説明

複合操作型電気部品

【課題】スライダをスライド移動させる回転操作に加えてプッシュ操作も行える複合操作型電気部品を提供すること。
【解決手段】操作部材7は軸受凹所7bに支軸17を嵌挿させた状態で捩りコイルばね9に弾性付勢されており、ハウジング1に回転可能かつ前後進可能に支持されている。操作部材7の駆動凸部7fはスライダ8の係合凹部8aと摺動可能に係合しており、操作部材7が回転操作されると、スライダ8がスライド移動して抵抗パターン5に対する摺動子11の接触位置が変化する。また、操作部材7がプッシュ操作されると、摺動子10が固定接点4bに接触する。回転操作力やプッシュ操作力が除去されたときには、捩りコイルばね9の弾性力によって操作部材7は初期位置へ自動復帰する。ハウジング1には、回転操作時やプッシュ操作時に操作部材7を位置規制する傾斜壁2dやガイド凹所2cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転操作をスライダの直線運動に変換させて電気信号を取り出すことができると共に、操作部材が初期位置へ自動復帰するセルフリターン機能を有する電気部品に係り、特に、回転操作とプッシュ操作とを選択的に行えるようにした複合操作型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
操作部材の回転動作をスライダのスライド移動に変換して電気信号が取り出せるようになっている回転操作型電気部品は、スライダのスライド移動量が少ない場合でも操作部材を比較的大きく回転移動させることができるため、小型にして高精度な操作が行えるという利点を有している。また、操作部材が操作後に初期位置へ自動復帰するセルフリターン機能が具備されていると、操作開始時には操作部材が常に初期位置にセットされているため、操作部材の設定状態を確認しなくても操作が行えて便利である。
【0003】
このように回転操作がスライダの直線運動に変換できると共にセルフリターン機能を有する電気部品の従来例としては、操作つまみと一体のレバーをハウジングの鍔部等で軸支し、該レバーの下端膨出部をハウジング内にスライド移動可能に収納されているスライダの凹所に摺動可能に係合させると共に、巻回部を該レバーに取り付けた捩りコイルばねの両腕部をハウジングに掛止させるという構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来例において、ハウジング内にはスライダの移動方向に沿って基板が設置されており、固定接点が配設されている該基板の表面に、スライダに保持された可動接点(摺動子)が摺接している。レバーは常に捩りコイルばねに弾性付勢されており、その付勢力に抗してユーザが操作つまみを一方向へ回転させると、レバーの下端膨出部が同じ向きに回転してスライダを駆動するため、スライダが基板に沿って直線的に移動して可動接点が固定接点に接離するようになっている。また、ユーザが操作つまみに対する回転操作力を除去すると、押し撓められていた捩りコイルばねの両腕部の弾性力によって、回転姿勢のレバーが初期位置まで押し戻されるようになっている。
【特許文献1】実登2525658号公報(第2頁、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転操作をスライダの直線運動に変換させて電気信号を取り出すようにした電気部品において、回転操作に加えてプッシュ操作も行えるようになっていると多機能化が図れて便利である。しかしながら、前述した従来例のように、操作つまみと一体のレバーがハウジングに軸支され、これら操作つまみとレバーが回転方向以外へは移動できないようになっている電気部品では、回転軸と直交する向きに操作部材を押し込むというプッシュ操作機能を追加することはできなかった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、スライダをスライド移動させる回転操作に加えてプッシュ操作も行える複合操作型電気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の複合操作型電気部品では、ハウジングと、このハウジングの内部にスライド移動可能に収納されたスライダと、前記ハウジングの外方へ突出するつまみ部を有して該つまみ部の突出量を増減させる前後進動作および該つまみ部を揺動させる回転動作が可能な状態で前記ハウジングに支持された操作部材と、この操作部材の回転動作を前記スライダのスライド移動に変換するリンク機構と、前記操作部材を初期位置へ復帰させる捩りコイルばねと、前記ハウジングに内設されて前記スライダのスライド位置に応じた電気信号が出力可能な第1の信号発生手段と、前記ハウジングに内設されて前記操作部材の前後進位置に応じた電気信号が出力可能な第2の信号発生手段とを備え、前記ハウジングには、回転操作時の前記操作部材の前後進動作を規制する第1の規制部と、プッシュ操作時の前記操作部材の回転動作を規制する第2の規制部とが設けられており、かつ、前記捩りコイルばねには、前記操作部材に取り付けられた巻回部と、この巻回部の両端から延出する一対の腕部が設けられており、これら両腕部が前記操作部材の非回転動作時に前記ハウジングに弾接して掛止されていると共に、一方の前記腕部が前記操作部材の回転動作時に該操作部材に付勢されて前記ハウジングから離脱するように構成した。
【0007】
このように構成された複合操作型電気部品は、操作部材を回転させるとスライダがスライド移動するため第1の信号発生手段から電気信号を取り出すことができ、また、操作部材を前後進させると第2の信号発生手段から電気信号を取り出すことができる。そして、回転操作時には捩りコイルばねの一方の腕部が操作部材と共に回転してハウジングから離脱するため、捩りコイルばねの両腕部が閉じる向きに弾性変形し、プッシュ操作時には捩りコイルばねの巻回部が操作部材と共に後退するため、ハウジングに掛止されている両腕部が閉じる向きに弾性変形する。そのため、回転操作力やプッシュ操作力が除去されると、捩りコイルばねの両腕部の弾性力によって操作部材は初期位置へ自動復帰することとなり、異なる操作のセルフリターン機能を1個の捩りコイルばねで簡単に実現できる。また、この初期位置においても操作部材は捩りコイルばねに弾性付勢された状態に保たれるため、ハウジングに対して回転可能かつ前後進可能な操作部材を安定的に保持することができる。しかも、ハウジングには第1および第2の規制部が設けられているため、回転操作時に操作部材が誤って前後進したり、プッシュ操作時に操作部材が誤って回転する虞はない。
【0008】
上記の構成において、操作部材に軸受凹所が設けられると共に、ハウジングの内部にこの軸受凹所に摺動可能に嵌挿される支軸が突設されており、かつ、前記軸受凹所内にプッシュ操作時に前記支軸を退避させるための逃げスペースが形成されており、非操作時に前記捩りコイルばねの弾性力によって前記軸受凹所の周壁に圧接する前記支軸を回転中心として、前記操作部材の回転動作が行われるようにしてあると、操作部材をがた付きなく回転可能かつ前後進可能に支持することができると共に、支軸の突出方向に沿う電気部品全体の高さ寸法を抑制した薄型化が図りやすくなる。
【0009】
また、上記の構成において、リンク機構として、操作部材とスライダのうちの一方に凹部が設けられると共に、他方に前記凹部に摺動可能に係合する凸部が設けられており、かつ、前記凹部にプッシュ操作時に前記凸部を退避させるための逃げスペースが形成されていると、操作部材の回転動作をスライダのスライド移動に円滑に変換できると共に、プッシュ操作を阻害する虞のない簡素な構造のリンク機構が実現できる。
【0010】
また、上記の構成において、ハウジングの内壁面で操作部材の回動平面に対して略直交する領域に、第1の信号発生手段として抵抗パターンおよび集電パターンが配設されていると共に、これら両パターンに対して摺動可能な導電性の摺動子がスライダに保持されていると、操作部材の回転操作量や回転操作方向に応じて異なる電気信号が出力される可変抵抗器として動作させることができる。
【0011】
また、上記の構成において、ハウジングの内壁面で操作部材の回動平面に対して略平行な領域に、第2の信号発生手段として接点パターンが配設されていると共に、この接点パターンに対して接離可能な導電性の摺動子が操作部材に保持されていると、操作部材の前後進動作に伴い該摺動子が該接点パターンに接離してオン/オフの切り換えが行われるスイッチとして動作させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複合操作型電気部品は、操作部材を回転操作するとスライダがスライド移動して第1の信号発生手段から電気信号が出力され、この操作部材をプッシュ操作すると第2の信号発生手段から電気信号が出力されるようになっており、回転操作力やプッシュ操作力を除去すると捩りコイルばねの弾性力で操作部材を初期位置へ自動復帰させることができる。また、この初期位置においても操作部材は捩りコイルばねに弾性付勢された状態に保たれるため、ハウジングに対して回転可能かつ前後進可能な操作部材を安定的に保持することができる。しかも、ハウジングには第1および第2の規制部が設けられているため、回転操作時に操作部材が誤って前後進したり、プッシュ操作時に操作部材が誤って回転する虞はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る複合操作型電気部品の非操作時の状態を示すカバーを除いた平面図、図2は該電気部品の断面図、図3は該電気部品のプッシュ操作時の状態を示す図1に対応する平面図、図4は該電気部品の回転操作時の状態を示す図1に対応する平面図、図5は該電気部品の操作部材を示す底面図、図6は該電気部品のハウジングをカバーを除いて示す平面図、図7は該ハウジングの前壁部を示す説明図、図8は該ハウジングの印刷パターン形成面を示す説明図である。
【0014】
これらの図に示す複合操作型電気部品は、回転操作時には可変抵抗器として動作し、プッシュ操作時にはスイッチとして動作するというものである。この複合操作型電気部品は、有底箱形のケース2の開口端2aをカバー3で蓋閉した筐体であるハウジング1と、ケース2に内設された接点パターン4と抵抗パターン5および集電パターン6と、つまみ部7aを有してハウジング1に回転可能かつ前後進可能に支持された操作部材7と、ハウジング1の内部にスライド移動可能に収納されて操作部材7と摺動可能に係合しているスライダ8と、操作部材7を弾性付勢して初期位置へ復帰させる捩りコイルばね9とによって主に構成されており、操作部材7とスライダ8にはそれぞれ導電性の摺動子10,11が取着されている。
【0015】
ハウジング1について説明すると、ケース2は導電性金属板12〜16が埋設されたインサート成形品であり、カバー3は板金製である。ケース2の内底面2bには支軸17が突設されていると共に、内底面2bを横切るように突出したガイドレール18が直線状に形成されている。また、ケース2の内底面2bには支軸17の近傍に接点パターン4が配設されている。この接点パターン4は、導電性金属板12の一端部に形成されたコモン接点4aと、導電性金属板13の一端部に形成された一対の固定接点4bとからなる。図6では非操作時における後述する弾性片10a,10bの位置を示している。なお、コモン接点4aにはクリック感を生起させるための段差が形成されている。また、導電性金属板12,13の他端部は、それぞれ外部接続端子19,20としてケース2の外表面に露出している。このケース2は前壁部と一対の側壁部と奥壁部とが内底面2bに対して起立しており、前壁部には、プッシュ操作時に操作部材7の係合凸部7dが摺動可能に挿入されるガイド凹所2cが設けられていると共に、回転操作時に該係合凸部7dを位置規制する一対の傾斜壁2dが設けられている。また、ケース2の側壁部には、捩りコイルばね9の両端部を弾接させて掛止可能な一対のばね受け部2eが設けられている。ケース2の奥壁部には導電性金属板14〜16が埋設されていると共に、該奥壁部の内壁面である印刷パターン形成面2fに抵抗パターン5と集電パターン6が配設されている。両パターン5,6は導電性金属板14〜16をインサートして成形された平板状成形品の平坦面に印刷形成されており、ケース2の奥壁部以外の部分を成形する際に該平板状成形品を金型内にインサートしておくことによって、奥壁部と残余の部分とが一体化されたケース2が得られる。
【0016】
図8に示すように、抵抗パターン5と集電パターン6は、所定の間隔を存して一直線状に配置された略同等の大きさの帯状パターンとしてケース2の印刷パターン形成面2fに印刷形成されている。抵抗パターン5の両端部は導電性金属板14,15に接続されており、これら導電性金属板14,15の一部が外部接続端子21,22としてケース2の外表面に露出している。集電パターン6は導電性金属板16に接続されており、この導電性金属板16の一部が外部接続端子23としてケース2の外表面に露出している。なお、本実施形態例に係る複合操作型電気部品は図示せぬ配線基板上に面実装して使用されるが、その際、ケース2の外表面に露出している各外部接続端子19〜23が該配線基板のランドに半田付けされる。
【0017】
操作部材7は合成樹脂製であり、ハウジング1の外方へ突出するつまみ部7aの突出量を増減させる前後進動作と、つまみ部7aを揺動させる回転動作とが行えるように、ハウジング1に支持されている。この操作部材7には、ハウジング1の内部においてケース2の内底面2bと対向する側に軸受凹所7bが設けられ、カバー3と対向する側にばね取付部7cが設けられている。また、操作部材7のつまみ部7aと軸受凹所7bとの間には前記係合凸部7dが設けられている。軸受凹所7bはU字状の周壁を有し、この軸受凹所7b内にケース2の支軸17が摺動可能に嵌挿されている。ばね取付部7cは円柱状に形成されており、このばね取付部7cに捩りコイルばね9の巻回部9aが外嵌されている。この捩りコイルばね9は両端部をケース2のばね受け部2eに弾接させた状態で組み込まれるため、その反力で巻回部9aが操作部材7のばね取付部7cを弾性付勢するようになっている。そのため、非操作時には図1に示すように、捩りコイルばね9の弾性力によってケース2の支軸17が軸受凹所7bの周壁に圧接して、操作部材7は支軸17に係止された安定した姿勢で保持されている。この操作部材7は支軸17を回転中心として回転操作可能であり、その回動平面はケース2の内底面2bに対して平行で印刷パターン形成面2fに対して直交する平面となる。また、操作部材7は捩りコイルばね9の付勢力に抗してハウジング1内へ押し込むというプッシュ操作が可能であり、図1と図3に示すように、このプッシュ操作時に支軸17を退避させるための逃げスペースS1が軸受凹所7b内に形成されている。また、操作部材7には側方へせり出し、捩りコイルばね9の一対の腕部9bとそれぞれ係合する一対のばね係合部7eが設けられている。そして、図4に示すように、回転操作時には、一方のばね係合部7eが捩りコイルばね9の一方の腕部9bとの係合状態を保ち、他方のばね係合部7eは他方の腕部9bから離れるようになっている。また、操作部材7のつまみ部7a側とは逆側の端部には、先端部が平面視円弧状に形成された駆動凸部7fが突設されている。この駆動凸部7fはスライダ8の係合凹部8aに摺動可能に挿入されており、操作部材7の回転動作に伴ってスライダ8がスライド移動するように連結されているため、これら駆動凸部7fと係合凹部8aとによって回転運動を直線運動に変換する簡素な構造のリンク機構が実現されている。
【0018】
捩りコイルばね9は、操作部材7のばね取付部7cに取り付けられた巻回部9aの両端から腕部9bを延出させており、両腕部9bを閉じる向きに弾性変形することによって操作部材7を初期位置へ復帰させる弾性力を生起する。この捩りコイルばね9は、操作部材7が回転動作していないときには、その両腕部9bがケース2のばね受け部2eに弾接状態で掛止されている。また、操作部材7が回転動作しているときには、一方の腕部9bがケース2のばね受け部2eから離脱して操作部材7のばね係合部7eと係合するようになっている。
【0019】
摺動子10はプッシュ操作を検出するためのもので、導電性の金属薄板からなる。図5に示すように、この摺動子10は操作部材7の軸受凹所7b側の面にかしめ固定されており、コモン接点4aに常時弾接する弾性片10aと、プッシュ操作時に固定接点4bに接離する弾性片10bとを有する。
【0020】
スライダ8は合成樹脂製であり、ハウジング1の内部空間の印刷パターン形成面2f寄りの奥部に、ガイドレール18に案内されつつスライド移動できるように収納されている。このスライダ8には、操作部材7の駆動凸部7fが摺動可能に挿入される係合凹部8aと、ガイドレール18が摺動可能に挿入されるガイド溝8bとが設けられており、ガイドレール18の長手方向(抵抗パターン5の長手方向)がスライダ8のスライド移動方向となる。また、図1と図3に示すように、係合凹部8a内にはプッシュ操作時に駆動凸部7fを退避させるための逃げスペースS2が形成されている。このスライダ8には印刷パターン形成面2fとの対向面に摺動子11が取着されており、スライダ8のスライド移動に伴って摺動子11の湾曲弾性片11a,11bがそれぞれ抵抗パターン5と集電パターン6に対して摺動するようになっている。
【0021】
この摺動子11は導電性の金属薄板からなり、図1〜図4に示すように平板部11cと一対の湾曲弾性片11a,11bとを有する。平板部11cはスライダ8にかしめ固定されて印刷パターン形成面2fと所定の間隔を存して対向しており、この平板部11cから印刷パターン形成面2fへ向けて略対称に一対の湾曲弾性片11a,11bが互いに離れる方向に延設されている。そして、一方の湾曲弾性片11aが抵抗パターン5に弾接し、他方の湾曲弾性片11bが集電パターン6に弾接しているため、スライダ8がスライド移動すると、抵抗パターン5に対する湾曲弾性片11aの接触位置が変化して、外部接続端子21,23間の抵抗値や外部接続端子22,23間の抵抗値が変化するようになっている。
【0022】
次に、上記の如く構成された複合操作型電気部品のプッシュ操作時の動作と回転操作時の動作について説明する。非操作時には図1に示すように、操作部材7は捩りコイルばね9によって同図上向きに弾性付勢されていると共に、ケース2の支軸17に係止されている。この状態で、ユーザがつまみ部7aを介して操作部材7をハウジング1内へ押し込むというプッシュ操作を行うと、操作部材7は捩りコイルばね9の付勢力に抗してハウジング1内へ後退するため、図3に示すように、捩りコイルばね9の両腕部9bが閉じる向きに弾性変形すると共に、操作部材7の係合凸部7dがケース2のガイド凹所2c内へ摺動可能に挿入される。こうしてガイド凹所2c内へ挿入された係合凸部7dは該ガイド凹所2cの壁面によって位置規制されるため、操作部材7をハウジング1に対して円滑に前後進させることができ、かつ、プッシュ操作時に誤って操作部材7を回転させてしまう虞もない。また、プッシュ操作時には支軸17が相対的に軸受凹所7b内の逃げスペースS1に退避し、駆動凸部7fが係合凹部8a内の逃げスペースS2に退避する。そして、プッシュ操作時に操作部材7がハウジング1内へ後退するのに伴い、摺動子10の弾性片10bが固定接点4bに接触するため、摺動子10を介してコモン接点4aと固定接点4bとが導通されてスイッチオン信号が出力されるようになっている。なお、こうしてスイッチオン状態となる直前に摺動子10の弾性片10aがコモン接点4aの前記段差を乗り越えるため、クリック感が生起される。また、かかるプッシュ操作後に操作力が除去されると、押し撓められていた捩りコイルばね9が自身の弾性で図1に示す位置まで戻るため、操作部材7は初期位置へ自動復帰する。
【0023】
非操作状態でユーザがつまみ部7aを介して操作部材7を回転操作した場合には、図4に示すように、支軸17を回転中心として回転する操作部材7のばね係合部7eが一方の腕部9bを付勢するため、この腕部9bがケース2のばね受け部2eから離脱すると共に、両腕部9bが閉じる向きに弾性変形する。また、操作部材7の係合凸部7dはガイド凹所2cに隣接する傾斜壁2dと重なり合うため、この傾斜壁2dに位置規制されて操作部材7をハウジング1に対して円滑に回転させることができ、かつ、回転操作時に誤って操作部材7を前後進させてしまう虞もない。そして、操作部材7が回転するのに伴い駆動凸部7fがスライダ8を駆動してスライド移動させるため、抵抗パターン5に対する湾曲弾性片11aの接触位置が変化して、操作部材7の回転操作量や回転操作方向に応じた電気信号が出力されるようになっている。また、かかる回転操作後に操作力が除去されると、押し撓められていた捩りコイルばね9が自身の弾性で図1に示す位置まで戻るため、操作部材7は初期位置へ自動復帰する。
【0024】
以上説明したように本実施形態例に係る複合操作型電気部品は、操作部材7を回転操作するとスライダ8がスライド移動して摺動子11が抵抗パターン5に対し摺動するため、小型であっても高精度な操作が可能な可変抵抗器として動作させることができる。また、操作部材7をプッシュ操作すると摺動子10が固定接点4bに接触するため、スイッチとして動作させることもできる。そして、回転操作時には捩りコイルばね9の一方の腕部9bが操作部材7と共に回転してハウジング1から離脱するため、捩りコイルばね9の両腕部9bが閉じる向きに弾性変形し、プッシュ操作時には捩りコイルばね9の巻回部9aが操作部材7と共に後退するため、ばね受け部2eに掛止されている捩りコイルばね9の両腕部9bが閉じる向きに弾性変形する。そのため、回転操作力やプッシュ操作力が除去されると、捩りコイルばね9の両腕部9bの弾性力によって操作部材7は初期位置へ自動復帰することとなり、異なる操作のセルフリターン機能が1個の捩りコイルばね9で簡単に実現できる。しかも、ハウジング1のケース2には、操作部材7の係合凸部7dを位置規制するガイド凹所2c(第2の規制部)や傾斜壁2d(第1の規制部)が設けられているため、回転操作時に操作部材7が誤って前後進したり、プッシュ操作時に操作部材7が誤って回転する虞はない。
【0025】
また、本実施形態例に係る複合操作型電気部品は、操作部材7の軸受凹所7bにケース2の支軸17を嵌挿して、非操作時には捩りコイルばね19の弾性力によって軸受凹所7bの周壁を支軸17に圧接させているため、操作部材7をがた付きなく回転させたり前後進させることができると共に、支軸17の突出方向に沿う電気部品全体の高さ寸法を抑制した薄型化が図りやすくなっている。ただし、ケース2の内底面2bに刻設した凹部に操作部材7に突設した凸部を嵌挿させるという構成にしてもよい。同様に、操作部材7の駆動凸部7fとスライダ8の係合凹部8aとの凹凸関係を逆にすることも可能である。
【0026】
なお、上記実施形態例では、ケース2の内底面2bに接点パターン4を配設して奥壁部の印刷パターン形成面2fに抵抗パターン5と集電パターン6を配設しているが、プッシュ操作時だけでなく回転操作時にもスイッチとして動作する複合操作型電気部品の場合には、スライダ8に保持された摺動子と接離可能な別の接点パターンをケース2の内底面2bに配設するという構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態例に係る複合操作型電気部品の非操作時の状態を示すカバーを除いた平面図である。
【図2】該電気部品の断面図である。
【図3】該電気部品のプッシュ操作時の状態を示す図1に対応する平面図である。
【図4】該電気部品の回転操作時の状態を示す図1に対応する平面図である。
【図5】該電気部品の操作部材を示す底面図である。
【図6】該電気部品のハウジングをカバーを除いて示す平面図である。
【図7】該ハウジングの前壁部を示す説明図である。
【図8】該ハウジングの印刷パターン形成面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハウジング
2 ケース
2b 内底面
2c ガイド凹所(第2の規制部)
2d 傾斜壁(第1の規制部)
2e ばね受け部
3 カバー
4 接点パターン(第2の信号発生手段)
5 抵抗パターン(第1の信号発生手段)
6 集電パターン(第1の信号発生手段)
7 操作部材
7a つまみ部
7b 軸受凹所
7c ばね取付部
7d 係合凸部
7e ばね係合部
7f 駆動凸部
8 スライダ
8a 係合凹部
9 捩りコイルばね
9a 巻回部
9b 腕部
10,11 摺動子
17 支軸
18 ガイドレール
19〜23 外部接続端子
S1,S2 逃げスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングの内部にスライド移動可能に収納されたスライダと、前記ハウジングの外方へ突出するつまみ部を有して該つまみ部の突出量を増減させる前後進動作および該つまみ部を揺動させる回転動作が可能な状態で前記ハウジングに支持された操作部材と、この操作部材の回転動作を前記スライダのスライド移動に変換するリンク機構と、前記操作部材を初期位置へ復帰させる捩りコイルばねと、前記ハウジングに内設されて前記スライダのスライド位置に応じた電気信号が出力可能な第1の信号発生手段と、前記ハウジングに内設されて前記操作部材の前後進位置に応じた電気信号が出力可能な第2の信号発生手段とを備え、
前記ハウジングには、回転操作時の前記操作部材の前後進動作を規制する第1の規制部と、プッシュ操作時の前記操作部材の回転動作を規制する第2の規制部とが設けられており、かつ、前記捩りコイルばねには、前記操作部材に取り付けられた巻回部と、この巻回部の両端から延出する一対の腕部が設けられており、これら両腕部が前記操作部材の非回転動作時に前記ハウジングに弾接して掛止されていると共に、一方の前記腕部が前記操作部材の回転動作時に該操作部材に付勢されて前記ハウジングから離脱するように構成したことを特徴とする複合操作型電気部品。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記操作部材に軸受凹所が設けられると共に、前記ハウジングの内部に前記軸受凹所に摺動可能に嵌挿される支軸が突設されており、かつ、前記軸受凹所内にプッシュ操作時に前記支軸を退避させるための逃げスペースが形成されており、非操作時に前記捩りコイルばねの弾性力によって前記軸受凹所の周壁に圧接する前記支軸を回転中心として、前記操作部材の回転動作が行われるようにしたことを特徴とする複合操作型電気部品。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記リンク機構として、前記操作部材と前記スライダのうちの一方に凹部が設けられると共に、他方に前記凹部に摺動可能に係合する凸部が設けられており、かつ、前記凹部にプッシュ操作時に前記凸部を退避させるための逃げスペースが形成されていることを特徴とする複合操作型電気部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記ハウジングの内壁面で前記操作部材の回動平面に対して略直交する領域に、前記第1の信号発生手段として抵抗パターンおよび集電パターンが配設されていると共に、これら両パターンに対して摺動可能な導電性の摺動子が前記スライダに保持されていることを特徴とする複合操作型電気部品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の記載において、前記ハウジングの内壁面で前記操作部材の回動平面に対して略平行な領域に、前記第2の信号発生手段として接点パターンが配設されていると共に、この接点パターンに対して接離可能な導電性の摺動子が前記操作部材に保持されていることを特徴とする複合操作型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−210688(P2008−210688A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47275(P2007−47275)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】