説明

複数のループ反応器を用いるオレフィン重合方法

移送ラインによって相互接続されている一連の少なくとも2つのループ反応器内で1種類以上のα−オレフィンをスラリー重合する方法であって、第1のループ反応器から第2のループ反応器へのポリマーの移送が、(i)移送ラインによって第2のループ反応器へのポリマースラリーの再循環を行い、それによって第2のループ反応器から排出されるポリマースラリーのフラクションS1をそれに連続的に再循環して戻し;(ii)第1のループ反応器内で製造されるポリマースラリーのフラクションを、移送ラインに接続されている排出ライン中に排出する;工程を含む、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一連の少なくとも2つのループ反応器内で行うオレフィンの液相重合方法に関する。本発明は、また、少なくとも2つのループ反応器、及びポリマースラリーを1つのループ反応器から他のループ反応器へ移送するための移送手段を含むオレフィン重合装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合を1以上のループ反応器内においてスラリー条件下で行うことは公知である。このタイプの反応器は、ポリエチレン及びポリプロピレンの製造において広く用いられている。得られる生成物は、液体モノマー懸濁液中の固体ポリマー粒子(バルク重合)、或いは重合希釈剤としての不活性溶媒と一緒に混合されている液体モノマーの懸濁液中のポリマー粒子から構成される。プロピレン(コ)ポリマーは、通常、高いモノマー濃度を与えることによって重合反応の速度を最大にするために、重合媒体として液体プロピレンを用いることによって製造される。
【0003】
ポンプによってポリマースラリーをループ反応器内において連続的に循環して、液体反応媒体中での固体ポリマーの均一な分散を保持する。ポリマースラリーを反応器から排出し、濃縮して反応器出口における固体含量をループ反応器の内部の固体含量よりも高くすることができる。伝統的には、これはループ反応器からの排出において、生成物を回収するようにバッチ式で運転する沈降レッグ(settling legs)を用いることによって行われている。濃縮されたポリマースラリーは、フラッシュタンクに連続的に移され、ここで希釈剤及び未反応のモノマーの殆どをフラッシングによって除去して、フラッシュタンクの底部において固体ポリマーを分離する。
【0004】
また、第1のループ反応器からポリマースラリーを受容して、場合によっては異なる重合条件下で重合反応を継続する第2のループ反応器を用いて、所望の組成及び特性を有するオレフィンポリマー及びコポリマーを製造することも公知である。
【0005】
重合装置の標準的な運転中においては、移送ラインに沿った所定の圧力勾配によって、第1のループ反応器と第2のループ反応器との間のポリマースラリーの連続移送が確保される。しかしながら、2つのループ反応器の間でポリマースラリーを移送させることに関連する問題が起こる可能性がある。便宜上の理由により、複数のループ反応器は、通常は互いに近接した距離に配置して、それによって第1及び第2のループ反応器が通常は短い移送管によって接続されるようにする。したがって、結果として起こる第1の反応器への供給ラインでの圧力の上昇、或いは第2の反応器からの出口での圧力上昇により、移送ラインの圧力勾配のかなりの減少が引き起こされて、移送ラインに沿ったスラリー流量を減少させるか又は停止すらさせる有害な影響をもたらす可能性がある。かかるスラリー流の減少又は停止は、結果として、移送ラインの内部にポリマー塊を形成する制御されない重合のために移送ラインの閉塞を引き起こす可能性がある。移送導管が閉塞する場合には重合プラントを完全に停止させることが必要になり、その結果、時間及び費用の損失をもたらす。
【0006】
上記の技術的欠点を解決するために、2つのループ反応器を接続する移送ラインの異なる配置が提案されている。
WO−2005/077985においては、第1の反応器の沈降レッグの出口から第2の反応器内の入口へ伸びる実質的に水平の移送ラインを用いることによってポリマースラリーを第1のループ反応器から第2のループ反応器へ移送する、オレフィンを重合するための多重ループ反応器が開示されている。ポリマーは、真っ直ぐで実質的に水平のラインによって1つの反応器から他の反応器へ直接移送され、これにより複数の反応器をより離して設置することが可能になる。水平方向からの曲がり又は任意の他のずれは、ポリマーの移送速度を減少させ、移送ライン内の閉塞の頻度を増加させる可能性があるので、避けられる。沈降レッグをループ反応器の一部又は屈曲部上に配置して、これにより重合スラリーをデカントし、固形分の濃度を増加させることが可能になる。ポリマーの移送又は排出は多重バルブシステムによって制御する。
【0007】
WO−05/080442においては、第1の移送管を通して第1のループから第2のループへ成長ポリマーを連続的に流し、第2の移送管を通して第1のループに戻す、相互接続ループ反応器が開示されている。ここでは、2つの管は互いに全く接続されずに完全に分離されている。図1の態様においては、第1の管によって、ポリマースラリーを第1の反応器の循環ポンプの上流の点から第2の反応器の循環ポンプの上流の点まで移送する。第2の管によって、ポリマースラリーを第2の反応器の循環ポンプの下流の点から第1の反応器の循環ポンプの上流の点まで移送して戻す。WO−05/080442の実施例において与えられている実験データによれば、上記の移送ラインの両方とも僅か0.5barの圧力勾配で運転される。ループ反応器の供給口又は排出口における圧力の僅かな変動によって、制限された圧力勾配の更なる減少を引き起こして、移送ラインに沿ったポリマースラリーの流量を減少させる有害な影響を引き起こす可能性があり、制御されない重合及び移送ラインの閉塞の危険性が現実的になることが容易に理解される。
【0008】
上記の従来技術文献において記載されている方法及び装置では、2つの直列接続ループ反応器の間を直接接続することに関連する問題点は解決されず、かかる従来技術の配置では第1又は第2のループ反応器内で起こりうる圧力変化を吸収することはできず、その結果、重合プラントの運転における信頼性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/077985号
【特許文献2】国際公開第2005/080442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を考慮すると、複数のループ反応器及びそれらの相互接続移送ラインの配置を改良して、2つの反応器の間で移送されるポリマースラリーの流量の変動を最小にして、重合プラントの信頼できる運転を確保する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の対象は、移送ラインによって相互接続されている一連の少なくとも2つのループ反応器内で1種類以上のα−オレフィンをスラリー重合する方法であって、第1のループ反応器から第2のループ反応器へのポリマーの移送が、
(i)移送ラインによって第2のループ反応器へのポリマースラリーの再循環を行い、それによって第2のループ反応器から排出されるポリマースラリーのフラクションS1をそれに連続的に再循環して戻し;
(ii)第1のループ反応器内で製造されるポリマースラリーのフラクションを、移送ラインに接続されている排出ライン中に排出する;
工程を含み、
第2のループ反応器へ再循環して戻される全ポリマースラリーS2と重合プラントの生産量との間の重量比Rが2〜8の範囲である、上記方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、一連の第1のループ反応器10及び第2のループ反応器20内で行うオレフィンのスラリー重合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の重合方法は、複数のループ反応器及びループ反応器を互いに接続する移送ラインの特有の配置に基づく。実際、本発明の移送ラインは、ポリマーを第1の反応器から第2の反応器へ移送する従来の機能に加えて、ポリマーを第2のループ反応器の1つの区域から他の区域へ連続的に再循環する機能も有する。移送ラインは「環状接続」として構成され、これにより、上記の工程(i)によって第2のループ反応器内で製造されるポリマースラリーのフラクションの連続的な再循環が確保される。
【0014】
特に、第2のループ反応器内で製造されるポリマースラリーのフラクションS1を移送ラインに導入して、移送ラインが第1のループ反応器から導かれる排出ラインと合流する第1のループ反応器の近傍に移送する。その結果、第2の反応器から得られるポリマースラリーのフラクションS1は、第1のループ反応器から排出されるポリマースラリーと合流する。その後、上記の工程(i)及び(ii)から得られるそれぞれの量のポリマースラリーが移送ライン中に一緒に流入して、第2のループ反応器上に配置されている移送ラインの出口に到達する前に一緒に混合される。
【0015】
本発明の重合方法において採用される運転条件をより明確にするために、第2のループ反応器から得られて移送ラインに導入されるポリマースラリーの流量をS1によって示し、一方、第2のループ反応器へ戻される全ポリマースラリーの流量をS2によって示す。
【0016】
上記で定義したポリマースラリーS1は、第2のループ反応器の内部で循環されるスラリーの相当量のフラクションであり;S1は、一般に第2のループ反応器内で循環されるポリマースラリーの1重量%〜10重量%、好ましくは2.0重量%〜6重量%の範囲である。
【0017】
重合プラントの生産量P、即ち第1及び第2の反応器内で形成されるポリマーの全流量は、一般に、それぞれのループ反応器の内部で循環されるスラリーの0.1〜3重量%の範囲である。
【0018】
重合プラントの生産量Pに対してどれだけ多くのポリマースラリーを本発明の移送ラインに沿って連続的に再循環するかを示すパラメーターを定義することが有用である可能性がある。このパラメーターは、上記に定義のスラリーS2と重合プラントの生産量Pとの間の重量比Rであり;重合プロセスの最良の操作性を確保するために、重量比Rは、一般に2〜8、好ましくは3〜6の範囲であるように選択される。これらのR値は、重合プラントの生産量Pと比べて相当量のポリマースラリーが本発明の移送ラインによって連続的に再循環されることを示す。
【0019】
本発明の重合方法は多くの有利性を与える。従来技術の配置とは異なり、本発明の移送ラインは、第1及び第2のループ反応器を直接結合する接続ではなく、第2の反応器から出発して第1のループ反応器に近接する区域に到達して第2のループ反応器に戻る相当の長さを有する「環状接続」である。この相当な長さのために、この移送ラインに沿った圧力勾配が従来技術の配置に対して増加し、これにより第1又は第2のループ反応器の運転条件における起こりうる圧力変動を減衰させる能力が向上して、その結果、移送されたポリマーの流量の変動が大きく減少し、移送ラインの閉塞の危険性が最小になる。
【0020】
本発明の重合方法によって与えられる更なる重要な有利性は、第2の反応器から得られるポリマースラリーの連続的な再循環、及び第1の反応器から得られるポリマースラリーとのその連続的な混合に関係する。本発明の移送ラインによって第1の反応器から第2の反応器へポリマースラリーを移送することは、第2のループ反応器から得られるポリマースラリーの相当量を回収することも伴い、これにより重合プロセスによって得られる最終ポリマーの向上した均一性を達成することが可能になる。実際、2つのループ反応器を異なるモノマー濃度で運転した場合には、移送ライン内で行われる異なるポリマーフラクションの連続的な混合によって、第2のループ反応器から排出される最終生成物の物理特性の観点での均一性が向上することを理解することは容易である。
【0021】
本発明のオレフィン重合はスラリー条件下で行って、ポリマー粒子を液体重合媒体中に懸濁する。重合媒体として液体モノマーを用いてスラリー重合を行うこと(バルク重合)により、高いモノマー濃度を与えることによって重合反応の速度を最大にし、精製して再循環しなければならない溶媒又は希釈剤の使用を排除することによってプロセスを簡単にすることが可能になる。液体モノマー中でのスラリー重合のためのループ反応器には、通常は、反応器の体積に対して高い比の冷却領域を与えるジャケット付き壁部を備える。
【0022】
本発明の重合方法において用いる重合触媒は、元素周期律表の第IV、V、又はVI族に属する遷移金属の化合物、並びにアルミニウムアルキル化合物及び/又はアルモキサン化合物から得られるか、或いは酸化クロムをベースとする触媒である。
【0023】
好ましくは他のα−オレフィンとのプロピレンの重合のために好ましい触媒は、活性MgCl上に担持されている固体成分を含む高収率で高立体特異性のチーグラー・ナッタ触媒である。
【0024】
製造されるポリオレフィンの分子量を調節するための連鎖移動剤として、水素が好ましく用いられる。本発明方法によって重合されるモノマーは、式CH=CHR(式中、Rは、水素、又は1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基である)のα−オレフィンである。好ましくは、かかるα−オレフィンはプロピレンであり、この場合には、プロピレンの濃度は、ループ反応器内に存在する液体の全量を基準として60〜100重量%、好ましくは75〜95重量%の範囲である。液体の残りの部分は、存在する場合には不活性炭化水素、及び共重合の場合には1種類以上のα−オレフィンコモノマーを含んでいてよい。好ましいコモノマーはエチレンである。
【0025】
ループ反応器内の重合温度は、60℃〜95℃、好ましくは65〜85℃の範囲であり、一方、圧力は20〜50bar、好ましくは25〜40barの範囲である。ループ反応器内でのスラリーの滞留時間は、10分間〜90分間、好ましくは20分間〜60分間の範囲である。
【0026】
以下の説明において、本発明の好ましい非限定的な態様を表す簡略図である図1も用いて本発明を説明する。
図1は、一連の第1のループ反応器10及び第2のループ反応器20内で行うオレフィンのスラリー重合の概略図である。触媒成分、共触媒、分子量調整剤としての水素、及びモノマーを、ライン12を通してループ反応器中に導入する。活性MgCl上に担持されている固体成分を含むチーグラー・ナッタ触媒を用いる場合には、固体成分はそのままか又は好ましくは予備重合形態で供給することができる。
【0027】
所望の組成及び物理特性を有する最終ポリマー又はコポリマーが製造されるように、第2のループ反応器20内でのモノマー及び/又は水素の濃度を第1の反応器10内でのものと異なるようにすることができる。
【0028】
第1の反応器10のポリマースラリーは、モーター16によって駆動される軸流ポンプ14を用いてループ反応器10の内部で連続的に再循環する。第1のループ反応器10から第2のループ反応器20へのポリマースラリーの移送は、本発明の運転条件によって行う。即ち、ポリマースラリーのフラクションを、排出ライン18を通してループ反応器10から連続的に排出して、2つのループ反応器を接続する移送ラインに導入する。
【0029】
本発明の工程(i)によれば、ポリマースラリーのフラクションS1を第2のループ反応器20から排出して移送ライン30に導入する。かかるポリマースラリーのフラクションS1は、好ましくはループ反応器20のポンプ手段の下流に位置する区域から排出する。図1に示すように、フラクションS1は、軸流ポンプ24の下流に位置するAと示されている点において排出し、これによりループ反応器20の内部でのスラリーの連続的な循環を確保する。移送ライン30によって、ポリマースラリーS1を第1のループ反応器10に近接する区域に移送し、ここで移送ライン30は屈曲してループ反応器10の下部を周回し、次に最終部分30aを通してループ反応器20に戻る。
【0030】
排出ライン18は、ループ反応器10の底部のBと示されている区域に配置され、かかる排出ライン18は点Cにおいて移送ライン30中に合流する。点Cからループ反応器20中への入口点Dへの移送ラインの最終部分を30aと示す。最終部分30aにおいては、ポリマースラリーのフラクションS1及びループ反応器10から排出されるポリマースラリーを混合して、第2のループ反応器20へ移送する。
【0031】
ポリマースラリーS2は第2のループ反応器20に再循環して戻す。ループ反応器20中への入口点Dは軸流循環ポンプ24の上流に配置されている。その結果、第2のループ反応器20のポンプ手段24によって、移送ライン30に沿ったポリマースラリーの流れを保証する圧力ヘッド、及びループ反応器20内でのスラリーの連続的な循環を確保する圧力ヘッドが与えられる。特に、ポンプ手段24によって与えられる圧力ヘッドによって、移送ライン30の出発点Aと終点Dとの間の流れの循環が確保される。一般に、出発点Aと終点Dとの間の圧力勾配は、1.0barより高く、好ましくは1〜2barの範囲である。
【0032】
排出ライン28を通してループ反応器20から排出される得られたポリオレフィンスラリーは、液相から固体ポリマー粒子を分離するためのフラッシュタンク(図示せず)に供給することができる。
【0033】
図1の記載に関連して、本発明の他の対象は、2つの直列に接続されているループ反応器10、20、及び第1のループ反応器10から第2のループ反応器20へポリマーを移送するための移送ライン30を含み、
移送ライン30は第2のループ反応器20のポンプ手段24の下流の点Aにおいて第2のループ反応器20から始まり、ポンプ手段24の上流の点Dにおいて第2のループ反応器20に戻り;
第1のループ反応器10から導かれる排出ライン18は移送ライン30中に合流する;
ことを特徴とする、オレフィンの連続重合のための装置である。
【0034】
当業者に公知のように、重合ループ反応器10、20は、ループ構造を形成するように、頂部及び底部の屈曲部によって互いに結合している2つ以上の鉛直レッグによって形成することもできる。好ましい態様によれば、重合ループ反応器10、20は、4〜8個の鉛直レッグ(図1においては図示せず)を含む。
【0035】
ループ反応器10、20の鉛直レッグの底部には、緊急時又はメンテナンス時の場合にループ反応器を空にするためのオンオフ緊急バルブ(図1においては図示せず)を与える。他の態様によれば、かかるオンオフ緊急バルブは、ループ反応器10、20の底部の屈曲部上に配置することができる。
【0036】
上記に説明したように、本発明の重合装置においては、移送ライン30は、第1のループ反応器10に近接する区域に突き出し、かかるループ反応器10の下部を周回するように配置する。移送ライン30は、第2のループ反応器から点Cへ伸びる第1の部分ACを含み、ここで移送ライン30は排出ライン18中に合流し、最終部分CDは点Cから第2のループ反応器20上の点Dへ伸びる。最終部分CDは、第1のループ反応器10から排出されるスラリーも受容しなければならないので、かかる最終部分CDの直径は移送ラインの部分ACの直径よりも大きい。
【0037】
以下の実施例により、本発明の範囲を限定することなく本発明を更に説明する。
【実施例】
【0038】
実施例1:
図1に示すように本発明の移送ラインによって互いに相互接続されている一連の2つのループ反応器内での液相重合によってポリプロピレンホモポリマーを製造した。重合希釈剤の不存在下で液体モノマーを重合して(バルク重合)、液体モノマー中のポリプロピレンのスラリーを形成した。
【0039】
重合触媒として、塩化マグネシウム上に担持されているチタンベースの固体触媒成分、共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)、及び外部ドナーとしてアルキル−アルコキシシランを含むチーグラー・ナッタ触媒を用いた。
【0040】
上記の触媒成分を、TEAL/固体成分の重量比が5であり、TEAL/外部ドナーの重量比が3.5となるような量で予備接触容器に供給した。上記の触媒成分を15℃の温度において10分間予備接触させた。
【0041】
第1のループ反応器の重合条件:
温度:73℃;
圧力(循環ポンプの上流):41bar;
スラリー中のポリマー濃度:50重量%(残りはプロピレンであった)。
【0042】
第2のループ反応器の重合条件:
温度:73℃;
圧力(循環ポンプの上流):40.5bar;
スラリー中のポリマー濃度:50重量%(残りはプロピレンであった)。
【0043】
移送ラインに沿った運転条件:
ポンプ手段24によって、第2のループ反応器20の内部でのポリマースラリーの連続的な循環のための圧力ヘッド、及び移送ライン30に沿ったポリマースラリーの流れを保証するのに必要な圧力ヘッドを与えた。圧力は、ポンプ24の下流の点(A)では約42barであり、一方、ポンプ24の上流の点(D)では約40.5barであった。第1のループ反応器10からの排出導管18が移送ライン30と結合している点(C)での圧力は約41barであり、かかる圧力プロファイルによって、P(A)>P(C)>P(D)となり、移送ライン内でのポリマースラリーの安定な循環が確保された。
【0044】
4500t/時のポリマースラリーを第1のループ反応器10の内部で連続的に循環させ、同時に45t/時のスラリーを排出ライン18を通してこの反応器から排出した。同様に、4500t/時のポリプロピレンスラリーを第2のループ反応器20の内部で連続的に循環させ、70t/時のスラリーを排出ライン28を通して第2のループ反応器から連続的に排出した。スラリー中のポリマー濃度は50重量%であったので、重合プラントの生産量Pは35t/時のポリプロピレンであった。
【0045】
120t/時のスラリーS1をループ反応器20から導かれる移送ライン30に導入して、移送ラインの最終部分30aに沿って165t/時のポリプロピレンスラリーS2を流した。スラリーS2と重合プラントの生産量Pとの間の比Rは約4.7であった。
【0046】
第2のループ反応器から排出されるポリプロピレン粒子のメルトインデックスMIL(ASTM−D1238、条件230℃/2.16kg)は約6g/10分であった。
実施例2:
本発明の移送ラインによって互いに相互接続されている一連の2つのループ反応器内での液相重合によってプロピレン/エチレンランダムコポリマーを製造した。実施例1と同じチーグラー・ナッタ触媒を用い、液体モノマー中のプロピレン/エチレンコポリマーのスラリーを形成して、2つのループ反応器の内部で循環させた。
【0047】
第1のループ反応器の重合条件:
温度:75℃;
圧力(循環ポンプの上流):41bar;
エチレン濃度:2.2重量%;
プロピレン濃度:97.8重量%;
スラリー中のポリマー濃度:54重量%。
【0048】
第2のループ反応器の重合条件:
温度:75℃;
圧力(循環ポンプの上流):40.5bar;
エチレン濃度:2.2重量%;
プロピレン濃度:97.8重量%;
スラリー中のポリマー濃度:54重量%。
【0049】
移送ラインに沿った運転条件:
圧力は、ポンプ24の下流の点(A)では約42barであり、一方、ポンプ24の上流の点(D)では約40.5barであった。第1のループ反応器10からの排出導管18が移送ライン30と結合している点(C)での圧力は約41barであり、かかる圧力プロファイルによって、P(A)>P(C)>P(D)となり、移送ライン内でのポリマースラリーの安定な循環が確保された。
【0050】
5500t/時のコポリマースラリーを第1のループ反応器10の内部で連続的に循環させ、同時に65t/時のスラリーを排出ライン18を通してこの反応器から排出した。同様に、5500t/時のコポリマースラリーを第2のループ反応器20の内部で連続的に循環させ、100t/時のスラリーを排出ライン28を通して第2のループ反応器から連続的に排出した。スラリー中のコポリマー濃度は54重量%であったので、重合プラントの生産量Pは54t/時のプロピレンランダムコポリマーであった。
【0051】
150t/時のスラリーS1をループ反応器20から導かれる移送ライン30に導入して、移送ラインの最終部分30aに沿って215t/時のポリプロピレンスラリーS2を流した。スラリーS2と重合プラントの生産量Pとの間の比Rは約4.0であった。
【0052】
重合プラントから排出されるプロピレンランダムコポリマー粒子のメルトインデックスMILは約9g/10分であった。
実施例3(比較例):
第1及び第2のループ反応器において実施例2と同等の重合条件を設定して、プロピレン/エチレンランダムコポリマーを製造した。
【0053】
移送ラインに沿った運転条件:
圧力は、ポンプ24の下流の点(A)では約42barであり、一方、ポンプ24の上流の点(D)では約40.5barであった。
【0054】
5500t/時のコポリマースラリーを第1のループ反応器10の内部で連続的に循環させ、同時に65t/時のスラリーを排出ライン18を通してこの反応器から排出した。同様に、5500t/時のコポリマースラリーを第2のループ反応器20の内部で連続的に循環させ、100t/時のスラリーを排出ライン28を通して第2のループ反応器から連続的に排出した。スラリー中のコポリマー濃度は54重量%であったので、重合プラントの生産量Pは54t/時のプロピレンランダムコポリマーであった。
【0055】
450t/時のスラリーS1をループ反応器20から導かれる移送ライン30に導入して、移送ラインの最終部分30aに沿って515t/時のポリプロピレンスラリーS2を流した。スラリーS2と重合プラントの生産量Pとの間の比Rは約9.5であった。
【0056】
実施例2と対比すると、第1のループ反応器10からの排出導管18が移送ライン30と結合している点(C)に対応して圧力値の変動が観察された。点(C)での圧力は41.0barの最小値から41.5barの最大値まで変動し、その結果、ループ反応器10からライン18を通って排出されるスラリーの流量は一定ではなく、変動していた(上記に示す65t/時の値は72時間での平均値であった)。このループ反応器10からのポリマーの不規則な排出によって、スラリー中のポリマー濃度の均一性が損なわれ、排出ライン18の内部でポリマーが凝集する高い危険性を有していた。
【0057】
この実施例は、本発明の移送ラインを8より高い重量比Rで運転した場合には、重合プラントの運転における信頼性が損なわれることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送ラインによって相互接続されている一連の少なくとも2つのループ反応器内で1種類以上のα−オレフィンをスラリー重合する方法であって、第1のループ反応器から第2のループ反応器へのポリマーの移送が、
(i)移送ラインによって第2のループ反応器へのポリマースラリーの再循環を行い、それによって第2のループ反応器から排出されるポリマースラリーのフラクションS1をそれに連続的に再循環して戻し;
(ii)第1のループ反応器内で製造されるポリマースラリーのフラクションを、移送ラインに接続されている排出ライン中に排出する;
工程を含み、
第2のループ反応器へ再循環して戻される全ポリマースラリーS2と重合プラントの生産量との間の重量比Rが2〜8の範囲である、上記方法。
【請求項2】
工程(i)及び(ii)から得られるそれぞれの量のポリマースラリーの混合を移送ライン内で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重量比Rが3〜6の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリマースラリーのフラクションS1を第2のループ反応器のポンプ手段の下流で排出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2のループ反応器のポンプ手段によって、ポリマースラリーを移送ラインに沿って流すための圧力ヘッドを与える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマースラリーS1が第2のループ反応器内で循環するポリマースラリーの1重量%〜10重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−537021(P2010−537021A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522291(P2010−522291)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060411
【国際公開番号】WO2009/027197
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】