説明

複層ガラスのコーナー部シール構造

【課題】複層ガラスのコーナー部をシールする場合に、複合ガラスの側方を確実に支持できると共に、封着部を太陽光から遮って保護し、その上、部品点数を少なくできる構造を提供することである。
【解決手段】 2枚の複層ガラスをシール空間2をあけた状態で平面視L字状に突き合わせると共に、2枚の複層ガラスの上下を支持し、2枚の複層ガラスのコーナー部分の室内外を、内側及び外側のガスケットの平面視L字状の本体で別々に覆うことによって、複層ガラスの封着部7を室内外から隠蔽し、内外のガスケットの本体12、16から弾性変形可能なシール片13、17をそれぞれ突出し、シール片をシール空間に圧入して嵌め込むことによって、内外のガスケットを取り付けてある複層ガラスのコーナー部シール構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横の複層ガラスをコーナー部でシールするための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
複層ガラスのコーナー部のシール構造としては、縦方向と横方向の複層ガラスの上下をそれぞれ上枠と下枠によって支持し、その支持後に、縦横の複層ガラスの突き合わせ箇所(コーナー部分)の隙間にシール材をコーキングする構造が知られている(特許文献1)。ところが、シール材は、柔軟性に富んでいるので、複合ガラスの側方の支持が不十分であると言える。
【特許文献1】特開平8−13938号公報(図5)
【0003】
また、複層ガラスは一定幅の中空層を設けつつその周辺を密封しており、密封用の封着部には、中空層内に挿入するスペーサーを接着する透湿防止用の1次封着材と、スペーサーの外側でガラスを接着・固定する2次封着材が用いられている。そして、前述したシール構造の場合は、これら封着材が太陽光に晒され、性能が劣化(ガラスの中空層面に結露が発生)することから、耐久性に問題があった。
【0004】
さらに、複層ガラスのコーナー部のシール構造の別例としては、縦横の複層ガラスのコーナ部分の表側をL字状の方立材で覆うと共に、コーナー部分の背側を支持部材で支え、方立材から斜め45度に延びるビス止め用の雌ネジ部を、両複層ガラスの間を通し、その雌ネジ部に背側支持部材をビス止めし、方立材と複層ガラス、並びに背側支持部材と複層ガラスとの間にビード材を介在してシールする構造が知られている(特許文献2)。
【特許文献2】実開平7−14080号公報(図9)
【0005】
この場合、封着部の室内側及び室外側は方立材及び背側支持部材で覆われて太陽光の直射を防いでいるので、封着部の耐久性は良好であるが、方立材及び背側支持部材以外に、ビス、目隠板(ビス頭を覆う)、ビード材を必要とするので、部品点数が多く、コストが嵩む上に、取付作業に時間がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的とするところは、複層ガラスのコーナー部をシールする場合に、複層ガラスの側方を確実に支持できると共に、封着部を太陽光から遮って保護し、その上、部品点数を少なくできる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複層ガラスのコーナー部シール構造は、一方の複層ガラスの先部室内面側又は先部室外面側と、他方の複層ガラスの先端との間にシール空間をあけた状態で、2枚の複層ガラスを平面視L字状に突き合わせると共に、2枚の複層ガラスの上下を支持し、2枚の複層ガラスのコーナー部分の室内側及び室外側を、内側及び外側のガスケットの平面視L字状の本体で別々に覆うことによって、複層ガラスの周囲の封着部を室内外から隠蔽し、内外のガスケットの本体から弾性変形可能なシール片をそれぞれ突出しており、シール片をシール空間に圧入して嵌め込むことによって、内外のガスケットを取り付けてあることを特徴とする。
【0008】
内外のガスケットは本体とシール片とが完全に繋がった一体成形品に限らず、その一部を別体品として形成し、その別体部分をスナップ式に嵌め込んで一体化するものであっても良い。また、内外のガスケットのシール片はその一部を共用するものでも良い。例えば、請求項2の発明のように、内外のシール片は、内側のガスケットの本体からシール空間側に連続して突出する内連結部と、外側のガスケットの本体からシール空間側に連続して突出する外連結部と、内連結部と外連結部とは別体であってシール空間に嵌め込まれる主シール部とからなり、主シール部は一つ又は複数のブロックからなり、主シール部の内外に被連結部をそれぞれ設け、内外の被連結部に対して内連結部と外連結部をスナップ式に嵌め込んでも良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、部品数が内外のガスケットだけなので材料費が安く済む上、これらをシール空間に圧入して嵌め込むだけで取付が完了するので、取付作業が迅速に行える。また、内外のガスケットの一部をシール空間に嵌め込んであるので、各ガスケットは強固に取り付けられており、それ故、複層ガラスの側方の支持が安定する。さらに、複層ガラスの封着部を室内側及び室外側から内外のガスケットで覆って隠蔽してあるので、封着部に太陽光が晒されるのを防いでおり、複層ガラスに充分な耐久性を与えられる。また、シール片をシール空間に圧入する構造なので、L字状に突き合わせる複層ガラスの配置関係が理想状態よりも多少ずれて施工されたとしても、その施工誤差を吸収することができる。
【0010】
請求項2の発明は、シール空間の隙間幅に見合ったブロックをシール空間に嵌め込んで主シール部を形成し、主シール部の内外の被連結部に対して、内外のガスケットの内連結部・外連結部をスナップ式に嵌め込むだけの簡単な操作で組み立てることができる。また、主シール部を構成するブロックをシール空間の隙間幅に合わせて何種類か用意すると共に、その用意したブロックの被連結部の形状、位置、大きさ等の構造を統一して形成し、その被連結部に対応した連結部を備える内外のガスケットを一組用意しておくだけで、シール空間の隙間幅の施工誤差を吸収することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の複層ガラスのコーナー部シール構造は、図に示すように、二枚の複層ガラス1をその上下を支持しつつ縦横に配置し、一方(図の縦向き)の複層ガラス1の先端と、他方(図の横向きの)の複層ガラス1の先部室内面の間にシール空間2を形成し、二枚の複層ガラス1をシール空間2を介して平面視L字状に突き合わせる。そして、二枚の複層ガラス1がL字状に突き合わさるコーナー部の内外に、内側及び外側のガスケット3,4を、その一部をシール空間2に嵌め込んで取り付ける。なお、複層ガラス1は、例えば、その上下をコ字状の枠材Wに嵌め込んで支持する。複層ガラス1のシール空間2とは反対側の側方は図示しないが同様に支持しており、シール空間2へのガスケット3,4の嵌め込みによって、複層ガラス1が側方に移動するのを防いである。
【0012】
複層ガラス1は、背景技術の欄で説明したように、中空層5を介して対面させた二枚のガラス6の周囲内側を封着部7で密閉したものである。封着部7は、乾燥剤8を入れた筒型のスペーサー9を中空層5の周囲内側に挿入し、スペーサー9を1次封着材10でガラス6に接着すると共に、スペーサー9の外側(中空層5の周囲外側)を2次封着材11でガラス6に接着してある。1次封着材10には例えばブチル系シーラント、2次封着材11には例えばシリコーン系シーラントを用いる。なお、ブチル系シーラントは、太陽光によって劣化しやすいことが知られている。
【0013】
内側のガスケット3は図1に示すように、平面視L字状の本体12の屈曲部からシール片13を突出したものである。本体12の一片(図の縦向き片)は、複層ガラス1の封着部7を室内側から覆う長さに形成し、本体12の他片(図の横向き片)は、封着部7を覆うことはできないが、ガスケット3の取付の安定さのために必要な長さに形成する。そして、シール片13をシール空間2の室内側部分に圧入して嵌め込んで、本体12を縦横の複層ガラス1の室内面に直交する形態で沿わせる。シール片13は、屈曲部から突片14を本体12の他片(図の横向き片)に沿って突出すると共に、突片14をシール空間2の隙間幅よりも幅狭の肉厚に形成し、止め片15を突片14から幅方向両側に突出し、止め片15の箇所におけるシール片13の幅をシール空間2の隙間幅よりも幅広に形成してある。内側のガスケット3は、弾性変形可能な素材(例えば硬質ゴム製)なので、シール片13をシール空間2に圧入する前は、両側の止め片15が突片14を挟んで一直線に延びる形状であるにも関わらず、シール空間2に圧入すると、両側の止め片15がV字状に変形して、シール空間2に嵌り込む。
【0014】
外側のガスケット4は、複層ガラス1の封着部7を室外側から覆うもので、弾性変形可能な素材であること、平面視L字状の本体16とシール片17から構成してあること、及びシール片17の構造については、内側のガスケット3の本体12及びシール片13と同一である。但し、本体16の各片の長さを内側のガスケット3の本体各片に合わせてある点、シール片17が本体16の一片(図の縦向き片)の中間部から本体16の他片と対向する方向に突出する点や、そのシール片17をシール空間2の室外側部分に圧入して嵌め込む点が異なる。
【0015】
シール空間2を利用して取り付けられた内外のガスケット3、4は恰も一体化した状態となり、平面視コ字状の挿入部18を、縦横に向かって開口し、その挿入部18に複層ガラス1の側端部が嵌め込まれた形態となる。
【0016】
図2は外側のガスケット4の変形例を示すもので、平面視L字状の本体16の二片のうち、シール片17に対向する片19のガラス面側に、厚み調整片20を切り離し可能に設けたものである。厚み調整片20は複数枚、厚み方向に切り離し可能に設けてあるので、複層ガラス1の厚みに対応して必要な枚数だけ切り離して使用する。なお、切り離し可能とするために、本体16のシール片17に対向する片19と厚み調整片20、並びに厚み調整片20同士を局部的に連結する凸部21を、シール片17の突出方向と平行な方向に沿って間隔をあけて設けてある。また、切り離しの際に指でつまみやすく且つ体裁を良くする(複層ガラス1から厚み調整片20がはみ出さないようにする)ために、平面視L字状の本体16の屈曲部に最も近い凸部21よりも、厚み調整片20の先部を屈曲部側に突出してある。なお、図2中の室内面と室外面の文字は、図1中の室内面と室外面の文字と位置が反対になっており、この場合に複層ガラス1のコーナー部は、一方の複層ガラス1の先部室外面側と他方の複層ガラス1の先端との間にシール空間2を形成する形態となる。
【0017】
図3に示すように、厚み調整片20は外側のガスケット4と別体品であっても良く、内外のガスケット3、4で形成される平面視コ字状の挿入部18よりも、複層ガラス1の厚みが薄い場合に、厚み調整片20を複層ガラス1と外側のガスケット4の間に挟んで複層ガラス1を安定して支持する。
【0018】
図4は、内外のガスケット3、4の変形例を示すものである。シール空間2の幅の変化に対応するために、内外のガスケット3、4は、切り離し可能な厚み調整片20を、シール片13,17の室内外面と、本体12の二片のうちシール片13に沿って連続する片(図中の横片)に設けてある。上述した図2と図4の変形例を総括すれば、複層ガラス1の厚み変化、又はシール空間2の幅変化に対応するために、内外のガスケット3、4の対応する箇所に厚み調整片20を切り離し可能に設けたものと言える。
【0019】
図5は複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を示し、図6はその分解状態を示すものである。これは、内外のガスケット3、4の各シール片13、17について特徴がある。内側のガスケット3、4のシール片13は、本体12からシール空間2側に突出する内連結部22と、シール空間2の内側に嵌め込まれると共に内連結部22にスナップ式に嵌り込むブロック(以後、内ブロックと称す。)23とから構成される。内連結部22はその先部を根元側に比べて膨大形状としたものである。一方、内ブロック23はその室内面側に内連結部22を嵌め込む被連結部24をC字状に凹ませて形成し、シール空間2の幅方向両側には止め片15を内外に間隔をあけて突出してある。外側のガスケット4のシール片17も同様の構造であって、本体16からシール空間2側に突出する外連結部25と、シール空間2の外側に嵌め込まれると共に外連結部25にスナップ式に嵌り込むブロック(以後、外ブロックと称す。)26とから構成される。外連結部25はその先部を根元部分に比べて膨大形状としたものである。一方、外ブロック26はその室外面側に外連結部25を嵌め込む被連結部27をC字状に凹ませて形成し、シール空間2の幅方向両側には止め片28を内外に間隔をあけて突出してある。そして、内ブロック23と外ブロック26によってシール空間2に嵌り込む主シール部29を形成している。この内外のブロック23、26は、内・外連結部22、25に対する被連結部24、27の相対的な形状、位置、大きさを統一したまま、シール空間2の隙間幅に対応する目地幅Hを伸縮したものを何種類か用意しておけば、シール空間2の多様な隙間幅に対応することもできる。
【0020】
図7も複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を表している。これは、主シール部29を一つのブロック(以後、兼用ブロックと称す。)30で形成し、兼用ブロック30の内外にそれぞれ被連結部24、27を設けたことを特徴とするものである。即ち、この場合は、内外のシール片13、17が、その一部として、一つの兼用ブロック30を共用する形態である。
【0021】
図8は内側のガスケットを用いない、コーナー部シール構造を示すものである。これは、外側のガスケット4を二部品、即ち、平面視L字状の本体16から外連結部25を突出したものと、外ブロック26とから構成し、外ブロック26をシール空間2の外側に嵌め込み、シール空間2の内側奥部には発泡ポリエチレン等のバックアップ材31を外ブロック26の横に並べ、シール空間2の内側入口部にはコーキング剤32をバックアップ材31に達するまで充填してある。バックアップ材31によって、外ブロック26とコーキング剤32の接着を防止している。また、コーキング剤32を用いているので、一段と気密性が向上する。但し、内側のガスケット3を用いないので、複層ガラス1の封着部7が室内側から隠れていない。
【0022】
図9は同じく内側のガスケット3を用いない、コーナー部シール構造の別例を示すものである。前例と異なる点は、バックアップ材31、及びコーキング剤32を用いることなく、シール空間2の全域に外ブロック26を圧入して嵌め込む点である。
【0023】
本発明は上述したように内外のガスケット3、4が別体であるが故に、上下を支持した複層ガラス1に後付けできるのであるが、仮に内外のガスケット3、4を一体成形したもの(平面視コ字状の挿入部を縦横に向かって開口する形態の一体成形したガスケット)であれば、後付けすることはできないので本発明のような効果は得られない。なお、本発明は上記実施形態に限定されず、内外のガスケット3、4のガラス面側に接着剤を塗ったものを使用して、取付強度を向上させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(イ)(ロ)図は、本発明の複層ガラスのコーナー部シール構造を示す断面図、分解図である。
【図2】外側のガスケットの変形例を示す断面図である。
【図3】外側のガスケットと複層ガラスの間に厚み調整片を挿入した状態を示す断面図である。
【図4】内外のガスケットの変形例を示す断面図である。
【図5】複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を示す使用状態図である。
【図6】図5中の要部の分解状態を示す断面図である。
【図7】複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を示す使用状態図である。
【図8】複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を示す使用状態図である。
【図9】複層ガラスのコーナー部シール構造の別例を示す使用状態図である。
【符号の説明】
【0025】
1 複層ガラス
2 シール空間
3、4 ガスケット
7 封着部
12、16 本体
13、17 シール片
22 内連結部
23、26、30 ブロック
24、27 被連結部
25 外連結部
29 主シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の複層ガラス(1)の先部室内面側又は先部室外面側と、他方の複層ガラス(1)の先端との間にシール空間(2)をあけた状態で、2枚の複層ガラスを平面視L字状に突き合わせると共に、2枚の複層ガラスの上下を支持し、2枚の複層ガラスのコーナー部分の室内側及び室外側を、内側及び外側のガスケット(3、4)の平面視L字状の本体(12、16)で別々に覆うことによって、複層ガラスの周囲の封着部(7)を室内外から隠蔽し、内外のガスケットの本体(12、16)から弾性変形可能なシール片(13、17)をそれぞれ突出しており、シール片(13、17)をシール空間(2)に圧入して嵌め込むことによって、内外のガスケット(3、4)を取り付けてあることを特徴とする複層ガラスのコーナー部シール構造。
【請求項2】
内外のシール片(13、17)は、内側のガスケットの本体(12)からシール空間(2)側に連続して突出する内連結部(22)と、外側のガスケットの本体(16)からシール空間(2)側に連続して突出する外連結部(25)と、内連結部(22)と外連結部(25)とは別体であってシール空間(2)に嵌め込まれる主シール部(29)とからなり、主シール部(29)は一つ又は複数のブロック(23、26、30)からなり、主シール部(29)の内外に被連結部(24、27)をそれぞれ設け、内外の被連結部(24、27)に対して内連結部(22)と外連結部(25)をスナップ式に嵌め込んであることを特徴とする、請求項1記載の複層ガラスのコーナー部シール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−124265(P2006−124265A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123691(P2005−123691)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(595140284)北星ゴム工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】