説明

複室容器

【課題】本発明は多液混合型の複室容器に関し、輸液の際に薬剤の確実の混合を行い得るようにすることを目的とする。
【解決手段】排出ポート12における薬剤バッグへの延出部に閉止栓30が設けられ、閉止栓30により排出ポート12は通常は閉鎖状態にある。薄肉連結板32は閉止栓30から一体に延出され、スリット34により分離された連結部36-1, 36-2は薬剤バッグ10の対向内層に強固に溶着される。薬剤バッグの隔壁開通時の薬液バッグ拡開変位に連結部36-1, 36-2は拡開変位され、閉止栓30が排出ポート12に沿って移動し、排出ポートから離脱されることにより排出ポート12を開通せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は輸液に使用される多液混合型の複室容器に関し、輸液の際に薬剤の確実な混合を行い得るようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
輸液用複室容器において、ポリエチレン等を素材とする軟弱フィルムより成る薬剤バッグの対向面を相対的に低温にて加圧剥離可能に溶着して成る隔壁(弱シール部)によって、薬液バッグ内部を夫々異なった薬液を収容する複数の隔室に分離したものがある。薬剤バッグの外周には、プラスチック成型品としての排出ポートが設けられ、排出ポートは筒状に形成され、その内部空洞は一端側で一方の隔室に開口しているが、他端にはゴム栓が設けられている。患者への薬液の投与に先立って薬剤バッグを外側から加圧することによって弱シール部が剥離開通せしめられ、薬剤バッグの内部空洞は一室となるため2種類の薬液は混合され、輸液セットの穿刺針によりゴム栓を穿刺し、薬剤バッグよりの薬液の投与が可能となる。従って、この種の医療用混合型複室容器においては薬液の投与に先立って弱シール部の剥離開通により両液を混合せしめる作業は必須であり、他方、弱シール部の開通を行わないままで排出ポートにおけるゴム栓の穿刺を行うと、排出ポート側の隔室における薬液のみが投与されてしまうという誤操作の可能性があった。この問題点に対処する従来技術として、通常時は排出ポートを閉鎖するが、隔壁開通時の薬液バッグ内圧に応じ開通・移動する可動部材や栓体を設けたものが提案されている(特許文献1及び2)。
【特許文献1】特開2003−305107号公報
【特許文献2】特開2005−28040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2の技術では隔壁破断・開通時において薬液バッグ内に生ずる薬液圧力を可動部材や栓体に加えることで可動部材や栓体を移動させることにより排出ポートを開通に至らせている。即ち、可動部材や栓体にはその受圧面積×開通時の薬液バッグ内圧力の力が加わり、この力によって可動部材や栓体は移動せしめられる。しかしながら、可動部材や栓体は排出ポートに設けられており、その受圧面積は最大排出ポートの内径に限定され、あまり大きな受圧面積とはならない。そのため、開通移動させるべく可動部材や栓体に加わる力はあまり大きくならず、所期の移動動作が得られず、隔壁開通と排出ポートの開通を連動させられず、隔壁開通にもかかわらず排出ポートは閉じたままということが起こりえていた。
【0004】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、隔壁未開通状態において排出ポートを閉鎖する閉鎖部材を備えた複室容器において、閉鎖隔壁開通時に閉鎖部材を排出ポートから確実に離脱せしめ、排出ポートを開放させるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の複室容器は、軟弱フィルムにて形成された薬液バッグと、薬液バッグの対向面を加圧剥離可能に溶着することにより薬剤バッグの内部を複数の隔室に分離する隔壁と、薬液バッグに固定され、一端が薬液バッグの内部に延出し、薬液バッグの外側に位置する他端に穿刺のための栓体を具備した排出ポートと、薬剤バッグの内部に延出した排出ポートの前記一端に密実に若しくは多少の隙間にて移動可能に設けられ、通常は排出ポートの前記一端に挿入されている閉鎖部材と、隔壁開通時の薬液バッグ拡開変位に純機械的に連動して前記閉鎖部材を排出ポートから離脱移動せしめるべく前記閉鎖部材を薬液バッグを構成する軟弱フィルム内面に溶着にて連結する薄肉板材や、リンクや、レバーや、紐状体等連結具とから構成される。
【0006】
この発明では排出ポートに移動可能に設けられた閉鎖部材は通常は排出ポートを閉鎖しており、閉鎖部材は連結具によって薬剤バッグに連結され、薬剤バッグの開通時の膨れ変位に純機械的に連動して閉鎖部材は排出ポートから離脱するように移動せしめられる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば開閉部材は隔壁開通時の薬液バッグ拡開変位にメカニカルに連動して排出ポートから離脱するように移動せしめられるため、隔壁開通時に排出ポートを確実に開放させることができ、効率的でかつ所期の輸液操作をいつも行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1から図4において、複室容器は薬液の収納のための平坦状の薬剤バッグ10と、筒状排出ポート12とから構成される。薬剤バッグ10は厚さ200ミクロンといったポリエチレンフィルムなどの多層構造の合成樹脂軟弱フィルム(本発明の軟弱フィルム若しくは可撓性フィルム)を素材とする。薬剤バッグ10を構成する一対の合成樹脂軟弱フィルムは筒状排出ポート12を挟んで重ねられ、全外周部がポリエチレンの場合は130℃といった高温で溶着され、筒状排出ポート12の部位も含めた全周に沿った強シール部14を形成する。筒状排出ポート12以外の部位での溶着はポリエチレンフィルム同士であり、筒状排出ポート12の部位での溶着は筒状排出ポート12とポリエチレンフィルムとであり、同時には溶着できないので、別工程で溶着(強シール)が実施され、筒状排出ポート12での強シール部を残余の部位でのそれと区別するため14-1にて示す。強シール部14及び14-1での溶着は薬剤バッグ10の開通ため加圧したときの薬剤バッグ内に生ずる程度の圧力では剥離するようなことはないような温度(ポリエチレンの場合は前述のように130℃程度)で行われ、これにより外部からの物理的な力の影響にかかわらず、薬剤バッグ10内に薬液を漏洩することなく保持することができる。強シール部14には薬剤バッグを輸液台に懸架するための丸孔15が設けられる。
【0009】
筒状排出ポート12はその筒形状を維持することができる肉厚(剛性)のプラスチック成形品として構成される。筒状排出ポート12は図1の下端で薬剤バッグ10から突出しており、薬剤バッグ10の下端から突出する筒状排出ポート12の下端に、輸液時に輸液セットの穿刺針により穿刺されるゴム栓20(栓体)が装着されている。
【0010】
薬剤バッグ10を構成する2枚の合成樹脂フィルム層は薬剤バッグ10の長手方向(図1の上下方向)の中間部位で全幅にて加圧剥離可能に溶着され、弱シール部24(本発明の隔壁)を構成する。弱シール部24によって薬剤バッグ10の内部空洞は図1の上下における第1及び第2の隔室26, 28に分離され、第1及び第2の隔室26, 28に夫々第1及び第2の薬液を分離状態で収納することができる。弱シール部24における、薬剤バッグ10を構成する上下の合成樹脂フィルム層の溶着は加圧剥離可能である。加圧剥離可能とは、薬剤バッグ10の開通のため薬剤バッグ10を手のひらなどで適当な力で加圧したとき、薬剤バッグ10内に生ずる液体圧力による膨れ(拡開変形)で弱シール部24において上下フィルム層が剥離されることを意味し、この発明の実施形態におけるポリエチレン樹脂の場合は弱シール部24での溶着は120℃(強シール部14を得るための前記した130℃といった溶着温度より相当低い溶着温度)といった温度にて行われる。弱シール部24の開通による排出ポート12付近における薬液バッグの拡開状態が図4に示されている。
【0011】
図2において、排出ポート12は筒状をなし、拡開形状の外側端部に別体のキャップ12-1が溶着にて一体化され、ゴム栓20はキャップ12-1に取付けられている。排出ポート12の内側端部は先細部12-2を呈し、その外周に強シール部14-1が位置され、かつ薬液バッグ内部まで延設されている。排出ポート12の先細部12-2の内周にディスク状の閉止栓30(本発明の開閉部材)が排出ポートの長手方向(軸線方向)に摺動可能に配置される。閉止栓30は適当なプラスチック若しくはゴム素材にてディスク状に成形され、排出ポート12から離間方向に、即ち、薬液バッグ内部空洞に向け片持状に延出する、一体成形の薄肉連結板32(この発明の連結具)を形成している。薄肉連結板32に閉止栓30の少し手前から端面まで長手方向に伸びるスリット34が設けられ、このスリット34により薄肉連結板32は第1連結部36-1と第2連結部36-2とに分割される。第1連結部36-1及び第2連結部36-2は、閉止栓30から離間側端部36-1', 36-2'が幾分拡開され、この拡開端部36-1', 36-2'は薬剤バッグ10の上下層の対向内面に強固に溶着される。図3に拡開端部36-1', 36-2'における薬液バッグ対向層との溶着部を斜線領域38-1, 38-2により示しており、溶着38-1, 38-2はレーザ溶着等により実施することができる。レーザ溶着の際の溶着温度は薬液バッグ10の外周の強シール部14の溶着温度と同程度であり、そのため、隔壁を構成する弱シール部24の開通時に、薬液バッグ中の薬液に加わる流体圧力では剥離することがなく、拡開端部36-1', 36-2'と薬液バッグ上下層との溶着は保持されるようになっている。そして、薄肉連結板32の肉厚は弱シール部24の開通時の薬液バッグ10の拡開変形に追随して第1連結部36-1及び第2連結部36-2が変位するようなフレキシビリテイは提供するがその伸張・破断は実質的に生じせしめないように適宜に設定される。
【0012】
弱シール部24の開通は、薬剤バッグ10を机などの上に平坦に載置し、薬剤バッグ10を手のひらで加圧することにより行われる。即ち、加圧により加わる薬液の圧力により弱シール部24において薬剤バッグ10の両層が分離し(弱シール部24が分離した状態を図4に示す)、隔室26, 28は一体となり、それまで隔室26, 28に分離収容されていた薬液は混合される。そして、弱シール部24の開通により高められた薬液の圧力は排出ポート12との接続部位で薬液バッグ10を図4のように拡開せしめ、薄肉連結板32は第1及び第2連結部36-1, 36-2の端部36-1', 36-2'で薬剤バッグ10の対向内層に剥離不能に溶着されているため、第1及び第2連結部36-1, 36-2も薬剤バッグの拡開に連動して拡開せしめられ、その結果、閉止栓30は排出ポート12の軸線に沿って薬剤バッグ10の内側に移動することで排出ポート12の開口端面から離脱せしめられ、排出ポート12は排出ポート12の開口端を介して薬液バッグ10の内部に連通せしめられ、混合薬液を排出ポート12に流入せしめられ、排出ポート下端のゴム栓に輸液セットの穿刺針(図示しない)を穿刺することで、輸液を開始することができる。
【0013】
図3において、薄肉連結板32の第1及び第2連結部36-1, 36-2において拡開端部36-1', 36-2'の付根付近に幅方向に延びるように薄肉部40-1, 40-2が連結板32の肉厚を更に薄肉化するように設けられる。薄肉部40-1, 40-2を設けることで、この部位での容易屈曲性により排出ポートから離脱後に閉止栓30が溶着部より上に浮かぶため、排出ポートが閉止栓30により再び閉塞されてしまうようなことが回避される。
【0014】
この実施形態において、スリット34の代わりに薄肉部として、開通時にこの薄肉部が開通時の薬液バッグの膨れ変形により破裂せしめられるようにしても良い。
【0015】
図5及び図6は第2の実施形態を示しており、この実施形態では排出ポート12を閉鎖する閉止栓30を弱シール部24(隔壁)開通時の薬液バッグ10の膨れ変形に連動せしめる連結具を内蔵バッグ42により構成している。内蔵バッグ42は上下の合成樹脂フィルム44-1, 44-2から構成され、上下のフィルム44-1, 44-2は外周部46にて剥離可能に溶着され、その内側において上下のフィルム44-1, 44-2間に少量薬剤のための小隔室48(第3室)が形成され、小隔室48内に隔室26, 28に収容される輸液薬剤に添加するべき少量薬剤が収納されている。外周部46での溶着温度は薬液バッグ10の弱シール部24のそれと同程度であり、薬液バッグ開通時に剥離開通されるようになっている。内蔵バッグ42を構成する合成樹脂フィルムは44-1, 44-2は排出ポート12側の一端は閉止栓30と一体となっており、他端(剥離可能溶着部46からの延出部位)44-1', 44-2'は薬液バッグ10と対向したフィルム内面に強固に溶着されており、この強溶着部を図5で50にて示す。この際の強溶着部50の溶着温度は薬液バッグ10外周の強シール部14の溶着温度と同程度であり、薬液バッグ開通時にも剥離されることがなく溶着状態を維持することができる。
【0016】
図6(イ)は薬液バッグ未開通時を示しており、内蔵バッグ42は閉鎖状態にあり、小隔室48に少量薬剤が収納される。他方、閉止栓30は排出ポート12を実質的に閉鎖している。
【0017】
図6(ロ)は隔壁開通時を示しており、薬液バッグ10中の薬液は外部から加圧され、弱シール部(隔室)24が開通される。弱シール部24の開通による薬液バッグ10の膨れ変形は、内蔵バッグ42を構成する合成樹脂フィルム44-1, 44-2の端部44-1', 44-2'が薬液バッグ10の対向内層に強固に溶着されていることから、内蔵バッグ42の外周の剥離可能溶着部46が剥離され、合成樹脂フィルム44-1, 44-2が分離されるため、内蔵バッグ42の小隔室48が薬液バッグ10に開口され、少量薬剤は隔室26, 28からの混合薬液と混合される。同時に、薬液バッグ10の膨れによる合成樹脂フィルム層の外方への変位は合成樹脂フィルム44-1, 44-2によりそのまま(メカニカルに)閉止栓30に伝達され、閉止栓30は排出ポート12から離脱せしめられ、薬剤は排出ポート12に流入せしめられる。
【0018】
図6(ハ)は隔壁開通後の状態を示し、分離した閉止栓30はプラスチック製で比重としては小さくかつ合成樹脂フィルム44-1, 44-2も軟弱であるため薬液バッグ10中の薬液に浮かび、排出ポート12から離間され、排出ポート12が閉塞されてしまう懸念はない。
【0019】
図7は第3の実施形態を示し、この実施形態では排出ポート12を閉鎖する閉止栓30を弱シール部24(隔壁)開通時の薬液バッグ10の膨れ変形に連動せしめる連結具を合成樹脂製リンク機構52によって構成している。リンク機構52は、閉止栓30と一体成形の板状部(レバー)54と、板状部54に枢軸55にて回動可能に連結された第1及び第2のリンク56-1, 56-2と、第1及び第2のリンク56-1, 56-2に枢軸58-1, 58-2にて枢着され、薬液バッグ10を構成するプラスチックフィルム対向層と強固に(剥離不能に)溶着される取付板60-1, 60-2とから構成される。枢軸55、リンク56-1, 56-2、枢軸58-1, 58-2、取付板60-1, 60-2は閉止栓30と同様の軽量プラスチック素材にて形成される。レバー54とリンク56-1, 56-2との長さ比を適当にとることにより薬剤バッグの膨れ変形を適当に調整(増幅若しくは縮小)して伝達可能である。
【0020】
図7(イ)は薬液バッグ未開通時を示しており、リンク機構52は閉鎖状態にあり、閉止栓30は排出ポート12を閉鎖している。
【0021】
図7(ロ)は隔壁開通時を示しており、薬液バッグ10中の薬液は外部から加圧され、弱シール部(隔室)24が開通される。弱シール部24の開通による薬液バッグ10の膨れ変形は、取付板60-1, 60-2が薬液バッグ10の対向内層に強固に溶着されていることから、第1及び第2のリンク56-1, 56-2を外方に引張、閉止栓30は排出ポート12から離脱せしめられ、薬剤は排出ポート12に流入せしめられる。
【0022】
図7(ハ)は隔壁開通後の状態を示し、分離した閉止栓30はプラスチック製で比重としては小さくかつ閉止栓30は枢軸55によりリンク56-1, 56-2に枢着され、リンク56-1, 56-2は枢軸58-1, 58-2により取付板60-1, 60-2に枢着されているため、閉止栓30は薬液バッグ10中の薬液に浮かび、排出ポート12から離間維持され、排出ポート12が閉塞されてしまうことはない。
【0023】
図8は別の実施形態を示しており、この実施形態では排出ポート12を閉鎖する閉止栓30を弱シール部14(隔壁)開通時の薬液バッグ10の膨れ変形に連動せしめる連結具をL型の剛体レバー62により構成している。剛体レバー62は一端は閉止栓30と一体に成形され、他端は一体成形のプレート部66により薬液バッグ10の対向面に強固に溶着されている。
【0024】
図8(イ)は薬液バッグ未開通時を示しており、排出ポート12は閉止栓30により閉鎖されている。
【0025】
図8(ロ)は隔壁開通時を示しており、弱シール部の開通による薬液バッグ10の膨れ変形は、剛体レバー62を薬液バッグ10との溶着部において外方に変位させるが、剛体レバー62のL形状故に剛体レバー62の端部の閉止栓30は排出ポート12から離脱移動せしめられ、薬剤は排出ポート12に流入せしめられる。
【0026】
図9は更に別の実施形態を示しており、この実施形態では排出ポート12を閉鎖する閉止栓30を末広がり形状の薄肉プラスチックの連結板64により構成している。薄肉連結板64は幅の狭い下端で閉止栓30から一体に延設され、幅の広い他端は両側端縁で薬液バッグ10の対向面に強固に溶着される。また、連結64は幅広端縁から幅の狭い閉止栓30の外周縁に沿った付根まで延びる薄肉の脆弱部68を形成している。
【0027】
図9(イ)は薬液バッグ未開通時を示しており、排出ポート12は閉止栓30により閉鎖されている。
【0028】
図9(ロ)は隔壁開通時を示しており、弱シール部の開通による薬液バッグ10の膨れ変形は、連結板64をして脆弱部68にて破壊せしめ、薬液バッグの対向内層における一方に溶着された部分68-1と他方に溶着された部分68-2に分離され、それぞれの部分68-1, 68-2が薬剤バッグの膨れと連動して外方に変位するため、部分68-1と一体の閉止栓30は排出ポート12から離脱せしめられ、薬剤は排出ポート12に流入せしめられる。
【0029】
図10は以上の閉止栓30を排出ポート12の軸線に沿って開放せしめる実施形態において、閉止栓30を介して少量の液漏れを起こさせ、複室容器製造時の滅菌を湿熱下で行われようにしたものである。即ち、閉止栓30は一体連結部30-1を介して、連結板32(図1)、内蔵バッグ42(図5)、リンク機構52(図7)、剛体レバー62(図8)、薄肉プラスチックの連結板64(図9)のような連結具に連接され、開通時の薬剤バッグの膨れ変形に連動して閉止栓30は開放せしめられる。そして、閉止栓30は排出ポート12に幾分の隙間70をもって挿入されている。また、排出ポート12の内周には排出ポート12の長手方向における閉止栓30の位置決めを行う突起部72, 74が設けられる。隙間70の設置により少量の液漏れがあるが、隙間70の開口面積は通常の輸液時の液量より少量となるため、薬液バッグ未開通で輸液されたとしても少量しか流れないため薬液バッグ未開通を気付かせることができる。薬液バッグ開通により閉止栓30は上方に変位し、突起74を乗り越えて、排出ポート12から抜去される。隙間70を介しての液漏れは複室容器製造時における湿熱下の効率的な滅菌を可能とする。
【0030】
図11は排出ポート12の内周に外開きのテーパ面12Aを設け、少量の液漏れを確保するようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1はこの発明の第1の実施形態の複室型容器の平面図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿った複室型容器の断面図である。
【図3】図3は図1における薄肉連結板の部分拡大図である。
【図4】図4は図2における排出ポートの部分図であるが、薬剤バッグ開通時を示している。
【図5】図5はこの発明の第2の実施形態の複室型容器の平面図である。
【図6】図6は図5のVI−VI線に沿った模式的断面図で、第2の実施形態の複室型容器の動作を示す。
【図7】図7は別実施形態の複室型容器の部分的断面図である。
【図8】図8は更に別の実施形態の複室型容器の部分的断面図である。
【図9】図9は更に別の実施形態の複室型容器の部分的断面図である。
【図10】図10はこの発明の複室型容器における別実施形態の閉止栓の、排出ポートに対する位置関係を説明する図である。
【図11】図11は図10と同様であるが、更に別の実施形態の閉止栓を示す。
【符号の説明】
【0032】
10…薬剤バッグ
12…排出ポート
14…強シール部
20…ゴム栓
24…弱シール部(本発明の隔壁)
26, 28…第1及び第2の隔室
30…閉止栓
32…薄肉連結板(この発明の連結具)
34…スリット
36-1, 36-2…第1、第2連結部
38-1, 38-2…溶着部
42…内蔵バッグ
44-1, 44-2…内蔵バッグを形成する上下の合成樹脂フィルム
52…合成樹脂製リンク機構
62…剛体レバー
64…薄肉プラスチック連結板
68…薄肉の脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱フィルムにて形成された薬液バッグと、薬液バッグの対向面を加圧剥離可能に溶着することにより薬剤バッグの内部を複数の隔室に分離する隔壁と、薬液バッグに固定され、一端が薬液バッグの内部に延出し、薬液バッグの外側に位置する他端に穿刺のための栓体を具備した排出ポートと、薬剤バッグの内部に延出した排出ポートの前記一端に移動可能に設けられ、通常は排出ポートの前記一端に挿入されている閉鎖部材と、隔壁開通時の薬液バッグ拡開変位に連動して前記閉鎖部材を排出ポートから離脱移動せしめるべく前記閉鎖部材を薬液バッグを構成する軟弱フィルム内面に溶着にて連結する連結具とから構成される複室容器。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、排出ポートに対する前記閉鎖部材一端の挿入部に適宜な隙間を設けた複室容器。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の発明において、前記連結具は薄肉板材や、リンクや、レバーや、紐状体等の適宜な機構手段にて構成され、隔壁開通時の薬液バッグ拡開変位がそのまま若しくは増幅されて閉鎖部材に伝達される複室容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−18038(P2009−18038A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183172(P2007−183172)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】