説明

複合材料分離用水溶液、複合材料分離方法、及び回収金属

【課題】 分離された構成材料である金属をリサイクル可能な状態で回収することができる回収金属を提供する。
【解決手段】 ガラス52と、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線52と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラー53とを含む自動車用リアガラス50を、スルファミン酸、リン酸及びフッ化アンモニウムを含み、水素イオン濃度(pH)が、5よりも小さい複合材料分離用水溶液に浸漬し、分解、回収した金属であって、回収前の金属の80%以上を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料分離用水溶液、複合材料分離方法、及び回収金属に関し、特にガラスを含む複合材料のリサイクルに有用な複合材料分離用水溶液、複合材料分離方法、及び回収金属に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、合せガラス板の中間膜とガラスを分離して回収する方法として、合せガラス板のガラス部分に割れ目を入れ、水に浸漬するか高湿度雰囲気中に置き、衝撃力等の外力を与えて中間膜とガラス面との接着力を弱める方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水がクラック部からガラスとの接合面である膜面や膜内へ浸透しやすくするために、界面活性剤等を添加する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−46308号公報
【特許文献2】特開平6−247752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法において、分離されたガラスはリサイクルされるが、中間膜はリサイクル可能な状態に分離されずに焼却処理されていた。
【0006】
また、ガラス、熱線(銀)、及びセラミックカラー(黒セラ)から成る自動車用リアガラスを各構成材料がリサイクル可能な状態で回収できるように分離する方法は未だ知られていない。
【0007】
本発明の目的は、ガラスを含む複合材料を分離した構成材料の各々をリサイクル可能な状態で回収することができる複合材料分離用水溶液、複合材料分離方法、及び回収金属を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の回収金属は、スルファミン酸、リン酸及びフッ化アンモニウムを含み、水素イオン濃度(pH)が、5よりも小さい複合材料分離用水溶液を用いてガラス、金属及びセラミックカラーを含む複合材料を分離して回収した金属であって、回収前の金属の80%以上を含有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の回収金属は、請求項1記載の回収金属において、前記スルファミン酸及びリン酸の濃度は、前記複合材料分離用水溶液における前記金属の溶解力が、該複合材料分離用水溶液における前記金属とガラスとの界面へ浸透する浸透力よりも低くなるように調整されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の回収金属は、請求項1又は2記載の回収金属において、前記複合材料分離用水溶液は、17O−NMRスペクトルにおける半値幅が40〜80Hzの水を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の回収金属は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回収金属において、前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車用リアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項5記載の複合材料分離用水溶液は、ガラスを含む複合材料を各構成材料に分離する複合材料分離用水溶液であって、スルファミン酸、リン酸及びフッ化アンモニウムを含み、水素イオン濃度(pH)が、5よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の複合材料分離用水溶液は、請求項5記載の複合材料分離用水溶液において、前記スルファミン酸及びリン酸の濃度は、前記複合材料分離用水溶液における前記複合材料に含まれる金属の溶解力が、該複合材料分離用水溶液における前記金属とガラスとの界面へ浸透する浸透力よりも低くなるように調整されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の複合材料分離用水溶液は、請求項5又は6記載の複合材料分離用水溶液において、前記複合材料分離用水溶液は、17O−NMRスペクトルにおける半値幅が40〜80Hzの水を含むことを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の複合材料分離用水溶液は、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液において、前記複合材料分離用水溶液は、水素イオン濃度(pH)が2〜3の処理水を10〜1000倍に希釈したものであることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の複合材料分離用水溶液は、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液において、前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車のリアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項10記載の複合材料分離方法は、ガラスを含む複合材料を各構成材料に分離する複合材料分離方法であって、請求項5乃至9のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液にガラス、金属及びセラミックカラーを含む複合材料を浸漬する浸漬ステップを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項11記載の複合材料分離方法は、請求項10記載の複合材料分離方法において、前記浸漬ステップは、シャワー浸漬ステップであることを特徴とする。
【0019】
請求項12記載の複合材料分離方法は、請求項10又は11記載の複合材料分離方法において、前記複合材料分離用水溶液は、30〜60℃に温度調整されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載の複合材料分離方法は、請求項10乃至12のいずれか1項に記載の複合材料分離方法において、前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車用リアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回収金属によれば、銀の含有量が分離前の熱線(銀)に含まれる銀の80%以上を含有するので、回収した銀を効率よくリサイクルすることができる。また、銀以外の他の構成材料の重量比が5%未満、好ましくは1%未満であれば、よりリサイクル可能な状態で回収することができる。
【0022】
本発明の複合材料分離用水溶液によれば、各構成材料に対する濡れ性が高いので、各構成材料の界面への浸透力を高く維持することができ、分離された構成材料の各々をリサイクル可能な状態で回収することができる。
【0023】
また、17O−NMRスペクトルにおける半値幅が40〜80Hzの水を含むこと、又は熱エネルギー等を付与して水分子の運動を活性化させることにより、各構成材料の界面への浸透力を高く維持することができる。
【0024】
また、添加剤として酸を含み、水素イオン濃度(pH)が5より小さいので、各構成材料に含まれた金属成分及びセラミック成分を剥離する機能を向上させることができ、もって複合材料を容易に分離することができる。
【0025】
また、添加剤として錯化剤を含むことにより、各構成材料中のアルカリ土類金属元素を侵食して、フッ素イオンがケイ素及び酸素間の結合を破壊する効率を向上させることで、複合材料を容易に分離することができる。さらに、フッ素イオンを含むので、各構成材料間に形成されたケイ素及び酸素間の結合を破壊して、複合材料を容易に分離することができる。また、フッ素イオンは、水溶性のフッ化物を添加することによって容易に供給することができる。
【0026】
本発明の複合材料分離方法によれば、ガラスを含む複合材料を複合材料分離用水溶液に浸漬するので、各構成材料の界面への浸透力を高く維持することができ、もって分離された構成材料の各々をリサイクル可能な状態で回収することができる。また、複合材料を複合材料分離用水溶液に浸漬する際に、複合材料に外力を加えれば、複合材料をより容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態に係る複合材料分離用水溶液の成分の17O−NMRスペクトルにおける半値幅を示す図であり、(a)は処理水の半値幅を示し、(b)は市水の半値幅を示す。
【図2】本実施の形態に係る複合材料分離用水溶液に浸漬する合せガラスの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】図2の合せガラスを複合材料分離用水溶液に浸漬するために用いられる液槽の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、図2の合せガラスの分離程度と時間経過との関係を示すグラフであり、(a)は処理水を0.1%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(b)は処理水を1.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(c)は処理水を5.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(d)は処理水を10.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示す。
【図5】本実施の形態に係る複合材料分離用水溶液に浸漬する自動車リアガラスの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、複合材料を各構成材料に分解する複合材料分離用水溶液であって、浸透力が高いと、分離された構成材料の各々をリサイクル可能な状態で回収することができることを見出した。
【0029】
本発明は、上記研究の結果に基づいてなされたものである。
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る複合材料分離用水溶液及び複合材料分離方法を説明する。
【0031】
まず、超純水を電気分解し、電磁波を照射して水分子のクラスターの大きさを平均的に小さくした処理水を作製した。ここで処理水における水分子のクラスターの大きさが平均的に小さいことは、処理水の17O−NMRスペクトルにおける半値幅が61Hzであることから確認できる(図1(a))。なお、市水の17O−NMRスペクトルにおける半値幅は約132Hzである(図1(b))。
【0032】
処理水にカリウム、マグネシウム、カルシウム等のイオンを添加することにより、水分子のクラスターの大きさを長時間安定して小さく維持することができる。
【0033】
また、処理水に界面活性剤を添加することにより、各構成材料に対する濡れ性を高く維持することができ、もって各構成材料の界面への浸透力を向上することができる。
【0034】
また、処理水にスルファミン酸、リン酸等の酸を添加することにより、各構成材料に含まれた金属成分を溶解して、各構成材料間の結合力が高い場合でも、複合材料を各構成材料に分離することができる。ここで、スルファミン酸、リン酸等の酸の濃度は、金属成分の溶解力が各構成材料の界面への液浸透力よりも低くなるように調整される。金属成分の溶解力が各構成材料の界面への液浸透力よりも高い場合には、分離された構成材料の各々をリサイクル可能な状態に回収することができなくなると考えられるからである。このように、スルファミン酸、リン酸等の酸の濃度を調節することにより、各構成材料の成分の溶出を極力抑えて、各構成材料を分離することができる。
【0035】
なお、水溶性のフッ化アンモニウムを添加することにより、フッ素イオンが各構成材料間に形成されたケイ素及び酸素間の結合を破壊し、更に、スルファミン酸、リン酸、等の錯化剤を添加することにより、各構成材料中のアルカリ土類金属元素を侵食して、フッ素イオンがケイ素及び酸素間の結合を破壊する効率を向上させることで、複合材料を容易に分離することができる。
【0036】
斯かる処理水を市水で10〜1000倍に希釈したものを複合材料分離用水溶液とする。
【0037】
本実施の形態によれば、複合材料分離用水溶液は各構成材料の界面への浸透力が高いので、分離された構成材料の各々をリサイクル可能な状態で回収することができる。
【0038】
本実施の形態では、処理水の17O−NMRスペクトルにおける半値幅が約61Hzであるが、これに限定されるものではなく、半値幅が40〜80Hzの範囲にあればよい。
【実施例1】
【0039】
実施例1において、水素イオン濃度(pH)が11〜12のアルカリ性の処理水を市水で10〜1000倍に希釈した複合材料分離用水溶液に合せガラス(図2)を浸漬した。
【0040】
上記処理水は、超純水を電気分解し、電磁波を照射して、水分子のクラスターの大きさを平均的に小さくし、カリウムイオンを生成する水酸化カリウムを添加し、陰イオン界面活性剤(LAS)及び非イオン界面活性剤(AE)を添加することにより得られた。
【0041】
水酸化カリウムを添加することにより、水分子のクラスターの大きさを長時間安定して小さいまま維持することができる。
【0042】
また、陰イオン界面活性剤(LAS)及び非イオン界面活性剤(AE)を添加することにより、合せガラス20におけるガラス板21,22及び中間膜23(合せガラス20の構成材料)に対する濡れ性を高く維持することができ、もってガラス板21,22及び中間膜23の界面24,25への浸透力を向上することができる。
【0043】
上記処理水の成分を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
図3は、図2の合せガラスを複合材料分離用水溶液に浸漬するために用いられる液槽の構成を概略的に示す図である。
【0046】
図3において、液槽30は、複合材料分離用水溶液31を蓄える容器32と、容器の内部に回転可能に配置され、蓋部33aを有するバレル33と、複合材料分離用水溶液31の温度を調整する温調装置34を備える。
【0047】
まず、容器32に複合材料分離用水溶液31を投入し、投入した複合材料分離用水溶液31を30〜60℃に温調し、蓋部33aからガラス板21,22に割れ目を入れた合せガラス20をバレル33内に投入すると共に、合せガラス20を構成材料であるガラス板21,22及び中間膜23に分離し易くするために、蓋部33aから3cm×3cm、厚さが3〜6mmのステンレス片35をバレル33内に50〜60枚投入する。上記合せガラス20及びステンレス片35が投入されたバルブ33を22回転/分の回転速度で20分間回転する。これにより、合せガラス20を複合材料分離用水溶液31に浸漬する際に、合せガラス20に外力としてステンレス片35による衝撃を加えて(衝撃付与ステップ)、合せガラス20を容易に分離することができる。なお、合せガラス20に加える外力としては、ステンレス片35による衝撃に限定されるものではなく、他の衝撃であってもよく、さらに、例えば、水流、自重変形、振動、揺動、引剥等であってもよい。
【0048】
合せガラス20を各構成要素(ガラス板21,22及び中間膜23)に分離した結果、分離された中間膜23に残留したガラス残留量と中間膜23との重量比が5%未満であると、変形等が無い状態、即ちリサイクル可能な状態で回収することができる。
【0049】
さらに、合せガラス20を各構成要素(ガラス板21,22及び中間膜23)に分離した結果、分離された中間膜23に残留したガラスカレットの大きさは0.5〜15mmであった。
【0050】
また、分離された中間膜23に残留した複合材料分離用水溶液と中間膜23との重量比が1%未満であると、リサイクル上問題となる阻害成分が実質上影響を及ぼすことなく、即ちリサイクル可能な状態で回収することができる。なお、分離された中間膜23に残留した複合材料分離用水溶液と中間膜23との重量比は、30分間自然乾燥した中間膜23の重量を測定すると共に30分間真空乾燥した中間膜23の重量を測定することにより得られたものである。
【0051】
また、分離後の中間膜23に含まれるヒドロキシル基の含有量が、分離前の中間膜23に含まれるヒドロキシル基の含有量の80%以上であると、分離後の中間膜23が中間膜として必要とされる粘着性を有し、中間膜としてリサイクルすることができる。ここで、分離後の中間膜23に含まれるヒドロキシル基の含有量と、分離前の中間膜23に含まれるヒドロキシル基の含有量との比較は、赤外吸収法によりヒドロキシル基の特性吸収帯を測定して比較することによって行った。
【0052】
図4は、図2の合せガラスの分離程度と時間経過との関係を示すグラフであり、(a)は処理水を0.1%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(b)は処理水を1.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(c)は処理水を5.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示し、(d)は処理水を10.0%含有する複合材料分離用水溶液を用いた場合を示す。なお、複合材料分離用水溶液の温度は40℃、45℃、50℃、55℃とした。
【0053】
図4において、縦軸は中間膜23に残留したガラス残留量とガラス21,22との重量比(%)を示し、横軸は浸漬処理時間(分)を示す。
【0054】
図4(a)乃至(d)より、処理水を1.0〜5.0%含有した複合材料分離用水溶液を45〜50℃に温調して用いることが工業的な観点から好ましいと考えられる。
【実施例2】
【0055】
実施例2において、水素イオン濃度(pH)が2〜3の酸性の処理水を市水で10〜1000倍に希釈した複合材料分離用水溶液に自動車リアガラス(図5)を浸漬した。
【0056】
上記処理水は、超純水を電気分解し、電磁波を照射して、水分子のクラスターの大きさを平均的に小さくし、スルファミン酸、リン酸を添加し、水溶性のフッ化アンモニウムを添加することにより得られた。
【0057】
スルファミン酸、リン酸を添加することにより、自動車リアガラス50の構成材料である熱線51に含まれた銀成分を溶解して、熱線(銀)51及びガラス板52間の結合力が高い場合でも、自動車リアガラス50を熱線(銀)51及びガラス板52に分離することができる。ここで、スルファミン酸、リン酸の濃度は、銀成分の溶解力が、熱線(銀)51及びガラス板52の界面への液浸透力より低くなるように調整される。銀成分の溶解力が熱線(銀)51及びガラス板52の界面への液浸透力よりも高い場合には、熱線(銀)51及びガラス板52をリサイクル可能な状態に回収することができなくなると考えられるからである。
【0058】
このように、スルファミン酸、リン酸の濃度を後述する表2のように調節することにより、自動車リアガラス50における熱線(銀)51の銀成分の溶出を極力抑えて、熱線(銀)51とガラス板52とを分離することができる。
【0059】
なお、水溶性のフッ化アンモニウムを添加することにより、フッ素イオンがガラス板52及びセラミックカラー(黒セラ)53間に形成されたケイ素及び酸素間の結合を破壊し、更に、スルファミン酸、リン酸、等の錯化剤を添加することにより、ガラス中のアルカリ土類金属元素を侵食して、フッ素イオンがケイ素及び酸素間の結合を破壊する効率を向上させることで、ガラス板52とセラミックカラー(黒セラ)53とを容易に分離することができる。
【0060】
また、分離後の熱線(銀)51に含まれる銀の含有量が、分離前の熱線(銀)51に含まれる銀の含有量の80%以上であると、効率よくリサイクルすることができる。
【0061】
さらに、複合材料分離用水溶液31の水素イオン濃度(pH)を5より小さくすると、熱線(銀)51及びセラミックカラー(黒セラ)53を剥離する機能を向上させることができる。
【0062】
【表2】

【0063】
30〜60℃に温調された複合材料分離用水溶液に自動車リアガラス50を10〜15分間シャワー浸漬した結果、自動車リアガラス50を構成材料である熱線(銀)51、ガラス板52、及びセラミックカラー(黒セラ)53に分離して、リサイクル可能な状態で回収することができることが分かった。
【0064】
本実施例では、複合材料分離用水溶液に自動車リアガラス50全体を浸漬しているが、これに限定されるものではなく、剥離したい熱線(銀)51やセラミックカラー(黒セラ)53が存在する部分だけを浸漬してもよい。
【符号の説明】
【0065】
20 合せガラス
31 複合材料分離用水溶液
32 容器
33 バレル
33a 蓋部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミン酸、リン酸及びフッ化アンモニウムを含み、水素イオン濃度(pH)が、5よりも小さい複合材料分離用水溶液を用いてガラス、金属及びセラミックカラーを含む複合材料を分離して回収した金属であって、回収前の金属の80%以上を含有することを特徴とする回収金属。
【請求項2】
前記スルファミン酸及びリン酸の濃度は、前記複合材料分離用水溶液における前記金属の溶解力が、該複合材料分離用水溶液における前記金属とガラスとの界面へ浸透する浸透力よりも低くなるように調整されていることを特徴とする請求項1記載の回収金属。
【請求項3】
前記複合材料分離用水溶液は、17O−NMRスペクトルにおける半値幅が40〜80Hzの水を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の回収金属。
【請求項4】
前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車用リアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回収金属。
【請求項5】
ガラスを含む複合材料を各構成材料に分離する複合材料分離用水溶液であって、
スルファミン酸、リン酸及びフッ化アンモニウムを含み、水素イオン濃度(pH)が、5よりも小さいことを特徴とする複合材料分離用水溶液。
【請求項6】
前記スルファミン酸及びリン酸の濃度は、前記複合材料分離用水溶液における前記複合材料に含まれる金属の溶解力が、該複合材料分離用水溶液における前記金属とガラスとの界面へ浸透する浸透力よりも低くなるように調整されていることを特徴とする請求項5記載の複合材料分離用水溶液。
【請求項7】
前記複合材料分離用水溶液は、17O−NMRスペクトルにおける半値幅が40〜80Hzの水を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の複合材料分離用水溶液。
【請求項8】
前記複合材料分離用水溶液は、水素イオン濃度(pH)が2〜3の処理水を10〜1000倍に希釈したものであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液。
【請求項9】
前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車のリアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液。
【請求項10】
ガラスを含む複合材料を各構成材料に分離する複合材料分離方法であって、
請求項5乃至9のいずれか1項に記載の複合材料分離用水溶液にガラス、金属及びセラミックカラーを含む複合材料を浸漬する浸漬ステップを備えることを特徴とする複合材料分離方法。
【請求項11】
前記浸漬ステップは、シャワー浸漬ステップであることを特徴とする請求項10記載の複合材料分離方法。
【請求項12】
前記複合材料分離用水溶液は、30〜60℃に温度調整されていることを特徴とする請求項10又は11記載の複合材料分離方法。
【請求項13】
前記複合材料は、ガラスと、ガラス面上に金属ペーストを用いて印刷、焼き付けされた熱線と、ガラス面上に印刷、焼き付けされたセラミックカラーとを含む自動車用リアガラスであり、前記金属は、前記熱線用の銀であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の複合材料分離方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−132603(P2011−132603A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2449(P2011−2449)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2005−166017(P2005−166017)の分割
【原出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(509328892)株式会社 ガラステクノシナジー (3)
【Fターム(参考)】