説明

複合構造体

【課題】用途に合わせて形状や材料を選択可能な低コストの複合構造体を提供する。
【解決手段】断面が一定形状を有する棒状のコア材20であって長手方向全体に亘って直線状のスリット21が形成されたコア材20と、コア材20の長手方向全体に亘って当該コア材20の周囲を覆うパイプ10からなり、パイプ10はコア材20の全長に対応する長さを有した細長の板材をコア材20の断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げてコア材20の周囲を覆っており、かつ板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて2つのスリット差込部を形成し、2つのスリット差込部が合掌合わせされた状態で前記コア材のスリットに差込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば家具や建材に使用する複合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家具や建材に使用する構造体として、ステンレス製の角パイプや丸パイプが広く知られている。そして、パイプ状の構造体の成型方法として押出成型を用いている文献が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、この家具や建材に使用する構造体の別の形態として、一般には1枚の金属板を折り曲げてパイプ形状にし、その合わせ部を溶接やリベットすることで製造されるものが従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−220614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載のパイプ状の構造体の押出成型による成型方法は、1つの金型に対応する1つの形状の構造体しか製造できない。ここで、家具や建材に使用する構造体の市場の要望は、形状において様々である。そのため、多種類の寸法形状の異なる金型を製造することで市場の要望にあった構造体を提供している。
【0006】
その結果、金型製造にコストがかかり構造体自体の部品費の問題が生じている。また、複数の種類の寸法形状の異なる構造体を製造するために成型機に設置された金型を交換する必要があり、その交換作業に手間がかかる。また、使用していない金型の保管スペースを確保する問題もある。
【0007】
また、製造した金型に対応する規格化された形状だけしか製造できない。そして、押出成型で使用される構造体の材料としては一般に高強度の物性を有するステンレス材が使用されている。そのため、それ程強度を必要としない構造体においても高価なステンレス材を使用するため、コスト低減や重量低減が図れない問題も生じている。また、限られた形状しか製造できないため構造体の選択の幅を狭め、デザインの制限を受ける問題が生じている。
【0008】
一方、折り曲げタイプの従来型の構造体はある程度の厚みを有する金属板を折り曲げて、その合わせ部を溶接する必要がある。そのため、折り曲げ加工が困難な場合がある。また、溶接等の作業者の熟練によって品質に差異が生じる。また、溶接部分は外観上の見栄えも良くなく使用用途の制限を受ける。
【0009】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、用途に合わせて形状や材料を選択できる低コストの複合構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る複合構造体は、断面が一定形状を有する棒状のコア材であって長手方向全体に亘って直線状のスリットが形成されたコア材と、
前記コア材の長手方向全体に亘って当該コア材の周囲を覆うパイプからなり、
前記パイプは前記コア材の全長に対応する長さを有した細長の板材を前記コア材の幅方向断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げて前記コア材の周囲を覆っており、かつ前記板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて2つのスリット差込部を形成し、前記2つのスリット差込部が合掌合わせされた状態で前記コア材のスリットに差込まれていることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項1に係る構造体によると、コア材の周囲を覆うパイプは通常ベンダーと呼ばれる曲げ加工機で成型できる。そのため、寸法形状の変更は曲げ加工機のプログラムの変更により容易に行える。その結果、特許文献1のように限られた規格品の形状に限定されることはなく、柔軟な形状変更に対応できる。また、コア材がパイプに挿入されているため、パイプの板厚を薄くしても十分な強度を保つことができる。また、パイプの板厚が薄いので従来の構造体のように曲げ加工が困難となることはなく、複雑な形状にも柔軟にかつ高精度で対応できる。
【0012】
また、パイプの材料は曲げ加工機等で加工できる物であれば良く、特許文献1のように構造体の材料が限定されることはない。そのため、強度をそれ程必要としない構造体には、パイプの材料をアルミ等にしたりパイプの板厚を薄くしたりすることができる。また、強度を必要とする構造体には、パイプの材料をステンレス等にしたりパイプの板厚を厚くしたりすることができる。その結果、用途に合わせて材料や形状を選択できる。
【0013】
また、コア材を覆うパイプの差込部はコア材のスリットに差し込まれて固定される。そのため、複合構造体を組立てる際に通常パイプを溶接する必要はない。そのため、作業者による品質の差異は生じなくなると共に、溶接の跡がないためデザイン性を要する今まで使用できなかった分野への利用が期待できる。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る複合構造体は、前記パイプは金属からなり、前記コア材は木材からなることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項2に係る複合構造体によると、パイプに使用する金属の板厚を薄くし、コア材に木材を使用できる。このため、後述する試験結果から明らかなように、従来の構造品と比較して複合構造体を軽量化でき、かつ従来の構造品に近い剛性を確保できる。また、コア材に使用する木材は一般的に安価な材料であり、かつ切削等で容易に加工できる。そのためコア材の部品費、加工費を低減し複合剛性材としてのコスト削減を図れる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る複合構造体は、断面が一定形状を有する棒状のコア材であって長手方向全体に亘って直線状のスリットが形成されたコア材を用意すると共に、前記コア材の長さに対応する長さを有しかつ当該コア材の長手方向全体に亘って当該コア材の周囲を覆う幅に2つのスリット差込部を形成する幅を加えた幅を有する細長の板材を用意し、
前記板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて、2つのスリット差込部を板材の長手方向両端部全体に亘って構成し、
前記2つのスリット差込部を除いた残りの部分で、前記板材を前記コア材の幅方向断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げて前記コア材の周囲を覆い、
前記2つのスリット差込部を合掌合わせさせた状態で前記コア材のスリットに差込みながら前記パイプに前記コア材に挿入することで複合構造体を組み立てることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項3に係る複合構造体によると、コア材の周囲を覆うパイプは通常ベンダーと呼ばれる曲げ加工機で簡単に成型できる。そのため、寸法形状の変更は曲げ加工機のプログラムの変更により容易に行える。その結果、特許文献1のように寸法形状に対応した金型を作成する必要がなく、余分な費用がかからない。また、従来の製造過程において問題となっていた金型を置いておくスペースの問題も解消する。また、大掛かりな金型の交換を伴う作業も必要なく、余分な手間もかからない。
【0018】
また、複合構造体はパイプにコア材が挿入されて形成されているため、パイプ自体の板厚を薄くできる。そのため、曲げ加工が容易になり、複合構造体を簡単に組立てることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、用途に合わせて任意の形状にしたり、様々な材料を選択可能にしたりして低コストの複合構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合構造体を図示の都合上、その長手方向を短くして示した概略斜視図である。
【図2】図1に示した複合構造体の表面材の製造工程を示す説明図である。
【図3】図1に示した複合構造体の製造工程を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る複合構造体同士の接続構造を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態の図4とは異なる接続構造を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態の図4及び図5とは異なる接続構造を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る複合構造体を使用した製品を示す概略斜視図である。
【図8】図7に示した製品に用いて複合構造体の周辺部分を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る複合構造体の評価試験を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る複合構造体を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る複合構造体を図示の都合上、その長手方向を短くして示した概略斜視図である。
【0022】
本発明の一実施形態に係る複合構造体は、棒状の複合構造体の形態をなし、家具や建材等の構造体として使用する。複合構造体1は、本実施形態では木材のコア材20とこの周囲を覆うステンレス製のパイプ10から構成されている。
【0023】
コア材20は、直方体の棒状の形状からなり、その長手方向のいずれか一面に長手方向に沿ってスリットが形成されている。スリットの幅は、後述するパイプのスリット差込部が2枚分差し込まれる程度の幅及び深さを有している
一方、パイプ10は一枚の板金がコア材20の長手方向全体に亘ってコア材20の直方体の各表面を覆うように折り曲げられて形成されており、幅方向両端部は一定の幅を有して折り曲げられ差込部を形成している。なお、この差込部は上述したコア材がスリット部21に合掌合わせした状態で差し込まれるようになっている。ここでいう合掌合わせした状態で差し込まれるとは、第1の折り曲げ部を互いに重ね合わせることで形成される差込部をスリットに差し込むことをいう。そして、差込部14をスリット21に差込むことで、折り曲げられたパイプの展開を防ぎ、コア材20とパイプ10が一体の形状として維持できるようになっている。
【0024】
次に、本実施形態に係る複合構造体を製造する方法を説明する。図2は、図1に示した複合構造体のパイプの製造工程を示す説明図である。図3は、図1に示した複合構造体の製造工程を示す説明図である。
【0025】
まず、パイプ10の製造方法について説明する。最初に、所定の厚みを有する細長の長方形の1枚の板金を用意し、通常ベンダーと呼ばれる曲げ加工機(以下「曲げ加工機」とする)にセットする(図2(a))。次に、板金の長手方向に直交する両端部から所定の距離を隔てて板金から垂直方向に折り曲げて第1の折り曲げ部11を形成する(図2(b))。次に、両第1の折り曲げ部11から所定の距離を隔てて板金から垂直方向に折り曲げて第2の折り曲げ部12を形成する(図2(c))。次に、次に、両第2の折り曲げ部から所定の距離を隔てて板金から一定の傾斜方向に折り曲げた第3の折り曲げ部13を形成する(図2(d))。そして、両第1の折り曲げ部を重ね合わせるように折り曲げて差込部14を形成する(図2(e))。
【0026】
次に、コア材20の製造方法について説明する。コア材20として選択した木材をパイプ10に対応する長さに切断する。次に、切断した木材をパイプ10の内側形状に対応する形状に切削加工する。そして、パイプ10の差込部14が差し込まれるスリット21を切削によって形成する。
【0027】
次に、パイプ10をコア材20と一体化する組み付け方法を説明する。コア材に形成されたスリットにパイプ材の差込部に差し込みながらコア材をパイプに挿入する(図3)。以上で、複合構造体1の製造方法の説明を終了する。
【0028】
次に、このような構造体の作用を説明する。本実施形態に係る構造体によると、コア材20の周囲を覆うパイプ10は曲げ加工機で成型できる。そのため、寸法形状の変更は曲げ加工機のプログラムの変更により容易に行える。その結果、特許文献1のように限られた規格品の形状に限定されることはなく、柔軟な形状変更に対応できる。また、コア材20がパイプ10に挿入されているため、パイプ10の板厚を薄くしても十分な強度を保つことができる。また、パイプ10の板厚が薄いので従来の構造体のように曲げ加工が困難となることはなく、複雑な形状にも柔軟にかつ高精度で対応できる。
【0029】
また、寸法形状の変更は曲げ加工機のプログラムの変更により容易に行える。その結果、特許文献1のように寸法形状に対応した金型を作成する必要がなく、余分な費用がかからない。また、従来の製造過程において問題となっていた金型を置いておくスペースの問題も解消する。また、大掛かりな金型の交換を伴う作業も必要なく、余分な手間もかからない。
【0030】
また、複合構造体はパイプ10にコア材20が挿入されて形成されているため、パイプ自体の板厚を薄くできる。そのため、曲げ加工が容易になり、複合構造体を簡単に組立てることができる。
【0031】
また、コア材20を覆うパイプ10の差込部はコア材20のスリットに差し込まれて固定される。そのため、複合構造体を組立てる際に通常パイプを溶接する必要はない。そのため、作業者による品質の差異は生じなくなると共に、溶接の跡がないためデザイン性を要する今まで使用できなかった分野への利用が期待できる。
【0032】
また、パイプ10の芯が中空である従来品の構造体と違い、パイプ10の芯に木製のコア材20が形成されているため、パイプ10に使用する金属の板厚を薄くできる。このため、後述する試験結果から明らかなように、従来の構造品と比較して複合構造体を軽量化でき、かつ従来の構造品に近い剛性を確保できる。また、コア材20に使用する木材は一般的に安価な材料であり、かつ切削等で容易に加工できる。そのためコア材20の部品費、加工費を低減し複合剛性材としてのコスト削減を図れる。
【0033】
なお、本実施形態ではステンレス製のパイプ10を用いたが、パイプ10の材料は曲げ加工機等で加工できる物であれば良く、特許文献1のように構造体の材料が限定されることはない。また、コア材20に関しても木材に限定されることはない。そのため、強度をそれ程必要としない構造体には、パイプ10の材料をアルミ等にしたりパイプ10の板厚を薄くしたりすることができる。また、強度を必要とする構造体には、パイプ10の材料をステンレス等にしたりパイプ10の板厚を厚くしたりすることができる。また、コア材20の材料も要求強度に合わせて変更できる。その結果、用途に合わせて構造体の材料や形状を選択できる。
【0034】
次に、各複合構造体を繋ぎ部の接続構造について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る複合構造体同士の接続構造を示す概略斜視図である。本発明の各複合構造体を繋ぐ繋ぎ部の接続構造は、パイプ10の長手方向の一端はコア材20がパイプ10から所定量突出したようになっており、他端はコア材20がパイプ10から所定量引っ込んだようになっている。そして、その突出した側の複合構造体を引っ込んだ側の複合構造体に差し込んで接続するようになっている。そのため、各複合材の接続作業が極めて容易に行える。また、余計な部品を使用しないため、コスト削減となる。なお、接続の際には接着材をコア材20に塗布して接続させても良い。また、パイプの繋ぎ目部分を溶接等しても良い。
【0035】
また、図5は本発明の一実施形態の図4とは異なる接続構造を示す概略斜視図である。本発明の1実施形態の接続構造の第1の変形例は、パイプ10の長手方向の両端はコア材20が引っ込んだようになっている。そして、金属製からなる接続材31を介して接続される。このため、パイプの接続部を仮に溶接して接合力を高める場合にコア材への加熱による影響を受けない。また、パイプに圧力のかかる溶接した部分の仕上げ作業をする場合に接続材がテンションとなり、構造体の形状を変形させることなく容易に行える。
【0036】
また、図6は本発明の一実施形態の図4及び図5とは異なる接続構造を示す概略斜視図である。本発明の1実施形態の接続構造の第2の変形例は、パイプ10の長手方向の両端はコア材20が引っ込んだようになっている。そして、金属製からなる接続材31は所定の角度を有しているため複合構造体の接続方向を任意に設定できる。従って、例えばラックや壁掛け用の観賞用絵画の額縁等に矩型の形状の構造体を組み立てることができる。
【0037】
更に詳細に説明するために、具体的に本発明に係る複合構造体1を円形机100に使用する場合について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る複合構造体101を使用した製品を示す概略斜視図である。図8は、図7に示した製品に用いて複合構造体101の周辺部分を拡大して示す断面図である。
【0038】
本発明に係る複合構造体を使用した丸テーブル100は図4に示すように、
クリスタル材からなる天板102と、天板102を支える鉄製の支柱103及び丸テーブルが容易に倒れないようにする鉄製の基台104とからなり、本発明に係る複合構造体を丸テーブルの縁部の全周に亘って備えている。
【0039】
そして、天板を支える支柱103が天板102の裏面と所定の結合方法(ここでは図示しない)を介して結合され、支柱103から伝わる荷重を床面へ伝える基台104によって構成されている。
【0040】
丸テーブルの縁部には補強材として本発明に係る複合構造体を用いている。そして、その複合構造体の断面形状は、図8に示すように一部に突起部を有する異形の略直方体の断面形状を有しているが、このような断面形状を有するパイプであっても曲げ加工機のプログラムの変更により容易に形成できる。また、コア材も木材からできているので切削加工によって容易に形成できる。その結果、特許文献1のように寸法形状に対応した金型を作成する必要がなく、余分な費用がかからない。また、大掛かりな金型の交換を伴う作業も必要なく、余計な時間がかからない。
【0041】
また、丸テーブルの縁部は、円環状の複合構造体で補強されている。この複合構造体は、コア材をパイプに挿入した状態で熱水やスチーム等を加えて曲げ加工することで容易に形成できる。これは、本実施形態においてはコア材として竹材を使用しており、その竹材の熱水やスチーム等による加湿状態で曲げやすい物性を活かすと共に、その周りのパイプの板厚を薄くてすることで、曲げ加工を容易に行える。そのため、従来の板厚の厚い中空の構造体は、曲げ加工時において大掛かりな曲げ加工装置を必要とするが、本発明による実施形態によれば、大掛かりな曲げ加工機を必要とせず、柔軟な形状に曲げ加工ができる。そのため、複合構造体1の形状は、規格品に限定されず柔軟に形状を成型することができる。また、使用用途に合わせて最適材料の選択と最適形状の選択をすることができる。そのため、今まで使用できなかった分野への利用が期待できる。
【0042】
なお、複合構造体1の断面形状は上述した形状に限らないことは言うまでもない。
【0043】
なお、コア材は上述したスリットを有する棒状のものである必要はなく、例えばパイプ内にバインダー(接着剤)の混ざったパルプを充填させて固化させ、パルプでできたコア材を形成させても良いし、又は小さな樹脂状のビーズにバインダーを混ぜてパイプ内の空間に充填させ、そのビーズを固化させコア材を形成しても良い。この場合であっても、断面が一定形状を有する棒状のコア材であって長手方向全体に亘って直線状のスリットが形成されたコア材と、コア材の長手方向全体に亘って当該コア材の周囲を覆うパイプからなり、パイプはコア材の全長に対応する長さを有した細長の板材をコア材の断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げてコア材の周囲を覆っており、かつ板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて2つのスリット差込部を形成し、2つのスリット差込部が合掌合わせされた状態で前記コア材のスリットに差込まれている棒状の構造体に相当するものであり、同様の作用効果を発揮することができる。
【0044】
なお、パイプとコア材の長さは厳密に一致しなくても良い。一方、パイプとコア材の長さを一致させて、接続するコア材同士の断面を強力な接着剤で接着すると共にパイプの接合部を溶接しても良い。本発明の場合パイプの板厚が薄いので溶接に必要な熱量が少なくてすみ、コア材が木材でもそれら結合部の表面が炭化するのみで構造体の断面同士の接合力を十分維持できる。
【0045】
なお、上述した実施形態においては通常ベンダーと呼ばれる曲げ加工機を用いたが、この代わりに必要に応じてプレス加工機やロールフォーミング加工機によって板材をパイプ状に加工しても良い。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の有用性を立証するために評価試験を行ったので、その評価試験の結果について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る複合構造体の評価試験を説明する説明図である。
【0047】
この評価試験では、試験片中央に一定の荷重を加えた状態での試験片の変位量(撓み量)を求める。なお、支点間距離は750mmであり荷重は93.2Nとする。
【0048】
本評価試験においては、本発明に係る実施例として、図6に示すように試験片の形状は10mm×20mm×900mmとし、パイプの材質はSUS304で板厚は0.4mmであり、コアの材質は木材を用いた。なお、本実施例の試験片の重量は304(g/m)である。
【0049】
一方、従来品に係る比較例として、試験片の形状は10mm×19mm×900mmとし、パイプの材質はSUS304で板厚1.2mmを用いた。なお、本比較例の試験片の重量は483(g/m)である。
【0050】
本試評価験によると、本発明に係る実施例の変位量は7.4mmであり、比較例の変位量は4.5mmとなった。この試験結果から明らかなように、高価な設備を必要とし板厚の厚い重量のある従来品の構造体と比較し、本発明に係る実施例は廉価な設備で軽量にも関わらず十分な強度を有すことができた。
【0051】
なお、本発明の適用範囲は必ずしもこれに限定されず、複合構造体の断面形状を断面2次モーメントが向上する異形形状にしたり、パイプの板厚を変更したり、コア材の材質を変更させたりすることで剛性力を調整できることは言うまでもない。その結果、複合構造体を使用する製品に適した材料、形状の幅広い選択が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1 複合構造体
10 パイプ
11 第1の立ち上げ部
12 第2の立ち上げ部
13 傾斜部
14 差込部
20 コア材
21 スリット
30,31 接続材
100 丸テーブル
101 補強部(複合構造体)
102 天板
103 支柱
104 基台



【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が一定形状を有する棒状のコア材であって長手方向全体に亘って直線状のスリットが形成されたコア材と、
前記コア材の長手方向全体に亘って当該コア材の周囲を覆うパイプからなり、
前記パイプは前記コア材の全長に対応する長さを有した細長の板材を前記コア材の断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げて前記コア材の周囲を覆っており、かつ前記板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて2つのスリット差込部を形成し、前記2つのスリット差込部が合掌合わせされた状態で前記コア材のスリットに差込まれていることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
前記パイプは金属からなり、前記コア材は木材からなることを特徴とする、請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
断面が一定形状を有する棒状のコア材であって長手方向全体に亘って直線状のスリットが形成されたコア材を用意すると共に、前記コア材の長さに対応する長さを有しかつ当該コア材の長手方向全体に亘って当該コア材の周囲を覆う幅に2つのスリット差込部を形成する幅を加えた幅を有する細長の板材を用意し、
前記板材の幅方向両端部を長手方向全体に亘って所定幅で折り曲げて、2つのスリット差込部を板材の長手方向両端部全体に亘って構成し、
前記2つのスリット差込部を除いた残りの部分で、前記板材を前記コア材の断面形状に合わせて長手方向全体に亘って幅方向に折り曲げて前記コア材の周囲を覆うようにパイプを形成し、
前記2つのスリット差込部を合掌合わせさせた状態で前記コア材のスリットに差込みながら前記パイプに前記コア材に挿入することで複合構造体を組み立てることを特徴とする複合構造体の組立て方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−176528(P2012−176528A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40335(P2011−40335)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(511051948)株式会社春原設計 (1)
【Fターム(参考)】