説明

複層塗膜形成方法及び塗装物品

【課題】3コート1ベーク方式により、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された、優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法を提供すること。
【解決手段】被塗物上に、被膜形成性樹脂(A)を含有する中塗り塗料(X)、被膜形成性樹脂(B)及び有機溶剤(C)を含有するベース塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)を順次塗装し、同時に焼付け硬化させることを含んでなり、被膜形成性樹脂(A)のSP値SPと被膜形成性樹脂(B)のSP値SPとの差(SP−SP)の絶対値が0.2以上であり、かつ被膜形成性樹脂(A)のSP値SPと有機溶剤(C)のSP値SPとの差(SP−SP)の絶対値が1以下であり、そしてベース塗料(Y)中の有機溶剤(C)の含有量が被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として20〜800質量部の範囲内にあることを特徴とする複層塗膜形成方法ならびに該方法により塗装された物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物上に、有機溶剤型中塗り塗料、有機溶剤型ベース塗料及び有機溶剤型クリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を一度に加熱硬化する3コート1ベーク方式により、優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法及び該方法により形成された塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗膜を形成した後、「中塗り塗料の塗装→焼き付け硬化→ベース塗料の塗装→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化」の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年では、省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装後の焼き付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗膜を形成した後、「中塗り塗料の塗装→ベース塗料の塗装→クリヤー塗料の塗装→焼き付け硬化」とする3コート1ベーク(3C1B)方式が試みられている。
【0003】
しかしながら、上記3C1B方式による塗装は、中塗り塗膜とベース塗膜との混層が起こりやすいため、上記3C2B方式に比べ、得られる塗膜の平滑性や鮮映性が低下しやすく、また、ベース塗料として光輝性顔料を含有する塗料を用いた場合に、フリップフロップ性の低下やメタリックムラが生じ易く、十分な光輝感が得られにくいという問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、電着塗膜が形成された基材上に、中塗り塗料組成物、ベース塗料組成物およびクリヤー塗料組成物を順次塗装する工程、および塗装された三層を一度に焼付け硬化させる工程を包含する積層塗膜形成方法であって、該中塗り塗料組成物が特定のウレタン変性ポリエステル樹脂(a)、メラミン樹脂(b)、特定のブロックイソシアネート化合物(c)、コアシェル構造を有する非水ディスパージョン樹脂(d)及び扁平顔料(e)を含有し、かつ、該ベース塗料組成物が特定のアクリル樹脂、メラミン樹脂(イ)、重合微粒子(ウ)及び光輝性顔料(エ)を含有する溶剤型ベース塗料組成物であり、そして該クリヤー塗料組成物がカルボキシル基含有アクリル樹脂(A)、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂(B)及びエポキシ基含有アクリル樹脂(C)を含有する場合に、優れた外観を有する塗膜を得られることが開示されている。しかしながら、該塗膜形成方法においても、フリップフロップ性が劣ったり、メタリックムラが生じたりする場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−75791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機溶剤型中塗り塗料、有機溶剤型ベース塗料及び有機溶剤型クリヤー塗料を順次塗装する3コート1ベーク方式による複層塗膜形成方法において、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された、優れた外観を有する塗膜を形成することができる方法及び該方法により形成された塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、有機溶剤型中塗り塗料、有機溶剤型ベース塗料及び有機溶剤型クリヤー塗料を使用して3コート1ベーク方式により複層塗膜を形成する工程において、有機溶剤型中塗り塗料として、特定の被膜
形成性樹脂を含有する塗料を使用し、かつ、有機溶剤型ベース塗料として、特定の被膜形成性樹脂及び有機溶剤を含有する塗料を使用する場合に、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明によれば、被塗物上に、被膜形成性樹脂(A)を含有する有機溶剤型中塗り塗料(X)、被膜形成性樹脂(B)及び有機溶剤(C)を含有する有機溶剤型ベース塗料(Y)及び有機溶剤型クリヤー塗料(Z)を順次塗装し、形成される中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させることを含んでなり、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が0.2以上であり、かつ被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと有機溶剤(C)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が1以下であり、そして有機溶剤型ベース塗料(Y)中の有機溶剤(C)の含有量が被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として20〜800質量部の範囲内にあることを特徴とする複層塗膜形成方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、また、上記の複層塗膜形成方法により塗装された物品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複層塗膜形成方法により、3コート1ベーク方式において、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが少ない優れた外観を有する複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
【0012】
有機溶剤型中塗り塗料(X)の塗装
本発明の複層塗膜形成方法に従えば、まず、被塗物上に有機溶剤型中塗り塗料(X)が塗装される。
【0013】
被塗物
本発明の方法を適用し得る被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス鋼、ブリキ、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなど)メッキ鋼などの金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂や各種のFRPなどのプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;木材;繊維材料(紙、布など)などを挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0014】
また、本発明の方法を適用し得る被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器などの家庭電気製品の外板部などを挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0015】
被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体などの金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。さらに、被塗物は、上記金属材料や車体などに、各種電着塗料などの下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好適である。
【0016】
有機溶剤型中塗り塗料(X)
上記被塗物に塗装される有機溶剤型中塗り塗料(X)としては、被膜形成性樹脂(A)及び有機溶剤を含有し、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤などを配合してなる液状塗料を使用することができる。なお、本明細書において、有機溶剤型塗料とは溶媒の主成分が有機溶剤である塗料を指称する。
【0017】
被膜形成性樹脂(A)
本発明において、有機溶剤型中塗り塗料(X)に使用される被膜形成性樹脂(A)は、水酸基、カルボキシル基などの架橋性官能基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの架橋剤とからなる塗料用樹脂組成物を指称する。なかでも、基体樹脂として、水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂を使用し、そして架橋剤として、アミノ樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有不飽和モノマー及び場合によりさらに該モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーを包含する少なくとも1種の不飽和モノマー成分を通常の条件で(共)重合せしめることによって製造することができる。
【0019】
水酸基含有不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称であり、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの総称である。
【0021】
また、上記水酸基含有不飽和モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−トなどのアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプ
ロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィンなどのフッ素化アルキル基を有する不飽和モノマー;マレイミド基などの光重合性官能基を有する不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物などの含窒素不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩などのスルホン酸基を有する不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのリン酸基を有する不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの紫外線安定化性能を有する不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)などのカルボニル基を有する不飽和モノマー化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性などの観点から、一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは5〜150mgKOH/g、さらに好ましくは10〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは2〜150mgKOH/g、さらに好ましくは3〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。また、水酸基含有アクリル樹脂は、一般に1,000〜500,000、好ましくは2,000〜300,000、さらに好ましくは3,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0023】
水酸基含有アクリル樹脂の配合量は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常2〜90質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜40質量部の範囲内とすることができる。
【0024】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、多塩基酸成分と多価アルコ−ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができ、具体的には、例えば、多塩基酸成分中のカルボキシル基と多価アルコール成分中の水酸基の当量比(COOH/OH)を1未満とし、カルボキシル基に比べ水酸基が多い状態でエステル化反応を行うことによって製造することができる。
【0025】
上記多塩基酸成分は、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物を包含し、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多塩基酸;これらの多塩基酸の無水物;これらの多塩基酸の低級アルキルエステル化物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、上記多価アルコ−ル成分は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物を包含し、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−フェノキシプロパン−1,2−ジオールなどのα−グリコ−ル;ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−フェノキシプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3―オクタンジオール、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート(これはヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化物である)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記多塩基酸成分と多価アルコール成分のエステル化又はエステル交換反応はそれ自体既知の方法により行なうことができ、例えば、上記多塩基酸成分と多価アルコール成分とを約180〜約250℃の温度で重縮合させることによって行うことができる。
【0028】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、該ポリエステル樹脂の調製中又はエステル化反応後に、必要に応じて、脂肪酸、モノエポキシ化合物などで変性することができる。上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸
、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などが挙げられる。
【0029】
水酸基含有ポリエステル樹脂は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性などの観点から、一般に10〜300mgKOH/g、好ましくは25〜250mgKOH/g、さらに好ましくは50〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは2〜100mgKOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。また、水酸基含有ポリエステル樹脂は、一般に500〜50,000、好ましくは1,000〜40,000、さらに好ましくは1,500〜30,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0030】
水酸基含有ポリエステル樹脂の配合量は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常2〜90質量部、好ましくは10〜60質量部、さらに好ましくは15〜50質量部の範囲内とすることができる。
【0031】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、テトラヒドロフランを溶媒として測定した、分子量既知のポリスチレンを標準物質とする換算値である。
【0032】
上記水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂又はウレタン変性ポリエステル樹脂と併用してもよい。
【0033】
また、前記アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどが挙げられる。また、この部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂をアルコールによって部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0034】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましく、中でも、得られる塗膜の耐水性などの観点から、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂などのアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0035】
また、メラミン樹脂は、得られる塗膜の耐水性などの観点から、通常、500〜5,000、特に600〜4,000、さらに特に700〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0036】
また、メラミン樹脂を架橋剤として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸や、これらの酸
とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0037】
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネートなどの有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水などとの付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0038】
また、前記ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものを使用することができる。
【0039】
基体樹脂と架橋剤との配合比率は、これら両者の合計固形分質量に基づき、前者は一般に40〜90%、特に50〜80%、後者は一般に60〜10%、特に50〜20%の範囲内が適している。
【0040】
被膜形成性樹脂(A)は、得られる塗膜のフリップフロップ性向上及びメタリックムラ抑制の観点から、溶解性パラメーター値SPが8.5〜11.0、好ましくは9.0〜10.5、さらに好ましくは9.5〜10.0の範囲内であることが好ましい。
【0041】
上記溶解性パラメーター値は、SP値とも呼ばれ、溶解性の尺度を示すものである。本発明において、被膜形成性樹脂の溶解性パラメーター値は、濁点滴定法により測定された値であって、下記のK.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journalof
Applied Polymer Science,VOL.12,2359〜2370(1968年)の記載参照)に従い算出される。
【0042】

溶解性パラメーター値={(Vml1/2×δ+(Vmh1/2×δ
/{(Vml1/2+(Vmh1/2

ここで、Vml、Vmh、δ及びδは、測定温度20℃において、試料0.5g(
固形分)をアセトン10mLに溶解した中に、n−ヘキサンを加えたときの濁点におけ
る滴定量H(mL)と、測定温度20℃において、試料0.5g(固形分)をアセトン
10mLに溶解した中に、脱イオン水を加えたときの濁点における滴定量D(mL)と
を、下記式に適用することにより算出される値である。
ml=74.4×130.3/{(1−V)×130.3+V×74.4}
mh=74.4×18/{(1−V)×18+V×74.4}
=H/(10+H)
=D/(10+D)
δ=9.75×10/(10+H)+7.24×H/(10+H)
δ=9.75×10/(10+D)+23.43×D/(10+D)
【0043】
なお、各溶剤の分子容(mL/mol)は、アセトン:74.4、n−ヘキサン:130.3、脱イオン水:18であり、各溶剤のSP値は、アセトン:9.75、n−ヘキサン:7.24、脱イオン水:23.43である。
【0044】
また、被膜形成性樹脂(A)が基体樹脂及び架橋剤などの2種以上の成分からなる場合、被膜形成性樹脂の溶解性パラメーター値は、各成分の溶解性パラメーター値に質量分率を乗じたものを合計した値である。
【0045】
有機溶剤型中塗り塗料(X)において、さらに必要に応じて配合される前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン;亜鉛華;カーボンブラック;モリブデンレッド;プルシアンブルー;コバルトブルー;パーマネントレッド、ジスアゾイエローなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレットなどのキナクリドン系顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料;アンスラピリミジンイエロー、ジアンスラキノニルレッド、インダンスロンブルーなどのスレン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどのペリレン系顔料;カルバゾールバイオレットなどのジオキサジン系顔料;DPPレッドなどのジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、酸化チタン及びカーボンブラックを好適に使用することができる。
【0046】
有機溶剤型中塗り塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常1〜150質量部、好ましくは10〜120質量部、さらに好ましくは15〜90質量部の範囲内であることができる。
【0047】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0048】
有機溶剤型中塗り塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常1〜100質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは8〜40質量部の範囲内であることができる。
【0049】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレークなどを挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
また、上記光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0051】
有機溶剤型中塗り塗料(X)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質
量部の範囲内であることができる。
【0052】
また、有機溶剤型中塗り塗料(X)は、得られる塗膜のフリップフロップ性及び平滑性の観点から、塗料中の固形分濃度が30〜65質量部、好ましくは35〜60質量部、さらに好ましくは40〜55質量部の範囲内であることが好適である。
【0053】
有機溶剤型中塗り塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜35μmの範囲内とすることができる。
【0054】
有機溶剤型ベース塗料(Y)の塗装
上記の如くして形成される中塗り塗膜上には、次いで、有機溶剤型ベース塗料(Y)が塗装される。
【0055】
上記中塗り塗膜は、得られる塗膜のフリップフロップ性向上及びメタリックムラ抑制の観点から、有機溶剤型ベース塗料(Y)を塗装する前に、該中塗り塗膜の固形分含有率が70〜100質量%、特に75〜99質量%、さらに特に80〜98質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0056】
ここで、中塗り塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に有機溶剤型中塗り塗料(X)を被塗物に塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも有機溶剤型中塗り塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、有機溶剤型中塗り塗料(X)の塗膜に対するのと同じようにして放置(セッティング)などがされた該アルミホイルを有機溶剤型ベース塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
中塗り塗膜の固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
【0057】
上記中塗り塗膜の固形分含有率は、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の有機溶剤の沸点を調整したり、該有機溶剤型中塗り塗料(X)を塗装してから上記有機溶剤型ベース塗料(Y)を塗装するまでの放置(セッティング)時間を変動させたりすることによって、調整することができる。
【0058】
有機溶剤型ベース塗料(Y)
中塗り塗膜上に塗装される有機溶剤型ベース塗料(Y)としては、被膜形成性樹脂(B)及び有機溶剤(C)を含有し、さらに必要に応じて、該有機溶剤(C)以外の有機溶剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤などを配合してなる液状塗料を使用することができる。
【0059】
被膜形成性樹脂(B)
上記被膜形成性樹脂(B)は、被膜形成性樹脂(A)の場合と同様に、水酸基、カルボキシル基などの架橋性官能基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などの架橋剤とからなる塗料用樹脂組成物を指称する。なかでも、基体樹脂として、水酸基含有アクリル樹脂及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂を使用し、そして架橋剤として、アミノ樹脂を使用することが好ましい。
【0060】
本発明において、被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPは、被膜形成性
樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと0.2以上異なる値を有する。すなわち、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が0.2以上である。なかでも、(SP−SP)の絶対値が0.2〜3.0の範囲内であることが好ましく、0.25〜2.0の範囲内であることがさらに好ましい。また、被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPが、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPより高いことが好ましい。
【0061】
被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値の調整は、被膜形成性樹脂(A)及び被膜形成性樹脂(B)として使用する基体樹脂及び硬化剤の種類を変えたり、該基体樹脂のモノマー組成を変えたりすることによって行うことができる。具体的には、例えば、比較的高い溶解性パラメーター値を有するアクリル樹脂を、有機溶剤型中塗り塗料(X)中よりも有機溶剤型ベース塗料(Y)中に多く配合することによって調整することが好適である。
【0062】
有機溶剤(C)
有機溶剤(C)は、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPとの差が1以下の有機溶剤である。すなわち、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと有機溶剤(C)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が1以下となる。なかでも、(SP−SP)の絶対値が0.05〜0.95の範囲内であることが好ましく、0.1〜0.9の範囲内であることがさらに好ましい。また、有機溶剤(C)の溶解性パラメーター値SPが、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPより低いことが好ましい。
【0063】
なお、本発明において、有機溶剤の溶解性パラメーター値は、Journal of Paint Technology,Vol.42 No.541,76〜118(1970年2月)の記載に基づくものである。
【0064】
また、本発明において、有機溶剤型ベース塗料(Y)は、有機溶剤(C)を、被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として、20〜800質量部、好ましくは40〜500質量部、さらに好ましくは50〜400質量部含有する。
【0065】
本発明の複層塗膜形成方法において、特定の被膜形成性樹脂及び有機溶剤を使用することにより、フリップフロップ性が高く、メタリックムラが抑制された優れた外観を有する塗膜が形成される理由としては、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPが、有機溶剤型ベース塗料(Y)中の被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPと一定値以上離れているため、中塗り塗膜とベース塗膜界面における混層が起こりにくく、光輝性顔料の配向が乱れにくいため、形成される塗膜のフリップフロップ性が向上することが推察される。また、有機溶剤型ベース塗料(Y)中の有機溶剤(C)の溶解性パラメーター値SPが、有機溶剤型中塗り塗料(X)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPに近いため、中塗り塗膜上に有機溶剤型ベース塗料(Y)が塗装した後に、ベース塗膜中の有機溶剤(C)が中塗り塗膜中に移行し、ベース塗膜の粘度が上昇するため、ベース塗膜中の光輝性顔料が動きにくくなり、メタリックムラが抑制されることが推察される。
【0066】
また、得られる塗膜のフリップフロップ性の観点から、有機溶剤(C)の沸点は、一般に160〜230℃、好ましくは170〜220℃、さらに好ましくは180〜210℃の範囲内にあることが好適である。このような有機溶剤としては、具体的には、例えば、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(いずれも商品名、コスモ石油社製、
石油系芳香族炭化水素系溶剤)などを好適に使用することができる。
【0067】
また、得られる塗膜のフリップフロップ性の観点から、有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の粘度(VY1)は、せん断速度230sec−1及び温度20℃の条件下で測定して、一般に0.5〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは10〜20mPa・secの範囲内にあり、そして有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の塗着1分後の粘度(VY2)が、せん断速度1.15sec−1及び温度20℃の条件下で測定して、一般に10,000〜50,000、好ましくは15,000〜45,000、さらに好ましくは20,000〜40,000mPa・secの範囲内にあることが好適である。
【0068】
有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の粘度(VY1)は、粘弾性測定装置を用いて、温度20℃において、せん断速度を10,000sec−1から0.0001sec−1まで変化させたときの230sec−1で測定したときの粘度であって、粘弾性測定装置としては、例えば、「HAAKE RheoStress RS150」(商品名、HAAKE社製)を用いることができる。
【0069】
また、有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の塗着1分後の粘度(VY2)は、有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)を、縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのブリキ板に、硬化膜厚が15μmとなるように塗装し、該有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)がブリキ板に塗着して1分経過後の塗膜の一部をへらなどで掻きとって採取し、上記粘弾性測定装置を用いて、温度20℃において、せん断速度を10,000sec−1から0.0001sec−1まで変化させたときの1.15sec−1で測定したときの粘度である。
【0070】
有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の粘度(VY1)及び塗着1分後の粘度(VY2)は、例えば、有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)中の前記増粘剤の配合量を調節することによって調整することができる。
【0071】
有機溶剤型ベース塗料(Y)において、さらに必要に応じて配合される前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン;亜鉛華;カーボンブラック;モリブデンレッド;プルシアンブルー;コバルトブルー;パーマネントレッド、ジスアゾイエローなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレットなどのキナクリドン系顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料;アンスラピリミジンイエロー、ジアンスラキノニルレッド、インダンスロンブルーなどのスレン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンマルーンなどのペリレン系顔料;カルバゾールバイオレットなどのジオキサジン系顔料;DPPレッドなどのジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0072】
有機溶剤型ベース塗料(Y)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、有機溶剤型ベース塗料(Y)中の被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として、通常1〜150質量部、好ましくは3〜120質量部、さらに好ましくは5〜90質量部の範囲内であることができる。
【0073】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0074】
有機溶剤型ベース塗料(Y)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、有機溶剤型ベース塗料(Y)中の被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として、通常1〜100質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは8〜40質量
部の範囲内であることができる。
【0075】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレークなどを挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0076】
また、上記光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が1〜100μm、特に5〜40μm、厚さが0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0077】
有機溶剤型ベース塗料(Y)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、有機溶剤型ベース塗料(Y)中の被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは3〜30質量部、さらに好ましくは5〜25質量部の範囲内であることができる。
【0078】
また、有機溶剤型ベース塗料(Y)は、得られる塗膜のフリップフロップ性向上及びメタリックムラ抑制の観点から、塗料中の固形分濃度が10〜30質量部、好ましくは12〜28質量部、さらに好ましくは15〜25質量部の範囲内であることが好適である。
【0079】
有機溶剤型ベース塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常1〜30μm、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは3〜15μmの範囲内とすることができる。
【0080】
有機溶剤型クリヤー塗料(Z)の塗装
上記の如くして形成される有機溶剤型ベース塗料(Y)の未硬化塗膜上には、さらに、有機溶剤型クリヤー塗料(Z)が塗装される。
【0081】
有機溶剤型クリヤー塗料(Z)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができる。具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂などの架橋剤を樹脂成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料などを使用することができる。なかでも、水酸基含有アクリル樹脂及びメラミン樹脂を含んでなる熱硬化型塗料、水酸基含有アクリル樹脂及びブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含んでなる熱硬化型塗料又はカルボキシル基含有樹脂及びエポキシ基含有樹脂を含んでなる熱硬化型塗料が特に好ましい。
【0082】
また、上記有機溶剤型クリヤー塗料(Z)としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料などの二液型塗料を用いてもよい。
【0083】
また、有機溶剤型クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に、前記着色顔料、光輝性顔料、染料などを含有させることができ、さらに体質顔料、硬化
触媒、紫外線吸収剤、光安定化剤、消泡剤、増粘剤、表面調整剤などを適宜含有せしめることができる。
【0084】
有機溶剤型クリヤー塗料(Z)は、有機溶剤型ベース塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。通常、乾燥膜厚で10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0085】
有機溶剤型クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて室温で1〜60分間、好ましくは3〜20分間の放置(セッティング)時間をおいたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱することができる。
【0086】
焼付け
以上に述べた如くして形成される中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の3層の塗膜からなる複層塗膜は、通常の塗膜の焼付け手段により、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより、約80〜約170℃、好ましくは約120〜約160℃の温度で約20〜約40分間程度加熱して同時に硬化させることができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を揚げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0088】
被膜形成性樹脂の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン50部及び酢酸ブチル20部を仕込み115℃に昇温後、スチレン5部、メチルメタクリレート50部、n−ブチルアクリレート15.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、「プラクセル FM3X」(商品名、ダイセル化学工業社製、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのε−カプロラクトン3mol付加体のキシレン希釈品、固形分80%)20部、ジメチルアミノエチルメタクリレート1.5部、アクリル酸1部、キシレン15部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにキシレン5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにキシレン10部を加え、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は溶解性パラメーター値が10.86、酸価が7.8mgKOH/g、水酸基価が69.5mgKOH/g、重量平均分子量が40,000であった。
【0089】
製造例2
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物107.8部、1,6−ヘキサンジオール85.8部及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート71.3部を、エステル化触媒のジブチル錫オキサイド0.063部の存在下に、230℃に加熱し、1時間保った後、キシレンを加え、同温度で約6時間水を留去しながら還流させて、水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、溶解性パラメーター値が9.5、水酸基価が194mgKOH/g、酸価が2mgKOH/g、重量平均分子量が8,000であった。
【0090】
有機溶剤型中塗り塗料(X)の製造
製造例3
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC)80部、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)40部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1.7部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク)3部及びキシレン15部からなる混合物に、ガラスビーズを加え、ペイントシェーカーで30分間分散した後、ガラスビーズを除去して、顔料分散ペーストを得た。
次いで、上記顔料分散ペースト154.7部、製造例2で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE)43部、メラミン樹脂(MF−1)(メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分含有率70%、溶解性パラメーター値9.06、重量平均分子量2,800)43部、キシレン20部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート64部を攪拌混合して塗料化を行い、固形分含有率49%の有機溶剤型中塗り塗料(X−1)を得た。得られた有機溶剤型中塗り塗料(X−1)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPは9.91であった。
【0091】
製造例4
製造例3において、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート64部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート32部及び酢酸3−メトキシブチル32部からなる混合溶剤に変更する以外は製造例3と同様にして、固形分含有率49%の有機溶剤型中塗り塗料(X−2)を得た。得られた有機溶剤型中塗り塗料(X−2)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPは9.91であった。
【0092】
製造例5
製造例3において、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート64部を、酢酸3−メトキシブチル64部に変更する以外は製造例3と同様にして、固形分含有率49%の有機溶剤型中塗り塗料(X−3)を得た。得られた有機溶剤型中塗り塗料(X−3)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPは9.91であった。
【0093】
有機溶剤型ベース塗料(Y)の製造
製造例6
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(AC)100部、製造例2で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE)29部、メラミン樹脂(MF−2)(ブチルエーテル化メラミン樹脂、固形分含有率60%、溶解性パラメーター値9.75、重量平均分子量2,000)50部、「スワゾール1500」(商品名、コスモ石油社製、石油系芳香族炭化水素系溶剤、溶解性パラメーター値9.02、沸点183〜207℃)30部、酢酸ブチル(溶解性パラメーター値8.69、沸点127℃)320部、キシレン(溶解性パラメーター値8.89、沸点138〜144℃)70部、「GX−180A」(旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)16.2部及び「ディスパロン6900」(商品名、楠本化成社製、増粘剤、固形分含有率10%)3部を攪拌混合して塗料化を行い、固形分含有率18%の有機溶剤型ベース塗料(Y−1)を得た。得られた有機溶剤型ベース塗料(Y−1)のせん断速度230sec−1、温度20℃における粘度(VY1)は18mPa・secであった。また、得られた有機溶剤型ベース塗料(Y−1)中の被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPは10.26であった。
【0094】
製造例7〜16
製造例6において、配合組成を下記表1に示す通り変更する以外は、製造例6と同様にして、有機溶剤型ベース塗料(Y−2)〜(Y−11)を得た。得られた有機溶剤型ベース塗料の固形分含有率、せん断速度230sec−1、温度20℃における粘度(VY1)及び得られた有機溶剤型ベース塗料中の被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値
SPを、製造例6で得た有機溶剤型ベース塗料(Y−1)と併せて、下記表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
塗膜形成方法
前記製造例3〜5で得た有機溶剤型中塗り塗料(X−1)〜(X−3)及び上記製造例6〜16で得た有機溶剤型ベース塗料(Y−1)〜(Y−11)を用い、以下のようにしてそれぞれ試験塗板を作製し、評価試験を行なった。
【0097】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0098】
実施例1
上記試験用被塗物及び前述した塗着塗膜の固形分含有率測定用のアルミホイル上に、それぞれ、製造例3で得た有機溶剤型中塗り塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が20μmとなるように静電塗装し、中塗り塗膜を形成した。1分間放置(セッティング)後、該中塗り塗膜の固形分含有率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0099】
次いで、製造例6で得た有機溶剤型ベース塗料(Y−1)を、上記中塗り塗膜及び前述した有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の塗着1分後の粘度(VY2)測定用のブリキ板上に、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚が12μmとなるように静電塗装し、ベース塗膜を形成した。1分間放置(セッティング)後、有機溶剤型ベース塗料組成物(Y)の塗着1分後の粘度(VY2)を測定した。
【0100】
さらに、上記ベース塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が30μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、
140℃で30分間加熱して、上記中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験塗板を作製した。
【0101】
実施例2〜11、比較例1〜2
実施例1において、製造例3で得た有機溶剤型中塗り塗料(X−1)を表2に示す有機溶剤型中塗り塗料(X−1)〜(X−3)のいずれかに変更し、製造例6で得た有機溶剤型ベース塗料(Y−1)を表2に示す有機溶剤型ベース塗料(Y−2)〜(Y−11)のいずれかに変更する以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0102】
なお、製造例3〜5で得た有機溶剤型中塗り塗料(X−1)〜(X−3)中の被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPはいずれも9.91であり、「スワゾール1500」及び「スワゾール1000」の溶解性パラメーター値は9.02であることから、「スワゾール1500」及び「スワゾール1000」は有機溶剤(C)に該当する。
【0103】
評価試験
上記実施例1〜11及び比較例1〜2で得られた各試験塗板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を表2に示す。
【0104】
(試験方法)
フリップフロップ性: 各試験塗板について、X−Rite社製の多角度分光測色計「MA68II」を用いてFI値を測定した。FI値はFlop Indexの略であり、この値が大きいほどフリップフロップ性が高く、塗膜外観に優れていることを示す。
メタリックムラ: 各試験塗板を目視観察し、下記の基準でメタリックムラを評価した。
◎:メタリックムラが認められない、
○:メタリックムラがほとんど認められない、
△:メタリックムラが少し認められる、
×:メタリックムラが多く認められる。
【0105】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、被膜形成性樹脂(A)を含有する有機溶剤型中塗り塗料(X)、被膜形成性樹脂(B)及び有機溶剤(C)を含有する有機溶剤型ベース塗料(Y)及び有機溶剤型クリヤー塗料(Z)を順次塗装し、形成される中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に焼付け硬化させることを含んでなり、被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと被膜形成性樹脂(B)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が0.2以上であり、かつ被膜形成性樹脂(A)の溶解性パラメーター値SPと有機溶剤(C)の溶解性パラメーター値SPとの差(SP−SP)の絶対値が1以下であり、そして有機溶剤型ベース塗料(Y)中の有機溶剤(C)の含有量が被膜形成性樹脂(B)の固形分100質量部を基準として20〜800質量部の範囲内にあることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
有機溶剤(C)の沸点が160〜230℃の範囲内にある請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
有機溶剤型ベース塗料(Y)の粘度(VY1)が、せん断速度230sec−1及び温度20℃の条件下で測定して、0.5〜100mPa・secの範囲内にあり、かつ、該有機溶剤型ベース塗料(Y)の塗着1分後の粘度(VY2)が、せん断速度1.15sec−1及び温度20℃の条件下で測定して、10,000〜50,000mPa・secの範囲内にある請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2010−82529(P2010−82529A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253578(P2008−253578)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】