説明

複層塗膜形成方法

【課題】3コート1ベーク方式により平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成する方法を提供すること。
【解決手段】被塗物上に、水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程;中塗り塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程;中塗り塗膜上に、沸点が170〜250℃のアルコール系溶剤を30〜55質量部含有する水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程;ベース塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程;ベース塗膜上に、カルボキシル基含有化合物30〜70質量部及びポリエポキシド70〜30質量部を含有し、特定の貯蔵弾性率を有するクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程;中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を100〜120℃で3〜10分間加熱し、その後さらに130〜160℃で10〜30分間加熱する工程を順次行う複層塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物上に、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を一度に加熱硬化する3コート1ベーク方式により、優れた外観を有する複層塗膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の塗装方法としては、一般に被塗物に電着塗料を施した後、中塗り塗料の塗装→焼付け硬化→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼付け硬化の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年、省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装後の焼付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗料を施した後、水性中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→水性ベース塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→焼付け硬化の3コート1ベーク方式が試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記3コート1ベーク方式による塗装は、中塗り塗料、ベース塗料及びクリヤー塗料が未硬化の状態で塗り重ねられるため、隣接する塗膜間において混層が生じやすく、得られる塗膜の平滑性や鮮映性が低下する場合がある。
【0004】
その対策として、特許文献2には、焼付け硬化工程を、特定の温度・時間条件下での低温加熱段階と高温加熱段階の多段階で行うことによって、仕上り外観及び耐チッピング性に優れた積層塗膜を形成する方法が記載されている。しかしながら、該塗膜形成方法では、中塗り塗料及びベース塗料として水性塗料を使用した際に十分な平滑性及び鮮映性が得られない場合があるという問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、被塗物に、熱硬化性液状塗料組成物を塗装し、次いで加熱硬化するに際して、硬化反応開始前の塗膜の熱流動性が最も大きくなる温度において、応力0.5Pa、周波数0.1Hzでの塗膜の貯蔵弾性率G’を0.5〜20Pa程度の範囲内に、応力0.5Pa、周波数0.1Hzでの塗膜の損失弾性率G”を1.0〜20Pa程度の範囲内に、かつ貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(G’/G”)を0.3〜1.0程度の範囲内になるように制御することにより、該塗料組成物の塗膜平滑性を改良する方法が記載されている。しかしながら、該方法では、上記3コート1ベーク方式による塗装、特に中塗り塗料及びベース塗料として水性塗料を用いた3コート1ベーク方式による塗装において、十分な平滑性及び鮮映性が得られない場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−282773号公報
【特許文献2】特開2004−275966号公報
【特許文献3】特開2003−213218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水性中塗り塗料及び水性ベース塗料を使用する3コート1ベーク方式により、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、水性中塗り塗料及
び水性ベース塗料を使用する3コート1ベーク方式による複層塗膜の塗装工程において、特定の固形分含有率となるように調整した中塗り塗膜上に、特定の水性ベース塗料を塗装し、特定の固形分含有率となるように調整した後、特定のクリヤー塗料を塗装し、さらに、特定の加熱条件で、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を一度に硬化させると、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明は、被塗物上に下記の工程(1)〜(6):
(1) 水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、
(2) 工程(1)で形成された中塗り塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程、
(3) 工程(2)で得られた中塗り塗膜上に、塗料中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、沸点が170〜250℃のアルコール系溶剤を30〜55質量部含有する水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
(4) 工程(3)で形成されたベース塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程、
(5) 工程(4)で得られたベース塗膜上に、塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、カルボキシル基含有化合物30〜70質量部及びポリエポキシド70〜30質量部を含有し、かつ、110℃で10分間保持したときの、応力0.6Pa、周波数0.1Hzにおける塗料の貯蔵弾性率の最大値(G’1)が0.001〜30Paの範囲内にあるクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
(6) 工程(1)〜(5)で形成された中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を100〜120℃で3〜10分間加熱し、その後さらに130〜160℃で10〜30分間加熱することによって、該中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させる工程、
を順次行うことを特徴とする複層塗膜形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従う複層塗膜形成方法に従えば、3コート1ベーク方式により、被塗物上に、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の複層塗膜形成方法を、各工程毎に順を追ってさらに詳細に説明する。
【0012】
工程(1)
本工程では、被塗物上に、水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜が形成せしめられる。
【0013】
被塗物
本発明に従い水性中塗り塗料(X)を適用し得る被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器などの家庭電気製品の外板部などを挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0014】
また、上記被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼などの金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂類や各種のFRPなどのプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリー
トなどの無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)などを挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0015】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。さらに、該被塗物は、上記金属基材、車体などに、各種電着塗料などの下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、なかでも、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が特に好適である。
【0016】
水性中塗り塗料(X)
上記被塗物に塗装される水性中塗り塗料(X)としては、熱硬化性樹脂成分及び水を含有し、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等を配合してなる水性液状塗料を使用することができる。なお、本明細書において、水性塗料とは溶媒の主成分が水である塗料である。
【0017】
上記熱硬化性樹脂成分としては、水酸基などの架橋性官能基及びカルボキシル基などの親水性官能基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂(A)と、メラミン樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物などの架橋剤(B)とからなるそれ自体既知の塗料用樹脂組成物を使用することができる。
【0018】
なかでも、基体樹脂(A)として、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用し、架橋剤(B)として、アミノ樹脂(B1)及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物(B2)を使用することが好適である。
【0019】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、水酸基含有不飽和モノマー及び場合によりさらに該モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーを包含する少なくとも1種の不飽和モノマー成分を通常の条件で(共)重合せしめることによって製造することができる。
【0020】
水酸基含有不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0021】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドとメタクリルアミドの総称であり、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルとメタクリロイルの総称である。
【0022】
また、上記水酸基含有不飽和モノマーと共重合可能な他の不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウ
リル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−トなどのアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィンなどのフッ素化アルキル基を有する不飽和モノマー;マレイミド基などの光重合性官能基を有する不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物などの含窒素不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩などのスルホン酸基を有する不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどのリン酸基を有する不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収性基を有する不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの紫外線安定化性能を有する不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)などのカルボニル基を有する不飽和モノマー化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性などの観点から、一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは2〜100mgKOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは2〜150mgKOH/g、さらに好ましくは5〜100mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、一般に1,000〜5,000,000、好ましくは2,000〜3,000,000、さらに好ましくは3,000〜1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0024】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の基体樹脂(A)と架橋剤(B)の合計(以下、樹脂成分という)固形分100質量部を基準として、通常2〜90質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜40質量部の範囲内とすることができる。
【0025】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、例えば、多塩基酸成分と多価アルコ−ル成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができ、具体的には、例えば、多塩基酸成分中のカルボキシル基と多価アルコール成分中の水酸基の当量比(COOH/OH)を1未満とし、カルボキシル基に比べ水酸基が多い状態でエステル化反応を行うことによって製造することができる。
【0026】
上記多塩基酸成分は、1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多塩基酸;これらの多塩基酸の無水物;これらの多塩基酸の低級アルキルエステル化物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
また、上記多価アルコ−ル成分は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,2−ブチレングリコ−ル、2,3−ブチレングリコ−ル、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシプロパン−1,2−ジオール、3−フェノキシプロパン−1,2−ジオールなどのα−グリコ−ル;ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−フェノキシプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3―オクタンジオール、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ブタンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ジメチロ−ルシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート(これはヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化物である)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)−2,2−プロパン、ビス(4−ヒドロキシヘキシル)メタン、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニット、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン
、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記多塩基酸成分と多価アルコール成分のエステル化又はエステル交換反応はそれ自体既知の方法により行なうことができ、例えば、上記多塩基酸成分と多価アルコール成分とを約180〜約250℃の温度で重縮合させることによって行うことができる。
【0029】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該ポリエステル樹脂の調製中又はエステル化反応後に、必要に応じて、脂肪酸、モノエポキシ化合物などで変性することができる。上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸などが挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などが挙げられる。
【0030】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、一般に10〜300mgKOH/g、好ましくは25〜250mgKOH/g、さらに好ましくは50〜200mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び一般に1〜200mgKOH/g、好ましくは5〜100mgKOH/g、さらに好ましくは10〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、一般に500〜50,000、好ましくは1,000〜40,000、さらに好ましくは1,500〜30,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。
【0031】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、通常2〜90質量部、好ましくは10〜60質量部、さらに好ましくは15〜50質量部の範囲内とすることができる。
【0032】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した数平均分子量及び重量平均分子量を、標準ポリスチレンの分子量を基準にして換算した値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/min及び検出器:RIの条件下で測定することができる。
【0033】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応により伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性ポリエステル樹脂又はウレタン変性アクリル樹脂と併用してもよい。
【0034】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、水溶化又は水分散化を容易にするために、それらに含まれることがあるカルボキシル基の一部又はすべてを塩基性化合物で中和することが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジ
メチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンを挙げることができる。塩基性化合物の使用量としては、基体樹脂(A)の酸基に対して、通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内とすることができる。
【0035】
一方、アミノ樹脂(B1)としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミドなどのアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどが挙げられる。また、この部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂をアルコールによって部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0036】
アミノ樹脂(B1)としては、メラミン樹脂が好ましく、中でも、部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルアルコール及びブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂などのアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0037】
また、メラミン樹脂は、通常、500〜5,000、特に600〜4,000、さらに特に700〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0038】
メラミン樹脂を架橋剤(B)として使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸や、これらの酸とアミンとの塩を触媒として使用することができる。
【0039】
ブロック化ポリイソシアネート化合物(B2)としては、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタンなどのブロック剤でブロックしたものを使用することができる。
【0040】
基体樹脂(A)と架橋剤(B)との配合比率は、これら両者の合計固形分質量に基づき、前者は一般に40〜90%、特に50〜80%、後者は一般に60〜10%、特に50〜20%の範囲内が適している。
【0041】
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、硫酸鉛、鉛酸カルシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、紺青、群青、コバルトブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスロンブルー、黄鉛、合成黄色酸化鉄、透明べんがら(黄)、ビスマスバナデート、チタンイエロー、亜鉛黄(ジンクエロー)、モノアゾイエロー、イソインドリノンイエロー、金属錯塩ア
ゾイエロー、キノフタロンイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、べんがら、鉛丹、モノアゾレッド、キナクリドンレッド、アゾレーキ(Mn塩)、キナクリドンマゼンダ、アンサンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマゼンダ、ペリレンレッド、ジケトピロロピロールクロムバーミリオン、塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、ジオキサジンバイオレット、ペリレンバイオレットなどが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0042】
水性中塗り塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、通常1〜120質量部、好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは15〜90質量部の範囲内とすることができる。
【0043】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどが挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。
【0044】
水性中塗り塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、通常1〜100質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは8〜40質量部の範囲内とすることができる。
【0045】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、ノンリーフィング型もしくはリーフィング型アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
【0046】
水性中塗り塗料(X)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、水性中塗り塗料(X)中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内とすることができる。
【0047】
水性中塗り塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10〜100μm、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜35μmの範囲内とすることができる。
【0048】
工程(2)
工程(1)で形成される水性中塗り塗料(X)の塗膜(以下、中塗り塗膜という場合がある)は、水性ベース塗料(Y)を塗装する前に、該中塗り塗膜の固形分含有率が70〜100質量%、特に75〜100質量%、さらに特に80〜100質量%の範囲内となるように調整される。
【0049】
ここで、中塗り塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性中塗り塗料(X)を被塗物に塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性中塗り塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、水性中塗り塗料(X)の塗膜に対すると同じようにして予備加熱などがされた該アルミホイルを水性ベース塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
中塗り塗膜の固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
【0050】
中塗り塗膜の固形分含有率の調整は、予備加熱(プレヒート)、エアブローなどの手段により行なうことができる。上記プレヒートは、通常、塗装された被塗物を乾燥炉内で、約30〜約100℃、好ましくは約40〜約90℃、さらに好ましくは約60〜約80℃の温度で30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは3〜5分間程度直接的又は間接的に加熱することにより行うことができ、また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃〜約80℃の温度に加熱された空気を吹き付けることにより行うことができる。
【0051】
工程(3)
工程(2)により固形分含有率が調整された中塗り塗膜上には、次いで、水性ベース塗料(Y)が塗装される。
【0052】
水性ベース塗料(Y)
本発明において使用される水性ベース塗料(Y)には、熱硬化性樹脂成分及び水を含有し、さらに、沸点が170〜250℃、好ましくは180〜240℃のアルコール系溶剤を、塗料中の樹脂成分固形分100質量部を基準として30〜55質量部、好ましくは35〜55質量部の範囲内で含有する水性液状塗料が包含される。
【0053】
沸点が170〜250℃のアルコール系溶剤としては、例えば、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられ、なかでも、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール及びエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルを好適に使用することができる。
【0054】
また、熱硬化性樹脂成分としては、水性中塗り塗料(X)について説明した、水酸基などの架橋性官能基及びカルボキシル基などの親水性官能基を有する、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂(A)と、メラミン樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物などの架橋剤(B)とからなるそれ自体既知の塗料用樹脂組成物を使用することができる。
【0055】
なかでも、基体樹脂(A)として、前述の水酸基含有アクリル樹脂(A1)及び/又は水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を使用し、架橋剤(B)として、アミノ樹脂(B1)及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物(B2)を使用することが好適である。
【0056】
また、水性ベース塗料(Y)は、さらに必要に応じて、前述した如き着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の顔料;硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などの通常の塗料用添加剤等をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて含有することができる。
【0057】
なかでも、水性ベース塗料(Y)において、顔料成分の少なくとも1種として光輝性顔料を用いることが、緻密感を有するメタリック調又はパール調の塗膜を形成せしめることができるので好適である。
【0058】
水性ベース塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲内とすることができる。
【0059】
工程(4)
工程(3)で形成される水性ベース塗料(Y)の塗膜(以下、ベース塗膜という場合がある)は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、該ベース塗膜の固形分含有率が70〜100質量%、特に75〜100質量%、さらに特に80〜100質量%の範囲内となるように調整される。
【0060】
ここで、ベース塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、水性ベース塗料(Y)を中塗り塗膜上に塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性ベース塗料(Y)を塗装する。続いて、塗装後、水性ベース塗料(Y)の塗膜に対すると同じようにして予備加熱などがされた該アルミホイルをクリヤー塗料(Z)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
ベース塗膜の固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
【0061】
ベース塗膜の固形分含有率の調整は、前記予備加熱(プレヒート)、エアブローなどの手段により行なうことができる。プレヒートの温度は、約30〜約100℃、好ましくは約40〜約90℃、さらに好ましくは約60〜約80℃とすることができ、プレヒートの時間は30秒間〜15分間、好ましくは1〜10分間、さらに好ましくは3〜5分間程度とすることができる。
【0062】
工程(5)
工程(4)により固形分含有率が調整されたベース塗膜上には、さらに、クリヤー塗料(Z)が塗装される。
【0063】
クリヤー塗料(Z)としては、例えば、塗料中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、カルボキシル基含有化合物を30〜70質量部、好ましくは35〜65質量部、さらに好ましくは40〜60質量部の範囲内、及びポリエポキシドを70〜30質量部、好ましくは65〜35質量部、さらに好ましくは60〜40質量部の範囲内で含有するクリヤー塗料を使用することができる。
【0064】
上記カルボキシル基含有化合物は、分子中にカルボキシル基を有する化合物であり、通常50〜500mgKOH/g、好ましくは80〜300mgKOH/g、さらに好ましくは100〜250mgKOH/gの範囲内の酸価を有することができる。また、該カルボキシル基含有化合物は、得られる塗膜の平滑性の観点から、通常2,000〜3,000、特に2,200〜2,800の範囲内の重量平均分子量を有することが好適である。
【0065】
上記カルボキシル基含有化合物としては、例えば、下記の重合体(1)〜(3)及び化合物(4)を挙げることができる。
【0066】
重合体(1):分子中に酸無水基をハーフエステル化してなる基を有する重合体
ここで、酸無水基をハーフエステル化してなる基とは、酸無水基に脂肪族モノアルコールを付加せしめて開環させる(即ち、ハーフエステル化する)ことにより得られるカルボ
キシル基とカルボン酸エステル基とからなる基を意味する。以下、この基を単にハーフエステル基ということがある。
【0067】
重合体(1)は、例えば、ハーフエステル基を有する不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、常法により共重合させることによって容易に得ることができる。また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーに代えて、酸無水基を有する不飽和モノマーを用いて同様に共重合させた後、該酸無水基をハーフエステル化することによっても容易に得ることができる。
【0068】
酸無水基を有する不飽和モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、また、ハーフエステル基を有する不飽和モノマーとしては、上記酸無水基を有する不飽和モノマーの酸無水基をハーフエステル化したものなどが挙げられる。なお、ハーフエステル化は、上記のとおり、共重合反応の前後のいずれに行ってもよい。
【0069】
ハーフエステル化に使用される脂肪族モノアルコールとしては、低分子量のモノアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。ハーフエステル化は、通常の方法に従い、例えば、室温ないし約80℃の温度で、必要に応じ3級アミンを触媒として用いて行なうことができる。
【0070】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーなどを挙げることができる。
【0071】
水酸基含有不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とのモノエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとのモノエーテル;無水マレイン酸や無水イタコン酸のような酸無水基含有不飽和化合物と、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類とのモノエステル化物又はジエステル化物;ヒドロキシエチルビニルエーテルのようなヒドロキシアルキルビニルエーテル類;アリルアルコールなど;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;α,β−不飽和カルボン酸と、「カージュラE10P」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)やα−オレフィンエポキシドのようなモノエポキシ化合物との付加物;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸、脂肪酸類のような一塩基酸との付加物;上記水酸基含有不飽和モノマーとラクトン類(例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン)との付加物などを挙げることができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシブチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシブチル、メタクリル酸エトキシブチルなどのアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数2〜18のアルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
【0073】
ビニルエーテル又はアリールエーテルとしては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテルなどの鎖状アルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、トリビニルエーテルなどのアリールビニルエーテル類、ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテルなどのアラルキルビニルエーテル類;アリルエチルエーテルなどのアリルエーテル類などが挙げられる。
【0074】
オレフィン系化合物及びジエン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0075】
炭化水素環含有不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェニルプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、p−tert−ブチル−安息香酸と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとのエステル化物、ジシクロペテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0076】
含窒素不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの重合性アミド類;2−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、4−ビニルピリジンなどの芳香族含窒素モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性ニトリル;アリルアミンなどが挙げられる。
【0077】
加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーとしては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0078】
ハーフエステル基又は酸無水物基を有する不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーの共重合は、一般的な不飽和モノマーの重合法を用いて行うことができるが、汎用性やコストなどを考慮して、有機溶剤中における溶液型ラジカル重合法により行うことが最
も適している。例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテートなどのエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などの溶剤中で、アゾ系触媒、過酸化物系触媒などの重合開始剤の存在下に、約60〜約150℃の温度で共重合反応を行なうことによって、容易に目的とする重合体を得ることができる。
【0079】
ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーの各モノマーの共重合割合は、通常、全モノマーの合計質量を基準にして、次のような割合とするのが適当である。即ち、ハーフエステル基又は酸無水基を有する不飽和モノマーは、硬化性や貯蔵安定性などの観点から、一般に5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内とすることができ、また、その他の重合性不飽和モノマーは一般に60〜95質量%、好ましくは70〜90質量%の範囲内とするのが適当である。さらに、その他の重合性不飽和モノマーのうちスチレンの使用量は、硬化塗膜の耐候性の観点から、20質量%程度までとするのが適当である。
【0080】
重合体(2):分子中にカルボキシル基を有するビニル系重合体
重合体(2)は、カルボキシル基含有不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、重合体(1)の場合と同様の方法により共重合させることによって容易に得ることができる。
【0081】
該カルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また、その他の重合性不飽和モノマーとしては、重合体(1)で例示した(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0082】
重合体(3):カルボキシル基含有ポリエステル系重合体
カルボキシル基含有ポリエステル系重合体は、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの多価カルボン酸との縮合反応によって容易に得ることができる。例えば、多価カルボン酸のカルボキシル基過剰配合の条件下で1段階の反応により、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができ、また、逆に多価アルコールの水酸基過剰配合の条件下でまず水酸基末端のポリエステル系重合体を合成した後、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸などの酸無水基含有化合物を後付加させることによっても、カルボキシル基含有ポリエステル系重合体を得ることができる。
【0083】
化合物(4):ポリオールと1,2−酸無水物との反応により生成するハーフエステル
ハーフエステルは、ポリオールと1,2−酸無水物とを、酸無水物の開環反応が起こり且つ実質上ポリエステル化反応が起こらないような条件下で反応させることにより得ることができ、その反応生成物は一般に低分子量でありかつ狭い分子量分布を有している。また、該反応生成物は塗料組成物中において低い揮発性有機物含有量を示し、しかも、形成される塗膜に優れた耐酸性などを付与する。
【0084】
該ハーフエステルは、例えば、ポリオールと1,2−酸無水物とを、不活性雰囲気、例えば窒素雰囲気中で溶媒の存在下に反応させることにより得ることができる。好適な溶媒
としては、例えば、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;その他の有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0085】
反応温度は150℃程度以下の低い温度が好ましく、具体的には、通常約70〜約150℃、特に約90〜約120℃の温度が好ましい。反応時間は基本的には反応温度に多少依存して変化するが、通常10分〜24時間程度とすることができる。
【0086】
酸無水物/ポリオールの反応割合は、酸無水物を単官能として計算した当量比で、通常0.8/1〜1.2/1、好ましくは0.85/1〜1.15/1の範囲内とすることができ、これにより所望のハーフエステルを最大限に得ることができる。
【0087】
所望のハーフエステルの調製に用いられる酸無水物は、酸部分の炭素原子を除いて炭素数が2〜30の範囲内にあるものである。そのような酸無水物の例としては、脂肪族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、オレフィン系酸無水物、環状オレフィン系酸無水物及び芳香族酸無水物が挙げられる。これらの酸無水物は、当該酸無水物の反応性又は得られたハーフエステルの特性に悪影響を与えない限りにおいて、置換基を有していてもよい。かかる置換基の例としては、クロロ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。酸無水物の例としては、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキルヘキサヒドロフタル酸無水物(例えばメチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、テトラフルオロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物などが挙げられる。
【0088】
上記酸無水物のハーフエステル化のために使用し得るポリオールとしては、例えば、炭素数2〜20、特に炭素数2〜10のポリオール、好ましくはジオール類、トリオール類及びそれらの混合物が挙げられる。具体的には、脂肪族ポリオール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセロール、1,2,3−ブタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ブタンテトラオールなどが挙げられ、また、芳香族ポリオール、例えば、ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)キシレンなどを用いることもできる。
【0089】
以上に述べたカルボキシル基含有化合物と組み合わせて使用されるポリエポキシドは、分子中にエポキシ基を有する化合物であり、エポキシ基含有量が通常0.8〜15ミリモル/g、特に1.2〜10ミリモル/gの範囲内にあるものが好適である。
【0090】
ポリエポキシドとしては、例えば、エポキシ基含有アクリル系重合体;ジグリシジルエーテル、2−グリシジルフェニルグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル化合物;ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイドなどのグリシジル基及び脂環式エポキシ基含有化合物;ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エポキシシクロヘキセンカルボン酸エチレングリコールジエステル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エ
ポキシ基含有化合物などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、エポキシ基含有アクリル系重合体を使用することが好ましい。
【0091】
上記エポキシ基含有アクリル系重合体は、エポキシ基含有不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマーを、重合体(1)の場合と同様の方法により共重合させることによって容易に得ることができる。
【0092】
上記エポキシ基含有不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート;アリルグリシジルエーテル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの脂環式エポキシ基含有不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0093】
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、重合体(1)について例示した水酸基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエーテル又はアリールエーテル、オレフィン系化合物及びジエン化合物、炭化水素環含有不飽和モノマー、含窒素不飽和モノマー、加水分解性アルコキシシリル基含有アクリル系モノマーなどを挙げることができる。
【0094】
また、上記ポリエポキシドは、一般に1,000〜20,000、特に1,500〜15,000、さらに特に2,000〜5,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好適である。
【0095】
クリヤー塗料(Z)における前記カルボキシル基含有化合物及びポリエポキシドの配合割合は、塗膜の硬化性などの観点から、カルボキシル基含有化合物のカルボキシル基とポリエポキシドのエポキシ基との当量比で、一般に1/0.5〜0.5/1、特に1/0.7〜0.7/1、さらに特に1/0.8〜0.8/1の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0096】
クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、硬化触媒を配合することができる。使用し得る硬化触媒としては、カルボキシル基含有化合物中のカルボキシル基とエポキシド中のエポキシ基との間の開環エステル化反応に有効な触媒として、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライドなどの4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン化合物などを挙げることができる。これらのうち、4級塩触媒が好適である。さらに、該4級塩に該4級塩とほぼ当量のジブチルリン酸などの酸性リン酸化合物を配合したものは、上記触媒作用を損なうことなく、塗料の貯蔵安定性を向上させ且つ塗料の電気抵抗値の低下によるスプレー塗装適正の低下を防ぐことができる点から好適である。
【0097】
上記硬化触媒を配合する場合のその配合割合は、カルボキシル基含有化合物及びポリエポキシドの合計固形分100質量部に対して、通常0.01〜5質量部程度であるのが好ましい。
【0098】
また、クリヤー塗料(Z)は、さらに必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有することができ、さらにまた体質顔料、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤などを適宜含有することができる。
【0099】
上記クリヤー塗料(Z)は、110℃で10分間保持したときの、応力0.6Pa、周波数0.1Hzにおける塗料の貯蔵弾性率の最大値(G’1)が、0.001〜30Pa、
好ましくは0.05〜20Pa、さらに好ましくは0.01〜10Paの範囲内にある塗料組成物である。
【0100】
本発明において、貯蔵弾性率の最大値(G’1)は、クリヤー塗料(Z)を10℃/minの昇温速度で110℃まで加温した後、同温度で10分間保持した際の、応力0.6Pa、周波数0.1Hzにおける貯蔵弾性率(G’)を測定することによって得られる値である。具体的には、例えば、加熱装置を有する粘弾性測定装置を用いて、10℃/minの昇温速度で110℃まで加温後、同温度で10分間保持するという加熱条件で、クリヤー塗料(Z)の、応力0.6Pa、周波数0.1Hzでの貯蔵弾性率(G’)を連続的に測定し、110℃で10分間保持している時の貯蔵弾性率(G’)の最大値を、上記貯蔵弾性率の最大値(G’1)とすることができる。上記粘弾性測定装置としては、「レオストレス RS150」(商品名、HAAKE社製)を使用することができる。
【0101】
上記貯蔵弾性率の最大値(G’1)を調整する方法としては、クリヤー塗料(Z)における樹脂成分の分子量の調整、樹脂成分の極性の調整、増粘剤の添加、溶剤の添加、顔料濃度の調整などを挙げることができる。なかでも、貯蔵弾性率の最大値(G’1)の調整を効果的に行うことができるという観点から、樹脂成分の分子量の調整、特に、カルボキシル基含有樹脂の分子量の調整による方法が特に好適である。
【0102】
クリヤー塗料(Z)は、水性ベース塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などにより塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10〜60μm、好ましくは25〜50μmの範囲内になるようにすることができる。
【0103】
工程(6)
以上に述べた工程(1)ないし(5)で形成される中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜の3層からなる複層塗膜は、100〜120℃で3〜10分間加熱し、その後さらに130〜160℃で10〜30分間加熱することによって、同時に焼付け硬化せしめられる。
【0104】
上記加熱は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより行なうことができる。具体的には、例えば、100〜120℃に調節した乾燥炉に、水性中塗り塗料(X)、水性ベース塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)が順次塗布された被塗物を入れ、3〜10分間保持し、その後、乾燥炉の温度を130〜160℃に調節して10〜30分間加熱保持する方法;両端に出入り口を有し、その中をベルトコンベアにより移動させて乾燥を行うトンネル型乾燥機を準備し、トンネルの内部を低温領域と高温領域とに分けて低温領域は100〜120℃に、高温領域は130〜160℃に温度設定をしておき、まず、低温領域を3〜10分間かけて通過させ、その後、高温領域を10〜30分間かけて通過させる方法;100〜120℃に温度を調節した第1の乾燥炉と、130〜160℃に温度を調節した第2の乾燥炉とを準備し、水性中塗り塗料(X)、水性ベース塗料(Y)及びクリヤー塗料(Z)が順次塗布された被塗物を第1の乾燥炉中に3〜10分間保持し、次いで第2の乾燥炉中に10〜30分間保持する方法;などが挙げられる。
【0105】
水性中塗り塗料及び水性ベース塗料を3コート1ベーク方式により塗装するに際して、本発明の塗膜形成方法を適用することにより、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる理由としては、中塗り塗膜及びベース塗膜の塗料固形分が比較的高く、かつ該ベース塗膜中に残存している揮発分が沸点の比較的高いアルコール系溶剤を多く含む状態で、該ベース塗膜上にカルボキシル基含有化合物及びポリエポキシドを含有するクリヤー塗料が塗装されることにより、該ベース塗膜上にクリヤー塗料が均一に濡れ広がり
、さらに2段階の加熱を行なうことにより、上記アルコール系溶剤等の塗料中の溶媒が穏やかに揮発するため、平滑性及び鮮映性に優れた複層塗膜が形成されることが推察される。さらに、クリヤー塗料が、110℃で10分間保持したときの、応力0.6Pa、周波数0.1Hzにおける塗料の貯蔵弾性率の最大値(G’1)が0.001〜30Paの範囲内である塗料組成物であるため、100〜120℃で3〜10分間加熱する第1段階の加熱時に、ベース塗膜上にクリヤー塗料が均一に濡れ広がり、得られる塗膜の平滑性が向上することが推察される。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0107】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水70.7部及び「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度45%の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が12mgKOH/g、水酸基価が43mgKOH/gであった。
【0108】
モノマー乳化物: 脱イオン水50部、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、エチルアクリレート35部、n−ブチルメタクリレート3.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、アクアロンKH−10 1.0部及び過硫酸アンモニウム0.03部を混合攪拌して、モノマー乳化物を得た。
【0109】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH−10」0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−2)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0110】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、アクアロンKH−10 0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn−ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、アクアロンKH−10 0.31部、過硫
酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn−ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0111】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2−(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、重量平均分子量が13,000であった。
【0112】
製造例4
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み加熱し、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、1−オクタノール(沸点が195℃のアルコール系溶剤)で希釈し、固形分濃度70%の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−2)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、重量平均分子量が6,400であった。
【0113】
水性中塗り塗料(X)の製造
製造例5
製造例3で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−1)56部(樹脂固形分25部)、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「カーボンMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)1部、「バリエースB−35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末、平均一次粒子径0.5μm)15部、「MICRO ACE S−3」(商品名、日本タルク社製、タルク粉末、平均一次粒子径4.8μm)3部及び脱イオン水5部を混合し、2−(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。
【0114】
次に、得られた顔料分散ペースト140部、製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−1)33部、製造例3で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B1−1)33部、「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)26部及び「ユーコートUX−8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)43部を均一に混合した。
【0115】
次いで、得られた混合物に、「UH−752」(商品名、ADEKA社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分4
8%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が30秒の水性中塗り塗料(X−1)を得た。
【0116】
光輝性顔料濃厚液の製造例
製造例6
攪拌混合容器内において、アルミニウム顔料ペースト「GX−180A」(商品名、旭化成メタルズ社製、金属含有量74%)19部、1−オクタノール(沸点が195℃のアルコール系溶剤)35部、リン酸基含有樹脂溶液(注1)8部及び2−(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料濃厚液(P−1)を得た。
(注1)リン酸基含有樹脂溶液: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n−ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、リン酸基含有重合性モノマー(注2)15部、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt−ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt−ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有樹脂溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
(注2)リン酸基含有重合性モノマー: 温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ−ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
【0117】
製造例7
1−オクタノール35部を2−エチル−1−ヘキサノール(沸点が184℃のアルコール系溶剤)35部に変更する以外は、製造例6と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P−2)を得た。
【0118】
製造例8
1−オクタノール35部を2−エチル−1−ヘキサノール(沸点が184℃のアルコール系溶剤)25部及び1−ヘキサノール(沸点が157℃のアルコール系溶剤)10部の混合溶剤に変更する以外は、製造例6と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P−3)を得た。
【0119】
製造例9
1−オクタノール35部を1−ヘキサノール(沸点が157℃のアルコール系溶剤)35部に変更する以外は、製造例6と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P−4)を得た。
【0120】
製造例10
1−オクタノール35部をエチル−3−エトキシプロピオネート(沸点が170℃のエステル系溶剤)35部に変更する以外は、製造例6と同様にして、光輝性顔料濃厚液(P−5)を得た。
【0121】
水性ベース塗料(Y)の製造
製造例11
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂エマルション(A1−2)100部、製造例4で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(A2−2)57部、製造例6で得た光輝性顔料濃厚液(P−1)62部及び「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部を均一に混合し、更に、「プライマルASE−60」(商品名、ロームアンドハース社製、増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えて、pH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒の水性ベース塗料(Y−1)を得た。
【0122】
製造例12〜15
実施例11において、光輝性顔料濃厚液(P−1)を下記表1に示す光輝性顔料濃厚液に変更する以外は、実施例11と同様にして、pH8.0、塗料固形分25%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が40秒の水性ベース塗料(Y−2)〜(Y−5)を得た。
【0123】
カルボキシル基含有化合物の製造
製造例16
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、炭化水素系有機溶剤)680部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記モノマー混合物を一定の速度で4時間かけて滴下した。なお、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートは重合開始剤である。
【0124】
モノマー混合物: スチレン500部、シクロヘキシルメタクリレート500部、イソブチルメタクリレート500部、無水マレイン酸500部、エチル3−エトキシプロピオネート1000部及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート300部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
【0125】
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、さらに、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート10部及び「スワゾール1000」80部の混合物を1時間かけて滴下した。その後、60℃に冷却し、メタノール490部及びトリエチルアミン4部を加え、4時間加熱還流下にハーフエステル化反応を行なった。その後、余分なメタノール326部を減圧下で除去し、固形分55%のカルボキシル基含有化合物溶液(R−1)を得た。カルボキシル基含有化合物は、重量平均分子量が2,500、酸価が130mgKOH/gであった。
【0126】
製造例17
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート300部を360部に変更する以外は、製造例16と同様にして、カルボキシル基含有化合物溶液(R−2)を得た。カルボキシル基含有化合物は、重量平均分子量が2,100、酸価が130mgKOH/gであった。
【0127】
製造例18
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート300部を260部に変更する以外は、製造例16と同様にして、カルボキシル基含有化合物溶液(R−3)を得た。カルボキシル基含有化合物は、重量平均分子量が2,900、酸価が130mgKOH/gであった。
【0128】
製造例19
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート300部を400部に変更する以外は、製造例16と同様にして、カルボキシル基含有化合物溶液(R−4)を得た。
カルボキシル基含有化合物は、重量平均分子量が1,500、酸価が130mgKOH/gであった。
【0129】
製造例20
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート300部を200部に変更する以外は、製造例16と同様にして、カルボキシル基含有化合物溶液(R−5)を得た。カルボキシル基含有化合物は、重量平均分子量が3,500、酸価が130mgKOH/gであった。
【0130】
ポリエポキシドの製造
製造例21
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン410部及びn−ブタノール77部を仕込み、窒素ガス通気下で125℃に昇温した。125℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、下記モノマー混合物を一定の速度で4時間かけて滴下した。なお、アゾビスイソブチロニトリルは重合開始剤である。
【0131】
モノマー混合物: グリシジルメタクリレート432部(30%)、n−ブチルアクリレート720部(50%)、スチレン288部(20%)及びアゾビスイソブチロニトリル144部を混合攪拌して、モノマー混合物を得た。
【0132】
次いで、125℃で窒素ガスを通気しながら30分間熟成させた後、更にキシレン90部、n−ブタノール40部及びアゾビスイソブチロニトリル14.4部の混合物を2時間かけて滴下し、その後2時間熟成して、固形分70%のポリエポキシド溶液を得た。得られたポリエポキシドは、重量平均分子量が2,500、エポキシ基含有量が2.12mmol/gであった。
【0133】
クリヤー塗料(Z)の製造
製造例22
製造例16で得たカルボキシル基含有化合物溶液(R−1)91部(固形分50部)、製造例21で得たポリエポキシド溶液71部(固形分50部)、「TBAB」(商品名、LION AKZO社製、テトラブチルアンモニウムブロマイド、有効成分100%)1部及び「BYK−300」(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分52%)0.2部を均一に混合し、さらに、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、炭化水素系溶剤)を加えて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒のクリヤー塗料(Z−1)を得た。
【0134】
また、得られたクリヤー塗料(Z−1)について、「レオストレス RS150」(製品名、HAAKE社製)を用いて、10℃/minの昇温速度で110℃まで加温後、同温度で10分間保持するという加熱条件で、応力0.6Pa、周波数0.1Hzでの貯蔵弾性率(G’)を連続的に測定した。次いで、クリヤー塗料(Z−1)の温度に対して、クリヤー塗料(Z−1)の貯蔵弾性率(G’)をプロットした測定データから、貯蔵弾性率の最大値(G’1)を得た。クリヤー塗料(Z−1)の貯蔵弾性率の最大値(G’1)は0.02Paであった。
【0135】
製造例23〜26
実施例22において、カルボキシル基含有化合物溶液(R−1)を下記表1に示すカルボキシル基含有化合物溶液(R−2)〜(R−5)に変更する以外は、実施例22と同様にして、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒のクリヤー塗料(Z−2)〜(Z−5)を得た。また、得られたクリヤー塗料(Z−2)〜(Z−5)の貯蔵
弾性率の最大値(G’1)も下記表1に示す。
【0136】
塗膜形成方法
製造例5で得た水性中塗り塗料(X−1)、製造例11〜15で得た水性ベース塗料(Y−1)〜(Y−5)、製造例22〜26で得たクリヤー塗料(Z−1)〜(Z−5)、及び「マジクロンTC−71」(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とメラミン樹脂を含有する熱硬化型クリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−6)」ということがある)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0137】
(試験用被塗物の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0138】
実施例1
上記試験用被塗物に、上記製造例5で得た水性中塗り塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で25μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。プレヒート後の中塗り塗膜の塗料固形分は90質量%であった。
【0139】
次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に製造例11で得た水性ベース塗料(Y−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。プレヒート後のベース塗膜の塗料固形分は85質量%であった。
【0140】
さらに、該ベース塗膜上に製造例22で得たクリヤー塗料(Z−1)を乾燥膜厚で35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した。次いで、該試験用被塗物を105℃に保持された第1の乾燥炉内で7分間保持した後、140℃に保持された第2の乾燥炉内に移し、20分間保持して、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を焼付硬化させることにより試験板を作製した。
【0141】
実施例2〜5、比較例1〜8
実施例1において、水性中塗り塗料塗装後のプレヒート条件を下記表1に示すとおりとし、水性ベース塗料(Y−1)を下記表1に示す水性ベース塗料(Y−1)〜(Y−5)のいずれかに変更し、水性ベース塗料塗装後のプレヒート条件を下記表1に示すとおりとし、クリヤー塗料(Z−1)を下記表1に示すクリヤー塗料(Z−1)〜(Z−6)のいずれかに変更し、塗膜の焼付硬化条件を下記表1に示すとおりとする以外は、実施例1と同様にして試験板を作製した。
【0142】
評価試験
上記実施例1〜5及び比較例1〜8で得られた各試験板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表1に示す。
【0143】
(試験方法)
平滑性: 「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値は、1〜3mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。
鮮映性: 「Wave Scan DOI」によって測定されるWa値を用いて評価した。Wa値は、0.1〜0.3mm程度の波長の表面粗度の振幅の指標であり、測定値が
小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。
【0144】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に下記の工程(1)〜(6):
(1) 水性中塗り塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程、
(2) 工程(1)で形成された中塗り塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程、
(3) 工程(2)で得られた中塗り塗膜上に、塗料中の樹脂成分固形分100質量部を基準として、沸点が170〜250℃のアルコール系溶剤を30〜55質量部含有する水性ベース塗料(Y)を塗装してベース塗膜を形成する工程、
(4) 工程(3)で形成されたベース塗膜の固形分含有率を70〜100質量%に調整する工程、
(5) 工程(4)で得られたベース塗膜上に、塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、カルボキシル基含有化合物30〜70質量部及びポリエポキシド70〜30質量部を含有し、かつ、110℃で10分間保持したときの、応力0.6Pa、周波数0.1Hzにおける塗料の貯蔵弾性率の最大値(G’1)が0.001〜30Paの範囲内にあるクリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程、及び
(6) 工程(1)〜(5)で形成された中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を100〜120℃で3〜10分間加熱し、その後さらに130〜160℃で10〜30分間加熱することによって、該中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させる工程、
を順次行うことを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
クリヤー塗料(Z)が、2,000〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有するカルボキシル基含有化合物を、塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、30〜70質量部含有する請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
工程(2)において、中塗り塗膜を60〜100℃で3〜10分間予備加熱する請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
工程(4)において、中塗り塗膜及びベース塗膜を60〜100℃で3〜10分間予備加熱する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗物が電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により塗装された物品。

【公開番号】特開2010−167382(P2010−167382A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13662(P2009−13662)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】