説明

複数の折り畳まれた可撓性回路を有する高密度光ファイバモジュール

光ファイバモジュール用の可撓性プリント基板(FPCB)は、複数の屈曲部を有し、側面と底部を備えた構造体を形成する基板を含む。FPCBのパターンは、光電子チップからFPCBの側面を通って底部で相互接続するモジュールまで横断する。複数の折り畳みFPCB及びこれにより、光ファイバモジュールの前面で光電子及び電子チップから信号パターンを扇形に広げることができ、これによりパターン間のクロストークを減少させる。このより多くのパターン数は、単一の絶縁層を特徴とし、パターンを交差させる必要の無いFPCBによって提供され、結果として、従来の複数層のFPCBを上回る信号完全性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板を備えた光ファイバモジュールに関し、より詳細には可撓性のプリント基板を備えた光ファイバモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバモジュールにおいて可撓性のプリント基板(FPCB)を使用することが当該技術分野で公知である。FPCBは通常、ポリイミドなどの可撓性の絶縁材料の単一の層と、絶縁層の少なくとも一方の側面上にある一般に銅製の電気的パターンとから構成される。可撓性の層は、電気的パターンの絶縁体としての役目と、伝達媒体としての役目の両方を果たす。FPCBは、1つより多いこうした絶縁層と、これらの層の間及びこれらの層のいずれか1つの外表面に現れる電気的パターンとを含むことができる。埋め込まれた層と電気信号の送受を行うために、FPCBは、当該技術分野でバイアとしても知られる導電性の貫通孔を含むことができる。剛体のプリント基板を上回るFPCBの利点は、FPCBを屈曲させて種々の小型の電子製品への取り付けが可能となることである。図1は、単一の屈曲部を有するFPCBを用いた従来の光ファイバモジュールを示している。FPCB100上の電気的パターンは、光電子及び電子チップ102及び104と光ファイバモジュールの底部の電気的相互接続108との電気信号の送受に使用される。光電子チップ102は、レーザ又は検出器、或いはその両方を含み、一方、電子チップ104は、レーザ駆動回路又は受信回路、或いはその両方を含む。電気的相互接続108は、光ファイバモジュールを大容量のホストプリント基板(図示せず)に結合する。或いは、ホストプリント基板への相互接続108は、モジュールの後部114に出すことができる。ホスト基板は一般に、任意の数の光ファイバモジュールを保持することになる。剛性部片材料106は、光電子102及び電子チップ104の近傍でFPCB100に取り付けることができ、別の剛性部片材料110は、相互接続108の近傍でFPCB100に取り付けて構造的支持を与えることができる。また、電子又は光電子処理回路112を更に剛性材料110上に備えることができる。
【0003】
光ファイバモジュールの3つの機能グループとして、送信器、受信器、及び送受信器がある。送信器では、相互接続108を介して入力される情報を伝達する電気信号は、レーザ駆動回路を用いて増幅され、レーザチップにより光信号の形態で送信される。受信器では、情報を伝達する光信号は、フォトダイオードによって受信され、電子回路によって増幅されて相互接続108を介してホスト基板に配信される。光ファイバー送受信器は、同一モジュール(ハウジング)内で送信と受信の機能を実行する。送受信器に対する性能要件は、送信器モジュール及び受信器モジュールに対する要件よりも厳しく、これは送信器と受信器のチップ及びパターン間の電気的クロストークに起因する。すなわち、光ファイバモジュールのような小サイズ環境では、レーザを駆動するために必要とされる大きな信号振幅及びFPCB上の電気伝送ラインは、受信器の高感度入力と物理的に近くにある場合にこれと容易に結合する。電磁クロストークは、光ファイバモジュールにおける設計上困難な問題である。モジュール内のチャンネル間クロストーク及び送信器対受信器クロストークは、光ファイバー構成要素の性能を著しく低下させる可能性がある。
【0004】
従来技術のFPCB100の屈曲部を横断するパターン密度は、パターンの幅、可撓性プリント基板の厚み、及び層の数によって制限される。パターンとFPCBの機械的及び電気的な特性は、ホスト基板への相互接続の高速電気特性に対して強い影響を有する。高速用途におけるパターン密度を最大化しようとする試みにおいて幾つかのアプローチが考察されてきた。超高速システムにおいて、情報が差動信号のパターンとしても知られる2つのパターンに対して通常は反対の極性の2つの信号により搬送される間、伝送ラインインピーダンスは、信号波形を劣化させる信号の反射を防ぐように制御され(かつ一定で)なければならない。通常は、高速度信号のパターンのインピーダンスは、信号パターンを有する層に隣接する少なくとも1つの導電層を使用して制御される。差動信号のパターンに関して更なる制約があり、すなわち、2つのパターン上の信号伝播の遅れは、ジッタの発生を防ぐために等しくなければならない。更に、ほとんどの用途において、差動信号を搬送するパターンは、互いに電気的に結合することができず、この場合、2つの信号パターン間に追加の接地パターンを導入する必要がある。これら全ての要件により、接地用のパターン及び層を追加して伝送ラインインピーダンス及び伝播定数が厳密に制御された設計となる。こうしたシステムのサイズを低減するための設計者の選択肢はほとんど無く、すなわち、パターン幅が減少するとパターン抵抗及びインダクタンスが増大し、これによりラインの特性インピーダンスが変わり、結果として該インピーダンスは、可撓性回路の絶縁層の厚さを減少することによって、又は可撓性回路材料の誘電率を増大させることによって、又はこの両方を組み合わせることによって補正することができる。パターン幅が減少するとパターンの損失が増大し、これにより信号の完全性が低下する。高速信号層を追加すると、新しい高速信号層の各々が接地平面を必要とするのでFPCBの厚みが2倍に増大することになる。これにより、結果として可撓性プリント基板の剛性及び最小曲げ係数が増大する。従って、より多くの層を有するFPCBは、屈曲させて現在の大多数の光ファイバモジュールの形状因子に適合させるのが更に困難になる。また、より多くの層を追加するとバイアを使用する必要性が高くなる。バイアを介して伝送ラインインピーダンス及び伝播常数を維持するのは非常に困難であり、容易に補正することができない。パターン密度を増大させると、更に、パターン間のクロストークの可能性が増大する。従って、FPCBの性能及び機械的な剛性に対する条件は、全体として屈曲部横断するパターン数を制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、可撓性のプリント基板を使用する光ファイバモジュールの設計を改良するニーズがある。改良されたFPCBは、複数のパターン層を用いることなく、光電子及び電子チップとモジュール間の相互接続を提供すべきであり、一方では光ファイバモジュールの高速特性に必要な要求されたパターン伝送特性を出力しながら、従来の単一層の可撓性プリント基板の光ファイバモジュール設計を上回る合計パターン数を提供すべきである。本発明はこうした必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光ファイバモジュール用の可撓性プリント基板(FPCB)は、複数の屈曲部を有し、側面と底部を備えた構造体を形成する基板を含む。FPCBのパターンは、光電子チップからFPCBの側面を通って底部で相互接続するモジュールまで横断する。複数の折り畳み構造により、FPCBは従来技術の単一の折り畳みFPCBに比べてより多くのパターン数に対応でき、更に、光ファイバモジュールの前面で光電子及び電子チップから信号パターンを扇形に広げることができ、これによりパターン間のクロストークを減少させる。このより多くのパターン数が、パターンを交差させる必要なく単一の絶縁層を特徴とするFPCBによって提供され、その結果、従来の複数層のFPCを上回る信号の完全性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、光ファイバモジュール用の改良された可撓性プリント基板を提供する。以下の説明は、当業者による本発明の実施及び使用が可能であるように示され、特許出願及びその要件の範囲内で提供される。当業者であれば好ましい実施形態に対して容易に種々の変更がなされることは明らかであり、本明細書の上位の原理は別の実施形態にも適用できる。従って、本発明は、開示された実施形態に限定されるものでは無く、本明細書に記載される原理及び特徴に合致する最も広い範囲が許容されるべきである。
【0008】
本発明による光ファイバモジュールは、複数の屈曲部を有し、側面と底部を備えた構造体を形成する可撓性プリント基板(FPCB)を含む。FPCBのパターンは、光電子素子からFPCBの側面を通って底部にある相互接続まで横断する。複数の折り畳み構造により、FPCBは、従来技術による単一の折り畳みFPCBに比べてより多くのパターン数に対応できるようになる。このより多くのパターン数は、1つの絶縁層だけを有してこの絶縁層の少なくとも一方の側面にパターンが形成され、更にパターンを交差させる必要の無いFPCBによって提供され、結果としてクロストークが減少して信号完全性が改善される。複数の層を使用するとこのパターン数は更に増大することになる。
【0009】
クロストークの減少は送受信モジュールにとって特に重要である。本発明によるFPCBによって、送信パターンはFPCBの一方の側面を横断することができるようになり、受信パターンはFPCBの他方の側面を横断することができるようになる。従って、送信パターンと受信パターン間の物理的な分離が、従来の単一の折り畳みFPCBのパターンの場合よりも大きくなり、ひいては送信器対受信器のクロストークが減少する。
【0010】
本発明の特徴をより詳細に説明するために、以下の説明と共に図2から図5を参照する。
【0011】
図2は、本発明によるFPCBの好ましい実施形態を用いた光ファイバモジュールの一実施形態の組立分解図である。光ファイバモジュール200は、アウターハウジング202、FPCB204、及びFPCB204が結合されたスラグ208を備える。光電子及び電子チップ210は、FPCB204の開口を通してスラグ208に結合される。開口304は、図3Aでより明白に示されている。次に、スラグ208は、以下に更に説明されるようにアウターハウジング202に結合される。モジュール200は更に、FPCBの相互接続に結合されるコネクタ206と、FPCB204に電気接続された光電子及び電子チップ210とを備える。モジュール200は更に、FPCB204に結合されたスペーサ212、スペーサ212に結合されたレンズを有する光プレート214、及び光プレート214の表面上にある電磁放射線シールド216を備える。モジュール200は更に、スペーサ212に結合された取付具218を備え、光プレート214及びシールド216が取付具218内にあるようにする。スノート220はアウターハウジング202に結合される。
【0012】
スペーサ212、光プレート214、及びシールド216は、名称が「Optic Plate For Fiber−Optic Module」で____に出願され本出願の譲渡人に譲渡された、シリアル番号____の同時係属米国特許出願に更に記載されている。出願人はこの同時係属特許出願を引用により本明細書に組み込む。
【0013】
図3A及び図3Bは、本発明によるFPCB204の好ましい実施形態をより詳細に示している。FPCB204は、光電子及び電子チップ210用の開口304と、スペーサ212(図2)と結合するための孔314とを有する前面302を備える。FPCB204は、最初に位置Aで折り畳まれ、次いで位置Bで折り畳まれて、FPCB204の側面306と底部310を形成する。底部310は2つの区域308を含む。2つの区域308には相互接続312があり、コネクタ216に結合される。任意選択的に、FPCB204は、他の方法ではFPCB204の底部310に取り付けることはできないプログラマブルIC(図示せず)を支持するために、端部316で折り返すことができる。好ましい実施形態において、可撓性のプリント基板は、前面302から側面306を通って底面310まで横断するパターンの単一の層を有する。
【0014】
図3Cは、展開されたFPCB204を示す。折り畳みの概略位置A及びBは、点線で示されている。位置Aの折り畳みは前面302を定める。位置Bの折り畳みは側面306を定める。2つの区域308は、合わせてFPCB204の底部310を形成する。
【0015】
FPCB204は、折り畳まれて側面306を形成し、次いで更に折り畳まれて底部310を形成するので、パターンは、互いに交差する必要がなく、開口304内の光電子及び電子チップ210から側面306まで、次いで底部310上の相互接続312まで横断することができる。FPCB204の底部310が2つの区域308から形成されるので、FPCB204の単一の層は、従来の単一折り畳みFPCBの単一の層に比べて2倍のパターン数を得ることができる。多層パターン用のストリップライン又はバイアを必要とせず、及びパターンの交差配置を必要とせずに、FPCB204のパターンによって伝達される信号は、従来の単一折り畳みFPCBに比べてより完全性が改善された。加えて、FPCB204はより可撓性がある。
【0016】
FPCB204は、送受信器モジュール用の信号品質を特に改善する。FPCB204が折り畳まれて2つの側面306を形成するので、送信パターンはFPCB204の一方の側面を横断することができ、同時に受信パターンはFPCB204の他方の側面を横断することができる。これにより、送信パターンと受信パターン間の物理的な分離が増大し、ひいては送信器対受信器のクロストークが減少する。
【0017】
図4は、FPCB204、スラグ208、及びアウターハウジング202をより詳細に示している。FPCB204の前面302はスラグ208に結合される。スラグ208はFPCB204と共にアウターハウジング202の平坦面402に結合される。好ましい実施形態において、これらの結合はエポキシを使用して行われる。他の結合方法も可能である。スラグ208の形状に適合する開口404は、スラグ208、及びひいてはFPCB204をアウターハウジング202内の適切な位置に導くのに役立つ。このようにして結合されると、FPCB204の側面306は、図5に示されるようにアウターハウジング202の壁面のスロット406内にある。スロット406はFPCB204の側面306に構造的支持を与える。この構造的支持により、FPCB204に損傷を与えること無く、光ファイバモジュール200又はアウターハウジング202を取り扱うことができる。アウターハウジング202はまた、ヒートシンクとしても機能し、光電子及び電子チップ210からスラグ308に、次いでアウターハウジング202に熱が伝達される。
【0018】
任意選択的ではあるが、熱伝導性で電気絶縁性の層(図示せず)を、アウターハウジング202の表面402上でスラグ208に隣接させて配置することができる。この誘電層を用いて、ヒートシンク機能を維持しながら高周波数性能と光電子及び電子チップ210の接地性を改善することができる。
【0019】
FPCBの好ましい実施形態を図2に示される光ファイバモジュールに関して説明したが、このFPCBは、本発明の精神及び範囲から逸脱すること無く他の光ファイバモジュールと共に使用できることは当業者であれば理解できるであろう。
【0020】
光ファイバモジュール用の改良された可撓性プリント基板が開示された。FPCBは、複数の屈曲部を有し、側面と底部を備えた構造体を形成する基板を含む。FPCBのパターンは、光電子素子からFPCBの側面を通って底部にある相互接続まで横断する。複数の折り畳み構造により、FPCBは、従来技術による単一折り畳みFPCBに比べてより多くのパターン数に対応することができる。このより多くのパターン数は、パターンを交差させる必要が無く単一のパターン層によって提供され、結果として従来の複数層FPCBを上回る信号完全性が改善される。
【0021】
本発明を図に示される実施形態に従って説明してきたが、当業者であればこの実施形態に対して変更が可能であり、これらの変更は本発明の精神及び範囲内にあることは容易に理解されるであろう。従って、本発明の請求項範囲の精神及び範囲を逸脱すること無く、当業者によって多くの修正を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】単一の屈曲部を有する従来の可撓性プリント基板(FPCB)を示す。
【図2】本発明によるFPCBの好ましい実施形態を使用する光ファイバモジュールの一実施形態の組立分解図である。
【図3A】本発明によるFPCB204の好ましい実施形態を更に詳細に示す。
【図3B】本発明によるFPCB204の好ましい実施形態を更に詳細に示す。
【図3C】折り畳まれていないFPCBを示す。
【図4】FPCB、スラッグ、及びアウターハウジングを更に詳細に示す。
【図5】アウターハウジングのスロットを示す。
【符号の説明】
【0023】
200 光ファイバモジュール
202 アウターハウジング
204 FPCB
206 コネクタ
208 スラグ
210 光電子及び電子チップ
212 スペーサ
214 光プレート
216 電磁放射線シールド
218 取付具
220 スノート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性プリント基板を備える光ファイバモジュールであって、
該基板が、
複数の導電性パターンと、
前面を定める、前記基板の曲げの第1の組と、
複数の側面と底面とを定める、前記基板の曲げの第2の組と、
を備え、
前記複数のパターンが前記前面から前記側面を通って前記底面まで横断することを特徴とする光ファイバモジュール。
【請求項2】
前記可撓性プリント基板の前面に電気的に結合された光電子チップを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記可撓性プリント基板の前記底面が、複数の相互接続を含むことを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項4】
前記可撓性プリント基板が1つの絶縁層から成り、前記複数の導電性パターンが前記絶縁層の少なくとも1つの側面に提供されることを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項5】
複数の送信パターンが前記可撓性プリント基板の第1の側面を横断し、複数の受信パターンが前記可撓性プリント基板の第2の側面を横断することを特徴とする請求項1に記載のモジュール。
【請求項6】
前記可撓性プリント基板の前面に結合されたスラグと、前記スラグに結合されたアウターハウジングとを更に備えることを特徴とする請求項2に記載のモジュール。
【請求項7】
前記アウターハウジングがヒートシンクとして機能し、前記光電子チップからの熱が前記スラグを介して前記アウターハウジングに伝達されることを特徴とする請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
前記アウターハウジングがスロットを含み、前記可撓性プリント基板の側面が前記スロット内にあることを特徴とする請求項6に記載のモジュール。
【請求項9】
前記アウターハウジングが前記スラグ及び前記可撓性プリント基板を所望の位置に導くためのガイドを含むことを特徴とする請求項6に記載のモジュール。
【請求項10】
前記アウターハウジングは、前記スラグが結合される面を備えることを特徴とする請求項6に記載のモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−501517(P2006−501517A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541459(P2004−541459)
【出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/022461
【国際公開番号】WO2004/032203
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(501195658)エムコア・コーポレイション (22)
【Fターム(参考)】