説明

複数の交通流の提供方法及び装置

【課題】 運転者に、目的方向に適合した適切な進路を提供し、運転者が渋滞に巻き込まれる可能性を減らす。
【解決手段】 一つの対象道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定する。複数の交通流が存在すると判定された場合、対象道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の道路に関連した複数の交通情報を提供する方法、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上の交通渋滞等を表示する道路交通情報通信システムは、カーナビゲーション装置等に道路交通情報を提供する。現在、このシステムによって提供される情報においては、1つのリンク(交差点間等の道路区間)に1つの交通情報(渋滞情報、混雑情報等)のみが表示される(図10参照)。
【0003】
ところで、実際の交通流では、右左折の方向別や、駐車場待ち行列等、一つの道路区間に複数の交通流が存在(混在)する場合がある。例えば、閑散時や、全レーン渋滞時は、「複数の交通流」はあまり目立たず、「主流」に沿った「代表交通状態」のみによって、対象道路の交通事情をほぼ把握することができる。しかしながら、道路内における特定方向のみにおいて交通流が変動した場合、複数の交通流が現れる。すなわち、一つの道路内に複数の交通状態が存在することになるのである。また、特に都心部の複数車線道路等では、駐停車車両が点在する左側車線をすり抜けるという特殊な交通流が現れる場合もある。
【0004】
また、右左折待ち渋滞や、POI(Point of Interest)待ち行列渋滞など、「代表交通流と比べて特定の方向が混む」という状態が一般的だが、逆の場合もある。例えば、交通渋滞が発生しやすい道路においては、最も交通量の多い本線は混んでいるが、高速の連絡路にそのまま繋がる左側車線はすいている、という状態がよく発生する。このような情報は非常に有効であり、これによってユーザーは、自ら能動的に経路選択を行うことが可能となる。
【0005】
上述のような情報がないことにより生じ得る問題を、図11を参照して説明する。
【0006】
図11のデジタル地図において、ある運転者は交差点Cを左折するため、通常は渋滞の発生しない左側の車線Lを日常使用していた。ある日、車線Lに渋滞が発生していたが、いつもとは異なり、その日は、偶然車線Lに沿って交差点Cの左折方向に向かう渋滞が発生していると運転者は信じた。そこで当該運転者は、車線Aを渋滞を我慢しながら交差点Cに向かって走行した。
【0007】
しかしながら、この渋滞は、交差点Cの左折方向に向かう渋滞ではなく、新しく建設されたアミューズメント施設Sの駐車場待ちにより発生した渋滞であった。運転者は、地点P辺りまで到着した時点でようやくこの事実に気づいたが、とき既に遅く、渋滞の中を走行したことにより、時間を25分ほどロスしていた。
【0008】
もし、運転者が駐車場待ち渋滞を前もって知ることができたなら、運転者は右側車線Rを走行し、速やかに交差点Cまでたどり着いたと考えられる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上述べた事実を整理すると、次のような事象の発生が把握される。
【0010】
(1)通常、ほとんどの交通情報は、現在の交通情報通信システムと同じく、道路区間単位の「代表流」で表現できる。閑散時は、通常全レーン(車線)閑散となり、全車線が単一の交通情報によって表現される。この代表流は、通常は直進等、「交通の主流」によって表現される。
【0011】
(2)そして、右左折待ち、施設待ち、IC(インターチェンジ)入出路待ちの行列、渋滞等が発生した場合、「代表流から外れた支流(副流)」が発生し、1本の道路の中に「複数の流れ」が発生する。
【0012】
(3)この支流には、施設やICのゲート、流出先リンク等の始端(その交通流の開始位置)が存在する。すなわち、この支流は、主流が向かう方向以外の、交通流の向かう仮の目的地を有する。更に言い換えると、当該支流は、主流とは別の流出方向をもつ。
【0013】
上述の考察に基づく本発明の交通情報の生成方法は、
一つの道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定し、複数の交通流が存在すると判定された場合、一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する。
【0014】
更に上述の交通情報の生成方法では、複数の交通流が、異なる流出部を有しているか否かを判定し、異なる流出部を有していると判定された場合、各流出部に対応した仮目的地の情報を各サブ交通情報に付与することもできる。
【0015】
更に上述の交通情報の生成方法では、複数の交通流の流速差を検出し、当該流速差が所定値以上の場合は、複数のサブ交通情報を生成し、当該流速差が所定値より小さい場合は、一つの道路及び複数の交通流をまとめて定義される一つの交通流に関連付けられた単一の交通情報を生成することもできる。
【0016】
更に上述の交通情報の生成方法では、複数の交通流の分岐位置を判定し、当該分岐位置に対応した分岐位置情報を前記交通情報に付与することもできる。
【0017】
更に上述の交通情報の生成方法では、複数の交通流の合流位置が存在するか否かを判定し、合流位置が存在すると判定された場合、当該合流位置に対応した合流位置情報を前記交通情報に付与することもできる。
【0018】
更に上述の交通情報の生成方法では、複数の交通流のうち、主流に対応した交通情報を主流交通情報と判定し、主流以外の副流に対応した交通情報を副流交通情報と判定することもできる。ここで、複数の交通流のうち、最も交通量の多い交通流を前記主流と判定することもできる。
【0019】
更に上述の交通情報の生成方法では、主流及び副流の相対的な位置関係を判定し、当該位置関係に対応するように、主流交通情報と副流交通情報を合成することもできる。
【0020】
更に本発明の交通情報の表示方法は、一つの道路において、当該道路が複数の道路に分岐する地理分岐位置を判定し、当該道路上の所定の位置において、一つの交通流が複数の交通流に分岐する交通流分岐位置を判定し、地理分岐位置と交通流分岐位置が一致していない場合、前記交通流分岐位置を表示する。地理分岐位置の直下流に存在する交通流分岐位置を表示することもできる。
【0021】
更に本発明の情報交通情報生成装置は、複数のプローブカーの走行軌跡情報を受信し、復元するプローブ情報集計部と、地図データを含むデジタル地図データベースと、走行軌跡情報と地図データに基づき交通情報を生成する交通情報生成部と、を備え、交通情報生成部は、走行軌跡情報に含まれる交通流が一つの道路における主流と副流を含むか否か判定し、当該主流と副流が存在すると判定された場合、主流交通情報と副流交通情報を含む交通情報を生成する。
【0022】
更に本発明のプログラムは、コンピュータに交通情報の生成を実行させるためのプログラムであって、当該プログラムは、一つの道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定する手順と、複数の交通流が存在すると判定された場合、一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する手順と、をコンピュータに実行ものである
【0023】
更に本発明の交通情報受信装置は、外部から受信した情報に含まれる交通流が、一つの道路における主流と副流を含むか否か判定し、当該主流と副流が存在すると判定された場合、主流交通情報と副流交通情報を含む交通情報を表示するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の交通情報の生成方法によれば、運転者に、目的方向に適合した適切な進路を提供することができ、また、運転者が渋滞に巻き込まれる可能性を減らすことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、A〜Eの5つの道路が集結した変形五差路を示し、デジタル地図上ではノード1とノード2の二つのノードが交差点に付与されているが、ノード間距離は25m程度であり、実際は1つの交差点のみが存在する。そして、Eの信号が青のとき、道路A〜Eの任意の方向に進むことができる。これはクランク形状交差点と同様である。
【0026】
これまでは、図1に示されているように、各リンク(各道路)に対する情報は代表化された交通流のみであった。すなわち、デジタル地図上における各道路に対し、単一の交通情報のみが表示されていた。
【0027】
そして、図2に示すように、本発明では、主流の交通情報に加えて、副流とも言うべき交通流を重畳する。主流とは着目した道路区間において、最も通過車両台数の多い交通流のことをいう。単位時間の通過車両台数を各流れに応じて測定することにより、どの流れが主流なのかを決定することができる。
【0028】
副流は、主流とは別の方向(仮目的地、流出方向)をもつ交通流である。すなわち、主流以外の交通流は総て副流となり、単一の副流のみが存在する場合もあれば、複数の副流が存在する場合もある。尚、主流と副流の区別は、特開2004−227316号公報開示のように車線ごとに区別されるのではなく、あくまで各流れの向かう方向、目的地によって区別される。もちろん主流と副流の区別が、車線の区別に合致することもある。
【0029】
副流の表現により、単なる右左折コストで表現できない流出方向への表現も可能となる。本表現では以下の事象が判定され、当該事象に応じた情報が、道路を走行する車両に与えられる。ただし道路Bについては、表示を省略している。
【0030】
(1)道路A:主流は渋滞しているが、左折方向(道路Cへの方向)は比較的流れている。
(2)道路C:道路Bに入る方向(左折方向)は渋滞しているが、道路Eに入る方向(斜め左方向)は多少流れが遅いいわゆる混雑状態である。
(3)道路D:主流は空いているが、右折方向において渋滞が発生し(第1の副流)、さらに駐車場待ち渋滞が発生している(第2の副流)。
(4)道路E:主流は空いているが、右折方向において渋滞が発生している。
【0031】
上述の実施形態においては、まず、A〜Eの各道路各々において、副流とも言うべき交通流が存在するか否かが判定されている。言い換えると、各道路に、複数の交通流が存在するか否かが判定されている。そして、一つの道路に複数の交通流が存在すると判定された場合、当該一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報が生成される。更に各交通流の車両台数に応じて、サブ交通情報は主流に対応した主流交通情報なのか、主流以外の副流に対応した副流交通情報なのかが、判定される。
【0032】
上述において、「交通情報」は、上記(1)〜(4)のいずれか一つに対応し、対象道路に関連付けられた情報である。そして、「サブ交通情報」とは、(1)〜(4)の各々における各流れ(交通流)に対応した情報であって、「交通情報」の下位の情報である。 従って、サブ交通情報は、対象道路及びその交通流に関連付けられた情報である。尚、「交通情報」は、通常は反対車線の情報を含まない。
【0033】
上述の例においては、各道路を走行する運転者は、選択肢として複数の交通情報(サブ交通情報)を受領することができるため、適切な進路を決定することが可能となる。
【0034】
また、交通流の仮目的地、流出部に対応した情報が、各サブ交通情報に付与されて得る。本実施形態では各交通流表示の先端の矢印がこのような情報に対応する。目的地が特定施設そのものである場合は、当該施設そのものを(仮)目的地として各サブ交通情報に付与され、表示される(例:道路Dの駐車場表示)。
【0035】
また、各交通流の流速差を検出し、流速差が所定値以上の場合にのみ、各交通流に応じたサブ交通情報を生成するような構成を採用することもできる。流速差が所定値より小さい場合は、対象道路及び複数の交通流をまとめて定義する一つの交通流(代表交通流)に関連付けられた単一の交通情報を生成する。この場合主流を代表交通流にすることができる。
【0036】
また、対象道路における主流及び副流の相対的な位置関係を判定し、この位置関係に対応するように、主流交通情報と副流交通情報を合成して表示することができる。このような表示方法は、運転者が直感的に各交通流の性質を把握するのに有益なものである。例えば本実施形態の道路Eでは、主流(直進方向)の情報が左側、副流(右折方向)の情報は右側に表示されている。
【0037】
(第2の実施形態)
図3は、図2のような「単一道路中の複数流」の表現に加えて、複数流の分岐発生状況を示したものである。
【0038】
例えば、高速道路におけるICの分岐部、ICの降り口、複数車線道路の右左折時、大規模施設に入る場合等に、「左(ないしは右)にできた待ち行列に並んでよいものか否か」迷うことがしばしばある。例えば、200mほど先にある大きな交差点を左折する、又は高速道路に入るために、とりあえず待ち行列に並んでみたものの、実はその待ち行列は、その手前の施設の待ち行列だった、という例がそうである。図11の例もこの例に近い。
【0039】
図3のような表現であれば、「その待ち行列に入るべきか否か」も事前に判別することができる。表示をより明確にするため、目的地の設定、音声でガイダンスの使用等を併用することも可能である。
【0040】
すなわち、地図データでの分岐位置(またはPOIの入口位置等)と、交通流の分岐位置が一致しない場合、1つの道路に対し複数の交通流を表示することが考えられる。もし道路状況が空いていれば、地図の分岐位置と交通流の分岐位置は、ほぼ一致することとなる。図3の例では以下のような事象の発生を地図表示から把握することができる。
【0041】
(1)第一番目の交通流の分岐ポイントT1(交通流分岐位置)において、二つの交通流が分岐し、大渋滞が生じている道路R1方面への流れと、比較的流れている他の道路R2、R3への流れが生じている。道路R1と道路R2、R3の実際の地図上の分岐地点は、第1番目の分岐ポイントM1(地理分岐位置)に存在し、交通流の分岐ポイントT1と地図上の第1番目の分岐ポイントM1が一致していない。
【0042】
(2)更に第二番目の交通流の分岐ポイントT2において、二つの交通流が分岐し、道路R2方面への流れと、道路R2への流れが生じている。道路R2と道路R3の実際の地図上の分岐地点は、第2番目の分岐ポイントM2に存在し、交通流の分岐ポイントT2と地図上の第2番目の分岐ポイントM2が一致していない。
【0043】
上述の(1)において、運転者は、分岐ポイントT1の手前を運転している際においても、自らの目的地に基づき道路R1へ向かう大渋滞に並ぶべきか、この大渋滞を回避するべきなのか、判断することができる。
【0044】
分岐ポイントM1、M2と異なり、分岐ポイントT1、T2はいわば動的な情報であり、本発明はこのような刻々変化する動的な交通情報を表示するものである。動的な分岐位置であるポイントT1、T2は、交通流分岐位置情報であり、本実施形態では、第1の実施形態の交通情報に加え、このような交通流分岐位置情報が交通情報に加えられる。
【0045】
また、交通流分岐位置情報であるポイントT1、T2は、地理分岐位置情報であるポイントM1、M2の直下流に存在する。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、図4の路線は、2〜3車線を有するものの、左側に駐停車車両が頻繁に存在するものである。この路線では、実質的に交通流が流れている車線は、全車線数−1(1〜2車線)である。しかしながら、これらの車線では渋滞が生じている。タクシーや、あまり運転マナーが良くない運転者は、駐停車車両をよけながら、左側をすり抜け走行することがよくある。このような運転者は、最後の交差点付近で、全車線が混むので最終的にはその流れに合流することとなる。
【0047】
このような場合、「同一路線上に同一方向に向かっているものの、複数の交通流が存在する」という状況になる。この場合とは逆のケース(中央側の交通流がスムーズに流れる)としては、観光スポット等における物見渋滞等がある。この表示により、運転者は主流の車線を進むべきか、左側の車線を進むべきか判断する材料が与えられることとなる。
【0048】
上述の状況を表現するため、本実施形態では、第1、第2の実施形態の交通情報に加え、複数の交通流の合流位置が存在するか否かが判定され、合流位置が存在すると判定された場合、当該合流位置に対応した合流位置情報が交通情報に付与されている。
【0049】
次に、上述した交通情報の生成方法を実施する具体的なシステム構成、処理方法、送受されるデータの構造を説明する。尚、以下の説明では、特別な断り、説明(「主流交通情報」、「副流交通情報」等)のない限り、「交通情報」と「サブ交通情報」を区別せず、「交通情報」の用語を用いて説明する。「交通情報」の用語が一般的だからである。従って、説明中、一つの道路の交通流総てを意味するものが、上述の「交通情報」であり、一方、一つの道路に発生した複数の交通流の各々を意味するもの(例えば「主流」と「副流」)が、上述の「サブ交通情報」である。
【0050】
図5は、本発明を実施する交通情報提供システム400の概念図を示す。交通情報提供システム400は、プローブ情報を反映した走行軌跡を伝えるプローブカー車載機100と、プローブ情報収集センターとして機能する交通情報生成装置200と、カーナビゲーション装置を構成する交通情報受信装置300から構成される。「交通情報提供システム」は、「交通情報通信システム」と呼ばれることもある。また、「VICS」システムの名称で呼ばれることもある。
【0051】
プローブカー車載機100は、自車位置判定部101と、走行軌跡計測情報蓄積部103と、センサ情報収集部105と、走行軌跡送信部107とを備える。
【0052】
自車位置判定部101は、速度パルス1、GPSアンテナ3、ジャイロ5のデータから車両位置を判定し、センサ情報収集部105は、パーキングブレーキ7、車載センサA9、車載センサZ11のデータを基に、車両の走行状態を判定する。自車位置判定部101、センサ情報収集部105からの位置データ、走行状態データは、走行軌跡計測情報蓄積部103に集められ、車両の走行軌跡情報が生成される。走行軌跡送信部107は、符号化等、送信のための所定の処理を走行軌跡情報に施した後、交通情報生成装置200に送信する。
【0053】
交通情報生成装置200は、プローブ情報集計部201と、交通情報生成部203と、デジタル地図データベース205と、交通情報送信部207とを備え、送信される交通情報を生成する、いわゆるエンコーダとして機能する。
【0054】
プローブ情報集計部201は、プローブカー車載機100の走行軌跡送信部107からの走行軌跡情報を受信し、復元するもので、混雑状況判定部201aと走行道路特定部201bとを有し、デジタル地図データベース205を参照して走行軌跡情報を復元するものである。また、交通情報生成部203は、突発イベント入力装置13、路上センサA15・・・路上センサZ17からのデータと走行軌跡情報を基に、デジタル地図データベースを参照して交通情報を生成する。交通情報送信部207は、生成された交通情報を、符号化等所定の処理を施した上で、交通情報受信装置300に送信する。交通情報生成装置200は、いわゆるエンコーダとしての機能を果たす。
【0055】
本発明の交通情報生成装置200においては、交通情報生成部203は、主流交通情報生成部203aと副流交通情報生成部203bとを有する。主流交通情報生成部203aは、上述した主流に関する交通情報を生成するものであり、一方、副流交通情報生成部203bは、上述した副流に関する交通情報を生成するものである。従って、交通情報生成部203により生成された交通情報は、主流交通情報と副流交通情報とを含む。
【0056】
次に、交通情報受信装置300は、交通情報受信部301と、交通情報編集部303と、デジタル地図データベース305と、地図表示制御部307とを備える。
【0057】
交通情報受信部301は、交通情報生成装置200の交通情報送信部207から送信された交通情報を受信し、復元する。そして、交通情報編集部303はこの交通情報を基に、デジタル地図データベース305を参考にして地図表示データを生成する。地図表示制御部307は、生成された地図表示データをディスプレイ19上に表示する。交通情報受信装置300は、いわゆるデコーダとしての機能を果たす。
【0058】
本発明の交通情報受信装置300においては、交通情報編集部303は、主流交通情報判定部303aと副流交通情報判定部303bとを有する。主流交通情報判定部303aは、交通情報送信部207から送信された交通情報に含まれる主流交通情報を判定するものであり、副流交通情報判定部303bは、主流交通情報を判定するものである。従って、ディスプレイ19上には、主流と副流の双方が表示される。
【0059】
図6は、交通情報生成装置200側における処理フローの例を示す。交通情報生成装置200は、各車両のプローブカー車載機100から、車両のプローブ情報の受信を開始し、この走行軌跡から対象道路を特定する(ステップS101、S102、ステップS103)。そして、対象道路の各箇所の混雑状況を判定する(ステップS104)。
【0060】
そして、予め規定された全車両N台分の処理が未だなされていない場合(ステップS105;No)、引き続きプローブカーからのプローブ情報を受信する(ステップS106)。全N台分の車両の処理がなされたと判定された場合(ステップS105;Yes)、各プローブ情報の特定の対象道路に着目し、進行方向(仮目的地)別に混雑状況を集計し、交通情報の生成を開始する(ステップS107,S108,S109)。その後、進行方向によって混雑状況に差異があるか否か(サブ交通情報の差異)が判定される(ステップS110)。この判定は、上述したように、一般的には主流と副流の流速差が所定値以上であるか否かによって行われる。
【0061】
混雑状況に差異があると判定された場合(ステップS110;Yes)、最も交通流が流れる方向(交差点では通常直進)を主流とし、差異がある進行方向の交通情報を副流とし、分岐箇所(交通流分岐位置)が抽出される(ステップS111)。そして全道路区間について、ステップS109〜ステップS111の処理がなされたか否か判定される。処理が終了していないと判定された場合(ステップS112;No)、更に次の区間の処理がなされる(ステップS113)。終了している場合は、全道路区間の交通情報が集計され(ステップS115)、当該対象道路の交通情報が生成される。
【0062】
一方、混雑状況に差異がないと判定された場合(ステップS110;No)、差がない進行方向の交通情報は主流に統合され(ステップS114)、ステップS112以降の処理が行われる。
【0063】
図7は、交通情報受信装置300側における処理フローの例を示す。交通情報受信装置300は、交通情報生成装置200から、図6の処理フローに従って生成された交通情報を受信し(ステップS201)、この交通情報のうちの主流に着目する(ステップS202、S203)。そして、デジタル地図データベース305上における、当該主流の位置特定を行う(ステップS204)。
【0064】
次に、当該主流に対応する副流に着目し(ステップS205、S206)、デジタル地図データベース305上における、当該副流の位置特定を行う(ステップS207)。そして、主流の交通情報を表示し(ステップS208)、主流の交通情報の進行方向と、副流の交通情報の進行情報を比較し(ステップS209)、副流が左折方向であれば主流の左側に副流を表示し、右方向であれば右側に副流を表示する(ステップS210)。そして、副流の進行方向を表示する(ステップS211)。
【0065】
そして、現在着目している主流の全副流について、ステップS207〜ステップS211の処理がなされたか否かが判定される(ステップS212)。全副流についての処理が終了していないと判定された場合(ステップS212;No)、引き続き次の副流の処理がなされる(ステップS213)。全副流についての処理が終了していると判定された場合(ステップS212;Yes)、交通情報中の全主流の処理がなされたか否かが判定される(ステップS214)。全主流の処理がなされていないと判定された場合、引き続き次の副流の処理がなされる(ステップS215)。全主流の処理がなされたと判定された場合、処理の終了となり、ディスプレイ19に交通情報が表示される。
【0066】
図8は、交通情報を含むデータ構造の例を示す。図8(a)、図8(b)は双方とも主流・副流の位置参照情報及び交通情報を含むものである。図8(b)の構造では、図8(a)の構造に加え、主流からの分岐位置に関する情報と副流の進行方向に関する情報が追加されている(着色された部分)。また、図9も図8と同様、データ構造の例を示すが、位置参照情報には、代表的な規格であるISO−SWG3.3 Profile2で用いられるものが用いられている。ここでの位置参照情報は、各道路のノードの総数、各ノードの緯度・経度情報、各ノードの属性を含む。
【0067】
また、交通情報受信装置300は、各車両に搭載されるカーナビゲーション装置を構成し、受信した交通情報を復元する、いわゆるデコーダとして機能するが、以下の述べるような付加機能、応用展開も考えられる。
【0068】
(1)主流と副流を、各々特定して表示することができる。例えば、線の太さ、線の色、線の透過率等、異なる線を用いて、主流と副流を区別して表示することができる。
【0069】
(2)副流の表示は、地図縮尺を一定以上拡大したときのみ行うようにすることができる。地図が広範囲を表示しているときに主流と副流の双方を表示すると、線の数が多くなりすぎて表示が見にくいものとなるおそれがある。
【0070】
(3)また、自車位置が交通流の分岐部に近づいた時のみ、副流を表示することもできる。この際、広範囲の地図と、分岐部周辺の拡大地図の2画面に分けて表示することもできる。
【0071】
(4)進行方向又は現在地と目的地の位置関係によって、副流の表示・非表示を決定することもできる。例えば、自車の位置より上流に存在する副流のみを表示し、下流の副流は表示しないようにすることもできる。
【0072】
(5)分岐部の直上流で、どちらの流れに乗るべきかガイダンスの機能を付加することができる(いわゆるルート案内)。ルートを案内する場合は、分岐・合流位置を考慮して表示・音声ガイダンスを行うことができる。音声ガイダンスの例としては、「目的地の進行方向に向かって渋滞が発生していますので、左(右)によって渋滞末尾に並んでください/目的地の進行方向のみスムーズに流れていますので、左(右)に寄って渋滞から離れてください」のようなものがある。また、ルート表示の例としては、主流と副流の分岐部から、副流のほうへ進路ルートを描画することが考えられる。
【0073】
(6)目的地までの推奨ルートを算出するとき、副流の交通情報をも考慮して、ルート計算を行うことができる。
【0074】
(7)ルートおよびルート沿いの交通情報を表示する際は、分岐方向(流出方向・仮目的地)に応じた副流の交通情報を主流に優先させて表示する表示方法
【0075】
(8)上述の例では、交通情報受信装置300がカーナビゲーション装置に応用された例を示したが、交通情報受信装置300を携帯電話や、PDA等の携帯端末に応用することもできる。
【0076】
(9)交通情報受信装置300が、プローブカー車載機100からの走行軌跡情報を直接受信し、当該走行軌跡情報から、主流と副流の交通情報を抽出するように、交通情報提供システム400を構築することができる。このような抽出操作を行うような機能、プログラムを交通情報受信装置300内又は他の部分に設けることができる。このプログラムは、コンピュータに交通情報の生成を実行させるためのプログラムであって、当該プログラムは、一つの道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定する手順と、複数の交通流が存在すると判定された場合、一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する手順と、をコンピュータに実行させるものである。
【0077】
このプログラムは種々の形式でシステム内に組み込まれる。また、ハードディスクのような情報記録装置や、CD−ROMやDVD−ROM、メモリカードのような情報記録媒体にプログラムを記録してもよい。
【0078】
なお、本発明は交通情報生成装置を含むが、これは情報送信側における実施の形態の1つであり、センター側の情報送信装置や、プローブカー車載機等、すなわち情報を送信する事が出来る装置や端末であれば、どのような形態でも交通情報生成装置として採用することができる。さらに図示していないが生成した交通情報を媒体に記録して、他の装置に提供することも可能である。
【0079】
同様に、本発明は交通情報受信装置を含むが、これも情報受信側における実施の形態の1つであり、ナビゲーション装置やパーソナルコンピュータ、携帯端末等の情報を活用できる装置であればなんでもよい。もちろん受信した交通情報が表示可能な情報収集センターや、センター側の装置でも同様の効果を得ることが出来る。さらに交通情報が記録された媒体等を用いて、復元処理することにより、同様の効果を得ることは言うまでもない。
【0080】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の交通情報の生成方法は、運転者に、目的方向に適合した適切な進路を提供することができ、また、運転者が渋滞に巻き込まれる可能性を減らすことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】変形五差路における一つの道路に対し、一つの交通流情報を付与した場合のデジタル地図表示の例。
【図2】変形五差路における一つの道路に対し、複数の交通流情報を付与した場合のデジタル地図表示の例。
【図3】高速道路のインターチェンジ付近における、複数の交通流および交通流の分岐ポイントを示したデジタル地図表示の例。
【図4】左側車線に駐停車車両が存在し、すり抜け運転の交通流が発生した道路のデジタル地図表示の例。
【図5】交通情報提供システムの構成を示すブロック図。
【図6】交通情報生成装置側における処理フローの図。
【図7】交通情報受信装置側における処理フローの図。
【図8】交通情報を含むデータ構造の例。
【図9】緯度・経度情報をデータ構造の例。
【図10】従来の道路交通情報通信システムにより提供される情報によるデジタル地図表示の例。
【図11】スムーズな右側車線及び駐車場待ち渋滞の発生した左側車線を共に表示したデジタル地図表示の例。
【符号の説明】
【0083】
1 速度パルス
3 GPSアンテナ
5 ジャイロ
7 パーキングブレーキ
9 車載センサA
11 車載センサZ
13 突発イベント入力装置
15 路上センサA
17 路上センサZ
19 ディスプレイ
100 プローブカー車載機
101 自車位置判定部
103 走行軌跡計測情報蓄積部
105 センサ情報収集部
107 走行軌跡送信部
200 交通情報生成装置
201 プローブ情報集計部
201a 混雑状況判定部
201b 走行道路特定部
203 交通情報生成部
203a 主流交通情報生成部
203b 副流交通情報生成部
205 デジタル地図データベース
207 交通情報送信部
300 交通情報受信装置
301 交通情報受信部
303 交通情報編集部
303a 主流交通情報判定部
303b 副流交通情報判定部
305 デジタル地図データベース
307 地図表示制御部
400 交通情報提供システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定し、
前記複数の交通流が存在すると判定された場合、前記一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する、交通情報の生成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流が、異なる流出部を有しているか否かを判定し、
異なる流出部を有していると判定された場合、各流出部に対応した仮目的地の情報を前記各サブ交通情報に付与する、交通情報の生成方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流の流速差を検出し、
前記流速差が所定値以上の場合は、前記複数のサブ交通情報を生成し、
前記流速差が前記所定値より小さい場合は、前記一つの道路及び前記複数の交通流をまとめて定義される一つの交通流に関連付けられた単一の交通情報を生成する、交通情報の生成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流の分岐位置を判定し、
当該分岐位置に対応した分岐位置情報を前記交通情報に付与する、交通情報の生成方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流の合流位置が存在するか否かを判定し、
前記合流位置が存在すると判定された場合、当該合流位置に対応した合流位置情報を前記交通情報に付与する、交通情報の生成方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流のうち、主流に対応したサブ交通情報を主流交通情報と判定し、
前記主流以外の副流に対応したサブ交通情報を副流交通情報と判定する、交通情報の生成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記複数の交通流のうち、最も交通量の多い交通流を前記主流と判定する、交通情報の生成方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の交通情報の生成方法であって、当該生成方法は更に、
前記主流及び前記副流の相対的な位置関係を判定し、
当該位置関係に対応するように、前記主流交通情報と前記副流交通情報
を合成する、交通情報の生成方法。
【請求項9】
一つの道路において、当該道路が複数の道路に分岐する地理分岐位置を判定し、
当該道路上の所定の位置において、一つの交通流が複数の交通流に分岐する交通流分岐位置を判定し、
前記地理分岐位置と前記交通流分岐位置が一致していない場合、前記交通流分岐位置を表示する、交通情報の表示方法。
【請求項10】
請求項9記載の交通情報の表示方法であって、前記地理分岐位置の直下流に存在する交通流分岐位置を表示する、交通情報の表示方法。
【請求項11】
複数のプローブカーの走行軌跡情報を受信し、復元するプローブ情報集計部と、
地図データを含むデジタル地図データベースと、
前記走行軌跡情報と前記地図データに基づき交通情報を生成する交通情報生成部と、を備え、
当該交通情報生成部は、前記走行軌跡情報に含まれる交通流が一つの道路における主流と副流を含むか否か判定し、当該主流と副流が存在すると判定された場合、主流交通情報と副流交通情報を含む交通情報を生成する、交通情報生成装置。
【請求項12】
コンピュータに交通情報の生成を実行させるためのプログラムであって、当該プログラムは、
一つの道路において、複数の交通流が存在するか否かを判定する手順と、
前記複数の交通流が存在すると判定された場合、前記一つの道路及び各交通流に各々関連付けられた複数のサブ交通情報を含む交通情報を生成する手順と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
外部から受信した情報に含まれる交通流が、一つの道路における主流と副流を含むか否か判定し、当該主流と副流が存在すると判定された場合、主流交通情報と副流交通情報を含む交通情報を表示する、交通情報受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−127134(P2006−127134A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314168(P2004−314168)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】