説明

複数のユーザの通信回線を収容する通信装置

【課題】複数のユーザの通信回線を収容する通信装置に関し、一つの装置でユーザ毎に個別に動作する通信機能や個別の論理トンネルインタフェースを提供し、それらを各ユーザが自身で設定可能にする。
【解決手段】複数のユーザ110,111〜11Nの通信回線を収容し、それぞれのユーザ対応に各々独立して動作する通信機能部120と、該通信機能部120の設定情報及び各ユーザ情報をユーザ対応に別々に記憶する記憶部130と、通信データを解析して送受対象のユーザを識別するデータ解析/ユーザ識別部140と、記憶部130の情報の読み出し・書き込みの制御を行う設定/情報制御部150とを備える。設定/情報制御部150は、データ解析/識別部140によって識別された通信データが、記憶部130の読み出し又は書き込みの要求である場合に、該通信データに該当するユーザについての情報のみの読み出し又は書き込みを行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ethernet(登録商標)やIP(Internet Protocol)通信技術をベースとするレイヤ2スイッチやルータ等の通信装置で、特に、集合住宅や集団事業所局舎等に設置され、複数のユーザの通信回線を収容する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ宅内においてインターネットに接続するためには、通信事業者と契約し、回線事業者のネットワークヘアクセス回線を経由して接続するのが一般的であるが、この際、各ユーザ宅内の通信回線を収容し集約する手法としては、以下の手法がある。
(1)銅線や光ファイバを試用して1対1でユーザ宅と回線事業者局舎とを結び、回線事業者局舎内のBAS(Broadband Access Server)装置やレイヤ2スイッチ機器により集約する。
(2)PON(Passive Optical Network)技術を用いた1対多接続によってOLT(Optical Line Terminal)装置により複数のユーザの通信回線を集約する。
(3)集合住宅内でEthernet(登録商標)、VDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line)又はHomePNA(Home Phone line Networking Alliance)等の通信設備を使用して各ユーザの通信回線を配線し、レイヤ2スイッチを用いてそれらの通信回線を集約する。
【0003】
回線事業者局内でユーザ通信回線を集約する装置として設置されるBAS装置では、PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet(登録商標))等のユーザ用のトンネルを終端しており、バーチャルルータと呼ばれる機能を実装し、装置内でユーザ毎に個別のルーティング情報を保持することで、ユーザ毎にそれぞれ異なるルーティング機能を提供している。
【0004】
各ユーザ宅内では、ブロードバンドルータによりBAS装置とのPPPoEトンネルを終端し、同時にブロードバンドルータのNAT(Network Address Translation)機能やDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)機能といった各種通信機能を備えた通信機器を使用して宅内ネットワークを構築している。
【0005】
また、集合住宅のユーザに対しては、レイヤ2スイッチによるユーザ通信回線の集約後にユーザ認証用のサーバが設置される場合もあり、認証用サーバと通信事業者サーバとの間で常時PPPoEでトンネルを確立しておき、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)等のプロトコルによるWeb画面を使って認証したユーザの通信のみ上位のPPPoEへ転送するようなサービスが提供されている。
【0006】
さらに近年では、ネットワークに接続することが可能な家電機器が登場し、それらの家電機器を制御するための通信機器や、ネットワークから配信される種々の映像や音声データの取り込みを制御する機器等、ユーザ宅内では様々なボックス型の通信機器が増加し、それぞれのユーザ毎に応じて異なる通信機能を提供することが求められている。
【0007】
本発明に関連する先行技術文献として、下記の特許文献1には住戸間のプライバシーを保護することができる集合住宅用インターネット配信装置が記載され、特許文献2には通信バッファ領域及びルートテーブル領域を各VR(バーチャルルータ)毎に設定するバーチャルプライベートネットワークシステムについて記載されている。また、下記の非特許文献1及び2にはVR(バーチャルルータ)機能について、非特許文献3にはIP−VPNサービスについて記載されている。
【特許文献1】特開2002−300167号公報
【特許文献2】特開2003−204346号公報
【非特許文献1】“moperaアクセスプレミアム”、[online]、[平成16年11月5日検索]、インターネット<URL: http://www.docomo.biz/b-mopera/intro/prm_free/option.html>
【非特許文献2】“ブロードバンド辞典「仮想ルータ・システム」”、[online]、[平成16年11月5日検索]、インターネット<URL: http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term147.html>
【非特許文献3】“SOHOや中小企業にも朗報。安価に「専用線並み」に使えるIP-VPN”、[online]、[平成16年11月5日検索]、インターネット<URL: http://www.pc-view.net/Security/020318/page2.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように一般のユーザ宅内では、通信事業者との通信コネクションを提供するブロードバンドルータ以外に、映像配信、IP電話、家電制御といったサービスやアプリケーションを提供するボックスタイプの通信機能を有する端末機器が増えつつあり、設置場所に困る等の問題も増えている。さらにユーザはブロードバンドルータのほかに沢山の機器を購入しなければならず、経済的な負担が大きい。
【0009】
幾つかの集合住宅では、通信事業者とのPPPoEトンネルを終端し、各ユーザの認証機能を提供する認証サーバ装置もあるが、このようなサーバ装置は、通信事業者とのコネクションを提供するが、ユーザ個別に動作するDHCPやNATの機能はなく、ユーザが個別にそれらの機能を設定することができないため、ユーザ宅内に置かれるブロードバンドルータの代わりにはならない。
【0010】
また、ユーザ毎に異なるPPPoEトンネルを提供することもできないため、ユーザは個別にインターネットプロバイダを選択することはできず、集合住宅内の全てのユーザは同一のインターネットプロバイダにしか接続することができない。
【0011】
さらに、PPPoEを使用した通信システムは、マルチキャストによるサービスとの相性が悪く、PPPoE通信システム上でマルチキャストサービスを行う場合、通信事業者内のPPPoEトンネルを終端する装置において、マルチキャストの配信データを各ユーザ分コピーしなければならなくなる。
【0012】
また、PPPoE接続の終端点にいるユーザ同士がVoIP(Voice over IP)等のピア・ツー・ピア(Peer to Peer)通信を行う場合は、ユーザが同じ集合住宅内に居る場合でも、集合住宅内の通信設備で直接通信することはできず、通信事業者の通信設備内で通信データを折り返すことにより通信を行わなければならない。
【0013】
また、このような複数のユーザの通信回線を集約する集合型の通信機器は、その機能変更や拡張等に伴うファームウェアのアップデートが困難になる。通常、ファームウェアのアップデート又はアップグレードを行った際は、通信機器の再起動が必要になる。一般のユーザ宅内用のブロードバンドルータのような機器であれば、ユーザが自身の判断でファームウェア更新用のプログラムをダウンロードし、アップデート又はアップグレードを行うことができるが、集合型の通信装置の場合は、複数のユーザを集約しているため、適宜アップデート又はアップグレードして再起動を行うのが困難である。
【0014】
本発明の目的は、一つの通信装置においてユーザ毎に個別に動作する通信機能や個別の論理トンネルインタフェースを提供することであり、さらにそれらを各ユーザが自身で設定可能にすることである。これによって、一つの通信装置で複数の異なる通信事業者への接続サービスをユーザに提供することができ、また、DHCPやNAT等の通信機能をユーザ毎に提供することでユーザの利便性を高めることができる。本発明のその他の目的は、通信装置のアップデート又はアップグレードに際して、各ユーザへ与えるサービスの低下を最小限に抑えて通信装置の管理を容易に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置は、(1)複数のユーザの通信回線を収容し、該複数のユーザと通信事業者との間の接続を提供する通信装置であって、それぞれのユーザ毎に個別に動作する通信機能部と、該通信機能部の設定情報及び各ユーザについてのユーザ情報をユーザ対応に別々に記憶する記憶部と、送受される通信データを解析して該通信データの送受対象のユーザを識別するデータ解析/ユーザ識別部と、前記データ解析/識別部によって識別された通信データが、前記記憶部の読み出し又は書き込みの要求である場合に、該通信データの送受に係るユーザについての情報のみの読み出し又は書き込みを行うように制御する設定/情報制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、(2)一つの物理インタフェースに一つのユーザ通信回線のみが接続されるインタフェースを複数有し、前記データ解析/ユーザ識別部は、通信データが入力された物理インタフェースによって該当ユーザを識別する手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、(3)各ユーザの通信データに、ユーザ毎に異なる識別子を付与する手段を有し、前記データ解析/ユーザ識別部は、通信データに付与されたユーザ毎に異なる前記識別子によって該当ユーザを識別する手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、(4)通信パケット内のアドレス情報によって該パケットの宛先を管理する記憶部を備え、該記憶部の内容を、通信制御プロトコルによってネットワークアドレスがユーザに割り当てられたときに更新する手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、(5)トンネルプロトコルによって複数の論理インタフェースを構成する手段と、接続されるユーザと前記論理インタフェースとを関連付けて管理する記憶部と、ユーザから通信データを受信した際に、該通信データが入力された物理インタフェースのアドレスによって識別されたユーザに関連付けられた論理インタフェースを選択し、該通信データを該論理インタフェースへ転送する手段と、論理インタフェースから通信データを受信した際に、該通信データを受信した論理インタフェースに関連付けられたユーザを選択し、該ユーザの接続された物理インタフェースへ該通信データを転送する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、(6)トンネルプロトコルによって複数の論理インタフェースを構成する手段と、接続されるユーザと前記論理インタフェースとを関連付けて管理する記憶部と、ユーザから通信データを受信した際に、該通信データに付与された識別子によって識別されたユーザに関連付けられた論理インタフェースを選択し、該通信データを該論理インタフェースへ転送する手段と、論理インタフェースから通信データを受信した際に、該通信データを受信した論理インタフェースに関連付けられたユーザを選択し、該ユーザの識別子を該通信データに付与して転送する手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、(7)ユーザ毎に個別に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部と、複数のユーザに共通に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部と、パケットを受信した際に、前記2種類の記憶部の何れか一方を事前に定められた優先度に従って検索する経路検索部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、(8)受信パケットの経路検索時に、前記複数のユーザに共通に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部に、該自装置内の宛先の経路情報が登録されていることを認識した場合、回線事業者のネットワークを経由することなく、該記憶部に登録された自装置内の宛先の経路へ優先して該パケットを転送する手段を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、(9)書き換え用の新規プログラムを格納した別の装置から、ネットワーク経由で該プログラムを取得する手段と、各ユーザの通信状態を監視・測定し、該監視・測定された通信量又は通信内容の優先度を予め設定された閾値と比較し、それらが閾値以下のときに、前記ネットワーク経由で取得した新規プログラムに自装置のプログラムを書き換える手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
また、(10)ユーザの通信からHTTPのプロトコルの通信を識別する手段を備え、前記プログラムの書き換えの旨を含むユーザへの通知情報を所持している場合に、前記ユーザからのHTTPのプロトコルの通信を終端し、該ユーザへHTTPのプロトコルの通信により前記通知情報を表示する手段を備えたことを特徴とする
【発明の効果】
【0025】
本発明による第1の効果は、ユーザ毎に個別に動作する通信機能部と、該通信機能部の設定情報及び各ユーザについてのユーザ情報をユーザ対応に別々に記憶する記憶部とを備えたことにより、一つの通信装置で様々な異なるサービスを各ユーザに提供することができ、また各ユーザは自身に提供されるサービスについて自身で設定変更及び設定情報の閲覧を行うことができる。
【0026】
特に集合住宅で複数のユーザを収容する通信装置においては、各ユーザの加入するサービスの種類に応じて各ユーザへ異なるサービスを提供することができ、また、ユーザ自身がその設定を変更し又は閲覧することが可能となる。また、本発明は、ユーザ毎に通信事業者との間にPPPoEトンネルを確立することができるため、各ユーザはそれぞれ異なる通信事業者に接続することができ、また、各ユーザ宅内にはブロードバンドルータ機器を備える必要が無くなる。
【0027】
本発明による第2の効果は、ユーザ毎の個別の経路情報とは別に各ユーザに共通の経路情報を備えることにより、各ユーザに共通のサービスを提供することができることである。特に、集合住宅に設置され、PPPoEトンネル接続を終端するユーザ回線集約装置においては、従来PPPoE伝送システム上では提供が困難であったマルチキャストサービスを容易に提供することができるようになる。また、同一の集合住宅内のユーザ同士のピア・ツー・ピア(Peer to Peer)通信を、回線事業者のネットワークを経由せずに直接行うことができるようになる。
【0028】
本発明による第3の効果は、通信装置のプログラムの書き換えを自動化することで、通信量の少ないとき等、プログラム書き換えのタイミングを柔軟に設定し、通信装置のアップグレード等を行うことができる。また、ユーザのHTTP通信を監視し、該HTTP通信を強制的に終端することで、プログラム書き換え情報やサービス停止時間の情報等をリアルタイムにユーザへ通知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1はユーザ毎の通信機能を備えた本発明の通信装置を示す。本発明の通信装置は、複数のユーザ110,111〜11Nの通信回線を収容し、それぞれのユーザ対応に各々独立して動作する通信機能部120と、該通信機能部120の設定情報及び各ユーザについてのユーザ情報をユーザ対応に別々に記憶する記憶部130と、送受される通信データを解析して該通信データの該当ユーザ(該通信データの送受対象のユーザ)を識別するデータ解析/ユーザ識別部140と、記憶部130の情報の読み出し・書き込みの制御を行う設定/情報制御部150とを備える。
【0030】
設定/情報制御部150は、データ解析/識別部140によって識別された通信データが、記憶部130からの読み出し又は記憶部130への書き込みの要求である場合に、該通信データに該当するユーザについての情報のみの読み出し又は書き込みを行うように制御する。
【0031】
上記のユーザ毎の通信機能部120及び記憶部130を備えることにより、収容されたユーザ毎に異なる通信機能を提供することができ、また各ユーザも特に意識することなく、通信装置100にアクセスすれば、自動的にデータ解析/ユーザ識別部140により通信元のユーザが識別され、該ユーザに係る設定内容・情報だけを閲覧・変更することができる。
【0032】
また、本発明の通信装置100は、使用可能な通信機能をユーザ毎に予め設定する手段を備え、通信機能部120は、該設定手段に従ってユーザ毎に使用可能な通信機能を提供し、設定・ユーザ情報を格納する記憶部130の読み出し・書き込みは、該設定手段によりユーザ毎の使用可能な項目のみの読み出し・書き込みを行う手段を備える。
【0033】
これにより、各ユーザがそれぞれ加入しているサービスを予め設定しておき、加入しているサービスに関する通信機能のみを各ユーザに提供し、記憶部130の設定変更・読み出しも、加入しているサービスに関するものしかできないようにすることができる。
【0034】
また、本発明の通信装置は、一つの物理的インタフェースに一つのユーザ通信回線のみが接続されるインタフェースを複数備え、前述の通信データを解析して該通信データの該当ユーザを識別する手段は、該通信データが入力された物理インタフェースによって識別する構成とすることができる。
【0035】
また、本発明の通信装置は、各ユーザの通信データにユーザ毎に異なる識別子を付与して通信を行う手段を備え、前述の通信データを解析して該通信データの該当ユーザを識別する手段は、該通信データに付与された該識別子によって識別する構成とすることもできる。
【0036】
また、本発明の通信装置は、通信パケット内のアドレス情報によってそのパケットの宛先を管理する記憶部130を備え、該記憶部130の内容は、通信制御プロトコルによってネットワークアドレスがユーザに割り当てられたときに自動的に更新される構成とすることができる。
【0037】
次に、トンネルプロトコルによる複数の論理インタフェースを構成する本発明の通信装置について図2を参照して説明する。この実施形態の通信装置200は、複数のユーザ210,211〜21Nの通信回線を収容し、トンネルプロトコルによって複数の論理インタフェースを構成する論理IF構成部220と、各論理インタフェースとそれに接続されるユーザとを関連付けて管理する記憶部230と、ユーザから通信データを受信した際に、ユーザを識別するデータ解析/ユーザ識別部240によって該当するユーザを識別し、記憶部230により各ユーザに関連付けられた論理インタフェースを選択し、該論理インタフェースへ通信データを転送するユーザ→論理IF転送部250と、論理インタフェースから通信データを受信した際に、記憶部230により論理インタフェースに関連付けられたユーザを選択して、該ユーザへ向けて該通信データを転送する論理IF→ユーザ転送部260とを備える。
【0038】
また、この実施形態の通信装置において、データ解析/ユーザ識別部240のユーザを識別する手段は、ユーザの通信回線が接続されている物理インタフェースによってユーザを識別する構成とすることができる。また、ユーザを識別する手段は、ユーザ毎に異なる識別子をパケットに付与する手段によって付与された識別子を基にユーザを識別する構成とすることができる。
【0039】
次に、ユーザ毎の経路情報及びユーザ共通の経路情報を有する本発明の通信装置について図3を参照して説明する。この実施形態の通信装置300は、複数のユーザの通信回線310,311〜31Nを収容し、ユーザ毎に個別に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部320と、複数のユーザに共通に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部330と、パケットを受信した際に、前述の2種類の記憶部320又は記憶部330の何れかを事前に定められた優先度に従って検索する経路検索部340とを備える。
【0040】
なお、この実施形態は前述の図2に示したトンネルプロトコルによる複数の論理インタフェースを構成する実施形態と組み合わせて構成してもよく、この場合、図2の実施形態のユーザ→論理IF転送部250や論理IF→ユーザ転送部260に優先して、記憶部330による宛先決定ポリシーによる転送が適用される。
【0041】
次に自装置のプログラムを書き換えることができる通信装置の実施形態について説明する。本発明による通信装置は、書き換え用の新規プログラムを格納した別の装置からネットワーク経由で該プログラムを取得し、以下に述べる予め定められた契機によって自装置のプログラムを、ネットワーク経由で取得した新規のプログラムに自動的に書き換える手段を備える。
【0042】
上述のプログラムの書き換えの契機として、通信装置内においてユーザの通信状態を監視・測定し、該監視・測定された通信量又は通信内容の優先度を予め設定された閾値と比較し、それらが閾値以下のときにネットワーク経由で取得した新規プログラムに書き換える構成とすることができる。
【0043】
また、本発明による通信装置は、ユーザの通信からHTTPのプロトコルによる通信データを識別する手段を備え、ユーザへプログラム書き換え等の旨の通知すべき情報を所持している場合のみ、該識別手段によってユーザからのHTTPのプロトコルによる通信データを識別して終端し、該ユーザへHTTPのプロトコルによる通信データを使用して前記通知情報を送信する手段を備えることができる。
【実施例1】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は例示であり、本発明の構成は以下の実施例の構成に限定されない。図4は本発明による通信装置を用いたユーザ回線集約システムの第1の実施例である。集合住宅430内には各ユーザ410,411〜41Nの居宅があり、各ユーザはそれぞれの宅内でネットワークを構成している。
【0045】
集合住宅430内の管理室440には本発明による通信装置400が設置され、通信装置400の一つの物理インタフェースに一ユーザの通信回線が接続され、各ユーザ宅とはEthernet(登録商標),VDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line),HomePNA(Home Phone line Networking Alliance)等の通信設備により配線され、通信装置400は各ユーザ宅から配線された通信回線を集約する。
【0046】
また、集合住宅430と回線事業者との間には光ファイバ等の伝送回線が敷設され、集合住宅430内に設置される通信装置400は、PPPoE等のトンネルプロトコルを使用して回線事業者のBAS(Broadband Access Server)装置450と接続され、ユーザからの通信データはBAS装置450によって各サービス事業者(通信事業者)461〜463へ振り分けられる。
【0047】
通信装置400は、各ユーザとサービス事業者(通信事業者)とで交わされるサービス契約の内容によって、ユーザ毎にそれぞれ異なる通信機能を提供する。図4の例では、ユーザ410が契約するサービス事業者461は、IPv4のインターネット接続を提供し、通信装置400は、ユーザ410に対してIPv4ルータ機能,NAT機能,DHCP機能を提供する。
【0048】
同様の例として、サービス事業者462(IPv6インターネット接続提供者)と契約しているユーザ411には、IPv6ルータ機能とファイアウォール機能を、サービス事業者463(IPv4インターネット接続とIP電話の提供者)と契約しているユーザ41Nには、ブリッジング機能を提供する。これらの通信機能は、ユーザ毎に個別に提供され、それぞれの通信機能は独立して動作する。
【0049】
図5は通信装置400内で、各ユーザ410〜41Nのユーザ識別情報,接続先トンネル情報,提供通信機能及び設定情報を管理するユーザ管理テーブルを示している。通信装置400は、パケット受信時に該ユーザ管理テーブルを検索することにより、該当するユーザを識別し、提供する通信機能、該ユーザが設定/閲覧することができる情報,パケットの転送先等を決定する。
【0050】
各ユーザはHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)等の通信プロトコルにより通信装置400にアクセスして各自の通信機能を直接設定したり、設定情報を閲覧したりすることができる。通信装置400は、ユーザから送られてきた自装置宛のHTTPのプロトコルによる制御パケットを、前述のユーザ管理テーブルを検索することにより送信ユーザを識別し、該当する通信機能に関わる制御画面又は情報のみを該ユーザのWEBブラウザ画面上に表示する。
【0051】
従って、ユーザ410にはIPv4ルータ,NAT機能,DHCP機能に関する設定情報、ユーザ411にはIPv6ルータ,ファイアウォール機能に関する設定情報、ユーザ41Nにはブリッジング機能に関する設定情報のみがそれぞれのWEBブラウザによる表示画面に表示され、ユーザ毎の通信機能の設定又はその設定情報だけを変更又は閲覧することができる。
【0052】
また、ユーザがサービス事業者を介して通信を行うときも同様に、通信装置400はユーザからパケットを受信した際に、前記ユーザ管理テーブルによって転送先のPPPoEトンネル接続先を決定し、逆にサービス事業者側からパケットを受信した際にも、前記ユーザ管理テーブルによって転送先の物理ポートを決定する。
【実施例2】
【0053】
図6は本発明による通信装置を用いたユーザの通信回線を集約するシステムの第2の実施例である。集合住宅660の管理室650内には本発明による通信装置600が設置される。各ユーザ610,611〜61Nの通信回線は、レイヤ2スイッチ640で集約され、該集約された一つの回線が本発明の通信装置600の一つの物理インタフェースに接続される。
【0054】
レイヤ2スイッチ640は、VLAN(Virtual LAN)によってユーザ間の通信を分離し、ポートベースVLANを使用して、各ユーザの通信回線が接続されている物理インタフェースとVLAN IDとを対応させ、通信装置600との間でタグVLANを使用してパケットを送受する。
【0055】
レイヤ2スイッチ640は、VLAN管理テーブル670を用いてLAN接続を管理する。図6に示す例では、物理ポート#DL0に接続されたユーザ610からのパケットはVLAN ID=1000に所属するため、通信装置600が接続された物理ポート#ULへ該パケットを転送する際に、VID=1000を示すVLANタグを付与して出力し、通信装置600においてユーザ識別部630でVLANタグのVIDを認識することによりユーザを識別し、ユーザ毎の通信機能部620で該ユーザに対応する通信機能を提供する。
【0056】
図7は通信装置600内で、各ユーザ610〜61Nのユーザ識別情報,接続先トンネル情報,提供する通信機能及び設定情報を管理するユーザ管理テーブルを示している。この実施例では、ユーザ識別子としてVLANタグのVIDを使用する。
【実施例3】
【0057】
図8は本発明による通信装置を用いたユーザ通信回線の集約システムの第3の実施例である。本発明による通信装置800は、集合住宅におけるユーザの通信回線を集約し、上位のサービス事業者とPPPoE等のトンネルプロトコルによって接続されている。
【0058】
通常、各ユーザからのパケットは、通信装置800においてユーザ識別後にユーザ毎の経路情報を参照し、該当するPPPoEの接続先トンネルへ転送される。ここで回線事業者840は、サービス事業者と集合住宅との間を接続するサービスを主に提供するが、回線事業者840自身のネットワークを利用したコンテンツ配信サービス830も提供することができる。
【0059】
ここで、ユーザ810,811は、この回線事業者840のコンテンツ配信サービス830に加入し、その宅内に設置されたTV(テレビ)端末を使用してコンテンツを視聴するものとする。このとき、ユーザ810,811へのコンテンツ配信サービス830の配信手順において、通信装置800は、ユーザ共通の経路情報850を参照し、ユーザ810,811の該配信サービスへの加入を認識して、ユーザ810,811からの該コンテンツ配信サービス宛へのパケット(コンテンツ視聴要求等)は、PPPoEトンネル内へは転送せずに、IPoE(IP over Ethernet(登録商標))として直接回線事業者へ転送する。
【0060】
また逆に、通信装置800は、コンテンツ配信サービス830から受信したマルチキャスト等のIPoEパケットを、コンテンツ配信サービス830へ加入しているユーザ810,811宛に転送する。このように、ユーザ毎の個別の経路情報とは別にユーザ共通の経路情報を参照することで、複数のユーザに共通のコンテンツ配信サービスを提供することが可能となり、PPPoEシステム上でPPPoEトンネルを使用せずにマルチキャストサービス等による配信サービスを提供することができる。
【実施例4】
【0061】
図9は本発明による通信装置を用いたユーザ通信回線集約システムの第4の実施例である。本発明による通信装置900は、集合住宅におけるユーザの通信回線を集約し、上位のサービス事業者とPPPoE等のトンネルプロトコルによって接続する。
【0062】
通常、各ユーザからのパケットは、通信装置900においてユーザ識別を行った後に各ユーザ毎の個別の経路情報を参照し、該当するPPPoEトンネルへ転送される。また、通信装置900は、各ユーザが加入しているサービスを管理しており、図9ではユーザ910,ユーザ911が同一のサービス事業者(サービス事業者1)に加入しているものとする。
【0063】
ここで、ユーザ910からユーザ911に、サービス事業者1が提供するIP電話サービスによる通話の要求を発した場合、ユーザ910のIP電話端末とユーザ911のIP電話端末との間でピア・ツー・ピア(Peer to Peer)通信が発生する。このとき、通信装置900は、ユーザ共通の経路情報920を参照し、ユーザ910とユーザ911とが同一のサービス事業者1に加入していることを認識すると、PPPoEトンネル内へは転送せず、共通経路情報920の情報に従って、ユーザ910とユーザ911との間で直接パケット転送を行う。
【0064】
このように、ユーザ毎の個別の経路情報とは別にユーザ共通の経路情報を参照することで、集合住宅内でのピア・ツー・ピア(Peer to Peer)通信サービスを、回線事業者との回線を使用することなく該集合住宅内の回線だけを用いて提供することにより、回線使用の効率化を図ることができる。
【実施例5】
【0065】
通信装置においてプログラムの変更を行う場合、一般には通信事業者又は集合住宅の管理者がその変更を行う必要があるが、本発明による通信装置では、予めプログラムをネットワーク上のサーバ等からダウンロードしておき、深夜等のようにサービス利用の少ない時間帯に自動的にプログラム書き換え、再起動を行うよう設定することが可能である。
【0066】
本発明による通信装置は、ユーザの通信状態をリアルタイムに監視し、ユーザの送受するデータ通信量が少ないとき又は優先度の高いデータ通信が行われてていないときに、自動的に通信装置のプログラム書き換え、再起動の処理を行うように設定することができる。
【0067】
また、この自動的に行うプログラム書き換え時には、ユーザへプログラム書き換えによる仕様変更や再起動による一時的サービス停止の旨の情報を通知する必要がある。図10は本発明による通信装置において、ユーザにプログラム書き換えの旨の情報を通知する実施例である。
【0068】
本発明による通信装置1000は、通知情報保持部1020においてサービス一時停止や仕様変更等のユーザへの通知情報を保持している。通知情報保持部1020がユーザへ通知すべき情報を特に保持していない場合は、ユーザ端末1030からインターネット上のWebサーバ1040へのアクセスは通常通り行われる。
【0069】
しかし、例えば、通知情報保持部1020が処理プログラム書き換えの通知情報を保持しているときに、ユーザ端末1030がインターネット上のWebサーバ1040へHTTPのプロトコルによるアクセスを行った場合、通信装置1000内のHTTP識別部1010は、強制的にこのHTTPのプロトコルによるアクセスを終端し、発信元のユーザへプログラム書き換えの旨の通知情報を含むHTTPレスポンスを返送する。
【0070】
このHTTPレスポンスのメッセージ内には、一定時間経過後に自動的にWebサーバ1040ヘアクセスするスクリプト、又はユーザが通知情報を読み終えた後にWebサーバ1040ヘアクセスすることができるハイパーリンクを挿入しておく。これによってユーザは、HTTPのプロトコルによるアクセスを行ったときに、事前に必要な通知情報を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ユーザ毎の通信機能を備えた本発明の通信装置を示す図である。
【図2】トンネルプロトコルによる複数の論理インタフェースを構成する本発明の通信装置を示す図である。
【図3】ユーザ毎の経路情報及びユーザ共通の経路情報を有する本発明の通信装置を示す図である。
【図4】本発明の通信装置を用いたユーザ回線集約システムの第1の実施例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施例のユーザ管理テーブルを示す図である。
【図6】本発明の通信装置を用いたユーザ回線集約システムの第2の実施例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施例のユーザ管理テーブルを示す図である。
【図8】本発明の通信装置を用いたユーザ回線集約システムの第3の実施例を示す図である。
【図9】本発明の通信装置を用いたユーザ回線集約システムの第4の実施例を示す図である。
【図10】本発明の通信装置におけるプログラム書き換えの旨をユーザに通知する実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
110,111〜11N ユーザ
120 通信機能部
130 記憶部
140 データ解析/ユーザ識別部
150 設定/情報制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザの通信回線を収容し、該複数のユーザと通信事業者との間の接続を提供する通信装置であって、
それぞれのユーザ毎に個別に動作する通信機能部と、
該通信機能部の設定情報及び各ユーザについてのユーザ情報をユーザ対応に別々に記憶する記憶部と、
送受される通信データを解析して該通信データの送受対象のユーザを識別するデータ解析/ユーザ識別部と、
前記データ解析/識別部によって識別された通信データが、前記記憶部の読み出し又は書き込みの要求である場合に、該通信データの送受に係るユーザについての情報のみの読み出し又は書き込みを行うように制御する設定/情報制御部と、
を備えたことを特徴とする複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項2】
一つの物理インタフェースに一つのユーザ通信回線のみが接続されるインタフェースを複数有し、前記データ解析/ユーザ識別部は、通信データが入力された物理インタフェースによって該当ユーザを識別する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項3】
各ユーザの通信データに、ユーザ毎に異なる識別子を付与する手段を有し、前記データ解析/ユーザ識別部は、通信データに付与されたユーザ毎に異なる前記識別子によって該当ユーザを識別する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項4】
通信パケット内のアドレス情報によって該パケットの宛先を管理する記憶部を備え、該記憶部の内容を、通信制御プロトコルによってネットワークアドレスがユーザに割り当てられたときに更新する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項5】
トンネルプロトコルによって複数の論理インタフェースを構成する手段と、
接続されるユーザと前記論理インタフェースとを関連付けて管理する記憶部と、
ユーザから通信データを受信した際に、該通信データが入力された物理インタフェースによって識別されたユーザに関連付けられた論理インタフェースを選択し、該通信データを該論理インタフェースへ転送する手段と、
論理インタフェースから通信データを受信した際に、該通信データを受信した論理インタフェースに関連付けられたユーザを選択し、該ユーザの接続された物理インタフェースへ該通信データを転送する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項6】
トンネルプロトコルによって複数の論理インタフェースを構成する手段と、
接続されるユーザと前記論理インタフェースとを関連付けて管理する記憶部と、
ユーザから通信データを受信した際に、該通信データに付与された識別子によって識別されたユーザに関連付けられた論理インタフェースを選択し、該通信データを該論理インタフェースへ転送する手段と、
論理インタフェースから通信データを受信した際に、該通信データを受信した論理インタフェースに関連付けられたユーザを選択し、該ユーザの識別子を該通信データに付与して転送する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項7】
ユーザ毎に個別に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部と、
複数のユーザに共通に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部と、
パケットを受信した際に、前記2種類の記憶部の何れか一方を事前に定められた優先度に従って検索する経路検索部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項8】
受信パケットの経路検索時に、前記複数のユーザに共通に配備されたパケットの宛先の経路情報を管理する記憶部に、該自装置内の宛先の経路情報が登録されていることを認識した場合、回線事業者のネットワークを経由することなく、該記憶部に登録された自装置内の宛先の経路へ優先して該パケットを転送する手段を備えたことを特徴とする請求項7に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項9】
書き換え用の新規プログラムを格納した別の装置から、ネットワーク経由で該プログラムを取得する手段と、
各ユーザの通信状態を監視・測定し、該監視・測定された通信量又は通信内容の優先度を予め設定された閾値と比較し、それらが閾値以下のときに、前記ネットワーク経由で取得した新規プログラムに自装置のプログラムを書き換える手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。
【請求項10】
ユーザの通信からHTTPのプロトコルの通信を識別する手段を備え、前記プログラムの書き換えの旨を含むユーザへの通知情報を所持している場合に、前記ユーザからのHTTPのプロトコルの通信を終端し、該ユーザへHTTPのプロトコルの通信により前記通知情報を表示する手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載の複数のユーザの通信回線を収容する通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−165723(P2006−165723A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350652(P2004−350652)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000237662)富士通アクセス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】