説明

複合膜

【課題】車載用リチウム二次電池又は電解コンデンサ用セパレータに適しており、高耐熱性並びに十分な強度及び一体性を有し、吸湿性が少ないポリケトン多孔膜を含み、かつ十分なイオン透過速度を有する複合膜の提供。
【解決手段】少なくとも1つの不織布に多孔膜が複合された複合膜であって、該多孔膜は、95モル%以上の下記化学式(1):


の繰り返し単位を含むポリケトン樹脂から成り;下記数式(2):
空隙率(%)=[1−G/ρ/(t・A)]・100 (2)
{式中、G、ρ、t及びAは、明細書で規定された通りである。}
により算出される該複合膜の空隙率は30〜80%であり;該複合膜の透気抵抗度は800秒/100ml以下であり;そして該複合膜の最大孔径は0.05〜50μmである前記複合膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的物性、耐薬品性及び耐熱性に優れたセパレータ(分離膜)として使用可能なポリケトン樹脂の複合膜に関する。より詳細には、本発明は、リチウム二次電池等の電池用のセパレータ、電気二重層キャパシタ、又は電解コンデンサ用のセパレータとして優れた性能を示し、有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題からハイブリット電気自動車(HEV)への関心が高まっている。リチウムイオン二次電池は、その高エネルギー及び高出力密度のために小型化し易いという利点があるため、HEV用電源として検討され、使用され始めている。また、HEVの普及に伴い、システム制御に使用される電解コンデンサの使用量が拡大することも予想されている。
【0003】
自動車に搭載するリチウム二次電池に要求される性能は、携帯用電子機器に使用されているものとは大きく異なる。例えば、HEVにおいては電池が高温に曝される可能性が高いこと、及び電池の大型化による異常時の発熱が非常に大きくなることを考慮して、高温環境下における安全確保が重要である。また、自動車に搭載する電解コンデンサの使用環境において、専用冷却系を備えた電源システムは、コスト面で成立させることは難しいと考えられ、例えば、今後はエンジンの冷却系を共用することでコストダウンが図られていく可能性が高いため、やはり高温化対策が必要となる。以上のように、車載用のリチウムイオン二次電池及び電解コンデサの両方にとって高温環境に対する耐性が、今後重要な性能のひとつとなっている。
【0004】
このような状況下で、リチウムイオン二次電池又は電解コンデサにおいて、陽極と陰極との接触を防止するための構成部材であるセパレータに関しても耐熱性の要求は高まっている。現在使用されている携帯用のリチウムイオン二次電池のセパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレンの多孔膜が主に使用されている。しかし、それらのセパレータは、耐熱性に乏しいために溶融軟化して収縮し、陽極と陰極とが接触して短絡する危険性を伴う。電解コンデンサにおいては、セルロース素材の紙が主に使用されているが、耐高温用に開発されているγ−ブチロラクトン等の溶媒中で1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸等のイオン性液体を電解質とした電解液と接触すると、高温下でセルロースが溶解してしまうために製品の寿命が短い問題がある。
【0005】
上記の高温条件下での使用を考慮した耐熱性の高いセパレータとして、芳香族ポリアミドから成る不織布(特許文献1)又は多孔膜(特許文献2)のセパレータ、さらには不織布にメタ芳香族ポリアミドから成る多孔質層が形成されたセパレータ(特許文献3)が提案されている。芳香族ポリアミドは、耐熱性に優れるポリマーであるために、耐熱性に優れたセパレータを形成できる。しかし、これらのセパレータは、芳香族ポリアミドの吸湿性が比較的高いために、リチウムイオン二次電池中で分解ガスが発生して電池が膨らむ問題、又は電極の劣化による電池性能低下の問題を有する。また、これらのセパレータは、電解コンデンサにおいても水蒸気発生によりコンデンサが膨らむ問題又は芳香族ポリアミドに残留するアニオン性物質等の不純物がコンデンサの寿命を低下させる原因となる問題を有する。また、芳香族ポリアミドのポリマー価格が高いことも、それらを車載用リチウム二次電池又は電解コンデンサのセパレータとして工業的に使用し難い一因となっている。
【0006】
一方、一酸化炭素とエチレンが完全交互に共重合した脂肪族ポリケトン(以下ポリケトンとする)が知られている。原料である一酸化炭素とエチレンは比較的安価であり、ポリケトンのポリマー価格が安くなる可能性がある。ポリケトンの融点は250℃以上であり、ポリエチレン又はポリプロピレンと比較して耐熱性に優れている。また、ポリケトンは、耐薬品性に優れ、かつ吸湿性は1%以下であるため、上記の問題を解決する上で注目すべきセパレータ素材である。ポリケトンの多孔膜が電池セパレータとしての使用可能であることは特許文献4等に開示されており、さらに、ポリオレフィン樹脂の多孔膜にポリケトン多孔膜を積層した電池用セパレータが特許文献5に開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献4に開示されたポリケトン多孔膜は、その膜厚が大きいため、イオン透過速度が遅くなり、内部抵抗の高いリチウム二次電池となる問題を有していた。イオン透過性を高めるために膜厚を100μm以下と小さくした場合は、膜の引張り強度が弱くなり、リチウム二次電池を作製する上で問題があった。特許文献5に開示されたセパレータは耐熱性の改善には効果はみられ、適度な膜厚で十分な引張り強度を有するものであったが、ポリオレフィンの多孔膜とポリケトンの多孔膜との接着力が弱いために、使用中に剥がれて目的の性能が発揮できないトラブル又は電池作製中に剥がれてしまう等のトラブルを生じ、二層膜に一体性が無いことが問題であった。
【0008】
また、電解コンデンサ用のセパレータとしては、開示されたポリケトン多孔膜では孔径が小すぎるために不適であり、ポリケトン不織布又は紙(特許文献6及び特許文献7等に開示されている)の方が適している。しかしながら、開示されたポリケトン不織布は、ポリケトン繊維を作製した後に短繊維とし、湿式法で不織布を作製しているので、製造のコストがかかるという問題を有していた。また、開示されたポリケトン紙の場合は、ポリケトンの短繊維をフィブリル化する工程が加わり、さらにコストがかかるという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3142693号公報
【特許文献2】国際公開第2001/19906号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/123811号パンフレット
【特許文献4】特開2002−348401号公報
【特許文献5】特開2006−27024号公報
【特許文献6】特開2005−163237号公報
【特許文献7】特開2001−207335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、車載用のリチウム二次電池又は電解コンデンサ用セパレータに適した複合膜であって、高耐熱性並びに十分な強度及び一体性を有し、吸湿性が少ないポリケトン多孔膜を含み、かつ十分なイオン透過速度を有する複合膜を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、不織布にポリケトン樹脂を複合させることにより、ポリケトン樹脂が薄膜であっても十分な引張り強さと一体性を持たせることが可能となることを発見し、かかる発見に基づき、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下の[1]〜[5]である:
【0012】
[1]少なくとも1つの不織布に多孔膜が複合された複合膜であって、該多孔膜は、95モル%以上の下記化学式(1):
【化1】

の1−オキソトリメチレンの繰り返し単位を含むポリケトン樹脂から成り;下記数式(2):
空隙率(%)=[1−G/ρ/(t・A)]・100 (2)
{式中、Gは、該複合膜の質量(g)であり、ρは、該不織布を構成する繊維及びポリケトン樹脂の質量平均密度(g/cm)であり、tは、該複合膜の平均厚み(cm)であり、そしてAは、該複合膜の面積(cm)である。}
により算出される該複合膜の空隙率は、30〜80%であり;ガーレー法(JIS P8117)で測定した該複合膜の透気抵抗度は、800秒/100ml以下であり;そしてバブルポイント法(JIS K3832)で測定した該複合膜の最大孔径は、0.05〜50μmであることを特徴とする前記複合膜。
【0013】
[2]前記多孔膜が、前記不織布の片面に複合されており、前記透気抵抗度が、10〜800秒/100mlであり、そして前記最大孔径が、0.05〜2μm以下である、[1]に記載の複合膜。
【0014】
[3]前記多孔膜が、前記不織布の全体に複合されており、前記不織布を構成する繊維が、前記ポリケトン樹脂で覆われており、前記透気抵抗度が、10秒/100ml以下であり、そして前記最大孔径が、1〜50μmである、[1]に記載の複合膜。
【0015】
[4]前記不織布が、熱可塑性合成繊維から成り、そして7〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と0.5〜5μmの繊維径を有する不織布層(B)とが、A/B/A型又はA/B型で接合一体化されたものである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の複合膜。
【0016】
[5]前記ポリケトン樹脂が、三次元架橋処理されている、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の複合膜。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合膜をセパレータとして用いた場合、100℃以上の使用環境下においてもセパレータの形状又は性質に変化が少なく、また吸湿性が少ないためにリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ又は電解コンデンサの性能を長期に亘り維持することが可能である。また、本発明の複合膜は十分な引張り強度を有し、ポリケトン樹脂と不織布との剥離が起こらないために、製造中に破損又は剥がれによるトラブルの発生が少なく、製造効率が向上する。また、本発明の複合膜は低コストで製造することが可能であり、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ又は電解コンデンサを広く普及させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<複合膜>
本発明の複合膜は、少なくとも1つの不織布、好ましくは複数の不織布を含む。本発明の複合膜を形成するために、複数の不織布は、接合一体化、積層、成形、圧着などによって複合されることができる。また、本発明の複合膜では、ポリケトン樹脂から成る多孔膜が、少なくとも1つの不織布の片面又は全体に形成されている。ポリケトン樹脂から成る多孔膜を形成する方法は後述される。
【0019】
<ポリケトン樹脂から成る多孔膜>
本発明の複合膜において、不織布上に形成される膜は、多孔質であり、かつポリケトン樹脂を含む。そしてポリケトン樹脂を構成するポリマーは、エチレン性不飽和化合物と一酸化炭素が交互に共重した重合体であり、エチレンと一酸化炭素が結合した化学式(1):
【化2】

で示される1−オキソトリメチレンの繰り返し単位を95モル%以上含む。
【0020】
必要に応じて、本発明の多孔性膜を構成するポリマーは、エチレン以外のプロペン、ヘキセン、シクロヘキセン、スチレン等のエチレン性不飽和化合物と一酸化炭素の結合した単位を、5モル%未満の範囲で有していてもよい。ポリケトンの耐熱性又は電池若しくはコンデンサの電解液に対する耐性を考慮すると、ポリケトンを構成する1−オキソトリメチレンの繰り返し単位の含有量は、ポリケトン全量を基準として多いほど良く、好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である。実質的に100モル%とは、NMR法で1−オキソトリメチレン以外の繰り返し単位が観察されないことである。
【0021】
ポリケトンの極限粘度(分子量の指標)は、特に制限はないが、力学特性、成形性の観点から、0.1〜10dl/gであることが好ましい。0.1dl/g未満では膜強度が弱すぎ、使用中に膜構造が破壊されることがある。10dl/gより大きい場合は、均一な膜を成形する上で困難になる。より好ましくは0.5〜6dl/gである。
【0022】
はじめに、本発明によるポリケトン樹脂の製造方法について説明する。ポリケトン樹脂の製造方法としては、特に制限はないが、例えば、オートクレーブ等の反応容器の溶媒中で、エチレンと一酸化炭素を反応させる方法が好ましい。
【0023】
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられ、これらの混合溶媒として使用してもよい。また、生成するポリケトンの粒子形状を調整する目的でアセトン、メチルエチルケトンを混合する場合もある。より好ましい溶媒としては、重合活性等のコストの観点から、水及び/又はメタノールである。
【0024】
ポリケトンの原料としては、主に一酸化炭素とエチレンが挙げられるが、ポリケトン樹脂の加工性を考慮して、エチレン以外のプロペン、ヘキセン、シクロヘキセン、スチレン等のエチレン性不飽和化合物を混合させる場合がある。一酸化炭素とエチレンの反応容器内での割合は、(一酸化炭素/エチレン)のモル比が10/1〜1/10であることが好ましく、5/1〜1/5であることが更に好ましい。一酸化炭素とエチレンの添加方法には制限はなく、予め、両者を混合してから添加してもよく、それぞれ別の供給ラインから添加してもよい。
【0025】
ポリケトンの重合は、溶媒に溶解した有機金属錯体触媒の存在下で進行する。なお、有機金属錯体触媒は、周期律表の(a)第10族遷移金属化合物及び(b)第15族の原子を有する配位子から成るものである。更に、かかる(a)第10族及び(b)第15族の原子を有する配位子に、第3成分として(c)酸を加えてもよい。
【0026】
(a)第10族遷移金属化合物の例としては、ニッケル、パラジウム又は白金の錯体、カルボン酸塩、リン酸塩、カルバミン酸塩及びスルホン酸塩を挙げることができ、その具体例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、塩化パラジウム、ビス(N,N−ジエチルカーバメート)ビス(ジエチルアミノ)パラジウム、硫酸パラジウムを挙げることができる。重合活性の観点から、最も好ましくは酢酸パラジウムである。
【0027】
(b)第15族の原子を有する配位子の例としては、2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、2,2’−ビ−4−ピコリン、2,2’−ビキノリン等の窒素二座配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,3−ビス{ジ(2−メチル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−イソプロピル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、1,3−ビス{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,2−ビス{(ジフェニルホスフィノ)メチル}ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,2−ビス[{ジ(2−メトキシ−4−スルホン酸ナトリウム−フェニル)ホスフィノ}メチル]ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ヒドロキシ−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパン、2,2−ジメチル−1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパンのリン二座配位子を挙げることができる。重合活性、高分子量化の観点から、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン又は1,3−ビス{ジ(2−メトキシフェニル)ホスフィノ}プロパンがより好ましい。これらは単独で用いても、複数種を同時に混合して用いても構わない。
【0028】
(c)酸の例としては、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のpKaが4以下の有機酸の陰イオン;硫酸、リン酸、ヘテロポリ酸、テトロフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、フルオロケイ酸等のpKaが4以下の無機酸の陰イオン;トリスペンタフルオロフェニルボラン、トリスフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのホウ素化合物の陰イオンを挙げることができる。これらは単独又は複数種を混合しても使用できる。これらの中で好ましい酸の陰イオンは、重合活性と高分子量化の観点から、トリフルオロ酢酸又は硫酸がより好ましい。
【0029】
有機金属錯体触媒として用いる(a)第10族遷移金属化合物の使用量は、他の重合条件によってその好適な値が異なるため、一概にその範囲を定めることはできないが、好ましくは、反応帯域の容量1リットル当り0.01〜10000マイクロモル、より好ましくは0.1〜1000マイクロモルである。反応帯域の容量とは、反応器中の液相容量をいう。また、(b)第15族の原子を有する配位子の使用量も制限されるものではないが、遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.8〜3モルである。(c)酸の使用量は、(a)第10族遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは0.1〜1000モル、より好ましくは1〜100モル、最も好ましくは3〜10である。
【0030】
有機金属錯体触媒は、(a)第10族遷移金属化合物、(b)第15族の原子を有する配位子及び、好ましくは(c)酸を混合することによって生成する。有機金属錯体触媒の使用法についての制限はないが、予め、各成分の混合物から成る有機金属錯体触媒を調製してから反応容器内に添加することが好ましい。有機金属錯体触媒を調製する場合には、先ず、(a)第10族遷移金属化合物及び(b)第15族の原子を有する配位子を混合し、次いで酸(c)を混合することが好ましい。触媒組成物の調製に用いる溶媒は、アルコール、アセトン及びメチルエチルケトンから選ばれる有機溶媒が好ましい。また、上記(a)、(b)及び(c)の3成分から成る触媒に、重合活性を維持する効果が高いという観点から、ベンゾキノン、ナフトキノン等のキノン類酸化剤を添加することが好ましい。これらキノン類の添加量は、(a)第10族遷移金属化合物1モル当たり、好ましくは1〜1000モル、より好ましくは10〜200モルである。キノン類の添加は、触媒組成物に添加してから反応容器に添加する方法又は重合溶媒に添加する方法のいずれであってもよく、必要に応じて、反応中に反応容器内に連続的に添加してもよい。
【0031】
ポリケトンを重合するための重合温度は、50〜200℃であることが望ましい。重合温度が50℃未満では、重合活性が低くなり、コスト面で問題となる場合がある。また、重合温度が200℃を超えると、反応活性が高く、生産性は高くなるが、得られるポリケトンの分子量が極端に低くなる等、機械的・熱的特性を発揮することができない。更に好ましくは、重合温度は、70〜150℃である。また、重合反応の圧力(反応圧力ともいう。)は1〜50MPaであることが好ましい。反応圧力が1MPa未満では、重合活性が低くなり、コスト面で問題となる場合がある。また、反応圧力が50MPaを超えると反応活性は高くなるが、設備が重大となり生産性が低下する。更に好ましい反応圧力の範囲は、2〜20MPa、特に好ましくは3〜10MPaである。ポリケトンの重合時間は、1〜24時間であることが好ましい。重合時間が1時間未満ではポリケトン中のパラヂウム(Pd)量が多く、特別な触媒除去工程が必要となり生産性が低下する。一方、重合時間が24時間を超えると所定時間あたりのポリケトンの収量が小さくなり生産性が低下する。重合時間は、より好ましくは1.5〜10時間、特に好ましくは2〜6時間である。なお、本発明において重合時間とは、上述の触媒組成物および重合溶媒が存在し、上述の重合条件にある反応容器中に、一酸化炭素およびエチレンを投入した時点から、温度を下げる、あるいは、内圧を開放する等の実質的に重合反応が起こらない状態にする時点までの時間を意味する。一酸化炭素およびエチレンを反応容器内に連続的に投入し、重合生成物を連続的に抜き出す連続的に抜き出す連続重合法においては、投入から抜き出しまでの平均の滞留時間を重合時間とする。
【0032】
重合が完了したポリケトンは懸濁液の状態で反応容器内から抜き出される。反応容器から抜き出された懸濁液は必要に応じてフラッシュタンクを通過させて、懸濁液内に残留する未反応の一酸化炭素およびエチレンを除去する。次いで、ポリケトン懸濁液を、重合溶媒に用いた溶媒と同一種類の溶媒を用いて洗浄しながら、遠心脱水機等の公知の遠心分級器によりポリケトン粉体と液体成分とを分離する。その後、加熱気体を吹き付ける方法、ポリケトン粉体を攪拌しながら加熱気体を通す方法等の公知の装置及び方法を用いてポリケトン粉体に残存する液体成分を乾燥及び除去して、ポリケトンを単離する。
【0033】
以上のようにして得られたポリケトンを、ポリケトンの溶剤に溶解した後に乾式成形、湿式成形を行って成形体とすることが出来る。ポリケトンの溶剤は、特に限定されず、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロピレンカーボネート、m−クレゾール、レゾルシン水溶液等の溶剤、塩化亜鉛、塩化亜鉛/塩化カルシウム、塩化亜鉛/塩化リチウム、塩化亜鉛/チオシアン酸カルシウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/塩化リチウム、塩化亜鉛/塩化カルシウム/チオシアン酸カルシウム等の金属塩水溶液などの公知の溶剤を用いることができる。
【0034】
また、電解液に対する耐性又は必要とされる耐熱性に応じて、ポリケトン樹脂を三次元架橋処理する場合がある。ポリケトンのポリマーを三次元架橋することにより、溶媒に不溶化し、熱に対しての変形も改善することが可能となる。その架橋構造としては、特に制限は無く、加熱処理によるアルドール縮合構造、ジアミン化合物による架橋構造(窒素置換されたピロール環構造、WO2010/33027号明細書を参照)等がある。三次元架橋は複合膜を形成後に行われることが好ましく、架橋反応度の好ましい範囲としては、電解液の種類又は必要とする耐熱温度により異なるが、ポリケトン樹脂をヘキサフロオロイソプロパノール(25℃)中で3時間攪拌したとき、溶解せずに固形分として残った質量率が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは70質量%以上である。
【0035】
次に、本発明のポリケトン樹脂から成る多孔膜の製造方法の一例について説明する。
本発明によれば、ポリケトンを溶剤に溶解してドープとする。ポリケトンを溶解する溶剤は、上記のレゾルシン水溶液、有機溶剤、金属塩水溶液などでよい。使用するポリケトンの極限粘度、溶剤、ポリケトンの混合率(以下ポリマー濃度という)の組合せは、溶剤の種類と目的の複合膜の構造により、ドープの粘度を考慮しながら適宜決められる。多孔膜の構造を維持する力学的強度を得ること、複合膜を形成するための成形性の観点から、極限粘度が0.1〜10dl/gでポリマー濃度が1〜50質量%の範囲での組合せが好ましい。より好ましくは、極限粘度が0.5〜5dl/gでポリマー濃度が3〜20質量%の範囲である。同じ溶剤であれば、ドープ粘度は極限粘度とポリマー濃度の組合せと、ドープの温度条件で決定される。
【0036】
例えば、不織布の片面にポリケトン樹脂の多孔膜が形成された構造の複合膜である場合は、比較的ドープの粘度が高い方が片面への複合成形において適しており、成形する際の温度でのドープ粘度は100〜5000poiseが好ましい。ドープ粘度が100poise未満であるときには不織布の内部までドープが浸透し過ぎ、ポリケトン樹脂の多孔膜の膜厚が不均一になり、50μmより大きな孔が開き、電池又はコンデンサの短絡を発生させる場合がある。5000poiseを超える場合、逆に不織布の内部への浸透が起こりにくく、不織布とポリケトン樹脂の多孔膜が複合されにくい場合、又はドープの塗布状態が均一でなくなり、ポリケトン樹脂の多孔膜の厚みが不均一になりやすい場合がある。より好ましくは、ドープ粘度は、200〜2000poiseである。
【0037】
また、ポリケトン樹脂が不織布全体(全面)に形成されていて、不織布の繊維がポリケトン樹脂で覆われた構造の複合膜である場合は、比較的ドープ粘度が低い方が成形性において適しており、成形する際の温度でのドープ粘度は10〜1000poiseが好ましい。10poise未満では、ドープが流れやすいために不織布全体に均一に留まらせることが困難であり、不織布の繊維が均一にポリケトン樹脂で覆うことが困難である。1000poiseを超えると不織布の内部まで均一にドープを浸透させることが困難となり、好ましくない。より好ましくは、ドープ粘度は、50〜500poiseである。
【0038】
以上のドープの方法を用いて、不織布上にポリケトン樹脂から成る多孔膜を形成する。
【0039】
<不織布>
不織布は、一般公知のものを使用することができる。不織布を構成する繊維に特に限定は無く、短繊維でも紡糸直結型の長繊維でも良い。繊維が使用中に脱落する可能性がない点、製造コストの点で紡糸直結型の長繊維不織布が好ましい。紡糸直結型の長繊維としてセルロース系繊維等の湿式紡糸によるものと熱可塑性合成繊維の溶融紡糸によるものとがあるが、製造コストの点で熱可塑性合成繊維が好ましい。熱可塑性合成繊維としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等がある。ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があり、ポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等があり、ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等がある。強度及び耐熱性の点でポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0040】
不織布の製造方法は、一般公知な方法でよい。例えば、熱可塑性合成繊維の溶融紡糸による紡糸直結型の長繊維不織布は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、またはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂、またはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をスパンボンド法により、それぞれの樹脂に適した温度で長繊維群をコンベア等の移動捕集面に向けて押し出し、コロナ帯電処理で十分に開繊することにより得られる。
【0041】
本発明の不織布は、熱可塑性合成繊維から成ることが好ましい。また、不織布の構造は、7〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と、0.5〜5μmの繊維径(極細繊維)を有する不織布層(B)とが、A/B/A型、またはA/B型で接合一体化して成ることが好ましい。不織布は、繊維及びその間隙である空隙から構成されるが、上記のような不織布構造とすることで、空隙が厚み方向に連続して繋がった大きな空隙を作ることが無いため、ポリケトン樹脂をより均一な厚みで複合させることが可能となる。また、後述するように複合膜が、不織布の片面にポリケトン樹脂の多孔膜が複合された構造を有する場合、極細繊維を有する不織布層(B)の繊維が細く、かつ空隙が小さいために、ドープが塗布面の反対側に透過してしまうことを抑制する効果があり、より均一な複合膜を製造することが可能となる。
【0042】
<複合膜の構成>
上述のポリケトン樹脂と不織布とが複合されて本発明の複合膜となる。本発明において、「複合」、「複合する」、「複合され」、「複合された」、「複合されている」又は「複合される」とは、不織布の表面だけでなく、不織布の内部まで、不織布の厚み方向にポリケトン樹脂が浸透した状態であり、例えば、SEMで不織布断面を観察した時、ポリケトン樹脂が不織布の厚み方向に10μm以上浸透した状態が観察され、内部の不織布繊維の一部または全部にポリケトン樹脂が付着している状態が観察される状態をいう。不織布内部の繊維にポリケトン樹脂が付着することにより、ポリケトン樹脂と不織布とが剥がれる現象が防止される。本発明では、電池又はコンデンサの溶媒中で、複合膜を100℃で3時間攪拌したときに不織布から、一部ポリケトン樹脂が浮き上がった状態、又はポリケトン樹脂が剥がれた状態が観察されなければ、複合されていると判断する。
【0043】
ポリケトン樹脂の多孔膜及び不織布から成る複合膜の構造については、特に制限は無いが、リチウムイオン二次電池のように比較的小さな孔径のセパレータが必要とされる場合は、イオンの透過速度を高く保つために不織布の片面にポリケトン樹脂の多孔膜が複合された構造が好ましい。また、基材の不織布の耐薬品性又は耐熱性が問題となるときは、ポリケトン樹脂の多孔膜が、不織布全体に複合されることによって、不織布の繊維がポリケトン樹脂で覆われた構造が好ましい。
【0044】
<複合膜の物性>
前記複合膜は、さらに空隙率、透気抵抗度及び最大孔径で規定される。これらの数値の組合せは複合膜の孔の大きさ及び形状に依存しており、イオンの透過性、すなわち電池又はコンデンサの内部抵抗の性能に関係する。空隙率が大きく、透気抵抗度が小さく、最大孔径が大きいほど内部抵抗が小さくなるので膜の性能として好ましいが、セパレータとしての機能は逆に悪化する可能性がある。
【0045】
<空隙率>
複合膜の空隙率は、下記の数式(2):
空隙率(%)=[1−G/ρ/(t・A)]・100 (2)
{式中、Gは、空隙率を測定する複合膜の質量(g)であり、ρは、空隙率を測定する複合膜を構成する繊維及びポリケトン樹脂の質量平均密度(g/cm)であり、tは、空隙率を測定する複合膜の平均厚み(cm)であり、そしてAは、空隙率を測定する複合膜の面積(cm)である。}
で示され、30〜80%である。
【0046】
質量平均密度は、密度が異なる繊維の不織布が構成される場合、各々の繊維の密度とポリケトン樹脂の密度に対して、それぞれの構成質量比率を乗じて和した数値である。例えば、ρとρの密度を持つ繊維がGとGの質量で構成された不織布に、密度ρのポリケトン樹脂がGの質量で複合されているときには、質量平均密度は、下記式:
質量平均密度=(ρ・G+ρ・G+ρ・G)/(G+G+G
で表される。空隙率が30%未満では、電池又はコンデンサのセパレータとして使用した場合、電解液の保持性又はイオンの透過速度が遅くなり、電池又はコンデンサの容量の低下をもたらす。80%より大きくなると複合膜の強度が弱くなり、電池又はコンデンサの製造中にセパレータを破損し、製品の収率低下をもたらしたり、使用中にセパレータの破損を発生したりする。空隙率は、好ましくは40〜70%であり、より好ましくは40〜65%である。
【0047】
<透気抵抗度>
複合膜の透気抵抗度は、ガーレー法(JIS P8117)で測定され、800秒/100ml以下である。透気抵抗度の数値は、大きいほど空気が通りにくいことを示し、孔径が小さいか、または空孔が少ないか、または空孔の貫通路が長いこと等を示している。逆に孔径が大きく、空孔が多い場合は、透気抵抗度の数値が小さくなり、ある領域からはほぼゼロ秒となり、実質的に測定比較が不能となる。透気抵抗度が800秒/100mlより大きい場合は、イオンの透過速度が遅くなり過ぎて、電池又はコンデンサの内部抵抗が高くなるという問題が生じることがある。透気抵抗度は、好ましくは400秒/100ml以下であり、より好ましくは300秒/100ml以下である。
【0048】
<最大孔径>
複合膜の最大孔径は、バブルポイント法(JIS K3832)で測定され、0.05〜50μmである。最大孔径が0.05μmより小さい場合は、イオンの透過速度が遅くなり過ぎて、電池又はコンデンサの内部抵抗が高くなるという問題を生じることがある。一方で、最大孔径が50μmより大きい場合は、陽極と陰極との短絡を生じることがある。最大孔径は、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは0.1〜5μmである。
【0049】
不織布の片面にポリケトン樹脂の多孔膜が複合されている複合膜をリチウムイオン二次電池のセパレータとして使用する場合には、比較的小さな孔径である方が好ましく、透気抵抗度が10〜800秒/100mlであり、かつ最大孔径が0.05〜2μmであることが好ましく、透気抵抗度が50〜400秒/100mlであり、かつ最大孔径が0.1〜0.5μmであることがより好ましい。また、ポリケトン樹脂が不織布全体に複合されており、かつ不織布の繊維がポリケトン樹脂で覆われた構造を有する複合膜を使用する場合には、不織布の空隙が空孔となるので、比較的大きな空孔を有する複合膜は、電解コンデンサ用のセパレータとして適している。その場合には、透気抵抗度が10秒/100ml以下であり、かつ最大孔径が1〜50μmであることが好ましく、透気抵抗度が5秒/100ml以下で、最大孔径が5〜30μmであることがより好ましい。
【0050】
<厚み>
複合膜の厚みは、特に制限されないが、電池の容量の向上、コンデンサ小型化等を考慮すると厚みは低いほうが好ましく、70μm以下が好ましい。より好ましくは50μm以下、最も好ましくは30μm以下である。複合膜の機械的強度を考慮すると、5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、最も好ましくは20μm以上である。
【0051】
<引張り強度>
複合膜の引張り強度は、電池又はコンデンサを製造する上で取扱性が良い、生産性が高いという観点から、5MPa以上である方が好ましい。より好ましくは10MPa以上である。
【0052】
<複合膜の製造方法>
また、7〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と、0.5〜5μmの繊維径(極細繊維)を有する不織布層(B)とが、A/B/A型、またはA/B型で接合一体化して成る熱可塑性合成繊維の溶融紡糸直結型の長繊維不織布は、上述と同様なスパンボンド法で不織布層(A)を形成した後、不織布層(A)の上に公知のメルトブロー法による極細の熱可塑性合成繊維の溶融紡糸直結型の長繊維不織布を直接吹き付けることにより、不織布層(A)の上に不織布層(B)が形成され、A/B型の不織布が得られる。また、さらに不織布層(B)の上にスパンボンド法で不織布層(A)を形成すれば、A/B/A型の不織布が得られる。必要に応じて、一体化を向上させる目的で、熱エンボス加工をほどこしても良い。不織布A層に不織布B層の極細繊維が侵入して固定されるために、これらの不織布は形状の安定化及び引張り強度の向上の効果が得られる。このようにして得られた不織布の接合体に、前記ポリケトン樹脂をドープすることにより、本発明の複合膜が得られる。
【0053】
ポリケトン樹脂のドープ(例えば、溶剤及びポリケトン樹脂を含む溶液)は、公知の装置を用いて公知の方法でポリケトン樹脂を塗布することにより行なわれる。不織布の片面にポリケトン樹脂を塗布する場合、バッチ式では、アプリケータを用いて不織布の上面にドープを膜状に広げる方法があり、連続式ではダイコーター、ロールコーター、バーコーター等の装置を用いて、走行する不織布に連続的にドープを膜状に塗布する方法を用いることができる。また、不織布の両面にポリケトン樹脂を塗布する場合、又は不織布の全面若しくは全体にポリケトン樹脂を複合する場合は、不織布を走行させながらドープの浴に浸漬し、次いで浴からドープの付着した不織布を引上げて、所定のクリアランスを有し、かつ不織布の走行方向とは逆に回転している二つのロールの間隙に不織布を通過させて、不織布に付着した余分なドープを取り除き、均一な厚みの複合膜を得る方法がある。
【0054】
次いで、塗布したドープ膜を乾式または湿式でポリケトンを析出させて固化した膜構造を形成する。この方法はドープの溶剤の種類、膜構造の形成状態により、適宜選定される。例えば、レゾルシン水溶液を溶剤としてドープを作製した場合、ドープを塗布した不織布をメタノール、水等のレゾルシン溶剤が溶解可能な凝固液に浸漬する。また、塩化亜鉛/塩化カルシウム等の金属塩水溶液を溶剤としてドープを作製した場合は、水等の塩化亜鉛/塩化カルシウムが溶解可能な凝固液に不織布を浸漬する。該凝固剤は、溶剤が所定量含まれていた方が、溶剤の回収を考慮した場合に安定した凝固浴組成の管理が可能な点で好ましい。凝固浴中の溶剤の含有量又は凝固浴の温度は、ポリケトン樹脂の構造(孔の形状等)に影響するため、ドープとの組合せも考慮して適宜選定される。以上の凝固剤又は凝固温度は、ポリケトン樹脂の孔径をコントロールし、透気抵抗度及び最大孔径を所定の範囲内に調整するために重要な条件である。
【0055】
上述の固化した複合膜を、凝固剤でさらに洗浄し、必要に応じて複合膜に含まれる凝固剤を他の溶媒で置換することができる(以下、「溶媒置換」ともいう)。溶媒置換を行う目的は、複合膜を乾燥する際に、乾燥の効率を高めること、及びポリケトン樹脂の孔の構造が乾燥時に収縮等により変形することを防止することである。凝固剤から置換する溶媒としては、比誘電率の小さい溶媒が好ましく、具体的にはヘキサン、トルエン、シクロヘキサン等が好ましい。また、水で洗浄した場合は、必要に応じて、70〜95℃の温水で処理する。複合膜を乾燥する際に、ポリケトン樹脂の孔の構造が乾燥時に収縮等により変形することを防止する効果がある。以上の処理は、溶剤又は凝固剤の種類等により処理方法及び必要性は異なるが、ポリケトン樹脂の孔径をコントロールし、透気抵抗度及び最大孔径を所定の範囲内に調整するために重要な条件である。
【0056】
加熱ロールに接触させる方法、熱風を複合膜に吹きかける方法、電熱ヒーターで非接触加熱して乾燥する方法等、またはこれらの組合せ等、公知の乾燥方法により、この複合膜を乾燥する。加熱ロールに接触させる方法が最も効率が良いため好適に選ばれる。乾燥温度は、60〜200℃の範囲で、乾燥させる液体の種類により適宜選ばれる。また、必要に応じて、静電気の発生を防止する薬剤を乾燥前若しくは乾燥後、又は複合膜を巻き取ったり、重ねたりする前に付与することが好ましい。
【実施例】
【0057】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次のとおりである。
(1)ポリケトンの極限粘度
ポリケトンの極限粘度[η](単位dl/g)は、次の定義式:
【数1】

(式中、t及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質質量値である。)
に基づいて求められる値である。
【0059】
(2)透気抵抗度
JIS P8117(ガーレー法)に準拠して、透気抵抗度を測定した。
【0060】
(3)最大孔径
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用い、浸液にPMI社製のガルウィック(表面張力=15.6dynes/cm)を用い、JIS K3832(バブルポイント法)に準拠して、バブルポイント値(Pa):Pを測定し、以下の式:
d=2860×19.1/P
から最大孔径(μm):dを計算した。
【0061】
(4)平均厚み
ダイヤルゲージ(尾崎製作所:PEACOCK No.25)にて、複合膜を格子状に5mm間隔で9箇所(3点×3点)の膜厚を測定し、平均値を平均厚みとした。
【0062】
(5)不織布の繊維径
不織布の所定部位の繊維を切り取り、マイクロスコープにて異なる箇所30点の繊維の直径を測定し、その平均値を不織布の繊維径とした。
【0063】
(6)複合膜の引張強度
横型引張強度試験機(熊谷理機工業製)を用い、15mm幅の短冊状に切り出したサンプルを、チャック間距離:80mm、伸長速度:80m/min.の条件で5点の破断強度を測定し、その平均を引張強度(MPa)とした。
【0064】
(7)複合性
複合膜をリチウムイオン二次電池及び液体電解コンデンサで使用されるγ―ブチロラクトン中に5cm×5cmで切り出した複合膜を入れ、100℃で1時間攪拌し、不織布とポリケトン樹脂の接着状態を目視で観察した。そして以下の基準に従って複合性を評価した。
○:全く剥がれが観察されないもの
△:一部ポリケトン樹脂が浮き上がった状態が観察されるもの
×:剥がれが観察されるもの
【0065】
(8)ドープ粘度
ドープ粘度は、東京計器(株)製のB形粘度計(BH形)を用いて測定したゼロせん断粘度とした。
【0066】
(9)複合膜の平衡水分率
100mm×100mmの複合膜を5枚切り出し、20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室に24時間放置したときの質量をWとし、その5枚の複合膜を105℃で5時間乾燥したときの質量をWとし、以下の式:
S=(W−W)/W×100
から複合膜の平衡水分率(%):Sを算出した。
【0067】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて充分に開繊し、平均繊経16μmフィラメントから成る、目付10g/mの未結合長繊維ウェブを、捕集ネット面上に調製した(不織布層A)。次に、ポリエチレンテレフタレートを、紡糸温度300℃、加熱エア温度320℃、吐出エア1000Nm/hr./mの条件下でメルトブロー法にて紡糸して、平均繊維径1.6μmの極細繊維を目付5g/mのランダムウエブとして、上記の不織布層Aに向けて直に噴出させて極細繊維層(不織布層B)を形成した。さらに、不織布層Aを上記の不織布層Bの上に形成して、A/B/A型の三層積層不織布を調製した。この不織布をエンボスロールとフラットロールの間に通して熱圧着させ、積層不織布を得た。
【0068】
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度10.7質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0069】
アプリケータを用いて、この50℃のドープ(ドープ粘度:500poise)を、ドープ厚が35μmとなるように、上記のA/B/A型の三層積層不織布に片面塗布した。これを、30℃のメタノール中に10分間浸漬して凝固させた後、メタノールで洗浄し、これをアセトンで溶媒置換し、さらにn−ヘキサンで溶媒置換した後、80℃で乾燥を行った。
【0070】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは52μmであり、空隙率は47%であった。また、透気抵抗度は82秒/100mlであり、最大径は1.2μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は28MPaであり、平衡水分率は0.5%であった。
【0071】
[実施例2]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度4.9dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度9.0質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。アプリケータを用いて、この50℃のドープ(ドープ粘度:750poise)を、ドープ厚が25μmとなるように塗布した。その他の条件は、実施例1と同じ条件で複合膜を作製した。
【0072】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは47μmであり、空隙率は46%であった。また、透気抵抗度は123秒/100mlであり、最大径は0.9μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は30MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0073】
[実施例3]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度4.9dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度6.5質量%で塩化亜鉛/塩化カルシウム/塩化リチウム=22/30/10質量%比の62質量%金属塩水溶液に添加し、60℃で5時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0074】
アプリケータを用いて、この60℃のドープ(ドープ粘度:1100poise)を、ドープ厚が35μmとなるように、実施例1のA/B/A型の三層積層不織布に片面塗布した。これを、50℃の塩化亜鉛/塩化カルシウム/塩化リチウム=22/30/10質量%比の5質量%金属塩水溶液中に10分間浸漬して凝固させた後、0.1質量%塩酸で洗浄し、これをさらに水で洗浄した。さらに90℃の温水に1時間浸漬した後に、80℃で乾燥を行った。
【0075】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは47μmであり、空隙率は44%であった。また、透気抵抗度は340秒/100mlであり、最大径は0.5μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は31MPaであり、平衡水分率は0.7%であった。
【0076】
[実施例4]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度4.9dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度5.0質量%で塩化亜鉛/塩化カルシウム/チオシアン酸カルシウム=22/38/2質量%比の62質量%金属塩水溶液に添加し、70℃で3時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0077】
アプリケータを用いて、この60℃のドープ(ドープ粘度:900poise)を、ドープ厚が35μmとなるように、実施例1のA/B/A型の三層積層不織布に片面塗布した。これを、50℃の水中に10分間浸漬して凝固させた後、0.1質量%塩酸で洗浄し、これを水でさらに洗浄し、80℃で乾燥を行った。
【0078】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは48μmであり、空隙率は49%であった。また、透気抵抗度は90秒/100mlであり、最大径は2.5μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は34MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0079】
[実施例5]
ポリエチレンテレフタレート(PET)をスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて充分に開繊し、平均繊経16μmフィラメントから成る、目付10g/mの未結合長繊維ウェブを、捕集ネット面上に調製した(不織布層A)。次に、ポリエチレンテレフタレートを、紡糸温度300℃、加熱エア温度320℃、吐出エア1000Nm/hr/mの条件下でメルトブロー法にて紡糸して、平均繊維径1.6μmの極細繊維を目付5g/mのランダムウエブとして、上記の不織布層Aに向けて直に噴出させて極細繊維層(不織布層B)を形成し、A/B型の二層積層不織布を調製した。この不織布をエンボスロールとフラットロールの間に通して熱圧着させ、積層不織布を得た。
【0080】
この不織布に、実施例4と同じ方法で複合膜を形成した。得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは37μmであり、空隙率は55%であった。また、透気抵抗度は100秒/100mlであり、最大径は1.5μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は31MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0081】
[実施例6]
エチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.4dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度9質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0082】
この50℃のドープ(ドープ粘度:200poise)中に実施例1のA/B/A型の三層積層不織布を浸漬し、表面の余分なドープを掻き取った後、30℃のメタノール中に10分間浸漬して凝固させた。その後、メタノールで洗浄し、これをアセトンで溶媒置換し、さらにn−ヘキサンで溶媒置換した後、80℃で乾燥を行った。
【0083】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の全体がポリケトン樹脂で覆われた様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは48μmであり、空隙率は52%であった。また、透気抵抗度は122秒/100mlであり、最大径は0.8μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は29MPaであり、平衡水分率は0.5%であった。
【0084】
[実施例7]
ポリマー濃度7.5質量%とし、50℃のドープ粘度が90poiseとなった以外は実施例6と同様な方法で複合膜を作製した。
【0085】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の全体がポリケトン樹脂で覆われた様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは47μmであり、空隙率は48%であった。また、透気抵抗度は6秒/100mlであり、最大径は20μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は30MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0086】
[実施例8]
プロピレンと一酸化炭素が反応した単位を4モル%含み96モル%が1−オキソトリメチレンの繰り返し単位で構成され、極限粘度1.5dl/gのポリケトンを、ポリマー濃度13質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことで均一透明なドープを得た。
【0087】
この50℃のドープ(ドープ粘度:80poise)中に実施例5のA/B型の二層積層不織布を浸漬し、表面の余分なドープを掻き取った後、30℃のメタノール中に10分間浸漬して凝固させた。その後、メタノールで洗浄し、これをアセトンで溶媒置換し、さらにn−ヘキサンで溶媒置換した後、80℃で乾燥を行った。
【0088】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の全体がポリケトン樹脂で覆われた様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは30μmであり、空隙率は49%であった。また、透気抵抗度は6秒/100mlであり、最大径は25μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は32MPaであり、平衡水分率は0.5%であった。
【0089】
[比較例1]
実施例7のドープを、50℃(ドープ粘度:90poise)で、ドープ厚が35μmとなるように、実施例1のA/B/A型の三層積層不織布に片面塗布した。その他の条件は、実施例1と同じ条件で複合膜を作製した。
【0090】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布のほぼ全体的にポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは48μmであり、空隙率は51%であった。また、透気抵抗度は3秒/100ml以下で測定不能であり、最大径は70μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔が多数観察され、不均一であった。複合膜の引張強度は28MPaであり、平衡水分率は0.5%であった。
【0091】
[比較例2]
メタノール中に凝固させ、メタノールで洗浄した後のアセトンとn−ヘキサンでの溶媒置換をせずに80℃で乾燥を行った以外は、実施例1と同じ条件で複合膜を形成した。
【0092】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂が浸透している様子が観察された。複合性を評価したところ、PK樹脂と不織布との剥がれは観察されず良好であった。複合膜の平均厚みは47μmであり、空隙率は41%であった。また、透気抵抗度は透気がないため測定不能であった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず、均一であった。複合膜の引張強度は38MPaであり、平衡水分率は0.5%であった。
【0093】
[比較例3]
実施例2のポリケトンを、ポリマー濃度15.0質量%で65質量%レゾルシン水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、脱泡を行うことでドープを得た。アプリケータを用いて、この50℃のドープ(ドープ粘度:9500poise)を、ドープ厚が25μmとなるように塗布した。その他の条件は、実施例1と同じ条件で複合膜を作製した。
【0094】
得られた複合膜の断面をSEM観察したところ、不織布の中央部付近までポリケトン樹脂は不織布の表面に観察され、不織布の厚み方向に10μm以上まで到達していない状態が観察された。複合性を評価したところ、不織布から一部ポリケトン樹脂が浮き上がった状態が観察された。複合膜の平均厚みは52μmであり、空隙率は48%であった。また、透気抵抗度は300秒/100mlであり、最大径は0.7μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は34MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0095】
[比較例4]
実施例2のドープを50℃でガラス盤に、アプリケータを用いてドープ厚が200μmとなるように塗布した。これを、30℃のメタノール中に10分間浸漬して凝固させ、ガラス盤からポリケトン樹脂膜を剥がした後、そのポリケトン樹脂膜をメタノールで洗浄し、これをアセトンで溶媒置換し、さらにn−ヘキサンで溶媒置換した後、80℃で乾燥を行った。
【0096】
得られたポリケトン樹脂膜の平均厚みは47μmであり、空隙率は79%であった。また、透気抵抗度は110秒/100mlであり、最大径は0.9μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は2MPaであり、平衡水分率は0.6%であった。
【0097】
[比較例5]
実施例2のドープを膜厚18μmのポリエチレン多孔膜(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、商品名:ハイポア)にドープ厚が35μmとなるように塗布した。これを、30℃のメタノール中に10分間浸漬して凝固させた後、メタノールで洗浄し、これをアセトンで溶媒置換し、さらにn−ヘキサンで溶媒置換した後、80℃で乾燥を行った。
【0098】
得られた複合膜の複合性を評価したところ、PK樹脂とポリエチレン多孔膜の剥がれが観察された。複合膜の平均厚みは41μmであり、空隙率は57%であった。また、透気抵抗度は420秒/100mlであり、最大径は0.6μmであった。複合膜にはピンホールとなるような大きな孔は観察されず均一であった。複合膜の引張強度は62MPaであり、平衡水分率は0.7%であった。
【0099】
尚、以上の実施例1〜5は表1に、実施例6〜8は表2に、比較例1〜5は表3に、それぞれまとめて示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の複合膜は、高耐熱性及び低吸湿性であり、かつ低コストであり、そして車載用のリチウム二次電池、電気二重層キャパシタ又は電解コンデンサ等のセパレータとして利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの不織布に多孔膜が複合された複合膜であって、該多孔膜は、95モル%以上の下記化学式(1):
【化1】

の1−オキソトリメチレンの繰り返し単位を含むポリケトン樹脂から成り;下記数式(2):
空隙率(%)=[1−G/ρ/(t・A)]・100 (2)
{式中、Gは、該複合膜の質量(g)であり、ρは、該不織布を構成する繊維及びポリケトン樹脂の質量平均密度(g/cm)であり、tは、該複合膜の平均厚み(cm)であり、そしてAは、該複合膜の面積(cm)である。}
により算出される該複合膜の空隙率は、30〜80%であり;ガーレー法(JIS P8117)で測定した該複合膜の透気抵抗度は、800秒/100ml以下であり;そしてバブルポイント法(JIS K3832)で測定した該複合膜の最大孔径は、0.05〜50μmであることを特徴とする前記複合膜。
【請求項2】
前記多孔膜が、前記不織布の片面に複合されており、前記透気抵抗度が、10〜800秒/100mlであり、そして前記最大孔径が、0.05〜2μm以下である、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
前記多孔膜が、前記不織布の全体に複合されており、前記不織布を構成する繊維が、前記ポリケトン樹脂で覆われており、前記透気抵抗度が、10秒/100ml以下であり、そして前記最大孔径が、1〜50μmである、請求項1に記載の複合膜。
【請求項4】
前記不織布が、熱可塑性合成繊維から成り、そして7〜20μmの繊維径を有する不織布層(A)と0.5〜5μmの繊維径を有する不織布層(B)とが、A/B/A型又はA/B型で接合一体化されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合膜。
【請求項5】
前記ポリケトン樹脂が、三次元架橋処理されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合膜。

【公開番号】特開2012−45815(P2012−45815A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189784(P2010−189784)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】