説明

複合材料用改質剤及び複合材料

【解決手段】下記式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−(NH−R4s−NH2 (1)
(R1,R2は一価炭化水素基、R3,R4は二価炭化水素基、pは0,1又は2、sは0〜3)
で表されるアミノ基含有有機珪素化合物と、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドとを反応させた有機珪素化合物を主剤とする複合材料用改質剤。
【効果】本発明の複合材料用改質剤は、予備処理を行う際の複合材料用改質剤の酢酸水への溶解性と溶液の保存安定性が良好であり、更に無機質補強材と有機樹脂とが硬化歪みなしに強固に接着し、しかもその接着面は柔軟で耐水性が良好であり、薄層化して積層板としてもハンダ耐熱性、ヒートショック特性に優れた複合材料を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維製品、マイカ製品等の無機質補強材を有機樹脂で処理した複合材料の特性、特にハンダ耐熱性、ヒートショック特性の改質に好適な複合材料用改質剤及びこれを用いた複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機質補強材としてガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパー等のガラス繊維製品やマイカ製品をエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の有機樹脂で処理した複合材料が各種用途に広く使用されている。
このような複合材料から作られる積層板については、種々の物性、例えば機械的強度、電気特性、耐水耐煮沸性、耐薬品性を改良するため、上記無機質補強材をγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤で予備処理してから有機樹脂で処理することで、無機質補強材と樹脂との接着性を向上させる方法が提案されている。
【0003】
一方、複合材料のうち有機樹脂として、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂を使用したプリント基板用の積層板については、配線工程時に溶融ハンダに浸漬される上、最近では、プリント基板用積層板の薄層化も増々進んできている。このため、上記無機質補強材の予備処理用としてより強い耐熱特性を有するシランカップリング剤が要求されている。
しかしながら、上記した従来公知のシランカップリング剤による処理では、無機質補強材と樹脂との界面に大きな硬化歪みが生じるため、ハンダ耐熱性が悪いという欠点があった。
【0004】
更に、下記式で示される化合物の塩酸塩、あるいはアニリン置換シランを使用して処理する方法(特許文献1:特公昭48−20609号公報、特許文献2:特公昭57−41771号公報参照)が提案されているが、これらの化合物で予備処理した積層板も、薄層化した場合はブリスター防止効果がなお十分ではなかった。
【化1】

【0005】
また、従来のこれらの複合材料用改質剤に用いられるビニルベンジルハライドは、メタビニル置換体とパラビニル置換体の混合物であり、特にメタビニル置換体含有量が70%程度であるビニルベンジルハライドが用いられることが一般的であり、これを用いて合成した化合物を主成分とした複合材料用改質剤は、処理剤として用いる際、酢酸水への溶解性が悪いため、溶液濃度を上げることが不可能であり、更にメタビニル置換体の熱安定性が不十分であったため、求められるハンダ耐熱性能を発揮しにくいという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特公昭48−20609号公報
【特許文献2】特公昭57−41771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、複合材料の無機質補強材に対して予備処理した場合、その予備処理液である水溶液の溶解性が良好であるため調整が簡便であり、更にハンダ耐熱性及びヒートショック特性の改善効果に優れた複合材料用改質剤及びこれを用いた複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、無機質補強材に有機樹脂を処理してなる複合材料において、下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−(NH−R4s−NH2 (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の二価炭化水素基、pは0,1又は2、sは0〜3を示す。)
で表されるアミノ基含有有機珪素化合物と、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドとを反応させた有機珪素化合物を主剤とする複合材料用改質剤で無機質補強材を予備処理することにより、予備処理を行う際の複合材料用改質剤の酢酸水への溶解性が良好となり、更に無機質補強材と有機樹脂とが硬化歪みをもたずに強固に接着し得、それ故、ハンダ耐熱性及びヒートショック性を同時に改善することができる上、かかる複合材料を薄層化して積層板に製造した場合においても非常に良好な特性が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、上記一般式(1)で表されるアミノ基含有有機珪素化合物と、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドとの反応物を主剤とする複合材料用改質剤、及び無機質補強材に有機樹脂を処理してなる複合材料において、該無機質補強材をこの複合材料用改質剤で予備処理した複合材料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合材料用改質剤は、予備処理を行う際の複合材料用改質剤の酢酸水への溶解性が良好であると共に、溶液の保存安定性が良好であり、更にガラス繊維製品、マイカ製品等の無機質補強材とエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の有機樹脂とからなる複合材料の無機質補強材に対して予備処理した場合、無機質補強材と有機樹脂とが硬化歪みなしに強固に接着し、しかもその接着面は柔軟で耐水性が良好であり、薄層化して積層板としてもハンダ耐熱性、ヒートショック特性に優れた複合材料を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の複合材料用改質剤は、ガラス繊維、例えばアルカリガラス、無アルカリガラス、低誘電ガラス、高弾性ガラス、電気用のEガラス等を紡糸したガラスフィラメントを集束したストランド(ガラス束)、不織のガラスマット、ガラスペーパー、更にはヤーンを織ったガラスクロス、ガラステープなどのガラス繊維製品、マイカ薄片を抄造した軟質又は硬質の集束マイカシートなどのマイカ製品を無機質補強材として使用し、この無機質補強材をエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の有機樹脂で処理した複合材料において、この複合材料の無機質補強材を予備処理するために使用されるものであり、下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−(NH−R4s−NH2 (1)
で表されるアミノ基含有有機珪素化合物と、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドとの反応物を主剤とするものである。
【0012】
式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基を示し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、s−プロピル、i−プロペニル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、s−ブチルが例示され、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の二価炭化水素基を示しており、メチレン、エチレン、プロピレン、i−ブチレン、n−ブチレン、ヘキシレン、デシレン等のアルキレン基などが例示され、pは0,1又は2、好ましくは1であり、sは0〜3、好ましくは0である。
【0013】
なお、上記一般式(1)のアミノ基含有有機珪素化合物とビニルベンジルハライドとの反応物は、ハロゲン酸塩となっていてもよく、例えば塩酸塩、臭酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好適である。
【0014】
また、ハロゲン酸塩をトリエチルアミン、ピリジン等の三級アミン化合物やナトリウムメチラートやナトリウムエチラート等のアルカリ金属アルコラート又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物と反応させ、濾過や2層分離等によりハロゲン酸塩を除去したものを主剤としてもよい。
【0015】
上記一般式(1)のアミノ基含有有機珪素化合物として具体的には、下記化合物を例示することができる。
【化2】

【0016】
ビニルベンジルハライドとしては、ビニルベンジルフロライド、ビニルベンジルクロライド、ビニルベンジルブロマイド、ビニルベンジルアイオダイドが挙げられるが、入手のしやすさから、特にビニルベンジルクロライドが好ましい。このビニルベンジルハライドは、ハロメチル基に対して、ビニル基がパラ位、メタ位、オルソ位に置換した3種類の異性体が存在するが、本発明の複合材料改質剤に用いるビニルベンジルハライドとしては、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在する化合物であり、特にパラビニル置換体が70〜95質量%であり、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜30質量%異性体として存在する化合物が好ましい。パラビニル置換体が50質量%よりも少ないと、複合材料用改質剤を用いて作製した複合材料の耐熱性能が十分発揮できず好ましくなく、また、パラビニル置換体が95質量%よりも多いと、複合材料用改質剤を酢酸水に溶解する際の水溶性が悪化するため、好ましくない。
【0017】
アミノ基含有有機珪素化合物とビニルベンジルハライドとの反応における各化合物の使用量は、任意であるが、アミノ基含有有機珪素化合物とビニルベンジルハライドとの反応モル比として、アミノ基含有有機珪素化合物:ビニルベンジルハライド=1:0.7〜1:1.6にて反応させることが好ましく、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。ビニルベンジルハライドの比率が0.7よりも少ないと、複合材料用改質剤として用いて作製した複合材料の耐熱性能が十分発揮できない場合が生じ、1.6よりも多いとアミノ基含有有機珪素化合物との反応の完結に時間がかかる場合がある。
【0018】
反応条件は特に限定されないが、反応温度は50〜150℃であり、好ましくは60〜120℃であり、反応時間は2〜15時間程度である。
【0019】
なお、前述したように、上記反応の途中、あるいは反応終了後にトリエチルアミン、ピリジン等の三級アミン化合物やナトリウムメチラートやナトリウムエチラート等のアルカリ金属アルコラート又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を使用し、三級アミンハロゲン酸塩又はハロゲン化アルカリ金属として濾過や2層分離等により、ハロゲン酸を除去することもできる。その際、ハロゲン酸塩は完全に除去してもよいし、部分的に除去することも任意である。
【0020】
反応における溶媒の使用は任意であり、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類等を使用することができ、特にメタノール、エタノール等のアルコール類の使用が好ましい。
【0021】
更に反応中及び反応終了後、ビニル基の反応を防止する目的で重合禁止剤を添加することも任意であり、特に限定されないが、例えば、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、bis−ジ−t−ブチルメチルフェノール等が挙げられる。
【0022】
本発明の複合材料用改質剤は、上記アミノ基含有有機珪素化合物とビニルベンジルハライドとの反応物を主剤とするが、必要に応じてメタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類などの溶剤等を含有してもよい。この場合、上記主剤としての反応物の含有量は、改質剤全体の5〜99質量%、特に20〜80質量%が好ましく、残部は上記任意成分としての溶剤である。
【0023】
なお、本発明の複合材料用改質剤には、その他の添加剤として、必要に応じて染料、顔料、帯電防止剤、潤滑剤や本発明の主剤となる化合物以外のシラン化合物等を本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。
【0024】
本発明のアミノ基含有有機珪素化合物とビニルベンジルハライドとの反応物を主剤として含有する複合材料用改質剤を使用してガラス繊維製品、マイカ製品などの複合材料用の無機質補強材を予備処理する際には、上記複合材料用改質剤を適宜な溶剤で薄めて処理液を調製して行うことが望ましい。この場合、溶剤としては、水又は0.5〜2質量%程度の濃度の酢酸水溶液が好ましく、更にメタノール、エタノール等のアルコール類等を添加してもよい。
【0025】
この処理液において、本発明の化合物の配合量は、全体の0.2〜3質量%、特に0.5〜1質量%であることが好ましく、0.2質量%に満たないと満足な改質効果が得られない場合があり、3質量%を超えると処理効果は向上せず、コスト高となる場合がある。
【0026】
また、複合材料用改質剤の無機質補強材への処理方法は、複合材料用改質剤を希釈した処理液中に補強材を浸漬すればよい。なお、その際、場合によっては、スクイズロールなどを用いて、補強材に対するこの処理液の溶液保持率を一定にしてもよいし、マイカシート等についてはこの処理液をスプレー塗布するようにしてもよい。更に、処理後は60〜180℃、好ましくは80〜150℃で5分〜2時間程度乾燥して溶媒の除去と同時に複合材料用改質剤中の主剤と無機質補強材表面とを化学反応させることが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも質量部である。また、ガスクロマトグラフィー分析の条件は下記の通りである。
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
JIS K 0114に規定される方法に準じて下記条件で測定し、予め作成した検量線を用いて質量%を求めた。
検出器:TCD
カラム:HP−5(Agilent社製)
0.53mmφ×30m、膜厚1.5μm
カラム温度:100℃→15℃/min昇温→260℃
注入口温度:250℃
キャリアーガス:ヘリウム 約3mL/min
試量注入量:1μL(スプリット比15:1)
【0028】
[合成例1]
1リットルのセパラブルフラスコに温度計、冷却器、滴下ロートを取りつけ、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン222.0g(1.0モル)、メタノール359g、メトキシヒドロキノン0.2gを仕込み、これに65℃にてパラビニル置換体純度70質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)137.3g(0.9モル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、70℃にて5時間撹拌を続け、この溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.4質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(1)とした。
【0029】
[合成例2]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度82質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体82質量%、オルソビニル置換体14質量%、その他不純物4質量%)137.3g(0.9モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.4質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(2)とした。
【0030】
[合成例3]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度91質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体91質量%、オルソビニル置換体7質量%、その他不純物2質量%)137.3g(0.9モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.4質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(3)とした。
【0031】
[合成例4]
合成例1における、パラビニル置換体純度70質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)152.5g(1.0モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.8質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(4)とした。
【0032】
[合成例5]
合成例1における、パラビニル置換体純度70質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)183g(1.2モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、5.5質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(5)とした。
【0033】
[比較合成例1]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度47質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体47質量%、メタビニル置換体37質量%、オルソビニル置換体10質量%、その他不純物6質量%)137.3g(0.9モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.4質量%であり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(6)とした。
【0034】
[比較合成例2]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度28質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体28質量%、メタビニル置換体67質量%、その他不純物5質量%)137.3g(0.9モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.2質量%であり、反応不十分であったため、更に70℃にて、5時間熟成を続けたところ、クロルイオン含有量が4.4質量%となり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(7)とした。
【0035】
[比較合成例3]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度98質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体98質量%、その他不純物2質量%)137.3g(0.9モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、4.0質量%であり、反応不十分であったため、更に70℃にて、5時間熟成を続けたところ、クロルイオン含有量が4.4質量%となり、ほぼ反応が完了していることを確認した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(8)とした。
【0036】
[比較合成例4]
合成例1における、ビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体70質量%、オルソビニル置換体23質量%、その他不純物7質量%)の代わりにパラビニル置換体純度28質量%のビニルベンジルクロライド(ガスクロマトグラフィー分析による分析値で、パラビニル置換体28質量%、メタビニル置換体67質量%、その他不純物5質量%)183g(1.2モル)を使用した他は、同様な操作を行い、5時間熟成後の溶液のクロルイオン含有量を測定したところ、5.0質量%であり、反応不十分であったため、更に70℃にて、5時間熟成を続けたところ、クロルイオン含有量が5.1質量%となったが、これ以上反応が進行しにくかったため、この状態で終了した。この溶液を更にメタノールで希釈し、有効成分を40質量%となるように調整し、複合材料用改質剤(9)とした。
【0037】
[実施例1]
合成例1で得た化合物の40質量%メタノール溶液(1)を1質量%の酢酸水溶液に10g/kgとなるように溶解し、濾過を行い、不溶物を除去した処理液中に、ヒートクリーニングで表面を清浄にしたガラスクロスWE18K105B(日東紡績社製)を浸漬し、スクイズロールで絞った後、110℃、15分間の条件で乾燥させた。次いで、NEMA規格G−10処方に従ってビスフェノール型エポキシ樹脂(エピコート1001、油化シェルエポキシ社製)80部、ノボラック型エポキシ樹脂(エピコート154、油化シェルエポキシ社製)20部、ジシアンジアミド4.0部、ベンジルジメチルアミン0.2部、メチルエチルケトン20部及びメチルセロソルブ45部を混合した樹脂ワニスに上記シラン処理したガラスクロスを含浸させた後、160℃、6分間の条件でプリキュアーしてBステージ状態なプリプレグを作った。このプリプレグ8枚を重ねたものの上下に銅箔を重ね、170℃×35kg/cm2×60分間の条件でプレス成型して両面銅張積層板を作った。
【0038】
[実施例2〜5、比較例1〜4]
合成例1で得た化合物の40質量%メタノール溶液(1)の代わりに、表1に示すように合成例2〜5及び比較合成例1〜4で得たシラン化合物のメタノール溶液(2)〜(9)を用いる以外は、実施例1と同様にしてシラン処理ガラスクロス及び銅張積層板を作った。
得られた銅張積層板について、煮沸吸水率、ハンダ耐熱性、ヒートショック試験を下記方法で行った。結果を表1に示す。
酢酸水への溶解性:1質量%の酢酸水溶液に10g/kgとなるように溶解した液の濾過前の水溶液の濁度を測定した。数値が小さいほど水溶性が大きいことを示している。
煮沸吸水率:JIS C 6481の試験法に従って銅張積層板からエッチングによって銅箔を除去した50×50mmの試験板を切り出し、4〜14時間煮沸後の吸水率を測定した。
ハンダ耐熱性:上記の煮沸吸水率測定後の試験板を260℃×30秒間ハンダ浴に浮かべた時に試験板にふくれが生じた部分の面積を破壊面積(%)として示した。
ヒートショック試験:銅張積層板を液体窒素に1分間浸漬し、直ちに290℃のハンダ浴に30秒間浸漬した後、エッチングで銅箔を取り除いた試験板の損傷を観察し、下記の段階に分けて判断した。
◎:良好
○:かすかにスポット状欠陥発生
△:スポット状欠陥発生
×:全体的に破壊発生(積層板のはがれ有り)
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果より、本発明の複合材料用改質剤は酢酸水への溶解性が良好で処理剤の調整がしやすく、また、この処理液を処理して作製した銅張積層板は、煮沸吸水率、ハンダ耐熱性及びヒートショック特性に優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
(R1O)(3-p)(R2pSi−R3−(NH−R4s−NH2 (1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜4の一価炭化水素基、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜10の二価炭化水素基、pは0,1又は2、sは0〜3を示す。)
で表されるアミノ基含有有機珪素化合物と、パラビニル置換体が50〜95質量%で、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜50質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドとを反応させた有機珪素化合物を主剤とする複合材料用改質剤。
【請求項2】
パラビニル置換体が70〜95質量%であり、オルソビニル置換体及び/又はメタビニル置換体が5〜30質量%異性体として存在するビニルベンジルハライドを用いた請求項1記載の複合材料用改質剤。
【請求項3】
一般式(1)において、pが0、sが1である請求項1又は2記載の複合材料用改質剤。
【請求項4】
無機質補強材に有機樹脂を処理してなる複合材料において、該無機質補強材を請求項1,2又は3記載の複合材料用改質剤で予備処理した複合材料。

【公開番号】特開2008−31278(P2008−31278A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205816(P2006−205816)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】