複合表面を選択的にコーティングするための方法、前記方法を用いるマイクロ電子配線の製造、および集積回路
本発明は、複合表面の特定の領域を導電性膜で選択的にコーティングするための方法、マイクロ電子機器の配線を製造するための方法、集積回路を製造するための方法およびプロセスおよび、特に、金属配線の回路網の形成に関する。本発明はさらに、マイクロシステムおよびコネクタを製造するための方法およびプロセスに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合表面の特定の領域を導電性膜で選択的にコーティングするための方法、マイクロ電子機器の配線を作製するための方法、および集積回路を作製するためのプロセスおよび方法、特に、金属配線の回路網の形成、また、マイクロシステムおよびコネクタを作製するためのプロセスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下において、先行技術はマイクロエレクトロニクスの分野に意図的に制限されているが、これが選択的な制御されたコーティングを得る際の技術的困難の激化を示すからであり、より迅速な加工およびますます微細になるエッチングの観点から、特に、ダマシンおよびデュアルダマシン方法において化学的機械的研磨(CMP)の後に得られた銅トラック上の自己整列バリアの製造の需要が大きくなっている。従って、当業者は、これらの問題をマイクロシステムまたはコネクタなどの他の適用に容易に置き換えることができ、問題は同じであるが単に異なったスケールになるだけである。
【0003】
集積回路は、シリコンウエハの表面の上に不連続な半導体デバイスを形成することによって作製される。次いで、金属配線の回路網をこれらのデバイス上に形成し、それらの活性要素間の接点を形成し、所望の回路を得るために必要とされる配線をそれらの間に製造する。配線のシステムはいくつかのレベルからなる。各レベルは金属線によって形成され、これらの線は、「配線孔」または「ビア」と呼ばれる接点によって一緒に接続される。
【0004】
配線回路の応答時間は定数RCを特徴とし、それは、金属レベルの抵抗Rに、線を隔てる誘電体の性質によって主に決定される、定数Cによって表されるそれらの容量結合を乗じた値に相当する。
【0005】
従って、メタライゼーションの観点から、配線の応答時間は線の抵抗を低減することによって低減される。銅が最近の方法に導入され、より抵抗性が大きくエレクトロマイグレーション耐性がより小さいアルミニウムに取って代わったのはこの理由のためである。しかしながら、銅の導入はいくつかの困難性を生じる。
【0006】
誘電体を予め堆積させ、次いで、銅の充填および化学的機械的研磨の前にエッチングするダマシンタイプの構成を使用することが必要である。マイクロエレクトロニクス産業の要求条件を満たすために、高いARまたはアスペクト比(その全体としてのトレンチおよびビアのデュアルダマシン構造について約4/1のAR)を有する非常に微細な幾何学的形状(0.1μm未満のトレンチおよびビア寸法)を有効に充填できることを必要とする。
【0007】
銅は活性成分に有害であるので、誘電体を通してシリコンに銅が拡散するのを防ぐことも必要である。これを実施するために、一体の境界面、すなわち銅と誘電体との間の良好な接着力をさらに提供する、有効なバリアを用いることが必要である。
【0008】
ダマシン方法において、メタライゼーションは3つの主工程で実施される。
工程1:PVD(物理蒸着)またはCVD(化学蒸着)による薄い銅拡散バリア層の堆積
工程2:次の堆積のために核形成層としても役立つ、薄い銅タイ層の堆積
工程3:銅を電気めっきし、その間、基板は、金属がその塩の溶液から上に堆積されるカソードとして作用する。
【0009】
銅が堆積されると、過剰な銅がCMPによって除去される。そのとき、得られた表面は、銅と誘電体との交互バンドを含む複合表面の形態であり、銅バンドの各々は非常に微細な半導体バンドに隣接し、銅を充填する前にわずかのバリア層をトレンチに導入し、研磨する間に薄く切り取った。これらの銅および誘電体バンドが形成された後、次いでそれらは通常、SiCまたはSiCNタイプの均一な層で封入され、全複合表面を被覆し、銅拡散バリアとして役立つ。
【0010】
これらのコーティングは絶縁性であるが、それらは比較的高い誘電率を有し、それは銅線間の容量結合を増加させる。さらに、最近の研究は、銅線とこの絶縁性バリアとの間の境界面が多層の弱い場所であり、そこからカタストロフ的不良が回路の動作中に生じる(エレクトロマイグレーション、亀裂の開始、等々)ことを示している。(L.ピーターズ、セミコンダクター・インターナショナル(L.Peters,Semiconductor International)、2002、次のアドレスにおいてインターネット上で照会可能:
http:/www.reed−electronics.com/semiconductor/article/CA224702?text−capping&stt=00l&)
銅線の素子分離を改良するためにおよび65nm未満の技術の配線の信頼性を増加させるために、1つの解決は、銅上に選択的に堆積された、金属タイプのバリアの使用にある。銅線を「ボックス」に完全に密閉し、それらがもうそこから出てこれないようにするために、これは、銅拡散バリアをトレンチの第4の面に堆積することを実際に必要とする。この封入バリアが銅に高付着性である場合、銅/封入バリア境界面においての銅の移動性が大幅に低減され、従って、銅線に流された電流は、低下せずに高くなり、エレクトロマイグレーション耐性は増加した。これを実施するため、封入バリアは、近接した銅線間の漏れ電流を避けるために、下にある銅と自己整列されなければならない。この選択的な堆積のために予想される方法は、タングステンの選択的な化学蒸着(CVD)および金属合金による選択的な無電解めっきである。従って、(i)概して、金属は誘電体よりも銅に付着性であると考えられ、(ii)前述の選択的な技術を金属または合金について実施することができるので、金属材料が好ましい。
【0011】
無電解めっきは、金属塩を金属に還元し、別の金属の表面に触媒する還元反応を必要とする。外部電流または電圧源を介在させずに金属を堆積させる金属塩溶液は、メタライゼーション溶液または無電解溶液と呼ばれる。
【0012】
バリア性質を示すことができる金属堆積物は、場合によりリンまたはホウ素などの特定の付加的な元素を有する、タングステン、コバルト、ニッケルまたはそれらの合金および混合物などの耐熱金属ベースの金属堆積物である。特に、CoWP、CoWBおよびNiMoP堆積物が現在使用され、これらにすべて共通に言えるのは、それらが、それぞれバリア材料のために必要な特にコバルト塩、タングステン塩、ニッケル塩、モリブデン塩等と還元剤も、例えばジメチルアミノボラン(DMAB)を含有する無電解溶液から得られるということである。これらの反応は概して、遷移金属によって触媒される(それらは特に自己触媒的である)。このような溶液は例えば米国特許第5695810号明細書に記載されている。
【0013】
従って、理論上、金属線の銅がこの触媒作用を提供することができ、そして、堆積が銅線の表面にだけ起こると想像することができる。しかしながら、銅はこれらの条件下で堆積物の十分な成長を可能にするために十分に触媒として作用しないことが実際に見出されている。
【0014】
この不十分さを改善するために、すぐれた触媒性質を有する他の遷移金属の凝集体をこれらのトラック上に選択的に−付着させることによって、銅トラックを活性化することが可能である。これは、概して金属を堆積するために良い触媒である、例えばパラジウム、白金、コバルト、ニッケルまたはモリブデンについての場合である。
【0015】
そのPd(II)/Pd0対の標準電位がCu(II)/Cu0対の標準電位より大きいとすると、これらの遷移金属のうち、パラジウムが特別な位置を占める。金属銅の存在下で、Pd(II)イオンは自発的に還元され、銅(それ自体、表面がわずかに酸化されている)上に金属パラジウムの堆積を生じるという結果になる。従って、パラジウムおよび銅の標準電位のこの性質は、銅トラック上にパラジウムの自発的な堆積−原則として選択的な堆積−をもたらす。この性質こそが「パラジウム活性化」バリアとよばれる自己整列バリアを作るためのプロセスをもたらし、それは、パラジウム凝集体を銅線上に形成する工程と、その後の、金属バリア層の局部的に触媒された成長工程とを含む。これらのプロセスにおいて、均一な層の形ではなく、銅線上に分配された凝集体の形のパラジウムを有することが好ましいが、その理由は特に挙げると以下の通りである。
(i)これはパラジウム/無電解溶液の接触領域を増加させることができ、従って速度論をより有効に局部的に増加させることができる。
(ii)これは銅と金属バリア層の境界面に存在するパラジウムの量を最後には最小にすることができる(実際、パラジウムが銅中に容易に拡散すると考えられ、その電気導電性質の低下の原因である場合がある)。
【0016】
しかしながら、パラジウムによる銅トラックの活性化にいくつかの問題が観察される限りにおいて、この技術も完全に満足のいくものではない。すなわち、
1)銅上のPd(II)イオンの自発還元の間、形成されたパラジウム堆積物は導電性である。従って、この堆積はそれだけで続き、マッシュルーム効果によって、凝集体ではなくよりバルキーな堆積物を生じる。これは、Pd(II)溶液との接触時間が重要なパラメータであり、この時間が長すぎる場合、これは必ず、近接した線の堆積物を接合して短絡を生じるのに十分である各線上の堆積物をもたらすことを意味する。これは、方法の不安定性の原因である。
【0017】
2)これらの極端にいたる前でも、パラジウムイオンは、めったに完全に特異的でない吸着を示し、その上、銅線の間に存在する誘電体の性質に依存している。銅上ではなく誘電体上のこの非特異的吸着はそのままで(銅線の間の)誘電体上の金属パラジウムの形成を伴わないが、この非特異的吸着が銅線に近い領域に起こる場合、この事例になる。さらに、次いで選択的なバリア堆積物を生じさせるために用いられる無電解溶液は還元剤を含有し、これは誘電体の表面に吸着されたパラジウムイオンをパラジウム凝集体に変換することができ、それ自体、誤った場所で金属バリアの成長を触媒し、短絡を生じる。これらのすべての場合において、上記の項目1)と同じ理由のために、横の成長が起き、線の間の短絡を生じる場合がある。この効果は、SiO2またはSiOCタイプの非孔質誘電体に既に存在しても、誘電体が低誘電率(K)の多孔性材料である時にさらにより顕著であり、そこには吸着だけでなく挿入もある場合があることが注目されるべきである。
【0018】
3)概して、自己整列バリアの形成より前に行なわれるCMP工程の関数としてパラジウム活性化のかなり強い依存性が観察される。このCMP工程は必ずしも平坦化を可能にせず、誘電体線に対して銅線を明瞭に示すという事実を別として、多数のCMP残留物が銅トラック上に吸着されたままであり、それらの反応性、特にそれらのレドックス反応性が現れるのを妨げる層でそれらを被覆する。特定の場合において、パラジウム溶液による活性化が全くなく、銅線が妨害されるのが観察されることがある。
【0019】
4)パラジウム凝集体が銅トラック上に堆積されると、このように活性化された表面は適した無電解溶液と接触させられる。そのとき、これらのパラジウム凝集体は銅トラックの表面から離れ、前記溶液中に移り、(速度定数に関与する基本衝突頻度因子の理由のために反応および触媒作用は常に、表面でよりも体積内でより急速であるので)そこでそれらは増大した活力でそれらの触媒の役割を果たすことがわかる。体積中の金属凝集体の形成反応は概して自己触媒的であるので、この脱着の直接の結果は無電解溶液のほとんど完全な消費であり、これは概して非常に急速またはさらに瞬間的である。
【0020】
従って、パラジウムはその標準レドックス電位の値のために多数の利点を有するにしても、これは、特に、非常に微細な構造(0.2μm以下の構造、すなわち130nm以下の集積回路の技術世代と共存できるエッチングサイズ)上のパラジウム凝集体の堆積の実際の選択性を可能にするには不十分である。
【0021】
パラジウム凝集体以外のタイプの凝集体への変更は、事実上、同じタイプの欠点を生じ、それらのM(x)/M0対(x=IまたはIIおよびM=Co、Ni、Mo、Wなど)の標準レドックス電位が概してCu(II)/Cu0対の標準レドックス電位より小さいので、銅によるそれらの還元だけによってそれらを堆積することはアプリオリ(a priori)に可能でないという事実がそれに加わる。次いでそれは、直接、これらのイオンを含有する浴中の還元剤(例えばDMABタイプ)の存在、および銅の触媒効果を増強する様々な活性剤の存在に左右される。従って、これらのイオンの還元は、原則として、無電解浴の全体にわたって起こることがあるが、それは、特に銅線に垂直な点において触媒されている。実際、これにより、活性化の手段として(概して酸処理による)銅トラック洗浄工程、その後の、銅の触媒効果を増強するための十分な添加剤を含有する無電解溶液と接触する工程があるだけである。これらの選択肢の欠点は、無電解溶液の、特に、銅の触媒効果を増強するための薬剤も含有しなければならない無電解溶液の本質的な不安定性である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これらのすべての要求条件に応じ、前述の仕様を満たし、さらに、特に金属配線、集積回路または他のマイクロシステムの製造のための、先行技術の多くの前述の問題を解決する方法を提供することを本願発明者は目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に必要とされる表面は、複合表面である、すなわち、少なくとも、それらが作製される材料の仕事関数によって異なる領域のタイリングからなる、特定の特徴を有する。材料の仕事関数はエレクトロンボルトで表され、それから電子を抽出するために真空中で表面に供給されるエネルギーに相当する。より詳しくは、以下に記載されるように、本発明は、その領域の少なくとも1つの部分が電気導電性である複合表面に適用される。
【0024】
従って、本発明の主題は、第一に、電気導電性または半導性金属領域、特に銅領域、および非電気導電性領域からなる複合材料をコーティングするための方法であり、該方法が、前記電気導電性または半導性金属領域に垂直な金属層の無電解成長の少なくとも1つの工程を含み、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記無電解成長工程の前に、前記複合材料を以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aが、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xが、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nが0または1に等しい整数であり、
Bが、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の有機または有機金属二官能性前駆物質と接触させることによって有機または有機金属膜を前記電気導電性または半導性金属領域上に、およびその上にのみ共有結合または供与結合によってグラフトすることによって核形成層を形成する少なくとも1つの第1の工程をさらに有することを特徴とする。この官能基は遊離であるか(そのとき、二官能性前駆物質は純粋に有機系であり、遊離またはブランク前駆物質と称される)、またはすでにイオン、特に金属イオン、または金属凝集体と錯体を形成することができる(そのとき、二官能性前駆物質は有機金属前駆物質であり、これは帯電または媒染前駆物質と呼ばれる)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましくは、このように形成された膜は、この膜の自由面が、それを上に配置する複合表面の局部トポロジーに適合するような厚さを有する。概して、この膜の厚さは1〜100nmであり、より好ましくは1〜10nm、さらにより好ましくは1〜5nmである。
【0026】
本発明の方法において、金属層の選択的な成長のために役立つ層は、従って、有機または有機金属膜を含む。
【0027】
膜が有機金属であるとき、それは、それ自体が有機金属である式(I)の前駆物質(すなわち、Bが、金属イオンと錯体を形成する少なくとも1つの配位子の官能基を有する基である)を用いて直接に得られるか、または有機前駆物質によって得られ、有機膜を生じ、次いで、前記膜上にまたは中に挿入してグラフトされた有機膜の媒染を可能にする金属前駆物質の溶液で処理する。従って、この有機金属膜は、混合された有機部分と金属材料とを含み、使用された化学物質の性質に応じて、それらの間に化学的相互作用または結合がある場合もない場合もある。
【0028】
従って、本発明の第1の特定の実施態様によって、該方法はさらに、電気導電性または半導性金属領域上に形成された有機または有機金属膜が金属材料の少なくとも1つの前駆物質またはその堆積のための触媒の少なくとも1つの前駆物質のいずれかを含む媒染溶液と接触させられる、媒染の第2の工程を有し、前記第2の工程が有機または有機金属膜を形成する第1の工程と同時にまたはその後に実施される。
【0029】
本発明の第2の特定の実施態様によって、該方法はさらに、金属層の無電解成長の工程が実施される前に、式(I)の前記有機金属化合物および/または金属材料の前記前駆物質もしくはその堆積のための触媒の前駆物質をそれぞれ金属材料として、またはその堆積のための触媒として還元することにある第3の工程を有する。この場合、無電解溶液からの金属層の成長の、それぞれ、核形成のためにまたは触媒のためのいずれかに役立つ、それぞれ、膜または凝集体の領域のいずれかからなる層を有機膜と共に構成するために、金属材料が、コーティングされる前記複合表面の導電性または半導性領域のトポロジーに適合して、および前記有機膜上にまたは中に形成する。
【0030】
以後、核形成または触媒層は、上の金属層の構築においてのその実際の役割に関するさらなる詳細がなければ、「核形成層」と呼ばれる。以下の表Iは、グラフトされた層の性質に応じて、本発明の方法による核形成層の製造を行なう様々な方法をまとめる。
【0031】
【表1】
【0032】
これは、有機二官能性前駆物質を用いる3つの実施方法および有機金属二官能性前駆物質を用いる4つの実施方法を示す。
【0033】
従って、上の表Iは、核形成層を1つ以上の工程で形成することができることを示す。その作製のために必要とされる工程の数がいくつでも、これらの工程は、工程の少なくとも1つがグラフト反応、すなわち、上記の式(I)の有機または有機金属前駆物質を必要とする反応を有し、共有結合または供与結合によって複合表面の導電性または半導性領域に付着された有機金属層の形成をもたらすとき、一括して「グラフト活性化」工程の名で呼ばれる。
【0034】
本願発明者が第一に見出したことは、特に、有機膜を得るために表面から開始された自発表面化学および/または化学反応は、それらが化学グラフト反応を伴うとき、すなわち、これらの有機または有機金属膜の前駆物質との表面反応の付加物が複合表面の導電性または半導性領域上の化学的に吸着された種、すなわち、それと供与結合または共有結合を形成する種をもたらすとき、複合表面の幾何学トポロジーを維持することを可能にするので、有機膜を使用することにより、核形成層の、従って上の金属層の堆積の選択性をかなり改良することである。概して、本発明者は、このタイプの反応で得られた選択性が、先行技術の公知の技術を用いて、すなわち無電解堆積によって直接に得られた選択性より大きいことを観察した。さらに、上に記載された式(I)の化合物を共有結合または供与結合によってそれに結合することができない限りにおいて、本発明の方法によって用いられた前記複合材料の前記非電気導電性領域の非ポリマー性質は、電気導電性または半導性領域に垂直にだけ有機膜の選択的な付着を可能にする。
【0035】
第二に、本発明者はまた、特に、これらの膜が金属材料の前駆物質または金属材料それ自体と供与結合または共有結合を形成することができる反応性官能基を有するとき、1つ以上の金属材料の前駆物質を受け入れ、および/または支持することができ、これらの前駆物質をこれらの有機膜中でまたはそれらの表面の上で前記金属材料に変換することができるこのような膜を構成する多くの有機材料の性質を観察した。
【0036】
最後に、本発明者は、本発明による方法が、電気導電性または半導性領域に垂直な有機膜の存在のために、媒染工程を実施するために用いられる金属イオン、特にパラジウムイオン、溶液の濃度をかなり低減することができることを見出した。この有機膜の存在は、特に、10−4Mより小さい濃度の金属イオン溶液、すなわち、先行技術の方法において通常使用される溶液よりずっと濃度が小さい溶液を使用することを可能にする。
【0037】
次いで、本発明者は、これらの有機膜と金属材料のこれらの前駆物質との使用を組合せて表面に非常に小さなスケールにまで出発複合表面のトポロジーに適合する核形成膜を形成することによって、これらの観察を的確に用い、従って上述の先行技術の多くの問題を解決した。
【0038】
本発明を実施する1つの好ましい方法によって、上記の式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の基Aの反応性官能基は、以下の官能基などの孤立電子対を有する官能基から選択される:アミン、ピリジン、チオール、エステル、カルボン酸、ヒドロキサム酸、チオ尿素、ニトリル、サリチル酸、アミノ酸およびトリアジン;開裂可能な官能基から得られる基、例えばジスルフィド、ジアゾニウム(−N2+)、スルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム、アルキルヨージドまたはアリールヨージド官能基、カルボカチオン、カルバニオン(および特に、アルキン、有機銅酸塩および有機マグネシウム、有機亜鉛または有機カドミウム化合物によって得られたもの)。
【0039】
上に規定されたように、n=1であるとき、Xは、基AとBに共有結合したスペーサーアームであり、分子の安定性に寄与することができる。Xは好ましくは、芳香環の環または共役または非共役の組合せ、飽和または不飽和の、分岐または直鎖脂肪族鎖の他、全分子の安定性に寄与するために場合により電子吸引基または電子供与基で置換された、これらの2つのタイプの官能基のアセンブリから選択される。
【0040】
スペーサーアームXの例として、特に、直鎖または分岐アルカン鎖(−(CH2)m−、1<m<25)、例えば、メチレン(−CH2−)基、フェニレン基(−C6H4−)の他、ニトロ、シアノまたはヒドロキシル基などの電子吸引基で置換された、または例えば、メチル基などの好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基などの電子供与基で置換されたフェニレン基、それ自体が1つ以上の電子供与基または電子吸引基で場合により置換される、ナフチレンまたはアントリレン基などのいくつかの縮合芳香環を有する基、およびこれらの基の組合せからなる構造もまた挙げられる。
【0041】
式−(CH2)mのスペーサーアームX(mは、10を超えない整数である)が、本発明によって特に好ましい。
【0042】
式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の部分Bに関して上に規定された配位子の官能基には、特に、アミン、アミド、ピリジン、ニトリル、アミノ酸、トリアジン、、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルトフェナンスロリン化合物、エーテル、カルボニル、カルボキシルおよびカルボキシレート、エステル、ヒドロキサム酸、サリチル酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、クラウンエーテル、アザ−クラウン化合物、チオ−クラウン化合物、クリプタンド、セプルクレート、ポダンド、ポルフィリン、カリックスアレーン、ナフトール、イソナフトール、シデロフォア、抗生物質、エチレングリコールおよびシクロデキストリン、これらの官能基をベースとした置換および/または官能化分子構造、および1つ以上の金属イオンまたは金属凝集体とのそれらの金属錯体などが挙げられる。後者の場合、基Bの配位子の官能基がすでに金属前駆物質で「帯電」されているとき、式(I)の前駆物質は、有機金属前駆物質であるといわれる。
【0043】
特定の場合、官能基XがAまたはB基と1つの同じ基に「縮合」されてもよい。これは例えば、金属にグラフトされ得る基を有するピリジンを考える場合であり、この基は例えば、ピリジンの窒素のパラ位にある。この場合、反応性官能基はこのグラフト可能な基であり、ピリジン環は、Xと配位子の官能基との両方の場所を取り、Xがピリジン環の炭素部分であり、配位子の官能基がピリジン環の窒素であり、それは金属に対して錯化機能を有することが知られている。また、例えばピリミジンはこのカテゴリーの範囲内である。
【0044】
上記の式(I)の化合物には、最も具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0045】
場合によりスペーサーアームXを介して、上に規定したような配位子の官能基によってジアゾニウム基のパラ位で官能化されたアリールジアゾニウム塩、例えば以下の化合物:BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−NH3−,BF4、上記の式(I)を参照して、A=BF4−,+N2−Φ−;X=−(CH2)m−、mが1〜25の整数であり、B=−NH3+,BF4−;Φが芳香環であり、または遊離チオールの形の以下の化合物(BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−SH)またはジスルフィドの形の以下の化合物([BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−S−]2)があり、A=BF4−、+N2−Φ−、X=−(CH2)m−およびB=−SHであり、mが前と同じ意味である。
【0046】
前述の配位子の官能基によって官能化されたアルキルまたはアリールヨージド、例えば以下の化合物:遊離チオの形(I−CH2−CH2−SH)またはジスルフィドの形([I−CH2−CH2−S−]2)のいずれかの、ヨードエタンチオール、A=I−CH2−、X=−CH2−およびB=−SH。
【0047】
ビピリジン、例えばビピリジン:Φ−Φ、Φはピリジン環であり、A=Φ、B=ΦおよびXが2つのピリジン環の間の結合にされる(n=0)、または例えばジピリジニルエタン:Φ−CH2−CH2−Φ、A=Φ、X=−CH2−CH2−およびB=Φ
アミノチオール、すなわち、脂肪族および/または芳香族鎖によって隔てられているチオール官能基とアミン官能基とを有する化合物、例えばシステアミン(H2N−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−およびB=−NH2)、アミノプロパンチオ(H2N−CH2−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−CH2−およびB=−NH2)またはアミノヘキサンチオール(H2N−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−およびB=−NH2)、および硫黄含有アミノ酸、例えばメチオニン。
【0048】
ジアミン、例えばエチレンジアミン(H2N−CH2−CH2−NH2、A=H2N−、X=−CH2−CH2−およびB=−NH2)またはヘキサメチレンジアミン(H2N−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−NH2、A=H2N−、X=−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−およびB−NH2);およびポリエチレンイミン(PEI)。
【0049】
アリールジアゾニウム塩には、4−エチルアンモニウムフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−(2−アミノエチル)ベンゼンジアゾニウムジテトラフルオロボレート、4−シアノベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシベンゼンジアゾニウムおよび4−チオエタノールフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0050】
以下の式(I−1)〜(I−14)の化合物は、例えば、アリールジアゾニウム塩から得られたグラフト付加物の例であり、それらの開裂は炭素/金属共有結合の形成をもたらす。
【0051】
【化1】
【0052】
【0053】
複合材料の導電性領域(M)へのグラフトが実施されたとき、および場合により、金属媒染が実施されたとき、上の構造(I−1)〜(I−14)が示されている。パラジウムまたは銅イオンは単なる例として示されている。実際、このようにグラフトされた分子によって保持されている配位子の官能基は所与のイオンについてめったに選択的でないが、概して、多くの金属イオン、特にすべての遷移金属イオンに親和性を有することが観察されている。
【0054】
これが、本発明がパラジウム活性化工程を有するコーティングプロセスをかなり改良することができる理由の1つであるが、また、パラジウムによる以外の活性化への直接の置き換えを可能にし(実施方法I、II、VIおよびVIIについて上の表Iに示されたように、媒染がグラフト後に実施されてもよいが、パラジウム前駆物質以外の金属前駆物質、特に、コバルトまたはニッケル前駆物質、または無電解溶液中にその後に存在するいずれかの他の元素の前駆物質を用いる)、もしくはさらに、パラジウムを使用しない(上の表Iの実施方法IIIの場合のように、媒染は実施されず、無電解溶液が、直接、グラフトされた層上で用いられる)。
【0055】
上に記載された式(I)の分子は、特に、官能基Aの性質に応じて、複合表面の導電性領域上に様々な方法で堆積されてもよい。多くの場合、前述の基は、絶縁領域を除いて、複合表面の導電性または半導性領域上で自発的におよび優先的に反応することができ、グラフトされた有機層の形成をもたらすことが観察され、その場合、(例えばディッピング、スピンコーティングまたは噴霧による)式(I)の分子を含有する溶液と複合表面との単純な接触が適していることがある。そのとき、複合表面の導電性または半導性領域上への有機膜の化学グラフトがある。
【0056】
本発明のいくつかの実施方法を想定することができる(上の表Iを参照のこと)。
1)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、グラフト活性化工程と金属塩(例えばパラジウム塩)を用いる媒染工程とを含む。この場合、複合材料の表面は最初に、上記の手順の1つによって、式(I)の前駆物質を含有する溶液で処理される。この工程は、式(I)、すなわち上に規定されたA−(X)n−Bの二官能性前駆物質の膜を形成させ、これが複合材料(composition material)の導電性領域上にグラフトされ、金属前駆物質を受容するために少なくとも1つの配位子の官能基を有する基Bを提供する。次に、ディッピング、スピンコーティングまたは噴霧によって、複合材料の導電性領域に付着される式(I)の化合物の基Bの配位子の官能基によって錯体を形成することができる金属イオンM(n+)を含有する溶液と該表面を接触させる。この処理が錯化を可能にし、有機膜を、媒染浴の金属イオンを含有する有機金属膜に変換する。M(n+)/M0対のレドックス電位が複合材料の導電性領域の表面のレドックス対の1つのレドックス電位より大きい場合(例えば、自己整列バリアの形成のための絶縁性トラックによって隔てられた銅トラックの場合、Cu(2+)/Cu0対のレドックス電位より大きい)、錯化の後、自発的にM(n+)イオンの、金属M0への還元が起こり、導電性領域上に、式(I)のグラフトされた二官能性前駆物質と式(I)の二官能性前駆物質によって、グラフトされた金属原子および/または金属凝集体とを含む有機金属膜の自発形成をもたらす。これは例えば、パラジウムイオンによる媒染が銅領域上で行なわれる場合、この事例である。このように形成された原子または凝集体M0は概して他のイオンの還元のための触媒であるので、それらは、M(n+)イオンの還元の継続を促し、その結果、グラフトがない時にパラジウムが直接に銅上にある場合に行なわれる方法に似た方法で、単一原子ではなく、導電性領域上にグラフトされた凝集体が急速に得られる。M(n+1)イオンの溶液との接触時間を用いて、得られた凝集体のサイズを調節する。しかしながら、M(n+)イオンの、M0原子または凝集体への自発還元は、この還元がこの領域の酸化の後に、および導電性領域とM(n+)イオンとの間の電子の移動によって起こるので、表面の上にグラフトされた基Bの配位子の官能基によって一度捕捉されたM(n+)イオンが、導電性領域の表面から離れすぎていない場合にだけ起こることが指摘されなければならない。具体的には、従って、スペーサーアームXが長すぎず、典型的に約5ナノメートル未満の長さを有するグラフト前駆物質を使用することが好ましい(それによって、鎖が直鎖であり基Bの配位子の官能基を表面から非常に離れさせる自己集成層の製造を避けるために、式(I)の化合物(Xが−(CH2)m−を表し、mが10を超えない整数を表す)が好ましい)。また、導電性領域と、錯体を形成したM(n+)イオンとの間の電子の移動は、導電性スペーサーアームX(不飽和基)を用いておよび/または低レベルのグラフトを促進することによって増進されうる。これは、低レベルのグラフトについては、グラフトされた有機フラグメントが表面に垂直であることはあまりありそうになく、むしろ、スペーサーアームが、これを可能にする十分な回転自由度を有する場合、それらは傾いているかまたはさらに表面の上にほとんど平らであることがことが知られているからである。このような場合、M(n+)イオンは、スペーサーアームの厳密な長さよりも表面に近いことがある。導電性領域上の有機前駆物質のグラフトのレベルがカバレージの最大の度合いよりも小さいとき、導電性領域の一部だけが、グラフトされた有機膜で覆われ、導電性領域の一部はまだ「無被覆(bare)」であり、その上に、例えば、パラジウム凝集体が、グラフトがない時のように自発的に堆積されることがある。しかしながら、この種の状態において先行技術に観察された問題は、グラフトされていない導電性領域の表面領域を最小にするために、有機膜のグラフトのレベルを調節することによって、または、グラフトおよび媒染の後、表面を十分に強く洗浄して、グラフトされていないパラジウム凝集体を分離するがグラフトされた凝集体を分離しないことによって、最小にすることができる。本発明者は実際、2つの金属の結晶構造が同等である場合にだけ、すなわち、2つのタイプの材料の幾何学パラメーターが同じである場合に、銅表面上の金属凝集体の無電解堆積が金属/金属結合をもたらすことを見出した。これは一般的に言えることではなく、導電性領域上に自発的に形成された凝集体間の金属/金属結合を形成できることは非常にまれであり、その結果、実際、金属/金属結合のエンタルピーからの利点はない。しかしながら、本発明の方法を用いてグラフトされた有機膜の場合、1つのグラフト点は、全凝集体のための結合点を形成するために十分であり、これは初期に錯体を形成したM(n+)イオンから形成されており、その結果、グラフト反応から得られる改良された接着力からそのつど利点がある。また、この観察から、有機膜のグラフトのレベルこそが凝集体のグラフト密度の上限として作用しうることが結論できる。従って、これは、自己整列バリアの場合に銅/バリアキャップ境界面に存在するパラジウムの量を制限するために付加的な自由度を提供する。最後に、本発明の式(I)の有機または有機金属前駆物質は、複合表面の導電性または半導性領域上でグラフトを実施するために選択され、すなわち、基Aの反応性化学官能基はこれらの領域に対して高い親和性を有する。本出願を説明する実施例に示されるように、この親和性は、導電性領域が予め洗浄にされていない時でもグラフトが起こりうるような親和性であることがわかった。従って、グラフトは、導電性領域が処理前に多くの不純物と一緒に維持する結合よりも強い、部分Aと導電性領域との間の結合をもたらすことが観察される。従って、グラフト活性化処理は、導電性領域上に、それらがグラフト活性化の前の工程において受けた処理が何であっても、これらの領域の表面状態をシフトおよび「リセット」するグラフトを得ることを可能にする。グラフト活性化は導電性領域に分子を存在させることが公知であるが、これらの分子が何であるかは公知であり、また、それらの分子はこれらの領域の選択的なメタライゼーションを促進することも公知である。最後に、グラフトはまた、半導性領域上で行なわれるので、本発明の方法は、同様にして、充填およびCMPの前に堆積されたバリア層の痕跡である半導体(TiN、TiNSi、TaN、TaN/Ta、WN等々)の狭いバンドを活性化することを可能にする。これは、自己整列バリア/ライン境界面の接着を銅バンドに垂直にだけでなくエッジに対しても制御することを可能にする。銅拡散バリア「ボックス」の画像に戻ると、本発明は、バリアの「キャッピング」を提供することができる。それらのレドックス特性のために、この性質を先行技術の方法によって得ることができず、まさしくその原理は導電性表面に垂直にだけ機能することができる。この性質は、以下のすべての実施方法に共通し、そのすべてが共通に、グラフト可能な基Aを使用することが留意されなければならない。
【0057】
2)複合表面の導電性領域の活性化は、3つの工程、すなわち、グラフトによって実施される活性化工程、金属塩(例えばコバルト塩)によって実施される媒染工程、およびこのように導電性領域に捕捉された塩が還元される還元工程を含む。実施方法(1)について付加された余分の工程は概して、M(n+)/M0対のレドックス電位が複合表面の導電性領域に対応するレドックス電位より小さい時に必要である。グラフトされた膜中の錯体を形成したM(n+)イオンの還元は自発的に起こらず、外部還元剤によって起こされなければならない。これは、そのレドックス電位がM(n+)/M0対のレドックス電位より小さい、R(n+)/R0対に対応する化合物Rとして規定されたいずれの還元剤を用いて実施されてもよい。このような還元剤には、第二銅イオン(フェーリング溶液)の還元を可能にするグルコース、および大部分の遷移金属イオンの還元を可能にするジメチルアミノボラン(DMAB)が特に挙げられる。この実施方法の使用は、パラジウム以外のタイプの金属凝集体の形成、特に、その後に用いられる無電解溶液中に既に存在する金属(Co、Niなど)の凝集体の形成を可能にする利点を有する。さらに、グラフトされた膜上で実施される錯体形成工程と還元によって凝集体を形成する工程とは同時ではなく、この実施方法は、形成された凝集体のサイズをより良く制御することを可能にする(使用された還元溶液は、例えば、凝集体の成長を促すためのM(n+)イオンを含有しなくてもよい)。しかしながら、この実施方法は、余分の工程を必要とする欠点がある。この特徴とは別に、実施方法(1)について記載された利点はなお有効である。
【0058】
3)複合表面の導電性領域の活性化は、単一工程、すなわち、有機層のグラフトによって実施される活性化工程を含む。無電解溶液は、この溶液が金属イオンと例えばDMABタイプの還元剤との両方を含有するという事実に依拠して、このように処理された複合表面上で直接に使用される。
【0059】
この実施方法によって、錯化、還元および無電解成長が単一工程で行なわれ、それによって工程の数を実質的に制限することを可能にする。グラフトによる活性化のために、上述の利点、および特に活性化の前の工程の不感受性、グラフトによって提供された高度の選択性、および無電解めっき層の成長のためにグラフトによって提供された付加的な自由度が適用される。
【0060】
4)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、有機金属前駆物質を用いてグラフトによって実施される活性化工程と、これらの前駆物質によって保持される金属部位が還元される還元工程とを含む。この実施方法は、金属核を導電性領域に結合するために直接にグラフトの選択性から利点を得ることを可能にし、従って、例えば媒染工程の間に生じることがある選択性の低下を避けることを可能にする。この実施方法は、導電性領域の相補的な領域が多孔性材料からなる場合、例えば、導線を隔てる誘電体が多孔性タイプの低誘電率の誘電体である時の無電解バリアの活性化に特に適している。
【0061】
5)複合表面の導電性領域の活性化は、単一工程、すなわち、金属層の無電解成長のための直接触媒を構成する有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程を含む。これらは例えば、基Bの配位子の官能基が、急速なM(n+)/M0レドックス対に対応するM(n+)イオンで「帯電される」式(I)の前駆物質であってもよく、その電位は、導電性領域に介在することがある(例えば、金属銅表面に面する酢酸パラジウム)の電位よりも大きく、またはそれらは、酸化数ゼロの金属凝集体で直接に帯電される。
【0062】
6)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程と、金属塩(例えばパラジウム塩)によって実施される媒染工程とを含む。このケースは、導電性領域によって自発的に還元されないイオンで帯電された前駆物質のグラフトを必要とし、これらのイオンの置換は、導電性領域上でそれ自体、自発的に還元されるイオン(例えば銅導電性領域上のパラジウムイオン)によって、媒染を必要とする第2の工程の間に行なわれる。この実施方法は、非常に似ている仕事関数(W)を有する導電性領域(S1)または半導性領域(S2)(WS1<WS2)のタイリングからなる複合表面上に複合金属堆積物を生じることが望ましい時に特に有用である。この目的のために、M1(n+)金属イオンで帯電された有機金属グラフト前駆物質を使用することが可能であり、均一なグラフトされた膜を得るためにグラフトを実施することが可能である(これは、特に、複合表面が概して加熱されるかまたは照射された場合、完全な選択性が存在するには近すぎる仕事関数を有する領域で可能である)。次に、複合表面をM2(n+)イオンを含有する媒染浴によって処理し、その結果、それらはS2上で自発的に還元されるがS1上ではそうでなく、これは、WS1<WS2であるので可能である。次に、金属M2がS2上に堆積されるがS1上には堆積されない。次いで、M1(n+)イオンを含有する媒染浴によってさらに処理することにより、M2(n+)イオンを領域S1上で再置換することができる。最後に、還元浴による処理によって、金属M1をS1上におよび金属M2をS2上に堆積することができる。
7)複合表面の導電性領域の活性化は、3つの工程、すなわち、有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程、導電性領域上で自発的に還元されない、金属塩によって実施される媒染工程、および媒染イオンが還元される還元工程を含む。
従って、本発明は、化学グラフト反応を必要とする活性化工程により金属めっきの選択性を改良することによって、先行技術から公知の方法の欠点に対処することを見ることができる。
【0063】
先行技術の技術によって自己整列核形成膜を得る難しさが言及され、基板の複合表面の導電性または半導性領域に選択的に付着性である有機膜を製造できることに基づいて解決され、その膜は、金属材料の前駆物質を含有することができ、その横の解像度は、例えばトラックの表面タイリングの幾何学形状を変更しないように十分に良好である。
【0064】
本発明に必要とされる表面は、本発明の様々な可能な適用と同じぐらい多い。これらは、三次元物体の導電性または半導性表面であってもよく、もしくは完全にまたは部分的に半導性の表面であってもよい。用語「三次元表面」は、得ることが望ましいコーティングの厚さに対してトポロジカルな不規則さが寸法上わずかでない表面を意味するものと理解される。それは例えば、マイクロシステムまたは集積回路の製造のために用いられる基板の表面であってもよく、例えばシリコンウエハおよび当該技術分野の当業者に公知の他の材料の表面であってもよい。本発明によって、基板は例えば、集積回路の製造のための層間層(inter−level layer)であってもよく、特に、厚い銅電気めっき層を堆積する工程およびダマシンまたはデュアルダマシンプロセスにおいて銅配線の製造時に前記トレンチおよび/またはビアを充填する工程の後の化学的機械的研磨(CMP)によって得られた表面であってもよい。後者の場合、複合材料(composition material)は、ほとんど平面であり且つ誘電体トラックによって隔てられた幅Lの銅トラックの交互からなる表面を含む。最も狭い幅は第1の金属レベルの幅である(レベルM1)。マイクロ電子機器の製造方法を確立する指針は、幅Lを90nm技術において約120nm、65nm技術において85nm、45nm技術において50nmおよび32nm技術において40nmに設定する。本発明によって、従って、この幅Lは好ましくは約150〜30nmである。従って、本発明は、ますます狭くなる誘電体トラックによって隔てられたますます狭くなる銅線をキャップするために無電解金属めっきの高い選択性を得ることができる必要性を考えると、この数十年間の技術進展にいっそう関与することは明らかである。
従って本発明の方法は、これらのスケールで、誘電体トラックの上に広がるコーティングを形成して銅トラックの望ましくない短絡を生じる方法を用いる先行技術の上述の多くの問題を解決する。また、本発明の方法は、今まで決して実現されなかった金属配線の寸法の可能性を提供する。
【0065】
核形成層のために役立ち、本発明の方法の第2の工程の間に媒染溶液中で使用される金属材料の前駆物質は好ましくは、銅、亜鉛、金、スズ、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛およびビスマスイオン、ランタニドおよびアクチニドのイオン、およびそれらの混合物などの金属イオンから選択される。これは、特定のケースにおいて、金属イオンの混合物を使用することが有利である場合もあるからである。これは例えば、マイクロシステム、例えば集積回路のための配線の製造のケースであり、そこにおいて金属前駆物質は有利には、銅、パラジウムまたは白金イオンから成ってもよい。
【0066】
この場合、この核形成層を製造するために用いられた媒染溶液中の金属イオン濃度は好ましくは10−4Mを超えず、さらにより好ましくは10−5Mを超えない。
【0067】
本発明によって、有機金属前駆物質は金属イオンではなく直接、金属粒子または凝集体を含有してもよい。金属粒子または凝集体が、ポリマーミセルまたはナノスフィア、フラーレン、カーボン・ナノチューブおよびシクロデキストリンからなる群から選択された保護「ガング(gangue)」に封入されるとき、このような構造が存在し、安定している。この場合、次いで、本発明の方法は好ましくは、グラフト工程のほかに、粒子または凝集体をそれらのガングから放出する工程を有する。
【0068】
第2の工程の間に、金属前駆物質の、グラフトされた有機膜上への付着または中への挿入は、膜および金属材料の前駆物質の化学的性質を考慮して、適したいずれの技術によって実施されてもよい。従って、この工程のために本発明のコンテキスト内で使用できる技術は多数である。それらは、金属材料の前駆物質を、複合材料の表面に置かれた有機膜と単に接触させること、例えば複合材料の導電性領域上にグラフトされた有機膜を、例えば無電解めっきについて先行技術において用いられるようなタイプおよび例えば米国特許第5695810号明細書に記載されているようなタイプの前記前駆物質の適した溶液中にディッピングするといったものから、より洗練された技術、例えば前記複合材料の表面へのスピンコーティングまたは噴霧にまで及ぶ。
【0069】
従って、前述の実施方法のいずれかが付着性、選択的、特に、適合性である金属材料の前駆物質の超薄膜の形成を可能にする。これは、先行技術のすべての方法と異なり、本発明の方法は、金属材料の前駆物質を複合材料の表面の導電性または半導性領域上に、有機膜内に、強制的に局在させ、前記表面のトポロジーに横に適合することを可能にするからである。
【0070】
本発明の方法の第2の工程の間に用いられた媒染溶液は、金属材料の前駆物質を式(I)の化合物の基Bの配位子の官能基に正しく搬送することを可能にする溶液であり、従って、グラフトされた有機膜上および/または中でそれらに錯体を形成させる。従ってこれは、本発明を実施するための金属前駆物質の十分な溶解または分散を可能にする溶液である。これは、金属材料の前駆物質の不溶性塩の場合、この溶液は好ましくは、この前駆物質が有機膜中に挿入されることを可能にするために金属材料の前駆物質を十分に分散させることができなければならないからである。従って、媒染溶液は多くの基準によって選択され、そのうち、以下の基準が挙げられる。すなわち、例えば、方法の実施の間に表面の酸化などの化学相互作用を避けるために、表面の基準と、この溶液が、膜をそれが堆積された表面から除去しないための、有機膜の基準と、溶解させることができるが、また、金属材料に変化させなければならない金属材料前駆物質の基準と、有機膜中でのその形成を可能にしなければならず、特に、その堆積方法、例えばその自己触媒堆積を実施できなければならない、金属材料の基準とが挙げられる。
【0071】
従って、媒染溶液の溶剤は好ましくは、水;アルコール、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);あるいはアセトニトリルなど、イオンに対する十分な可溶化力、従って良好な解離力を有する溶剤から選択される。
【0072】
また、本発明の主題は、上に記載されたような本発明の方法を実施することによって得られ得る、電気導電性または半導性領域と非電気導電性領域との交互からなる少なくとも1つの表面を含む複合材料であり、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記電気導電性または半導性領域が、以下の式(I)
A−(X)n−B (I)
式中、Aは、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xは、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nは0または1に等しい整数であり、
Bは、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の二官能性有機または有機金属化合物からなる、共有結合によってまたは供与結合によってグラフトされた核形成層で覆われ、
前記膜自体が金属材料の層でコーティングされる。
【0073】
優先的に、A、XおよびBは、上に規定された通りである。
【0074】
本発明の方法の実施は、マイクロエレクトロニクスの分野に特に有利である。
【0075】
また、本発明の主題は、マイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線を作製するための方法であり、前記方法が、上に記載されたようなコーティング方法を用いて式(I)の二官能性前駆物質の膜をグラフトする少なくとも1つの工程を有し、前記配線が金属材料から作製されることを特徴とする。従って、好ましくは、本発明による金属配線を作製するための方法は、以下の順に、
a)配線特徴を誘電体基板においてエッチングし、前記特徴が、トレンチおよび/またはビアを前記基板上に、および/または前記基板を通って形成する工程と、
b)導電性バリア層を前記エッチングされた誘電体基板上に堆積し、そのバリア層が、前記基板内への配線金属材料の移動を防ぎ、前記バリア層は、この層の自由面が、それが堆積される前記基板の配線特徴に適合するような厚さを有する工程と、
c)前記エッチングされた基板上に堆積された前記導電性バリア層を金属材料の核形成膜でコーティングする工程と、
d)前記金属材料から作製された前記金属配線を形成するために、前記トレンチおよび/またはビアに前記核形成膜から出発して前記金属材料を充填する工程と、
e)銅/誘電体複合表面を得るために、前記エッチング特徴の突出部分を切削するために十分な時間、例えば化学的機械的研磨によって、表面を均一におよび均質に研磨する工程と、
f)前記複合表面の導電性銅線上にグラフトされてこれらに対して自己配置された有機または無機膜の堆積によって、上に規定されたような本発明の方法を用いて前記複合表面を活性化する工程と、
g)銅拡散バリアとしての金属層の無電解成長のために触媒層または核形成層として前記膜を使用し、前記金属層が、前記複合表面の銅導電性領域に対して自己配置される工程と、を含むことを特徴とする。
【0076】
最後に、本発明の主題は、マイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線要素を作製するためのこのような方法の使用であり、また、このような方法を用いて得られるマイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムおよび集積回路においての配線要素の使用である。
【0077】
また、本発明によるコーティング方法は、MOSトランジスタのソースおよびドレインの選択的なメタライゼーションに適用されてもよい。
【0078】
上のアレンジメントとは別に、本発明はまた、以下の説明から明白になる他のアレンジメントを包含し、例えば、システアミン膜、4−エチル(アンモニウムテトラフルオロボレート)ジアゾニウムテトラフルオロボレート膜またはエチレンジアミン膜をグラフトすることによってCMP後に集積回路の銅線が活性化される実施例、様々なジアゾニウム塩を金属上にグラフトする実施例、本発明の方法によってグラフトすることによって実施された活性化工程を含む方法を用いて自己整列バリアを製造するための実施例、本発明の方法によってグラフト工程を介してパラジウム凝集体を領域選択的グラフトする実施例、また、添付された図1〜18を参照する。
【0079】
しかしながら、もちろん、これらの実施例は本発明の主題の実例として与えられるにすぎず、これらの実施例は決してそれらの限定とならないことは理解されるはずである。
【実施例】
【0080】
実施例1 アミノエタンチオール(システアミン)膜のグラフトによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、式(I)の化合物としてシステアミンを用いて有機層の事前のグラフトによって幅200nm銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0081】
用いられた複合表面は5×1cm2のクーポンであり、これを得るために、エッチングされた集積回路(シリコンウエハ)を切断し、物理蒸着によってTiNバリアを堆積し、銅核形成層を形成した後、電気めっきによって銅を電気化学充填し、次いで、銅トラックと誘電体(SiO2)トラックとの交互からなる表面を製造するために、誘電体の突起が除去されるまで化学的機械的研磨を実施した。
【0082】
表面は、洗浄溶液を用いて洗浄し(Sclean)、その後に表面をグラフト溶液で処理し(Sgraft)、次いで金属前駆物質としてパラジウムイオンを含有する触媒溶液で処理した(Scata)。
【0083】
使用された溶液の組成および工程の各々のプロトコルを以下の表IIおよびIIIにまとめる。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
このように処理された表面をトレンチの方向に垂直に切断し、次いで走査型電子顕微鏡法(SEM)によってエッジで検査した。
【0087】
ここに添付された図1および2は、洗浄前、すなわちCMP後の表面の、それぞれ、斜視(×50000の倍率)およびエッジでの(×100000の倍率)図を示し、多数の不純物を示す。図3および4は、上に示されたプロトコルを用いて洗浄(溶液Sclean)後の同じ倍率での同じ表面を示す。図5および6は、グラフトによって活性化し(Sgraft有り)、次いでパラジウム溶液で媒染した(Scata)後に得られた結果を(同じ倍率で)を示す。
【0088】
銅線の間に配置された誘電体トラック上に凝集体の堆積がないので、非常に高い選択性で、銅トラックに垂直なパラジウム凝集体の自発的な形成が観察される。
【0089】
図7(×80000の倍率)は、無電解方法を用いて金属めっきするために金属イオンの溶液で処理した後の、図5および6において得られた表面の縁図を示す。
【0090】
銅線に垂直な約30nmの局在化されためっきが観察され、これらのめっきの間の短絡を生じることなくそれらを選択的にキャップすることを可能にする。
実施例2 式(I)の化合物として4−エチル−(アンモニウムテトラフルオロボレート)−ジアゾニウムテトラフルオロボレート(DZ−NH3+)のグラフトによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、ジアゾニウム塩(DZ−NH3+)を用いて有機層を事前にグラフトすることによって幅200nmの銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0091】
試料および洗浄溶液(Sclean)および触媒溶液(Scata)は、実施例1に上に記載されたものと同じであった。グラフト溶液(Sgraft)は、100mlのアセトニトリルに溶かした64.6mgのDZ−NH3+からなった。
【0092】
銅/SiO2複合表面を、実施例1に上に記載されたのと同じプロトコルを用いて洗浄し、次いで15分間、グラフト溶液に浸漬し、次いで0.1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液ですすぎ、次に、実施例1の場合と同様に触媒溶液によって媒染した。
【0093】
SEM試験は(図示せず)、上の実施例1の場合と同様に、銅線に垂直なパラジウム凝集体の高度に選択的な形成を示した。
実施例3 式(I)の化合物としてエチレンジアミン(EDA)をグラフトすることによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、EDAを用いて有機層を事前にグラフトすることによって幅200nmの銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0094】
この手順は上の実施例2の手順とすべての点において同じであったが、今度は、100mlの脱イオン水に溶かした90gのエチレンジアミンからなるグラフト溶液を用いた。
【0095】
SEM試験は(図示せず)、上の実施例1および2の場合と同様、銅線に垂直なパラジウム凝集体の高度に選択的な形成を示した。
実施例4 金属上への様々なジアゾニウム塩のグラフト
この実施例を用いて、銅表面への様々なジアゾニウム塩の自発的なグラフトを示す。
【0096】
この実施例において用いられたジアゾニウム塩は以下の通りである。
「ジアゾNH3+:(DZ−NH3+)」:4−(2−アミノエチル)−ベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート二塩(disalt)
「ジアゾニトリル:(DZ−CN)」:4−シアノベンゼン−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾサリチル酸:(DZ−SAL)」: 4−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾ無水物:(DZ−ANH)」:1,3−ジオキソ−1H,3H−ベンゾ(デ)イソクロメン−5−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾNO2/COOH:(DZ−NCOOH)」:3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩;および
「ジアゾCOOH(DZ−COOH)」: 4−カルボキシベンゼン−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
これらの塩を用いて以下の表IVに記載されたグラフト溶液Sgraft01〜Sgraft11を製造した。
【0097】
【表4】
【0098】
用いられた試料は、5×1cm2のシリコンクーポンであり、これを得るために、物理蒸着によって形成された約500nmのSiO2層、15nmのTiN層、約50nmの銅核形成層、次いで電気めっきによって得られた厚い(約1.5ミクロン)銅めっきで覆われた平らなシリコンウエハ(すなわちエッチング特徴をもたない)から切断した。次に、CMP処理後に銅トラックと同じ組成を有する平らな、構造のない銅表面を提供するために、ウエハを厚い銅の厚さの半分でCMP研磨を行なうことによって研磨した(半研磨されたウエハと呼ばれる)。
【0099】
このように作製されたクーポンを30分間、上に示されたSgraft01〜Sgraft15溶液中に浸漬した。30分後に、グラフトされた有機膜の形成が観察され、これらは、行なわれたすすぎ操作に対して完全に耐性であった。このように処理された表面を赤外線反射吸収分光法(IRRAS)によって分析すると、明らかに、以下の表Vに示されるように、前駆物質ジアゾニウム塩が有する官能基に固有の吸収バンドを示す有機膜の形成を示す。
【0100】
【表5】
【0101】
次に、試験は、IRRASにおいて良いマーカーであるジアゾ無水物(Sgraft03)で続けられた。このジアゾ化合物に関する結果だけがここに示されるが、同様な結果は、上の表IVに記載されたジアゾ化合物で得られた。
【0102】
これらの結果を図8にプロットし、グラフト溶液中のクーポンの浸漬時間の関数としてグラフトの変化を示し、2、10、30および60分の様々な浸漬時間後の、グラフトされたジアゾ層のIRRASスペクトルを示す。この図において、上の曲線は2分の浸漬時間に相当し、次いで下に続く曲線は、この順に、10、30および60分の浸漬時間に相当する。
【0103】
ジアゾ膜の特徴的吸収バンドは、グラフト溶液と接触する時間が増えるにつれてより強くなることを見ることができるが、これは、同時に、その厚さはほとんど変化しないことが他で観察されるので、膜の高密度化に帰することができる。
【0104】
最後に、添付された図9は、アセトニトリルに溶かした2×10−3モル/lのジアゾ無水物を含有するグラフト溶液中に2つの半研磨された銅表面を室温において30分間浸漬し、次いでその一方を1時間、アセトニトリルの超音波浴内で処理して(上の曲線)得られた2つのジアゾ無水物層のIRRASスペクトルを示す。
【0105】
得られた結果は、特徴的なジアゾピークの強度の低減があるがそれらは消失しないことを示す。1時間の超音波処理の後でも、ジアゾ膜はまだ完全に検出可能であり、本発明の方法による複合材料の金属表面上の化学グラフトの強度を示す。
実施例5 グラフト活性化工程を用いる自己整列バリアの製造:電気試験
この実施例を用いて、自己整列バリアの製造の間、複合表面の活性化において本発明の方法によるグラフトによって提供された性能の改良を示す。
【0106】
これを実施するために、米国特許第5695810号明細書に記載されているように、金属合金の無電解めっきの形の自己整列バリアをコバルト塩ベースの無電解溶液を用いて形成した。
【0107】
この溶液を用いて、パラジウム凝集体の存在によって触媒された無電解成長によって、銅拡散バリアとして金属を堆積した。一方で洗浄(クエン酸による)のための溶液およびプロトコル、他方でパラジウム活性化のための溶液およびプロトコルは、上の実施例1に記載されたものである。
【0108】
用いられた基板は5×1cm2のクーポンであり、これを得るために、前の実施例の場合と同様、物理蒸着によって形成されたSiO2層(誘電体)、TiN層、銅核形成層と、電気めっきによって得られた厚い銅層とを含み、次いで、誘電体線が露出されるまでCMP工程によって処理された、エッチングされたシリコンウエハを切断した。従って、出発表面は、銅と誘電体線との交互からなる複合表面であった。
【0109】
この実施例のために、特定の特徴が選択された。これらは添付された図10の平面図に示され、「くし/コイル」タイプのエッチング特徴であり、これらは、得られためっきの電気的性能を試験するために理想的である。
【0110】
具体的には、図10に示されたトラックは、金属バリアの高度に選択的なめっきを上に製造することが望ましい銅トラックである。処理が実施されると、電位差がかかる時にくしとコイルとの間に流れる電流を測定することによって「漏れ電流」の測定が行なわれた。めっきが極度に選択的である場合、くしとコイルとの間に短絡がなく、測定された漏れ電流は、無被覆銅トラックの間に出発時に測定された漏れ電流に等しいかまたは近い。最もわずかな短絡においても、高い「漏れ電流」が検出され、銅線上のめっきが選択的でなかったことを示す。この試験は、コイルに沿う単一の短絡点が高い漏れ電流を生じるために十分であるとき、さらにより強力である。従って、適切な結果を得るためにめっき方法が強固であることが必要である。
【0111】
ここで、構造は、コイルの全長が12mmと70mmであるような構造である。各クーポン試料は、くしとコイルとの間の間隔がそのつど異なっているいくつかの構造を有した。これは、1つおよび同じ試料上で、構造のサイズを減少させて試験すること、および最も微細な構造のためのキャッピング技術の利点を示すことを可能にする。
【0112】
対応する結果を添付された図11および12においてプロットし、漏れ電流(アンペア単位)がエッチング寸法、すなわちμm単位のくしとコイルとの間の距離の関数として表される。
【0113】
図11は、洗浄、パラジウム活性化および無電解めっき後の、先行技術の通常の方法を用いて処理された、従って本発明の一部を形成しない試料、すなわち、銅/SiO2複合出発基板およびCu/SiO2複合基板について得られた漏れ電流を示す。それは、得られた漏れ電流がより微細な構造(特に0.2μm構造)で、より高いことを示す。
【0114】
この結果は、0.2μm構造が130nm技術において直面する構造である時にますます厄介であるが、90、65または45nm技術において直面する構造はもっと攻撃的である。
【0115】
図12は、パラジウム活性化を強めるためにグラフト工程が最初に挿入される時に本発明の方法で得られた結果を示す。次に、以下の順序を活性化のために全体に用いた、すなわち、支持体の洗浄、上の実施例1に記載されたプロトコルを用いるシステアミンのグラフト、パラジウム活性化+無電解めっき。得られた漏れ電流は、式(I)の二官能性前駆物質をグラフトする工程を有さない、先行技術の通常の方法で上に得られた漏れ電流より有意に低いことを見ることができる。同じパラジウム活性化プロトコルが両方の場合において用いられたことに留意することが重要である。
【0116】
銅線のキャッピングが以下の順序によって、すなわち、上の実施例1に規定されたプロトコルにおけるようなシステアミンのグラフト、パラジウム活性化、および無電解めっきによって実施される場合、測定された漏れ電流は、洗浄工程が前記順序の先に行なわれる時と同様に良い(すなわち同様に低い)ことに留意することはさらに興味深い。従って、これは、パラジウムによる媒染工程の前に表面の性質を「均す(evening cut)」ことができる、複合表面の金属領域に対するグラフト前駆物質の非常に高い親和性を示す。
【0117】
図13、14および15は50000倍の倍率のSEM顕微鏡写真であり、それぞれ、本発明の一部を形成しない通常のプロトコルによる(グラフトなし)、グラフトの前に洗浄してまたはせずに、本発明によって、すなわち式(I)の二官能性前駆物質としてシステアミンをグラフトする工程を有する、および上の実施例1において規定されたプロトコルによって、0.16μmのエッチング特徴上に得られためっきのモルフォロジーを示す。第1に、もちろん選択性は本発明の方法、すなわちグラフト工程を有する方法がすぐれており(図13および14を比較せよ)、グラフト工程の前に洗浄してまたはせずに同じモルフォロジーが得られる(図14および15を比較せよ)ことを見ることができる。
【0118】
非常に有利には、ライン抵抗はグラフト工程によって検出可能に変えられない(結果は示されない)ことも見ることができ、これは、グラフト活性化の結果として、工業的な見地から有望な方法を意味する。
実施例6 グラフト工程によるパラジウム凝集体の領域選択的グラフト
この実施例を用いて、パラジウム活性化工程の間に得られた凝集体の密度およびサイズを制御することにおいてグラフトが可能にする制御を示す。
【0119】
洗浄工程と、システアミングラフト工程と、パラジウム媒染工程とを含む順序が上の実施例1において用いられたものと同一のCu/SiO2複合表面上で実施された。用いられた溶液およびプロトコルは、上の実施例1に記載されたものと同じであった。グラフト溶液中のシステアミンの濃度だけを調節した。3つのグラフト溶液を製造した。
【0120】
‐SgraftF:実施例1のグラフト溶液の濃度の2分の1に等しいシステアミン濃度を有する、すなわち100mlのエタノール中に56.8gのアミノエタンチオール−/98%HCI
‐SgraftM:実施例1の濃度に等しい濃度を有する、すなわち100mlのエタノール中に113.6gのアミノエタンチオール/98%のHCl
‐SgraftH:実施例1の濃度の2倍の濃度、すなわち100mlのエタノール中に227.2gのアミノエタンチオール/98%のHCl
グラフトの後、実施例1のパラジウム溶液と同じパラジウム溶液を用いて媒染を実施した。同じ媒染溶液および同じ媒染プロトコルをこの実施例のすべてのプレートにおいて用いた。
【0121】
図16は、グラフト溶液SgraftFを用いるグラフト工程によって得られた結果の×50000の倍率のSEM写真を示す。
【0122】
図17は、グラフト溶液SgraftMを用いて得られた結果を示し、図18は、グラフト溶液SgraftHを用いて得られた結果を示す。
【0123】
同じパラジウム媒染溶液およびプロトコルによって、有機浴中のグラフト前駆物質の濃度が凝集体の密度およびサイズを調節することを可能にすることを見ることができ、実際、溶液SgraftHは、溶液SgraftFよりも密度の高いめっきをそれ自体生じる、溶液SgraftMよりも多量のパラジウムめっきを提供する。
【0124】
また、これは、グラフトは、生じた凝集体の密度が何であっても同じであるので、得られた選択性の質に主な役割を果たすという考えを強める。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、エッチングされたシリコンウエハを切断することによって得られ、CMP後、洗浄前の、銅および誘電体線の交互を含む、5×1cm2のクーポンの表面の50000倍の倍率の走査型電子顕微鏡法によって得られた斜視図を示す。
【図2】図2は、100000の倍率の、図1に示されたクーポンのエッジによる図を示す。
【図3】図3は、洗浄溶液で洗浄した後の、図1のクーポンの50000倍の倍率の斜視図を示す。
【図4】図4は、洗浄溶液で洗浄した後の、図2のクーポンの100000倍の倍率の縁図(edge view)を示す。
【図5】図5は、システアミン膜をグラフトし、パラジウム溶液で媒染することによって表面を活性化した後の図3のクーポンの50000倍の倍率の斜視図を示す。
【図6】図6は、システアミン膜をグラフトし、パラジウム溶液で媒染することによって表面を活性化した後の図4のクーポンの100000倍の倍率の縁図を示す。
【図7】図7は、無電解方法を用いて金属層の堆積を可能にする溶液で処理した後の図3のクーポンの80000倍の倍率の縁図を示す。
【図8】図8は、シリコンクーポンの赤外線反射吸収スペクトル(IRRAS)(cm−1単位の波数の関数としてのピーク強度)を示し、ジアゾ無水物グラフト溶液に2、10、30および60分浸漬した後のジアゾ無水物膜のグラフトの変化を示す。この図において、上部の曲線は、2分の浸漬時間に相当し、次いで下へこの順で続く他の曲線は、10、30および60分の浸漬時間に相当する。
【図9】図9は、30分間室温において2つの半研磨された銅表面を、アセトニトリル中に2×10−3モル/lのジアゾ無水物を含有するグラフト溶液中に浸漬することによって得られた、1時間アセトニトリルの超音波浴に浸漬する前と後の2つのジアゾ無水物層のIRRASスペクトルを示す(下の曲線は浸漬前、上の曲線は浸漬後)。
【図10】図10は、銅および誘電体線の交互を含む集積回路の「くし/コイル」特徴を示す。
【図11】図11は、有機または有機金属膜をグラフトする工程を必要としない通常の方法を使用する、図13の回路による回路上のエッチング寸法、すなわちμm単位で表された「くし/コイル」距離の関数としてのアンペア単位で表された漏れ電流を示す。
【図12】図12は、本発明による方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を使用する、図13の回路による回路上のエッチング寸法、すなわちμm単位で表された「くし/コイル」距離の関数としてのアンペア単位で表された漏れ電流を示す。
【図13】図13は、先行技術の通常の方法、すなわち式(I)の化合物をグラフトする工程を有さない方法によって処理した後の0.16μmのエッチングされた銅特徴を有するシリコンクーポンの50000倍の倍率の斜視SEM図である。
【図14】図14は、本発明の方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有し、また、CMP後に、クエン酸溶液を用いる洗浄工程を有する方法を用いて処理した後の、0.16μmのエッチングされた銅特徴を有するシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図15】図15は、本発明の方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有し、また、CMP後に、いかなる洗浄工程も有さない方法を用いて処理した後の、0.16μmのエッチングされた銅特徴を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図16】図16は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に56.8gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図17】図17は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に113.6gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図18】図18は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に227.2gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合表面の特定の領域を導電性膜で選択的にコーティングするための方法、マイクロ電子機器の配線を作製するための方法、および集積回路を作製するためのプロセスおよび方法、特に、金属配線の回路網の形成、また、マイクロシステムおよびコネクタを作製するためのプロセスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下において、先行技術はマイクロエレクトロニクスの分野に意図的に制限されているが、これが選択的な制御されたコーティングを得る際の技術的困難の激化を示すからであり、より迅速な加工およびますます微細になるエッチングの観点から、特に、ダマシンおよびデュアルダマシン方法において化学的機械的研磨(CMP)の後に得られた銅トラック上の自己整列バリアの製造の需要が大きくなっている。従って、当業者は、これらの問題をマイクロシステムまたはコネクタなどの他の適用に容易に置き換えることができ、問題は同じであるが単に異なったスケールになるだけである。
【0003】
集積回路は、シリコンウエハの表面の上に不連続な半導体デバイスを形成することによって作製される。次いで、金属配線の回路網をこれらのデバイス上に形成し、それらの活性要素間の接点を形成し、所望の回路を得るために必要とされる配線をそれらの間に製造する。配線のシステムはいくつかのレベルからなる。各レベルは金属線によって形成され、これらの線は、「配線孔」または「ビア」と呼ばれる接点によって一緒に接続される。
【0004】
配線回路の応答時間は定数RCを特徴とし、それは、金属レベルの抵抗Rに、線を隔てる誘電体の性質によって主に決定される、定数Cによって表されるそれらの容量結合を乗じた値に相当する。
【0005】
従って、メタライゼーションの観点から、配線の応答時間は線の抵抗を低減することによって低減される。銅が最近の方法に導入され、より抵抗性が大きくエレクトロマイグレーション耐性がより小さいアルミニウムに取って代わったのはこの理由のためである。しかしながら、銅の導入はいくつかの困難性を生じる。
【0006】
誘電体を予め堆積させ、次いで、銅の充填および化学的機械的研磨の前にエッチングするダマシンタイプの構成を使用することが必要である。マイクロエレクトロニクス産業の要求条件を満たすために、高いARまたはアスペクト比(その全体としてのトレンチおよびビアのデュアルダマシン構造について約4/1のAR)を有する非常に微細な幾何学的形状(0.1μm未満のトレンチおよびビア寸法)を有効に充填できることを必要とする。
【0007】
銅は活性成分に有害であるので、誘電体を通してシリコンに銅が拡散するのを防ぐことも必要である。これを実施するために、一体の境界面、すなわち銅と誘電体との間の良好な接着力をさらに提供する、有効なバリアを用いることが必要である。
【0008】
ダマシン方法において、メタライゼーションは3つの主工程で実施される。
工程1:PVD(物理蒸着)またはCVD(化学蒸着)による薄い銅拡散バリア層の堆積
工程2:次の堆積のために核形成層としても役立つ、薄い銅タイ層の堆積
工程3:銅を電気めっきし、その間、基板は、金属がその塩の溶液から上に堆積されるカソードとして作用する。
【0009】
銅が堆積されると、過剰な銅がCMPによって除去される。そのとき、得られた表面は、銅と誘電体との交互バンドを含む複合表面の形態であり、銅バンドの各々は非常に微細な半導体バンドに隣接し、銅を充填する前にわずかのバリア層をトレンチに導入し、研磨する間に薄く切り取った。これらの銅および誘電体バンドが形成された後、次いでそれらは通常、SiCまたはSiCNタイプの均一な層で封入され、全複合表面を被覆し、銅拡散バリアとして役立つ。
【0010】
これらのコーティングは絶縁性であるが、それらは比較的高い誘電率を有し、それは銅線間の容量結合を増加させる。さらに、最近の研究は、銅線とこの絶縁性バリアとの間の境界面が多層の弱い場所であり、そこからカタストロフ的不良が回路の動作中に生じる(エレクトロマイグレーション、亀裂の開始、等々)ことを示している。(L.ピーターズ、セミコンダクター・インターナショナル(L.Peters,Semiconductor International)、2002、次のアドレスにおいてインターネット上で照会可能:
http:/www.reed−electronics.com/semiconductor/article/CA224702?text−capping&stt=00l&)
銅線の素子分離を改良するためにおよび65nm未満の技術の配線の信頼性を増加させるために、1つの解決は、銅上に選択的に堆積された、金属タイプのバリアの使用にある。銅線を「ボックス」に完全に密閉し、それらがもうそこから出てこれないようにするために、これは、銅拡散バリアをトレンチの第4の面に堆積することを実際に必要とする。この封入バリアが銅に高付着性である場合、銅/封入バリア境界面においての銅の移動性が大幅に低減され、従って、銅線に流された電流は、低下せずに高くなり、エレクトロマイグレーション耐性は増加した。これを実施するため、封入バリアは、近接した銅線間の漏れ電流を避けるために、下にある銅と自己整列されなければならない。この選択的な堆積のために予想される方法は、タングステンの選択的な化学蒸着(CVD)および金属合金による選択的な無電解めっきである。従って、(i)概して、金属は誘電体よりも銅に付着性であると考えられ、(ii)前述の選択的な技術を金属または合金について実施することができるので、金属材料が好ましい。
【0011】
無電解めっきは、金属塩を金属に還元し、別の金属の表面に触媒する還元反応を必要とする。外部電流または電圧源を介在させずに金属を堆積させる金属塩溶液は、メタライゼーション溶液または無電解溶液と呼ばれる。
【0012】
バリア性質を示すことができる金属堆積物は、場合によりリンまたはホウ素などの特定の付加的な元素を有する、タングステン、コバルト、ニッケルまたはそれらの合金および混合物などの耐熱金属ベースの金属堆積物である。特に、CoWP、CoWBおよびNiMoP堆積物が現在使用され、これらにすべて共通に言えるのは、それらが、それぞれバリア材料のために必要な特にコバルト塩、タングステン塩、ニッケル塩、モリブデン塩等と還元剤も、例えばジメチルアミノボラン(DMAB)を含有する無電解溶液から得られるということである。これらの反応は概して、遷移金属によって触媒される(それらは特に自己触媒的である)。このような溶液は例えば米国特許第5695810号明細書に記載されている。
【0013】
従って、理論上、金属線の銅がこの触媒作用を提供することができ、そして、堆積が銅線の表面にだけ起こると想像することができる。しかしながら、銅はこれらの条件下で堆積物の十分な成長を可能にするために十分に触媒として作用しないことが実際に見出されている。
【0014】
この不十分さを改善するために、すぐれた触媒性質を有する他の遷移金属の凝集体をこれらのトラック上に選択的に−付着させることによって、銅トラックを活性化することが可能である。これは、概して金属を堆積するために良い触媒である、例えばパラジウム、白金、コバルト、ニッケルまたはモリブデンについての場合である。
【0015】
そのPd(II)/Pd0対の標準電位がCu(II)/Cu0対の標準電位より大きいとすると、これらの遷移金属のうち、パラジウムが特別な位置を占める。金属銅の存在下で、Pd(II)イオンは自発的に還元され、銅(それ自体、表面がわずかに酸化されている)上に金属パラジウムの堆積を生じるという結果になる。従って、パラジウムおよび銅の標準電位のこの性質は、銅トラック上にパラジウムの自発的な堆積−原則として選択的な堆積−をもたらす。この性質こそが「パラジウム活性化」バリアとよばれる自己整列バリアを作るためのプロセスをもたらし、それは、パラジウム凝集体を銅線上に形成する工程と、その後の、金属バリア層の局部的に触媒された成長工程とを含む。これらのプロセスにおいて、均一な層の形ではなく、銅線上に分配された凝集体の形のパラジウムを有することが好ましいが、その理由は特に挙げると以下の通りである。
(i)これはパラジウム/無電解溶液の接触領域を増加させることができ、従って速度論をより有効に局部的に増加させることができる。
(ii)これは銅と金属バリア層の境界面に存在するパラジウムの量を最後には最小にすることができる(実際、パラジウムが銅中に容易に拡散すると考えられ、その電気導電性質の低下の原因である場合がある)。
【0016】
しかしながら、パラジウムによる銅トラックの活性化にいくつかの問題が観察される限りにおいて、この技術も完全に満足のいくものではない。すなわち、
1)銅上のPd(II)イオンの自発還元の間、形成されたパラジウム堆積物は導電性である。従って、この堆積はそれだけで続き、マッシュルーム効果によって、凝集体ではなくよりバルキーな堆積物を生じる。これは、Pd(II)溶液との接触時間が重要なパラメータであり、この時間が長すぎる場合、これは必ず、近接した線の堆積物を接合して短絡を生じるのに十分である各線上の堆積物をもたらすことを意味する。これは、方法の不安定性の原因である。
【0017】
2)これらの極端にいたる前でも、パラジウムイオンは、めったに完全に特異的でない吸着を示し、その上、銅線の間に存在する誘電体の性質に依存している。銅上ではなく誘電体上のこの非特異的吸着はそのままで(銅線の間の)誘電体上の金属パラジウムの形成を伴わないが、この非特異的吸着が銅線に近い領域に起こる場合、この事例になる。さらに、次いで選択的なバリア堆積物を生じさせるために用いられる無電解溶液は還元剤を含有し、これは誘電体の表面に吸着されたパラジウムイオンをパラジウム凝集体に変換することができ、それ自体、誤った場所で金属バリアの成長を触媒し、短絡を生じる。これらのすべての場合において、上記の項目1)と同じ理由のために、横の成長が起き、線の間の短絡を生じる場合がある。この効果は、SiO2またはSiOCタイプの非孔質誘電体に既に存在しても、誘電体が低誘電率(K)の多孔性材料である時にさらにより顕著であり、そこには吸着だけでなく挿入もある場合があることが注目されるべきである。
【0018】
3)概して、自己整列バリアの形成より前に行なわれるCMP工程の関数としてパラジウム活性化のかなり強い依存性が観察される。このCMP工程は必ずしも平坦化を可能にせず、誘電体線に対して銅線を明瞭に示すという事実を別として、多数のCMP残留物が銅トラック上に吸着されたままであり、それらの反応性、特にそれらのレドックス反応性が現れるのを妨げる層でそれらを被覆する。特定の場合において、パラジウム溶液による活性化が全くなく、銅線が妨害されるのが観察されることがある。
【0019】
4)パラジウム凝集体が銅トラック上に堆積されると、このように活性化された表面は適した無電解溶液と接触させられる。そのとき、これらのパラジウム凝集体は銅トラックの表面から離れ、前記溶液中に移り、(速度定数に関与する基本衝突頻度因子の理由のために反応および触媒作用は常に、表面でよりも体積内でより急速であるので)そこでそれらは増大した活力でそれらの触媒の役割を果たすことがわかる。体積中の金属凝集体の形成反応は概して自己触媒的であるので、この脱着の直接の結果は無電解溶液のほとんど完全な消費であり、これは概して非常に急速またはさらに瞬間的である。
【0020】
従って、パラジウムはその標準レドックス電位の値のために多数の利点を有するにしても、これは、特に、非常に微細な構造(0.2μm以下の構造、すなわち130nm以下の集積回路の技術世代と共存できるエッチングサイズ)上のパラジウム凝集体の堆積の実際の選択性を可能にするには不十分である。
【0021】
パラジウム凝集体以外のタイプの凝集体への変更は、事実上、同じタイプの欠点を生じ、それらのM(x)/M0対(x=IまたはIIおよびM=Co、Ni、Mo、Wなど)の標準レドックス電位が概してCu(II)/Cu0対の標準レドックス電位より小さいので、銅によるそれらの還元だけによってそれらを堆積することはアプリオリ(a priori)に可能でないという事実がそれに加わる。次いでそれは、直接、これらのイオンを含有する浴中の還元剤(例えばDMABタイプ)の存在、および銅の触媒効果を増強する様々な活性剤の存在に左右される。従って、これらのイオンの還元は、原則として、無電解浴の全体にわたって起こることがあるが、それは、特に銅線に垂直な点において触媒されている。実際、これにより、活性化の手段として(概して酸処理による)銅トラック洗浄工程、その後の、銅の触媒効果を増強するための十分な添加剤を含有する無電解溶液と接触する工程があるだけである。これらの選択肢の欠点は、無電解溶液の、特に、銅の触媒効果を増強するための薬剤も含有しなければならない無電解溶液の本質的な不安定性である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
これらのすべての要求条件に応じ、前述の仕様を満たし、さらに、特に金属配線、集積回路または他のマイクロシステムの製造のための、先行技術の多くの前述の問題を解決する方法を提供することを本願発明者は目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に必要とされる表面は、複合表面である、すなわち、少なくとも、それらが作製される材料の仕事関数によって異なる領域のタイリングからなる、特定の特徴を有する。材料の仕事関数はエレクトロンボルトで表され、それから電子を抽出するために真空中で表面に供給されるエネルギーに相当する。より詳しくは、以下に記載されるように、本発明は、その領域の少なくとも1つの部分が電気導電性である複合表面に適用される。
【0024】
従って、本発明の主題は、第一に、電気導電性または半導性金属領域、特に銅領域、および非電気導電性領域からなる複合材料をコーティングするための方法であり、該方法が、前記電気導電性または半導性金属領域に垂直な金属層の無電解成長の少なくとも1つの工程を含み、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記無電解成長工程の前に、前記複合材料を以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aが、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xが、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nが0または1に等しい整数であり、
Bが、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の有機または有機金属二官能性前駆物質と接触させることによって有機または有機金属膜を前記電気導電性または半導性金属領域上に、およびその上にのみ共有結合または供与結合によってグラフトすることによって核形成層を形成する少なくとも1つの第1の工程をさらに有することを特徴とする。この官能基は遊離であるか(そのとき、二官能性前駆物質は純粋に有機系であり、遊離またはブランク前駆物質と称される)、またはすでにイオン、特に金属イオン、または金属凝集体と錯体を形成することができる(そのとき、二官能性前駆物質は有機金属前駆物質であり、これは帯電または媒染前駆物質と呼ばれる)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
好ましくは、このように形成された膜は、この膜の自由面が、それを上に配置する複合表面の局部トポロジーに適合するような厚さを有する。概して、この膜の厚さは1〜100nmであり、より好ましくは1〜10nm、さらにより好ましくは1〜5nmである。
【0026】
本発明の方法において、金属層の選択的な成長のために役立つ層は、従って、有機または有機金属膜を含む。
【0027】
膜が有機金属であるとき、それは、それ自体が有機金属である式(I)の前駆物質(すなわち、Bが、金属イオンと錯体を形成する少なくとも1つの配位子の官能基を有する基である)を用いて直接に得られるか、または有機前駆物質によって得られ、有機膜を生じ、次いで、前記膜上にまたは中に挿入してグラフトされた有機膜の媒染を可能にする金属前駆物質の溶液で処理する。従って、この有機金属膜は、混合された有機部分と金属材料とを含み、使用された化学物質の性質に応じて、それらの間に化学的相互作用または結合がある場合もない場合もある。
【0028】
従って、本発明の第1の特定の実施態様によって、該方法はさらに、電気導電性または半導性金属領域上に形成された有機または有機金属膜が金属材料の少なくとも1つの前駆物質またはその堆積のための触媒の少なくとも1つの前駆物質のいずれかを含む媒染溶液と接触させられる、媒染の第2の工程を有し、前記第2の工程が有機または有機金属膜を形成する第1の工程と同時にまたはその後に実施される。
【0029】
本発明の第2の特定の実施態様によって、該方法はさらに、金属層の無電解成長の工程が実施される前に、式(I)の前記有機金属化合物および/または金属材料の前記前駆物質もしくはその堆積のための触媒の前駆物質をそれぞれ金属材料として、またはその堆積のための触媒として還元することにある第3の工程を有する。この場合、無電解溶液からの金属層の成長の、それぞれ、核形成のためにまたは触媒のためのいずれかに役立つ、それぞれ、膜または凝集体の領域のいずれかからなる層を有機膜と共に構成するために、金属材料が、コーティングされる前記複合表面の導電性または半導性領域のトポロジーに適合して、および前記有機膜上にまたは中に形成する。
【0030】
以後、核形成または触媒層は、上の金属層の構築においてのその実際の役割に関するさらなる詳細がなければ、「核形成層」と呼ばれる。以下の表Iは、グラフトされた層の性質に応じて、本発明の方法による核形成層の製造を行なう様々な方法をまとめる。
【0031】
【表1】
【0032】
これは、有機二官能性前駆物質を用いる3つの実施方法および有機金属二官能性前駆物質を用いる4つの実施方法を示す。
【0033】
従って、上の表Iは、核形成層を1つ以上の工程で形成することができることを示す。その作製のために必要とされる工程の数がいくつでも、これらの工程は、工程の少なくとも1つがグラフト反応、すなわち、上記の式(I)の有機または有機金属前駆物質を必要とする反応を有し、共有結合または供与結合によって複合表面の導電性または半導性領域に付着された有機金属層の形成をもたらすとき、一括して「グラフト活性化」工程の名で呼ばれる。
【0034】
本願発明者が第一に見出したことは、特に、有機膜を得るために表面から開始された自発表面化学および/または化学反応は、それらが化学グラフト反応を伴うとき、すなわち、これらの有機または有機金属膜の前駆物質との表面反応の付加物が複合表面の導電性または半導性領域上の化学的に吸着された種、すなわち、それと供与結合または共有結合を形成する種をもたらすとき、複合表面の幾何学トポロジーを維持することを可能にするので、有機膜を使用することにより、核形成層の、従って上の金属層の堆積の選択性をかなり改良することである。概して、本発明者は、このタイプの反応で得られた選択性が、先行技術の公知の技術を用いて、すなわち無電解堆積によって直接に得られた選択性より大きいことを観察した。さらに、上に記載された式(I)の化合物を共有結合または供与結合によってそれに結合することができない限りにおいて、本発明の方法によって用いられた前記複合材料の前記非電気導電性領域の非ポリマー性質は、電気導電性または半導性領域に垂直にだけ有機膜の選択的な付着を可能にする。
【0035】
第二に、本発明者はまた、特に、これらの膜が金属材料の前駆物質または金属材料それ自体と供与結合または共有結合を形成することができる反応性官能基を有するとき、1つ以上の金属材料の前駆物質を受け入れ、および/または支持することができ、これらの前駆物質をこれらの有機膜中でまたはそれらの表面の上で前記金属材料に変換することができるこのような膜を構成する多くの有機材料の性質を観察した。
【0036】
最後に、本発明者は、本発明による方法が、電気導電性または半導性領域に垂直な有機膜の存在のために、媒染工程を実施するために用いられる金属イオン、特にパラジウムイオン、溶液の濃度をかなり低減することができることを見出した。この有機膜の存在は、特に、10−4Mより小さい濃度の金属イオン溶液、すなわち、先行技術の方法において通常使用される溶液よりずっと濃度が小さい溶液を使用することを可能にする。
【0037】
次いで、本発明者は、これらの有機膜と金属材料のこれらの前駆物質との使用を組合せて表面に非常に小さなスケールにまで出発複合表面のトポロジーに適合する核形成膜を形成することによって、これらの観察を的確に用い、従って上述の先行技術の多くの問題を解決した。
【0038】
本発明を実施する1つの好ましい方法によって、上記の式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の基Aの反応性官能基は、以下の官能基などの孤立電子対を有する官能基から選択される:アミン、ピリジン、チオール、エステル、カルボン酸、ヒドロキサム酸、チオ尿素、ニトリル、サリチル酸、アミノ酸およびトリアジン;開裂可能な官能基から得られる基、例えばジスルフィド、ジアゾニウム(−N2+)、スルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム、アルキルヨージドまたはアリールヨージド官能基、カルボカチオン、カルバニオン(および特に、アルキン、有機銅酸塩および有機マグネシウム、有機亜鉛または有機カドミウム化合物によって得られたもの)。
【0039】
上に規定されたように、n=1であるとき、Xは、基AとBに共有結合したスペーサーアームであり、分子の安定性に寄与することができる。Xは好ましくは、芳香環の環または共役または非共役の組合せ、飽和または不飽和の、分岐または直鎖脂肪族鎖の他、全分子の安定性に寄与するために場合により電子吸引基または電子供与基で置換された、これらの2つのタイプの官能基のアセンブリから選択される。
【0040】
スペーサーアームXの例として、特に、直鎖または分岐アルカン鎖(−(CH2)m−、1<m<25)、例えば、メチレン(−CH2−)基、フェニレン基(−C6H4−)の他、ニトロ、シアノまたはヒドロキシル基などの電子吸引基で置換された、または例えば、メチル基などの好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基などの電子供与基で置換されたフェニレン基、それ自体が1つ以上の電子供与基または電子吸引基で場合により置換される、ナフチレンまたはアントリレン基などのいくつかの縮合芳香環を有する基、およびこれらの基の組合せからなる構造もまた挙げられる。
【0041】
式−(CH2)mのスペーサーアームX(mは、10を超えない整数である)が、本発明によって特に好ましい。
【0042】
式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の部分Bに関して上に規定された配位子の官能基には、特に、アミン、アミド、ピリジン、ニトリル、アミノ酸、トリアジン、、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルトフェナンスロリン化合物、エーテル、カルボニル、カルボキシルおよびカルボキシレート、エステル、ヒドロキサム酸、サリチル酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、クラウンエーテル、アザ−クラウン化合物、チオ−クラウン化合物、クリプタンド、セプルクレート、ポダンド、ポルフィリン、カリックスアレーン、ナフトール、イソナフトール、シデロフォア、抗生物質、エチレングリコールおよびシクロデキストリン、これらの官能基をベースとした置換および/または官能化分子構造、および1つ以上の金属イオンまたは金属凝集体とのそれらの金属錯体などが挙げられる。後者の場合、基Bの配位子の官能基がすでに金属前駆物質で「帯電」されているとき、式(I)の前駆物質は、有機金属前駆物質であるといわれる。
【0043】
特定の場合、官能基XがAまたはB基と1つの同じ基に「縮合」されてもよい。これは例えば、金属にグラフトされ得る基を有するピリジンを考える場合であり、この基は例えば、ピリジンの窒素のパラ位にある。この場合、反応性官能基はこのグラフト可能な基であり、ピリジン環は、Xと配位子の官能基との両方の場所を取り、Xがピリジン環の炭素部分であり、配位子の官能基がピリジン環の窒素であり、それは金属に対して錯化機能を有することが知られている。また、例えばピリミジンはこのカテゴリーの範囲内である。
【0044】
上記の式(I)の化合物には、最も具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0045】
場合によりスペーサーアームXを介して、上に規定したような配位子の官能基によってジアゾニウム基のパラ位で官能化されたアリールジアゾニウム塩、例えば以下の化合物:BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−NH3−,BF4、上記の式(I)を参照して、A=BF4−,+N2−Φ−;X=−(CH2)m−、mが1〜25の整数であり、B=−NH3+,BF4−;Φが芳香環であり、または遊離チオールの形の以下の化合物(BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−SH)またはジスルフィドの形の以下の化合物([BF4−,+N2−Φ−(CH2)m−S−]2)があり、A=BF4−、+N2−Φ−、X=−(CH2)m−およびB=−SHであり、mが前と同じ意味である。
【0046】
前述の配位子の官能基によって官能化されたアルキルまたはアリールヨージド、例えば以下の化合物:遊離チオの形(I−CH2−CH2−SH)またはジスルフィドの形([I−CH2−CH2−S−]2)のいずれかの、ヨードエタンチオール、A=I−CH2−、X=−CH2−およびB=−SH。
【0047】
ビピリジン、例えばビピリジン:Φ−Φ、Φはピリジン環であり、A=Φ、B=ΦおよびXが2つのピリジン環の間の結合にされる(n=0)、または例えばジピリジニルエタン:Φ−CH2−CH2−Φ、A=Φ、X=−CH2−CH2−およびB=Φ
アミノチオール、すなわち、脂肪族および/または芳香族鎖によって隔てられているチオール官能基とアミン官能基とを有する化合物、例えばシステアミン(H2N−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−およびB=−NH2)、アミノプロパンチオ(H2N−CH2−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−CH2−およびB=−NH2)またはアミノヘキサンチオール(H2N−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−SH、A=HS−、X=−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−およびB=−NH2)、および硫黄含有アミノ酸、例えばメチオニン。
【0048】
ジアミン、例えばエチレンジアミン(H2N−CH2−CH2−NH2、A=H2N−、X=−CH2−CH2−およびB=−NH2)またはヘキサメチレンジアミン(H2N−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−NH2、A=H2N−、X=−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−CH2−およびB−NH2);およびポリエチレンイミン(PEI)。
【0049】
アリールジアゾニウム塩には、4−エチルアンモニウムフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−(2−アミノエチル)ベンゼンジアゾニウムジテトラフルオロボレート、4−シアノベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシベンゼンジアゾニウムおよび4−チオエタノールフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0050】
以下の式(I−1)〜(I−14)の化合物は、例えば、アリールジアゾニウム塩から得られたグラフト付加物の例であり、それらの開裂は炭素/金属共有結合の形成をもたらす。
【0051】
【化1】
【0052】
【0053】
複合材料の導電性領域(M)へのグラフトが実施されたとき、および場合により、金属媒染が実施されたとき、上の構造(I−1)〜(I−14)が示されている。パラジウムまたは銅イオンは単なる例として示されている。実際、このようにグラフトされた分子によって保持されている配位子の官能基は所与のイオンについてめったに選択的でないが、概して、多くの金属イオン、特にすべての遷移金属イオンに親和性を有することが観察されている。
【0054】
これが、本発明がパラジウム活性化工程を有するコーティングプロセスをかなり改良することができる理由の1つであるが、また、パラジウムによる以外の活性化への直接の置き換えを可能にし(実施方法I、II、VIおよびVIIについて上の表Iに示されたように、媒染がグラフト後に実施されてもよいが、パラジウム前駆物質以外の金属前駆物質、特に、コバルトまたはニッケル前駆物質、または無電解溶液中にその後に存在するいずれかの他の元素の前駆物質を用いる)、もしくはさらに、パラジウムを使用しない(上の表Iの実施方法IIIの場合のように、媒染は実施されず、無電解溶液が、直接、グラフトされた層上で用いられる)。
【0055】
上に記載された式(I)の分子は、特に、官能基Aの性質に応じて、複合表面の導電性領域上に様々な方法で堆積されてもよい。多くの場合、前述の基は、絶縁領域を除いて、複合表面の導電性または半導性領域上で自発的におよび優先的に反応することができ、グラフトされた有機層の形成をもたらすことが観察され、その場合、(例えばディッピング、スピンコーティングまたは噴霧による)式(I)の分子を含有する溶液と複合表面との単純な接触が適していることがある。そのとき、複合表面の導電性または半導性領域上への有機膜の化学グラフトがある。
【0056】
本発明のいくつかの実施方法を想定することができる(上の表Iを参照のこと)。
1)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、グラフト活性化工程と金属塩(例えばパラジウム塩)を用いる媒染工程とを含む。この場合、複合材料の表面は最初に、上記の手順の1つによって、式(I)の前駆物質を含有する溶液で処理される。この工程は、式(I)、すなわち上に規定されたA−(X)n−Bの二官能性前駆物質の膜を形成させ、これが複合材料(composition material)の導電性領域上にグラフトされ、金属前駆物質を受容するために少なくとも1つの配位子の官能基を有する基Bを提供する。次に、ディッピング、スピンコーティングまたは噴霧によって、複合材料の導電性領域に付着される式(I)の化合物の基Bの配位子の官能基によって錯体を形成することができる金属イオンM(n+)を含有する溶液と該表面を接触させる。この処理が錯化を可能にし、有機膜を、媒染浴の金属イオンを含有する有機金属膜に変換する。M(n+)/M0対のレドックス電位が複合材料の導電性領域の表面のレドックス対の1つのレドックス電位より大きい場合(例えば、自己整列バリアの形成のための絶縁性トラックによって隔てられた銅トラックの場合、Cu(2+)/Cu0対のレドックス電位より大きい)、錯化の後、自発的にM(n+)イオンの、金属M0への還元が起こり、導電性領域上に、式(I)のグラフトされた二官能性前駆物質と式(I)の二官能性前駆物質によって、グラフトされた金属原子および/または金属凝集体とを含む有機金属膜の自発形成をもたらす。これは例えば、パラジウムイオンによる媒染が銅領域上で行なわれる場合、この事例である。このように形成された原子または凝集体M0は概して他のイオンの還元のための触媒であるので、それらは、M(n+)イオンの還元の継続を促し、その結果、グラフトがない時にパラジウムが直接に銅上にある場合に行なわれる方法に似た方法で、単一原子ではなく、導電性領域上にグラフトされた凝集体が急速に得られる。M(n+1)イオンの溶液との接触時間を用いて、得られた凝集体のサイズを調節する。しかしながら、M(n+)イオンの、M0原子または凝集体への自発還元は、この還元がこの領域の酸化の後に、および導電性領域とM(n+)イオンとの間の電子の移動によって起こるので、表面の上にグラフトされた基Bの配位子の官能基によって一度捕捉されたM(n+)イオンが、導電性領域の表面から離れすぎていない場合にだけ起こることが指摘されなければならない。具体的には、従って、スペーサーアームXが長すぎず、典型的に約5ナノメートル未満の長さを有するグラフト前駆物質を使用することが好ましい(それによって、鎖が直鎖であり基Bの配位子の官能基を表面から非常に離れさせる自己集成層の製造を避けるために、式(I)の化合物(Xが−(CH2)m−を表し、mが10を超えない整数を表す)が好ましい)。また、導電性領域と、錯体を形成したM(n+)イオンとの間の電子の移動は、導電性スペーサーアームX(不飽和基)を用いておよび/または低レベルのグラフトを促進することによって増進されうる。これは、低レベルのグラフトについては、グラフトされた有機フラグメントが表面に垂直であることはあまりありそうになく、むしろ、スペーサーアームが、これを可能にする十分な回転自由度を有する場合、それらは傾いているかまたはさらに表面の上にほとんど平らであることがことが知られているからである。このような場合、M(n+)イオンは、スペーサーアームの厳密な長さよりも表面に近いことがある。導電性領域上の有機前駆物質のグラフトのレベルがカバレージの最大の度合いよりも小さいとき、導電性領域の一部だけが、グラフトされた有機膜で覆われ、導電性領域の一部はまだ「無被覆(bare)」であり、その上に、例えば、パラジウム凝集体が、グラフトがない時のように自発的に堆積されることがある。しかしながら、この種の状態において先行技術に観察された問題は、グラフトされていない導電性領域の表面領域を最小にするために、有機膜のグラフトのレベルを調節することによって、または、グラフトおよび媒染の後、表面を十分に強く洗浄して、グラフトされていないパラジウム凝集体を分離するがグラフトされた凝集体を分離しないことによって、最小にすることができる。本発明者は実際、2つの金属の結晶構造が同等である場合にだけ、すなわち、2つのタイプの材料の幾何学パラメーターが同じである場合に、銅表面上の金属凝集体の無電解堆積が金属/金属結合をもたらすことを見出した。これは一般的に言えることではなく、導電性領域上に自発的に形成された凝集体間の金属/金属結合を形成できることは非常にまれであり、その結果、実際、金属/金属結合のエンタルピーからの利点はない。しかしながら、本発明の方法を用いてグラフトされた有機膜の場合、1つのグラフト点は、全凝集体のための結合点を形成するために十分であり、これは初期に錯体を形成したM(n+)イオンから形成されており、その結果、グラフト反応から得られる改良された接着力からそのつど利点がある。また、この観察から、有機膜のグラフトのレベルこそが凝集体のグラフト密度の上限として作用しうることが結論できる。従って、これは、自己整列バリアの場合に銅/バリアキャップ境界面に存在するパラジウムの量を制限するために付加的な自由度を提供する。最後に、本発明の式(I)の有機または有機金属前駆物質は、複合表面の導電性または半導性領域上でグラフトを実施するために選択され、すなわち、基Aの反応性化学官能基はこれらの領域に対して高い親和性を有する。本出願を説明する実施例に示されるように、この親和性は、導電性領域が予め洗浄にされていない時でもグラフトが起こりうるような親和性であることがわかった。従って、グラフトは、導電性領域が処理前に多くの不純物と一緒に維持する結合よりも強い、部分Aと導電性領域との間の結合をもたらすことが観察される。従って、グラフト活性化処理は、導電性領域上に、それらがグラフト活性化の前の工程において受けた処理が何であっても、これらの領域の表面状態をシフトおよび「リセット」するグラフトを得ることを可能にする。グラフト活性化は導電性領域に分子を存在させることが公知であるが、これらの分子が何であるかは公知であり、また、それらの分子はこれらの領域の選択的なメタライゼーションを促進することも公知である。最後に、グラフトはまた、半導性領域上で行なわれるので、本発明の方法は、同様にして、充填およびCMPの前に堆積されたバリア層の痕跡である半導体(TiN、TiNSi、TaN、TaN/Ta、WN等々)の狭いバンドを活性化することを可能にする。これは、自己整列バリア/ライン境界面の接着を銅バンドに垂直にだけでなくエッジに対しても制御することを可能にする。銅拡散バリア「ボックス」の画像に戻ると、本発明は、バリアの「キャッピング」を提供することができる。それらのレドックス特性のために、この性質を先行技術の方法によって得ることができず、まさしくその原理は導電性表面に垂直にだけ機能することができる。この性質は、以下のすべての実施方法に共通し、そのすべてが共通に、グラフト可能な基Aを使用することが留意されなければならない。
【0057】
2)複合表面の導電性領域の活性化は、3つの工程、すなわち、グラフトによって実施される活性化工程、金属塩(例えばコバルト塩)によって実施される媒染工程、およびこのように導電性領域に捕捉された塩が還元される還元工程を含む。実施方法(1)について付加された余分の工程は概して、M(n+)/M0対のレドックス電位が複合表面の導電性領域に対応するレドックス電位より小さい時に必要である。グラフトされた膜中の錯体を形成したM(n+)イオンの還元は自発的に起こらず、外部還元剤によって起こされなければならない。これは、そのレドックス電位がM(n+)/M0対のレドックス電位より小さい、R(n+)/R0対に対応する化合物Rとして規定されたいずれの還元剤を用いて実施されてもよい。このような還元剤には、第二銅イオン(フェーリング溶液)の還元を可能にするグルコース、および大部分の遷移金属イオンの還元を可能にするジメチルアミノボラン(DMAB)が特に挙げられる。この実施方法の使用は、パラジウム以外のタイプの金属凝集体の形成、特に、その後に用いられる無電解溶液中に既に存在する金属(Co、Niなど)の凝集体の形成を可能にする利点を有する。さらに、グラフトされた膜上で実施される錯体形成工程と還元によって凝集体を形成する工程とは同時ではなく、この実施方法は、形成された凝集体のサイズをより良く制御することを可能にする(使用された還元溶液は、例えば、凝集体の成長を促すためのM(n+)イオンを含有しなくてもよい)。しかしながら、この実施方法は、余分の工程を必要とする欠点がある。この特徴とは別に、実施方法(1)について記載された利点はなお有効である。
【0058】
3)複合表面の導電性領域の活性化は、単一工程、すなわち、有機層のグラフトによって実施される活性化工程を含む。無電解溶液は、この溶液が金属イオンと例えばDMABタイプの還元剤との両方を含有するという事実に依拠して、このように処理された複合表面上で直接に使用される。
【0059】
この実施方法によって、錯化、還元および無電解成長が単一工程で行なわれ、それによって工程の数を実質的に制限することを可能にする。グラフトによる活性化のために、上述の利点、および特に活性化の前の工程の不感受性、グラフトによって提供された高度の選択性、および無電解めっき層の成長のためにグラフトによって提供された付加的な自由度が適用される。
【0060】
4)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、有機金属前駆物質を用いてグラフトによって実施される活性化工程と、これらの前駆物質によって保持される金属部位が還元される還元工程とを含む。この実施方法は、金属核を導電性領域に結合するために直接にグラフトの選択性から利点を得ることを可能にし、従って、例えば媒染工程の間に生じることがある選択性の低下を避けることを可能にする。この実施方法は、導電性領域の相補的な領域が多孔性材料からなる場合、例えば、導線を隔てる誘電体が多孔性タイプの低誘電率の誘電体である時の無電解バリアの活性化に特に適している。
【0061】
5)複合表面の導電性領域の活性化は、単一工程、すなわち、金属層の無電解成長のための直接触媒を構成する有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程を含む。これらは例えば、基Bの配位子の官能基が、急速なM(n+)/M0レドックス対に対応するM(n+)イオンで「帯電される」式(I)の前駆物質であってもよく、その電位は、導電性領域に介在することがある(例えば、金属銅表面に面する酢酸パラジウム)の電位よりも大きく、またはそれらは、酸化数ゼロの金属凝集体で直接に帯電される。
【0062】
6)複合表面の導電性領域の活性化は、2つの工程、すなわち、有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程と、金属塩(例えばパラジウム塩)によって実施される媒染工程とを含む。このケースは、導電性領域によって自発的に還元されないイオンで帯電された前駆物質のグラフトを必要とし、これらのイオンの置換は、導電性領域上でそれ自体、自発的に還元されるイオン(例えば銅導電性領域上のパラジウムイオン)によって、媒染を必要とする第2の工程の間に行なわれる。この実施方法は、非常に似ている仕事関数(W)を有する導電性領域(S1)または半導性領域(S2)(WS1<WS2)のタイリングからなる複合表面上に複合金属堆積物を生じることが望ましい時に特に有用である。この目的のために、M1(n+)金属イオンで帯電された有機金属グラフト前駆物質を使用することが可能であり、均一なグラフトされた膜を得るためにグラフトを実施することが可能である(これは、特に、複合表面が概して加熱されるかまたは照射された場合、完全な選択性が存在するには近すぎる仕事関数を有する領域で可能である)。次に、複合表面をM2(n+)イオンを含有する媒染浴によって処理し、その結果、それらはS2上で自発的に還元されるがS1上ではそうでなく、これは、WS1<WS2であるので可能である。次に、金属M2がS2上に堆積されるがS1上には堆積されない。次いで、M1(n+)イオンを含有する媒染浴によってさらに処理することにより、M2(n+)イオンを領域S1上で再置換することができる。最後に、還元浴による処理によって、金属M1をS1上におよび金属M2をS2上に堆積することができる。
7)複合表面の導電性領域の活性化は、3つの工程、すなわち、有機金属前駆物質のグラフトによって実施される活性化工程、導電性領域上で自発的に還元されない、金属塩によって実施される媒染工程、および媒染イオンが還元される還元工程を含む。
従って、本発明は、化学グラフト反応を必要とする活性化工程により金属めっきの選択性を改良することによって、先行技術から公知の方法の欠点に対処することを見ることができる。
【0063】
先行技術の技術によって自己整列核形成膜を得る難しさが言及され、基板の複合表面の導電性または半導性領域に選択的に付着性である有機膜を製造できることに基づいて解決され、その膜は、金属材料の前駆物質を含有することができ、その横の解像度は、例えばトラックの表面タイリングの幾何学形状を変更しないように十分に良好である。
【0064】
本発明に必要とされる表面は、本発明の様々な可能な適用と同じぐらい多い。これらは、三次元物体の導電性または半導性表面であってもよく、もしくは完全にまたは部分的に半導性の表面であってもよい。用語「三次元表面」は、得ることが望ましいコーティングの厚さに対してトポロジカルな不規則さが寸法上わずかでない表面を意味するものと理解される。それは例えば、マイクロシステムまたは集積回路の製造のために用いられる基板の表面であってもよく、例えばシリコンウエハおよび当該技術分野の当業者に公知の他の材料の表面であってもよい。本発明によって、基板は例えば、集積回路の製造のための層間層(inter−level layer)であってもよく、特に、厚い銅電気めっき層を堆積する工程およびダマシンまたはデュアルダマシンプロセスにおいて銅配線の製造時に前記トレンチおよび/またはビアを充填する工程の後の化学的機械的研磨(CMP)によって得られた表面であってもよい。後者の場合、複合材料(composition material)は、ほとんど平面であり且つ誘電体トラックによって隔てられた幅Lの銅トラックの交互からなる表面を含む。最も狭い幅は第1の金属レベルの幅である(レベルM1)。マイクロ電子機器の製造方法を確立する指針は、幅Lを90nm技術において約120nm、65nm技術において85nm、45nm技術において50nmおよび32nm技術において40nmに設定する。本発明によって、従って、この幅Lは好ましくは約150〜30nmである。従って、本発明は、ますます狭くなる誘電体トラックによって隔てられたますます狭くなる銅線をキャップするために無電解金属めっきの高い選択性を得ることができる必要性を考えると、この数十年間の技術進展にいっそう関与することは明らかである。
従って本発明の方法は、これらのスケールで、誘電体トラックの上に広がるコーティングを形成して銅トラックの望ましくない短絡を生じる方法を用いる先行技術の上述の多くの問題を解決する。また、本発明の方法は、今まで決して実現されなかった金属配線の寸法の可能性を提供する。
【0065】
核形成層のために役立ち、本発明の方法の第2の工程の間に媒染溶液中で使用される金属材料の前駆物質は好ましくは、銅、亜鉛、金、スズ、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛およびビスマスイオン、ランタニドおよびアクチニドのイオン、およびそれらの混合物などの金属イオンから選択される。これは、特定のケースにおいて、金属イオンの混合物を使用することが有利である場合もあるからである。これは例えば、マイクロシステム、例えば集積回路のための配線の製造のケースであり、そこにおいて金属前駆物質は有利には、銅、パラジウムまたは白金イオンから成ってもよい。
【0066】
この場合、この核形成層を製造するために用いられた媒染溶液中の金属イオン濃度は好ましくは10−4Mを超えず、さらにより好ましくは10−5Mを超えない。
【0067】
本発明によって、有機金属前駆物質は金属イオンではなく直接、金属粒子または凝集体を含有してもよい。金属粒子または凝集体が、ポリマーミセルまたはナノスフィア、フラーレン、カーボン・ナノチューブおよびシクロデキストリンからなる群から選択された保護「ガング(gangue)」に封入されるとき、このような構造が存在し、安定している。この場合、次いで、本発明の方法は好ましくは、グラフト工程のほかに、粒子または凝集体をそれらのガングから放出する工程を有する。
【0068】
第2の工程の間に、金属前駆物質の、グラフトされた有機膜上への付着または中への挿入は、膜および金属材料の前駆物質の化学的性質を考慮して、適したいずれの技術によって実施されてもよい。従って、この工程のために本発明のコンテキスト内で使用できる技術は多数である。それらは、金属材料の前駆物質を、複合材料の表面に置かれた有機膜と単に接触させること、例えば複合材料の導電性領域上にグラフトされた有機膜を、例えば無電解めっきについて先行技術において用いられるようなタイプおよび例えば米国特許第5695810号明細書に記載されているようなタイプの前記前駆物質の適した溶液中にディッピングするといったものから、より洗練された技術、例えば前記複合材料の表面へのスピンコーティングまたは噴霧にまで及ぶ。
【0069】
従って、前述の実施方法のいずれかが付着性、選択的、特に、適合性である金属材料の前駆物質の超薄膜の形成を可能にする。これは、先行技術のすべての方法と異なり、本発明の方法は、金属材料の前駆物質を複合材料の表面の導電性または半導性領域上に、有機膜内に、強制的に局在させ、前記表面のトポロジーに横に適合することを可能にするからである。
【0070】
本発明の方法の第2の工程の間に用いられた媒染溶液は、金属材料の前駆物質を式(I)の化合物の基Bの配位子の官能基に正しく搬送することを可能にする溶液であり、従って、グラフトされた有機膜上および/または中でそれらに錯体を形成させる。従ってこれは、本発明を実施するための金属前駆物質の十分な溶解または分散を可能にする溶液である。これは、金属材料の前駆物質の不溶性塩の場合、この溶液は好ましくは、この前駆物質が有機膜中に挿入されることを可能にするために金属材料の前駆物質を十分に分散させることができなければならないからである。従って、媒染溶液は多くの基準によって選択され、そのうち、以下の基準が挙げられる。すなわち、例えば、方法の実施の間に表面の酸化などの化学相互作用を避けるために、表面の基準と、この溶液が、膜をそれが堆積された表面から除去しないための、有機膜の基準と、溶解させることができるが、また、金属材料に変化させなければならない金属材料前駆物質の基準と、有機膜中でのその形成を可能にしなければならず、特に、その堆積方法、例えばその自己触媒堆積を実施できなければならない、金属材料の基準とが挙げられる。
【0071】
従って、媒染溶液の溶剤は好ましくは、水;アルコール、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);あるいはアセトニトリルなど、イオンに対する十分な可溶化力、従って良好な解離力を有する溶剤から選択される。
【0072】
また、本発明の主題は、上に記載されたような本発明の方法を実施することによって得られ得る、電気導電性または半導性領域と非電気導電性領域との交互からなる少なくとも1つの表面を含む複合材料であり、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記電気導電性または半導性領域が、以下の式(I)
A−(X)n−B (I)
式中、Aは、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xは、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nは0または1に等しい整数であり、
Bは、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の二官能性有機または有機金属化合物からなる、共有結合によってまたは供与結合によってグラフトされた核形成層で覆われ、
前記膜自体が金属材料の層でコーティングされる。
【0073】
優先的に、A、XおよびBは、上に規定された通りである。
【0074】
本発明の方法の実施は、マイクロエレクトロニクスの分野に特に有利である。
【0075】
また、本発明の主題は、マイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線を作製するための方法であり、前記方法が、上に記載されたようなコーティング方法を用いて式(I)の二官能性前駆物質の膜をグラフトする少なくとも1つの工程を有し、前記配線が金属材料から作製されることを特徴とする。従って、好ましくは、本発明による金属配線を作製するための方法は、以下の順に、
a)配線特徴を誘電体基板においてエッチングし、前記特徴が、トレンチおよび/またはビアを前記基板上に、および/または前記基板を通って形成する工程と、
b)導電性バリア層を前記エッチングされた誘電体基板上に堆積し、そのバリア層が、前記基板内への配線金属材料の移動を防ぎ、前記バリア層は、この層の自由面が、それが堆積される前記基板の配線特徴に適合するような厚さを有する工程と、
c)前記エッチングされた基板上に堆積された前記導電性バリア層を金属材料の核形成膜でコーティングする工程と、
d)前記金属材料から作製された前記金属配線を形成するために、前記トレンチおよび/またはビアに前記核形成膜から出発して前記金属材料を充填する工程と、
e)銅/誘電体複合表面を得るために、前記エッチング特徴の突出部分を切削するために十分な時間、例えば化学的機械的研磨によって、表面を均一におよび均質に研磨する工程と、
f)前記複合表面の導電性銅線上にグラフトされてこれらに対して自己配置された有機または無機膜の堆積によって、上に規定されたような本発明の方法を用いて前記複合表面を活性化する工程と、
g)銅拡散バリアとしての金属層の無電解成長のために触媒層または核形成層として前記膜を使用し、前記金属層が、前記複合表面の銅導電性領域に対して自己配置される工程と、を含むことを特徴とする。
【0076】
最後に、本発明の主題は、マイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線要素を作製するためのこのような方法の使用であり、また、このような方法を用いて得られるマイクロエレクトロニクス、電子マイクロシステムおよび集積回路においての配線要素の使用である。
【0077】
また、本発明によるコーティング方法は、MOSトランジスタのソースおよびドレインの選択的なメタライゼーションに適用されてもよい。
【0078】
上のアレンジメントとは別に、本発明はまた、以下の説明から明白になる他のアレンジメントを包含し、例えば、システアミン膜、4−エチル(アンモニウムテトラフルオロボレート)ジアゾニウムテトラフルオロボレート膜またはエチレンジアミン膜をグラフトすることによってCMP後に集積回路の銅線が活性化される実施例、様々なジアゾニウム塩を金属上にグラフトする実施例、本発明の方法によってグラフトすることによって実施された活性化工程を含む方法を用いて自己整列バリアを製造するための実施例、本発明の方法によってグラフト工程を介してパラジウム凝集体を領域選択的グラフトする実施例、また、添付された図1〜18を参照する。
【0079】
しかしながら、もちろん、これらの実施例は本発明の主題の実例として与えられるにすぎず、これらの実施例は決してそれらの限定とならないことは理解されるはずである。
【実施例】
【0080】
実施例1 アミノエタンチオール(システアミン)膜のグラフトによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、式(I)の化合物としてシステアミンを用いて有機層の事前のグラフトによって幅200nm銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0081】
用いられた複合表面は5×1cm2のクーポンであり、これを得るために、エッチングされた集積回路(シリコンウエハ)を切断し、物理蒸着によってTiNバリアを堆積し、銅核形成層を形成した後、電気めっきによって銅を電気化学充填し、次いで、銅トラックと誘電体(SiO2)トラックとの交互からなる表面を製造するために、誘電体の突起が除去されるまで化学的機械的研磨を実施した。
【0082】
表面は、洗浄溶液を用いて洗浄し(Sclean)、その後に表面をグラフト溶液で処理し(Sgraft)、次いで金属前駆物質としてパラジウムイオンを含有する触媒溶液で処理した(Scata)。
【0083】
使用された溶液の組成および工程の各々のプロトコルを以下の表IIおよびIIIにまとめる。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
このように処理された表面をトレンチの方向に垂直に切断し、次いで走査型電子顕微鏡法(SEM)によってエッジで検査した。
【0087】
ここに添付された図1および2は、洗浄前、すなわちCMP後の表面の、それぞれ、斜視(×50000の倍率)およびエッジでの(×100000の倍率)図を示し、多数の不純物を示す。図3および4は、上に示されたプロトコルを用いて洗浄(溶液Sclean)後の同じ倍率での同じ表面を示す。図5および6は、グラフトによって活性化し(Sgraft有り)、次いでパラジウム溶液で媒染した(Scata)後に得られた結果を(同じ倍率で)を示す。
【0088】
銅線の間に配置された誘電体トラック上に凝集体の堆積がないので、非常に高い選択性で、銅トラックに垂直なパラジウム凝集体の自発的な形成が観察される。
【0089】
図7(×80000の倍率)は、無電解方法を用いて金属めっきするために金属イオンの溶液で処理した後の、図5および6において得られた表面の縁図を示す。
【0090】
銅線に垂直な約30nmの局在化されためっきが観察され、これらのめっきの間の短絡を生じることなくそれらを選択的にキャップすることを可能にする。
実施例2 式(I)の化合物として4−エチル−(アンモニウムテトラフルオロボレート)−ジアゾニウムテトラフルオロボレート(DZ−NH3+)のグラフトによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、ジアゾニウム塩(DZ−NH3+)を用いて有機層を事前にグラフトすることによって幅200nmの銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0091】
試料および洗浄溶液(Sclean)および触媒溶液(Scata)は、実施例1に上に記載されたものと同じであった。グラフト溶液(Sgraft)は、100mlのアセトニトリルに溶かした64.6mgのDZ−NH3+からなった。
【0092】
銅/SiO2複合表面を、実施例1に上に記載されたのと同じプロトコルを用いて洗浄し、次いで15分間、グラフト溶液に浸漬し、次いで0.1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液ですすぎ、次に、実施例1の場合と同様に触媒溶液によって媒染した。
【0093】
SEM試験は(図示せず)、上の実施例1の場合と同様に、銅線に垂直なパラジウム凝集体の高度に選択的な形成を示した。
実施例3 式(I)の化合物としてエチレンジアミン(EDA)をグラフトすることによる、CMP後の銅線の活性化
この実施例を用いて、EDAを用いて有機層を事前にグラフトすることによって幅200nmの銅線上に触媒パラジウム凝集体を選択的に形成することを示す。
【0094】
この手順は上の実施例2の手順とすべての点において同じであったが、今度は、100mlの脱イオン水に溶かした90gのエチレンジアミンからなるグラフト溶液を用いた。
【0095】
SEM試験は(図示せず)、上の実施例1および2の場合と同様、銅線に垂直なパラジウム凝集体の高度に選択的な形成を示した。
実施例4 金属上への様々なジアゾニウム塩のグラフト
この実施例を用いて、銅表面への様々なジアゾニウム塩の自発的なグラフトを示す。
【0096】
この実施例において用いられたジアゾニウム塩は以下の通りである。
「ジアゾNH3+:(DZ−NH3+)」:4−(2−アミノエチル)−ベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート二塩(disalt)
「ジアゾニトリル:(DZ−CN)」:4−シアノベンゼン−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾサリチル酸:(DZ−SAL)」: 4−カルボキシ−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾ無水物:(DZ−ANH)」:1,3−ジオキソ−1H,3H−ベンゾ(デ)イソクロメン−5−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
「ジアゾNO2/COOH:(DZ−NCOOH)」:3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩;および
「ジアゾCOOH(DZ−COOH)」: 4−カルボキシベンゼン−ジアゾニウム、テトラフルオロボレート塩
これらの塩を用いて以下の表IVに記載されたグラフト溶液Sgraft01〜Sgraft11を製造した。
【0097】
【表4】
【0098】
用いられた試料は、5×1cm2のシリコンクーポンであり、これを得るために、物理蒸着によって形成された約500nmのSiO2層、15nmのTiN層、約50nmの銅核形成層、次いで電気めっきによって得られた厚い(約1.5ミクロン)銅めっきで覆われた平らなシリコンウエハ(すなわちエッチング特徴をもたない)から切断した。次に、CMP処理後に銅トラックと同じ組成を有する平らな、構造のない銅表面を提供するために、ウエハを厚い銅の厚さの半分でCMP研磨を行なうことによって研磨した(半研磨されたウエハと呼ばれる)。
【0099】
このように作製されたクーポンを30分間、上に示されたSgraft01〜Sgraft15溶液中に浸漬した。30分後に、グラフトされた有機膜の形成が観察され、これらは、行なわれたすすぎ操作に対して完全に耐性であった。このように処理された表面を赤外線反射吸収分光法(IRRAS)によって分析すると、明らかに、以下の表Vに示されるように、前駆物質ジアゾニウム塩が有する官能基に固有の吸収バンドを示す有機膜の形成を示す。
【0100】
【表5】
【0101】
次に、試験は、IRRASにおいて良いマーカーであるジアゾ無水物(Sgraft03)で続けられた。このジアゾ化合物に関する結果だけがここに示されるが、同様な結果は、上の表IVに記載されたジアゾ化合物で得られた。
【0102】
これらの結果を図8にプロットし、グラフト溶液中のクーポンの浸漬時間の関数としてグラフトの変化を示し、2、10、30および60分の様々な浸漬時間後の、グラフトされたジアゾ層のIRRASスペクトルを示す。この図において、上の曲線は2分の浸漬時間に相当し、次いで下に続く曲線は、この順に、10、30および60分の浸漬時間に相当する。
【0103】
ジアゾ膜の特徴的吸収バンドは、グラフト溶液と接触する時間が増えるにつれてより強くなることを見ることができるが、これは、同時に、その厚さはほとんど変化しないことが他で観察されるので、膜の高密度化に帰することができる。
【0104】
最後に、添付された図9は、アセトニトリルに溶かした2×10−3モル/lのジアゾ無水物を含有するグラフト溶液中に2つの半研磨された銅表面を室温において30分間浸漬し、次いでその一方を1時間、アセトニトリルの超音波浴内で処理して(上の曲線)得られた2つのジアゾ無水物層のIRRASスペクトルを示す。
【0105】
得られた結果は、特徴的なジアゾピークの強度の低減があるがそれらは消失しないことを示す。1時間の超音波処理の後でも、ジアゾ膜はまだ完全に検出可能であり、本発明の方法による複合材料の金属表面上の化学グラフトの強度を示す。
実施例5 グラフト活性化工程を用いる自己整列バリアの製造:電気試験
この実施例を用いて、自己整列バリアの製造の間、複合表面の活性化において本発明の方法によるグラフトによって提供された性能の改良を示す。
【0106】
これを実施するために、米国特許第5695810号明細書に記載されているように、金属合金の無電解めっきの形の自己整列バリアをコバルト塩ベースの無電解溶液を用いて形成した。
【0107】
この溶液を用いて、パラジウム凝集体の存在によって触媒された無電解成長によって、銅拡散バリアとして金属を堆積した。一方で洗浄(クエン酸による)のための溶液およびプロトコル、他方でパラジウム活性化のための溶液およびプロトコルは、上の実施例1に記載されたものである。
【0108】
用いられた基板は5×1cm2のクーポンであり、これを得るために、前の実施例の場合と同様、物理蒸着によって形成されたSiO2層(誘電体)、TiN層、銅核形成層と、電気めっきによって得られた厚い銅層とを含み、次いで、誘電体線が露出されるまでCMP工程によって処理された、エッチングされたシリコンウエハを切断した。従って、出発表面は、銅と誘電体線との交互からなる複合表面であった。
【0109】
この実施例のために、特定の特徴が選択された。これらは添付された図10の平面図に示され、「くし/コイル」タイプのエッチング特徴であり、これらは、得られためっきの電気的性能を試験するために理想的である。
【0110】
具体的には、図10に示されたトラックは、金属バリアの高度に選択的なめっきを上に製造することが望ましい銅トラックである。処理が実施されると、電位差がかかる時にくしとコイルとの間に流れる電流を測定することによって「漏れ電流」の測定が行なわれた。めっきが極度に選択的である場合、くしとコイルとの間に短絡がなく、測定された漏れ電流は、無被覆銅トラックの間に出発時に測定された漏れ電流に等しいかまたは近い。最もわずかな短絡においても、高い「漏れ電流」が検出され、銅線上のめっきが選択的でなかったことを示す。この試験は、コイルに沿う単一の短絡点が高い漏れ電流を生じるために十分であるとき、さらにより強力である。従って、適切な結果を得るためにめっき方法が強固であることが必要である。
【0111】
ここで、構造は、コイルの全長が12mmと70mmであるような構造である。各クーポン試料は、くしとコイルとの間の間隔がそのつど異なっているいくつかの構造を有した。これは、1つおよび同じ試料上で、構造のサイズを減少させて試験すること、および最も微細な構造のためのキャッピング技術の利点を示すことを可能にする。
【0112】
対応する結果を添付された図11および12においてプロットし、漏れ電流(アンペア単位)がエッチング寸法、すなわちμm単位のくしとコイルとの間の距離の関数として表される。
【0113】
図11は、洗浄、パラジウム活性化および無電解めっき後の、先行技術の通常の方法を用いて処理された、従って本発明の一部を形成しない試料、すなわち、銅/SiO2複合出発基板およびCu/SiO2複合基板について得られた漏れ電流を示す。それは、得られた漏れ電流がより微細な構造(特に0.2μm構造)で、より高いことを示す。
【0114】
この結果は、0.2μm構造が130nm技術において直面する構造である時にますます厄介であるが、90、65または45nm技術において直面する構造はもっと攻撃的である。
【0115】
図12は、パラジウム活性化を強めるためにグラフト工程が最初に挿入される時に本発明の方法で得られた結果を示す。次に、以下の順序を活性化のために全体に用いた、すなわち、支持体の洗浄、上の実施例1に記載されたプロトコルを用いるシステアミンのグラフト、パラジウム活性化+無電解めっき。得られた漏れ電流は、式(I)の二官能性前駆物質をグラフトする工程を有さない、先行技術の通常の方法で上に得られた漏れ電流より有意に低いことを見ることができる。同じパラジウム活性化プロトコルが両方の場合において用いられたことに留意することが重要である。
【0116】
銅線のキャッピングが以下の順序によって、すなわち、上の実施例1に規定されたプロトコルにおけるようなシステアミンのグラフト、パラジウム活性化、および無電解めっきによって実施される場合、測定された漏れ電流は、洗浄工程が前記順序の先に行なわれる時と同様に良い(すなわち同様に低い)ことに留意することはさらに興味深い。従って、これは、パラジウムによる媒染工程の前に表面の性質を「均す(evening cut)」ことができる、複合表面の金属領域に対するグラフト前駆物質の非常に高い親和性を示す。
【0117】
図13、14および15は50000倍の倍率のSEM顕微鏡写真であり、それぞれ、本発明の一部を形成しない通常のプロトコルによる(グラフトなし)、グラフトの前に洗浄してまたはせずに、本発明によって、すなわち式(I)の二官能性前駆物質としてシステアミンをグラフトする工程を有する、および上の実施例1において規定されたプロトコルによって、0.16μmのエッチング特徴上に得られためっきのモルフォロジーを示す。第1に、もちろん選択性は本発明の方法、すなわちグラフト工程を有する方法がすぐれており(図13および14を比較せよ)、グラフト工程の前に洗浄してまたはせずに同じモルフォロジーが得られる(図14および15を比較せよ)ことを見ることができる。
【0118】
非常に有利には、ライン抵抗はグラフト工程によって検出可能に変えられない(結果は示されない)ことも見ることができ、これは、グラフト活性化の結果として、工業的な見地から有望な方法を意味する。
実施例6 グラフト工程によるパラジウム凝集体の領域選択的グラフト
この実施例を用いて、パラジウム活性化工程の間に得られた凝集体の密度およびサイズを制御することにおいてグラフトが可能にする制御を示す。
【0119】
洗浄工程と、システアミングラフト工程と、パラジウム媒染工程とを含む順序が上の実施例1において用いられたものと同一のCu/SiO2複合表面上で実施された。用いられた溶液およびプロトコルは、上の実施例1に記載されたものと同じであった。グラフト溶液中のシステアミンの濃度だけを調節した。3つのグラフト溶液を製造した。
【0120】
‐SgraftF:実施例1のグラフト溶液の濃度の2分の1に等しいシステアミン濃度を有する、すなわち100mlのエタノール中に56.8gのアミノエタンチオール−/98%HCI
‐SgraftM:実施例1の濃度に等しい濃度を有する、すなわち100mlのエタノール中に113.6gのアミノエタンチオール/98%のHCl
‐SgraftH:実施例1の濃度の2倍の濃度、すなわち100mlのエタノール中に227.2gのアミノエタンチオール/98%のHCl
グラフトの後、実施例1のパラジウム溶液と同じパラジウム溶液を用いて媒染を実施した。同じ媒染溶液および同じ媒染プロトコルをこの実施例のすべてのプレートにおいて用いた。
【0121】
図16は、グラフト溶液SgraftFを用いるグラフト工程によって得られた結果の×50000の倍率のSEM写真を示す。
【0122】
図17は、グラフト溶液SgraftMを用いて得られた結果を示し、図18は、グラフト溶液SgraftHを用いて得られた結果を示す。
【0123】
同じパラジウム媒染溶液およびプロトコルによって、有機浴中のグラフト前駆物質の濃度が凝集体の密度およびサイズを調節することを可能にすることを見ることができ、実際、溶液SgraftHは、溶液SgraftFよりも密度の高いめっきをそれ自体生じる、溶液SgraftMよりも多量のパラジウムめっきを提供する。
【0124】
また、これは、グラフトは、生じた凝集体の密度が何であっても同じであるので、得られた選択性の質に主な役割を果たすという考えを強める。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、エッチングされたシリコンウエハを切断することによって得られ、CMP後、洗浄前の、銅および誘電体線の交互を含む、5×1cm2のクーポンの表面の50000倍の倍率の走査型電子顕微鏡法によって得られた斜視図を示す。
【図2】図2は、100000の倍率の、図1に示されたクーポンのエッジによる図を示す。
【図3】図3は、洗浄溶液で洗浄した後の、図1のクーポンの50000倍の倍率の斜視図を示す。
【図4】図4は、洗浄溶液で洗浄した後の、図2のクーポンの100000倍の倍率の縁図(edge view)を示す。
【図5】図5は、システアミン膜をグラフトし、パラジウム溶液で媒染することによって表面を活性化した後の図3のクーポンの50000倍の倍率の斜視図を示す。
【図6】図6は、システアミン膜をグラフトし、パラジウム溶液で媒染することによって表面を活性化した後の図4のクーポンの100000倍の倍率の縁図を示す。
【図7】図7は、無電解方法を用いて金属層の堆積を可能にする溶液で処理した後の図3のクーポンの80000倍の倍率の縁図を示す。
【図8】図8は、シリコンクーポンの赤外線反射吸収スペクトル(IRRAS)(cm−1単位の波数の関数としてのピーク強度)を示し、ジアゾ無水物グラフト溶液に2、10、30および60分浸漬した後のジアゾ無水物膜のグラフトの変化を示す。この図において、上部の曲線は、2分の浸漬時間に相当し、次いで下へこの順で続く他の曲線は、10、30および60分の浸漬時間に相当する。
【図9】図9は、30分間室温において2つの半研磨された銅表面を、アセトニトリル中に2×10−3モル/lのジアゾ無水物を含有するグラフト溶液中に浸漬することによって得られた、1時間アセトニトリルの超音波浴に浸漬する前と後の2つのジアゾ無水物層のIRRASスペクトルを示す(下の曲線は浸漬前、上の曲線は浸漬後)。
【図10】図10は、銅および誘電体線の交互を含む集積回路の「くし/コイル」特徴を示す。
【図11】図11は、有機または有機金属膜をグラフトする工程を必要としない通常の方法を使用する、図13の回路による回路上のエッチング寸法、すなわちμm単位で表された「くし/コイル」距離の関数としてのアンペア単位で表された漏れ電流を示す。
【図12】図12は、本発明による方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を使用する、図13の回路による回路上のエッチング寸法、すなわちμm単位で表された「くし/コイル」距離の関数としてのアンペア単位で表された漏れ電流を示す。
【図13】図13は、先行技術の通常の方法、すなわち式(I)の化合物をグラフトする工程を有さない方法によって処理した後の0.16μmのエッチングされた銅特徴を有するシリコンクーポンの50000倍の倍率の斜視SEM図である。
【図14】図14は、本発明の方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有し、また、CMP後に、クエン酸溶液を用いる洗浄工程を有する方法を用いて処理した後の、0.16μmのエッチングされた銅特徴を有するシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図15】図15は、本発明の方法、すなわちシステアミン膜をグラフトする工程を有し、また、CMP後に、いかなる洗浄工程も有さない方法を用いて処理した後の、0.16μmのエッチングされた銅特徴を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図16】図16は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に56.8gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図17】図17は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に113.6gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【図18】図18は、本発明の方法、すなわち100mlのエタノール中に227.2gのアミノエタンチオールと98%のHC1とを含有する溶液(システアミン)でシステアミン膜をグラフトする工程を有する方法を用いて処理された、銅および誘電体線の交互を含むシリコンクーポンの50000倍の斜視SEM図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導電性または半導性金属領域、および非電気導電性領域からなる複合材料をコーティングするための方法であって、前記電気導電性または半導性金属領域に垂直な金属層の無電解成長の少なくとも1つの工程を含み、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記無電解成長工程の前に、前記複合材料を以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aは、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xは、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nは0または1に等しい整数であり、
Bは、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の有機または有機金属二官能性前駆物質の溶液と接触させることによって有機または有機金属膜を前記電気導電性または半導性金属領域上に、およびその上にのみ共有結合または供与結合でグラフトすることによって核形成層を形成する少なくとも1つの第1の工程をさらに有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記膜が1〜100nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜が1〜10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気導電性または半導性金属領域上に形成された前記有機または有機金属膜が金属材料の少なくとも1つの前駆物質またはその堆積のための触媒の少なくとも1つの前駆物質のいずれかを含む媒染溶液と接触させられる、媒染の第2の工程を有し、前記第2の工程が前記有機または有機金属膜を形成する第1の工程と同時にまたはその後に実施されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層の無電解成長の工程が実施される前に、式(I)の前記有機金属化合物および/または金属材料の前記前駆物質もしくはその堆積のための触媒の前駆物質を金属材料として、またはその堆積のための触媒としてそれぞれ還元することにある第3の工程をさらに有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の基Aの反応性官能基が、孤立電子対を有する官能基、開裂可能な官能基から得られる基、カルボカチオンおよびカルボアニオンから選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記開裂可能な官能基がジスルフィド、ジアゾニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびアンモニウム官能基およびアルキルまたはアリールヨージドから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基Aの前記反応性官能基が、アミン、ピリジン、チオール、エステル、カルボン酸、ヒドロキサム酸、チオ尿素、ニトリル、サリチル酸、アミノ酸およびトリアジン官能基から選択された孤立電子対を有する官能基であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
Xが、直鎖または分岐アルカン鎖;フェニレン基(−C6H4−);電子吸引または電子供与基で置換されたフェニレン基;それ自体が場合により1つ以上の電子供与または電子吸引基で置換される、いくつかの縮合芳香環を有する基;およびこれらの基の組合せからなる構造から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の二官能性前駆物質のB部分に関して規定された配位子の官能基が、アミン、アミド、ピリジン、ニトリル、アミノ酸、トリアジン、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルトフェナンスロリン化合物、エーテル、カルボニル、カルボキシルおよびカルボキシレート、エステル、ヒドロキサム酸、サリチル酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、クラウンエーテル、アザ−クラウン化合物、チオ−クラウン化合物、クリプタンド、セプルクレート、ポダンド、ポルフィリン、カリックスアレーン、ナフトール、イソナフトール、シデロフォア、抗生物質、エチレングリコールおよびシクロデキストリン、これらの官能基をベースとした置換および/または官能化分子構造、および1つ以上の金属イオンまたは金属凝集体とのそれらの金属錯体から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の化合物が、配位子の官能基によって場合によりスペーサーアームXを介してジアゾニウム基のパラ位で官能化されたアリールジアゾニウム塩;配位子の官能基によって官能化されたアルキルまたはアリールヨージド;ビピリジン;アミノチオール;ジアミンおよびポリエチレンイミンから選択され、これらの化合物において、前記配位子の官能基が請求項1または10のいずれかに記載されている通りであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
配位子の官能基によって前記ジアゾニウム基のパラ位で官能化された前記アリールジアゾニウム塩が、4−エチルアンモニウムフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−(2−アミノエチル)ベンゼンジアゾニウムジテトラフルオロボレート、4−シアノベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシ(caroxy)−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートおよび4−チオエタノールフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノチオールが、システアミン、アミノプロパンチオール、アミノヘキサンチオールおよび硫黄含有アミノ酸から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアミンがエチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記複合材料が、浸漬によって、スピンコーティングによってまたは吹付けによって二官能性前駆物質の溶液と接触されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複合材料の表面が、誘電体トラックから隔てられた幅Lを有する銅トラックの交互からなることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記幅Lが150〜30nmであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
核形成層のために役立ち、前記第2の工程の間に前記媒染溶液中で使用される前記金属材料の前記前駆物質が、銅、亜鉛、金、スズ、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛およびビスマスイオン、ランタニドおよびアクチニドのイオン、およびそれらの混合物から選択された金属イオンであることを特徴とする、請求項4〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記媒染溶液中の金属イオンの濃度が10−4M未満であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法を実施することによって得ることができる、電気導電性または半導性領域と非電気導電性領域との交互からなる少なくとも1つの表面を含む複合材料であって、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記電気導電性または半導性領域が、以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aが、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xが、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nが0または1に等しい整数であり、
Bが、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の二官能性有機または有機金属化合物からなる共有結合によってまたは供与結合でグラフトされた核形成層で覆われ、
前記膜自体が金属材料の層でコーティングされることを特徴とする、複合材料。
【請求項21】
マイクロ電子機器、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線を作製するための方法であって、請求項1〜19のいずれか一項に記載のコーティング方法を用いて式(I)の二官能性前駆物質の膜をグラフトする少なくとも1つの工程を有し、前記配線が金属材料から作製されることを特徴とする、方法。
【請求項22】
以下の順に、
a)配線特徴を誘電体基板においてエッチングし、前記特徴が、トレンチおよび/またはビア、および場合により突起を前記基板上に、および/または前記基板を通って形成する工程と、
b)導電性バリア層を前記エッチングされた誘電体基板上に堆積し、そのバリア層が、前記基板内への配線金属材料の移動を防ぎ、前記バリア層は、この層の自由面が、それが堆積される前記基板の配線特徴に適合するような厚さを有する工程と、
c)前記エッチングされた基板上に堆積された前記導電性バリア層を金属材料の核形成膜でコーティングする工程と、
d) 前記金属材料から作製された前記金属配線を形成するために、前記トレンチおよび/またはビアに前記核形成膜から出発して前記金属材料を充填する工程と、
e)銅/誘電体複合表面を得るために、前記エッチング特徴の突出部分を切削するために十分な時間、表面を均一におよび均質に研磨する工程と、
f)前記複合表面の導電性銅線上にグラフトされてこれらに対して自己配置された有機または無機膜の堆積によって、請求項1〜19のいずれか一項に記載された方法を用いて前記複合表面を活性化する工程と、
g)銅拡散バリアとしての金属層の無電解成長のために触媒層または核形成層として前記膜を使用し、前記金属層が、前記複合表面の銅導電性領域に対して自己配置される工程と、を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
マイクロ電子機器、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線要素(interconnect elements)を作製するための請求項21または22に記載の方法の使用。
【請求項24】
請求項21または22に記載の方法を実施することによって得られ得る、マイクロ電子機器、電子マイクロシステムおよび集積回路の配線要素。
【請求項1】
電気導電性または半導性金属領域、および非電気導電性領域からなる複合材料をコーティングするための方法であって、前記電気導電性または半導性金属領域に垂直な金属層の無電解成長の少なくとも1つの工程を含み、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記無電解成長工程の前に、前記複合材料を以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aは、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xは、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nは0または1に等しい整数であり、
Bは、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の有機または有機金属二官能性前駆物質の溶液と接触させることによって有機または有機金属膜を前記電気導電性または半導性金属領域上に、およびその上にのみ共有結合または供与結合でグラフトすることによって核形成層を形成する少なくとも1つの第1の工程をさらに有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記膜が1〜100nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜が1〜10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気導電性または半導性金属領域上に形成された前記有機または有機金属膜が金属材料の少なくとも1つの前駆物質またはその堆積のための触媒の少なくとも1つの前駆物質のいずれかを含む媒染溶液と接触させられる、媒染の第2の工程を有し、前記第2の工程が前記有機または有機金属膜を形成する第1の工程と同時にまたはその後に実施されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層の無電解成長の工程が実施される前に、式(I)の前記有機金属化合物および/または金属材料の前記前駆物質もしくはその堆積のための触媒の前駆物質を金属材料として、またはその堆積のための触媒としてそれぞれ還元することにある第3の工程をさらに有することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の二官能性有機または有機金属前駆物質の基Aの反応性官能基が、孤立電子対を有する官能基、開裂可能な官能基から得られる基、カルボカチオンおよびカルボアニオンから選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記開裂可能な官能基がジスルフィド、ジアゾニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびアンモニウム官能基およびアルキルまたはアリールヨージドから選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基Aの前記反応性官能基が、アミン、ピリジン、チオール、エステル、カルボン酸、ヒドロキサム酸、チオ尿素、ニトリル、サリチル酸、アミノ酸およびトリアジン官能基から選択された孤立電子対を有する官能基であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
Xが、直鎖または分岐アルカン鎖;フェニレン基(−C6H4−);電子吸引または電子供与基で置換されたフェニレン基;それ自体が場合により1つ以上の電子供与または電子吸引基で置換される、いくつかの縮合芳香環を有する基;およびこれらの基の組合せからなる構造から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の二官能性前駆物質のB部分に関して規定された配位子の官能基が、アミン、アミド、ピリジン、ニトリル、アミノ酸、トリアジン、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルトフェナンスロリン化合物、エーテル、カルボニル、カルボキシルおよびカルボキシレート、エステル、ヒドロキサム酸、サリチル酸、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、チオ尿素、クラウンエーテル、アザ−クラウン化合物、チオ−クラウン化合物、クリプタンド、セプルクレート、ポダンド、ポルフィリン、カリックスアレーン、ナフトール、イソナフトール、シデロフォア、抗生物質、エチレングリコールおよびシクロデキストリン、これらの官能基をベースとした置換および/または官能化分子構造、および1つ以上の金属イオンまたは金属凝集体とのそれらの金属錯体から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の化合物が、配位子の官能基によって場合によりスペーサーアームXを介してジアゾニウム基のパラ位で官能化されたアリールジアゾニウム塩;配位子の官能基によって官能化されたアルキルまたはアリールヨージド;ビピリジン;アミノチオール;ジアミンおよびポリエチレンイミンから選択され、これらの化合物において、前記配位子の官能基が請求項1または10のいずれかに記載されている通りであることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
配位子の官能基によって前記ジアゾニウム基のパラ位で官能化された前記アリールジアゾニウム塩が、4−エチルアンモニウムフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−(2−アミノエチル)ベンゼンジアゾニウムジテトラフルオロボレート、4−シアノベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシ(caroxy)−3−ヒドロキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、3−カルボキシ−4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレート、4−カルボキシベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボレートおよび4−チオエタノールフェニルジアゾニウムテトラフルオロボレートから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミノチオールが、システアミン、アミノプロパンチオール、アミノヘキサンチオールおよび硫黄含有アミノ酸から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアミンがエチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記複合材料が、浸漬によって、スピンコーティングによってまたは吹付けによって二官能性前駆物質の溶液と接触されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記複合材料の表面が、誘電体トラックから隔てられた幅Lを有する銅トラックの交互からなることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記幅Lが150〜30nmであることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
核形成層のために役立ち、前記第2の工程の間に前記媒染溶液中で使用される前記金属材料の前記前駆物質が、銅、亜鉛、金、スズ、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛およびビスマスイオン、ランタニドおよびアクチニドのイオン、およびそれらの混合物から選択された金属イオンであることを特徴とする、請求項4〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記媒染溶液中の金属イオンの濃度が10−4M未満であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法を実施することによって得ることができる、電気導電性または半導性領域と非電気導電性領域との交互からなる少なくとも1つの表面を含む複合材料であって、前記複合材料の前記非電気導電性領域が有機ポリマーから形成されず、前記電気導電性または半導性領域が、以下の式(I):
A−(X)n−B (I)
式中、Aが、前記有機前駆物質を前記電気導電性領域の表面に共有結合によっておよび選択的に結合させる少なくとも1つの反応性化学官能基を有する基であり、
Xが、AとBに共有結合によって結合したスペーサーアームであり、
nが0または1に等しい整数であり、
Bが、金属イオンまたは金属凝集体のための少なくとも1つの配位子の官能基を有する基、すなわち、金属イオンおよび/または金属凝集体の錯化を可能にする基である、
の二官能性有機または有機金属化合物からなる共有結合によってまたは供与結合でグラフトされた核形成層で覆われ、
前記膜自体が金属材料の層でコーティングされることを特徴とする、複合材料。
【請求項21】
マイクロ電子機器、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線を作製するための方法であって、請求項1〜19のいずれか一項に記載のコーティング方法を用いて式(I)の二官能性前駆物質の膜をグラフトする少なくとも1つの工程を有し、前記配線が金属材料から作製されることを特徴とする、方法。
【請求項22】
以下の順に、
a)配線特徴を誘電体基板においてエッチングし、前記特徴が、トレンチおよび/またはビア、および場合により突起を前記基板上に、および/または前記基板を通って形成する工程と、
b)導電性バリア層を前記エッチングされた誘電体基板上に堆積し、そのバリア層が、前記基板内への配線金属材料の移動を防ぎ、前記バリア層は、この層の自由面が、それが堆積される前記基板の配線特徴に適合するような厚さを有する工程と、
c)前記エッチングされた基板上に堆積された前記導電性バリア層を金属材料の核形成膜でコーティングする工程と、
d) 前記金属材料から作製された前記金属配線を形成するために、前記トレンチおよび/またはビアに前記核形成膜から出発して前記金属材料を充填する工程と、
e)銅/誘電体複合表面を得るために、前記エッチング特徴の突出部分を切削するために十分な時間、表面を均一におよび均質に研磨する工程と、
f)前記複合表面の導電性銅線上にグラフトされてこれらに対して自己配置された有機または無機膜の堆積によって、請求項1〜19のいずれか一項に記載された方法を用いて前記複合表面を活性化する工程と、
g)銅拡散バリアとしての金属層の無電解成長のために触媒層または核形成層として前記膜を使用し、前記金属層が、前記複合表面の銅導電性領域に対して自己配置される工程と、を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
マイクロ電子機器、電子マイクロシステムまたは集積回路の配線要素(interconnect elements)を作製するための請求項21または22に記載の方法の使用。
【請求項24】
請求項21または22に記載の方法を実施することによって得られ得る、マイクロ電子機器、電子マイクロシステムおよび集積回路の配線要素。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2007−530781(P2007−530781A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504448(P2007−504448)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000693
【国際公開番号】WO2005/098087
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506318595)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000693
【国際公開番号】WO2005/098087
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506318595)
【Fターム(参考)】
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