説明

複数の構成部材を結合する方法

本発明は、動的負荷のかかる複数の構成部材、特にガスタービンの複数の構成部材を接合する方法に関するものである。本発明によれば、相互に連結される構成部材(10,11)を、レーザーパウダービルドアップ溶接を用いて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的負荷がかかる構成部材、特にガスタービンの構成部材を、請求項1で規定された接合する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍛造物は鋳造物と比較してより大きな強度を備えるので、高い動的負荷がかかる特にガスタービンの構成部材は、一般に鍛造物として製造される。関連技術によれば、摩擦溶接、特に回転摩擦溶接または線形摩擦溶接は、そのような動的負荷がかかる構成部材を接合するために用いられる。鍛造された材料の強度値と一致する強度値が、摩擦溶接を用いることによる二つの構成部材間の接合領域において、実現できる。回転摩擦溶接は、いずれも複雑な機械のもとで実施されなければならず、かつ高価な製造資源を必要とするデメリットを包含する圧接技術として知られている溶接技術群の一つである。このように、摩擦溶接または圧接溶接によって、動的負荷がかかる構成部材を接合することは複雑で高価である。さらに、摩擦溶接または圧接溶接間に、複雑でさらなる機械加工を必要とする溶接バルジ(フラッシュとして知られる)が形成されてしまう。しかし、関連技術として知られている融接技術では、融接接合部の強度が、高い動的負荷がかかる構成部材に対して十分でないため、動的負荷がかかる構成部材の接合に用いることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、動的負荷がかかる構成部材、特にガスタービンの構成部材を接合するための、新しい方法を提供することに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に従って、動的負荷がかかる構成部材、特にガスタービンの構成部材を接合する方法によって達成される。本発明によれば、接合される少なくとも二つの構成部材は、レーザーパウダービルドアップ溶接を用いて接合されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の範囲内では、動的負荷がかかる構成部材はレーザーパウダービルドアップ溶接を用いて接合することが提唱される。関連技術によれば、レーザーパウダービルドアップ溶接は、短時間製造の製法として知られているため、ただ単に構成部材または新しい部品などを製造するためだけに用いられている。本発明は、動的負荷がかかる構成部材を接合するためにレーザーパウダービルドアップ溶接を用いることを初めて提唱するものである。本発明は、レーザーパウダービルドアップ溶接を用いた際、接合部の強度値が鍛造された構成部材のそれよりも高い値を達成することができる、という知見に依拠している。これは、レーザーパウダービルドアップ溶接において、溶接された材料が速やかに冷め、適所に固まるという事実によるものである。本過程において生成された溶接部の組織は、微細粒子のものである。それ故、このように製造される接合部は特筆すべき強度特性を示し、また、特に動的負荷がかかる構成部材の接合に最適である。本発明の更なる利点としては、溶接部において前処理と後処理の複雑さがほとんど無いだけではなく、レーザーパウダービルドアップ溶接の高いフレキシビリティーにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の有利な改良に従い、接合される構成部材は互いに相対して一列に並べられ、この一列に並べられた位置において付加溶接により接合される。付加溶接の形成に続き、構成部材の本接合部はレーザーパウダービルドアップ溶接によって形成される。
【0007】
本発明の好ましい改良は、下位クレームと以下の説明によって明らかになる。そのことに制限されることなく、本発明の代表的実施例を、図面に基づいてより詳細に説明する。
【0008】
以下、図1及び2を参照して本発明をより詳細に記述する。
図1は接合される二つの構成部材の断面図を示しており、両構成部材は垂直方向に延在するフランジ10,11において接合される、ガスタービンローターのローターディスクとしてデザインされている。
【0009】
本発明に基づく方法の範囲内では、二つの構成部材は、あらかじめ構成部材10、11が互いに相対して配列され、この配列された位置で付加溶接部12によって一時的に接合されることにより、フランジ10,11において接合される。付加溶接部12の形成に続き、両構成部材はレーザーパウダービルドアップ溶接により恒久的に接合される。レーザーパウダービルドアップ溶接により形成された接合部は、図1の参照番号13に示されている。
【0010】
図1によって明らかなように、フランジ10,11は、接合すべきフランジ10,11の端部領域において、クレーター池が形成され、このクレーター池内に、溶接部13を築くために、レーザーパウダービルドアップ溶接によって溶接部13の材料が導入される。レーザーパウダービルドアップ溶接に用いられるパウダーは、接合される構成部材の材料組成に適したものである。
【0011】
レーザーパウダービルドアップ溶接中に、そのパウダーは溶解し、急速に冷却にさらされ、その結果、溶解した材料が冷却中に適所において固まる。溶接部13の領域に、微細粒子構造が生成する。このようにして溶接部13は、接合される両構成部材のベース材料よりも高い強度値を得る。レーザーパウダービルドアップ溶接中の材料の冷却と、その結果としての溶接部13の強度値は、適切な冷却操作によって調整することができる。
【0012】
図1によって明らかなように、レーザーパウダービルドアップ溶接によって形成される溶接部13はフランジ10寸法以上にわずかにはみ出る。フランジ10上にはみ出ている溶接部13の一部分は、溶接部13の後処理段階で取り除くことができる。しかしながら、レーザーパウダービルドアップ溶接による、標的とする非常に正確な態様で、溶接部13を形成するための素材を適用することが可能であるため、後処理に必要な労力はごくわずかである。
【0013】
図2は、さらに2つの、接合される構成部材を示している。すなわち、垂直方向に延在するフランジ14,15において接合される2つのローターディスクである。図2に準じて、フランジ14,15において構成部材の接合部を形成するために、あらかじめ両フランジ14,15を互いに相対して配列し、この配列された位置において、付加溶接部材16を用いて接合する、図1の典型的実施例に類似した方法で接合を行う。付加溶接部16の形成に続き、構成部材の本接合部は、レーザーパウダービルドアップ溶接によって形成された溶接部17によって設けられる。
【0014】
図2の典型的な実施例は、ただ単に、接合されるフランジ14,15の端部に、肩形状または段形状のセンタリリングリップ18が存在することで、構成部材の配列が容易になるということにおいてのみ、図1の典型的な実施例とは異なる。センタリリングリップは構成部材が相対して配列することを容易にするために用いられる。
【0015】
溶接部13に差異をもたせて形成することは、例えば、レーザーパウダービルドアップ溶接に用いられる材料を適合させたり、または、温度などの溶接条件を調整したりする、という点からも可能になる、ということを指摘しておく。
【0016】
本発明を用いると、高い動的負荷のかかる構成部材の接合部は、摩擦溶接では必要とされる多大なエネルギーを加えることなく、コスト面で効率よく形成することができる。これにより、複雑な器材や機械、また特別な製造資源を省くことが可能となる。レーザーパウダービルドアップ溶接は非常にフレキシビリティーに富み、溶接部の後処理をほとんど必要としない。溶接部の強度値は、接合される構成部材のベース材料よりも高い強度値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による方法で接合される、動的負荷がかかる2つの構成部材が高度に組織的配列された図である。
【図2】本発明による方法で接合される、動的負荷がかかるさらに2つの構成部材が高度に組織的配列された図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動的負荷がかかる複数の構成部材、特にガスタービンの複数の構成部材を接合する方法であって、
接合される少なくとも二つの構成部材(10,11;14,15)を、レーザーパウダービルドアップ溶接を用いて接合することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記接合される構成部材(10,11;14,15)は、互いに相対して配列され、この配列された位置において、付加溶接部(12;16)によって接合することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記付加溶接部(12;16)は、レーザー溶接または電子ビーム溶接によって形成することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記付加溶接部の形成に続き、前記接合される構成部材(10,11;14,15)における本接合部をレーザーパウダービルドアップ溶接によって形成することを特徴とする請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
コンプレッサーローターまたはタービンローターの少なくとも二つのローターディスクを、垂直方向に延在するフランジにおいて接合することを特徴とする請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−520355(P2007−520355A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551711(P2006−551711)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000132
【国際公開番号】WO2005/075140
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(505323725)エムティーユー エアロ エンジンズ ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】