説明

複数の電話番号を設定可能な電話機およびIP電話システム

【課題】 複数の電話番号を設定可能な電話機において、利用者がその利用形態に応じて、着信電話番号毎に着信履歴を記録するか否かを設定できるようにした電話機およびIP電話システムを提供する。
【解決手段】 同一電話機に、個人電話番号とグループ着信電話番号のように複数の電話番号を設定することができる電話機において、前記電話機50は、当該電話機50に設定された電話番号ごとに着信履歴を残すか否かを設定する着信履歴設定部505と、不在着信履歴を記憶するメモリ507と、不在着信があった場合にメモリ507に着信履歴を記憶する着信履歴記憶制御部506とを備え、着信履歴制御部506は、電話機50に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出し、着信履歴設定部505に設定された電話番号を参照してメモリ507に着信履歴を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一電話機に、個人電話番号とグループ着信電話番号のように複数の電話番号を設定することができる電話機およびIP電話システムに関するものであり、特に、電話機に利用者がその利用形態に応じて、着信電話番号毎に着信履歴を記録するか否かを設定できるようにした電話機およびIP電話システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IPネットワークを使用したIP電話サービスが行なわれている。IP電話システムにおいて、音声はディジタル化され、さらにIPパケットに変換され、IPネットワーク上を流れ、通話先まで到達する。通話先において受信されたIPパケットは元の情報に復元され、こうして送り側と通話先との間で通話を行なうことができる。このIP電話システムは、既存の電話網と比べて、運用・保守・管理コストを削減することができるため、広く使用されつつある。
【0003】
このようなIP電話システムとして、現在、VoIP(Voice over Internet Protocol)システムが市販されている。VoIPシステムの代表的な呼制御プロトコルとしてSIP(Session Initiation Protocol)がある。このSIPのサーバによる呼制御にはINVITEと呼ばれる発信用の制御コマンドがある。INVITEコマンドは発信側のIP電話機より送信先に送られる最初の制御メッセージで、このメッセージには、宛先アドレス、発信者アドレス、通信能力情報のほか発信者名や会社名などを電話機毎に発呼用の付帯情報として着信先に送ることができる。
【0004】
IPネットワークでは、IPアドレスのような機器に割当てられたアドレスを使用することによって相手を一意に認識する必要がある。このため、一般に、ゲートキーパと呼ばれる装置を使用する。ゲートキーパは、IP電話機に割当てられた電話番号とIPアドレスとを関連付けたデータベースを管理しており、IP電話機からの電話番号の指定に応じ、対応するIPアドレスを検索することによって、通話先のIP電話機のIPアドレスを指定できるようにする。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2004−147101号公報)に開示されたIP電話システムにおいては、IP電話機の運用開始前に、IP電話機からMACアドレスおよびIPアドレスを受信し、そのネットワークアドレスに含まれるアドレスに基づいて予め設定された電話番号を採番してIP電話機に通知するとともに、電話番号、IPアドレスおよびMACアドレスを関連づけて登録・管理する電話番号採番手段を備えたゲートキーパ装置を開示している。上記特許文献1で開示されたような装置を使用すると、ユーザー端末ごとに、電話番号などの固有のアドレスや設定情報を電源投入時等に自動的に設定することができる。
【0006】
前述のようなIP電話システムにおいて、特定のIP電話機に着信があった場合、相手側(発信側)IP電話機と着信側IP電話機との間で、音声コーデックやパケット長などの接続メディアを確認しあった後に接続、通話が開始される。このプロセスを一般にはネゴシエーションプロセスという。ネゴシエーションプロセスは、例えば現在市販されているVoIP(Voice over Internet Protocol)システムを用いて行われる。
【0007】
このSIPの呼制御にはINVITEメッセージと呼ばれる発呼用の制御コマンドがある。INVITEメッセージは発信側のIP電話機より送信先に送られる最初の制御メッセージで、このメッセージには、宛先アドレス、発信者アドレス、音声や画像に関するコーデックを含む通信能力情報などをIP電話機毎に発呼用の付随情報として持たせることができ、このコマンドを用いてネゴシエーションプロセスを行っている。
【0008】
一方、最近では、通信コストを削減するため通信料金が安価なIP電話機を導入するオフィスが増加している。一般の加入者電話においては、代表番号着信、グループ着信、不在登録や不在転送サービスなど、通信事業者が提供するサービスが充実している。また、企業内に設置される構内交換機に同様の機能を搭載する例もある。IP電話システムを導入した場合にもグループ着信機能を設定できると、着信した電話をグループ設定した何れかのIP電話機に接続して応答することができ便利である。
【0009】
例えば、下記の特許文献2(特開2004−235778号公報)には上記SIPシステムを用いたIP電話システムが開示されている。このようなSIPシステムによれば、代理応答機能、自動転送機能、一斉呼出し機能など種々の機能を有するIP電話システムを構築することができる。従って、グループ電話番号と当該グループ電話番号に着信した通話を接続させる複数のIP電話機とをグループとして設定し、当該グループ電話番号に対する着信をグループ設定したIP電話機の何れかに着信させるシステムとすることができる。
【0010】
グループ着信機能を有するIP電話システムにおいては、システムに接続されるIP電話機には通常グループ電話番号の他に個人用の電話番号が設定され、両電話番号に対する受発信が可能になる。また、一般的の加入者電話機と同様に電話機にも不在時の着信を着信履歴として記録する着信履歴記録機能が備えられている。
【0011】
着信履歴を記録する電話機としては、種々のものが知られている。例えば、下記の特許文献3(特開2002−125012号公報)には、着信に対して未応答の着信未応答呼の重要度を所定の判定基準により判定し、重要と判定された着信未応答呼を通常の未応答呼の表示とは異なる表示画像により表示するようにした電話装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−147101号公報
【特許文献2】特開2004−235778号公報
【特許文献3】特開2002−125012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先に述べたように、IP電話に限らず、グループ着信機能を有する電話システムにおいては、システムに接続される電話機には個人用の電話番号とグループ電話番号のように複数の電話番号が設定されることになる。このように複数の電話番号を有する電話機において、着信履歴を記憶する場合、着信履歴自体は単一のファイルとして扱われ、着信電話番号の区別なく電話機に設けられた着信履歴記憶部に着信順に記憶されてゆく。
【0013】
ところで、個人電話番号とグループ電話番号とが設定された電話機において、グループ電話番号に着信した通話は、グループに属する電話機の何れであっても応答できるものであるから、必ずしも自分宛の着信であるとは限らない。これに対して個人電話番号に着信した通話はほぼ自分宛の通話である。
【0014】
このような場合、着信履歴記憶部に記憶できる着信履歴の数は限られており無限ではないので、利用者によってはグループ電話番号への着信履歴は記憶せず、個人電話番号への着信のみ着信履歴を記憶したいという要求が生じる。また、個人電話番号への着信履歴のみを記憶すれば、着信履歴を参照する場合にも自分宛の着信履歴のみを参照でき、自分宛でない着信履歴が混在した中から自分宛の着信履歴を識別する必要がなく好都合である。
【0015】
また、着信履歴記憶部の容量が限られているため、記憶できる最大履歴件数を超える着信があった場合には、利用者が着信履歴を参照したか否かによらず、最も古い着信履歴が着信履歴記憶部から削除され、新しい着信履歴が記憶されてしまう。従って、利用者にとって必要でない着信履歴までが記憶されていると、本当に必要な着信履歴が溢れて削除されてしまい、利用者が必要とする着信履歴を参照できない事態が発生する。更には、記憶可能な最大履歴件数に占める有用な履歴件数の割合が著しく低くなる可能性もあり、そのような場合には、着信履歴そのものが有効活用出来なくなるという状態に陥る。
【0016】
しかしながら、特許文献3に開示されたような従来の電話機においては、複数の電話番号が設定された電話機であっても、着信履歴自体が単一のファイルとして扱われ所定の着信履歴記憶部に記憶され、利用者の利用形態に応じて選択的に着信履歴を記憶するようにカスタマイズすることは許されておらず、個人電話番号への着信のみを着信履歴として記憶することができないという問題点が存在していた。
【0017】
複数の電話番号を設定可能な電話機において、各電話番号に対する不在着信履歴が有用か否かという判断基準は利用者ごとに異なる。例えば、同じグループ電話番号への不在着信履歴についても、それを必要とする人もいれば、必要としない人もいる。
【0018】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、電話機に設定された電話番号ごとに不在着信履歴をメモリに記憶するか否かを設定する着信履歴設定手段
を設けてこれに基づいて不在着信発生時に不在着信履歴を残すか否かを電話機側で自動判定する構成とすれば、前記の問題点を解消し得ることに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
【0019】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、複数の電話番号を設定可能な電話機において、利用者がその利用形態に応じて、着信電話番号毎に着信履歴を記録するか否かを設定できるようにした電話機およびIP電話システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
同一電話機に、個人電話番号とグループ着信電話番号のように複数の電話番号を設定することができる電話機において、
前記電話機は、当該電話機に機設定された電話番号ごとに着信履歴を残すか否かを設定する着信履歴設定部と、不在着信履歴を記憶するメモリと、不在着信があった場合に前記メモリに着信履歴を記憶する着信履歴記憶制御部とを備え、
前記着信履歴制御部は、当該電話機に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出し、着信履歴設定部に設定された電話番号を参照して前記メモリに着信履歴を記憶することを特徴とする。
【0021】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる電話機において、前記電話機に設定する電話番号は、グループ電話番号、個人電話番号、外線電話番号、内線電話番号のうちの少なくとも1つ以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1または請求項2にかかる電話機において、前記着信履歴設定部は、当該電話機に設定された電話番号ごとに着信履歴を保存する保存期間を設定できるように構成され、前記着信履歴制御部は、当該電話機に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出して着信履歴設定部に設定された電話番号を参照して前記メモリに着信履歴を記憶するとともに、前記着信履歴設定部に設定された保存期間を参照し、保存期間を経過した不在着信履歴を削除することを特徴とする。
【0023】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1にかかる電話機において、前記電話機はIP電話機であることを特徴とする。
【0024】
また、本願の請求項5にかかる発明は、請求項4にかかる電話機を有するIP電話システムにおいて、当該IP電話機への着信は、呼制御サーバを介して接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1にかかる発明においては、電話機は、当該電話機に機設定された電話番号ごとに着信履歴を残すか否かを設定する着信履歴設定部と、不在着信履歴を記憶するメモリと、不在着信があった場合に前記メモリに着信履歴を記憶する着信履歴記憶制御部とを備え、
前記着信履歴制御部は、当該電話機に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出し、着信履歴設定部に設定された電話番号を参照して前記メモリに着信履歴を記憶する。
【0026】
このような構成によれば、電話機の利用者がその利用形態に応じて、任意に電話番号ごとの着信履歴の保存を選択できるようになり、利用者が必要と考える着信履歴のみを残すことができるようになる。このため、限られたメモリの着信履歴記憶領域を有効に利用することができ、必要とする着信履歴が参照前に削除されてしまうような危険性を少なくすることができ、また、必要な着信履歴のみ保存されているので、参照したい履歴を容易に識別することができるようになる。
【0027】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる電話機において、電話機に設定する電話番号は、グループ電話番号、個人電話番号、外線電話番号、内線電話番号のうちの少なくとも1つ以上であるから、利用者は、それぞれの電話番号の利用形態に応じて、任意に電話番号ごとに着信履歴を記憶するように設定することができるようになる。
【0028】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項1または請求項2にかかる電話機において、前記着信履歴設定部は、当該電話機に設定された電話番号ごとに着信履歴を保存する保存期間を設定できるように構成され、前記着信履歴制御部は、前記着信履歴設定部に設定された保存期間を参照して保存期間を経過した不在着信履歴を削除する。
【0029】
このような構成によれば、グループ着信履歴は保存期間を短く設定しておけば、設定期間を経過したグループ着信履歴が自動的に削除され、メモリから必要性の高い着信履歴が削除されてしまう不都合を改善することができる。また、個人電話番号への不在着信履歴の保存期間も所望の期間を設定しておけば、電話機の利用状況に応じてメモリの記憶容量を有効に利用できるようになる。
【0030】
また、請求項3、請求項4にかかる発明においては、IP電話機、IP電話システムにおいて、IP電話機の利用者が必要と考える着信履歴のみを残すことができるようになる。このため、限られたメモリの着信履歴記憶領域を有効に利用することができ、必要とする着信履歴が参照前に削除されてしまうような危険性を少なくすることができ、また、必要な着信履歴のみ保存されているので、参照したい履歴を容易に識別することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。以下に示す実施例は、グループ着信機能を有するIP電話システムを具体例として説明するが、この実施例は本発明の技術思想を具体化するための1例を例示するものであって、本発明をこのIP電話システムに特定することを意図するものではなく、複数の電話番号を設定可能な電話機を有する構内電話システムなど、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の電話システムにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0032】
図1は、本発明の実施例1にかかる代表番号着信機能を有するIP電話システムおよびIP電話機の構成を示すブロック図である。なお、以下の説明においてはIP電話機を単に端末ということとする。本発明の実施例にかかる代表番号着信機能を有するIP電話システムは、IP電話機50である端末A〜端末Nなどと、呼制御サーバ40と、ゲートウェイ30とから構成される。呼制御サーバ40は、SIP(Session Initiation Protocol)プロトコルを適用したSIPサーバを用いることができる。
【0033】
端末A〜端末Nへの呼はゲートウェイ30を介して行われる。電話回線網12に接続された加入者電話機15との間の呼は、呼制御サーバ40の呼接続制御のもとで端末A〜端末Nに接続される。また、ルータ17に接続される他のIP電話システムに設置された端末との間の呼は、インターネット網11、ルータ20を介して呼制御サーバ40の呼接続制御のもとで端末A〜端末Nに接続される。図1において端末A以外のIP電話機はその構成の図示を省略しているが、端末Aと同様の構成である。
【0034】
本発明においては、所定のグループ電話番号に着信があった場合に接続するIP電話機グループを、例えば、端末A〜端末Dをグループ着信端末として設定し、その何れかの端末に着信させるように構成してあるものとする。従って、端末A〜端末Dはグループ電話番号の他に個々の利用者に割り当てられる個人用の電話番号が設定され、呼制御サーバ40は、グループ電話番号への着信を端末A〜端末Dの何れかに着信させ、個人電話番号への着信は該当する端末に着信させる。
【0035】
呼制御サーバ40は、制御回路401の他、各端末への着信を制御する着信制御部403、各端末に設定された電話番号を記憶する端末電話番号記憶部404を備えている。
【0036】
端末電話番号記憶部404にはIP電話システム10に収容される各端末A〜端末Nに設定された電話番号が記憶してある。記憶されるデータは、図2に示すように電話番号設定Aに各端末に設定されたグループ電話番号が記憶され、電話番号設定B、電話番号設定Cに各端末に設定された個人用の電話番号や自宅用の電話番号などが記憶される。着信制御部403は端末電話番号記憶部404に記憶された端末IDと電話番号により着信呼を該当する端末に接続する制御を行う。
【0037】
図2において、電話番号設定Aには、各端末に設定されたグループ電話番号と着信順が記憶されている。例えば、本実施例ではグループ電話番号****に、端末A〜端末Dの端末IDが登録され、着信順として端末A〜端末Dに順に着信順「1」〜「4」が設定されている。複数のグループ電話番号が設けられた場合には、端末A〜端末Dと同様に着信させる端末のグループと着信順を設定する。
【0038】
一方、端末A〜端末Nは、設定された電話番号ごとに着信履歴を残すか否かを設定する着信履歴設定部505、着信履歴記憶制御部506、着信履歴記憶部として機能するメモリ507の他、通常のIP電話機と同様、制御回路501、送受話器502、表示部503、入力部504を備えて構成される。制御回路501はRAM、ROMを有するマイクロプロセッサから構成され、ROMに記憶された制御プログラムに基づいて各部を制御する。送受話器502はマイク、スピーカからなり通話に使用される。
【0039】
入力部504は英数キー、機能キーなどを有し、電話番号入力や発信など各種操作に使用される。表示部503は液晶表示ユニットなどから構成され、端末50の各種設定画面や着信電話の表示などに使用される。
【0040】
各端末A〜端末Nは、着信履歴設定部505に、電話番号ごとに不在着信があった場合にメモリ507に着信履歴を記憶するか否かを設定することができる。着信履歴記憶制御部506は、呼制御サーバから不在時着信があった場合に着信電話番号(端末50に設定されたグループ電話番号や個人電話番号)を検出し、着信履歴設定部505に設定された電話番号を参照してメモリ507に着信履歴を記憶する制御を行う。
【0041】
例えば、端末Aは、図2に示すようにグループ電話番号(グループ****)と個人電話番号(**−****−****)が設定されている。端末Aの利用者により、図3に示すように着信履歴設定部505にグループ電話番号の履歴記憶に「OFF」(着信履歴を記憶しない)、個人電話番号の履歴記憶に「ON」(着信履歴を記憶する)という設定がしてあるものとする。ただし、実際に電話機の利用者が応答した場合の着信履歴(即ち、不在着信ではないもの)については、設定に関わらず保存するものとする。
【0042】
この設定は個人電話番号への不在着信のみの着信履歴を記憶することを意味しており、着信履歴記憶制御部506は呼制御サーバ40から着信があった場合、着信電話番号を検出し、個人電話番号への不在着信であればメモリ507に着信履歴を記憶する。グループ電話番号と個人電話番号の何れも着信履歴を記憶する設定(何れも「ON」に設定)がしてある場合には、個人電話番号とグループ電話番号の何れに不在着信があっても着信履歴記憶制御部505はメモリ507に着信履歴を記憶する。
【0043】
図4は、上記のようにしてメモリ507(着信履歴記憶部)に記憶された着信履歴の一例を示す図である。図4において、端末50(端末A〜端末Dの何れか)は、自電話番号として「9999」(グールプ電話番号)、「1111」(個人電話番号1会社用)、「2222」(個人電話番号2自宅・家族用)が設定されているものとする。そして着信履歴設定部505には、設定されたすべての電話番号に「ON」が設定され、何れの電話番号に不在着信があっても着信履歴記憶制御部506はメモリ507にすべての着信履歴を記憶する。
【0044】
着信履歴の構成は、図4に示すように、履歴番号、種類(不在)、着信時刻、自電話番号(着信電話番号)、相手先電話番号、相手先名前(非通知の場合は名前に非通知が記憶される)などである。履歴番号は、最新の着信履歴が「1」で、新しい着信から順次追番が付され、最新の着信履歴が記憶されると当該最新の着信履歴が「1」になり、以下、順次履歴番号が繰り下がるように制御される。
【0045】
図4においては、最大履歴件数は説明のために簡略化して5件としている。ここで、この端末の利用者は、グループ電話番号「9999」への不在着信履歴が不要だと仮定する。
この場合、5件のうち3件は不要であるグループ電話番号への不在着信履歴となっており、逆に有用な個人電話番号「1111」、「2222」への着信履歴は2件しか保存されていないことになる。このため、着信履歴の利用効率が非常に悪く、それに伴って着信履歴一覧の視認性も悪化している。
【0046】
また、この状態から更にグループ電話番号「9999」への不在着信が発生した場合には、最古の着信履歴である個人電話番号「2222」への不在着信履歴が最大履歴件数から溢れてしまい、利用者が既にこの履歴を参照していたか否かに関わらず、着信履歴一覧から強制的に削除されてしまうことになる。
【0047】
従って、離席していた人が席に戻ってきて「不在着信あり」のポップアップメッセージを見て着信履歴を参照した場合にも、重要な不在着信履歴が既に失われているために確認し損なってしまい、それに起因して不利益を被る恐れもある。
【0048】
そこで、利用者がグループ電話番号「9999」への不在着信履歴を記憶しない設定にすれば、利用者が有用と判断している、個人電話番号「1111」、「2222」への全着信履歴と、実際に自分が応答したグループ電話番号「9999」への着信履歴(不在着信でなく応答した通話の着信記録)のみが保存されることになり、着信履歴記憶部が有効活用できるとともに、前記の問題点を解消することができるようになる。
【0049】
次に、呼制御サーバ40がグループ電話番号への着信を各端末A〜端末Dに接続する制御について説明する。着信制御部403は、グループ電話番号に着信があると、端末電話番号記憶部404に設定された情報に基づいて着信を接続する端末をサーチして決定する。順次サーチ方式の場合は、端末A〜端末Dに設定された着信順が優先順位を意味しており、この優先順位に従って端末をサーチし、空いていればその端末に着信を接続する制御を行う。
【0050】
すなわち、サーチは優先順位の高い端末から順に行われ、その端末が空であれば直ちにその端末に接続される。従って、この場合、端末Aから順にサーチされ、端末Aが空であればグループ着信は端末Aに接続される。端末Aが話中などで空でない場合、優先順位「2」の端末(ここでは端末B)をサーチし、端末Bが空であれば端末Bに接続される。
【0051】
サーチ順は、ラウンドロビン方式であってもよい。着信順記憶部に設定された端末の着信順は代表番号着信の都度、最初にサーチされる端末を変える選択順を意味しており、1回目の代表番号着信に対しては端末Aが最初にサーチされ、2回目の着信に対しては端末Bが、3回目の着信に対しては端末Cが、4回目の着信に対しては端末Dが最初にサーチされる。サーチ順を一巡すると5回目の着信に対しては先頭にもどり端末Aが最初にサーチされる。サーチされた端末が話中で空きでなければ次の端末をサーチし、空の端末に代表番号着信が接続される。
【0052】
このようにラウンドロビン方式においては、着信順記憶部に設定された端末の着信順は、代表番号着信がある都度順次シフトされる順位であって、空きのIP電話機をサーチする選択順を示す順位である。順次サーチ方式の場合、優先順位の高い端末に最優先で着信することになり、また、その端末への着信回数が最も多くなる。これに対してラウンドロビン方式の場合、各端末に対する着信をほぼ均一にすることができる。
【0053】
グループ電話番号への着信制御は上記の方法によらず、一斉鳴動着信制御であってもよい。一斉鳴動着信ではグループ番号着信時には、グループ内の全電話機が一斉鳴動し、いずれかの電話機で応答すると、それ以外の全ての非応答電話機は着信が解除される。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明による電話システムによれば、複数の電話番号を設定した電話機の利用者がその利用形態に応じて、任意に電話番号ごとの着信履歴の保存を選択できるようになり、利用者が必要と考える着信履歴のみを残すことができるようになる。このため、限られたメモリの着信履歴記憶領域を有効に利用することができ、必要とする着信履歴が参照前に削除されてしまうような危険性を少なくすることができ、また、必要な着信履歴のみ保存されているので、参照したい履歴を容易に識別することができるようになる。
【0055】
また、不在着信履歴を記憶するメモリには記憶容量に限りがあるため、グループ電話番号への着信履歴を保存する設定をした場合、グループ着信履歴は保存期間を短く設定しておき設定期間経過後に自動的にグループ着信履歴を削除するようにしておくと、メモリから必要性の高い着信履歴が削除されてしまう不都合を改善することができる。なお、個人電話番号への不在着信履歴の保存期間も所望の期間を設定するよう構成すれば、電話機の利用状況に応じてメモリの記憶容量を有効に利用できるようになる。
【0056】
このためには、着信履歴設定部505に電話番号ごとの不在着信履歴保存の要否を設定するとともに、グループ電話番号や他の電話番号ごとに不在着信履歴の保存期間を設定できるようにし、着信履歴記憶制御部506が不在着信履歴をメモリ507に記憶する際に保存期間を経過した不在着信履歴を削除(消去)する制御を行うように構成すればよい。
【0057】
なお、上記の実施例はIP電話システムを例に説明したが、本発明はこれに限ることなく、一般の構内電話システムにも適用可能である。また、上記実施例はグループ電話番号と個人電話番号への着信履歴記憶制御を例にとり説明したが、外線電話番号への不在着信であれば着信履歴を保存し、内線電話番号への不在着信であれば着信履歴を保存しない、あるいは、会社用の電話番号への不在着信であれば着信履歴を保存し、家庭用の電話番号への不在着信であれば着信履歴を保存しない、等の設定を行うことも可能である。
【0058】
本願発明は、他のIP電話機でも着信応答することができるというグループの特色に着目したものであるが、このグループの特色として、不在着信履歴を見た使用者が折り返し応答した場合、同一グループの他のIP電話機が折り返し応答されたことを知らずに、二重に折り返し応答することが考えられる。
【0059】
このために、折り返し応答された場合には、サーバあるいはIP電話装置が同一グループの他のIP電話機に折り返し応答したことを報知することが望ましい。更に、この報知を自動的に行うことが望ましく、その方法として、不在着信履歴の報知に関連した発信操作を折り返し応答として認識し、他のIP電話機に折り返し応答したことを報知する方法が考えられる。例えば、不在着信履歴表示の2番目に折り返し応答するとき、カーソルを2番目に移動させた後、あるいは数字の2キーを押した後に発信キーを押した場合は折り返し応答と判断し、テンキーより電話番号を入力した場合は折り返し応答とは判断しないという方法をとることができる。また、折り返し応答の報知方法は、不在着信履歴の抹消でもよく、折り返し応答をしたIP電話機の番号を該当の不在着信番号に属して表示させ、誰が応答したかがわかるようにさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例にかかる代表番号着信機能IP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】呼制御サーバの端末電話番号記憶部に記憶される各端末の設定電話番号などのデータ構成の一例を示す図である。
【図3】端末の着信履歴設定部に設定される情報の一例を示す図である。
【図4】着信履歴記憶部に記憶される着信履歴の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10・・・・IP電話システム
11・・・・インターネット網
12・・・・電話回線網
15・・・・加入者電話機
17、20・・・・ルータ
30・・・・ゲートウェイ
40・・・・呼制御サーバ
401・・・制御回路
403・・・着信制御部
404・・・端末電話番号記憶部
50・・・・IP電話機(端末)
501・・・制御回路
502・・・送受話器
503・・・表示部
504・・・入力部
505・・・着信履歴設定部
506・・・着信履歴記憶制御部
507・・・メモリ(着信履歴記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一電話機に、個人電話番号とグループ着信電話番号のように複数の電話番号を設定することができる電話機において、
前記電話機は、当該電話機に設定された電話番号ごとに着信履歴を残すか否かを設定する着信履歴設定部と、不在着信履歴を記憶するメモリと、不在着信があった場合に前記メモリに着信履歴を記憶する着信履歴記憶制御部とを備え、
前記着信履歴制御部は、当該電話機に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出し、着信履歴設定部に設定された電話番号を参照して前記メモリに着信履歴を記憶することを特徴とする電話機。
【請求項2】
前記電話機に設定する電話番号は、グループ電話番号、個人電話番号、外線電話番号、内線電話番号のうちの少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の電話機。
【請求項3】
前記着信履歴設定部は、当該電話機に設定された電話番号ごとに着信履歴を保存する保存期間を設定できるように構成され、前記着信履歴制御部は、当該電話機に不在時着信があった場合に着信電話番号を検出して着信履歴設定部に設定された電話番号を参照して前記メモリに着信履歴を記憶するとともに、前記着信履歴設定部に設定された保存期間を参照し、保存期間を経過した不在着信履歴を削除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電話機。
【請求項4】
前記電話機はIP電話機であることを特徴とする請求項1に記載の電話機。
【請求項5】
請求項4に記載のIP電話機を有するIP電話システムにおいて、当該IP電話機への着信は、呼制御サーバを介して接続されることを特徴とするIP電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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