説明

複合積層板とその製法

複合積層板は、少なくとも、熱可塑性樹脂の中に一方向に配置された繊維を各々含む第1の複合材料層と第2の複合材料層とにより作られる。第2の複合材料層は、第1の複合材料層の上に、第2の複合材料層の繊維方向が第1の複合材料層の繊維方向を横切るように配置される。好ましくは、第2の層は第1の層に対し90度の角度となるように配置される。製品は、コア材料と、コア材料の一部に付加された強化用材料とにより作られる。強化用材料は、強化用の複合材料層もしくは上述の複合積層板である。なお、コア材料は複合積層板などのプリプレグであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合積層板材料とその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合積層板の製造において、フェノール樹脂やポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂やその他の反応性の熱硬化性樹脂が、合繊維樹脂材料の層を形成するにあたり母材として用いられている。一般的に、液化した反応性の熱硬化性樹脂に浸される強化用の繊維もしくは織物の層が組み込まれるプリプレグ(後工程において利用される樹脂の含浸前の素材の一般的な呼び方)は、圧力と熱の影響を受けやすい。また、貯蔵される材料は通常、熱硬化性樹脂が硬化し最終形態になる熱養生期間の制約を受ける。さらに、熱硬化性樹脂を製造工程に戻して再利用することはできないため、整形のために不要となった材料は廃棄するほかない。反応性(すなわち硬化性)の液体の取り扱いには、こぼれ、汚染、取扱者による接触といった危険が伴う。熱硬化性樹脂とそれから生じる粉塵は、しばしば作業者を危険にさらすため、反応性の熱硬化性樹脂の廃棄には困難が伴う。フェノール樹脂の母材を防弾パネルなどの複合積層板に用いる場合、パネルを硬化させるために約1時間、1平方インチ当たり2100ポンドの圧力下に置く必要がある。さらに、パネル内に隙間(気泡)が生じないように、パネルからガス抜きを行わなければならない。ガス抜きは揮発性有機化合物(VOC)の放出を伴い、環境破壊の危惧をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱硬化性樹脂を母材とする複合板には前述した問題が伴うのとは対照的に、熱可塑性樹脂を母材として用いる複合積層板は、取り扱いおよび製造が容易で問題が少なく、簡単である。熱可塑性樹脂は製造、成形および加熱の工程において、熱硬化や架橋を伴わないので、不要となった材料は容易にそれらの工程に戻すことができる。熱可塑性樹脂を用いた材料には特殊な貯蔵設備は不要で実質的に貯蔵期限は無く、仕掛かり在庫の含浸繊維シートはそれらの製造日がいつであるかにかかわらず使用可能である。さらに、熱硬化性樹脂の材料と比較し、熱可塑性樹脂の力学的特性は非常に変化に富む。例えば、熱硬化性樹脂は通常、硬く砕けやすいのに対し、熱可塑性樹脂にはより曲げやすく後処理が容易なものもある。この熱可塑性樹脂の多様な特性が、熱可塑性樹脂の母材に組み込まれる強化用の繊維による付加的な強度と組み合わされることで、より多用途の複合材料が提供されることになる。
【0004】
熱可塑性樹脂の母材を用いた複合積層板には、装甲用パネルの製品など、多数の用途がある。
【0005】
車両や人体のための装甲もしくは防弾材料の用途は今般、増加の一途をたどっている。車両に関していえば、装甲は歴史をたどれば金属板の形をとり、その装甲が貫通を食い止めるべき投射物のタイプに応じてその厚さを変更してきた。従って、金属板が厚くなればなる程、装甲の重量が著しく増すことになる。金属板の装甲を薄くすれば、その重量を軽減できると同時に、意図した投射物の貫通を食い止める能力も低下することになる。
【0006】
セラミックスなどの他の工業材料も装甲に用いられている。しかしながら、それらの材料もまた重量が大きく、費用が非常に高い場合もある。さらに、それらの材料の多くは成形が難しく、モールドやダイに費用がかかる。重量の軽量化が非常に重要な航空機においては、装甲用の材料を用いることが不可能な場合がしばしばある。その場合、人員や装置は負傷や損傷の危険にさらされることになる。
【0007】
小口径の拳銃からの防弾を目的に設計されたものから強力なライフル銃からの防弾を目的に設計されたものまで、現在では多様なタイプの装甲が入手可能となっている。防弾材料は、警察官が用いる防弾クリップボードなどの携帯可能な防弾盾の製造に用いられたり、管制室や守衛詰所などの不動の構造物に防弾機能を提供したり、車両の乗員を被弾から防護するために用いられたりする。防護対象の威力に応じて、異なるタイプの防弾材料が単独で、もしくは組み合わされて用いられる。
【0008】
防弾材料(以下、しばしば「防弾パネル」ともいう)は、それらの性能、すなわち弾道衝撃に耐える能力に関し一貫した有意義な評価を与えるために設けられた基準に照らし試験されるのが通常である。そのような基準として、合衆国司法省の国立司法研究所により規定され、「弾道耐久保護材料に関する国立司法研究所基準」(以下、「NIJ基準」という)と名付けられたものがある。本明細書には、参考文献としてNIJ基準を組み込むものとする。銃弾や他の投射物によりもたらされる弾道の威力は、特に、その組成、形状、口径、質量、そして衝突時の速度により変化する。従って、NIJ基準は防弾具を以下のように異なる装甲のグレードに分類している。
【0009】
タイプII−A(低速度357マグナム、9ミリ):タイプII−Aに分類される装甲は、見掛けの質量が10.2グラムで測定速度が秒速381±15メートルのジャケット付きソフトポイントの357マグナム弾による基準試験の射撃に耐えうる。また、タイプII−Aに分類される装甲は、見掛けの質量が8グラムで測定速度が秒速332±12メートルの9ミリのフルメタルジャケットの射撃にも耐えうる。
【0010】
タイプII(高速度357マグナム、9ミリ):この装甲は、見掛けの質量が10.2グラムで測定速度が秒速425±15メートルのジャケット付きソフトポイントの357マグナム弾と同等の投射物に耐えうる。また、タイプIIの防弾材料は、見掛けの質量が8グラムで測定速度が秒速358±12メートルの9ミリのフルメタルジャケット弾にも耐えうる。
【0011】
タイプIII−A(44マグナム、サブマシンガン9ミリ):この装甲は、44マグナムと同様の特性を有する投射物、見掛けの質量が15.55グラムで測定速度が秒速426±15メートルのガスチェック付きの鉛セミワッドカッターをはじめ、ほとんどの拳銃の威力に対する防護を提供する。また、タイプIII−Aの防弾材料は、9ミリのサブマシンガンの射撃にも耐えうる。それらの弾丸は、見掛けの質量が8グラムで測定速度が秒速426±15メートルの9ミリのフルメタルジャケットである。
【0012】
タイプIII(高出力ライフル):この装甲は、7.62ミリ(803ウィンチェスター(米国登録商標))の銃弾およびほとんどの拳銃の威力に対する防護を提供する。
【0013】
タイプIV(徹甲ライフル):この装甲は、見掛けの質量が10.8グラムで測定速度が秒速868±15メートルの30口径の徹甲射撃に耐えうる。
【0014】
この技術分野において他に知られる脅威としては、例えば、重量は数グレインと軽量で測定速度が毎秒5000フィートにも達する榴散弾を発生させる即席爆発装置(IED)がある。
【0015】
上述した基準に加え、対象の防弾材料の貫通を許容する投射物のパーセンテージに関する基準も防弾材料の評価に用いられる。そのような基準の試験として、例えば、装甲用V50弾道試験MIL−STD−622に規定されるV50試験がある。この試験によれば、図1(A)および(B)に示されるような、装甲板の背後に置かれた検証板の最終状態により、弾道試験の試験結果が決定される。図1(A)および(B)は弾道試験の結果として起こりうる2種類の状況を示している。図1(A)は検証板12に穴あきが生じておらず、試験板10の不完全な貫通の状態を示しており、図1(B)は投射物もしくは試験板10の破片による検証板12の破損により光が差し込むことが視認でき、試験板10の完全な貫通の状態を示している。不完全な貫通と完全な貫通の混在を生じるような速度範囲に対応する領域は、混在結果ゾーン(ZMR)と呼ばれる。
【0016】
例えば、V50は、それぞれ特定の速度範囲に散らばりを持つ不完全な貫通を生じる最大速度と完全な貫通を生じる最小速度を同数とり、それらを平均したものとして定義される。完全な貫通の検証のために、0.020インチ(0.51ミリ)厚の2024−T3アルミ板が試験の対象物の6±1/2インチ(152±12.7ミリ)背後に平行に配置される。通常、V50の算出のために、少なくとも2つの不完全な貫通と2つの完全な貫通の速度が用いられる。4射撃、6射撃、10射撃による弾道限界がしばしば用いられる。許容される最大速度範囲は装甲の材料と試験の条件に応じて決定される。最大速度範囲として毎秒60フィート、毎秒90フィート、毎秒100フィート、毎秒125フィート(毎秒18メートル、毎秒27メートル、毎秒30メートル、毎秒38メートル)がしばしば用いられる。
【0017】
50試験の比較基準として一般に用いられる防弾材料として、この分野においてHJ1として知られているものがあり、それはフェノールタイプの熱硬化性樹脂の母材に編んだSグラスファイバーを含ませたものである。
【0018】
また、人体用の装甲に用いられる防弾材料として、ポリエチレン(そのままではケブラーアラミド繊維を完全に封入できない)とケブラーアラミド繊維を接着した材料が知られている。
【0019】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年9月6日に出願された米国仮出願第60/842,874号の利益を受けるものであり、本願にはその出願が参考文献として組み入れられる。さらに、本願は、2005年12月15日に出願された米国仮出願第60/750,761号の利益を受けて2006年12月15日に出願された米国出願第11/640,166号の一部継続出願であり、本願にはそれら2つの出願もまた、参考文献として組み入れられる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様は、複合積層板を製造する方法に関する。その方法によれば、各々、熱可塑性樹脂の中に一方向に配置された繊維を含む少なくとも第1の複合材料層と第2の複合材料層が準備される。続いて、第2の複合材料層が第1の複合材料層の上に、第2の複合材料層の繊維方向が第1の複合材料層の繊維方向を横切るように配置された状態で、それらの複合材料層が互いに接着される。
【0021】
本発明の他の一態様は製品を生成する方法に関する。その方法によれば、コア材料とそのコア材料の一部に付けられる強化用材料が準備される。その強化用材料は、熱可塑性樹脂の母材の中に一方向に配置された繊維を含んだ強化用の複合材料層を組成として含んでいる。その方法において、強化用材料とコア材料に加熱および加圧が行われ、強化用材料がコア材料に合着される。一実施例において、コア材料はプリプレグを組成として含む。
【0022】
さらに他の一態様において、本発明は複合積層板を提供する。その複合積層板は、少なくとも第1の複合材料層と第2の複合材料層を含む複数の複合材料層を備え、それらの複合材料層の各々は熱可塑性樹脂の母材の中に一方向に配置された複数の繊維を含んでいる。複数の複合材料層は、第1の複合材料層の繊維の方向が第2の複合材料層の繊維の方向を横断する状態で互いに接着されている。一実施例において、第1の複合材料層に含まれる繊維は第2の複合材料層に含まれる繊維と異なる種類のものである。好ましくは、第1の複合材料層に含まれる繊維は第2の複合材料層に含まれる繊維と約90度の角度となるように配置される。
【0023】
本発明のさらに他の一態様は、上述した方法により生成される製品を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一態様は少なくとも2枚の複合材料層を含む複合積層板に関する。各複合材料層は一方向に配置された(すなわち、互いに整列された)複数の繊維を含んでおり、好ましくはその繊維が複合材料層内を途切れることなく貫いている。複数の繊維は熱可塑性樹脂の母材に含浸されて空隙が極めて少ない複合材料層を形成する。その場合、複合材料層は熱硬化性樹脂の母材を実質的に含まなくてよい。また、繊維は熱可塑性樹脂の母材に封入されてもよい。以下において、複合材料層はしばしば単に層またはシートと呼ばれ、繊維の一方向性(「単向性」と呼ぶ)を有する場合がある。複合材料層20のサンプルを図2に示す。複合材料層20は単向性シートもしくは単向性層であり、途切れのない一方向に配置された繊維を内包しているため、縞を生じている。このような複合材料層は連続工程で製造することができ、図3に示されるロール22のようにロールで貯蔵することができる。本願にかかる複合積層板は少なくとも2枚の複合材料層を備え、それらの繊維が互いに横断する位置関係で互いに接着されている。
【0025】
様々なタイプの繊維を複合材料層に用いることができる。例えば繊維の例としてはEグラスファイバーやSグラスファイバーがある。Eグラスは優れた電気的および力学的特性と優れた耐化学性を有する低アルカリ性ホウケイ酸ガラスである。このタイプのガラスは強化プラスチック用の繊維として最も広く用いられている。また、高い電気抵抗率を備えるため、Eグラスは電気的使用のための複合積層板としても適している。記号「E」は電気的を意味している。
【0026】
SグラスはEグラスと比較して、より高い強度を備え、よりコスト高である。Sグラスは高い引っ張り強度を有し、航空宇宙産業における用途にも用いられるマグネシウムアルミナシリケートガラスである。そもそも「S]は高い強度を意味している。EグラスおよびSグラスのいずれも、本発明にかかる繊維に適している。
【0027】
Eグラスファイバーは、様々な重量比率で様々な熱可塑性樹脂のポリマーを母材とする複合材料に組み入れることができる。Eグラスは、例えば平方ヤード当たり約10から約40オンスの範囲内で強化のために付加され、好ましくは平方ヤード当たり19から30オンスの範囲内、さらに好ましくは平方ヤード当たり21.4から28.4オンスの範囲内で強化のために付加されることが望ましい。
【0028】
SグラスもしくはEグラスの複合材料層における分量は、複合材料層に含まれる熱可塑性樹脂母材および繊維の合計重量に対し、約40から約90パーセントの重量比率の範囲内で調整可能であり、好ましくは約50から約85パーセントの重量比率、さらに好ましくは約60から約80パーセントの重量比率の範囲内で調整されることが望ましい。
【0029】
他の種類の繊維もまた、本願にかかる複合材料層に組み込まれてもよく、好ましくはEグラスおよび/またはSグラスと組み合わせて用いられることが望ましいが、Eグラスおよび/またはSグラスの代わりに用いられてもよい。そのような繊維の例として、ECRやAグラス、Cグラス等のグラスファイバーや、例えば石英、マグネシウムアルミノシリケート、非アルカリアルミノボロシリケート、ソーダボロシリケート、ソーダシリケート、ソーダ石灰アルミノシリケート、鉛シリケート、非アルカリ鉛ボロアルミナ、非アルカリバリウムボロアルミナ、非アルカリ亜鉛ボロアルミナ、非アルカリイオンアルミノシリケート、カドミウムホウ酸塩、アルミナファイバー、アスベスト、ボロン、シリコンカーバイド、例えばポリエチレンの炭化により生成されるグラファイトおよびカーボン、ポリビニルアルコール、サラン、アラミド、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレン、PPR、石油もしくは石炭のピッチ(等方性ピッチ)、中間相ピッチ、セルロールおよびポリアクリロニトリル、セラミックファイバー、スチールやアルミ合金等のメタルファイバーなどを組成とする繊維がある。
【0030】
好ましい有機ポリマーファイバーとして、ケブラー繊維に例示されるアラミドにより生成されるものがある。他の好ましい高い性能を示す単方性のファイバー束としては、一般的に引っ張り強度がデニール当たり7グラム以上のものが望ましい。そのような高性能のファイバー束の材料として好ましいものとして、アラミド、長鎖状・超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリ[pフェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール](PBO)、ポリ[ジイミダゾピリジニレン(ジヒドロキシ)フェニレン](M5)のいずれか、もしくはそれらの組み合わせが考えられる。これらの非常に高い引っ張り強度を有する材料は、複合材料の防弾装甲パネルや非常に高い防弾特性を要する類似の用途に用いられる場合に特に効果を発揮する。
【0031】
上記の繊維を、本発明にかかる技術分野において当業者に知られているさらに他の種類の繊維によって代用することは、本発明の範囲から逸脱するものではない。例えば、トワロンやテクノーラの商標名で流通している材料などのアラミドファイバーや、東レ、フォータフィルおよびゾルテックの商標名で流通している玄武岩繊維および炭素繊維、そして、例えばベクトランの商標名で流通している液晶ポリマー(LCP)などのLCPによって代用してもよい。上記に加え、本発明において、有機ファイバー、無機ファイバー、メタルファイバーのいずれが単独もしくはそれらの組み合わせで用いられてもよい。
【0032】
本発明にかかる複合材料層は、一態様として、刻んだ素材をランダムに混合もしくは織り上げて生成した途切れのない繊維を含んでもよい。ある実施形態において、本願にかかる複合材料層は実質的に多方向に延びる繊維を含まず、一方向に延びる繊維のみを含む。
【0033】
複数の複合材料層の各々に含まれる繊維が一方向に延びる場合、複合積層板を構成する一の複合材料層を、その複合材料層に含まれる繊維の方向が他の複合材料層に含まれる繊維の方向と特定の位置関係を有する状態に配置することができる。
【0034】
熱可塑性樹脂の母材の例は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、PEI(ポリエーテルイミド)、コポリマーなどの高分子量熱可塑性樹脂ポリマーのようなポリマーであり、好ましくはポリプロピレンやポリエチレンである。加重による熱可塑性樹脂の含浸の方法は、完成部品に要求される物理特性と、採用する成形の方法に応じて実に多様である。この技術分野で、繊維を熱可塑性樹脂の母材に組み込むか、もしくは封入して層を生成する方法は様々なものが知られており、例えば、ドクターブレード法、ラミネート加工、引き抜き成形などがある。
【0035】
複合材料層は、熱可塑性樹脂と繊維の合計重量に対し、約60から10パーセントの重量比重の熱可塑性樹脂の母材を含み、好ましくは約50から約15パーセントの重量比重の熱可塑性樹脂の母材を、さらに好ましくは約40から約20パーセントの重量比重の熱可塑性樹脂の母材を含むことが望ましい。
【0036】
好ましい実施形態において、本願にかかる複合積層板は、少なくとも第1の層と第2の層を備え、それらの層は各々の繊維が互いに横断する関係となる状態で接着され、第1の層は第1の層が含む繊維とは異なる種類の繊維を含む。その場合、複合積層板は少なくとも異なる2種類の繊維を含むことになる。別の言い方をすれば、少なくとも第1の層に含まれる繊維は、隣接する第2の層に含まれる異なる種類の繊維を横断する位置関係、例えば隣接する第2の層に含まれる異なる種類の繊維と90度をなす位置関係、に配置される。記載の簡便化のため、そのような位置関係に配置された第1の複合材料層と第2の複合材料層を、以下の記載においてしばしば、各々の層に含まれる繊維に注目し特段の説明を加えることなく、互いに横断関係(例えば互いに90度の関係)にある、というように表現するものとする。
【0037】
本願において、「異なる繊維」という表現は、複合積層板が少なくとも2枚の複合材料層を備え、それらの複合材料層に含まれる繊維が異なる2種類の材料でできているか、もしくは異なる品質の同種の材料でできているかのいずれかであることを意味する。例えば、複合積層板の防弾パネルの被弾面はケブラー129の繊維を用いて生成され、一方、防弾パネルの裏面もしくは背面は、ケブラー129と比較し、弾道性能に関しより高い性能を示すケブラー129Mを用いて生成されてもよい。
【0038】
また一態様として、複合積層板は隣接する複合材料層と平行の関係で配置される複合材料層を備えてもよく、さらにそれらの複合材料層が含む繊維が同種でもよい。熱可塑性樹脂ポリマーもしくは熱硬化性樹脂ポリマーが各々の層の母材になり得る。さらに、母材は層ごとに変化してもよく、その場合、異なる種類の熱可塑性樹脂ポリマー、異なる種類の熱硬化性樹脂ポリマー、もしくは熱可塑性樹脂ポリマーと熱硬化性樹脂ポリマーの組み合わせのいずれであってもよい。この場合、複合積層板のうち、第1のタイプの繊維を組み込んだ部分は、各々の複合材料層を互いに平行の関係で順次積層することにより生成される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、複合積層板はEグラスファイバーとSグラスファイバーを各々含む複数の複合材料層を備え、互いに約90度の関係となるようにそれらの層が配置される。
【0040】
複合積層板を生成するために複合材料層を接着する方法としては様々な方法が採用可能であり、例えば、複合材料層を順次積層した後に加熱および加圧の一方もしくは両方を行う方法や、液体接着剤、熱溶解性接着剤、反応・熱溶解性接着剤、フィルム接着剤、エポキシ接着剤、メチルアクリレート接着剤、ウレタン接着剤といった接着剤を用いる方法がある。また、音波振動溶着や溶剤接着が用いられてもよい。
【0041】
複合積層板を構成する複合材料層の好ましい配置は、少なくとも第1の層に対し第2の層が90度をなすような配置である。必要とされる特性を得るために、第2の層の角度が90度未満となるように異なる配置が選択されてもよい。そのような実施例において、第1のシートを基準方向(すなわち、ゼロ度)とした場合、第2のシートが第1のシートに対し第1の角度(例えば、約45度などの正の鋭角)で配置され、第3のシートが第1のシートに対し第2の角度(例えば、第1のシートに対する第2のシートの角度と同じ方向の優角である約315度、もしくはそれと同義の約−45度などの負の鋭角)で配置されてもよい。この場合、第2および第3のシートは互いに垂直をなしてもよいし、なさなくてもよい。熱可塑性樹脂の母材を用いる場合、製品の最終的な成形に際して隣接する層の間の繊維の相対位置を容易に変更することができる。
【0042】
本発明の他の態様は、複数層の積層に利用可能なように、図3に示すように巻き上げられた単方性繊維入り熱可塑性樹脂母材のプリプレグシートのロールの使用に関する。相互に繊維が横断する方向に交互に層を配置する方法は、(a)熱可塑性樹脂母材内に第1の方向に組み込まれている単方性の途切れのない強化用繊維を有する第1のシートの位置決めを行うステップ、(b)第1のシートと同じ範囲を覆うように、第1のシートの繊維と実質的に垂直の方向を向く単方性の途切れのない強化用繊維を有する第2のシートの位置決めを行うステップ(第1シート20の上に置かれた第2シート24を示す図4を参照)、(c)繊維が異なる方向となるようにシートの積層を繰り返し、複数層の複合材料によるプリプレグ(含浸前の工業製品の一般的な頭字語)を生成するステップ、を含む。
【0043】
本願にかかる複合材料層もしくは複合積層板は、連続積層、引き抜き成形、圧縮成形、熱成形、自動テープ積層、ブラッダー成形などの熱可塑性樹脂複合材料の製造技術における後工程においてプリプレグとして使用することができる。
【0044】
図5は、熱可塑性樹脂の母材にケブラー繊維を含んだ複合材料層を積層させた2枚のプリプレグ26および28を示しており、それらは完成品を生成するために利用される。図6はプリプレグ26および28よりも多くの複合材料層を積層させたプリプレグ30を示し、固められて製品に使用され得るパッケージとなっている。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、プリプレグを積層し、積層されたプリプレグから完成品を生成する方法に関し、その一例は、(a)途切れのない繊維を一方向に組み込んだ熱可塑性樹脂のシートもしくはテープを、隣接する層の間において繊維が交互に0度および90度の角度をなすように複数、積み上げて必要とする厚さを有するプリプレグのパッケージを作るステップ、(b)層の方向を安定させ取り扱いを容易にするために熱かしめを行うステップ、(c)プリプレグのパッケージの内部がプリプレグの形成(すなわち合着)に要する温度に達するまでプレス機を熱しプリプレグの形成を行うステップ、(d)プリプレグを加圧下で成形可能な温度、すなわちプリプレグが成形工程で圧力および熱の作用を受ける状態になる温度(例えば、ポリプロピレンであれば華氏約125度、他の熱可塑性樹脂母材を用いる場合はそれらに応じて選択される他の温度)に熱し、場合によってはステップ(c)の合着のための温度から冷却するステップ、(e)成形のための圧力をかけてプリプレグの母材を変形させるステップ、(f)パッケージの内部が成形のための温度、例えば華氏約340度となるまで加熱するステップ、(g)製品の成形を行うために十分な圧力、例えば平方インチ当たり100ポンドの圧力をかけるステップ、(h)成形型の中の製品を、例えば華氏125度まで冷却するステップ、(i)製品を離型する(すなわち、製品を成形型から取り出す)ステップ、を備える一連の処理である。
【0046】
ポリエチレン母材を成形する場合、典型的な条件は次のようになる。(a)成形のためのパッケージの内温度は華氏250度、(b)成形のための圧力は平方インチ当たり100ポンド、(c)冷却の温度は華氏125度。
【0047】
さらに、本発明の他の態様は成形型内における製品の補強に関し、当該態様によれば、成形される製品の製造工程の最終成形工程の直前においてプリプレグの特定部分に強化用の層が付加される。
【0048】
また、本発明の他の態様は、(a)一方向を向いた実質的に平行な途切れのない強化用の繊維を多数、熱可塑性樹脂の母材に組み込み、実質的に所望される幅および長さとなるように単方性の強化用の繊維を含む平板なシートを生成するステップ、により、複合材料層を含む単方性のプリプレグを製造する方法に関する。通常、当該態様にかかるプリプレグは少なくとも一部が加圧および加熱により互いに接着および/または密着された複数の複合材料層を備えている。
【0049】
そのような態様にかかるプリプレグは、最終的には完成工業品を製造するための様々な後工程において利用され得る。
【0050】
さらに、本発明の他の態様は、熱可塑性樹脂の部品を製造する方法に関し、当該方法は、適したタイプおよびデニールの繊維を用いた単方性の複合材料層を複数、交互に方向が横断するように積み重ねてプリプレグとして使用され得る複合積層板を生成するステップと、そのプリプレグの選択した部分を1以上の追加的な強化用の層で補強し、特定の用途の構造的要請に合致する強化プリプレグを生成するステップを備える。強化用の層は単方性のプリプレグのうち選択された部分のみをカバーするように接着されるもので、プリプレグの部分的補強を行うのに便利な様々な形態、例えばシートやテープその他の形態、で提供される。そのように補強されたプリプレグは、成形可能な状態となり隣接する複合材料層が互いに十分に合着するまで加熱および加圧される。代替的な実施形態においては、複数のプリプレグの層が互いに合着した後に強化層がプリプレグの上に配置される。合着のステップにおいて同時に、もしくは合着のステップとは別個のステップにおいて、合着した積層は(必要に応じて)加熱され、加圧および適する型成形技術により成形され、完成部品として凝固した後その部品に求められる最終的な構造を保持するように冷却される。プリプレグもしくは補強されたプリプレグに加熱および加圧を工程には、例えば、連続積層、引き抜き成形、圧縮成形、熱成形、自動テープ積層、ブラッダー成形などの熱可塑性樹脂複合材料の製造技術が利用可能である。
【0051】
局部的な補強の付加は、特に真空成形のような製法において行われるとうまくいく。補強材は、現在、型職人が型内に色や画像を付加する方法とほぼ同様の方法にて付加される。本発明の上記態様は、圧縮成形、トランスファー成形、ブロー成形などの他の製法においても有意義である。この型内におけるプリプレグの付加は、単方性の一枚の層から構成される強化層により行われてもよいが、要求される局部的な補強および全体の強度を達成するために、本明細書にて記載の複合積層板から構成される強化層により行われてもよい。
【0052】
強化層の採用により、製造者は重量をさほど増やすことなく製品に耐衝撃性と剛性を付加する新しい手段を得ることとなり、そのことは多くの用途において重要な利点をもたらす。軽量な部品の製造を可能とするこの独自の手法は特に航空機、自動車、建築物、インフラといった用途において有意義である。また、成形サイクルの時間を短縮し廃棄物を減量できる点もまた、これらの用途の全てにおいて有意義である。
【0053】
製造工程において、接着剤を要しないプリプレグなどのコア材料を用いる場合、強化用材料により重量をさほど増やすことなくコア材料に強度、剛性、耐衝撃性の付加を行うことができる。そのようなコア材料は、ポリプロピレンハニカム、ポリプロピレンフォーム、ポリプロピレンウッドなどの伝統的なコア材料であってもよいし、より先端的なコア材料であってもよい。実用的と思われる用途としては、貨物コンテナ、レクリエーショナル・ビークルの耐荷重性床面および側板、貨車やトラックの壁面などがある。
【0054】
本発明の利点の一つは、母材として熱可塑性樹脂のみを含む複合材料層もしくは複合積層板を用いる場合、その製造において発生するスクラップは100パーセントの再利用可能であり、完成品そのものもまた100パーセントのリサイクルが可能であり、持続可能な環境に優しい、環境的に責任を持てる材料管理のプログラムにも資する点である。
【0055】
本発明においては、エネルギーを消散させる熱可塑性樹脂ポリマーの母材に構造上の特徴を備えた繊維を組み合わせる、という独特の材料およびその製造技術が用いられる。その結果、防弾パネルにおいて現在用いられている伝統的な砕けやすい熱硬化性樹脂ポリマーの複合材料と比較し、多くの利点を持つ強化された熱可塑性樹脂の複合材料がもたらされる。
【0056】
本発明の実施形態のあるものは、以下のうち1以上の利点をもたらす。(1)単方性の繊維のシートもしくはテープを複数枚、積層する際に、各用途の構造上の必要を満たすように、適する種類の繊維、強化材の分量、および繊維の方向を選択することができる。(2)材料の積層を終えた後、形成可能となり層が互いに合着するまで積層材料への加熱を行い、その後、成形および冷却により、完成品の構造を安定化することができる。(3)製造工程で生じるスクラップを100パーセント、再利用することができる。(4)完成品それ自体もまた、100パーセント、リサイクルすることができ、持続可能な環境に優しい、環境的に責任を持てる材料管理のプログラムに資することができる。(5)製品は、テープ、繊維くず、もしくは棒の形態をした、十分に含浸され空隙が極めて少ない、途切れのない繊維により強化された熱可塑性樹脂として提供され、ほとんどの用途に利用可能である。これらの利点は、エネルギーを消散させる熱可塑性樹脂ポリマーの母材に、構造上の特徴を備えた途切れのない繊維を組み合わせる、という新規な材料およびその製造技術によりもたらされるものである。
【0057】
本発明は、伝統的な砕けやすい熱硬化性樹脂ポリマーの複合材料と比較し、防弾パネルのような用途において、上述した多くの利点を有する強化された熱可塑性樹脂の複合材料を提供する。複合積層パネルは、熱可塑性樹脂の母材に組み込まれ、交互に垂直となる関係で積層された強化層により作られる新規な強化材を用いて、バルサ、ファイバーボード、ルアン、配向性ストランドボード、パーチクル・ボード等の様々な種類の木材により製造することもできる。
【0058】
上記の実施形態におけるプリプレグの処理においては、例えば、方向を互い違いにした材料による平面状に広がる途切れのない網の目や幅の狭いテープを生成するようにすればよい。
【0059】
ある実施形態においては、複合積層板は、例えば小口径の拳銃からの防弾を目的とするものから高出力のライフルからの防弾を目的とするものまで、防弾性能の範囲において様々な異なるタイプの装甲を製造するための防弾材料として用いられる。防弾材料は、例えば、警察官が用いる防弾クリップボードなどの携帯可能な防弾盾の製造に用いられたり、管制室や守衛詰所などの不動の構造物に防弾機能を提供したり、車両の乗員を被弾から防護するために用いられたりする。防護したい脅威に応じて、異なるタイプの防弾材料が単独で、もしくは組み合わされて用いられる。
【0060】
本発明にかかる防弾パネルは、当初、母材に高い性能を示すが高価なファイバーを組み込んだ熱硬化性樹脂の複合材料によりできている防弾パネルのコストを下げることを意図して発案された。熱可塑性樹脂の母材と1枚以上の低い性能だが安価なファイバーを用いることにより、防弾パネルの製造コストおよび原材料コストが大幅に抑えられた。当初は性能の低下が危惧されていたが、特定の条件下においては、この新しい材料の性能は実用に耐えるものである。本明細書に記載の材料および方法を用いることにより、特別な実験を繰り返すことを要することなく、上述したNIJ基準を満たす防弾材料および防弾パネルを生成することができる。
【0061】
ある実施形態において、本明細書に記載の複合積層板は、熱可塑性樹脂の母材に途切れのないEグラスおよびSグラスを封入した複合材料層を用いることで、防弾パネルとして用いることができる。そのようなパネルのEグラスおよびSグラスを含む部分は、互いに隣接する層の位置関係が垂直となるように配置されたファイバーシートを構成している。そのような材料でできているパネルは、防弾パネルに要する厚みで被弾面を構成しEグラスを含む複合材料部分と、パネルの残りを構成しSグラスを含む複合材料部分とを備える。そして、各々のパネルに要求される性能条件に応じて、パネルの全体の厚さと、Eグラス部分とSグラス部分の相対的な厚さを変化させることができる。
【0062】
一般的に、熱可塑性樹脂の母材はEグラスおよびSグラスを十分に封入し含浸する。しかしながら、EグラスおよびSグラスの繊維の記載は例示であって、本発明はそれらに限定されるものではない。それらの繊維を本発明にかかる技術分野の当業者に知られた他のタイプの繊維で代替することは、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0063】
また、本発明にかかる防弾パネルの基本的な構成を2層として説明してきたが、それに限られず3層以上の複数層でもよく、それらの構成は目的とする用途に応じて変化させてよい。さらに、必ずしも全ての層が複合材料でなくともよい。例えば防弾材料は3層で構成され、それらの1層が単純なポリマー層、例えばEグラス複合材料の被弾面、Sグラス複合材料の中間層、UHMWPEの裏面層のようにしてもよい。用途に応じて、材料の層の数とそれらの組成を変更させてもよい。
【0064】
防弾材料の一部を構成する複合材料およびポリマーの層に加え、他のタイプの材料を使用するようにしてもよい。例えば、金属やセラミックは防弾パネルの被弾面を構成するのに使用可能である。これらの材料は防弾パネルの中間層や裏面部分にも使用可能である。
【0065】
防弾パネルの組成に応じて、異なる層を接着し合わせる方法も異なり得る。それらの方法には、例えば、液体接着剤、熱溶解性接着剤、反応・熱溶解性接着剤、フィルム接着剤、エポキシ接着剤、メチルアクリレート接着剤、ウレタン接着剤といった接着剤を用いる方法がある。また、音波振動溶着や溶剤接着が用いられてもよい。
【0066】
本発明にかかる防弾パネルを製造した後、別の複合材料やエラストマー、金属ハウジングなどに封入し、紫外線や湿気などの外界の影響から保護するようにしてもよい。また、耐火性、耐煙性、耐毒性の向上、美容効果の付加などを目的とする添加物を母材に添加してもよい。さらに、金属ワイヤーやワイヤー網を各々の層の中もしくは層の間に組み込むようにしてもよい。
【0067】
上述したように、本発明により、熱可塑性樹脂母材に低価格だが低性能のEグラスファイバーを含む層と、熱可塑性樹脂母材に高価格だが高性能のSグラスファイバーを含む層とを備える防弾パネルが製造される。
【0068】
本発明は、一実施形態として、分離混合型の複合材料防弾パネルを提供する。混合型の複合材料防弾パネルは、1以上の母材の中に異なる2種類以上の繊維が配置され、例えば封入された構成をしている。以下、1種類の繊維のみを含むパネルやその他の材料を「非混合」と呼ぶ。分離混合型の複合材料防弾パネル(以下、単に、「分離混合パネル」と呼ぶ)においては、被弾面もしくは被弾面に隣接する部分もしくは層(以下、単に、パネルの「被弾面部分」のように呼ぶ)においては、低性能な繊維が集中的に用いられる。分離混合パネルのうち被弾面部分以外の部分は、被弾面部分に隣接する部分およびパネルの背面を構成する部分(以下、「支持部分」と呼ぶ)であり、支持部分においては、高性能な繊維が集中的に用いられる。分離混合パネルの支持部分は、パネルの背面を構成する「背面層」と、背面層と被弾面部分との間に挟まれる中間層とを備える。従って、この実施形態において、パネルの背面層と中間層の少なくとも一方は高性能繊維を含むことになる。なお、パネルが3種類以上の繊維を含むようにしてもよい。その場合、必須ではないが、性能を向上させるために、好ましくは被弾面から背面に至る全ての層の各々において繊維が用いられることが望ましい。
【0069】
上記のような防弾パネルの一例として、基本的に被弾面部分に低性能な繊維としてEグラスファイバーを使用し、支持部分に高性能な繊維としてSグラスファイバーを使用するパネルが考えられる。各々のパネルに要求される性能条件に応じて、パネルの全体の厚さと、Eグラス部分とSグラス部分の相対的な厚さは変化してよい。好ましい例において、Sグラス層とEグラス層はパネル全体に対する重量比においてほぼ等しい。ある実施例において、Eグラスファイバーは、ASTM D578−98の段落4.2.2に従い、1ポンド当たり約250から675ヤードのロービングイールド、もしくは1キロメートル当たり約735から1985グラムのロービングテックスである。また、Sグラスファイバーは、ASTM C162−90および/もしくはASM 3832Bに従い、直径約9ミクロメートルのフィラメントを形成し、1キロメートル当たり約675から1600グラムのロービングテックス、もしくは1ポンド当たり約310から735ヤードのロービングイールドである。
【0070】
実質的に熱硬化性樹脂母材を用いず、熱可塑性樹脂母材を含む層を用いたパネルの製造は、熱硬化性樹脂母材に要する養生の場合と比較し、低圧かつ短時間で行うことができる。また、熱可塑性樹脂母材を含む層を用いたパネルはガス抜きを要さず、VOCの排出を伴わないか、伴ってもごく少量である。なお、ここで記載した複合材料パネルに対し、金属、セラミックなどの他の材料を付加してもよい。
【0071】
本願において、「第1」、「第2」のような表現は、特定の順序、数量、重要性などを示すものではなく、単にある要素を他の要素から区別するために用いられている。また、「ある〜」、「一〜」のような表現は、数量を限定するものではなく、単に参照する対象物が1以上存在することを示すものである。「約」という言葉を伴う数値を示す語句は、その語句の中で示される正確な数値を含むがそれに限定されないことを意味する。
【0072】
本明細書においては、特定の実施形態を参照しつつ本発明の説明を行ったが、本発明が属する技術分野の通常の一当業者が上述した開示を読み理解するにあたり、開示されている実施形態に対し様々な変形や変更を加えたものもまた、本発明およびその本明細書に添付の請求項が示す思想の範囲内に含まれるものと理解されるべきである。
【0073】
本発明は、本明細書において開示および/もしくは添付の図により示した特定の構造に限定されることは決してなく、開示の範囲内における変形物や均等物を全て含む。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1(A)は、装甲板の不完全な貫通と、損傷を受けていない検証板の略図である。図1(B)は、装甲板の完全な貫通と、損傷を受けた検証板の略図である。
【図2】図2は、本願にかかる複合材料層の外観を示す画像である。
【図3】図3は、複合材料層のロールを複数示す画像である。
【図4】図4は、2枚の複合材料層の各々の繊維が互いに直交するように、一方の複合材料層の上に他方の複合材料層が配置された状態を示す画像である。
【図5】図5は、本願にかかるプリプレグ2枚を示す画像である。
【図6】図6は、本願にかかる他のプリプレグを示す画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂の母材および当該母材の中に含まれる一方向に並んだ複数の繊維を各々有する第1の複合材料層および第2の複合材料層を準備するステップと、
前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向が前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向を横断するように前記第2の複合材料層を前記第1の複合材料層の上に配置するステップと、
前記第1の複合材料層と前記第2の複合材料層とを互いに接着し複合積層板を生成するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記第2の複合材料層を前記第1の複合材料層の上に配置するステップにおいて、前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向が前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向に対し第1の鋭角をなすように前記第2の複合材料層を前記第1の複合材料層の上に配置し、
熱可塑性樹脂の母材および当該母材の中に含まれる一方向に並んだ複数の繊維を有する第3の複合材料層を準備するステップと、
前記第3の複合材料層に含まれる繊維の方向が前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向に対し前記第1の鋭角とは異なる第2の鋭角をなすように前記第3の複合材料層を前記第1の複合材料層の上に配置するステップと
を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の鋭角は45度であり、前記第2の鋭角は−45度である
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コア材料を準備するステップと、
熱可塑性樹脂の母材および当該母材の中に含まれる一方向に並んだ複数の繊維を有する複合材料層を含む強化用材料を前記コア材料の一部に付けるステップと、
前記強化用材料および前記コア材料に熱および圧力を加えて前記強化用材料を前記コア材料に接着し製品を生成するステップと
を備える方法。
【請求項5】
前記コア材料はプリプレグを組成に含む
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プリプレグは、熱可塑性樹脂の母材および当該母材の中に含まれる一方向に並んだ複数の繊維を各々有する第1の複合材料層および第2の複合材料層を備え、前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向が前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向を横断するように前記第2の複合材料層が前記第1の複合材料層の上に配置された状態で、前記第2の複合材料層が前記第1の複合材料層に接着されている
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記プリプレグが備える前記第1の複合材料層は、前記プリプレグが備える前記第2の複合材料層に含まれる繊維とは異なる種類の繊維を含む
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プリプレグの温度を、前記プリプレグが型成形の工程における加圧および加熱を受けられる状態となる温度とするステップと、
前記プリプレグに加圧し前記プリプレグに含まれる母材を変形するステップと、
前記コア材料および前記強化用材料を型成形するための型に加熱し前記プリプレグの内部の温度を型成形に要する所定の温度とするステップと、
前記型にセットされた前記コア材料および前記強化用材料に加圧し前記コア材料および前記強化用材料の成形を行うステップと、
前記型にセットされた前記コア材料および前記強化用材料を冷却するステップと、
冷却された前記コア材料および前記強化用材料を前記製品として前記型から取り出すステップと
を備える請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記プリプレグに含まれる熱可塑性樹脂の母材はポリプロピレンを組成として含み、
前記プリプレグが型成形の工程における加圧および加熱を受けられる状態となる温度は華氏125度であり、
前記型成形に要する所定の温度は華氏340度であり、
前記コア材料および前記強化用材料の成形を行うステップにおいて加えられる圧力は1平方インチ当たり100ポンドであり、
前記コア材料および前記強化用材料を冷却するステップにおける冷却時の温度は華氏125度である
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プリプレグに含まれる熱可塑性樹脂の母材はポリエチレンを組成として含み、
前記プリプレグが型成形の工程における加圧および加熱を受けられる状態となる温度は華氏125度であり、
前記型成形に要する所定の温度は華氏250度であり、
前記コア材料および前記強化用材料の成形を行うステップにおいて加えられる圧力は1平方インチ当たり100ポンドであり、
前記コア材料および前記強化用材料を冷却するステップにおける冷却時の温度は華氏125度である
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
型の中に複数の層を積み上げ積層を形成するステップと、
前記積層に熱かしめを行い前記積層に含まれる層の方向を安定させるステップと、
前記積層の内部の温度が、前記積層に含まれる複数の層が互いに合着し前記プリプレグを形成するために要する温度となるまで、前記積層に加圧および加熱を行うステップと、
前記加圧および加熱により前記積層から形成された前記プリプレグの温度が、型成形の工程における加圧および加熱を受けられる状態となる温度となるまで冷却するステップと
を備える請求項5に記載の方法。
【請求項12】
熱可塑性樹脂の母材および当該母材の中に含まれる一方向に並んだ複数の繊維を各々有する第1の複合材料層および第2の複合材料層を備え、
前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向が前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向を横断するように前記第2の複合材料層が前記第1の複合材料層の上に配置された状態で、前記第2の複合材料層が前記第1の複合材料層に接着されている
複合積層板。
【請求項13】
前記第1の複合材料層に含まれる繊維は、前記第2の複合材料層に含まれる繊維とは異なる種類の繊維である
請求項12に記載の複合積層板。
【請求項14】
前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向は、前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向に対し90度の角度をなす
請求項13に記載の複合積層板。
【請求項15】
前記第1の複合材料層に含まれる繊維の方向は、前記第2の複合材料層に含まれる繊維の方向に対し90度の角度をなす
請求項12に記載の複合積層板。
【請求項16】
NIJ基準のタイプII、タイプIIA、タイプIII、タイプIIIAおよびタイプIV、およびMIL−STD−622に規定されているV50試験の中のいずれかを満たす防弾パネルを構成する
請求項12に記載の複合積層板。
【請求項17】
請求項4に記載の方法により生成される製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−523083(P2009−523083A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501615(P2009−501615)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/019506
【国際公開番号】WO2008/105828
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508125564)ポリストランド インコーポレイティッド (3)
【氏名又は名称原語表記】POLYSTRAND, INC.
【住所又は居所原語表記】2370 Air Park Way, Montrose, Colorado 81401, United States of America
【Fターム(参考)】