複数のストランドを等しい張力に調整する方法及びシステム
ダクト内のテンドンの構造用ストランド(1) の張力を調整する方法及びシステムを記載している。ストランド(1)毎にロードセル(22)が取り付けられており、ストランド(1)の張力を調整している間に個々のストランド(1)毎に個別の張力値を測定することができる。張力調整後にロードセル(22)を取り外すか、或いはストランド(1)の張力を継続して監視できるように現場に残すことができる。個別のジャッキ(10)を用いて、ストランド(1)の張力を等しい張力に調整することによって、ロードセル(22)を同時に校正して、各ロードセル(22)の信号を既知の等しい張力値に正規化することができる。全体的なストランド負荷測定値への更なる校正を実施することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用ケーブルの張力調整分野、特に、構造用ケーブルの張力を調整して、ケーブルの張力全体をケーブルの構成要素であるストランドに渡って等しく分散させることに関する。
【背景技術】
【0002】
プリストレスを加えられたケーブルが多くの構造用途に使用され、特に、コンクリートを圧縮した状態に保持することによって、コンクリート構造を補強するために使用されている。多くの用途では、コンクリートに加わる圧縮力の大きさが重要ではなく、ケーブルの張力が破壊的な張力を十分に下回るとともに、圧縮力が所定の最小値を十分に上回るようにすれば、それで十分である。
【0003】
しかし、テンドンの張力を高い設定値で、かつ狭い許容範囲内に調整しなければならない用途が有る。そのような用途には、例えば、原子力発電所設備やガス又は石油貯蔵設備のコンクリート製圧力格納容器が含まれる。そのような格納装置の一貫性は、ポストテンション(PT)テンドンの張力に大きく依存し、そのため、そのような設備の建設業者にとって、荷重調整用テンドンの張力が所定の許容範囲内に調整されていることを証明することが必須である。
【0004】
典型的なPTケーブル又はテンドンは、例えば、ダクトを通して延びるとともに、油圧ジャッキを用いてダクトの一端又は両端から張力を加えられた55本のストランドから構成されている。格納容器は、ダクトがコンクリート内の曲がった経路に沿って延びる円筒形又は球形の構造とすることができる。PTストランドに所要の張力を加えた後、通常円錐形の楔を用いてストランドをアンカープレートに固定している。設置と張力調整が完了した後、ダクト内のストランドの一貫性が保たれていることを保証するとともに、ストランドの張力が依然として所定の許容範囲内に有ることを保証するために、設備の耐用年数に渡って定期検査が必要である。そのような検査では、端部のアンカーを持ち上げるためにジャッキを使用する所謂リフトオフ手法を用いて、テンドンの力を測定することができる。アンカーを動かすのに必要な力がPTケーブルを構成するストランドの束における張力の指標となる。結合された張力調整システムでは、グラウチング時までの如何なる時点でもリフトオフを行なうことができ、結合されていないテンドンでは、この手法を如何なる時でも実施することができる。
【0005】
ダクト内のテンドンの張力を調整する際の一つの難しさは、ストランドとダクト壁の間の摩擦及びストランド同士の間の摩擦の作用である。それらの摩擦作用は、張力調整操作の間及びその後にストランドに渡る力の分布及び/又は各ストランドの長さに沿った力の分布を不均一にするか、或いは変化させる可能性が有る。この問題は、特に、非常に長いストランドを使用する用途と、ストランドに長手方向の力だけでなく、密集させる作用及び/又はダクト壁に押し付ける作用をストランドに及ぼす横方向の力が加わる真っ直ぐでないダクトにおいて一般的となっている。荷重を加えるコンクリートを通って曲がった経路に沿って延びる、横断面が円形のダクト内では、例えば、粗く分散したストランドは、緩みが除去されるのに応じて内側に引っ張られ、場合によっては、ダクト経路の曲率半径に沿った横方向の力と横方向の動きが全てのストランドに加わることとなる。
【0006】
従来技術では、ストランドを個別に引っ張って、緩み無く張り、全てのストランドに相対的に弱い同じ張力を加える第一の事前張力均一化段階と、それに続く所望の張力にまでストランドを一つのグループとしてジャッキで引っ張る主張力調整段階との二つの段階によりPTテンドンの張力調整を実施することが知られている。
【0007】
特許文献1は、そのような複数のストランドの張力を調整して、全てのストランドで等しい張力を実現する方法の一つを記載している。特許文献1は、基準となるストランドの荷重を所望の張力にまで調整することに関する。それは、ロードセルを用いてストランドの張力を測定しながら、基準となるストランドの荷重を調整するためのジャッキを用いて行なわれている。その場合、それ以外のストランドの荷重は、基準となるロードセルによって与えられる力にまで調整されている。より多くのストランドが引っ張られるのに応じて、個々のストランドの個々の荷重が僅かに低下するが、それにも関わらず、荷重調整後に個別の荷重が等しくなるものと仮定している。
【0008】
それに代わる方法が、特許文献2に記載され、そこでは、ストランド毎に一つずつ配置した複数の小型ジャッキを用いて、最終的な張力の約10%の張力を複数のストランドに予め加えている。プリテンション用の個別ジャッキは、同じ圧力源から圧力を供給され、事前張力調整段階が完了した後では、全てのストランドで全ての緩みが除去されて、全てのストランドが同じ張力で引っ張られているものと仮定している。
【0009】
従って、このような特許文献1と2の事前張力調整段階は、全てのストランドに相対的に弱い同じ張力を加えるように構成されている。この段階が完了した後、全てのストランドに一緒に張力を加える単一の大型油圧ジャッキを用いて、所望の最終的な張力にまでストランドを引っ張っている。この主ジャッキ操作の開始時に全てのストランドに同じ等しい張力が加わるとともに、ストランドの材質が同じであることを前提としているので、この主ジャッキ操作の間張力は等しいまま変わらないものと仮定している。ストランドが最終的な張力を加えられて固定された後も、個々のストランドの張力が依然として等しいとの別の仮定も設定されている。
【0010】
前述した通り、従来技術に記載された方法は、張力調整中及び/又はその後のストランドの挙動の均一性に関して重大な前提を設定している。しかし、実際には、ストランドは同じではなく、それらの向きが互いに、並びにそれらの周囲に対して相対的に変化することは、張力調整操作の間に異なる力がストランドに加わることを意味する。特に、個々のストランドは、それ以外のストランドとの間又はそれ以外のストランドとダクト壁の間で縺れたり、詰まったりすることがある。そのような詰まりが起こると、一本のストランドの張力がストランドの長さに沿って不均一に分布する可能性が十分に有る。その結果、たとえ、外見上ストランドの張力が所定又は所望の範囲内に有ると見えても、一本以上のストランドの張力が局所的に所定の安全又は動作上の許容範囲外となる場合が有る。
【0011】
ストランドの張力分布が特に不均一となると、主張力調整段階の間にストランドの一部に動作範囲を超える荷重が加わって、ストランドが壊れる、或いは過負荷状態となる可能性が有る。状況によっては、そのような機械的な障害が検出されずに起こる可能性が有り、その場合、この主ジャッキ操作が、損傷又は破壊したストランドを含むストランドグループに対して進められることとなる。機械的に損傷した一本以上のストランドを含む、そのような束に全体として所望の張力を加えるには、個々のストランドの張力をそれぞれ所定又は所望の張力よりも大きくすることとなる。そのようにして、張力調整が許容範囲内となる一方、個々のストランドが所定の限界値を超えた張力を無意識に加えられる可能性が有る。
【0012】
ストランドがその長さに沿った二つ以上の個所で引っ掛かった場合、張力調整段階の間に異なる状況が出現する可能性も有る。事前張力調整段階の間に、ストランドの端部は所要の張力にまで張力を加えられるが、そのような引っ掛かった二つの個所の間のストランドの区間において、張力がストランドの端部の張力よりも著しく弱くなる場合が有る。そのような場合、それに続く主ジャッキ操作が当該のストランドの張力分布に予期せぬ作用を及ぼす可能性が有る。引っ掛かった個所の一方又は他方が第二の張力調整段階の間に元に戻ると、ストランドのその部分、そのためストランド全長の張力が突然変化することがある。
【0013】
ストランドは、磨耗又は材料欠陥の結果として機械的に弱くなる作用を受ける可能性も有る。そのような機械的な弱さは、突然の障害(破壊)や漸進的な延び(クリープ又は降伏)を引き起し、そのいずれもストランドグループの張力に全体として危険な低下を引き起こす場合が有る。そのような障害が主張力調整段階の間に起こると、弱体化又は破壊したストランドを埋め合わせるために、残りのストランドが過負荷となる。それは明らかに問題であり、ストランドに最大動作負荷(降伏点)に近い張力が加わることとなる。
【0014】
主張力調整段階の間、ストランド内及びストランド間に最も大きな変化と動きが起こるので、これらの作用は、主張力調整段階の間に最も出現し易い。しかし、そのようなストランドの障害又は動きも後日設備の耐用年数の間に、自然に、或いは何らかの応力現象の結果として起こる可能性が有る。そのような理由から、ストランド束の張力が依然として許容範囲内内に有るかを検証するために定期検査が行なわれる。しかし、そのような検査は、通常テンドンの束に対して全体的に実施されている。場合によっては、各ストランドに対して個別にリフトオフ測定を実施することが可能であるが、個々のストランドの検査は、通常実行可能な選択肢である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許公開第0421862号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第0544573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、前記及びそれ以外の従来技術での問題を解決する方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本課題のために、本発明は、複数のストランドの張力を調整する方法を提供し、この方法は、個々のストランド毎の個別の張力を計測するための複数の個別の第一の張力検知手段を配置する第一の工程と、個々のストランド毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさに調整する第二の工程と、各ストランドの張力が同じ共通の第一の張力の大きさに調整された場合に、複数の個別の第一の張力検知手段を用いて、ストランド毎に第一の個別の張力測定値を計測する第三の工程と、複数の第一の張力検知手段によって計測した第一の個別の張力測定値を第一の張力の大きさに校正する第四の工程とを有する。この第一の張力の大きさは、全ての個別ジャッキが個々のストランドの緩みの除去を完了したことを確認できる任意の張力の大きさとするか、或いは予め決まった張力値、例えば、所定の最終的な張力の10%又は15%とすることができる。
【0018】
本発明による方法の変化形態では、本方法は、複数のストランドの張力を第二の張力の大きさに調整する第五の工程と、ストランドの張力が第二の張力の大きさに調整された場合に、個別の第一の張力検知手段を用いて、個々のストランド毎に第二の個別の張力測定値を計測する第六の工程とを更に有する。この第二の張力は、張力調整プロセスの間に任意に選定した張力の大きさとするか、或いは予め決まった張力の大きさ、例えば、所要の最終的な張力の50%又は100%とすることができる。
【0019】
例えば、ロードセルなどの個別の張力検知手段をストランド毎に配備することによって、工事業者が第一及び/又は第二の張力調整工程の間及び/又はその後に個々のストランド毎に張力の進展状況を監視することができる。従って、ストランドの縺れ、詰まり、破壊、或いは不均一な負荷は、次回の検査時ではなく、それが起こった時に検出することができる。校正工程は、全てのストランドの張力が第一の張力に調整された場合に実施されるので、それによって、ロードセルで検出した張力値を第一の張力値に校正する正規化が可能となる。
【0020】
本発明による方法の別の変化形態では、本方法は、複数のストランドの組み合わせた張力を計測する第二の張力検知手段を配置する第七の工程と、この組み合わせた張力を第一の張力検知手段によって検出した個別の張力測定値と比較する第八の工程とを有する。この個別の張力検知手段は、例えば、磁気式負荷センサーとすることができる。
【0021】
本発明による方法の別の変化形態では、本方法は、ストランドの張力を調整した後に個別の張力検知手段を取り外す第九の工程を有する。それに代わって、複数の個別のロードセルを配置して、ストランドの張力が調整された後にそれらが個々のストランドの個別の張力値を提供し続けるようにすることができる。
【0022】
本発明は、複数の構造用スランドの張力を調整するシステムも規定し、このシステムは、ストランド毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさに調整するための個別の張力調整手段と、複数のストランドの張力を第二の張力に調整するための共通の張力調整手段と、ストランド毎の個別の張力測定値を検出するために配置された複数の個別の張力検知部品と、個別の張力測定値を第一の張力の大きさに校正するための第一の校正手段とを備えている。
【0023】
本発明によるシステムの変化形態では、個別の張力調整手段は、一つ以上の個別の油圧ジャッキから構成され、個別の油圧ジャッキは、それぞれ一つのストランドの張力を調整するために配置されている。
【0024】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段は、共通の圧力源から圧力を供給されるか、或いは別個の圧力源から共通の圧力を供給される複数の個別の油圧ジャッキから構成される。
【0025】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段は、ストランドの張力を順番に調整するために移動することが可能な一つの個別の油圧ジャッキから構成される。この個別の張力検知部品は、磁気式負荷センサーとすることができる。
【0026】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力検知部品は、ストランドの引張方向に対してほぼ平行な長手軸に対して垂直な一つ以上の共通の面内に配置される。
【0027】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力検知部品は、ストランドの張力調整が完了した後、その位置に留まって、個々のストランドの個別の張力を測定することができるように配置される。
【0028】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段と共通の張力調整手段は同じものである。
【0029】
本発明の変化形態では、本システムは、複数のストランドの共通の張力を計測するための共通の張力検知手段と、個別の張力検知部品によって計測した個別の張力測定値を共通の張力検知手段によって計測した共通の張力に校正するための第二の校正手段とを備えている。
【0030】
ダクト内のストランドの張力調整と関連して、本発明を説明している。しかし、副ケーブルなどのダクトに閉じ込められていないストランドにも同じ手法を適用することができる。実際に、一群のストランドの張力調整のために本発明を実施することができる。
【0031】
ここで、添付図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による個別の張力調整ジャッキの配列を用いた第一の実施形態の模式的な断面図
【図2】張力が加わっているストランドの周りにロードセルの配列が取り付けられ、ロードセルが単一の面内に配置された模式的な断面図
【図3】図2に図示されたものと同じロードセル配列の平面図
【図4】張力が加わっているストランドの周りにロードセルの配列が取り付けられ、ロードセルが三つの面内にずらして配置された模式的な断面図
【図5】図4に図示されたものと同じロードセル配列の平面図
【図6】本発明による一つの個別の張力調整ジャッキを用いた第二の実施形態の模式的な断面図
【図7】本発明による主張力調整段階を実現するために第二のジャッキを用いた変化形態の模式的な断面図
【図8】本発明による同じユニット内の個別ジャッキの配列と一つの主張力調整ジャッキを用いた別の変化形態の模式的な断面図
【図9】本発明による同じユニット内の個別ジャッキの配列と一つの主張力調整ジャッキを用いた別の変化形態の模式的な断面図
【図10a】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図10b】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図10c】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図11】本発明の様々な実施形態で使用される検証工程を示すグラフ
【図12】荷重PTテンドン内のストランドの張力分布を示す個数分布曲線
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面は、本発明の理解を助けるために提供されており、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を制限するものとして解釈してはならない。異なる図面で使用されている同じ符号は、同じ又は対応する特徴を示すことを意図している。
【0034】
図1は、本発明の第一の実施例による装置の模式的な断面図を図示している。複数のストランド1が荷重を加える構造物5から出現する形で図示されている。これらのストランド1は、ダクトを通して延びるか、或いは(例えば、副ケーブルの場合の)ストランドは、張力を加える構造物5の固定点の間の自由空間に吊るすことができる。ストランド1は、構造物5と、例えば、ストランド1の張力の結果ストランド1を把持する円錐形の楔から成る個別のアンカー部品32を備えたアンカーブロック30とを貫通している。アンカー部品32は、ストランド1に張力が加えられるのに応じた、ストランド1のダクト外への動きとコンクリート製構造物5からのずれを許容する一方、コンクリート製構造物5の方向に戻ることを防止している。
【0035】
摩擦及び衝突を最小限とするため、ストランド1は、好ましくは、構造物内の経路を通って延びており、各ストランド1が、構造物内を通る経路全体に渡って束内のほぼ同じ位置に留まるとともに、ストランド1が、ダクトの各端部の等張力ジャッキ10とアンカーブロック30の対応する開口部と整列するようになっている。
【0036】
ストランド1は、各ストランド1が別個のロードセル22を通過するように、ロードセル配列20を通って延びている。ロードセル22は、例えば、ストランド1の張力が変化するのに応じた鋼鉄製ストランド1の電磁気特性の変化を測定する磁気式ロードセルとすることができる。本装置の幾何学的な形状及びストランド1の材料に合ったものであれば、それらに応じて、それ以外の形式のロードセル22を使用することができる。ロードセル22は、通常使用する特定の形式のストランド1又は一定の範囲の形式のストランドに対して事前に校正されているが、ストランドをロードセル配列内の位置に置いて、張力調整の準備ができた場合に、現場で再度校正することもできる。
【0037】
ロードセル22の配列20としての配置は、後で詳しく説明する図3と5を参照すると、より良く理解できる。アンカーブロック30内のアンカー部品32とジャッキ配列10内のジャッキ11は、対応して配置されている。
【0038】
これらのストランドも、ロードセル配列ユニット22に対して位置決めされ、張力調整を開始する準備ができた等張力ジャッキユニット10内の個別のジャッキ11を通って延びている。個別のジャッキの数は、如何なる好適な数とすることもできる。張力を調整する束は、例えば、図3又は5に図示されたロードセルの配置構成と同様の密集したレイアウトで配置された55本のストランドから構成することができ、その場合、ジャッキ配列10を55個のジャッキから構成することもできる。図1の7本のストランドの断面図は、この例では55本のストランドの配列の横断面に対応するように考えられている。そのような55本のストランドの配列が、図3と5に図示されており、55本のストランドの束に取り付けた55個のロードセルの好ましいレイアウトを図示している。図3と5は、本明細書の後で考察する。
【0039】
等張力ジャッキ10は、同じ圧力源12,13から駆動される複数(例えば、55個)の個別の油圧ジャッキ11から構成される。ストランド1毎に一つのジャッキ11が配備されている。個別のジャッキ11の各々は、例えば、ストランド1の張力が油圧ジャッキの対応するピストンの油圧によって生成される力に到達するまで、特定のストランド1を引き戻した後、元の方向に戻して別の引張ストロークを行なうことを繰り返すことによって、ストランド1の定まらない大きさの緩みを除去することが可能なストローク式油圧ジャッキとすることができる。全ての油圧ジャッキ11は、ほぼ同じであり、そのことは、それらの全てが(例えば、引張ストロークと戻しストロークのための圧力をそれぞれ供給する)同じ圧力源12と13から圧力を供給されているので、全てのジャッキ11が別個のストランド1を同じ張力にまで効果的に引っ張ることを意味する。
【0040】
図1に図示された張力調整用集合体は、次の通り動作する。第一に、個別のジャッキ11によって、ストランド1の張力を特定の張力にまで個別に調整する。第二に、全ての緩みが除去され、ストランド1が同じ共通の張力を加えられたら、その時点の等張力ジャッキ10の油圧を個別のロードセル22を校正するための基準として記録する。個々のジャッキ毎のサイズと(ピストンとシリンダ間の摩擦などの)機械的な特性も精密に分かっており(ジャッキが加える力に油圧をマッピングして、各ジャッキを個別に事前に校正することができ)、各ジャッキ11の圧力の期待値、そのため各ストランド1の張力を正確に計算して、それに対応する当該のストランド1に取り付けられた個別のロードセル22によって実際に得られた張力測定値と比較することができるので、そのような油圧を(測定及び/又は計算によって)厳密な精度で知ることができる。異なるロードセル22の読取り値は、必然的に互いに僅かに変化し、磁気式ロードセルの場合、例えば、温度変動又は鋼鉄製ストランドの機械及び電磁気特性の違いのために変動が起こる可能性が有る。
【0041】
張力調整プロセスにおける、この段階では、全てのストランド1の張力は同じであり、ロードセル22は、そのような張力に再校正されている。これらのストランドも、アンカーブロック30のアンカー部品32によって、ほぼそのような張力に保持されており、必要であれば、アンカーブロック30によって固定してストランドに張力を加えたままで、並びにロードセル配列20をアンカーブロック30に隣接する位置に残したままで、等張力ジャッキを取り外すことができる。ジャッキによる荷重を取り去った場合に、ストランド1の戻る動き及び/又は張力の低下が大きくならないように、円錐形の楔を付勢してロック構造とするとともに、ストランド1の戻る動きを防止するためのスプリング又はそれ以外の付勢部品をアンカーブロック30に配備できることに留意されたい。
【0042】
前述した等張力調整プロセスがストランドの所望の張力を実現できなかった場合、ストランド1に第二の張力調整操作を実施して、所望の張力を加える必要が有る。個別のジャッキの張力調整能力に応じて、等張力調整段階を実施するために使用したものと同じ等張力ジャッキ10を用いて、それを実行することができる。しかし、一般的には、個別のジャッキ11の張力調整能力には限界が有り、ストランドの張力を所望の張力に調整するためには、例えば、ロングストロークジャッキなどの、より強力なジャッキが必要である。この場合、ロードセル配列20の位置を保持したまま、ストランド1から等張力ジャッキ10を取り外した後、より強力なジャッキをストランド及びロードセル配列20に取り付けることができる。このプロセスの間、ロードセル配列は移動又は妨害されないので、等張力調整プロセスの完了時に実施された校正の精度は維持される。第二の主荷重調整段階は、主荷重調整を実施しながら、ストランドの個別の張力を測定、監視する精密に校正されたロードセル配列を配置した状態で進められる。このようにして、望ましくない張力の変化は、それが起こる度に検出して、影響を受けた特定のストランドに限定することができる。そのような望ましくない変化は、例えば、破壊や早過ぎる降伏などのストランドの材料欠陥を示すか、或いは前に考察した一種の詰まりに続く突然の変化(張力の低下又は予期しない急激な張力の上昇)を示す場合が有る。主荷重調整プロセスの間及びその後に、様々なストランドに渡る張力分布が許容範囲内に留まっていることを示すために、校正されたロードセル配列を使用することもできる。主張力調整が実行されている間及び/又はストランド1に目一杯の張力が加えられた時に個別のロードセル出力の間に大きな不一致が検出されなければ、主張力調整が前記の詰まり又は摩擦問題の何れも無しに終了したことの証拠として、それを看做すことができる。他方、個別のロードセル22の出力値の間に大きな不一致が検出されたら、張力調整が満足すべきものでないことを示していると推定するか、或いはその変化の大きさがストランド1の張力を解除して、再設定する根拠を示していると判断することができる。個別のストランド毎に別個のロードセルを使用することは、一連のサンプル測定値の統計的な解釈又は評価を必要とする代わりに、ストランドに渡る張力分布を正確かつ完全に知ることができることを意味する。
【0043】
個別のロードセル22は、好ましくは、出来る限り互いに同形式とすべきであり、特に、ストランド1において監視する必要の有る張力範囲におけるレスポンス特性を互いに同じにすべきである。即ち、ロードセル22を第一の既知の張力に校正したら(即ち、全ての緩みが除去されて、全ての個別のジャッキ11がストランド1の張力が第一の相対的に弱いレベルの張力にまで調整された後)、全てのロードセル22が主荷重調整段階に渡って同様の負荷/出力レスポンス特性を出力して、ロードセル出力間の差がストランドの張力間の差を示すと看做すことができる結果となる。
【0044】
本発明による方法の詳細な実施形態では、個別測定値又は個別測定値の(合計、平均又はそれ以外の統計的な関数などの)集合関数を全てのストランド1の組み合わせた力の測定値と比較することによって、ストランド毎に行なう張力測定を更に検証又は実証することができる。そのような組み合わせた、或いは全体的な力の測定は、主荷重調整段階で使用された主(例えば、ロングストローク)ジャッキによって加えられる応力を測定するために配置されたロードセルを用いて行なうことができる。それに代わって、予め校正して変換しておいた張力値を用いて、或いは油圧ジャッキの幾何学的な形状とサイズに基づく理論的な計算によって、主ジャッキ(この場合、油圧ジャッキ)の油圧測定値からストランドの全体的な荷重測定値を推定することができる。
【0045】
前記の検証/実証工程は、等張力調整段階の間に行なわれた張力測定とは別に、(例えば、第二のジャッキ又はそれ以外の張力調整手段が使用されている場合)第二の張力値を正確に測定又は計算することができる、張力調整プロセスの如何なる時点でも実施することができる。ロードセル配列が両方の荷重調整段階の間中位置を変えず、少なくとも一つの正確に分かっている張力値に精密に校正されているという事実は、両方の荷重調整段階に渡って継続する信頼できる張力測定を表している。第一の荷重調整段階は、各ストランドの張力を同じ張力に調整する等張力調整段階として看做すことができる一方、第二の荷重調整段階がストランドの長さを等しく延ばすことによって荷重調整を行なう等伸長段階であることに留意されたい。
【0046】
図2〜5は、図1に図示されたものと同様のロードセル配列20の二つの例の模式的な断面図と平面図を図示している。図2と4は、それぞれ図3と5のロードセル配列の軸A−AとB−Bに沿った横断面を図示している。両方の場合、張力を測定すべきストランド1毎に一つのロードセル22が配備されている。ロードセル22は、好ましくは、通常ストランド1の周囲を取り囲む二本の誘導巻線として実現されたEMセンサー又は磁歪センサーとして知られる磁気式ロードセルである。これら二本の巻線は、図面では別個に識別できない。使用時には、電気パルスが巻線の一方に加えられて、その結果他方の巻線に誘導されるパルスを測定する。ストランドの鋼鉄の透磁率は鋼鉄の張力の大きさに応じて変化し、そのため、誘導信号として伝達される大きさも張力の上昇に応じて変化する。鋼鉄の透磁率が材料の温度にも依存し、温度変動を考慮して、ロードセル測定値を訂正又は補正することに留意されたい。例えば、各ロードセルに温度センサーを組み込んで、張力測定情報と共に温度測定情報を出力することができる。それに代わって、ロードセルで温度補正を実施して、各ロードセルが温度補正された張力値を出力できるように予め校正可能な温度補正手段(例えば、計算回路)を各ロードセルに配備することができる。
【0047】
磁歪式ロードセルの代わりに、それ以外の形式のロードセル、例えば、超音波式、容量式、歪ゲージなども使用できることに留意されたい。
【0048】
図2と3は、そのような55個のロードセルを単一の面内に配置した配列を図示している。ロードセル22は、シールド21によって、外部磁界から遮蔽されている。ワイヤー24は、ロードセル22に電力を供給するとともに、ロードセルから外部監視又は処理機器に出力値を伝えるための出力信号ワイヤーを備えている。各ロードセル22の直径が図示された単一面による配列20に取り付けることが可能な大きさである場合に、このセル22の平坦な配置構成が可能である。
【0049】
より大きなロードセル又はロードセル配列の全体的な直径の低減のために、図4と5に図示された例などの配置構成が好ましい。図4と5には、単一の面に配置した場合にロードセルが密集できるよりも密に、ストランド1が密集できるように、それに代わるセル22a,22b及び22cが異なる面にずらして配置されている。図示された例では、異なる模様の陰影で表されたロードセル22a,22b及び22cがそれぞれ三つの異なる平坦な配列20a,20b及び20cで配置されている。しかし、これらの配置構成は単なる例として挙げられており、それ以外の特定のロードセルの幾何学的な形状と配置構成に適合するようにずらした配置構成も考えられる。
【0050】
張力が加わる構造物の外側にアンカーブロック30に隣接して移動可能な形で取り付けられたロードセル配列20が図1に図示されている。即ち、張力調整が完了して、個々のストランドの張力が許容範囲内に有ることが証明されたら、ロードセル配列20を取り去ることができる。しかし、本発明の変化形態では、アンカーブロック30のジャッキから遠い方の側にロードセル22を配置することができる(そのような配置構成は図面には図示されていない)。その場合、張力調整が完了して、ジャッキが取り去られた場合に、ロードセル20,22がストランドにそのまま残され、そのため、ジャッキを取り去った後の如何なる時でも個々のストランド1の張力を測定できることを除いて、ロードセル22は前述した方法と同様に使用される。そのような構成では、張力調整と固定が完了したら、各ロードセル22の近傍の機械又は電磁気特性は変化せず、そのため、一つのロードセル出力信号で検出された変化をロードセル22が取り付けられたストランド1の張力が変化した結果であると看做すことができる。従って、ロードセル20,22をそのままの位置に残して、所望の通り、連続的又は断続的にストランド1の張力を監視するために使用することができる。そのような監視は、比較モード、即ち、ロードセル22の相対的な出力値を監視して、個々のストランド1の張力値の間の差を検出する形で実施するか、或いは個々のストランド1、ストランドの集合した束又はその両方の出力値の変化を長期に渡って追跡する絶対モードで実施することができる。その後、ストランドの束の全体的な張力を検証するために、「リフトオフ」張力測定又はそれ以外の好適な張力チェックを実施する場合、ロードセル配列20の全体的な絶対値を再校正するか、或いはロードセルから供給される測定データを再検証するために、そのような測定データを使用することができる。所望の場合、全てのストランド1に渡る力の分布が平坦であると仮定するか、或いはリフトオフ試験前に存在したのと同じ力の分布を維持することによって、その時点での新しい測定値に個別のロードセル22を正規化することもできる。その場合、特定のロードセルの読取り値の如何なる予期しない変化もその特定のロードセルによって監視しているストランドの張力の一貫性の変化を示すこととなる。
【0051】
図6は、本発明による代替実施形態を図示しており、そこでは、接続部12と13での油圧によって駆動される一本のストランド1に荷重を加える単一のジャッキを用いて、個々のストランド1の個別の荷重調整が行なわれている。全てのストランドの張力が等しい引張圧力に調整されるまで、このジャッキ14をストランドからストランドに移動することができる。一本のストランドの荷重調整が別のストランドの張力に影響する可能性が有るので、全てのストランドの張力を同じ油圧に調整することが完了するまで、必要な頻度で個々のストランドの荷重調整を繰り返すことができる。図1に図示されたフル等張力ジャッキが現場で使用できない場合に、この等張力調整方法を用いることができる。しかし、この原理は、等張力ジャッキの場合と同じであり、全てのストランドの張力を同じ張力に個別に調整するものである。そして、前述した通り、ロードセル配列20のロードセル22の校正を実施することができる。
【0052】
図7は、単一の行程又は複数のジャッキ行程で第二の主荷重調整操作を実施するために使用できるロングストローク式等延伸ジャッキ40の模式的な断面図を図示している。このジャッキ40を前に考察した通りの等張力ジャッキ10と置き換えることができる。ストランド1は、荷重方向と逆方向へのストランドの動きを防止するために、アンカーブロック30によって固定されている。ジャッキのピストン41が油圧によりジャッキのメインシリンダ42内を引き上げられ、それにより大きな張力をストランドに加えることができるように、第二の固定手段50はストランド1を把持している。この主荷重調整が行なわれている間、各ストランドの張力は、ロードセル配列20のロードセル22によって監視されている。前に考察した通り、ジャッキ40には、張力を加えられている全てのストランドに渡って張力を測定するための全体的なロードセルを組み入れることができる。それに代わって、そのような全体的な、或いは組み合わされた張力をジャッキ40に加える油圧から推定することができる。
【0053】
図8と9は、図1の個別のジャック配列10(等張力ジャッキ)を、より大きなジャッキ40に統合する手法を図示している。この場合、主荷重調整ジャッキ40を取り付けることができるように、等張力ジャッキ10を取り去っておらず、一体的な装置を用いて、等張力操作と主荷重調整操作の両方を実施することができる。この形式のジャッキを使用した場合、等張力ジャッキ10によりストランドの全ての緩みを除去し、全てのストランドの張力を同じ張力に調整したら、前に述べた等張力ロードセル校正工程を実施する。図8は、例えば、等張力調整及び/又はロードセル校正工程を実施している間の開始位置での主ジャッキ40を図示する一方、図9は、引張ストローク終了後の引き上げられた位置の主ジャッキ40を図示している。図8と9に図示された本設備の更なる発展形態として、図7に図示されたアンカーブロック50と同様の第二のアンカーブロックを等張力ジャッキ10の後ろ(即ち、図8と9に図示されている等張力ジャッキ10の上)に取り付けることができる。この(図示されていない)第二のアンカーブロックは、等張力ジャッキ10の個別ジャッキにおける個別の固定手段により支えることができる張力よりも大きな張力に対応できる。
【0054】
図10a〜10cと図11は、荷重調整段階においてロードセル校正を実施する手法を図示している。各グラフでは、S軸がロードセンサーから出力される張力測定値を表し、F軸が当該のストランドの個別のジャッキに加わる油圧(又は個別のジャッキの油圧から推定できる、ストランドに加わる張力)を表す。
【0055】
従来の校正は、例えば、「既知の」基準となる力に対して、先ずは試験室で行なわれる。その結果、ロードセル出力S対実際に加わる力Fの校正曲線が得られる。そのような単一のロードセルの校正曲線が図10aに図示されている。図10aでは、S軸は校正するロードセル出力の読取り値を表し、F軸はロードセルの校正のために使用された試験鋼に加わる実際の力を表す。
【0056】
現場では、当初の試験室での校正条件とは必然的に異なる(鋼鉄の機械及び磁気特性、温度などの)条件の下で、荷重調整プロセスが行なわれ、それらの条件を考慮して、校正曲線を調整する必要が有る。従来技術によるロードセルを校正する方法は、負荷の無い状態でのロードセル出力を零として、温度変動に関して調整することに限定されていた。本発明による方法及びシステムは、ロードセルの試験室での校正曲線を個々のストランド毎に実際に測定した一連の値に適合させることによって、それらの方法を改善している。より多くの値を測定するほど、より正確に曲線を測定データに適合させることができる。そのような適合プロセスを図解したグラフが図10bに図示されており、当初の校正曲線(実線)を二つの点F0 −S0 とF1 −S1 にマークして表示している。S0 とS1 は、それぞれ加えられる張力F0 とF1 において期待されるロードセルの読取り値を表す。他方、S'0とS'1は、それぞれ張力F0 とF1 (これらの実際の力F0 とF1 は当該の油圧ジャッキに加わる圧力から分かるか、或いは計算することができる)においてロードセルが示す実際に測定された張力値を表す。破線は、当初の校正曲線を僅かにシフト、回転させた曲線であり、実際の測定データと一致するように動かされている。個別の張力値をそれぞれ個々のストランド毎に測定できる等張力調整段階の間に、この曲線をロードセル毎の実際の測定値に適合させることによって、個別のジャッキ11の荷重調整範囲を上回る張力に対して、ストランドの個別の張力を一層正確にモデル化することができる。そのようにして、たとえ、より大きな張力において、個別のロードセルの各々からの個別の張力の読取り値に関する独立した確証が得られなくとも、そのような大きな張力におけるロードセルの読取り値が一層正確になる。
【0057】
図10cは、校正プロセスの別の詳細な実施形態を図示している。この場合、F1 は、第一の張力の大きさに到達した時(即ち、等張力ジャッキによって、全ての緩みが除去され、全てのストランドの張力が同じとなった後)の張力である。等張力ジャッキ10を用いてF1 を超える個別の荷重調整を続けることによって、既知の力F'1,F"1等において、更に別の個別のロードセル測定を行なうことができる。これらの更に別の測定値は、より正確に校正曲線を実際の条件に適合させるために使用することができる。
【0058】
図11は、校正方法の別の詳細な実施形態を図示している。等張力調整段階の間に特定のロードセルの校正曲線を適合させた後、F2 でグループ検証工程を実施している。この工程では、張力を加えているストランドの組み合わせた張力を個別のロードセルの個別の測定値の関数と比較して、ロードセルの読取り値の期待値S2 を推定している。その結果は、単純に個別のロードセルの読取り値の合計が全体的な期待値S2 と等しいことを相互チェックするものとして看做すことができる。それに代わって、この校正曲線を点S2 を含むように更に適合させることができる。
【0059】
S'2は、組み合わせた張力を読取り値の数で除算して計算した単純平均値とするか、或いは、より複雑な数学関数の値とすることができる。有利には、個別のロードセル出力及び全てのストランドの組み合わせた張力の測定に使用される張力測定手段の初期の相互校正手法を提供するために、この検証工程を等張力調整段階の間に実施できることにも留意されたい。
【0060】
実際の状況では、個々のストランドの張力は、主荷重調整操作の間厳密には同じ張力に留まることはない。形状、材料又は向きの僅かな差が、等張力調整操作後の荷重調整が進行するのに応じて、必然的に個別の張力に偏差を生じさせる。図12は、ストランドの張力(F軸)に渡って分布するストランドの数(N軸)の例を図示している。F4 とF5 は、ストランドグループ内の張力値の広がりを示すために用いられる分散の大きさを表す。従来技術によるシステムは、この分散計算方式を使用して、張力の分布が特定の張力調整用途の所定の許容範囲内に有るのか否かを決定している。しかし、そのような統計的な解析は、一つ以上のストランドが(例えば、降伏応力の95%に相当する最大荷重F6 を上回って)過剰な応力を加えられているか、或いは(最小荷重F3 を下回って)壊れている可能性を排除できない。
【0061】
それに対して、本発明による方法は、工事業者が単なる確率計算書に勝る手法を獲得して、それに代わって全てのストランドが個別に所定の張力許容範囲内に有ることを実証することができるので、そのような統計的な判定を余分なものとしている。
【0062】
前の記述は、ストランドグループの一端に張力を加えることに重点を置いた。しかし、工事によっては、ストランドグループの両端から張力を加えることが有利な場合が有る。それは、前述した詰まりと摩擦の問題の影響を一層低減することができる。ストランドの束の端毎に一つずつ配置した二つのジャッキ集合体を用いて、ストランドに張力を加えることができる。その場合、二つのジャッキにおいて、二つの張力調整プロセスを同時に、相前後して、或いは徐々に交代して進めることができる。等張力校正を効果的に行なうために、緩みが除去されるとともに、二つのジャッキが第一の張力にまでの張力をストランドに加えた後、二つのジャッキ集合体でのロードセルの校正を同時に実施することが好ましい。ダクト内のストランドの移動量を最小限にできるので、二式の個別のジャッキを同じ圧力源から、或いは少なくとも同じ圧力で駆動することも可能である。二式のロードセルを配備することは、特に、それらを全て同じ張力に校正した場合、張力監視システムを前述した摩擦の作用に対して一層敏感なものにする。一つの配列のロードセルの出力値を互いに比較すること、並びに長期に渡ってロードセルの値の変化を監視することと同様に、一方の配列のロードセルをそれに対応する(即ち、同じストランドの)他方の配列のロードセルと比較することも可能である。例えば、ストランドがその全長に沿った何処かの個所で挟まれた状態となった場合、一端での張力が他端の張力よりも大きくなり、ストランドの両端の二つのロードセルを比較することによって、そのような差を検出することができる。前記の別の形式の比較によって行なった測定を実証するために、二つのロードセルの間又は二つのロードセル配列の間の比較を使用することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用ケーブルの張力調整分野、特に、構造用ケーブルの張力を調整して、ケーブルの張力全体をケーブルの構成要素であるストランドに渡って等しく分散させることに関する。
【背景技術】
【0002】
プリストレスを加えられたケーブルが多くの構造用途に使用され、特に、コンクリートを圧縮した状態に保持することによって、コンクリート構造を補強するために使用されている。多くの用途では、コンクリートに加わる圧縮力の大きさが重要ではなく、ケーブルの張力が破壊的な張力を十分に下回るとともに、圧縮力が所定の最小値を十分に上回るようにすれば、それで十分である。
【0003】
しかし、テンドンの張力を高い設定値で、かつ狭い許容範囲内に調整しなければならない用途が有る。そのような用途には、例えば、原子力発電所設備やガス又は石油貯蔵設備のコンクリート製圧力格納容器が含まれる。そのような格納装置の一貫性は、ポストテンション(PT)テンドンの張力に大きく依存し、そのため、そのような設備の建設業者にとって、荷重調整用テンドンの張力が所定の許容範囲内に調整されていることを証明することが必須である。
【0004】
典型的なPTケーブル又はテンドンは、例えば、ダクトを通して延びるとともに、油圧ジャッキを用いてダクトの一端又は両端から張力を加えられた55本のストランドから構成されている。格納容器は、ダクトがコンクリート内の曲がった経路に沿って延びる円筒形又は球形の構造とすることができる。PTストランドに所要の張力を加えた後、通常円錐形の楔を用いてストランドをアンカープレートに固定している。設置と張力調整が完了した後、ダクト内のストランドの一貫性が保たれていることを保証するとともに、ストランドの張力が依然として所定の許容範囲内に有ることを保証するために、設備の耐用年数に渡って定期検査が必要である。そのような検査では、端部のアンカーを持ち上げるためにジャッキを使用する所謂リフトオフ手法を用いて、テンドンの力を測定することができる。アンカーを動かすのに必要な力がPTケーブルを構成するストランドの束における張力の指標となる。結合された張力調整システムでは、グラウチング時までの如何なる時点でもリフトオフを行なうことができ、結合されていないテンドンでは、この手法を如何なる時でも実施することができる。
【0005】
ダクト内のテンドンの張力を調整する際の一つの難しさは、ストランドとダクト壁の間の摩擦及びストランド同士の間の摩擦の作用である。それらの摩擦作用は、張力調整操作の間及びその後にストランドに渡る力の分布及び/又は各ストランドの長さに沿った力の分布を不均一にするか、或いは変化させる可能性が有る。この問題は、特に、非常に長いストランドを使用する用途と、ストランドに長手方向の力だけでなく、密集させる作用及び/又はダクト壁に押し付ける作用をストランドに及ぼす横方向の力が加わる真っ直ぐでないダクトにおいて一般的となっている。荷重を加えるコンクリートを通って曲がった経路に沿って延びる、横断面が円形のダクト内では、例えば、粗く分散したストランドは、緩みが除去されるのに応じて内側に引っ張られ、場合によっては、ダクト経路の曲率半径に沿った横方向の力と横方向の動きが全てのストランドに加わることとなる。
【0006】
従来技術では、ストランドを個別に引っ張って、緩み無く張り、全てのストランドに相対的に弱い同じ張力を加える第一の事前張力均一化段階と、それに続く所望の張力にまでストランドを一つのグループとしてジャッキで引っ張る主張力調整段階との二つの段階によりPTテンドンの張力調整を実施することが知られている。
【0007】
特許文献1は、そのような複数のストランドの張力を調整して、全てのストランドで等しい張力を実現する方法の一つを記載している。特許文献1は、基準となるストランドの荷重を所望の張力にまで調整することに関する。それは、ロードセルを用いてストランドの張力を測定しながら、基準となるストランドの荷重を調整するためのジャッキを用いて行なわれている。その場合、それ以外のストランドの荷重は、基準となるロードセルによって与えられる力にまで調整されている。より多くのストランドが引っ張られるのに応じて、個々のストランドの個々の荷重が僅かに低下するが、それにも関わらず、荷重調整後に個別の荷重が等しくなるものと仮定している。
【0008】
それに代わる方法が、特許文献2に記載され、そこでは、ストランド毎に一つずつ配置した複数の小型ジャッキを用いて、最終的な張力の約10%の張力を複数のストランドに予め加えている。プリテンション用の個別ジャッキは、同じ圧力源から圧力を供給され、事前張力調整段階が完了した後では、全てのストランドで全ての緩みが除去されて、全てのストランドが同じ張力で引っ張られているものと仮定している。
【0009】
従って、このような特許文献1と2の事前張力調整段階は、全てのストランドに相対的に弱い同じ張力を加えるように構成されている。この段階が完了した後、全てのストランドに一緒に張力を加える単一の大型油圧ジャッキを用いて、所望の最終的な張力にまでストランドを引っ張っている。この主ジャッキ操作の開始時に全てのストランドに同じ等しい張力が加わるとともに、ストランドの材質が同じであることを前提としているので、この主ジャッキ操作の間張力は等しいまま変わらないものと仮定している。ストランドが最終的な張力を加えられて固定された後も、個々のストランドの張力が依然として等しいとの別の仮定も設定されている。
【0010】
前述した通り、従来技術に記載された方法は、張力調整中及び/又はその後のストランドの挙動の均一性に関して重大な前提を設定している。しかし、実際には、ストランドは同じではなく、それらの向きが互いに、並びにそれらの周囲に対して相対的に変化することは、張力調整操作の間に異なる力がストランドに加わることを意味する。特に、個々のストランドは、それ以外のストランドとの間又はそれ以外のストランドとダクト壁の間で縺れたり、詰まったりすることがある。そのような詰まりが起こると、一本のストランドの張力がストランドの長さに沿って不均一に分布する可能性が十分に有る。その結果、たとえ、外見上ストランドの張力が所定又は所望の範囲内に有ると見えても、一本以上のストランドの張力が局所的に所定の安全又は動作上の許容範囲外となる場合が有る。
【0011】
ストランドの張力分布が特に不均一となると、主張力調整段階の間にストランドの一部に動作範囲を超える荷重が加わって、ストランドが壊れる、或いは過負荷状態となる可能性が有る。状況によっては、そのような機械的な障害が検出されずに起こる可能性が有り、その場合、この主ジャッキ操作が、損傷又は破壊したストランドを含むストランドグループに対して進められることとなる。機械的に損傷した一本以上のストランドを含む、そのような束に全体として所望の張力を加えるには、個々のストランドの張力をそれぞれ所定又は所望の張力よりも大きくすることとなる。そのようにして、張力調整が許容範囲内となる一方、個々のストランドが所定の限界値を超えた張力を無意識に加えられる可能性が有る。
【0012】
ストランドがその長さに沿った二つ以上の個所で引っ掛かった場合、張力調整段階の間に異なる状況が出現する可能性も有る。事前張力調整段階の間に、ストランドの端部は所要の張力にまで張力を加えられるが、そのような引っ掛かった二つの個所の間のストランドの区間において、張力がストランドの端部の張力よりも著しく弱くなる場合が有る。そのような場合、それに続く主ジャッキ操作が当該のストランドの張力分布に予期せぬ作用を及ぼす可能性が有る。引っ掛かった個所の一方又は他方が第二の張力調整段階の間に元に戻ると、ストランドのその部分、そのためストランド全長の張力が突然変化することがある。
【0013】
ストランドは、磨耗又は材料欠陥の結果として機械的に弱くなる作用を受ける可能性も有る。そのような機械的な弱さは、突然の障害(破壊)や漸進的な延び(クリープ又は降伏)を引き起し、そのいずれもストランドグループの張力に全体として危険な低下を引き起こす場合が有る。そのような障害が主張力調整段階の間に起こると、弱体化又は破壊したストランドを埋め合わせるために、残りのストランドが過負荷となる。それは明らかに問題であり、ストランドに最大動作負荷(降伏点)に近い張力が加わることとなる。
【0014】
主張力調整段階の間、ストランド内及びストランド間に最も大きな変化と動きが起こるので、これらの作用は、主張力調整段階の間に最も出現し易い。しかし、そのようなストランドの障害又は動きも後日設備の耐用年数の間に、自然に、或いは何らかの応力現象の結果として起こる可能性が有る。そのような理由から、ストランド束の張力が依然として許容範囲内内に有るかを検証するために定期検査が行なわれる。しかし、そのような検査は、通常テンドンの束に対して全体的に実施されている。場合によっては、各ストランドに対して個別にリフトオフ測定を実施することが可能であるが、個々のストランドの検査は、通常実行可能な選択肢である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許公開第0421862号明細書
【特許文献2】欧州特許公開第0544573号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、前記及びそれ以外の従来技術での問題を解決する方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本課題のために、本発明は、複数のストランドの張力を調整する方法を提供し、この方法は、個々のストランド毎の個別の張力を計測するための複数の個別の第一の張力検知手段を配置する第一の工程と、個々のストランド毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさに調整する第二の工程と、各ストランドの張力が同じ共通の第一の張力の大きさに調整された場合に、複数の個別の第一の張力検知手段を用いて、ストランド毎に第一の個別の張力測定値を計測する第三の工程と、複数の第一の張力検知手段によって計測した第一の個別の張力測定値を第一の張力の大きさに校正する第四の工程とを有する。この第一の張力の大きさは、全ての個別ジャッキが個々のストランドの緩みの除去を完了したことを確認できる任意の張力の大きさとするか、或いは予め決まった張力値、例えば、所定の最終的な張力の10%又は15%とすることができる。
【0018】
本発明による方法の変化形態では、本方法は、複数のストランドの張力を第二の張力の大きさに調整する第五の工程と、ストランドの張力が第二の張力の大きさに調整された場合に、個別の第一の張力検知手段を用いて、個々のストランド毎に第二の個別の張力測定値を計測する第六の工程とを更に有する。この第二の張力は、張力調整プロセスの間に任意に選定した張力の大きさとするか、或いは予め決まった張力の大きさ、例えば、所要の最終的な張力の50%又は100%とすることができる。
【0019】
例えば、ロードセルなどの個別の張力検知手段をストランド毎に配備することによって、工事業者が第一及び/又は第二の張力調整工程の間及び/又はその後に個々のストランド毎に張力の進展状況を監視することができる。従って、ストランドの縺れ、詰まり、破壊、或いは不均一な負荷は、次回の検査時ではなく、それが起こった時に検出することができる。校正工程は、全てのストランドの張力が第一の張力に調整された場合に実施されるので、それによって、ロードセルで検出した張力値を第一の張力値に校正する正規化が可能となる。
【0020】
本発明による方法の別の変化形態では、本方法は、複数のストランドの組み合わせた張力を計測する第二の張力検知手段を配置する第七の工程と、この組み合わせた張力を第一の張力検知手段によって検出した個別の張力測定値と比較する第八の工程とを有する。この個別の張力検知手段は、例えば、磁気式負荷センサーとすることができる。
【0021】
本発明による方法の別の変化形態では、本方法は、ストランドの張力を調整した後に個別の張力検知手段を取り外す第九の工程を有する。それに代わって、複数の個別のロードセルを配置して、ストランドの張力が調整された後にそれらが個々のストランドの個別の張力値を提供し続けるようにすることができる。
【0022】
本発明は、複数の構造用スランドの張力を調整するシステムも規定し、このシステムは、ストランド毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさに調整するための個別の張力調整手段と、複数のストランドの張力を第二の張力に調整するための共通の張力調整手段と、ストランド毎の個別の張力測定値を検出するために配置された複数の個別の張力検知部品と、個別の張力測定値を第一の張力の大きさに校正するための第一の校正手段とを備えている。
【0023】
本発明によるシステムの変化形態では、個別の張力調整手段は、一つ以上の個別の油圧ジャッキから構成され、個別の油圧ジャッキは、それぞれ一つのストランドの張力を調整するために配置されている。
【0024】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段は、共通の圧力源から圧力を供給されるか、或いは別個の圧力源から共通の圧力を供給される複数の個別の油圧ジャッキから構成される。
【0025】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段は、ストランドの張力を順番に調整するために移動することが可能な一つの個別の油圧ジャッキから構成される。この個別の張力検知部品は、磁気式負荷センサーとすることができる。
【0026】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力検知部品は、ストランドの引張方向に対してほぼ平行な長手軸に対して垂直な一つ以上の共通の面内に配置される。
【0027】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力検知部品は、ストランドの張力調整が完了した後、その位置に留まって、個々のストランドの個別の張力を測定することができるように配置される。
【0028】
本発明によるシステムの別の変化形態では、個別の張力調整手段と共通の張力調整手段は同じものである。
【0029】
本発明の変化形態では、本システムは、複数のストランドの共通の張力を計測するための共通の張力検知手段と、個別の張力検知部品によって計測した個別の張力測定値を共通の張力検知手段によって計測した共通の張力に校正するための第二の校正手段とを備えている。
【0030】
ダクト内のストランドの張力調整と関連して、本発明を説明している。しかし、副ケーブルなどのダクトに閉じ込められていないストランドにも同じ手法を適用することができる。実際に、一群のストランドの張力調整のために本発明を実施することができる。
【0031】
ここで、添付図面を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による個別の張力調整ジャッキの配列を用いた第一の実施形態の模式的な断面図
【図2】張力が加わっているストランドの周りにロードセルの配列が取り付けられ、ロードセルが単一の面内に配置された模式的な断面図
【図3】図2に図示されたものと同じロードセル配列の平面図
【図4】張力が加わっているストランドの周りにロードセルの配列が取り付けられ、ロードセルが三つの面内にずらして配置された模式的な断面図
【図5】図4に図示されたものと同じロードセル配列の平面図
【図6】本発明による一つの個別の張力調整ジャッキを用いた第二の実施形態の模式的な断面図
【図7】本発明による主張力調整段階を実現するために第二のジャッキを用いた変化形態の模式的な断面図
【図8】本発明による同じユニット内の個別ジャッキの配列と一つの主張力調整ジャッキを用いた別の変化形態の模式的な断面図
【図9】本発明による同じユニット内の個別ジャッキの配列と一つの主張力調整ジャッキを用いた別の変化形態の模式的な断面図
【図10a】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図10b】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図10c】本発明の様々な実施形態及び変化形態で使用される校正プロセスの図
【図11】本発明の様々な実施形態で使用される検証工程を示すグラフ
【図12】荷重PTテンドン内のストランドの張力分布を示す個数分布曲線
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面は、本発明の理解を助けるために提供されており、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲を制限するものとして解釈してはならない。異なる図面で使用されている同じ符号は、同じ又は対応する特徴を示すことを意図している。
【0034】
図1は、本発明の第一の実施例による装置の模式的な断面図を図示している。複数のストランド1が荷重を加える構造物5から出現する形で図示されている。これらのストランド1は、ダクトを通して延びるか、或いは(例えば、副ケーブルの場合の)ストランドは、張力を加える構造物5の固定点の間の自由空間に吊るすことができる。ストランド1は、構造物5と、例えば、ストランド1の張力の結果ストランド1を把持する円錐形の楔から成る個別のアンカー部品32を備えたアンカーブロック30とを貫通している。アンカー部品32は、ストランド1に張力が加えられるのに応じた、ストランド1のダクト外への動きとコンクリート製構造物5からのずれを許容する一方、コンクリート製構造物5の方向に戻ることを防止している。
【0035】
摩擦及び衝突を最小限とするため、ストランド1は、好ましくは、構造物内の経路を通って延びており、各ストランド1が、構造物内を通る経路全体に渡って束内のほぼ同じ位置に留まるとともに、ストランド1が、ダクトの各端部の等張力ジャッキ10とアンカーブロック30の対応する開口部と整列するようになっている。
【0036】
ストランド1は、各ストランド1が別個のロードセル22を通過するように、ロードセル配列20を通って延びている。ロードセル22は、例えば、ストランド1の張力が変化するのに応じた鋼鉄製ストランド1の電磁気特性の変化を測定する磁気式ロードセルとすることができる。本装置の幾何学的な形状及びストランド1の材料に合ったものであれば、それらに応じて、それ以外の形式のロードセル22を使用することができる。ロードセル22は、通常使用する特定の形式のストランド1又は一定の範囲の形式のストランドに対して事前に校正されているが、ストランドをロードセル配列内の位置に置いて、張力調整の準備ができた場合に、現場で再度校正することもできる。
【0037】
ロードセル22の配列20としての配置は、後で詳しく説明する図3と5を参照すると、より良く理解できる。アンカーブロック30内のアンカー部品32とジャッキ配列10内のジャッキ11は、対応して配置されている。
【0038】
これらのストランドも、ロードセル配列ユニット22に対して位置決めされ、張力調整を開始する準備ができた等張力ジャッキユニット10内の個別のジャッキ11を通って延びている。個別のジャッキの数は、如何なる好適な数とすることもできる。張力を調整する束は、例えば、図3又は5に図示されたロードセルの配置構成と同様の密集したレイアウトで配置された55本のストランドから構成することができ、その場合、ジャッキ配列10を55個のジャッキから構成することもできる。図1の7本のストランドの断面図は、この例では55本のストランドの配列の横断面に対応するように考えられている。そのような55本のストランドの配列が、図3と5に図示されており、55本のストランドの束に取り付けた55個のロードセルの好ましいレイアウトを図示している。図3と5は、本明細書の後で考察する。
【0039】
等張力ジャッキ10は、同じ圧力源12,13から駆動される複数(例えば、55個)の個別の油圧ジャッキ11から構成される。ストランド1毎に一つのジャッキ11が配備されている。個別のジャッキ11の各々は、例えば、ストランド1の張力が油圧ジャッキの対応するピストンの油圧によって生成される力に到達するまで、特定のストランド1を引き戻した後、元の方向に戻して別の引張ストロークを行なうことを繰り返すことによって、ストランド1の定まらない大きさの緩みを除去することが可能なストローク式油圧ジャッキとすることができる。全ての油圧ジャッキ11は、ほぼ同じであり、そのことは、それらの全てが(例えば、引張ストロークと戻しストロークのための圧力をそれぞれ供給する)同じ圧力源12と13から圧力を供給されているので、全てのジャッキ11が別個のストランド1を同じ張力にまで効果的に引っ張ることを意味する。
【0040】
図1に図示された張力調整用集合体は、次の通り動作する。第一に、個別のジャッキ11によって、ストランド1の張力を特定の張力にまで個別に調整する。第二に、全ての緩みが除去され、ストランド1が同じ共通の張力を加えられたら、その時点の等張力ジャッキ10の油圧を個別のロードセル22を校正するための基準として記録する。個々のジャッキ毎のサイズと(ピストンとシリンダ間の摩擦などの)機械的な特性も精密に分かっており(ジャッキが加える力に油圧をマッピングして、各ジャッキを個別に事前に校正することができ)、各ジャッキ11の圧力の期待値、そのため各ストランド1の張力を正確に計算して、それに対応する当該のストランド1に取り付けられた個別のロードセル22によって実際に得られた張力測定値と比較することができるので、そのような油圧を(測定及び/又は計算によって)厳密な精度で知ることができる。異なるロードセル22の読取り値は、必然的に互いに僅かに変化し、磁気式ロードセルの場合、例えば、温度変動又は鋼鉄製ストランドの機械及び電磁気特性の違いのために変動が起こる可能性が有る。
【0041】
張力調整プロセスにおける、この段階では、全てのストランド1の張力は同じであり、ロードセル22は、そのような張力に再校正されている。これらのストランドも、アンカーブロック30のアンカー部品32によって、ほぼそのような張力に保持されており、必要であれば、アンカーブロック30によって固定してストランドに張力を加えたままで、並びにロードセル配列20をアンカーブロック30に隣接する位置に残したままで、等張力ジャッキを取り外すことができる。ジャッキによる荷重を取り去った場合に、ストランド1の戻る動き及び/又は張力の低下が大きくならないように、円錐形の楔を付勢してロック構造とするとともに、ストランド1の戻る動きを防止するためのスプリング又はそれ以外の付勢部品をアンカーブロック30に配備できることに留意されたい。
【0042】
前述した等張力調整プロセスがストランドの所望の張力を実現できなかった場合、ストランド1に第二の張力調整操作を実施して、所望の張力を加える必要が有る。個別のジャッキの張力調整能力に応じて、等張力調整段階を実施するために使用したものと同じ等張力ジャッキ10を用いて、それを実行することができる。しかし、一般的には、個別のジャッキ11の張力調整能力には限界が有り、ストランドの張力を所望の張力に調整するためには、例えば、ロングストロークジャッキなどの、より強力なジャッキが必要である。この場合、ロードセル配列20の位置を保持したまま、ストランド1から等張力ジャッキ10を取り外した後、より強力なジャッキをストランド及びロードセル配列20に取り付けることができる。このプロセスの間、ロードセル配列は移動又は妨害されないので、等張力調整プロセスの完了時に実施された校正の精度は維持される。第二の主荷重調整段階は、主荷重調整を実施しながら、ストランドの個別の張力を測定、監視する精密に校正されたロードセル配列を配置した状態で進められる。このようにして、望ましくない張力の変化は、それが起こる度に検出して、影響を受けた特定のストランドに限定することができる。そのような望ましくない変化は、例えば、破壊や早過ぎる降伏などのストランドの材料欠陥を示すか、或いは前に考察した一種の詰まりに続く突然の変化(張力の低下又は予期しない急激な張力の上昇)を示す場合が有る。主荷重調整プロセスの間及びその後に、様々なストランドに渡る張力分布が許容範囲内に留まっていることを示すために、校正されたロードセル配列を使用することもできる。主張力調整が実行されている間及び/又はストランド1に目一杯の張力が加えられた時に個別のロードセル出力の間に大きな不一致が検出されなければ、主張力調整が前記の詰まり又は摩擦問題の何れも無しに終了したことの証拠として、それを看做すことができる。他方、個別のロードセル22の出力値の間に大きな不一致が検出されたら、張力調整が満足すべきものでないことを示していると推定するか、或いはその変化の大きさがストランド1の張力を解除して、再設定する根拠を示していると判断することができる。個別のストランド毎に別個のロードセルを使用することは、一連のサンプル測定値の統計的な解釈又は評価を必要とする代わりに、ストランドに渡る張力分布を正確かつ完全に知ることができることを意味する。
【0043】
個別のロードセル22は、好ましくは、出来る限り互いに同形式とすべきであり、特に、ストランド1において監視する必要の有る張力範囲におけるレスポンス特性を互いに同じにすべきである。即ち、ロードセル22を第一の既知の張力に校正したら(即ち、全ての緩みが除去されて、全ての個別のジャッキ11がストランド1の張力が第一の相対的に弱いレベルの張力にまで調整された後)、全てのロードセル22が主荷重調整段階に渡って同様の負荷/出力レスポンス特性を出力して、ロードセル出力間の差がストランドの張力間の差を示すと看做すことができる結果となる。
【0044】
本発明による方法の詳細な実施形態では、個別測定値又は個別測定値の(合計、平均又はそれ以外の統計的な関数などの)集合関数を全てのストランド1の組み合わせた力の測定値と比較することによって、ストランド毎に行なう張力測定を更に検証又は実証することができる。そのような組み合わせた、或いは全体的な力の測定は、主荷重調整段階で使用された主(例えば、ロングストローク)ジャッキによって加えられる応力を測定するために配置されたロードセルを用いて行なうことができる。それに代わって、予め校正して変換しておいた張力値を用いて、或いは油圧ジャッキの幾何学的な形状とサイズに基づく理論的な計算によって、主ジャッキ(この場合、油圧ジャッキ)の油圧測定値からストランドの全体的な荷重測定値を推定することができる。
【0045】
前記の検証/実証工程は、等張力調整段階の間に行なわれた張力測定とは別に、(例えば、第二のジャッキ又はそれ以外の張力調整手段が使用されている場合)第二の張力値を正確に測定又は計算することができる、張力調整プロセスの如何なる時点でも実施することができる。ロードセル配列が両方の荷重調整段階の間中位置を変えず、少なくとも一つの正確に分かっている張力値に精密に校正されているという事実は、両方の荷重調整段階に渡って継続する信頼できる張力測定を表している。第一の荷重調整段階は、各ストランドの張力を同じ張力に調整する等張力調整段階として看做すことができる一方、第二の荷重調整段階がストランドの長さを等しく延ばすことによって荷重調整を行なう等伸長段階であることに留意されたい。
【0046】
図2〜5は、図1に図示されたものと同様のロードセル配列20の二つの例の模式的な断面図と平面図を図示している。図2と4は、それぞれ図3と5のロードセル配列の軸A−AとB−Bに沿った横断面を図示している。両方の場合、張力を測定すべきストランド1毎に一つのロードセル22が配備されている。ロードセル22は、好ましくは、通常ストランド1の周囲を取り囲む二本の誘導巻線として実現されたEMセンサー又は磁歪センサーとして知られる磁気式ロードセルである。これら二本の巻線は、図面では別個に識別できない。使用時には、電気パルスが巻線の一方に加えられて、その結果他方の巻線に誘導されるパルスを測定する。ストランドの鋼鉄の透磁率は鋼鉄の張力の大きさに応じて変化し、そのため、誘導信号として伝達される大きさも張力の上昇に応じて変化する。鋼鉄の透磁率が材料の温度にも依存し、温度変動を考慮して、ロードセル測定値を訂正又は補正することに留意されたい。例えば、各ロードセルに温度センサーを組み込んで、張力測定情報と共に温度測定情報を出力することができる。それに代わって、ロードセルで温度補正を実施して、各ロードセルが温度補正された張力値を出力できるように予め校正可能な温度補正手段(例えば、計算回路)を各ロードセルに配備することができる。
【0047】
磁歪式ロードセルの代わりに、それ以外の形式のロードセル、例えば、超音波式、容量式、歪ゲージなども使用できることに留意されたい。
【0048】
図2と3は、そのような55個のロードセルを単一の面内に配置した配列を図示している。ロードセル22は、シールド21によって、外部磁界から遮蔽されている。ワイヤー24は、ロードセル22に電力を供給するとともに、ロードセルから外部監視又は処理機器に出力値を伝えるための出力信号ワイヤーを備えている。各ロードセル22の直径が図示された単一面による配列20に取り付けることが可能な大きさである場合に、このセル22の平坦な配置構成が可能である。
【0049】
より大きなロードセル又はロードセル配列の全体的な直径の低減のために、図4と5に図示された例などの配置構成が好ましい。図4と5には、単一の面に配置した場合にロードセルが密集できるよりも密に、ストランド1が密集できるように、それに代わるセル22a,22b及び22cが異なる面にずらして配置されている。図示された例では、異なる模様の陰影で表されたロードセル22a,22b及び22cがそれぞれ三つの異なる平坦な配列20a,20b及び20cで配置されている。しかし、これらの配置構成は単なる例として挙げられており、それ以外の特定のロードセルの幾何学的な形状と配置構成に適合するようにずらした配置構成も考えられる。
【0050】
張力が加わる構造物の外側にアンカーブロック30に隣接して移動可能な形で取り付けられたロードセル配列20が図1に図示されている。即ち、張力調整が完了して、個々のストランドの張力が許容範囲内に有ることが証明されたら、ロードセル配列20を取り去ることができる。しかし、本発明の変化形態では、アンカーブロック30のジャッキから遠い方の側にロードセル22を配置することができる(そのような配置構成は図面には図示されていない)。その場合、張力調整が完了して、ジャッキが取り去られた場合に、ロードセル20,22がストランドにそのまま残され、そのため、ジャッキを取り去った後の如何なる時でも個々のストランド1の張力を測定できることを除いて、ロードセル22は前述した方法と同様に使用される。そのような構成では、張力調整と固定が完了したら、各ロードセル22の近傍の機械又は電磁気特性は変化せず、そのため、一つのロードセル出力信号で検出された変化をロードセル22が取り付けられたストランド1の張力が変化した結果であると看做すことができる。従って、ロードセル20,22をそのままの位置に残して、所望の通り、連続的又は断続的にストランド1の張力を監視するために使用することができる。そのような監視は、比較モード、即ち、ロードセル22の相対的な出力値を監視して、個々のストランド1の張力値の間の差を検出する形で実施するか、或いは個々のストランド1、ストランドの集合した束又はその両方の出力値の変化を長期に渡って追跡する絶対モードで実施することができる。その後、ストランドの束の全体的な張力を検証するために、「リフトオフ」張力測定又はそれ以外の好適な張力チェックを実施する場合、ロードセル配列20の全体的な絶対値を再校正するか、或いはロードセルから供給される測定データを再検証するために、そのような測定データを使用することができる。所望の場合、全てのストランド1に渡る力の分布が平坦であると仮定するか、或いはリフトオフ試験前に存在したのと同じ力の分布を維持することによって、その時点での新しい測定値に個別のロードセル22を正規化することもできる。その場合、特定のロードセルの読取り値の如何なる予期しない変化もその特定のロードセルによって監視しているストランドの張力の一貫性の変化を示すこととなる。
【0051】
図6は、本発明による代替実施形態を図示しており、そこでは、接続部12と13での油圧によって駆動される一本のストランド1に荷重を加える単一のジャッキを用いて、個々のストランド1の個別の荷重調整が行なわれている。全てのストランドの張力が等しい引張圧力に調整されるまで、このジャッキ14をストランドからストランドに移動することができる。一本のストランドの荷重調整が別のストランドの張力に影響する可能性が有るので、全てのストランドの張力を同じ油圧に調整することが完了するまで、必要な頻度で個々のストランドの荷重調整を繰り返すことができる。図1に図示されたフル等張力ジャッキが現場で使用できない場合に、この等張力調整方法を用いることができる。しかし、この原理は、等張力ジャッキの場合と同じであり、全てのストランドの張力を同じ張力に個別に調整するものである。そして、前述した通り、ロードセル配列20のロードセル22の校正を実施することができる。
【0052】
図7は、単一の行程又は複数のジャッキ行程で第二の主荷重調整操作を実施するために使用できるロングストローク式等延伸ジャッキ40の模式的な断面図を図示している。このジャッキ40を前に考察した通りの等張力ジャッキ10と置き換えることができる。ストランド1は、荷重方向と逆方向へのストランドの動きを防止するために、アンカーブロック30によって固定されている。ジャッキのピストン41が油圧によりジャッキのメインシリンダ42内を引き上げられ、それにより大きな張力をストランドに加えることができるように、第二の固定手段50はストランド1を把持している。この主荷重調整が行なわれている間、各ストランドの張力は、ロードセル配列20のロードセル22によって監視されている。前に考察した通り、ジャッキ40には、張力を加えられている全てのストランドに渡って張力を測定するための全体的なロードセルを組み入れることができる。それに代わって、そのような全体的な、或いは組み合わされた張力をジャッキ40に加える油圧から推定することができる。
【0053】
図8と9は、図1の個別のジャック配列10(等張力ジャッキ)を、より大きなジャッキ40に統合する手法を図示している。この場合、主荷重調整ジャッキ40を取り付けることができるように、等張力ジャッキ10を取り去っておらず、一体的な装置を用いて、等張力操作と主荷重調整操作の両方を実施することができる。この形式のジャッキを使用した場合、等張力ジャッキ10によりストランドの全ての緩みを除去し、全てのストランドの張力を同じ張力に調整したら、前に述べた等張力ロードセル校正工程を実施する。図8は、例えば、等張力調整及び/又はロードセル校正工程を実施している間の開始位置での主ジャッキ40を図示する一方、図9は、引張ストローク終了後の引き上げられた位置の主ジャッキ40を図示している。図8と9に図示された本設備の更なる発展形態として、図7に図示されたアンカーブロック50と同様の第二のアンカーブロックを等張力ジャッキ10の後ろ(即ち、図8と9に図示されている等張力ジャッキ10の上)に取り付けることができる。この(図示されていない)第二のアンカーブロックは、等張力ジャッキ10の個別ジャッキにおける個別の固定手段により支えることができる張力よりも大きな張力に対応できる。
【0054】
図10a〜10cと図11は、荷重調整段階においてロードセル校正を実施する手法を図示している。各グラフでは、S軸がロードセンサーから出力される張力測定値を表し、F軸が当該のストランドの個別のジャッキに加わる油圧(又は個別のジャッキの油圧から推定できる、ストランドに加わる張力)を表す。
【0055】
従来の校正は、例えば、「既知の」基準となる力に対して、先ずは試験室で行なわれる。その結果、ロードセル出力S対実際に加わる力Fの校正曲線が得られる。そのような単一のロードセルの校正曲線が図10aに図示されている。図10aでは、S軸は校正するロードセル出力の読取り値を表し、F軸はロードセルの校正のために使用された試験鋼に加わる実際の力を表す。
【0056】
現場では、当初の試験室での校正条件とは必然的に異なる(鋼鉄の機械及び磁気特性、温度などの)条件の下で、荷重調整プロセスが行なわれ、それらの条件を考慮して、校正曲線を調整する必要が有る。従来技術によるロードセルを校正する方法は、負荷の無い状態でのロードセル出力を零として、温度変動に関して調整することに限定されていた。本発明による方法及びシステムは、ロードセルの試験室での校正曲線を個々のストランド毎に実際に測定した一連の値に適合させることによって、それらの方法を改善している。より多くの値を測定するほど、より正確に曲線を測定データに適合させることができる。そのような適合プロセスを図解したグラフが図10bに図示されており、当初の校正曲線(実線)を二つの点F0 −S0 とF1 −S1 にマークして表示している。S0 とS1 は、それぞれ加えられる張力F0 とF1 において期待されるロードセルの読取り値を表す。他方、S'0とS'1は、それぞれ張力F0 とF1 (これらの実際の力F0 とF1 は当該の油圧ジャッキに加わる圧力から分かるか、或いは計算することができる)においてロードセルが示す実際に測定された張力値を表す。破線は、当初の校正曲線を僅かにシフト、回転させた曲線であり、実際の測定データと一致するように動かされている。個別の張力値をそれぞれ個々のストランド毎に測定できる等張力調整段階の間に、この曲線をロードセル毎の実際の測定値に適合させることによって、個別のジャッキ11の荷重調整範囲を上回る張力に対して、ストランドの個別の張力を一層正確にモデル化することができる。そのようにして、たとえ、より大きな張力において、個別のロードセルの各々からの個別の張力の読取り値に関する独立した確証が得られなくとも、そのような大きな張力におけるロードセルの読取り値が一層正確になる。
【0057】
図10cは、校正プロセスの別の詳細な実施形態を図示している。この場合、F1 は、第一の張力の大きさに到達した時(即ち、等張力ジャッキによって、全ての緩みが除去され、全てのストランドの張力が同じとなった後)の張力である。等張力ジャッキ10を用いてF1 を超える個別の荷重調整を続けることによって、既知の力F'1,F"1等において、更に別の個別のロードセル測定を行なうことができる。これらの更に別の測定値は、より正確に校正曲線を実際の条件に適合させるために使用することができる。
【0058】
図11は、校正方法の別の詳細な実施形態を図示している。等張力調整段階の間に特定のロードセルの校正曲線を適合させた後、F2 でグループ検証工程を実施している。この工程では、張力を加えているストランドの組み合わせた張力を個別のロードセルの個別の測定値の関数と比較して、ロードセルの読取り値の期待値S2 を推定している。その結果は、単純に個別のロードセルの読取り値の合計が全体的な期待値S2 と等しいことを相互チェックするものとして看做すことができる。それに代わって、この校正曲線を点S2 を含むように更に適合させることができる。
【0059】
S'2は、組み合わせた張力を読取り値の数で除算して計算した単純平均値とするか、或いは、より複雑な数学関数の値とすることができる。有利には、個別のロードセル出力及び全てのストランドの組み合わせた張力の測定に使用される張力測定手段の初期の相互校正手法を提供するために、この検証工程を等張力調整段階の間に実施できることにも留意されたい。
【0060】
実際の状況では、個々のストランドの張力は、主荷重調整操作の間厳密には同じ張力に留まることはない。形状、材料又は向きの僅かな差が、等張力調整操作後の荷重調整が進行するのに応じて、必然的に個別の張力に偏差を生じさせる。図12は、ストランドの張力(F軸)に渡って分布するストランドの数(N軸)の例を図示している。F4 とF5 は、ストランドグループ内の張力値の広がりを示すために用いられる分散の大きさを表す。従来技術によるシステムは、この分散計算方式を使用して、張力の分布が特定の張力調整用途の所定の許容範囲内に有るのか否かを決定している。しかし、そのような統計的な解析は、一つ以上のストランドが(例えば、降伏応力の95%に相当する最大荷重F6 を上回って)過剰な応力を加えられているか、或いは(最小荷重F3 を下回って)壊れている可能性を排除できない。
【0061】
それに対して、本発明による方法は、工事業者が単なる確率計算書に勝る手法を獲得して、それに代わって全てのストランドが個別に所定の張力許容範囲内に有ることを実証することができるので、そのような統計的な判定を余分なものとしている。
【0062】
前の記述は、ストランドグループの一端に張力を加えることに重点を置いた。しかし、工事によっては、ストランドグループの両端から張力を加えることが有利な場合が有る。それは、前述した詰まりと摩擦の問題の影響を一層低減することができる。ストランドの束の端毎に一つずつ配置した二つのジャッキ集合体を用いて、ストランドに張力を加えることができる。その場合、二つのジャッキにおいて、二つの張力調整プロセスを同時に、相前後して、或いは徐々に交代して進めることができる。等張力校正を効果的に行なうために、緩みが除去されるとともに、二つのジャッキが第一の張力にまでの張力をストランドに加えた後、二つのジャッキ集合体でのロードセルの校正を同時に実施することが好ましい。ダクト内のストランドの移動量を最小限にできるので、二式の個別のジャッキを同じ圧力源から、或いは少なくとも同じ圧力で駆動することも可能である。二式のロードセルを配備することは、特に、それらを全て同じ張力に校正した場合、張力監視システムを前述した摩擦の作用に対して一層敏感なものにする。一つの配列のロードセルの出力値を互いに比較すること、並びに長期に渡ってロードセルの値の変化を監視することと同様に、一方の配列のロードセルをそれに対応する(即ち、同じストランドの)他方の配列のロードセルと比較することも可能である。例えば、ストランドがその全長に沿った何処かの個所で挟まれた状態となった場合、一端での張力が他端の張力よりも大きくなり、ストランドの両端の二つのロードセルを比較することによって、そのような差を検出することができる。前記の別の形式の比較によって行なった測定を実証するために、二つのロードセルの間又は二つのロードセル配列の間の比較を使用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストランド(1)の張力を調整する方法であって、
個々のストランド(1)毎の個別の張力を計測するための複数の個別の第一の張力検知手段(20,22)を配置する第一の工程と、
個々のストランド(1)毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさ(F1 )に調整する第二の工程と、
各ストランド(1)の張力が第一の張力の大きさ(F1 )に調整された場合に、複数の個別の第一の張力検知手段(20,22)を用いて、ストランド(1)毎に第一の個別の張力測定値(S1 )を計測する第三の工程と、
複数の第一の張力検知手段(20,22)によって計測した第一の個別の張力測定値(S1 )を第一の張力の大きさ(F1 )に校正する第四の工程と、
を有する方法。
【請求項2】
複数のストランド(1)の張力を第二の張力の大きさ(F2 )に調整する第五の工程と、
ストランド(1)の張力が第二の張力の大きさ(F2 )に調整された場合に、個別の第一の張力検知手段(20,22)を用いて、個々のストランド(1)毎に第二の個別の張力測定値(S2 )を計測する第六の工程と、
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のストランド(1)の組み合わせた張力を計測するための第二の張力検知手段を配置する第七の工程と、
この組み合わせた張力を第一の張力検知手段(20,22)によって検出した個別の張力測定値(S2 )と比較する第八の工程と、
を更に有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
個別の張力検知手段(22)が磁気式ロードセンサーである請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
ストランド(1)の張力を調整した後に個別の張力検知手段(20,22)を取り外す第九の工程を有する請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
複数の個別の張力検知手段(22)を配置して、それらの張力検知手段が、ストランド(1)の張力調整後に個々のストランド(1)の個別の張力値を提供し続けるようにする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
複数のストランド(1)の張力を調整するシステムであって、
ストランド(1)毎の張力を共通の第一の張力の大きさ(F1 )に個別に調整するための個別の張力調整手段(10,11,14)と、
複数のストランド(1)の張力を第二の張力(F2 )に調整するための共通の張力調整手段(40)と、
を備えたシステムにおいて、
ストランド(1)毎の個別の張力測定値(S1 )を検出するために配置された複数の個別の張力検知部品(20,22)と、
前記の個別の張力測定値を第一の張力の大きさ(F1 )に校正するための第一の校正手段と、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
個別の張力調整手段(11,14)が一つ以上の個別の油圧ジャッキ(11,14)から構成され、その個別の油圧ジャッキ(11,14)がそれぞれ一本のストランド(1)の張力を調整するために配置されている請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
個別の張力調整手段(11,14)が、一つの共通の圧力源(12,13)から圧力を供給されるか、或いは別個の圧力源から同じ圧力を供給される複数の個別の油圧ジャッキ(11)から構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
個別の張力調整手段(11,14)が、ストランド(1)の張力を順番に調整するために移動することが可能な個別の油圧ジャッキ(14)から構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
個別の張力検知部品(22)が磁気式ロードセンサーである請求項7から10までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項12】
個別の張力検知部品(22)が、ストランド(1)の引張方向に対してほぼ平行な長手軸に対して垂直な一つ以上の共通の面内に配置されている請求項7から11までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項13】
個別の張力検知部品(22)は、ストランドの張力調整完了後に、その位置に留まって、個々のストランド(1)の個別の張力を測定することができるように配置されている請求項7から12までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項14】
個別の張力調整手段(10,11,14)と共通の調整手段(40)が同じものである請求項7から13までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項15】
複数のストランドの共通の張力(F1 ,F2 )を計測するための共通の張力検知手段と、
個別の張力検知部品(22)によって計測された個別の張力測定値(S1 ,S2 )を共通の張力検知手段によって計測された共通の張力(F1 ,F2 )に校正するための第二の校正手段と、
を備えた請求項7から14までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項1】
複数のストランド(1)の張力を調整する方法であって、
個々のストランド(1)毎の個別の張力を計測するための複数の個別の第一の張力検知手段(20,22)を配置する第一の工程と、
個々のストランド(1)毎の個別の張力を共通の第一の張力の大きさ(F1 )に調整する第二の工程と、
各ストランド(1)の張力が第一の張力の大きさ(F1 )に調整された場合に、複数の個別の第一の張力検知手段(20,22)を用いて、ストランド(1)毎に第一の個別の張力測定値(S1 )を計測する第三の工程と、
複数の第一の張力検知手段(20,22)によって計測した第一の個別の張力測定値(S1 )を第一の張力の大きさ(F1 )に校正する第四の工程と、
を有する方法。
【請求項2】
複数のストランド(1)の張力を第二の張力の大きさ(F2 )に調整する第五の工程と、
ストランド(1)の張力が第二の張力の大きさ(F2 )に調整された場合に、個別の第一の張力検知手段(20,22)を用いて、個々のストランド(1)毎に第二の個別の張力測定値(S2 )を計測する第六の工程と、
を更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のストランド(1)の組み合わせた張力を計測するための第二の張力検知手段を配置する第七の工程と、
この組み合わせた張力を第一の張力検知手段(20,22)によって検出した個別の張力測定値(S2 )と比較する第八の工程と、
を更に有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
個別の張力検知手段(22)が磁気式ロードセンサーである請求項1から3までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
ストランド(1)の張力を調整した後に個別の張力検知手段(20,22)を取り外す第九の工程を有する請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
複数の個別の張力検知手段(22)を配置して、それらの張力検知手段が、ストランド(1)の張力調整後に個々のストランド(1)の個別の張力値を提供し続けるようにする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
複数のストランド(1)の張力を調整するシステムであって、
ストランド(1)毎の張力を共通の第一の張力の大きさ(F1 )に個別に調整するための個別の張力調整手段(10,11,14)と、
複数のストランド(1)の張力を第二の張力(F2 )に調整するための共通の張力調整手段(40)と、
を備えたシステムにおいて、
ストランド(1)毎の個別の張力測定値(S1 )を検出するために配置された複数の個別の張力検知部品(20,22)と、
前記の個別の張力測定値を第一の張力の大きさ(F1 )に校正するための第一の校正手段と、
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
個別の張力調整手段(11,14)が一つ以上の個別の油圧ジャッキ(11,14)から構成され、その個別の油圧ジャッキ(11,14)がそれぞれ一本のストランド(1)の張力を調整するために配置されている請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
個別の張力調整手段(11,14)が、一つの共通の圧力源(12,13)から圧力を供給されるか、或いは別個の圧力源から同じ圧力を供給される複数の個別の油圧ジャッキ(11)から構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
個別の張力調整手段(11,14)が、ストランド(1)の張力を順番に調整するために移動することが可能な個別の油圧ジャッキ(14)から構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
個別の張力検知部品(22)が磁気式ロードセンサーである請求項7から10までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項12】
個別の張力検知部品(22)が、ストランド(1)の引張方向に対してほぼ平行な長手軸に対して垂直な一つ以上の共通の面内に配置されている請求項7から11までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項13】
個別の張力検知部品(22)は、ストランドの張力調整完了後に、その位置に留まって、個々のストランド(1)の個別の張力を測定することができるように配置されている請求項7から12までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項14】
個別の張力調整手段(10,11,14)と共通の調整手段(40)が同じものである請求項7から13までのいずれか一つに記載のシステム。
【請求項15】
複数のストランドの共通の張力(F1 ,F2 )を計測するための共通の張力検知手段と、
個別の張力検知部品(22)によって計測された個別の張力測定値(S1 ,S2 )を共通の張力検知手段によって計測された共通の張力(F1 ,F2 )に校正するための第二の校正手段と、
を備えた請求項7から14までのいずれか一つに記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−515881(P2013−515881A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545108(P2012−545108)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067920
【国際公開番号】WO2011/076287
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511226524)ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067920
【国際公開番号】WO2011/076287
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511226524)ファウ・エス・エル・インターナツイオナール・アクチエンゲゼルシヤフト (8)
【Fターム(参考)】
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