーフルオロ(ヘキサメチレンジビニルエーテル)。
IPP:((CHCHOCOO) ;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート。
PBTHF:パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)。
TFE:テトラフルオロエチレン。
APS:過硫酸アンモニウム。
【実施例】
【0114】
(合成例1)平板状シリカ微粒子の合成
イオン交換水34gにフッ素系界面活性剤A1.40g(2.4mmol)を溶解し均一な溶液とした。この溶液にテトラエトキシシラン5.0g(24mmol)を添加して室温で透明均一になるまで撹拌した後、40℃の恒温漕中に2日間保持した。次に、この反応液をイソプロピルアルコール25g、フルオロアルキルシランA1.12gの混合液に添加した。60℃、3時間加熱後、室温まで冷却し、さらにイソプロピルアルコール50g、ヘキサメチルジシロキサン4.68g(29mmol)および濃塩酸2.9mlを加えて室温で1日撹拌した。白色沈殿物を濾別し、イソプロピルアルコール/水=1/1で数回洗浄した後、イソプロピルアルコール30g、ジクロロペンタフルオロプロパン55gの混合液に分散した。モレキュラーシーブスにより脱水してやや青みがかった透明な分散液を得た。
【0115】
得られた分散液を細孔径0.2μmのフィルターで濾過したところ実質的に分散液の全量が通過し、濾別された固体分はなかった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリメチルメタクリレート換算で測定される微分分子量分布曲線の面積比で測定したこの分散液中のシリカ微粒子の数平均分子量は、15000であり、100万以上の成分は実質的に存在していなかった。さらに、この分散液を水中に滴下してシリカ微粒子を水に分散させ、これを銅メッシュ上にすくい取ったものを透過型電子顕微鏡(TEM)により粒子形状を観察したところ大きさが10〜50nmの不定形の粒子が観察された。市販のナノサイズ球状シリカ微粒子と比較すると厚さは5nm以下の不定形平板状であることが推定される。
【0116】
次に、得られた分散液21g(SiO含量0.4g)にイソプロピルアルコール10g、ジクロロペンタフルオロプロパン60gを加え、これにフッ素系界面活性剤B0.2gを溶解した。この溶液をフッ素系界面活性剤Bを0.3%含有する水中に添加し、撹拌しながら超音波を照射して分散させたのち、ロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコール、ジクロロペンタフルオロプロパンを留去した。得られた水分散液は青白色透明であった。
【0117】
(実施例1)
合成例1で得られた平板状シリカ微粒子水分散液にイオン交換水を添加して100gとしたものにPBVE0.58gおよびHMDVE0.02g、重合開始剤としてIPP0.01gの混合液を添加し、撹拌しながら5分間超音波照射して充分に分散させた。リン酸水素ナトリウムを少量添加してpHを4〜5に調整したのち200ccガラス製反応器中で、撹拌しながら40℃で20時間重合させた。その後室温に冷却し、PBVE2.5gおよびIPP0.01gの混合液を反応器に添加して、撹拌しながら超音波照射により均一な溶液とした。その後再び40℃に昇温し、撹拌しながら20時間反応させた。その後、凝集・乾燥して1.5gの白色粉体を得た。熱重量分析により加熱残分から求めたシリカ含量は2%であった。
【0118】
得られた複合微粒子は、大きさ10〜50nm、厚さ1〜5nmの平板状シリカ微粒子の表面が2層のフッ素樹脂で被覆されており、内層がHMDVEで架橋されたPBVEの重合体で、外層がPBVEの単独重合体であると考えられる。
【0119】
得られた粉体をプレス成形機を用いて300℃で錠剤状(径12mm、厚さ2.4mm)に成形した。この錠剤状成形物は半透明で、シリカ微粒子の分散性が良いことが示唆された。TMA(熱機械分析機)を用いて熱膨張率を測定したところ、30〜90℃の平均値として、60ppm/℃であった。PBVE重合体単体の熱膨張率75ppm/℃と比較して、わずかなシリカ含量において熱膨張率を低下させる効果が有ることがわかった。また、このサンプルを用いて、誘電率/誘電正接を測定したところ100MHzで2.1/0.001であり低誘電特性であることが確認できた。
【0120】
(実施例2)
合成例1と同様にして製造された平板状シリカ微粒子水分散液にイオン交換水を添加して100gとしたものにPBVE0.58gおよびHMDVE0.02g、重合開始剤としてIPP0.01gの混合液を添加し、撹拌しながら5分間超音波照射して充分に分散させた。リン酸水素ナトリウムを少量添加してpHを4〜5に調整したのち200ccガラス製反応器中で、撹拌しながら40℃で20時間重合させた。その後室温に冷却し、PBVE1.5gおよびIPP0.01gの混合液を反応器に添加して、撹拌しながら超音波照射により均一な溶液とした。その後再び40℃に昇温し、撹拌しながら20時間反応させた。その後、凝集・乾燥して1.1gの白色粉体を得た。熱重量分析により加熱残分から求めたシリカ含量は15%であった。
【0121】
得られた複合粒子と乳化重合により得られたPBVE重合体微粒子を混合して、シリカ含量を8%に調製した。この粉体を、プレス成形機を用いて300℃で錠剤状(径12mm、厚さ2.4mm)に成形した。この錠剤状成形物は半透明で、シリカ微粒子の分散性が良いことが示唆された。TMAを用いて熱膨張率を測定したところ、30〜90℃の平均値として、52ppm/℃であった。PBVE重合体単体の熱膨張率75ppm/℃と比較して、わずかなシリカ含量において熱膨張率を低下させる効果が有ることがわかった。また、このサンプルを用いて、誘電率/誘電正接を測定したところ100MHzで2.2/0.003であり低誘電特性であることが確認できた。
【0122】
(比較例)
乳化重合により得られたPBVE重合体の粉末と溶融シリカ微粒子粉末(平均粒径0.6μm)を混合しシリカ含量を10および20%に調節した。これらの錠剤状成形物は白色不透明であった。TMAを用いて熱膨張率を測定したところ、30〜60℃の平均値として、62ppm/℃(10%シリカ)および51ppm/℃(20%シリカ)であった。
このように、本発明の複合粒子より得られた成形物と比較例の溶融シリカ複合体のCTE(30〜60℃の平均値)とを比較すると、図1に示すとおり、本発明の複合粒子の方が少ないシリカ含量でCTEを低減することが可能であることがわかる。
【0123】
(実施例3)
合成例1と同様にして製造された平板状シリカ含有水溶液にイオン交換水を添加して100gとしたものにPBVE2.0gを添加し、撹拌しながら5分間超音波照射して充分に分散させた。リン酸水素ナトリウムを少量添加してpHを4〜5に調整したのち、APS0.1gを添加して200ccステンレス製反応器中で、撹拌しながらTFE0.7gを導入した。50℃で20時間重合させた。その後室温に冷却し、凝集・乾燥して2.6gの白色粉体を得た。熱重量分析により加熱残分から求めたシリカ含量は4%であった。
【0124】
得られた粉体を、プレス成形機を用いて320℃で錠剤状(径12mm、厚さ2.4mm)に成形した。この錠剤状成形物は半透明で、シリカ微粒子の分散性が良いことが示唆された。TMAを用いて熱膨張率を測定したところ、30〜60℃の平均値として、72ppm/℃であった。60〜120℃の平均値として、220ppm/℃であった。PBVE/TFE共重合体の熱膨張率120ppm/℃以上(30〜50℃)、200ppm/℃以上(60〜120℃)と比較して、わずかなシリカ含量において熱膨張率を低下させる効果が有ることがわかった。また、このサンプルを用いて、誘電率/誘電正接を測定したところ100MHzで2.1/0.001であり低誘電特性であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
ナノサイズの平板状シリカ微粒子をコアとし疎水性の高い含フッ素ポリマーをシェルとするコア/シェル状複合微粒子からなる粉末は、該平板状シリカ微粒子が均一に分散した含フッ素ポリマー成形物を製造するための成形材料として優れ、成形物中の平板状シリカ微粒子含有量が比較的少量であってもシリカ粒子添加の効果が発揮される。同様に、該複合微粒子からなる粉末は各種ポリマー材料の添加剤として使用でき、かかる粉末を含む成形材料は、シリカ粒子添加効果を発揮させるに必要な添加量を少なくすることができることより、添加剤を多量に配合することにより生じる欠点を解消することができる。該複合微粒子からなる粉末を含む含フッ素ポリマーからなる成形材料は、特に、電子部品等における低誘電率絶縁性回路基板材料や防湿絶縁性封止材料として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】実施例、比較例における成形物のシリカ含有量と熱膨張率の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が含フッ素ポリマー(A)で被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子であり、該含フッ素ポリマー(A)は重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマーであり、かつ該複合微粒子中の平板状シリカ微粒子の割合が1〜70質量%であることを特徴とする複合微粒子。
【請求項2】
含フッ素ポリマー(A)が、CF=C<または−CF=CR−で表される重合性不飽和基を有する含フッ素モノマー(ただし、Rはフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を表す)に由来する単位を含有する含フッ素ポリマーである、請求項1に記載の複合微粒子。
【請求項3】
含フッ素ポリマー(A)のフッ素含有量が50〜76質量%である、請求項1または2に記載の複合微粒子。
【請求項4】
ナノサイズの平板状シリカ微粒子が界面活性剤の存在下に水性媒体中に分散している重合系中で含フッ素モノマーをラジカル重合することにより、表面が下記含フッ素ポリマー(A)で被覆されたナノサイズの平板状シリカ微粒子からなる複合微粒子を製造することを特徴とする複合微粒子の製造方法。
含フッ素ポリマー(A):重合性不飽和基の炭素原子にフッ素原子が結合している含フッ素モノマーに由来する単位を含有する含フッ素ポリマー。
【請求項5】
含フッ素疎水性基を有するカップリング剤で予め表面修飾された平板状シリカ微粒子を使用する、請求項4に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項6】
界面活性剤が含フッ素疎水性基を有する界面活性剤である請求項4または5に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項7】
含フッ素モノマーの少なくとも一部が、架橋性の含フッ素モノマーである、請求項4、5または6に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項8】
重合系中で、少なくとも一部が架橋性の含フッ素モノマーである含フッ素モノマーを重合し、次いで実質的に架橋性の含フッ素モノマーを含まない含フッ素モノマーを重合する、請求項4、5、6または7に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項9】
重合性不飽和基を有する含フッ素モノマーが、CF=C<または−CF=CR−で表される重合性不飽和基を有する含フッ素モノマー(ただし、Rはフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を表す)である、請求項4〜8のいずれか一項に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1、2または3に記載の複合粒子の粉末を含む成形材料。
【請求項11】
請求項1、2または3に記載の複合粒子の粉末と熱可塑性ポリマーまたは硬化性樹脂を含む成形材料。
【請求項12】
請求項1、2または3に記載の複合粒子の粉末と熱可塑性の含フッ素ポリマーを含む成形材料。
【請求項13】
請求項10、11または12に記載の成形材料を成形してなる成形物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−84347(P2007−84347A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−5584(P2004−5584)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】