説明

複合積層品

本発明は、変形可能なセル状構造体を形成する積層品(1)であって、少なくとも、両方とも同一の主方向(X)に差し向けられた上側バンド(2)及び下側バンド(3)と、2つのバンド相互間に位置し、バンドをいわゆる繋留領域(4)のところで連結するいわゆる連結用円筒形構造体(5)から成る方向(X)に延びる連続体(5A,5B,5C)とを有し、円筒形構造体は、方向(X)に互いに接触関係をなしておらず、各連結用円筒形構造体(5)は、母線が方向(X)に垂直な角度Yをなして差し向けられた複数個の好ましくは同心の要素筒体(5a,5b)を含み、要素筒体は、互いに嵌め合わされると共に各繋留領域(4)内で互いに連結されている、積層品に関する。要素筒体は、特に、樹脂母材中に埋め込まれた繊維を含む複合筒体から成る。この積層品を曲げ−圧縮応力に対して高い耐性を示すと共にこのような繰り返し又は交番応力に対して高い耐久性を示す弾性ビームとして、特に非空気圧弾性ホイールとして使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層品、即ち、互いに接合された平べったい又は平べったくない形態の数枚の層又はバンドで作られ、例えばセル状又はハニカム形式の製品に関する。
【0002】
本発明は、より正確に言えば、積層品であって、これらの特定の幾何学的形状により特にこれら積層品が複合製品であり、このような複合製品の全て又は一部が樹脂母材で被覆された繊維で構成されている場合、曲げ応力/圧縮応力に対して耐性のあるビームとして使用できる変形可能なセル状構造体を得ることができるようにする積層品に関する。
【0003】
本発明は又、「非空気圧」型、即ち、使用可能な形態を取るためにインフレーション用ガス、例えば空気を必要としない形式の自動車用タイヤ又は弾性(可撓性)ホイールに関する。
【背景技術】
【0004】
非空気圧型可撓性ホイール又はタイヤは、当業者には周知である。これらホイール又はタイヤは、非常に多くの特許文献、例えば、欧州特許第1242254号明細書(又は米国特許第6769465号明細書)、欧州特許第1359028号明細書(又は米国特許第6994135号明細書)、欧州特許第1242254号明細書(又は米国特許第6769465号明細書)、米国特許第7201194号明細書、国際公開第00/37269号パンフレット(又は米国特許第6640859号明細書)、国際公開第2007/085414号パンフレットに記載されている。
【0005】
このような非空気圧型タイヤは、これらが可撓性タイヤとホイールのハブとの間の連結部となるようになった剛性機械的要素と関連する場合、例えば大抵の現行道路車両で知られている空気圧タイヤ、リム及びディスクにより構成される組立体に取って代わる。
【0006】
特に、上述の米国特許第7201194号明細書は、非空気圧型の構造的に支持された(即ち、内圧を利用しない)タイヤを記載しており、このタイヤは、タイヤに加わる荷重を支持する補強環状バンド及び圧縮剛性が非常に低く、環状バンドとホイールハブとの間で力を伝達するよう張力下で動作する複数本の支持要素又はスポークを有するという主要な特徴を備えている。
【0007】
この環状バンド(又は剪断バンド)は、天然ゴム又は合成ゴムで被覆された本質的に非伸張性のコードで作られた2枚のメンブレンから成り、これらメンブレンは、それ自体ゴムで作られた剪断層により分離されている。このようなバンドの動作原理は、剪断層の剪断弾性率が2枚のメンブレンの引張弾性率よりも実質的に非常に低く、他方、力を一方のメンブレンから他方のメンブレンに正確に伝達し、バンドを剪断モードで稼働させることができるのに十分であることによる。
【0008】
この環状バンドにより、パンクの恐れなく且つ空気圧をタイヤの内部に維持しなければならないという欠点なく、厳しい又は過酷な条件下で走行できる非空気圧型ホイール又はタイヤを製造することが可能である。
【0009】
さらに、この場合、先行技術の非空気圧型タイヤと比較して、一様に分布した路面接触圧力、それ故にタイヤの良好な働き、向上した路面保持及び向上した耐摩耗性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1242254号明細書
【特許文献2】米国特許第6769465号明細書
【特許文献3】欧州特許第1359028号明細書
【特許文献4】米国特許第6994135号明細書
【特許文献5】米国特許第7201194号明細書
【特許文献6】国際公開第00/37269号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6640859号明細書
【特許文献8】国際公開第2007/085414号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このようなゴム剪断バンドは、欠点がないわけではない。
【0012】
第1に、例えば−30℃〜+40℃の普段の動作温度では、このようなゴム剪断バンドは、比較的ヒステリシスを示し、即ち、転動のために供給されるエネルギーの何割かが熱の形態で散逸される(失われる)。次に、例えば地理的な極地で起こるかなり低い動作温度、典型的には−50℃以下の場合、ゴムは、迅速にもろくなり、脆弱になり、したがって使用できない状態になることは広く知られている。このような極端な条件下において、更に理解されるように、多少大きく且つ迅速である温度変動が例えば比較的高い機械的応力と組み合わさると、それによっても2枚のメンブレンと剪断層との間の付着の問題が生じる場合があり、メンブレンと同一高さ位置にある剪断バンドの局所座屈の恐れ及び耐久性が最終的に劣化するという恐れがある。
【0013】
本出願人は、自分達の研究中、上述したような非空気圧型タイヤ又はホイールに特に剪断バンドとして使用でき、少なくとも部分的に上述の欠点を解決することができる新規な積層品を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の特徴によれば、本発明は、変形可能なセル状構造体を形成する積層品であって、積層品は、少なくとも、
両方とも同一の主方向Xに差し向けられた上側バンド及び下側バンドと、
2つのバンド相互間に位置し、バンドを繋留ゾーンと呼ばれるゾーン内で連結する連結用円筒形構造体と呼ばれている円筒形構造体から成る方向Xに延びる連続体とを有し、連結用円筒形構造体は、方向Xに互いに接触関係をなしておらず、
各連結用円筒形構造体は、母線が方向Xに垂直な軸線Yに沿って差し向けられた複数個の要素筒体から成り、要素筒体は、互いに内外に嵌め合わされると共に各繋留ゾーン内で互いに連結されていることを特徴とする積層品に関する。
【0015】
本発明のこの積層品は、通気性の高い変形可能なセル状構造体を有し、このようなセル状構造体は、予期せぬこととして、曲げ応力及び/又は圧縮応力に対する高い耐性及びこのような繰り返し又は交番応力に対する高い耐久性を示すことが判明した。このような積層品は、非ヒステリシス性であるという利点を有する。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態によれば、この積層品は、複合積層品であり、その少なくとも要素筒体、即ち連結用円筒形構造体のコンポーネントは、樹脂母材中に埋め込まれた繊維から成る。さらに、特に好ましい一実施形態によれば、これら要素筒体並びに上側及び下側バンドが全て、ポリエステル又はビニルエステル系の熱硬化性樹脂中に埋め込まれた繊維(特にガラス繊維及び/又は炭素繊維)を主成分とする複合材料で構成されている場合、この複合積層品は、極めて低い温度に耐えることができるだけでなく、代表的には−250℃から最高+150℃までの非常に広い温度範囲で使用できることが判明した。
【0017】
本発明は又、最終製品の構造要素としてのこのような積層品の使用及び更に本発明の積層品を有する最終製品に関する。
【0018】
本発明は、特に、非空気圧型ホイール又はタイヤの補強要素、特にこのようなタイヤ又はこのようなホイールの剪断バンドとしてのこのような積層品の使用に関する。
【0019】
本発明及びその利点は、次の詳細な説明及び例示の実施形態並びにこれら実施形態を概略的に示す図(特定の縮尺に合わせて作成されているわけではない)に照らして容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】直線である主方向Xに沿って差し向けられた本発明の積層品の一例の断面図である。
【図2】曲線を辿る主方向Xに沿って差し向けられた本発明の別の実施形態としての積層品の別の例の断面図である。
【図3】図1の断面の斜視図である。
【図4】本発明の積層品を有する非空気圧型弾性ホイールの一例の半径方向断面図である。
【図5】本発明の積層品を有する非空気圧型弾性ホイールの別の例の半径方向断面図である。
【図6】本発明の積層品を有する非空気圧型弾性ホイールの一例の完全な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
この説明において、別段の指定がなければ、全ての割合(%)は、重量%である。
【0022】
さらに、本願において、以下のように定義する。
「複合材」は、任意の材料又は物体に言及する場合、樹脂母材で被覆された短繊維又は連続繊維から成る材料又は物体を意味する。
「層」又は「バンド」は、厚さがその他の寸法と比較して比較的小さいシート又は任意他の要素を意味し、この層は、場合によっては均質又は結合性のものであり又はそうではない場合がある。
「筒体」は、この用語の最も広い意味における任意の中空の(即ち、底なしの)筒体であり、即ち、真っ直ぐな(正規直交)断面を有する円筒形の任意の物体であり、即ち、その輪郭は、変曲点のない閉じられた線(この場合、例えば、円形、長円形又は楕円形の断面に関する)又は変曲点のある閉じられた線を定め、この定義によれば、例えば管、円筒形管、円筒形管部分、管状要素、管状柱、円筒形要素のような用語は全て、このような「筒体」となることが理解できる。
【0023】
「一方向繊維」は、互いに本質的に平行な、即ち、同一軸線に沿って差し向けられた1組の繊維である。
「非空気圧」は、ホイール又はタイヤに言及する場合の用語であり、即ち、インフレーション圧力なしで相当大きな荷重に耐えることができるようにするために設計され、即ち、使用可能な形態を取ると共に荷重を支えるためにインフレーション用ガス、例えば空気を必要としないホイール又はタイヤに関する用語である。
【0024】
「軸線又は(所与の)方向に沿って差し向けられた」は、任意の要素、例えばバンド、繊維又は他の長手方向直線状の補強要素に言及した場合の用語であり、即ち、この軸線又はこの方向に実質的に平行に差し向けられ、即ち、この軸線又はこの方向と、10°以上(即ち、ゼロ又はせいぜい10°に等しい角度)逸脱せず、逸脱しても好ましくは5°以下である角度をなす要素に言及する場合の表現である。
【0025】
「軸線又は(所与の)方向に垂直に差し向けられ」は、任意の要素、例えばバンド、繊維又は別の長手方向直線状の補強要素に言及した場合の用語であり、即ち、この軸線又はこの方向に実質的に垂直に差し向けられ、即ち、この軸線又はこの方向に垂直な線と、10°以上逸脱せず、逸脱しても好ましくは5°以下である角度をなす要素に言及する場合の表現である。
【0026】
「半径方向に差し向けられ」は、ホイール(又はタイヤ)の要素に言及する場合の用語であり、即ち、ホイール(又はタイヤ)の回転軸線を通り、しかもこの方向に実質的に垂直であり、即ち、この方向と10°以上(即ち、ゼロ又はせいぜい10°に等しい角度)逸脱せず、逸脱しても好ましくは5°以下である角度をなす任意の方向に差し向けられ、という意味である。
【0027】
「円周方向に差し向けられ」は、ホイール(又はタイヤ)の要素に言及する場合の用語であり、即ち、ホイール(又はタイヤ)の円周方向軸線に実質的に平行であり、即ち、この方向と10°以上逸脱せず、逸脱しても好ましくは5°以下である角度をなす任意の方向に差し向けられ、という意味である。
【0028】
「積層品」は、国際特許分類の意味の範囲内において用いられており、即ち、互いに連結された平べったい又は平べったくない形態の少なくとも2つの層又はバンドを含む任意の製品を意味し、「接合され」又は「連結され」という表現は、例えば曲げ、釘打ち、リベット止め又はボルト止めによる全ての接合又は組立て手段を含むものと広く解釈されるべきである。
【0029】
「樹脂」は、熱可塑性又は熱硬化性(後者の場合、硬化可能、重合性又は架橋性とも呼ばれる)の任意の合成樹脂を意味し、ひいては、樹脂を主成分とし、更に、1種類又は2種類以上の添加剤、例えば硬化剤を含む任意の組成物(コンパウンド)又は調合物を意味する。
【0030】
本発明の積層品(1)は、少なくとも(図1、図2及び図3を参照して)、
両方とも同一の主方向(X)に差し向けられた上側バンド(2)及び下側バンド(3)という特徴及び、
2つのバンド相互間に位置し、バンドを繋留ゾーンと呼ばれるゾーン(4)内で連結する連結用円筒形構造体と呼ばれている円筒形構造体(5)から成る方向Xに延びる連続体(5A,5B,5C等)とを有し、連結用円筒形構造体が方向Xに互いに接触関係をなしていないという特徴から成る主要な特徴を有する。
【0031】
各連結用円筒形構造体(5)は、母線が方向Xに垂直な軸線Yに沿って差し向けられた(少なくとも非変形状態では)複数個(少なくとも少なくとも2つ)の要素筒体(5a,5b)から成り、要素筒体は、上側バンド(2)及び下側バンド(3)のところで互いに内外に嵌め合わされると共に各繋留ゾーン(4a,4b)内で互いに連結されている(取り付けられている)。
【0032】
各連結用円筒形構造体の2つの繋留ゾーン(上側ゾーン4a、下側ゾーン4b)の外部には、「固定ゾーン」又は「連結ゾーン」とも呼ばれる場合があるゾーンが設けられ、このようなゾーンでは、各連結用円筒形構造体が繋留され、積層品の2つのバンド(上側バンド2及び下側バンド3)に直接又は間接的に連結され、各連結用構造体のコンポーネント(5A,5B,5C等)である要素筒体(5a、5b等)は、これらの間に隙間がある状態で又はない状態で、互いに別個独立に働く。
【0033】
当業者であれば、本願を読むと容易に理解されるように、静止又は休止時に、要素筒体は、互いに接触関係をなし又はそうではない場合があるが、通常の作動中、繋留ゾーンの外部では、これら要素筒体は、好ましくは、互いに連結されず、しかも互いに取り付けられず、したがって、これら要素筒体は、最適な仕方で、即ち、相互に別個独立に(2つの要素筒体の場合)又は互いに別個独立に(3つ以上の要素筒体の場合)機能することができるようになっている。
【0034】
単一の筒体ではなく、数個の(即ち、2つ又は3つ以上、例えば、3つ又は4つの)互いに積み重ねられた好ましくは同心の要素筒体の使用により、有利には、本発明の積層品の剛性が互いに同一である場合、連結用円筒形構造体の応力を制限し、組立体の許容変位量を増大させることができる。
【0035】
要素筒体(5a,5b)は、互いに異なる厚さのものであるのが良く、これら要素筒体は、好ましくは、それぞれの繋留ゾーン(4a,4b)における2つのバンド(2,3)と筒体、特に最も外側に位置する筒体(5a)の接触面積を最適化する(増大させる)ために幾分はっきりとした卵形のものである。
【0036】
例えば、図1〜図3に示されているように例えば1つの連結用円筒形構造体について2つの要素筒体(5a,5b)が設けられている場合、内側の要素筒体(5b)の外径(即ち、軸線Zに沿う寸法)は、外側の要素筒体(5a)(全体として下側バンドに実質的に接し、上側バンド及び下側バンドの最も近くに位置する筒体)の内径(軸線Zに沿う寸法)よりも小さく又はせいぜいこれに等しいことが解る。
【0037】
互いに内外に嵌め合わされた種々の要素筒体は、連結用円筒形構造体を形成する組立体及び最終的には本発明の積層品の全体的耐久性を最適化するために1つの筒体と次の筒体とでできるだけ近い直径(軸線Zに沿う寸法)を有することが好ましい。
【0038】
本発明の積層品は、これら2つのバンドと連結用円筒形構造体(定義上、中空であり且つ底なしの筒体で形成される)との間に他の材料が不要であるという点において「セル状」と形容される場合のある中空で且つ極めてハニカム状の構造体を形成する。
【0039】
この変形可能なセル状構造体は、これが種々の引張応力、曲げ応力又は圧縮応力の作用下でその2つのバンド相互間の剪断と同等の変形を生じさせることができるので、曲げ応力/圧縮応力に対して高い耐性を示すと共にこのような繰り返し又は交番応力に対して高い耐久性を示す弾性ビーム(平べったい又は平べったくない弾性ビームとして使用できる。
【0040】
主方向Xは、図1又は図3(斜視図の断面が図1の断面に相当している)に示されているように直線状であっても良く、或いは、図2に示されているように曲線を辿っても良い。
【0041】
本発明の積層品では、2つのバンド及び連結用円筒形構造体は、種々の材料、例えば金属(例えば、チタン、鋼、アルミニウム、金属合金)、ポリマー又は複合材料で構成されるのが良い。本発明のこの積層品は、ハイブリッド型のものであっても良く、即ち、互いに異なる材料の組み合わせで構成されても良い。
【0042】
しかしながら、本発明の好ましい一実施形態によれば、要素筒体は、複合材料で作られ、即ち、樹脂マトリックス中に埋め込まれた繊維(或いは、樹脂母材で被覆された繊維、これら2通りの表現は、同義であると考えられる)から成る筒体であり、特に、複合材料で作られるのは、要素筒体と2つのバンドの両方である。
【0043】
複合材料で作られた連結用円筒形構造体により、本発明の積層品は、純粋に弾性領域において高い潜在的変形性を示すことができる。複合材料で作られたこのような連結用円筒形構造体は、特に耐久性がある。というのは、これら連結用円筒形構造体は、非常に大きな変形を受けると公知の仕方で耐久性を損ねる塑性挙動、即ち非可逆的挙動を示す場合のある金属製の構造体とは対照的に、塑性変形なしに破断まで純粋に弾性挙動を示すからである。この有利な特性は、バンド(2,3)も又それ自体繊維/樹脂複合材料で作られている場合、バンド(2,3)にも当てはまる。
【0044】
金属構造体と比較して、耐久性が高く、実質的に軽量であり(複合材の密度が2に近い)しかも耐腐食性がある構造体が得られる。
要素筒体(5a,5b)の繊維は、連続繊維又は短繊維であるのが良く、連続繊維を用いることが好ましい。筒体の良好な強度を得るため、これら繊維は、より好ましくは一方向であり且つ軸線Yに垂直な平面内において円周方向に差し向けられる。
【0045】
これら要素筒体の本質的な動作原理は、曲げである。これら補強繊維の円周方向軸線に応じて、これら補強繊維は、好ましくは15GPaを超え、より好ましくは30GPaを超え、特に30〜50GPaの引張弾性率(ASTM D 638)及び曲げ弾性率(ASTM D 790)を有する。
【0046】
本発明は又、2つのバンド(2,3)が要素筒体の材料、即ち複合材ではなく、例えば金属又はポリマーで作られた材料で構成される場合にも当てはまる。
【0047】
好ましい一実施形態によれば、上側バンド(2)及び下側バンド(3)(「バンド」は、当業者によれば「メンブレン」と呼ばれる場合があり、或いは、複合積層品の分野では「スキン」と呼ばれる場合がある)は、樹脂母材中に埋め込まれた繊維を更に含む複合バンドである。2つのバンド(2,3)連結用円筒形構造体から成る連続体(5A,5B,5C)及びこれらの複数個の連結用筒体(5a,5b)で構成されたベース構造体全体は、複合材料で作られる。好ましくは、バンド(2,3)のこれら繊維は、連続繊維であり、より好ましくは、これら連続繊維は、一方向であり且つ主方向Xに平行に差し向けられ、その結果、バンドは、主方向Xに最大引張強度を備えるようになっている。この方向Xでは、2つのバンド(2,3)は、好ましくは15GPaを超え、好ましくは30GPaを超える(例えば、30〜50GPa)の引張弾性率(ASTM D 638)を有する。
【0048】
上述の要素筒体(5a,5b)及び/又は複合バンド(2,3)は、これらが好ましくは複合材料で作られている場合、単一のフィラメント状層又は数個の互いに重ね合わされた要素フィラメント状層で構成されるのが良く、これら層の繊維は、好ましくは、全て、主方向Xに差し向けられる。この多層構造体中には、特に軸線Y(筒体の母線)に沿って差し向けられた交差細線の1つ又は2つ以上の他の追加の層が挿入されるのが良く、その目的は、構造体を側方に補強し、複合材の分野において認識される用語によれば、構造体全体のバランスを取ることにある。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、連結用円筒形構造体(5)は、一方の円筒形構造体から他方の円筒形構造体まで、上側バンド(2)と下側バンド(3)を実質的に互いに等距離を置いた状態に保つことができるようにするために方向X及び軸線Yに垂直な半径方向と呼ばれる方向Zに実質的に一定の直径D(図1、図2及び図3に示されているように外径又は軸線Zに沿う寸法)を有する。
【0050】
本発明の別の考えられる実施形態によれば、連結用円筒形構造体(5)は、一方の円筒形構造体から他方の円筒形構造体まで、上記とは対照的に、2つのバンド相互間の距離が主軸線Xに沿って次第に変化することができる構造体が望ましい場合、主方向Xに直線的に変化可能な直径(又はZ方向における寸法)Dを有する。
【0051】
上述したように、要素筒体の定義は、円形の真っ直ぐの断面を有する筒体には限定されず、「直径」という用語は、本願においては、半径方向Zにおける筒体の寸法(厚さを含む)として広く解されるべきである。
【0052】
当業者であれば、対象とする特定の用途に応じて、連結用円筒形構造体、これらの要素筒体及びバンド、並びにこれらの相対的配置状態を本発明の積層品を有するようになった最終製品の寸法にどのように合わせてどのように調節すれば良いかを知っているであろう。例えば、寸法Dにより、連結用円筒形構造体の曲げ剛性を調節することができる。
【0053】
本発明の積層品(1)の必要不可欠な特徴は、その連結用円筒形構造体(5A,5B,5C)が主方向Xにおいて互いに接しておらず、したがって、これら連結用円筒形構造体が曲げによって変形して作用効果をもたらすことができるようになっていることにある。
【0054】
好ましくは、比d/Dは、0.10〜0.50であり、dは、図1、図2及び図3に示されているように、2つの連続して位置する連結用円筒形構造相互間の方向Xにおいて測定した平均距離dを表している。「平均距離」という表現は、積層品(1)に存在する連結用円筒形構造体(5)の全てから計算された平均値を意味しているものと理解されたい。d/Dが0.10未満である場合、剪断の際に可撓性の或る程度の減少に見舞われる恐れがあり、これに対し、d/Dが0.50を超える場合、曲げ変形の一様性が失われるように見える場合がある。これらの理由で、比d/Dは、より好ましくは、約0.15〜0.40である。
【0055】
注目されるように、この点に関し、後で説明する図4では、連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)及び更にホイールスポーク(12)は、本発明の好ましい実施形態と比較して、数が比較的減少した状態で表されており、これは、図を簡単にする単純な目的のためである。
【0056】
本発明の積層品(1)の構造体の好ましい例として、特に、積層品の主方向Xが直線状ではなく、湾曲し又は円周方向である(図2)場合、以下の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てが満たされる。
10〜100mmの直径D、
1〜50mmの平均距離d、
両方共軸線Yに平行な方向で測定して、各々5〜200mmのバンドの幅Lb及び連結用円筒形構造体の幅Lc
0.25〜3mmのバンド厚さEb(半径方向Zに測定した厚さ)、
0.10〜3mmの要素筒体の厚さEc(例えば半径方向Zに測定した厚さ)。
【0057】
これら好ましい特徴は、特に、本発明の積層品が後でより詳細に敷衍して説明するように、標準サイズの非空気圧ホイール中の剪断バンドとして用いられる場合に対応している。
【0058】
より好ましくは、上述の理由で、以下の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てが満たされる。
15〜45mmの直径D、
1.5〜40mm(特に、3〜40mm、より好ましくは5〜15mm)の平均距離d、
各々20〜100mmのバンドの幅Lb及び連結用円筒形構造体の幅Lc
0.5〜2mmのバンドの厚さEb
0.5〜2mmの要素筒体の厚さEc
【0059】
当然のことながら、10mm未満又は100mmを超えるDの値は、ホイールの予想曲率半径又は直径に応じて依然として実現可能である。
【0060】
本発明の積層品の構造体の考えられる他の好ましい例として、以下の特徴の少なくとも任意の1つ、より好ましくは全てが満たされる。
10〜100cm、特に15〜45cmの直径d、
1〜50cm、特に1.5〜40cmの平均距離d、
両方共軸線Yに平行な方向に測定され、各々5〜200cm、特に20〜100cmのバンドの幅Lb及び連結用円筒形構造体の幅Lc
0.25〜3cm、特に0.5〜2cmのバンドの厚さEb
0.10〜3cm、特に0.20〜2cmの要素筒体の厚さEc
【0061】
本発明の複合積層品(1)の種々の構成部品、特に連結用円筒形構造体(5)、上側バンド(2)及び下側バンド(3)は、複合積層品の基本的部品を構成し、これら基本的部品は、化学的、物理的又は機械的締結手段によって互いに直接連結されるのが良い。このような直接的締結手段の例として、例えば接着剤、リベット、ボルト、ステープル及び種々のステッチ又は結合手段が挙げられる。締結手段は、種々の材料、例えば金属、金属合金、プラスチック又は複合材(例えば、ガラス繊維又は炭素繊維を主成分とする)で構成できる。
【0062】
良好な繋留を得るため、連結用円筒形構造体(5)は又、これらが連結される上側バンド(2)及び/又は下側バンド(3)中に入り込むのが良い。
【0063】
考えられる別の実施形態によれば、連結用円筒形構造体(5)は、上側バンド(2)及び下側バンド(3)に間接的に、即ち、中間組立て部品によって連結されても良い。これら中間部品又は「インサート」は、種々の幾何学的形状のものであって良く、例えば、平行六面体の形、ダブテール形、“I”、“T”又は“U”の形のものであって良く、これら中間部品又は「インサート」はこれら自体、上述した締結手段によって基本的部品(バンド及び要素筒体)に締結されるのが良い。特に、耐える力が大きすぎるときにはいつでもこのような「インサート」又は補強部品を使用するのが良く、これらインサートは、場合によっては、複合構造体に伝達される応力を許容レベルまで減少させる。これらインサートは、例えば、金属、金属合金、プラスチック又は複合材(例えば、樹脂に埋め込まれたガラス繊維又は炭素繊維で形成される)で構成される。
【0064】
動的及び繰り返し応力下における隣り合う要素筒体相互間のこすれ若しくは研磨又は隣り合う要素筒体相互間への異物の侵入の恐れを阻止するため、必要ならば、これら要素筒体相互間に、隣り合う要素筒体の相対変位を妨害しないよう非常に小さな摩擦係数を有すると共に適当な熱的性質を有する材料の保護且つ非粘着性の(これら筒体に対して)層、例えばポリマー(例えば、フルオロポリマー、例えばPTEF)の層を挿入することが好ましい。
【0065】
連結用円筒形構造体の単一の1つ(5C)に関して(図を分かりやすくするために)図3に例示的に示されている特定の一実施形態によれば、上述の連結用円筒形構造体も又、これらの少なくとも幾つかに関し、「半径方向補強材」(特に、例えばガラス/樹脂複合材料で作られたモノフィラメント又はテープの形態をしている)と呼ばれる少なくとも1つの長さ方向直線状の補強要素(6)により補強され、このような補強要素(6)は、主方向X及び要素筒体の母線Yに垂直な半径方向Zに平行に上側バンド(2)及び下側バンド(3)内に繋留されるよう連結用円筒形構造体をこれらの直径に沿って完全に貫通して延びている。半径方向補強材(6)は、この場合、軸線Y(母線)に垂直な連結用円筒形構造体(5)の変形を阻止することができるビームとして働く。半径方向補強材は、これらの引張剛性及び圧縮剛性に起因して、複合構造体が最も過酷な曲げを受けた場合であっても、積層品(1)を座屈から阻止することができる。
【0066】
本明細書における説明全体を通じ、別段の指定がなければ、「繊維」という用語は、樹脂母材との適合性がある限り用いることができる任意種類の補強繊維を意味している。このような繊維は、例えば、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド(又は、「アラミド」)繊維、ポリアミド‐イミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポロプロピレン繊維、セルロース繊維、レーヨン繊維、ビスコース繊維、ポリフェニレンベンゾビソキサゾール(又は、“PBB”)繊維、ポリエチレンナフテネート(“PEN”)繊維、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維及びこのような繊維の混合物で構成される群から選択される。
【0067】
好ましくは、特に、非常に低い温度における用途の場合、ガラス繊維、炭素繊維及びこのような繊維の混合物で構成される群から選択された繊維が用いられる。より好ましくは、ガラス繊維が用いられる。
【0068】
用いられる樹脂は、好ましくは熱硬化性樹脂である。この樹脂は、例えば、電離線、例えば少なくとも300nm〜450nmのスペクトルで加速電子のビーム又はX線のビームを放出する紫外線‐可視線により架橋できる樹脂である。また、過酸化物により架橋できる樹脂を含む配合物が選択されても良く、次に、時間が来ると、熱入力、例えばマイクロ波の作用により架橋を場合によっては実施する。好ましくは、電離線によって硬化させることができることができる種類の組成物を用い、容易にはUV又はUV/可視タイプのイオン化処理を用いて最終の重合を場合によってはトリガして制御する。
【0069】
用いられる樹脂は、熱硬化状態では、好ましくは少なくとも2.3GPaに等しく、より好ましくは2.5GPaを超え、特に3.0GPaを超える引張弾性率(ASTM D 638)を有する。DSCにより測定したそのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、130℃を超え、より好ましくは140℃を超える。
【0070】
架橋可能な樹脂として、好ましくは、ポリエステル樹脂(即ち、不飽和ポリエステル)又はビニルエステル樹脂が用いられる。より好ましくは、ビニルエステル樹脂が用いられる。
【0071】
驚くべきこととして、ビニルエステル樹脂は極めて低い温度でも他のものよりも良好に存続し続けるということが観察された。簡単な試験により、ガラス繊維/ビニルエステル樹脂複合材の曲げ強さが非常に低い温度でも実質的に高くなったかどうかを計測することができる。この試験では、複合モノフィラメント(例えば、1mmの直径を有する)でループを作り、そして引張状態にあるモノフィラメントの外側部分の破断(裸眼に明らかに見える)まで曲率半径を減少させる。すると、予期せぬこととして、達成された最小半径は、モノフィラメントのループを直前に液体窒素(−196℃)中に浸漬させた場合に小さくなるということが分かる。液体窒素中での熱的急冷又は浸漬試験では、樹脂をそのまま試験することも可能であり、このような試験中、亀裂を生じない樹脂を採用する。
【0072】
特に好ましい一実施形態によれば、連結用筒体の要素筒体並びに上側バンド及び下側バンドは、全体がビニルエステル樹脂母材中に埋め込まれたガラス繊維及び/又は炭素繊維で構成される。
【0073】
複合材料の分野ではビニルエステル樹脂は周知である。このことは本発明を限定するものではないが、ビニルエステル樹脂は、好ましくは、エポキシビニルエステル系のものである。より好ましくは、特にエポキシド系のビニルエステル樹脂が用いられ、これは、少なくとも部分的に、ノボラック(フェノプラストとも呼ばれている)及び/又はビスフェノール、即ち、好ましくは例えば欧州特許第1074369号明細書及び同第1174250号明細書(又は米国特許第6926853号明細書)に記載されているようなノボラック、ビスフェノール、又はノボラック及びビスフェノールを主成分とするビニルエステル樹脂を主成分としている(即ち、このような形式の構造体にグラフトされる)。ノボラック及びビスフェノール系のエポキシビニルエステル樹脂が優れた結果を示した。例を挙げると、DSM社から入手できる“ATLAC 590”又は“ATLAC E‐Nova FW 2045”ビニルエステル樹脂が特に言及できる(両方共、スチレンで希釈されている)。このようなエポキシビニルエステル樹脂は、他の製造業者、例えばライヒホールド(Reichhold)社、クレイ・バリー(Cray Valley)社及びUCB社から入手できる。
【0074】
本発明の積層品は、有利には、複合部品のみで構成され、特に、ビニルエステル樹脂に埋め込まれたガラス繊維で作られる。
【0075】
本発明の積層品の成分である種々の要素の製造のため、これらが要素筒体、例えば該当する場合には、(下側及び上側)バンドであるにせよそうでないにせよ、ブロック、シート又は長手方向直線状要素、例えばモノフィラメント又はテープを製造する任意の適当なプロセスを用いることが可能である。
【0076】
このようなプロセスは、今日、複合材の当業者には広く知られている。
【0077】
欧州特許第1174250号明細書(又は、米国特許第6926853号明細書)は、例えば、脱気後、直線状に配列された繊維に液体樹脂を含浸させて液体プレプレグを例えば丸形断面のモノフィラメント形状又はテープの形状を与えるために較正されているダイに通し、UV安定化チャンバ内における樹脂の実質的な凝固によりダイの下流側でモノフィラメント又はテープを安定化し、次に固体(安定化された)テープ又はモノフィラメントを適当な形状の支持体に巻き付け、最後に組立体全体を加圧金型内で硬化させ、それにより組立体を凝固すると共に高い剪断強さを保証することを提案している。
【0078】
国際公開第2007/085414号パンフレットは、別法として、製造作業全体を通じて液体状態で樹脂中に埋め込まれた繊維を複合材ブロックの最終形状を定める支持体に連続的且つ数個の層をなして直接巻き付け、それによりこの支持体上に連続リングを直接形成することを提案している。「液体」複合材リングをこのようにしていったん形成すると、液体樹脂に例えばUV放射線又は熱処理を用いて少なくとも部分的な重合を施し、それによりリングをその支持体から分離する前にリングを少なくとも部分的に安定化すると共に凝固する。樹脂組成物がこの場合、少なくとも部分的に固相にあるこのようにして安定化された複合材ブロックを次に容易に取り扱うことができ、そのままで貯蔵することができ或いは樹脂の重合を終了させるために(最終硬化又は架橋)すぐに処理することができる。最終の硬化作業は、「金型の外部で」(又は公認されている技術によれば「開放金型」で)単純な大気圧下で実施できる。
【0079】
上述した本発明の積層品は、最終形態において積層され又は積層されない最終製品又は物品の製造の中間段階を構成することができる。
【0080】
ハニカム型構造体に等しいその構造体は、これについて極めて広い考えられる用途をもたらし、このような用途は、例えば、一般力学分野、スポーツ及びレジャー、建築及び公共事業、電信、道路、鉄道、航空又は宇宙輸送及び自動車に及ぶ。
【0081】
好ましい実施形態によれば、この積層品は、極めて広い温度範囲にわたり特性を保持する弾性材料で構成された複合積層品であり、予期せぬこととして、これは、このような極めて広い温度範囲にわたり、先行技術において説明したような剪断バンドのエラストマーの剪断歪に匹敵可能であるということが判明した。
【0082】
本発明のこの複合積層品は、特に、あらゆる形式の陸上又は非陸上自動車両、特に、厳しい又は過酷な転動条件又は極端な温度、例えば、例示として月面車、道路輸送車両、オフロード車、例えば農業機械又は土木建築機械、或いはエラストマー材料の使用が可能ではない又は望ましくない任意他の形式の輸送又は取り扱い車両の遭遇する場合のあるこのような条件又は温度に直面するようになった車両に使用できる。
【0083】
一例を挙げると、図4は、構造的に支持された(即ち、荷重支持構造体により)非空気圧型弾性ホイール(10)の半径方向断面(即ち、ホイールの回転軸線Yに垂直な平面内における)を非常に概略的に示しており、このようなホイールの円周方向剪断バンド(13)は、本発明の積層品によって構成されている。
【0084】
3つの互いに垂直な方向、即ち、円周方向(X)、軸方向(Y)及び半径方向(Z)を定めるこの非空気圧型ホイール(10)は、少なくとも、
ハブ(11)、
円周方向Xに差し向けられた少なくとも1枚の内側円周方向メンブレン(14)及び少なくとも1枚の外側円周方向メンブレン(16)を有する剪断バンド(13)と呼ばれている環状バンド及び
ハブ(11)を内側円周方向メンブレン(14)に連結する複数個の支持要素(12)を有する。
さらに、非空気圧型ホイールは、以下の特徴、即ち、
2枚のメンブレン(14,16)が連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)から成る円周方向Xに延びる連続体によって繋留ゾーン(17a,17b)内で互いに連結され、連結用円筒形構造体(15)が円周方向Xに互いに接触関係をなしていないという特徴、
各連結用円筒形構造体は、母線が方向Xに垂直な軸線Yに沿って差し向けられた複数個の(図4の例では2つの)同心要素筒体(5a,5b)から成り、要素筒体は、互いに内外に嵌め合わされると共に各繋留ゾーン内で互いに連結されるという特徴を有する。
【0085】
換言すると、連結用円筒形構造体及び要素筒体自体の軸線(母線)は、少なくとも休止状態における(変形していない状態における)ホイールの構造においてホイールの回転軸線に平行になる。
【0086】
この図4では、各連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)は、事実、幾分卵形であり、互いに内外に嵌め合わされた2つの要素筒体(15a,15b)で構成されていることが分かる。これら2つの要素筒体(15a,15b)は、両方共、繋留ゾーン(17a,17b)と呼ばれるゾーン内において、直接的な締結手段(例えば、接着剤、リベット又はボルト)又は中間組立て部品により内側円周方向メンブレン(14)及び外側円周方向メンブレン(16)に連結され、これら2つの繋留ゾーンの外部では、これら2つの要素筒体(15a,15b)は、互いに別個独立して稼働することができるようにするために、もはや互いに連結されていない。
【0087】
分かりやすくするためにこの図4には示されていないこれら中間組立て部品は、要素筒体の母線に平行に差し向けられると共に最も内側の要素筒体の内側に位置決めされた(例えば、接合され又はリベット止めされた)平べったいラグ(“I”形インサート)から成るのが良い(1つのラグが繋留ゾーン17aの側に位置し、別のラグが繋留ゾーン17bの側に位置する)。
【0088】
この図4では、特に好ましい一実施形態によれば、連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)のコンポーネントである各要素筒体は、樹脂母材中に埋め込まれた繊維で作られる。
【0089】
ホイール(10)のこの例では、厚さが約1mmに等しい各円周方向メンブレン(14,16)は、例えば、脱気してビニルエステル樹脂(DSM社製の“Atlac 590”+シバ(Ciba)社製の“Irgacure 819”光開始剤)を含浸させた連続ガラス繊維(オーエンス・コーニング(Owens Corning)社製の“Adbantex”、線密度1200テックス)の2つのロットで構成され、これら連続ガラス繊維層相互間には、複合組立体のバランスを取るためにビニルエステル樹脂を含浸させたガラス繊維よこ織生地(“E”ガラス、基本重量125g/m2)を追加してある。メンブレンは、ゼロ度に近い角度でフィラメント巻き(0.2×5mmのノズルに源を発生するテープ)により得られた。3つの要素層の巻回(5mmの布設ピッチ)後、巻回を停止し、次に樹脂含浸よこ織生地を第3の操縦に載せ、その後、このようにして挿入されたよこ織生地の頂部上に最後の3つのテープ層を巻回した。次に、組立体全体を巻回支持体上でUV放射線下で重合させた。別の製造方法によれば、例えば、次のようにして連続して巻回を行うことが可能であり、即ち、次の層を連続的に被着させ、即ち、次の層を連続的に被着させ、即ち、1つの層を0°で、次に1つの層を−5°で、1つの層を+5°で、1つの層を0°で、1つの層を+5°で、1つの層を−5°で、最後に1つの層を0°で被着させ、これらは全て連続して行われる。+5°及び−5°の層は、十分な横方向結合性を与え、最終の厚さは常に同一である。このようにして調製されると、各メンブレンは、例えば、その補強繊維の方向に、45GPaのオーダーの引張弾性率を有する。
【0090】
それぞれ直径が約29mm及び30mmに等しく、厚さが約0.4mmの要素筒体(15a,15b)を、筒体の軸線(母線)に垂直に2つの層をなしてフィラメント巻きすることにより上述のメンブレンとして調製した。その後、組立体全体をUV放射線下で重合した(巻回支持体上で)。連結用円筒形構造体は、外側円周方向メンブレン(16)と内側円周方向メンブレン(14)を互いに実質的に等距離を置いた状態に保つよう半径方向に一定である直径Dを有している。剪断バンド(13)では、2つの連続して位置する連結用円筒形構造体(15)相互間の円周方向Xに測定した平均距離dは、例えば、約7mmである。
【0091】
低い圧縮剛性を有する支持要素(12)又は「ホイールスポーク」は、例えば上述の米国特許第7201194号明細書に説明されているように環状剪断バンド(13)とホイールのハブ(11)との間で力を伝達するよう引張状態で働く(これについては、例えば、図7〜図11を参照されたい)。これらの厚さは、メンブレンの厚さと比較して小さく、好ましくは0.5mm未満、より好ましくは0.3mm未満である。
【0092】
これらの存在により、一様に分布された路面接触圧力、それ故に、ホイールの良好な稼働が好ましく、高い圧力の局在箇所及び不安定な路面上でホイールスポークに同伴する場合のある砂の中に沈み込み又は嵌まり込んで動かなくなる恐れが回避される。
【0093】
これらホイールスポーク(12)は、金属(又は金属合金)、ポリマー又はハイブリッド材料のような様々な材料で構成でき、これら材料は、補強され又は補強されない。例を挙げると、ポリマー、例えばポリウレタン、樹脂を含浸させ又は樹脂を含浸させていない繊維、特にガラス繊維及び/又は炭素繊維を含む複合材料を挙げることができる。用いられる材料の引張弾性率は、当然のことながら、各ホイールスポークにより支持される荷重に適している。ホイールスポークの弾性伸び率(又はホイールスポークを構成する材料の弾性伸び率)を調節することにより、大きい又は小さいキャンバを発生させることができ、ホイールの路面痕跡を調節することが可能である。好ましくは、張力下において数%、代表的には1〜5%の弾性伸び率を示すホイールスポークが用いられる。
【0094】
好ましい一実施形態によれば、非常に低い温度状態におけるホイールの使用のため、複合材料、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含浸させたガラス繊維の織布、ビニルエステル樹脂母材中に埋め込まれた連続一方向ガラス繊維の層又はポリエステル繊維の織布で作られたホイールスポークを用いることが可能である。
【0095】
この図4で理解されるように、好ましい一実施形態によれば、各連結用円筒形構造体(15)の反対側にホイールスポーク(12)が設けられ、各ホイールスポーク(12)は、半径方向Zにおいて円筒形構造体(15)と整列可能であってもよく又はそうでなくてもよい。ホイールスポーク(12)は又、半径方向以外の方向に配置でき、例えば、図5に示されているように例えばハブ11の周りにジグザグに位置決めされても良く、これについては以下に説明する。
【0096】
上述のホイールの複合要素の全てに関し、繊維成分は、例えば、約70%(即ち、樹脂の重量を基準として約30%)である。
【0097】
例えば図4又は図5に示されているホイール(10)の製造に関し、例えば次の連続して行われるステップを採用することにより上述の要素を組み立てる任意適当なプロセスを用いることが可能である。
2枚のメンブレン(14,16)を製造するステップ。
要素筒体(15a,15b)の1対ずつの初期取り付け後、組立て用ジグ上に連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)を位置決めするステップ。
各連結用円筒形構造体の内側に(即ち、最も内側の要素筒体の内側に)及び各繋留ゾーン(17a,17b)内にラグ(平べったい“I”型インサート)を位置決めするステップ、このようなラグは、筒体の母線に沿って差し向けられる。
2枚のメンブレン(14,16)を結合することにより(例えば、エポキシ系接着剤を用いて)要素筒体(15a,15b)及びラグ(インサート)を取り付けるステップ。
ホイールスポーク(12)を位置決めして結合するステップ。
例えば、スポークを正確な長さに合わせて調節し、これらの2つの端部を、一方が内側メンブレン(14)に取り付けられ、他方が金属ハブに取り付けられた複合ラグ(インサート)に結合し、メンブレン(14)側のラグを結合すると共にリベット止めし(又はボルト止めし)、これに対し、ハブ側のラグのみをリベット止めする(又はボルト止めする)ステップ。
剪断バンド(メンブレン、要素筒体及びラグ)の少なくとも2つの箇所を同時に穴あけするステップ。
金属製の(例えば、ステンレス鋼で作られた)リベット(又はボルト)を用いて上述の開けた穴を通って剪断バンド(メンブレン、筒体及びラグを介して)リベット止めする(又はボルト止めする)ステップ。
【0098】
好ましくは、路面接触圧力の良好な有効性が得られるようにするため、本発明のホイールは、0.7≦Di/De<1という関係式、特に、0.8≦Di/De<1という関係式を満足し、Diは、内側円周方向メンブレン(14)の直径であり、Deは、外側円周方向メンブレン(16)の直径である。一例を挙げると、Di及びDeは、約200mm〜2000mmである。
【0099】
上述したように、連結用円筒形構造体(15)を上述の適当な締結手段によりメンブレン(14,16)に直接連結しても良く、或いは、中間組立て部品、特にこれ又組立て箇所を補強する役割を果たす金属、プラスチック又は複合インサートにより間接的に連結しても良い。
【0100】
図5は、ホイール(20)の別の例を示しており、このホイールでは、非常に小さな厚さ(約0.15mm)を有し、この時点では半径方向に(半径方向Zに平行に)差し向けられておらず、斜めに差し向けられているホイールスポーク(12)を一方においてこのようなインサート(110,140)によりホイールハブ(11)に且つ他方において内側円周方向メンブレン(14)にジグザグ形態で組み付ける。
【0101】
ホイールスポーク(12)を剛性ハブ(11)に組み付けるインサート(110)は、好ましくは、“I”の形又は“U”の半分の形をしており、厚さが約1mmに等しい複合材料(繊維/樹脂)、例えばガラス繊維/ビニルエステル樹脂で作られる。これらは、例えば、要素筒体について上述したように、5つの連続した層を平べったい筒体の形状を有する支持体上にフィラメント巻きすることにより製造される。UV重合後、Uの半分の形状を平べったい筒体の切断により得た。ホイールスポーク(12)を内側円周方向メンブレン(14)に組み付けるインサート(140)は、例えば、同一厚さのものであるが小さなサイズのものであり、例えば、“I”又は“U”の半分の形をしており、これら自体、複合材料、例えばガラス繊維/ビニルエステル樹脂で作られ、このようなインサートを他のインサート(110)について上述したように製造した。インサート(110,140)、例えば“U”の半分の形のインサートは、これらの曲げ性により、特に本発明の弾性ホイールが不十分な弾性を有する場合があるとき、本発明の弾性ホイールの作動中、ホイールスポーク(12)の必要な伸びに寄与するので有利な場合がある。
【0102】
最後に、図6は、非空気圧型ホイール(30)の別の例の斜視図であり、このホイールの剪断バンド(13)は、互いに平行な半径方向(即ち、軸方向Yに垂直な)平面内に配置されたいわば数個の要素剪断バンドから成り、これら要素剪断バンドの各々は、本発明の積層品で構成されている。この図6で理解されるように、各要素外側半径方向メンブレン(16a,16b,16c,16d)は、ホイールの全軸方向幅(例えば、200mmに等しい)に対して比較的幅が狭い(方向Yに沿って測定して例えば40mmに等しい軸方向幅)。この図ではかろうじて見える内側円周方向メンブレン(14)は、それ自体、単一の又は数枚の要素内側円周方向メンブレン、例えば、2枚(例えば、各々が80mmに等しい軸方向幅を有する)又は4枚(例えば、各々が40mmに等しい軸方向幅を有する)のメンブレンで構成される。
【0103】
次に、要素剪断バンドをこれらの連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)(軸方向幅が40mmに等しい)が軸方向Yにおいて1つの要素剪断バンドから次の要素剪断バンドまで実質的に整列するように互いに対して円周方向に配置する。このような形態により、ホイールに優れた軸方向可撓性が与えられると共に転動時に障害物を効果的に「吸収する」ための有利な連結解除を提供できる。しかしながら、別の考えられる実施形態によれば、要素剪断バンドは、これらの連結用円筒形構造体(15A,15B,15C等)が1つの要素剪断バンドから次の要素剪断バンドまで軸方向Yに互い違いの列をなして位置決めされるよう配置されても良い。
【0104】
図4〜図6を分かりやすくするために図示されていないトレッドが、外側円周方向メンブレン(16)が非空気圧型ホイールの転動中、路面と直接的に接触するようになっていない場合、外側円周方向メンブレン(16)の頂部上に半径方向に位置決めされた状態で上述のホイールにオプションとして追加されるのが良い。このトレッドは、金属(又は金属合金)、ポリマー又はハイブリッド金属/ポリマー材料のような種々の材料で構成できる。ポリマーの例として、例えば、ポリエステル、例えばPET、PTFE、セルロース、例えばレーヨン、ゴム、例えばジエンゴム又はポリウレタンが挙げられる。非常に低い温度状態での使用のため、金属で作られ又はゴム以外のポリマーで作られたトレッドが好ましい。
【0105】
好ましい一実施形態によれば、トレッドは、特に上述の材料の状態で三次元織布の形態で存在し、その厚さは、例えば、5〜20mmである。別の好ましい実施形態によれば、特に厚さが数mm(例えば、3〜4mm)のトレッドとして用いられる皮革は、驚くべきこととして、非常に低い温度でも特に良好に働くことが判明した。このトレッドは、上述した種々の締結手段により、例えば、結合又はボルト止めにより、或いは、例えば上述したインサートのような組立て手段を用いてホイールの剪断バンドに締結されるのが良い。別の考えられる実施形態によれば、トレッドは、外側円周方向メンブレン(16)にその製造中に直接組み込み可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形可能なセル状構造体を形成する積層品(1)であって少なくとも前記積層品は、
両方とも同一の主方向Xに差し向けられた上側バンド(2)及び下側バンド(3)と、
前記2つのバンド相互間に位置し、前記バンドを繋留ゾーンと呼ばれるゾーン(4)内で連結する連結用円筒形構造体と呼ばれている円筒形構造体(5)から成る方向Xに延びる連続体(5A,5B,5C)とを有し、
前記円筒形構造体は、方向Xに互いに接触関係をなしておらず、
各連結用円筒形構造体(5)は、母線が方向Xに垂直な軸線Yに沿って差し向けられた複数個の要素筒体(5a,5b)から成り、前記要素筒体は、互いに内外に嵌まり合うと共に各繋留ゾーン(4)内で互いに連結されている、
ことを特徴とする積層品。
【請求項2】
前記要素筒体は、同心の筒体である、
請求項1記載の積層品。
【請求項3】
前記要素筒体は、樹脂母材中に埋め込まれた繊維から成る複合筒体である、
請求項1又は2記載の積層品。
【請求項4】
前記繊維は、連続であり且つ一方向であり、前記繊維は、前記軸線Yに垂直な平面内に円周方向に差し向けられている、
請求項3記載の積層品。
【請求項5】
前記要素筒体の前記繊維は、ガラス繊維であり及び/又は炭素繊維である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項6】
前記上側バンド及び前記下側バンドは、樹脂母材中に埋め込まれた繊維から成る、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項7】
前記バンドの前記繊維は、連続繊維である、
請求項6記載の積層品。
【請求項8】
前記バンドの前記連続繊維は、一方向であり且つ前記方向Xに平行に差し向けられている、
請求項7記載の積層品。
【請求項9】
前記バンドの前記繊維は、ガラス繊維及び/及び又は炭素繊維である、
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項10】
前記連結用円筒形構造体は、前記上側バンドと下側バンドを実質的に互いに等距離に保つよう前記方向X及び前記軸線Yに垂直な方向Zにおいて実質的に一定である外径Dを有する、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項11】
前記方向Xに測定した2つの連続して位置する連結用円筒形構造体相互間の平均距離dは、比d/Dが0.10〜0.50であるようなものである、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項12】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂である、
請求項3ないし11のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項13】
前記熱硬化性樹脂は、ビニルエステル樹脂である、
請求項12記載の積層品。
【請求項14】
前記積層品は、連続の且つ閉じられた円周方向リングを形成する、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の積層品。
【請求項15】
最終製品の構造要素としての請求項1ないし14のいずれか1項に記載の積層品の使用。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の積層品を有する最終製品。
【請求項17】
非空気圧ホイール又はタイヤ用の補強要素としての請求項14記載の積層品の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−515261(P2011−515261A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500090(P2011−500090)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001884
【国際公開番号】WO2009/115254
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】