説明

複数モードの多重化反応消去方法

プライマーTmおよびアンプリコンTmの差異を利用する多重化PCR反応をバランス化させる方法を提供する。この方法は、コンピュータプロセスにより調節することができる。その様な方法において有用な製品およびその様な方法において有用なプライマーおよびプローブを含有する組成物もまた、提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
核酸増幅方法およびその方法を行うための組成物およびプロセスを提供する。
メッセンジャーRNA(mRNA)種の発現レベルを、多数の方法により定量することができる。伝統的な方法には、ノザンブロット解析が含まれる。転写物の定量を容易にする優れた核酸検出方法が開発された。これらの方法には、例えば周知の定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)法等の多数の核酸増幅反応の一つによる、mRNA種の増幅が関与する。有用なPCR法の事例は、参考文献としてその全体を本明細書中に援用する米国特許出願No. 10/090,326(US 10/090,326、US特許公開No. 20030017482)中に記載される。所定のmRNAの発現レベルを調べるためのその他の核酸増幅方法には、等温性増幅アッセイまたは検出アッセイおよびアレイ技術が含まれる。
【0002】
典型的なPCR反応には、複数の増幅工程、あるいは標的核酸種を選択的に増幅するサイクルが含まれる。mRNAの検出が必要であるため、PCR反応は、逆転写工程と組み合わせられる(逆転写PCR、またはRT-PCR)。典型的なPCR反応には、3工程:標的核酸が変性される変性工程;1組のPCRプライマー(フォワードプライマーおよび逆向きプライマー)を相補的DNA鎖にアニーリングさせるアニーリング工程;および熱安定性DNAポリメラーゼがプライマーを伸長する伸長工程;が含まれる。この工程を複数回繰り返すことにより、DNAフラグメントが増幅されて、標的DNA配列に対応するアンプリコンを生成する。典型的なPCR反応には、30またはそれ以上のサイクル数の変性、アニーリングおよび伸長が含まれる。多くの事例において、アニーリング工程および伸長工程を、同一温度にて同時に行うことができ、その場合、サイクル条件は2工程だけを含む。変性、アニーリングおよび伸長段階の長さは、どのような有効な時間の長さであってもよい。逆転写酵素PCR、ならびにサンプル中のRNA標的レベルを定量するための その他の核酸増幅方法には、典型的には、RNA標的を増幅可能なcDNA標的に変換するための逆転写酵素反応が含まれる。
【0003】
サンプル中のいずれかの所定の標的核酸の相対的存在度(relative prevalence)は、一般的には、増幅反応におけるアンプリコン生成物の蓄積速度に比例する。所定のアンプリコンの蓄積速度は、反応物中の標的特異的アンプリコンの閾値レベルに到達するためにかかる時間、あるいは、PCR等のサイクリング方法の場合には、閾値レベルに到達するまでにかかる増幅サイクル数(Ct)、を意味する。標的特異的アンプリコンの蓄積は、当該技術分野において公知のいずれの方法によって測定してもよいが、しかし一般的には、標的蛍光色素の蓄積、または場合によっては枯渇、により検出される。ユビキタスTaqManアッセイ(蛍光5'ヌクレアーゼアッセイ)ならびにモレキュラービーコンおよびスコーピオン技術を使用して、標的特異的アンプリコンの蓄積を検出することができる。
【0004】
限定的ではないが、典型的な核酸増幅方法の事例として、蛍光5'ヌクレアーゼアッセイを単一の標的核酸種に対して行うことができるが、しかしながらより典型的には多重化される。すなわち、2またはそれ以上の標的DNAまたはmRNA配列(種)(例えば、標的mRNA種および内在性対照)を単一チューブ内で増幅させる。多重化方法において、2またはそれ以上の増幅反応のバランスを取ることに注意を払わなければならない。他の標的配列と比較した場合の1つの標的配列の存在度(Prevalence)は、典型的には、2またはそれ以上のアンプリコンの相対的蓄積に影響を及ぼし、単一反応チューブ中に存在する資源(ヌクレオチドやポリメラーゼ酵素を含む資源など)が限定的である結果として、多重化反応の結果が歪曲される。
【0005】
US 10/090,326中に記載されるように、多重化PCRアッセイは、アンプリコンの生成を時間シフトすることにより、またはプライマーTmを操作することにより、最適化しあるいはバランス化することができる。プライマー濃度を操作して多重化PCR反応をバランス化することは、周知である。多くの事例において有効であるが、多重化増幅反応をバランス化する際に有用な追加ツールが歓迎される。
【0006】
発明の概要
多重化核酸増幅方法が提供される。この方法は、アンプリコンTmの差異を利用して多重化増幅をバランス化することを含む。より具体的には、この方法は、反応混合物中において第一の核酸配列を増幅して第一のアンプリコンを生成し、そして第二の核酸を増幅して第二のアンプリコンを生成することを含み、この場合に第一のアンプリコンは第一のTmを有し、そして第二のアンプリコンは第一のTmとは異なる第二のTmを有する。反応には、異なるアンプリコン変性条件を有する2種類のプロトコルを含む2段階が含まれ、それにより第一のアンプリコンと第二のアンプリコンとの相対的蓄積が調節される。一態様において、この方法は、反応混合物中の第一および第二のアンプリコンの蓄積をモニタリングすることを含む。さらなる態様において、例えば蛍光5'エンドヌクレアーゼ(TAQMAN)アッセイなど(これらには限定されない)において、第一の蛍光指示薬が、反応混合物中に第一のアンプリコンの蓄積の結果として蓄積され、そして第二の異なる蛍光指示薬が、反応混合物中に第二のアンプリコンの蓄積の結果として蓄積される。さらなる態様において、反応混合物は、異なるTmを有する第一のプライマーセットおよび第二のプライマーセットを含み、ここで、反応には、異なるプライマーアニーリング条件を有する2段階が含まれ、それにより第一のプライマーセットおよび第二のプライマーセットにより生成されるアンプリコンの相対的蓄積が、2種の段階の間で異なる。
【0007】
別の態様において、増幅を、サイクル反応プロトコルを以下の工程:ある段階において、1またはそれ以上のリポーターをモニタリングする工程〔1またはそれ以上のリポーターの蓄積が、反応混合物中の1またはそれ以上のアンプリコンの蓄積に対応する〕;そして1またはそれ以上のリポーターの蓄積が閾値レベルを越える時に次の反応段階に進行させる工程;にしたがってコンピュータ装置により調節する、サーマルサイクラー中で行う。様々なさらなる態様において、反応が次の段階に進んだ場合に、反応プロトコルを変化させることができる;1またはそれ以上の追加のサイクルを、閾値を越えた後、次の段階に進む前に行うことができる;モニターしたリポーターのどれも閾値を越えない場合、反応を終了させることができる;次の段階に進んだ後、固定数のサイクルで反応を終了させることができる;および/または異なるリポーターの閾値越えが、同一の段階で起こるか、または別の段階で起こってもよい。
【0008】
さらなる態様において、患者のリンパ節中に乳癌細胞が存在することの指標であるマーカー の発現を同定する多重化方法が、実質的に本明細書中に記載したように、提供される。一態様において、方法には、TACSTD1、PIPおよび内在性対照mRNAのリンパ節中での発現レベルが定量される、多重化QRT-PCR反応が含まれる。1またはそれ以上のプライマーまたはプローブは、以下の表B、CおよびIに列挙され、それらの誘導体または類似体を多重化方法において使用することができる。
【0009】
発明の詳細な説明
変性工程およびアニーリング工程が関与するPCR反応やRT-PCR反応などの多重化核酸増幅反応をバランス化する際に有用な方法および組成物を提供する。この方法は、アンプリコンやプライマーの異なるTmを利用して、より好ましい増幅を消去し(quench)、それにより、それほど好ましくない反応を、リンパ節中の微小転移を含む乳癌細胞および肺癌細胞を同定する反応資源と競合することなく、またはわずかな競合を伴って進行させることができる。初期の転移検出は、典型的には、生存している患者に関連する。非常に小さな転移は、リンパ節バイオプシーの組織学的研究においてはしばしば検出されず、患者の生存の可能性の低下を引き起こす偽陰性の結果を生じる。本明細書中において記載する核酸検出アッセイは、ほとんどの事例における組織学的研究における識別性(わずかな優秀な組織学者はリンパ節切片中の微小転移を同定することができる)よりも、かなり高い識別力があり、そして最小限しかトレーニングを積んでいないテクニシャンの手にも、強固でありそして反復可能である。本明細書中に記載された方法および組成物は、必然的に特異的mRNAマーカーの発現を含むものが提示されるが、特異的マーカーおよびその他の当該技術分野において既知のマーカーの組合せを含む方法および組成物を排除するものとみなされるべきではないことは、理解されるべきである。この目的のため、限定的ではない一態様において、乳癌において発現される多数の分子マーカーが同定される。これらのマーカーは、特定の癌型を生じ、そして典型的にはリンパ組織中で少なくとも同一レベルまでは発現されていない、組織特異的なマーカーである。前哨リンパ節組織における1またはそれ以上のこれらのマーカーの発現の存在および/または上昇は、癌の診断と強力に相関するリンパ系組織中の転移細胞の指標である。
【0010】
本明細書中で使用される場合、用語“発現”および“発現された”は、細胞による遺伝子特異的なmRNAの生成を意味する。本明細書の開示の文脈において、“マーカー”は、リンパ節バイオプシーにおいて異常に発現される遺伝子である。一態様において、本明細書中で記載されるマーカーは、具体的な腫瘍供給源の細胞において、リンパ系細胞中での発現と比較して顕著に高いレベルで発現される、mRNA種である。
【0011】
本明細書中に記載される改善PCR法ならびにUS 10/090,326に記載される改善PCR法は、リンパ節組織における癌細胞の迅速な検出を可能にする。これらの迅速な方法は、手術中に使用することができ、そしてまた、まれな核酸種を検出するのにも有用であり、より優勢な対照核酸を同時に検出する多重化PCR反応においてさえ有用である。
【0012】
上述したように、典型的なPCR反応には、標的核酸種を選択的に増幅する、複数増幅工程、またはサイクルが含まれる。転写物の検出が必要であるため、PCR反応を、逆転写工程と組み合わせる。典型的なPCR反応は3つの工程:標的核酸を変性する変性工程;PCRプライマーセット(フォワードおよびリバースプライマー)が相補DNA鎖にアニーリングするアニーリング工程;および熱安定性DNAポリメラーゼがプライマーを伸長する伸長工程を含む。この工程を複数回繰り返すことによって、DNA断片が増幅されて、標的DNA配列に対応するアンプリコンが生じる。典型的なPCR反応には、変性、アニーリングおよび伸長の30以上のサイクルが含まれる。多くの場合、アニーリングおよび伸長工程は同時に、同一温度で、行うことが可能であり、その場合、サイクルは二工程しか含有しない。
【0013】
変性、アニーリングおよび伸長段階の長さは、時間的にいかなる所望の長さであることも可能である。しかし、PCR増幅反応を手術中診断に適した時間に短縮する試みの中で、これらの工程の長さは、分の範囲でなく、秒の範囲であることが可能である。変性工程は、1秒間以下の時間で行うことが可能である。アニーリング工程および伸長工程は、各々10秒間未満であってもよく、そして同一温度で行う場合、アニーリング/伸長工程の組み合わせは、10秒間未満であることが可能である。PCR反応をRayleigh-Benard対流セル中で行うことなど、最近開発された増幅技術を使用することによっても、これらの制限時間を越えて、PCR反応時間を劇的に短縮することができる(Krishnan, My et al., "PCR in a Rayleigh-Benard convection cell." Science 298:793 (2002)、およびBraun, D. et al., "Exponential DNA Replication by Laminar Convection," Physical Review Letters, 91:158103を参照)。
【0014】
US 10/090,326に記載するように、アンプリコン産生の実質的な悪化を伴わずに、各サイクルをかなり短くすることが可能である。高濃度のプライマーを使用することは、PCRサイクル時間を短縮する際に役に立つ。プライマーの最適濃度はアッセイ間で幾分多様であろうが、高濃度は、典型的には、約400 nMより高く、そしてしばしば約800 nMより高い濃度である。高感度逆転写酵素(以下に記載)の使用、および/または最初の標的PCRテンプレートを生じる、高濃度の逆転写酵素プライマーの使用によって、RT-PCRアッセイの感度を増進することが可能である。既定のPCR反応いずれかの特異性は、プライマーセットの同一性に非常に依存するが、排他的に依存するわけではない。プライマーセットは、標的DNA配列にアニーリングして、標的配列の増幅を可能にし、それによって標的配列特異的アンプリコンを生じる、フォワードおよびリバースオリゴヌクレオチドプライマー対である。PCRプライマーセットは、標的配列の内側の2つのプライマー、または標的配列の内側の1つのプライマーおよび“ライゲーション-アンカーPCR”として知られる技術を使用してDNAまたはcDNA標的に対してライゲーションされる標的配列に対して特異的な1つのプライマーを含んでもよい(Troutt, A.B., et al. (1992), "Ligation-anchored PCR: A Simple Amplification Technique with Single-sided Specificity," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9823-9825)。
【0015】
本明細書において、明記するオリゴヌクレオチドの「誘導体」は、明記するオリゴヌクレオチドと同一の標的配列に結合し、そして明記するオリゴヌクレオチドと同一の標的配列を増幅して、明記するオリゴヌクレオチドおよび誘導体間の相違以外は、明記するオリゴヌクレオチドと本質的に同一のアンプリコンを生じる、オリゴヌクレオチドである。誘導体は、明記する配列と同一の目的でのその使用において、明記する配列の特性を実質的に保持する限り、明記する配列の残基いずれかの挿入、欠失および/または置換によって、明記するオリゴヌクレオチドと異なる可能性がある。“類似体”により、1またはそれ以上の修飾塩基および/または修飾バックボーン(例えば、限定的なものではないが、ホスホロチオエート核酸およびペプチド核酸を含むもの)を有するRNAまたはDNA同等物を意味する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、遺伝子発現解析の文脈において、反応条件下においてあるプローブがサンプル中のある遺伝子の転写物またはそれに対して相補的な配列に対して特異的にハイブリダイズすることができ、そしてその他の転写物には特異的にハイブリダイズすることができない場合、そのプローブは、その遺伝子または転写物に対して“特異的” である。したがって、診断アッセイにおいて、プローブまたはプライマーが、試料から抽出されたmRNA中の特異的な転写物または転写物の所望のファミリーに対して結合することができる場合(実際にはその他の転写物ではなくて(実質的に検出アッセイを妨害しない))、プローブまたはプライマーは、遺伝子に対して“特異的”である。PCRアッセイにおいて、プライマーが、実際にはサンプル中のその他の配列ではなく、ある遺伝子の配列を特異的に増幅する場合、そのプライマーはその遺伝子に対して特異的である。
【0017】
本明細書中で使用される場合、特異的mRNA種を検出するための“プライマーまたはプローブ”は、特異的mRNA種を検出しおよび/または定量するために使用することができるいずれのプライマー、プライマーセット、および/またはプローブであってもよい。“mRNA種”は、単一遺伝子の一本鎖mRNA発現産物に対応する一本鎖mRNA種であっても、あるいは単一の共通プライマーおよび/またはプローブ組合せにより検出される複数のmRNAであってもよい。
【0018】
本明細書において、逆転写およびPCRなどのいずれかのアッセイまたは反応についての「試薬」は、酵素(類)、ヌクレオチドまたはその類似体、プライマーおよびプライマーセット、プローブ、抗体またはその他の結合性試薬、検出可能な標識またはタグ、緩衝剤、塩および補助因子を含む(これらには限定されない)、反応混合物に添加する化合物または組成物いずれかである。本明細書において、別に示さない限り、所定のアッセイまたは反応についての「反応混合物」または「反応ミックス」には、こうした化合物または組成物が明白に示されない場合であっても、アッセイまたは反応を行うのに有用な、化合物および/または組成物の組合せが含まれる。多数の一般的なアッセイまたは反応(例えば酵素反応)のための試薬は、当該技術分野において既知であり、そして典型的には、アッセイまたは反応キットを販売する際に提供されおよび/または示唆される。
【0019】
US 10/090,326において記載されるように、多重化PCRアッセイは、プライマー濃度を操作することによってではなく、アンプリコンの産生を時間的にシフトすることによって、最適化するか、またはバランスをとることが可能である。これは、各段階に関して、異なるアニーリングおよび/または伸長温度で各々、異なるTmを有するプライマーセットを2つ用いて、それにより、二段階PCRアッセイを実行して、他方より一方のアンプリコンの産生を有利にすることが可能であるようにする、ことによって達成可能である。この時間および温度シフト法は、プライマー濃度操作を用いて反応のバランスをとる場合に直面する困難を伴わずに、多重化反応のバランスを最適にとるのを可能にする。この技術は、対照cDNAと共に、まれなcDNAを増幅するのが所望される、多重化反応において、特に有用である。
【0020】
RNA分子集団(例えば、そして限定的なものではないが、総RNAまたはmRNA)において、低存在量のRNA種を迅速にそして正確に検出するための定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応には:a)RNA試料を逆転写酵素および例えば高濃度の標的配列特異的逆転写酵素プライマーおよび/またはランダムオリゴヌクレオチドを有する逆転写酵素プライマー(ただしこれらには限定されない)と、cDNAを生成するのに適した条件下でインキュベーションして;b)続いて、例えば、該cDNAに特異的な高濃度のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーセット、および熱安定性DNAポリメラーゼを含む、逆転写反応のための適切なPCR試薬を、逆転写酵素反応に添加して、そしてc)所望のサイクル数で、そして適切な条件下、PCR反応をサイクリングして、cDNAに特異的なPCR産物(「アンプリコン」)を生成する工程が含まれる。逆転写酵素反応およびPCR反応を時間的に分離することによって、そして転写酵素最適化プライマーおよびPCR最適化プライマーを用いることによって、優れた特異性が得られる。反応は、単一試験管(反応を行う試験管、コンテナ、バイアル、細胞等はすべて、本明細書において、時々、総称的に「反応容器」と呼ぶ可能性がある)で行って、二試験管反応で典型的に見られる汚染の供給源を除去することができる。これらの反応条件は、非常に迅速なQRT-PCR反応を可能にし、これは典型的には、逆転写酵素反応の開始時から40サイクルのPCR反応の終了時まで、およそ20分間程度である。
【0021】
反応c)は、PCR反応が進行するため、優れた、または最適でさえある条件を生じるのに十分な試薬を、逆転写酵素(RT)反応に添加することによって、逆転写酵素反応と同一の試験管中で、実行可能である。単一試験管に、逆転写酵素反応の実行前に:1)逆転写酵素反応混合物、および2)逆転写酵素反応が完了した後、cDNA混合物と混合されるはずのPCR反応混合物を装填することが可能である。逆転写酵素反応混合物およびPCR反応混合物は、逆転写酵素反応のインキュベーション温度より高いが、PCR反応の変性温度より低い温度で融解する組成物の固形、または半固形(無定形、ガラス状物質およびワックス状物質を含む)バリアによって、物理的に分離することが可能である。バリア組成物は、疎水性であることが可能であり、そして液体型では、RTおよびPCR反応混合物と第二の相を形成する。こうしたバリア組成物の一例は、カリフォルニア州フォスターシティーのApplied Biosystemsから商業的に入手可能なAMPLIWAX PCR GEM製品などの、PCR反応に一般的に用いられるワックスビーズである。
【0022】
あるいは、逆転写酵素反応およびPCR反応の分離は、PCRプライマーセットおよび熱安定性DNAポリメラーゼを含むPCR試薬を、逆転写酵素反応が完了した後に添加することによって達成可能である。好ましくは、ロボット手段または流体手段によってPCR試薬を機械的に添加して、試料汚染の可能性をより低くし、そして人為的誤りを排除する。
【0023】
多重化方法を含むQRT-PCRプロセスの産物を、例えば、本明細書中で記載される内在性対照または内部陽性対照など(これらには限定されない)の既定のレポーター遺伝子と比較する場合、固定数のPCRサイクル後に比較して、RNA種の相対量を決定することが可能である。QRT-PCRプロセス産物の相対量を比較する1つの方法は、ゲル電気泳動により、例えばゲル上に試料を泳動して、そしてサザンブロッティングおよびそれに続く標識プローブでの検出、エチジウムブロマイドでの染色、並びにアンプリコン中の蛍光または放射性タグの取り込みを含む(しかしこれらには限定されない)、いくつかの既知の方法の1つによって、これらの試料を検出することによる。
【0024】
しかし、定量的PCR反応の進行は、典型的には、各PCRプライマーセットのアンプリコン産生の相対率を決定することによって監視する。アンプリコン産生の監視は、蛍光プライマー、蛍光生成プローブおよび二本鎖DNAに結合する蛍光色素を含む(しかしこれらには限定されない)、いくつかの方法によって、達成可能である。
【0025】
アンプリコンの蓄積を測定する一般的な方法は、蛍光5'ヌクレアーゼアッセイである。この方法は、特定の熱安定性DNAポリメラーゼ(TaqまたはTfl DNAポリメラーゼなど)の5'ヌクレアーゼ活性を活用して、PCRプロセス中、オリゴマープローブを切断する。伸長条件下で、増幅した標的配列にアニーリングするオリゴマーを選択する。該プローブは、典型的には、5'端に蛍光レポーターを有し、そして3'端にレポーターの蛍光消光剤を有する。オリゴマーが無傷である限り、レポーターからの蛍光シグナルは消光される。しかし、オリゴマーが伸長プロセス中に消化されると、蛍光レポーターは、もはや消光剤に近接していない。既定のアンプリコンの遊離蛍光レポーターの相対的な蓄積を、対照試料の同一アンプリコンの蓄積に、および/または、β-アクチンまたは18S rRNAなどの内在性対照遺伝子のアンプリコンの蓄積に比較して、RNA集団における既定のRNAの既定のcDNA産物の相対的存在量を決定することができる。蛍光5'ヌクレアーゼアッセイの産物および試薬は、例えばApplied Biosystemsから、容易に、商業的に入手可能である。
【0026】
蛍光5'ヌクレアーゼアッセイの多重化モニタリングのため、検出されるそれぞれのアンプリコン種に対応するオリゴマーが提供される。それぞれのアンプリコン種用のオリゴマープローブは、その他のそれぞれのアンプリコン種に対する(1または複数の)オリゴマープローブとは異なる放射波長を有する蛍光リポーターを有する。それぞれの消光されなかった蛍光リポーターの蓄積をモニタリングして、それぞれのアンプリコンに対応する標的配列の相対量を測定することができる。
【0027】
蛍光5'ヌクレアーゼアッセイおよび他のQPCR/QRT-PCR法にしたがって、PCRおよびQRT-PCRにおけるアンプリコン蓄積を監視するための装置およびソフトウェアもまた、容易に入手可能であり、これらには、カリフォルニア州サニーベールのCepheidから商業的に入手可能なSmart Cycler(登録商標)、およびApplied Biosystemsから商業的に入手可能なABI Prism 7700または7900HT製品(TaqMan)が含まれる。Cepheidから商業的に入手可能なカートリッジに基づく試料調製系(GeneXpert(登録商標))は、サーマルサイクラーおよび蛍光検出装置を組み合わせて、自動的に、組織試料から特定の核酸を抽出し、そして該核酸に対してQPCRまたはQRT-PCRを行うことが可能な、流体回路およびプロセシング要素を備えた、Smart Cycler(登録商標)製品の機能を有する。系は、使い捨てカートリッジを用い、カートリッジは、非常に多様な試薬を含むように形成し、そしてこうした試薬をあらかじめカートリッジに装填することが可能である。こうした系は、組織を破壊して、そして試料から総RNAまたはmRNAを抽出するよう形成することが可能である。逆転写酵素反応構成要素をRNAに自動的に添加することが可能であり、そして逆転写酵素反応が完了した際、QPCR反応構成要素を自動的に添加することが可能である。
【0028】
さらに、PCR反応は、反応からの特定の蛍光色素の産生(または喪失)を監視することが可能である。蛍光色素レベルが所望のレベルに達したら(または所望のレベルに低下したら)、自動化した系は、PCR条件を自動的に改変するであろう。1つの例において、これは、上述の多重化態様であって、第二のより高いTmのプライマーセットによって増幅されるより豊富でない種よりも低い温度で、第一のより低いTmのプライマーセットによってより豊富な(対照)標的種が増幅される場合に、特に有用である。PCR増幅の第一の段階では、アニーリング温度は、第一のプライマーセットの有効Tmよりも低い。その後、アニーリング温度は、第一のプライマーセットによる第一のアンプリコンの精製が検出される時に、第一のプライマーセットの有効Tmよりも高くまで自動的に上昇させる。GeneXpert(登録商標)システムなどのようにカートリッジから複数の試薬を自動的に分配するシステムにおいては、第一のPCR反応を第一のTmで行うことができ、そして第一のPCR反応が閾値レベルを越えるまで進行したら、異なるTmを有する第二のプライマーを添加し、連続的な多重化反応を行うことができる。
【0029】
上述の反応において、特定の逆転写酵素反応構成要素およびPCR反応構成要素の量は、典型的には、いくつかのサーマルサイクラーのより速い傾斜時間を利用するため、非定型性である。具体的には、プライマー濃度は非常に高い。逆転写酵素反応の典型的な遺伝子特異的プライマー濃度は、約20 nM未満である。迅速な逆転写酵素反応を1〜2分間程度で達成するため、逆転写酵素プライマー濃度を20 nMより高く、好ましくは少なくとも約50 nM、そして典型的には約100 nMに上昇させた。標準的PCRプライマー濃度は、100 nM〜300 nMの範囲である。標準的PCR反応で、より高い濃度を用いて、Tmのばらつきを補填することが可能である。しかし、言及されるプライマー濃度は、Tm補填が必要でない状況用のものである。Tm補填が必要であるか、または所望である場合に、プライマーの比例的により高い濃度を実験的に決定して、そして使用することが可能である。迅速PCR反応を達成するため、PCRプライマー濃度は、典型的には200 nMより高く、好ましくは約500 nMより高く、そして典型的には約800 nMである。典型的には、PCRプライマーに対する逆転写酵素プライマーの比は、約1対8またはそれ以上である。プライマー濃度を増加させると、40サイクルのPCR実験を20分間未満で行うことが可能になった。
【0030】
少量のRNAが存在するか、または標的RNAが低存在量RNAであるかいずれかの、特定の状況では、高感度逆転写酵素が好ましい可能性がある。用語「高感度逆転写酵素」によって、PCRテンプレートとして使用する低コピー数転写物から、適切なPCRテンプレートを産生可能な逆転写酵素を意味する。高感度逆転写酵素の感度は、酵素の物理的性質に、または増進した感度を生じる、逆転写酵素反応混合物の特定の反応条件に、由来する可能性がある。高感度逆転写酵素の1つの例は、カリフォルニア州バレンシアのQiagen, Inc.から商業的に入手可能なSensiScript RT逆転写酵素である。この逆転写酵素は、<50 ngのRNA試料からのcDNAの産生に関して最適化されているが、低コピー数転写物からPCRテンプレートを産生する能力もまた有する。実際のところ、本明細書に記載するアッセイにおいて、約400 ng RNAまでの試料に関して、そしてそれを越える試料に関してさえ、適切な結果を得た。低コピー数転写物を逆転写する、実質的に同様の能力を有する他の高感度逆転写酵素は、本明細書に記載する目的のためには同等の高感度逆転写酵素であろう。上記にもかかわらず、高感度逆転写酵素が少量のRNAからcDNAを産生する能力は、酵素または酵素反応系が、低コピー数配列からPCRテンプレートを産生する能力に派生するものである。
【0031】
上に論じるように、本明細書に記載する方法はまた、多重化QRT-PCRプロセスでも使用可能である。最も広い意味で、多重化PCRプロセスは、同一反応容器における2以上のアンプリコンの産生を伴う。典型的には、多重化PCRアッセイは、2つの異なるmRNA種に対して特異的なアンプリコンを生成して、RNAサンプル中の2種のmRNA種の相対量を定量する。それにもかかわらず、多重化アッセイは、2種の異なるDNA標的を増幅することができ、そして好ましくは、多重化反応において、1つのプライマーセットは、別のプライマーセットにより生成されたアンプリコン中の標的配列を増幅しない-すなわち、2種の増幅反応は、“ネスト化(nested)”されていない。多重化アンプリコンは、上述した方法により解析可能である。
【0032】
伝統的な多重化QPCR法およびQRT-PCR法において、同様のアニーリングおよび伸長動力学、並びに同様のサイズのアンプリコンを有するPCRプライマーセットを選択するのが望ましい。適切なPCRプライマーセットの設計および選択は、当業者に公知のプロセスである。最適PCRプライマーセット、およびそのそれぞれのモル比を同定して、バランスがとれた多重化反応を達成するプロセスもまた知られる。「バランスがとれた」によって、特定のアンプリコン(類)が、dNTP類または酵素などの供給源に関して、他のアンプリコン(類)との競合に勝たないことを意味する。例えば、RT-PCRにおいて、より多量なRNA種に対するPCRプライマーの量を限定することにより、実験においてより低量の種を検出することが可能になる。すべてのPCRプライマーセットのTm(融点)を等しくすることもまた、奨励される。例えば、ABI PRISM 7700配列検出系User Bulletin #5、“Multiplex PCR with TaqMan VIC Probes”、Applied Biosystems(1998/2001)を参照されたい。
【0033】
上記にもかかわらず、非常に低コピー数である転写物に関しては、より豊富な対照種のPCRプライマーセットを制限することによってさえも、正確な多重化PCR実験を設計することは困難である。この問題の1つの解決法は、より豊富な種のPCR反応用とは別個の試験管で、低存在量RNAのPCR反応を行うことである。しかしこの戦略は、多重化PCR実験を行う利点を利用しない。二試験管プロセスは、コスト、実験の誤りの余地をより多くすること、および試料汚染の機会が増加することを含む、いくつかの欠点を有する。
【0034】
1以上のより高いコピー数の種と共に、低コピー数核酸種を検出可能な、QRT-PCRおよびQPCRを含む、多重化PCRプロセスを行うための方法が、US 10/090,326中に記載された。低コピー数および高コピー数核酸種間の相違は相対的であるが、本明細書において、少なくとも約30倍、しかしより典型的には、少なくとも約100倍の低(より低い)コピー数種および高(より高い)コピー数種の出現率の相違を指す。本明細書の目的のため、増幅される2つの核酸種の相対出現率(prevalence)は、既定の核酸試料における他の核酸種との関係で、2つの核酸種の相対出現率より突出しており、これは、核酸試料における他の核酸種が、PCR供給源に関して、増幅される種と、直接には競合しないためである。
【0035】
本明細書において、既定の核酸試料における、いかなる既定の核酸種の出現率も、試験前には未知である。したがって、核酸試料における既定の核酸種の「予期される」コピー数をしばしば本明細書で用い、そしてこれは核酸試料におけるその種の出現率に関する従来のデータに基づく。核酸種のいかなる既定の対に関しても、試料中の2種の相対出現率の先の決定に基づいて、各種の出現率が、ある予期された範囲内に属すると予期されるであろう。これらの範囲を決定することによって、各種の標的配列の予期される数の倍相違が決定されるであろう。
【0036】
多重化法は、2(またはそれより多い)段階のPCR増幅を行って、それぞれの増幅段階中、第一のプライマーセットによる第一のアンプリコン産生および第二のプライマーセットによる第二のアンプリコン産生の相対率の変調を可能にすることを伴う。この方法によって、より低い存在量の核酸種に向けられるアンプリコンを生じるPCR増幅は、より高い存在量の核酸種に向けられる、アンプリコンを生じるPCR増幅と、効果的に「バランスをとる」。反応を2以上の時間的段階に分離することは、第一の増幅段階で産生されるべきでない、いかなるアンプリコンのPCRプライマーセットも省くことによって、達成可能である。これは、上述のGeneXpert(登録商標)プロトタイプ系などの自動化プロセスの使用を通じて、最適に達成される。2以上の別個の増幅段階を用いて、各プライマーセットの相対濃度の調整と共に、または該調整を排除して、多重化アッセイを調整し、そしてバランスをとることが可能である。
【0037】
PCR増幅プロセスを2以上の段階に時間的に分離する第二の方法は、それぞれのTmにばらつきを持つPCRプライマー対を選択することである。1つの実施例において、より低いコピー数の核酸種のプライマーは、より高い存在量の種のプライマーのTm(Tm2)より高いTm(Tm1)を有するであろう。このプロセスでは、PCR増幅の第一の段階は、あらかじめ決定したサイクル数で、より高い存在量の種の増幅が実質的にまったくないように、Tm2よりも十分に高い温度で行う。第一の段階の増幅後、PCR反応のアニーリングおよび伸長工程を、より低い温度、典型的にはおよそTm2で行って、より低い存在量のアンプリマー(amplimer)およびより高い存在量のアンプリマー両方が増幅されるようにする。本明細書において使用する場合、そして別に言及しない限り、Tmは、既定の反応混合物中の既定のプライマーいずれかのTmであり、限定的ではなく、反応混合物におけるプライマーの核酸配列およびプライマー濃度を含む要因に応じる、「有効Tm」を指す。
【0038】
PCR増幅が動的なプロセスであることに注目すべきである。多重化PCR反応において、それぞれのPCR反応を変調する温度を用いる場合、より高い温度のアニーリング段階は、反応が、より高いTmプライマーセットによるアンプリコン産生に有利に働く限り、典型的には、より低いTmのすぐ下から、より高いTmのすぐ上までの範囲の、いかなる温度で行うことも可能である。同様に、より低い温度の反応のアニーリングは、典型的には、低温プライマーセットのTm未満のいかなる温度であってもよい。
【0039】
上に提供する例において、より高い温度段階では、低存在量RNAのアンプリコンは、より高い存在量のRNAのアンプリコンの速度よりも速い速度で(そして好ましくは、第二のアンプリコン産生が実質的に排除されるまで)、増幅し、すべてのアンプリコンの増幅が実質的にバランスがとれた方式で進行するのが所望される第二の増幅段階の前に、より高い存在量のRNAの増幅が、より低い存在量のRNAのアンプリコンの増幅に干渉しないよう、より低い存在量のRNAのアンプリコンが十分に豊富であるようにする。増幅の第一の段階において、低存在量核酸のアンプリコンを優先的に増幅する場合、アニーリングおよび伸長工程をTm1より上で行って、効率よりも特異性を得ることが可能である(増幅の第二の段階中は、比較的多数の低存在量の標的核酸のアンプリコンがあるため、選択性はもはや重要な問題ではなく、そしてアンプリコン産生の効率が好ましい)。したがって、多くの例では好ましいが、温度変動は、別のものを越える1つの増幅反応の完全な停止を必ずしも生じない可能性があることに注目すべきである。
【0040】
上述の増幅反応の別のバリエーションにおいて、第一のTmを持つ第一のプライマーセットは、より豊富なテンプレート配列(例えば対照テンプレート配列)を標的とすることが可能であり、そしてより高いTmを持つ第二のプライマーセットは、より豊富でないテンプレート配列を標的とすることが可能である。この場合、より豊富なテンプレートおよびより豊富でないテンプレートは、どちらも、第一の段階において、第一のプライマーセットの(より低い)Tmよりも低い温度で、増幅可能である。より豊富なテンプレートに対応するアンプリコンが閾値量に達したら、反応のアニーリング温度および/または伸長温度を第一のプライマーセットのTmよりも高いが、第二のプライマーセットのより高いTmよりは低い温度まで上昇させて、より豊富なテンプレートの増幅を、効率的に停止する。
【0041】
3以上の異なるTm(例えば、Tm1>Tm2>Tm3)を有するPCRプライマーセットの3以上のセットの選択を用いて、Tmの相違が、所望のサイクル数に関して、所望の配列の優先的な増幅を可能にして、所望でない配列を実質的に排除するのに十分に大きい限り、段階的方式で、多様な存在量の配列を増幅することが可能である。そのプロセスにおいて、第一の段階で、あらかじめ決定したサイクル数、最低存在量の配列を増幅する。次に、第二の段階で、あらかじめ決定したサイクル数、最低存在量の配列およびより少ない存在量の配列を増幅する。最後に、第三の段階で、すべての配列を増幅する。上述の二段階反応のように、各段階の最低温度は、多重化反応の各単一増幅反応の相対的効率に応じて、多様である可能性がある。2以上のアンプリマーが、実質的に同一のTmを有して、増幅プロセスのいかなる段階でも、同様の存在量の1より多い種の増幅を可能にする可能性があることを認識すべきである。二段階反応のように、三段階反応もまた、最低アニーリング温度での最大存在量の核酸種の増幅から、最高アニーリング温度での最低存在量の種の増幅まで、段階的に進行可能である。
【0042】
さらなる態様において、所定の多重化増幅反応における異なるアンプリコン間のアンプリコン融点の差異を利用することにより、1回の反応で3種またはそれ以上の標的配列の増幅が可能になる。アンプリコンのTmの差異の“利用”により、その他のアンプリコンを選択して一つのアンプリコンの生成を一時的に消去することを含む、すべての多重化増幅反応のバランス化された増幅に有利である反応条件を選択することを意味する。この方法は、同一の反応容器中での3またはそれ以上の反応を含む均質的な多重化反応に関する。均質的な蛍光リアルタイムPCR反応は、特に期待される。限定的ではない例として、特定の反応において、2つの標的配列の相対存在量、または2つの反応のより高い効率性により、第三のより少ない存在量のまたはより効率の低い反応を、完全に越える(competed out)ことができる。さらに、定量的PCR反応において、定量すべき標的遺伝子と比較するためのノーマライザーとして機能する特定の型の遺伝子配列を含むことが好ましい。値は、標的のCt値のΔとして、そしてノーマライザー配列のCtのΔとして、一般的に決定される。2種の異なる標的遺伝子の内の少なくとも一つが診断を行うために検出されなければならず、そして相対的定量を可能にするために正常化用配列が含まれている反応のため、2種の標的配列のそれぞれを定量する試験の能力を無にする条件が生じる可能性がある。第一の限定的ではない例において、ノーマライザー遺伝子は、標的の予想された濃度範囲のいずれかで標的遺伝子配列が大幅に過剰であり、それにより標的遺伝子反応の感度を低下させる。第二の限定的ではない例において、標的遺伝子は、ノーマライザー遺伝子よりもかなり高い濃度で存在している可能性があり、それによりノーマライザー遺伝子反応を上回る。その様な場合において、多重化反応と適切にバランス化されていなければ、ノーマライザー遺伝子についてCt値が何も生成されず、そして標的遺伝子を定量することができない。
【0043】
この態様は、二本鎖オリゴヌクレオチドの一本鎖DNAへの結合エネルギーを操作すること、または得られたアンプリコンの融点を操作することを同時に利用して、これらの例示的な条件の両方ともを、解決する。プライマーTmおよび/またはアンプリコンTmの差異を使用することにより、3またはそれ以上の標的配列を検出することが可能になる。
【0044】
三重化反応の限定的ではない事例において、第一および第二の標的配列は、特異的な診断標的であり、そして第三の標的配列は、定量的標準化のためのハウスキーピング遺伝子(内在性対照)である。第一の遺伝子配列の濃度は、ゼロから第二の2つの反応を消去することができる非常に高い濃度の範囲であってもよい。ハウスキーピング遺伝子は常に、中程度の濃度または高濃度で存在し、そして第二の標的配列反応を消去することができる。従って、目標は、第一の遺伝子配列反応がその他の2つの反応を消去しないようにし、そして同時に、ハウスキーピング遺伝子が第二の反応を消去しないようにするアッセイを設計すること、である。この場合において、Ct値は、いずれかの標的配列の濃度に関わらず、常に、ハウスキーピング遺伝子について生成されなければならず、そして第二の標的配列についてのCt値は、ハウスキーピング遺伝子が高濃度で存在する場合であっても、生成されなければならない。標的遺伝子配列のいずれかが存在する場合はいつでも、Ct値を生成しなければならず、そしてΔCt値を決定しなければならず、それにより、標的遺伝子の定量が可能になる。第一の標的遺伝子配列およびハウスキーピング遺伝子配列のプライマーTmおよび/またはアンプリコンTmを、操作しそして使用することにより、このことを達成することができる。第一の反応プライマーセットTm = TmPl;第一の反応アンプリコンTm = TmAl;第二の反応プライマーセットTm = TmP2;第二の反応アンプリコンTm = TmA2;第三の反応プライマーセットTm = TmP3;そして第三の反応アンプリコン Tm = TmA3とした場合に、以下の2つの場合がある:
事例1:TmP1<<TmP2 = TmP3およびTmA1 = TmA2<TmA3
事例2:TmP1 = TmP2>TmP3およびTmA1>TmA2 = TmA3。
【0045】
これらの事例において、反応を、リアルタイムにてモニタリングする。事例1に関して、サーマルサイクリングのプロトコルにおいて、低温(アニーリング温度)を、すべての反応のTm以下の温度、すなわちTmP1以下に設定し、そして高温溶融をすべてのアンプリコンTmよりも高い温度、すなわちTmA3よりも高い温度に設定する。第一の遺伝子配列が、高存在量で存在する場合、比較的初期のCt値を検出することができる。その時点またはサイクル数において、サーマルサイクリングプロトコルの低温を、TmP1よりも高いが、しかしTmP2およびTmP3よりは低い温度まで上昇させて、それにより第一の標的反応を効果的に停止または消去させ、その他の2つの反応を進行させることを可能にする。第一の遺伝子配列が、高存在量では存在しない場合、Ct値は検出されず、そしてサーマルサイクリングプロトコルの低温は変化させない。ハウスキーピング遺伝子についてのCt値を検出するまで、サーマルサイクリングを単純に継続させる。反応におけるこの時点またはサイクル数にて、高温(溶融)を、TmA3以下の温度、しかしTmA1およびTmA2よりは高い温度まで低下させる。これらの反応条件下において、ハウスキーピング遺伝子アンプリコンはもはや、それぞれのサイクルで溶融されず、そしてハウスキーピング遺伝子反応が効率的に停止される。このことにより、低存在量の第二の標的遺伝子配列反応を、ハウスキーピング遺伝子反応により停止されること無く継続することができる。
【0046】
事例2について、サーマルサイクリングプロトコルの低温アニーリングを、プライマーセットTmP3のTmよりも低く設定し、そして高温溶融をすべてのアンプリコンよりも高く、すなわちTmA1よりも高い温度に設定する。
【0047】
いくつかの事例において、2種の標的(P1、P2、A1、およびA2)のどれが対照(P3およびA3)と比較してより高い存在量で存在している可能性があるかを予測することができない可能性がある。その場合の追加の事例は以下の通りである:
事例3:TmP1 = TmP2>TmP3およびTmA1 = TmA2>TmA3;または
事例4:TmP1 = TmP3<TmP2およびTmA1 = TmA2<TmA3。
【0048】
事例3について、P1およびP2のいずれかが対照(P3)よりも前に検出される場合、より低いアンプリコン溶融温度へのシフトにより、両方の標的増幅が停止され、対照遺伝子を競合すること無く増幅することが可能になる。対照が最初に増幅される場合、アニーリング温度を上にシフトさせ、効果的に対照反応を停止させる。限定的ではない例として、プライマーを、対照のTmを64℃にしつつ、70℃のTmを有するように設計することができる。標的用のアンプリコンのTmは85℃であり、そして対照用のTmは80℃である。このシナリオにより、対照遺伝子および存在する場合の標的遺伝子のすべての事例においてサイクル閾値を決定することができ、ΔCt値の計算が可能になり、そして相対的低量値が生成される。
【0049】
事例4において、対照の増幅は、アンプリコン溶融温度を操作することにより調節され、および標的は、プライマーアニーリングTmにより調節される。
以下の限定的ではない事例において説明されるように、2種の標的遺伝子(TACSTD1およびPIP)を、前哨リンパ節における乳癌検出のためのマーカーとして選択し、そして1つのハウスキーピング遺伝子(β-GUS)を、内在性対照として選択した。これらの3つの遺伝子が多重化アッセイにおいて検出されるアッセイを開発した。オプションとして、合成内部陽性対照の増幅のための第4の反応を計画する。これが必要な場合、多重化反応は、三重化反応よりも複合的である。多重化PCR反応において、1つの遺伝子シグナルが他のものよりも4サイクル以上早く検出される場合、第二の反応の効率を大幅に低下させる。偽陰性の結果を回避するため、上述したように、2つの“消去”ストラテジーを、このアッセイにおいて使用するために利用した。両ストラテジー共に、異なるデザインのプライマー対、および装置(例えば、GeneXpert(登録商標)またはSmartCycler装置)ソフトウェア内での“次の段階へ進む(Advance to Next Stage;ANS)”の能力に依存している。2つの消去ストラテジーを組み合わせるため、“分岐した(Bifurcated)ANS”アプローチが以下に記載されるように必要とされる可能性がある。
【0050】
本明細書中の目的のため、2つの(分岐した)ストラテジーを、“アニール”および“アンプリコン”と呼ぶ。アニールストラテジーでは、例えば(限定的ではないが)三重化反応における、3つの遺伝子のうちの2つまたはそれ以上についてのプライマー対を、アニール温度が異なるように設計し、それにより、例えば、内在性対照プライマーが68℃でアニールできるようにし、そして標的遺伝子プライマーは60℃でアニールできるようにする。この限定的ではない例において、内在性対照遺伝子よりも前に標的遺伝子シグナルのいずれかが一つ検出される場合、ANSを使用して、サイクリング温度をより高いアニーリング温度に変更する。これにより、両標的遺伝子がさらに増幅されることを防止するが、より低存在量の内在性対照遺伝子を高い効率性で増幅することができる。
【0051】
“アンプリコン”ストラテジーにおいて、例えば(限定的ではないが)三重化反応における3つの遺伝子についてのプライマー対を、得られるアンプリコンの内の少なくとも2つが異なる溶融温度を有するように設計する。例えば、標的遺伝子を、〜85℃のアンプリコンTm(または内在性対照よりも少なくとも4℃高いTm)を有するように設計する。内在性対照遺伝子シグナルが標的遺伝子のいずれかよりも前に検出される場合、ANSを使用して、サイクリングパラメータをより低温の溶融温度(標準的な95℃ではなく、標的のTmと内在性対照のTmの間の温度)に変化させる。これにより、標的遺伝子がさらに増幅することを防止するが、しかしより低存在量の内在性対照遺伝子の高効率の増幅を可能にする。上述したアッセイは、標的遺伝子および内在性対照について正反対の割り当てにより実行することもできることに注目すべきである。
【0052】
ANS修飾を、CepheidのSmartCycler(登録商標)およびGeneXpert(登録商標)装置の両方のソフトウェアに対して行って、このアプローチを試験しそして確認した。本発明の一態様に従うANSプロセスは、1またはそれ以上のアンプリコンの生成に対して、他のものについての反応よりも有利に働く多重化反応において、反応条件を時間調整するための自動化システムを含む。ANSプロセスは、アンプリコンの相対的蓄積に基づいて、反応条件を修飾する。一態様において、ANSプロセスは、モニタリングされるリポーターが閾値を越える場合、1セットの温度でのサイクリングを特定の繰り返し数の前に終了させる。次いで、ANSプロセスに関連するプロトコルは、新たな段階に進行する。アッセイ(例えば、限定的ではないが、サンプル調製工程および多重化PCRプロトコル)において使用されるすべてのまたはいくつかのリポーター(例えば、限定的ではないが、蛍光色素または色素の組合せ)を、モニタリングすることができる。ANSプロセスは、例えば、以下の特徴を、単独でまたは組み合わせて、提供する:
(l)いずれかのプロトコルにおけるいずれかのサイクリング段階のモニタリング;
(2)1つの段階における複数のリポーターのモニタリング。一態様において、異なるリポーターが閾値を越えた場合、同一段階または異なる段階のいずれかに進むことができる;
(3)閾値を越えた後、新たな段階に進む前に、追加的な数のサイクルを行うこと(各リポーターについて設定することができる);
(4)1またはそれ以上のモニタリングしたリポーター、あるいはすべてのモニタリングしたリポーターが、閾値を越える場合および/または閾値を越えることができない場合、モニタリング段階の最後でプロトコルを終了させること;そして
(5)新たな段階の最後にプロトコルを終了させること。
【0053】
ANSプロセス(例えば、ソフトウェアプログラム)が、新たな段階に進むことを決定した場合、まず、現在のサイクルを完了させる。新たな反応条件に進むことを、システムが既に別の段階に入った後に検出する場合、ソフトウェアは、新たな段階の事象へと進んだことを無視する。
【0054】
一態様において、ANSプロセスは、新たな段階の事象へと進むことに関連する情報を記録し、そして例えば、以下のリポートを生成する:
(1)影響を受けるモジュール名;
(2)リポーター名およびCt値;
(3)必要とされるプロトコル番号、モニタリング段階番号、最新のリピートカウント、そして新たな段階番号;そして
(4)このリクエストに対して、追加されたリピートカウント数またはスキップされたリピートカウント数。
【0055】
図21は、上述したANSプロセスを実行するためのシステム100の一態様を示す。システム100には、コントローラ104の指示の下で操作される装置102が含まれていてもよい。破線は、いくつかの態様において、コントローラ104、または集合的にみなされるその部分、が装置102の1またはそれ以上の要素を、上述したように操作するように指示することができる。従って、本明細書中に記載されるANSプロセスと関連する機能を、システム100中で実行し、そして1またはそれ以上のそのエレメントを調節するソフトウェアとして、提供することができる。本発明の一態様に従う装置102の例は、決まった様式で指示に応答しそして実行することができる多目的コンピュータである。その他の事例には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、ワークステーション、サーバー、ラップトップコンピュータ、インターネット対応電話、インターネット対応個人用デジタル端末(PDA)、マイクロプロセッサー、集積回路、アプリケーション特有の集積回路、マイクロプロセッサー、マイクロコントローラ、ネットワークサーバー、Java(登録商標)バーチャルマシン、論理アレイ、プログラム可能な論理アレイ、マイクロコンピュータ、ミニコンピュータ、また大型フレームコンピュータ、またはいずれかのその他のコンポーネント、機械、ツール、機器、または指示に応答しそして実行することができるそのいくつかの組合せを含む、特殊用途のコンピュータが含まれる。一態様において、システム100は、プログラム可能なサーマルサイクリング装置、またはサーマルサイクラーを含有する装置(例えば、限定的ではないが、CepheidのSmartCycler(登録商標)およびGeneXpert(登録商標)システム、ならびにApplied Biosystems PRISMラインのサーマルサイクリング機器)中で実行することができる。さらに、システム100には、ベースラインプロセッサ、メモリ、そしてコミュニケーション機能を含む中央プロセッシングエンジンが含まれていてもよい。システム100にはまた、複数プロセッサを互いに連絡することができるコミュニケーションシステムバスが含まれていてもよい。さらに、システム100には、ディスクドライブ、カートリッジドライブ、そして新しいソフトウェアをロードするためのコントロールエレメントの形状で記憶装置106を含んでいてもよい。本発明の態様において、1またはそれ以上の参照値を、装置102に接続したメモリー中に保存することができる。
【0056】
コントローラ104の態様には、例えば、装置102を独立してまたは集合的にプログラムされたように相互作用しそして操作されるように指示するための、装置102により実行することができる、プログラム、コード、一組の指示書、またはそれらのいくつかの組合せ、が含まれていてもよい。コントローラ104の一例は、指示の実行を可能にするために装置102にインストールされる、ソフトウェアアプリケーション(例えば、オペレーティングシステム、ブラウザーアプリケーション、クライアントアプリケーション、サーバーアプリケーション、プロキシアプリケーション、オンラインサービスプロバイダーアプリケーション、および/またはプライベートネットワークアプリケーション)である。一態様において、コントローラ104は、WindowsTMベースのオペレーティングシステムであってもよい。いずれかの適切なコンピュータ言語(例えば、C\C++、UNIX(登録商標) SHELL SCRIPT、PERL、JAVA(登録商標)、JAVA(登録商標)SCRIPT、HTML/DHTML/XML、FLASH, WINDOWS(登録商標) NT、UNIX(登録商標)/LINUX、APACHE、ORACLE を含むRDBMS、INFORMIX、およびMySQL)および/またはオブジェクト指向性技術を使用することにより、コントローラ104を実行することができる。
【0057】
一態様において、コントローラ104を、機械、コンポーネント、物理的またはバーチャル機器、保存媒体、または装置102に対して指示を送達することができる送信シグナル(propagated signal)のいずれかの型において、永久的にまたは一時的に、統合することができる。特に、コントローラ104(例えば、ソフトウェアアプリケーション、および/またはコンピュータプログラム)を、装置102により読み取り可能な、いずれかの適切なコンピュータ読み取り可能な媒体(例えば、ディスク、デバイス、または送信シグナル)上に保存することができ、それにより、装置102が保存媒体を読み出す場合、本明細書中に記載される機能が実行される。例えば、一態様において、ANSプロセスと関連する機能を実行するため、コントローラ104は、様々なコンピュータ読み取り可能媒体を統合することができる。
【0058】
図22は、上述したANSプロセスと関連する機能を実行するための、フローダイアグラム200の一態様を示す。決定工程210において、プロセスは、閾値越えがモニタリング段階において検出されない場合には、プロトコルを停止させるように、ユーザーが要求するかどうかを決定する。モニタリング段階の工程220において、閾値越えが何も検出されない場合、プロセスは、前にある段階について選択されたリポーターをモニターする。このプロセスを、モニタリング段階において、いずれかのモニタリングしたリポーターにおいて閾値越えが検出されるかどうかを決定する、決定工程230にて継続する。モニタリング工程において、モニタリングされたいずれのリポーターにおいても閾値越えが検出されない場合、プロセスを、工程210まで継続し、そしてモニタリング工程において閾値越えが検出されない場合にプロトコルを停止するようユーザーが要求しない場合、プロセスは、モニタリング段階においてモニタリングしたリポーターのいずれかにおいて閾値越えが検出される工程230まで反復的に210〜230を繰り返す。次いで、このプロセスをプロセスが新しい段階まで進む工程240まで継続する。決定工程250において、プロセスは、ユーザーが新しい段階の後にプロトコルを停止するよう要求するかどうかを決定する。ユーザーが新しい段階の後にプロトコルを停止する様に要求しない場合、プロセスを工程220まで継続する。決定工程210において、ユーザーがモニタリング段階において閾値越えが検出されない場合、または決定工程250においてユーザーが新しい段階の後にプロトコルを停止するように要求する場合、工程210〜250を、現在のプロトコルを工程260で終了するまで反復的に繰り返す。
【0059】
リポーター(例えば、蛍光プローブ)をモニタリングして、リポーターからのシグナルがユーザー定義の蛍光値または初期設定の蛍光値を越えるかどうかを決定することにより閾値越えを決定することができる。あるいは、ノイズベースの閾値を決定することができ(例えば、ノイズの標準偏差の2または3倍)、そしてリポーターを、ノイズベースの閾値を越えることに関してモニタリングされた。その他の態様において、閾値越えは、増幅増殖曲線の微分関数を用いて決定することができる。閾値越えを決定するためのこれらの技術およびその他の技術は、US特許6,783,934(その開示を本明細書中に参考文献として援用する)中に記載される。
【0060】
本明細書中で記載する多重化増幅法の一態様において、前哨リンパ節を、腫瘍切除時に切り出す。リンパ節は、OCT溶液中で凍結し、そして薄切切片を切り出す。典型的には、20〜25枚の切片を、解析のために使用する。所定のサンプル中に存在する組織量は、リンパ節サイズおよび切片作製技術の差異のため(限定的ではないが)、非常に可変である。従って、所定のサンプルが癌細胞について陽性であるかまたは陰性であるかを決定するために必要とされる予測は、内在性対照遺伝子発現と比較した標的遺伝子発現レベルに基づく。一態様において、アッセイデザインでは、内在性対照遺伝子用にβ-GUSを使用する。PIPおよびTACSTD1が、アッセイ用の2種の標的遺伝子である。
【0061】
標的mRNAレベルの一方または両方が内在性対照よりも高い場合、内在性対照増幅は生じない。従って、標的増幅を“消去”して、内在性対照を増幅させることができることが重要である。両方の標的mRNAレベルが内在性対照よりも低い場合、標的遺伝子増幅は生じない。その様な場合には、内在性対照増幅を“消去”して、標的増幅を可能にすることが重要である。
【0062】
予備的な研究において、アンプリコン限定法において、ANSソフトウェアを実行させること無く、β-GUSは、60サイクルの間全く消去させず、そしてPIPは、40サイクルで消去させた。ANSを用いるアンプリコン限定法において、β-GUSは、60サイクル以上消去させず、そしてPIPは、閾値に到達して1サイクル後に消去させた。プライマー温度依存的アッセイ(アニール)において、PIPを、60サイクルを超えて全く消去させず、一方β-GUSを閾値に到達して1サイクル後に消去させた。
【0063】
癌陽性サンプルにおいて、リンパ節サンプル中に存在する癌細胞の数に依存して、2つの標的遺伝子の発現レベルは、内在性対照よりも高くから、内在性対照よりも数倍低い範囲まで、非常に変わりやすいものである。例えば、TACSTD1は、正常リンパ節組織中では非常に低いレベルで発現される。従って、正確なΔCt値が必要である。さらにアッセイを複雑化するのは、高い標的発現の頻度である。例えば、サンプルの10〜15%では、PIPレベルが、β-GUSレベルよりも高く、そしてサンプルの約30%では、TACSTD1レベルは、β-GUSレベルよりも高い。その様な理由のため、ΔCt値は、陽性のサンプルに関して、有意に陽性の値から有意に陰性の値までの範囲を取る可能性がある。従って内在性対照が検出されない場合、サンプルサイズにもともと可変性があるため、陽性または陰性のサンプルとみなすためのカットオフ値を設定する合理的な方法は存在せず、結果として正確ではない結果を生じる。サンプルが真に陽性であるにもかかわらず、標的発現が低い場合、内在性対照が消去されなければ、サンプルは偽陰性となる可能性がある。
【0064】
標的遺伝子としてTACSTD1およびPIPの事例を考えると、上述した問題点を克服するために3つのオプションが存在する。1つのオプションは、標的遺伝子が内在性対照よりも前に増幅される場合に、サンプルに遭遇する可能性は未だ残っているが、β-GUSを異なる内在性対照遺伝子、例えばβ2ミクログロブリン(β2M、β-GUSよりも高い発現レベルを有する)に変更するというものである。他の潜在的な内在性対照には、β-アクチン(ACTB)、グルタルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPD)およびペプチジル-プロリルイソメラーゼA(PPIA)が含まれる。それにもかかわらず、他の内在性対照を選択するためには、特定の限定が存在する。上述したように、β-GUSを置換するための一つのよい候補遺伝子は、β2Mである。いくつかの研究において、正常リンパ節におけるβ2Mの発現にはもともと可変性があり、それがΔCtの決定を予測不能なものにすることが示された。ACTB、GAPDおよびPPIA等のβ-GUSよりも高発現である代替のハウスキーピング遺伝子が、不均衡なRT効率をもたらす-その結果、ΔCt値は、信頼できないようである。
【0065】
第二のオプションにおいて、例えば、限定的ではないが、標的プライマーを、Tm=68℃でアニールさせ、そして標的アンプリコンは、Tm=86℃を変性させ、一方、内在性対照プライマーをTm=58〜60℃でアニールさせ、そして内在性対照アンプリコンをTm=80℃で変性させ(標的プライマーTm>対照プライマーTmおよび標的アンプリコンTm>対照アンプリコンTm)、プライマーTmおよびアンプリコンTmの差異を利用して、反応をバランス化させることができる。
【0066】
第三のオプションにおいて、例えば、限定的ではないが、標的プライマーを、Tm=58〜60℃でアニールさせ、そして標的アンプリコンをTm=80℃で変性させ、一方、内在性対照プライマーをTm=68℃でアニールさせ、そして内在性対照アンプリコンをTm=86℃で変性させ(標的プライマーTm<対照プライマーTmおよび標的アンプリコンTm<対照アンプリコンTm)、同様にプライマーTmとアンプリコンTmの差異を利用して、反応をバランス化させることができる。
【0067】
プライマーアニーリング温度およびアンプリコン変性温度を、例示としてのみ上に提供し、そして多重化核酸増幅反応における様々なプライマーおよびアンプリコンについてのTmの 潜在的な選択には決して限定されない。Tmの差異を核酸増幅反応において利用することができる限りにおいて、それらは、本発明において有用であると考えられる。
【0068】
Tmを標準的に一致させて、そして限定的な量の1以上のPCRプライマーセットを用いる以外に、上述した増幅法によって、多重化PCR反応の「バランスをとる」、さらなるツールを提供する。異なるアンプリコンを連続して増幅する方法として、異なるTmを持つPCRプライマーセットおよびアンプリコンを利用することは、特定の状況では、さらなるプライマーセットを連続して添加するより好ましい可能性がある。しかし、多重化PCR反応の温度依存配列決定を、単一反応混合物に対してプライマーセットを連続的に物理的に添加することと組み合わせて使用することが可能である。
【0069】
陰性結果に関して、特定の増幅反応の操作を確認する、内部陽性対照もまた、使用することができる。内部陽性対照(IPC)は、標的遺伝子(例えば、PIPまたはTACSTD1)と同一のプライマー配列を有するが、異なる内部プローブ配列を有する、DNAオリゴヌクレオチドである。所望により、IPC中の選択した部位を、チミンの代わりにウラシルを用いて合成することが可能であり、それにより必要な場合、ウラシルDNAグリコシラーゼを用いて、非常に濃縮された擬似体の混入を制御することが可能であった。PCR反応マスターミックスいずれかに、プライマーセットの内因性標的のCt値より典型的には高いCt値を生じると実験的に決定された量でIPCを添加することも可能である。その後、標準的プロトコルにしたがってPCRアッセイを行い、そしてプライマーセットの内因性標的がない場合であってもIPCが増幅され、それによって標的内因性DNA増幅の失敗が、マスターミックス中のPCR試薬の失敗でないことが確認されるであろう。一態様において、IPCプローブは、内因性配列のプローブと異なる蛍光を発する。RT-PCR反応で使用するためのこの変形は、IPCがRNAであり、そしてRNAがRTプライマー配列を含むものである。本態様において、IPCは、RT反応およびPCR反応両方の機能を検証する。RNA IPCおよびDNA IPC(異なる対応プローブを持つ)両方を使用して、RT反応およびPCR反応の難易度を区別することもまた、可能である。
【0070】
本明細書に記載する迅速QRT-PCRプロトコルは、約20分間で実行可能である。この短時間性により、アッセイを手術中に実行することができ、それにより外科医が、2回目の手術を必要とせず、または外科医が不必要なまたは過剰に広い予防的処置を行う必要がなく、1回の手術中に外科的な方向性について決定することができる(典型的には、試験されるサンプルを取得し、そして手術中アッセイが完了するまでの時間は待たなければならないだろうが、患者は、1回の“手術”中に麻酔をかけられたままであるかおよび/またはそうでなければ鎮静されたままである)。例えば、乳癌、メラノーマ、肺癌、食道癌、および結腸癌を含む特定の癌の外科的評価において、腫瘍および前哨リンパ節を、最初の手術において摘出する。前哨リンパ節を、その後に微小転移について評価し、そして微小転移が患者の前哨リンパ節中に検出される場合、患者は2回目の手術を必要とし、それにより、複数回の手術に伴う患者の外科的リスクおよび患者の不快感は増大する。本明細書中で上述した特定の腫瘍特異的マーカーの発現レベルを30分未満で高い正確性で決定する能力により、医師は、患者を手術室または関連施設に放置する必要なく、どのようにして進めるかについて迅速な決定をすることができる。迅速な試験はまた、医師の部屋で行うニードルバイオプシーにも適用することができる。患者は、(腫瘍またはリンパ節のニードルバイオプシーなどの)バイオプシーの結果が得られるまでに数日間を待たされる必要がなく、今や非常に短時間でより正確な結果を得ることができる。
【0071】
表Bは、実施例および図面中に記載されそして示されたmRNA定量アッセイ用のプライマーおよびプローブ配列を提供する。図1〜6は、実施例において検出された様々なmRNA種のcDNA配列の限定的ではない事例を提供する。表Bに提示された配列は、実施例において記載されたアッセイにおいて有効であることが見いだされたが、その他のプライマーおよびプローブも同様に、本明細書中に記載されたか、または当該技術分野において既知であるように、QRT-PCRおよびその他のmRNA検出および定量アッセイにおいて使用するために等しく適しているようである。PCRアッセイ用のプライマーおよびプローブセットならびにその他のmRNA検出アッセイ用の代替のプライマーおよびプローブセットの設計は、当業者の能力の範囲内のものである。例えば、そして限定的なものではないが、多数のコンピュータソフトウェアプログラムは、PCRアッセイ用のプライマーおよびプローブセットを、cDNA配列から特定のパラメータに従って作製する。その様なソフトウェアの限定的ではない例には、NetPrimerおよびPrimer Premier 5が含まれる(PREMIER Biosoft International of Palo Alto, Californiaから商業的に入手可能、この会社は、モレキュラービーコンおよびアレイアッセイ用のプライマーおよびプローブ設計ソフトウェアも提供する)。2またはそれ以上の異なるmRNA用のプライマーおよび/またはプローブは、例えば、限定的ではないが、標準的な方法に従って2またはそれ以上の標的配列をアラインメントし、2またはそれ以上のmRNA間の共通配列を決定し、そして適切なプライマー設計コンピュータプログラム中に共通配列を入力することにより、同定することができる。
【0072】
本明細書中に上述の方法の商業化において、特定の核酸の検出用の特定のキットは、特に有用であろう。試験キットには、典型的には、商業的な流通に適したパッケージ(例えば、限定的ではないが、箱、シールポーチ、ブリスター包装、およびカートン)中、コンテナ(例えば限定的ではないが、バイアル、チューブ、またはボトル)中にパッケージされた、1またはそれ以上の試薬(例えば、限定的ではないが、核酸プライマーまたはプローブ)を含む。パッケージは、典型的には、パッケージされた試薬を、患者のリンパ節中の癌細胞の存在の指標である発現またはマーカーを同定するための方法において使用することができることを示した、ラベル、またはパッケージング挿入物を含有する。本明細書中で記載されるように、“包装材料”には、限定的ではないが、コンテナ、バイアル、チューブ、ボトル、ポーチ、ブリスター包装、ラベル、タグ、指示書、およびパッケージ挿入物を含む、キット中の試薬の流通のためのパッケージングにおいて使用されるいずれかの物品が含まれる。こうしたキットの一例には、上述の一試験管QRT-PCRプロセスに必要な試薬が含まれるであろう。1つの例において、キットには、逆転写酵素、逆転写酵素プライマー、対応するPCRプライマーセット、Taqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼ、および限定的ではないが、蛍光5'ヌクレアーゼアッセイ用プローブ、分子ビーコンプローブ、単一色素プライマーまたはエチジウムブロマイドなどの二本鎖DNAに特異的な蛍光色素などの適切な蛍光レポーターを含む、上述の試薬が含まれるであろう。プライマーは、上述の高濃度を生じるであろう量で存在することが可能である。熱安定性DNAポリメラーゼは、多様な製造者から、一般的に、そして商業的に入手可能である。キットのさらなる材料には:適切な反応試験管またはバイアル、バリア組成物、典型的にはワックスビーズ、所望によりマグネシウムを含むもの;必要な緩衝剤およびdNTP類などの試薬を含む、逆転写酵素段階およびPCR段階用の反応混合物(しばしば、例えば、2×、5×、10×、または20×に濃縮されたもの);ヌクレアーゼ不含またはRNase不含水;RNase阻害剤;QRT-PCR反応の逆転写酵素段階および/またはPCR段階で使用可能な、対照核酸(類)および/またはさらなる緩衝剤、化合物、補助因子、イオン性構成要素、タンパク質および酵素、ポリマー等のいずれかが含まれることが可能である。
【0073】
キットの構成要素は、商業的に実用的ないずれかの方法でパッケージされる。例えば、PCRプライマーおよび逆転写酵素は、アッセイを構成する際の柔軟性を容易にするために個別に、または使用する際の容易性を高めコンタミネーションを低くするために一緒に、パッケージすることができる。同様に、バッファー、塩、および補助因子を、別々にまたは一緒にパッケージすることができる。
【0074】
キットにはまた、組織サンプルから核酸を手動抽出または自動抽出するために適した試薬および機械的な構成要素もまた、含まれる。これらの試薬は、当業者に既知であり、そして典型的には設計上の選択事項である。例えば、自動化プロセスの一態様において、組織は、キット中に提供された適切な溶解溶液中で超音波破砕される。次いで、得られた溶解物溶液を濾過し、そしてRNAをキットまたはカートリッジ中に同様に提供されるRNA-結合性磁気ビーズに結合させる。ビーズ結合RNAを洗浄し、そしてRNAをビーズから溶出し、そして適切な逆転写酵素反応混合物中に入れ、その後逆転写反応を行う。自動化プロセスにおいて、試薬の選択および試薬のパッケージング様式(例えば、1回使い捨てのカートリッジ)は、特定のRNA抽出システムのロボット工学および流体工学の物理的構造、例えば、限定的ではないが、GeneXpert(登録商標)システムなどのシステム、により決定される。国際出願WO 04/48931、WO 03/77055、WO 03/72253、WO 03/55973、WO 02/52030、WO 02/18902、WO 01/84463、WO 01157253、WO 01/45845、WO 00/73413、WO 00/73412、およびWO 00/72970は、カートリッジベースのシステムおよび本明細書中に記載された方法において有用である関連する技術の、限定的ではない事例を提示している。
【0075】
キットの構成要素は、共にまたは別個にパッケージングすることが可能であり、そして各構成要素は、適切なように、1以上の試験管またはバイアル中で、あるいはカートリッジ型で提示することが可能である。構成要素は、限定的ではないが、脱水状態、凍結乾燥状態、ガラス化(glassified)状態、または水性状態を含むいずれかの有用な状態で、独立に、または共に、パッケージングすることが可能である。キットは、上述した試薬を含む2またはそれ以上の構成要素を有する自動化プロセス中で使用するためのカートリッジの物理的形態を取ることができる。適切なカートリッジは、例えば、米国特許6,440,725、6,431,476、6,403,037および6,374,684中に開示される。上述したように、PCRベースの技術を使用して、所定の組織サンプル中のmRNAレベルを定量することができる。試薬間のTmの差異を、多重化反応をバランス化させるために効果的に利用することができる限りは、その他の配列特異的核酸定量法も、多かれ少なかれ適している。本発明の分野において理解されているように、標準的な多重化“PCR”反応に対する多くのバリエーションが知られており、そしてアンプリコン変性温度の差異および/またはプライマーアニール温度の差異を多重化反応をバランス化させる目的により利用することができる、多くのバリエーションが存在する。それらの核酸増幅反応は、本発明の範囲内のものであると考えられる。
【0076】
実施例1 - 全般的な材料と方法
潜在的なマーカーの同定
広範囲に及ぶ文献および公共データベースのサーベイを行って、いずれかの潜在的マーカーを同定した。このサーベイのための資源には、PubMed、OMIM、UniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、GeneCards(http://bioinfo.weizmann.ac.il/cards)、およびCGAP(http://cgap.nci.nih.gov)が含まれた。サーベイ分類は、いくらか柔軟であったが、しかしながら目的は、腫瘍中で中程度〜高度に発現しているが正常リンパ節では低度にしか発現していない遺伝子を同定することであった。さらに、腫瘍中で亢進制御されていることが報告された遺伝子および限定的な組織分布を有する遺伝子は、潜在的に有用であるとみなした。最終的に、癌精巣抗原およびhTERTなどの癌特異的であると報告された遺伝子を評価した。
【0077】
組織および病理学的評価
組織試料を、IRB承認プロトコルを介して、University of Pittsburgh Medical Centerの組織バンクから入手した。すべての試料を、液体窒素中で瞬間凍結し、そしてその後凍結切片作製用にOCT中に包埋した。25ミクロンの切片を各組織からRNA単離用に切り出した。さらに、切片を切り出し、そしてRNA単離用の切片の最初、途中(RNA用の10番目切片および11番目切片の間)、そして最後に、H&E解析およびIHC解析用のスライドに静置した。各試料由来の3枚すべてのH&Eスライドについて、病理学的検討を行い、腫瘍の存在および腫瘍の割合を確認し、そしていずれかのコンタミネーションした組織の存在を同定した。すべての未染色スライドは、-20℃で保存した。免疫組織化学的評価を、AE1/AE3抗体カクテル(DAKO, Carpinteria, CA)、Vector Elite ABCキット、およびVector Aendogenous control Chromagen(Vecta Laboratories, Burlingame, CA)を使用して行った。IHCを、H&E組織学を確認するために必要とされるように、使用した。
【0078】
スクリーニングアプローチ
スクリーニングは、2相でおこなった。すべての潜在的マーカーを、一次スクリーニング相に導入し、そして発現を、癌を有さない患者から取得した6個の原発腫瘍および10個の良性リンパ節(1プール当たり2個のリンパ節RNAを有する5個のRNAプール)において解析した。リンパ節転移検出に関して良好な特徴を示したマーカーを、二次スクリーニング相に回した。二次スクリーニングは、20〜25個の原発腫瘍、20〜25個の組織学的に陽性のリンパ節、および21個の癌を有さない良性リンパ節についての発現解析から構成された。
【0079】
RNA単離およびcDNA合成
RNAを、RNeasy minikit(Qiagen, Valencia, CA)を、本質的には製造者により記載されたように使用して単離した。唯一の修飾は、溶解試薬の容量を二倍にし、そして2工程でカラムにかけた点である。おそらくは、組織切片中のOCTを完全に希釈する結果として、このことにより、より良好なRNA収率および純度が得られることが見いだされた。100μLの反応容量中で、表C中に示されるプローブを使用したランダムヘキサマープライミングまたは配列特異的プライミングのいずれかを使用して、そしてSuperscript II(Invitrogen, Carlsbad, CA)逆転写酵素を使用して、逆転写を行った。一次スクリーニングのため、それぞれ500 ngのRNAを含む3つの逆転写反応を行った。cDNAを組合せ、そして反応当たり20 ng RNAの等量を使用してQPCRを行った。二次スクリーニングのため、原発腫瘍および陽性リンパ節用のRNA入力は、共に500 ngであった。しかしながら、良性リンパ節のため、RNA入力は2000 ngであり、結果としてQPCR反応当たり80 ng等量のRNAが得られた。
【0080】
定量的PCR
すべての定量的PCRを、ABI Prism7700配列検出装置(Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて行った。マーカー遺伝子の相対的配列を、上述したΔ-CT法を使用して、そしてβ-グルクロニダーゼを内在性対照遺伝子として使用して、計算した。すべてのアッセイを、5'ヌクレアーゼハイブリダイゼーションプローブと共に使用するために設計したが、費用を削減するため、一次スクリーニングをSYBER Green定量を使用して行った。ABI Primer Express Version 2.0ソフトウェアを使用してアッセイを設計し、そして可能な場合には、cDNAの特異性をもたらすため、アンプリコンがエクソンジャンクションをまたぐように設計した。すべてのプライマー対を、60、62、および64℃のアニーリング温度で、増幅特異性について試験した(ゲル上に1本のバンドを生成)。さらに、PCR効率性を、SYBER green定量を使用して評価し、その後一次スクリーニングにおいて使用した。二次スクリーニングにおいて使用されるすべてのアッセイ用の5'ヌクレアーゼプローブを用いて、効率のさらなる最適化およびより精密な評価を行った。
【0081】
Universal Human Reference RNA(Stratagene, La Jolla, CA)とヒト胎盤、甲状腺、心臓、結腸、PCI13細胞株、およびSKBR3細胞株由来のRNAとの混合物が、マーカースクリーニングプロセスにおいてすべての遺伝子に対するユニバーサル陽性発現対照として機能した。
【0082】
SYBER Greenを用いた定量(一次スクリーニング)
SYBR Green I-ベースのQPCRについて、各50μLの反応物は、1×TaqManバッファーA(Applied Biosystems)、300nMの各dNTP、3.5 mMのMgCl2、0.06 units/μLのAmplitaq Gold(Applied Biosystems)、0.25×SYBR Green I(Molecular Probes, Eugene, OR) および200 nMの各プライマーを含有した。増幅プログラムは、最初に95℃のTaq活性化段階を12分間行った後に、95℃の変性を15秒、60、62または64℃のアニール/伸長を60秒間および増幅される特異的PCR生成物のTmよりも2〜4℃低い温度で10秒間のデータ回収工程を1サイクルとして、40サイクル行う、2段階を含む(TB Morrison, et al. 1998)。増幅の後、60℃〜95℃の温度まで20分間かけて上昇させつつ、蛍光データを回収することにより、融解曲線解析を行った。
【0083】
5'ヌクレアーゼプローブを用いた定量(二次スクリーニング)
プローブベースのQPCRを、以前に記載されたように行った(Godfrey, et al., Clin. Cancer Res. 2001 Dec., 7(12):4041-8)。簡単に説明すると、200 nMのプローブ濃度および60℃、62℃、または64℃で60秒のアニーリング/伸長相、により、反応を行った。二次スクリーニングにおいて評価した遺伝子用のプライマーおよびプローブ(IDT, Coralville, IAから購入)の配列を、以下の表Bに列挙した。
【0084】
データ解析
一次スクリーニングにおいて、溶解曲線から得たデータを、ABI Prism 7700 Dissociation Curve Analysis 1.0ソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して解析した。溶解曲線の一次導関数を使用して、生成物のTmを決定し、ならびに各サンプル中の特異的生成物の存在を確認した。一般的には、サンプルを、二重にしたPCR反応中で解析し、そして平均Ct値を発現解析において使用した。しかしながら、二次スクリーニングにおいては、各個別の良性リンパ節について三重にした反応を行い、そしてサンプルについてのバックグラウンド発現の最高値を取得するため、最低のCt値を相対発現の計算に使用した。
【0085】
乳癌および肺癌を含む癌における病理学的状態と相関するものとして、様々な分子マーカーを同定した癌組織特異的研究を、以下の実施例に記載したように行った。表Aは、以下の研究において使用した遺伝子を同定する。表Bは、本明細書中で記載する定量的PCRおよびRT-PCR増幅において使用するPCRプライマーおよびTAQMANプローブ配列を提示する。表Cは、ランダムヘキサマープライマーの代わりに使用したRTプライマー配列を提示する。すべてのPCR反応およびRT-PCR反応を、標準的な方法を使用して行った。すべての図面に関して、T=原発腫瘍;PN=腫瘍陽性リンパ節(組織学的スクリーニングによる。すなわち、上述したように、H&E染色組織の検討および必要な場合にはIHCによる検討);およびBN=良性リンパ節(組織学的スクリーニングによる)である。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
実施例2 - 乳癌
CK7、CK19、MGB1、MGB2、PIP、およびTACSTD1の発現レベルを、実施例1に記載した方法により決定した。図7は、原発腫瘍、腫瘍陽性リンパ節および良性リンパ節におけるCK7、CK19、MGB1、MGB2、PIP、およびTACSTD1の発現レベルを示す散布図である。図8A-Oは、2マーカーシステムが、リンパ節中の良性細胞と悪性細胞とを識別する能力を示す散布図を提供する。表DおよびEは、図7および図8A-Oのグラフを生成した際の生データを提供する。このデータは、前哨リンパ節中でのCK7、CK19、MGB1、MGB2、PIPおよびTACSTD1マーカー単独の発現または組合せの発現が、前哨リンパ節中の乳癌に由来する悪性細胞の存在と強力な相関を有することを示す。
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
実施例3 - その後の研究- 乳癌
材料と方法
実施例2において概説したように、広範囲な文献サーベイおよびデータベースサーベイにより、乳癌におけるリンパ節転移の検出のための潜在的なmRNAマーカーを同定した。一次スクリーニングにより、6個の原発性乳房腫瘍および癌を有さない患者から得た10個の良性リンパ節において、43個の潜在的なマーカーの相対発現を解析した。6個のマーカーが、リンパ節転移検出についての良好な特徴を示したため、25個の原発腫瘍、27個の組織学的に陽性のリンパ節、そして癌を有さない患者から得た21個の良性リンパ節(73人の別個の患者)において発現を解析する、二次スクリーニング段階へと進行した。分類特性に基づいて、迅速な多重化リアルタイムPCRアッセイを使用して、乳癌を有する別個の患者に由来する90個のSLNの外部評価研究のために、4個のマーカーを選択した。最終的に、9個の組織学的に陰性のリンパ節および9個の組織学的に陽性なリンパ節を、完全に自動化しそして迅速なRNA単離およびリアルタイムPCRアッセイを使用して、GeneXpert(登録商標)上で解析した。
【0093】
組織の供給源:
マーカースクリーニングおよびGeneXpert(登録商標)研究のための組織は、University of Pittsburgh Medical Centerの組織バンクから取得し、そしてマーカー検証実験のためのSLNは、Medical University of South Carolinaで始められたMinimally Invasive Molecular Staging of Breast Cancer Trial (MIMS)から得た。
【0094】
組織調製および組織学的解析:
すべての組織を、液体窒素中で瞬間凍結し、そして-80℃で使用するまで保存し、使用時に、クリオスタットでの凍結切片作成のため、それらを最適切断温度(OCT)コンパウンド中に包埋した。マーカースクリーニングおよびGeneXpert(登録商標)研究のため、40個の5-ミクロンの切片をRNA単離のために切り出した。RNA単離用の切片の最初、中間、そして最後から得た追加の切片を、H&E解析およびIHC解析のために切り出した。各試料から得た3つのH&Eスライドすべてについて、2人の病理学者により、病理学的検討を行った。すべての非染色スライドを、-20℃で保存し、そしてH&E組織構造を確認するために必要である場合と同様に、IHC評価のために使用した(AE1/AE3汎サイトケラチン抗体カクテルを使用した)。
【0095】
検証実験のため、個別の患者から年代順に得た115個のSLN試料を同定した。5ミクロンの連続切片を各組織から切り出し、そしてH&E染色および汎サイトケラチンIHCを使用した組織学的解析のために、最初および最後の2枚の組織切片をスライド上にマウントした。中間の切片は、4:1:4:1:4などにわけ、そして4枚の切片をRNA単離のためのカオトロピック溶解バッファー中にすぐに入れ、そして5枚ごとの切片を組織学的検討のためにスライド上にマウントした。切り出した切片の総数は、SLNのサイズに依存した(50〜60個の範囲)。すべての試料を、病理学的解析のために組織構造が適切に保存されていることを確認するために検討し、結果的に25個の試料を排除した。残りの90個のSLNについては、3つのレベルの切片(最初、中間、そして最後)を、H&E染色およびIHC染色の両方を用いて病理学的検討を行い、そして残りのスライドは必要に応じて検討した。
【0096】
すべての試料は、乳癌試料を解釈する幅広い経験を有する2人の病理学者により独立して評価された。病理学者は、腫瘍の存在、腫瘍の%、そして何らかの混入組織(例えば、正常乳腺組織)の存在を決定する。試料の解釈が一致しないものを記録し、そして次いで同時に検討しそして意見の一致を見た。
【0097】
RNA単離:
スクリーニングおよび検証実験のため、製造者により記載された様にRNeasyミニキット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して、RNAを単離した。唯一の変更点は、溶解試薬の容量を二倍にし、そして2工程でカラム上に充填した点であった。すべてのRNAは、Ambionから入手したDNA不含キットを使用して、DNAse処理された。
【0098】
定量的RT-PCR解析:
マーカースクリーニング研究のため、cDNAをランダムヘキサマーを使用して合成した。定量的リアルタイムPCRを、ABI Prism 7700 Sequence検出装置上で行い、各マーカー遺伝子の発現をΔCt計算を使用して、内在性対照遺伝子β-グルクロニダーゼに対して測定した。コストを抑えるため、一次スクリーニングをSYBR greenを用いた定量を使用して行った。二次スクリーニングにおいて、5’ヌクレアーゼハイブリダイゼーションプローブを使用して、アッセイの特異性を上昇させた。すべてのアッセイを、ABIPrimer Express Version 2.0ソフトウェアを使用して設計し、そして可能である場合、cDNA特異性を提供するため、アンプリコンはエクソン結合部にかかっていた。陰性対照を、各PCRプレート中でインキュベートした。Universal Human Reference RNA(Stratagene, La Jolla, CA)とヒト胎盤、甲状腺、心臓、結腸、PCI13細胞株、およびSKBR3細胞株から得たRNAとの混合物が、マーカースクリーニングプロセスにおけるすべての遺伝子についてのユニバーサル陽性発現対照として機能した。
【0099】
マーカー検証実験における4つの遺伝子の解析を、迅速な、多重化(内在性対照遺伝子および標的遺伝子についての)QRT-PCRを使用して、Cepheid SmartCyclerTM(Cepheid, Sunnyvale, CA)上で行った。各リンパ節サンプルについてのRNA入力はQRT-PCR反応あたり50〜200 ngであり、そしてすべての反応は二重にして行った。各反応には、陰性結果の場合に適切なアッセイ感度を示すため、内部陽性対照(IPC)オリゴヌクレオチドを含めた。遺伝子特異的逆転写プライマー配列およびPCRプライマー配列およびプローブ配列は、表Bに示す。
【0100】
GeneXpert(登録商標)解析:
24枚のOCT包埋組織の5-μm切片を、800μlのGeneXpert(登録商標)溶解バッファー(Cepheid, Sunnyvale, CA)中で切断した。溶解バッファーは、0.22-μmシリンジフィルター(Osmonics Inc, West borough, MA)を通して濾過し、そしてGeneXpert(登録商標)カートリッジ中に充填した。RNA単離、逆転写、そしてQRT-PCRの自動化プロセスは、GeneXpert(登録商標)上でおこなった。
【0101】
統計解析:
マーカーを評価するために使用した特徴は、感度、特異性、分類精度、そして陰性適中率および陽性適中率であった。評価には、マーカーの分布を特徴付け、そしてlog-正規分布に対してデータを適合させることを試験することが含まれた。個別のマーカーについては、分類精度を最大にするカットオフ値を決定した。分類精度が100%であった場合、最大に発現する良性のリンパ節と最低に発現する組織学的に陽性のリンパ節との中間点にカットオフ値を設定した。マーカーを対結合(paired combinations)においても評価し、そして各対について線形予測規則(linear prediction rule)を生成した。規則は、線形境界の上および下での近似確率(fitted probabilities)を均一にする線形予測値(linear predictor)に対応していた。すなわち、境界線上の点は、陽性のリンパ節および陰性のリンパ節について割り当てられた数値スコアの中間の予測確率を有した。
【0102】
単一および対のマーカー予測規則の特性はまた、発現レベルの分布特性を調べることにより、そしてパラメトリックブートストラップ検証を適用することにより調べられた。マーカー対間の平均、分散および相関についてのモーメント推定を使用して、対数正規分布および2変数の対数正規分布からデータをシミュレートした。元データの500のパラメータサンプルを得て、そして各ブートストラップサンプルについての予測を、元データに対して適用した。予測誤差についてのEfronの改良型ブートストラップを使用して(Efron B, TR. An Introduction to the Bootstrap. Boca Raton: Chapman and Hall, 1993: 247-252)、観察された分類精度と平均ブートストラップ分類精度との差異を使用して、代替(resubstitution)予測規則におけるオプティミズム(optimism)を推定した。次いで、単一マーカー決定規則および二重マーカー決定規則をマーカー検証実験から得たデータに対して適用し、そして分類特性を決定した。
【0103】
マーカー組合せの予測特性も、等確率等高線を作成することにより決定した。この方法においては、マーカー対の接合分布を、2変数log-正規分布に従うものと仮定した。良性のリンパ節の平均、分散、そして共分散の推定値から、良性リンパ節中での相対発現レベルについて得られた推定平均値周辺で、等確率等高線を構築した。次いで、観察された値をこれらの等確率の楕円に対してプロットし、そして95パーセンタイル値、99パーセンタイル値、および99.9パーセンタイル値、を含む、より極端な分位についての等高線と比較した。このデータ解析方法は、各点に対して、プロットしたリンパ節が良性であるおよその可能性である値をつけた。
【0104】
結果
一次マーカースクリーニング:
原発腫瘍中および良性リンパ節中での中央値相対発現を、一次スクリーニングにおいて含まれた43個の潜在的マーカーのすべてについて計算した(表F)。
【0105】
【表6】

【0106】
さらに、腫瘍における中央値発現と最大に発現する良性リンパ節との間での比率、および最低に発現する腫瘍と最高に発現する良性リンパ節との間の比率を計算した。分子として、腫瘍における中央値発現を使用する場合、4種類の遺伝子、すなわち、TACSTD1、サイトケラチン7(CK7)、サイトケラチン19(CK19)、およびマンモグロビン(mammoglobin)1(MGB1)は、1000よりも高い腫瘍/良性リンパ節比を有するものとして顕著なものとなった。したがって、これらの4個のマーカーを、さらなる評価のために選択した。マンモグロビン2(MGB2)およびプロラクチン誘導性タンパク質(prolactin inducible protein:PIP)もまた、一次スクリーニングデータに基づいてならびにこれらのマーカーについて以前に公開されたデータ((Mitas M, et al. "Quantitative real-time RT-PCR detection of breast cancer micrometastasis using a multigene marker panel". Int J Cancer 2001; 93(2):162-171)に基づいて選択された。その他の37個のマーカーは、さらなる評価から排除した。
【0107】
二次マーカースクリーニング:
二次スクリーニングにおいて使用された25個の原発性乳癌試料の組織学的評価から、75%の中央値腫瘍%(5〜95%の範囲)が示された。27個の組織学的に陽性のリンパ節中の中央値腫瘍%は80%であった(5〜95%の範囲)。乳腺腫瘍、陽性リンパ節、および良性リンパ節における二次スクリーニングに含まれた6個のマーカーの相対的発現は、図9Aに示される。各マーカーの分類特性(病理学的検討と比較した)は、表Gにまとめる。
【0108】
【表7】

【0109】
観察された分類精度は、89.6%(MGB1およびPIP)〜100%(TACSTD1)の範囲にあった。このデータのパラメトリックブートストラップ解析は、表Gにも示され、そして分類バイアスの推定値は、2%(TACSTD1)〜6%(MGB1)の範囲であった。このように、スクリーニングセットにおける各個別のマーカーについて確立した相対的発現レベルのカットオフ値は、実質的に解析されたリンパ節を正確に特徴づける。
【0110】
マーカー対のすべての可能性のある組合せを調べ、1つより多いマーカーを評価するアッセイが、より頑健なリンパ節特性を生成するかどうかを決定した。それぞれの可能性のあるマーカー対の相対的発現を、特性精度を最適化する線形決定規則を使用して解析し、そしてこれらの決定規則をパラメトリックブートストラップ解析を使用して内部でもう一度検証した。このデータは、図9B〜9Eに示され、そして表Gにまとめられる。15組のうち11組は、観察されたデータにおいて100%の分類精度を提供したが、2組は、ブートストラップ解析において100%の予測精度を保持していた。一般的には、マーカー対を使用することにより、結果として分類バイアスが減少し(0〜3.2%)、2マーカーアッセイがアッセイ分類信頼度を向上させることが確認された。
【0111】
線形分類規則は、マーカー組合せ解析におけるリンパ節分類についての必ずしも最良の方法ではないため、所定の対における各マーカーについての発現レベルの観察された分布に基づいて、新規の分類方法を開発した。等確率等高線は、良性リンパ節における相対的発現について得られた平均値付近で計算された(例えば、図9F〜9I)。この解析方法は、良性リンパ節から得られた相対的発現値の分布が、陽性リンパ節を分類するための信頼度に影響を与えることを示す。CK19/MGB1は、線形予測規則に基づいて最良の分類を提供したが、一方確率等高線プロットは、良性リンパ節におけるこれらのマーカー両方についての発現の幅広い分布が、陽性のリンパ節を同定することができる信頼性に、マイナスの影響を与えることを明確に示す。この解析により、TACSTD1/PIP、CK19/TACSTD1、TACSTD1/MGB1およびTACSTD1/MGB2の組合せは、>0.99の確率で、そしてほとんどの場合で>0.999の確率で、すべての陽性リンパ節を正確に同定する、最良の分類を提供する。これらの組合せの4種類すべてについて、すべての良性リンパ節は0.99の確率等高線の内側に入り、そして1つ以外はすべて0.95の確率等高線の内側であった。したがって、スクリーニングデータにおいて、4種類のマーカー組は、>99%の特異性を伴って、100%の感度を提供することができた。
【0112】
迅速な多重化フォーマットにおけるQRT-PCR分類の検証:
二次スクリーニングにおいて試験された選択されたマーカーの分類精度をさらに検証するため、90個の乳癌前哨リンパ節の別個の検証用セットを、予め解析した(図11Aおよび11B)。さらに、手術中解析の可能性を示すため、迅速な多重化QRT-PCRを使用して、SmartCycler(登録商標)装置(Cepheid)でこの研究を行った。サーモサイクラープラットフォームにおけるこの変化に由来する、相対発現計算値におけるわずかな差異が観察されたが(データは示さず)、QRT-PCR解析の頑健性を間接的に評価するための努力において、二次スクリーニングからの分類アルゴリズムを補正率(correction factors)なしで検証用セットデータに対して適用した。
【0113】
病理学的検討から、中央値腫瘍%が60%の陽性リンパ節(5%〜95%の範囲)である、73個の転移陰性SLNおよび17個の転移陽性SLNが同定された。4個の選択されたマーカー、およびマーカー組合せのそれぞれについてのこの相対的発現データは、図10A〜10Mにおいて示され、そして個別のマーカーおよびすべての潜在的なマーカー対についての予想分類精度は、表Hにおいて報告される。
【0114】
【表8】

【0115】
二次スクリーニングから得られるカットオフ値(個別のマーカー)または線形予測規則(マーカー組合せ)を検証用セットデータに対して適用した場合、全体的な分類精度は、89%(MGB1単独)〜98%(TACSTD1単独、TACSTD1/PIP、PIP/CK19、およびMGB1/CK19)の範囲であった。二次スクリーニングから得られた確率等高線を適用した場合、いくつかのマーカー組合せにより、陽性リンパ節の16/17(94%)が>99.9%の確率で同定されたが、これに対して、すべての陰性のリンパ節は、99%の確率等高線の中に入った。1つの組織学的に陽性のサンプルは、4種類のマーカーすべてを用いた解析により>95%の確率により陰性として特徴づけられた。解析後の検討において、この試料は、2人の病理学者により異なって解釈されたことが分かった。残りの8枚のスライドには存在しなかった最初の2枚の連続切片中の腫瘍の極小病巣に基づいて、一致した意見に到達した。したがって、この試料が、QRT-PCRにより陰性であるとして一貫して分類されてきたという我々の知見は、サンプリング誤差を示している可能性がある。
【0116】
これらのデータから、我々は、リンパ節中の転移性乳癌を正確に検出することができる多数のmRNAマーカーおよびマーカー組合せが存在すると結論づけられた。しかしながら、ヒトゲノム中には、CK19についての少なくとも3個の偽遺伝子が存在し、これらはイントロン配列を欠損する。したがって、mRNA-特異的プライマーセットを、CK19について設計することができず、そしてサンプル中に混入するゲノムDNAを完全に消化するためのDNAse処理が失敗すると、擬陽性結果が生み出されうる。したがって、その他の潜在的な陰性の寄与もなく、最高精度を生み出す組合せは、TACSTD1とPIPのマーカー対である。
【0117】
GeneXpert(登録商標)を用いた自動化リンパ節解析:
別個の患者から得た18個のリンパ節試料を、マーカーTACSTD1およびPIPについて、完全に自動化されたQRT-PCRアッセイを用いて評価した(図11Aおよび11B)。組織学的検討の結果、9個の陽性リンパ節(60〜95%腫瘍)および9個の陰性リンパ節から構成されたことが確認された。二次スクリーニングセットから得たデータに基づいて、決定規則を使用して線形決定規則または等確率等高線解析のいずれかにより予め解析された場合、多重化GeneXpert(登録商標)アッセイは、18個の試料すべてを、アッセイあたり35分以内に正確に(100%)特徴づけた。完全に自動化された迅速なQRT-PCRアッセイは、転移性乳癌の存在についてリンパ節を正確に特徴づけたと我々は結論づけられる。
【0118】
上述した方法は、組織学的検討および免疫組織化学的検討を含む完全なSLN解析の現在の方法と比較して、2マーカーQRT-PCRアッセイを使用して乳癌患者のSLN中の転移性疾患を並はずれて正確に検出することを提供すると見られる。同様に、アッセイをGeneXpert(登録商標)装置を使用して完全に自動化した場合に得られた、リンパ節試料の正確な分類を示す。このように、このアッセイは、SLNB試料の現在の凍結切片解析の正確さを上回っており、そして完全な組織学的解析およびIHC解析よりも以下の点で潜在的に優れている:1)完全に自動化され、ヒューマンエラーの可能性を低減する、2)主観的解析を排除しそして標準化を向上させることにより、客観的な基準を使用する、そして3)反応は35分未満で完了され、手術中の使用を容易にし、および患者の不安を低減させる。
【0119】
以前の研究は、リンパ節のRT-PCR解析はIHCよりも感度が高いかどうか、そしてその結果、乳癌患者の臨床段階をさらに改良することができるかどうか、を目的としてきた。本発明の研究は、それらの研究とは以下の点で異なる。すなわち、本発明の目的は、QRT-PCRが最終的に解析された組織学的に陰性のSLNにおいて転移性疾患を同定するかどうかを決定することではなく、タイムリーさ、再現性あるいは客観性、そして自動化という観点で、現在の解析方法を超える、という点にある。しかしながら、QRT-PCR解析の感度、そしてこの自動化アッセイのサンプリングをより高い%のLN(現在のSLNB解析は試料の1.5%未満しか調べない)を評価することにより改良する能力についての文献に基づいて、このアッセイは、この点に関して現在の技術を超えることができることを保証することができると考えられる。
【0120】
このアッセイは、究極的には、試験の客観的性質により、従来からの組織学的解析よりも優れていることを証明する可能性がある。しかしこの利益は暗示され、そして科学的にまだ証明されていない。微小転移疾患についてのリンパ節の正確な組織学的解析は、本質的に客観的な理想的条件のもと、骨の折れることであり、そして腫瘍細胞の件鼻的病巣の解釈は、臨床的結果のデータをしのいだ。AJCC Cancer Staging Manual, 第6版は、これらの材料の解釈における一貫性を促進する定義を確立したが、しかしこれらの定義は、病理学者のリンパ節の主観的解釈をさらに要求する者である。この問題について検討した唯一の刊行された研究において、Roberts, et al.は、10人の病理学者が25例の乳癌SLNB試料を評価した場合、わずか12%の事例だけがすべての病理学者により正確に分類され、そして80%のIHC-陽性事例は、少なくとも1人の病理学者が事例を不正確に特徴づけた(Roberts CA, et al. “Interpretive disparity among pathologists in breast sentinel lmph node evaluation”. Am J Surg 2003; 186(4):324-329)。対照的に、本明細書中でそして別個に示す様に、完全に自動化されたQRT-PCRアッセイは、頑健で客観的である。したがって、再現性があり完全に自動化された客観的なSLNの解析は、現在の解析方法を超える潜在力を有しており、そしてこの対比を行うために設計された多中心予測試験を現在開発中である。
【0121】
まとめると、完全に自動化されそして35分で完了される2マーカーQRT-PCRアッセイは、転移性乳癌の存在につき、リンパ節を正確に特徴づけることができることが示された。このアッセイは、手術中解析の現行法よりは明らかに優れており、そして免疫組織化学的解析を含む完全な組織学滴加移籍の現在の方補と同じくらい正確である。このようなアッセイについての理論的な利点には、様々な健康管理環境にわたる標準化の改善、リンパ節のサンプリングの増加、そして人的誤差の減少が含まれる。
【0122】
実施例4 - 3マーカー多重化PCRアッセイ
プライマーおよびプローブの設計
3種すべてのプライマー/プローブセットを、エクソンジャンクションをカバーするように設計して、ゲノムDNAを増幅する可能性を減少させ、そしてその他の既知遺伝子に対する全体の相同性が低い領域にあるようにした。2種の標的遺伝子用のプライマー対を、内在性対照遺伝子の変性温度よりも少なくとも4℃高い変性温度のアンプリコンを生成する様に設計した。最初に、2種の標的遺伝子用のプライマー対を、内在性対照遺伝子と同様のアニーリング温度を有するように設計した。次いで、標的遺伝子用のプライマーを、“GCクランプ” を付加することにより修飾して、アニーリング温度を内在性対照よりも少なくとも4℃高くした(表I)。
【0123】
【表9】

【0124】
プライマーおよびプローブの配列は、内在性対照遺伝子、β-GUSについて、そして2種の標的遺伝子、PIPおよびTACSTD1について、示される。プライマー/プローブ溶融温度および結合%を予測するためにVisual OMPソフトウェアを使用したソフトウェアシミュレーションを実行したアニーリング温度条件も、示される。
【0125】
アニーリング温度の研究
アニーリング温度の研究を、25μL反応チューブ中でSmartCycler(登録商標)(Cepheid)プラットフォームにて、一重で行った。プラスミド、pENTR-TACSTD1、pENTR-PIP、およびpOT7-βGUSを、Invitrogenから入手し、そして低コピー数および高コピー数について、反応あたり適切な4E3および3E6コピー数でそれぞれ使用した。すべてのプローブを、200 nMで使用した。PIPおよびTACSTD1用のプライマーを、400 nMで使用した。β-GUS用のプライマーを、600 nMで使用した。反応を、4 mM MgCl2および200μM dNTPを添加した製造者のバッファー中、2.5U Platinum Taqにより行った。β-GUS増幅用のサイクリング条件は、2段階プロトコルを使用して行った。第1段階において、サンプルを95℃で30秒間変性した。第2段階において、95℃で1秒間の変性工程、56℃〜68℃まで変化させて4秒間のアニーリング工程、そして68℃で6秒間の光学的読み取り/伸長工程からなる3温度プロトコルを40サイクル使用した。
【0126】
PIPおよびTACSTD1用のサイクリング条件を、3段階プロトコルを使用して行った。第1段階において、サンプルを95℃にて30秒間変性させた。第2段階において、95℃で1秒間の変性工程、60℃で4秒間のアニーリング工程、そして68℃で6秒間の光学的読み取り/伸長工程からなる3温度プロトコルを20サイクル使用した。第3段階において、95℃で1秒間の変性工程、そして60℃〜74℃まで変化させて6秒間のアニール/伸長/光学的読み取り工程からなる2温度プロトコルを30サイクル使用した。図12、13および14は、β-GUS、PIPおよびTACSTD1アッセイについてのPCR性能に対する、アニーリング温度の作用を示す。図12は、β-GUS増幅性能が62℃より高い場合には最適ではなく、そして68℃では全く生じないことを示す。図13および14は、PIPおよびTACSTD1が両方とも、少なくとも74℃のアニーリング温度までは、最適に増幅することを示す。
【0127】
効率的な研究のための連続希釈法
一重の研究のため、プラスミド3000 pg〜0.092 pgまでTEバッファー中で連続的に希釈し、そしてPCR反応においてテンプレートとして使用した。反応を、25μL反応チューブを使用して、SmartCycler(登録商標)プラットフォーム上で行った。プライマー濃度、プローブ濃度、酵素濃度、MgCl2濃度、およびdNTP濃度は、アニーリング温度の研究のために使用したものと同じであった。
【0128】
PIPおよびTACSTD1について、サイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル;そして第3段階、95℃で1秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル;からなる、3段階プロトコルであった。
【0129】
β-GUSについて、サイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル;そして第3段階、86℃で1秒間、60℃で4秒間、および光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル、からなる3段階プロトコルであった。
【0130】
三重化の効率の研究について、二重にしたサンプルを各点について調製し、そして各サイクリングプロトコルに独立して供した。テンプレート混合物は、各プラスミドを別個に連続希釈し、そしてそれらを様々な比率で混合することにより調製された。反応条件および容量は、一重反応についての場合と同一であった。
【0131】
予想されたアンプリコンサイズおよび変性温度を、一重および三重化において連続希釈法を使用して測定した反応効率と共に、以下の表Jに示す。
【0132】
【表10】

【0133】
変性温度の研究
変性温度の研究は、上述した一重反応設定で行った。使用されたサイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間;そして第3段階、80℃〜95℃の様々な温度で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル、の3段階プロトコルでから構成された。図15は、β-GUS増幅が、通常は84℃低度の変性温度で進行するが、PIPおよびTACSTD1の反応は、88℃またはそれ未満では進行できないことを示す。
【0134】
高内在性対照の存在における標的のダイナミック・レンジ
様々な比率のプラスミド混合物を、表Kに示すように調製した。三重の反応を、上述したように三重で設定した。サイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを20サイクル;そして第3段階、95℃で1秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを30サイクル、からなる3段階プロトコルであった。得られたCt値の平均および標準偏差を、図16に示す。これらのデータは、2種の標的遺伝子(PIPおよびTACSTD1)のダイナミック・レンジが、少なくとも6 Ctの発現の倍差異を伴う、高い効率の直線であることを示す。
【0135】
【表11】

【0136】
全RNAの研究
MDA-MB-453細胞(Stratagene)またはヒトリンパ節(Ambion) から単離した1μgの全RNAを、RNA精製後にRT-PCRを行うように設計されたカートリッジ中、GeneXpert(登録商標)で行われたRT-PCR反応において、テンプレートとして使用した。各サンプルについて、RNAを溶解バッファー(50 mM Tris、pH 7.0、4 Mグアニジンチオシアネート、125 mM DTT)に添加し、そしてエタノールと混合し、その後カートリッジにローディングした。RNAを固相材料により捕捉し、そして0.2M KCl、10%PEG 8000、20 mM Tris、pH 8.0にて洗浄し、その後、30μL DEPC-処理水で溶出した。溶出物を、1×PCRバッファー(Invitrogen)、6mM MgC12、267μM dNTP、80 nMの各RTプライマー、40U Roche RNAse Protector、そして2.6U Omniscript(Qiagen)からなるRT反応構成要素と混合した。RT反応を48℃で5分間行い、そして引き続いて、95℃で30秒間不活性化した。不活性化工程を全部で2回繰り返した。この混合物に対して、PCRプライマーおよびプローブを、上述したような最終濃度、そして0.1 U/μL Eppendorf Taq + 15μMホットスタート阻害剤となるように添加した。さらに10×PCRバッファーを容量変化を修正するために添加した。
【0137】
MDA-MB-453サンプルについてのサイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを27サイクル;そして第3段階、86℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを15サイクル、からなる3段階プロトコルであった。“次の段階に進む”を使用する場合、これは、Ct検出の後できるだけ早くPIPチャンネルと進行とをモニターするように設定された。
【0138】
ヒトリンパ節サンプルについてのサイクリングプロトコルは、第1段階、95℃で30秒間を1サイクル;第2段階、95℃で1秒間、60℃で4秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを27サイクル;そして第3段階、95℃で1秒間、そして光学系を“on”にしながら68℃で6秒間のサイクルを15サイクル、からなる3段階プロトコルであった。“次の段階に進む”を使用する場合、Ct検出後にできるだけ早く、β-GUSチャンネルおよび進行をモニターするように設定された。図17〜20は、“次の段階に進む”をオフにしたこれらの実験の結果(図17(MDA-MB-453細胞)および19(ヒトリンパ節))またはオンに実験の結果(図18(MDA-MB-453細胞)および20(ヒトリンパ節))を示す。
【0139】
これらのデータは、三重化アッセイにおいて、標的配列の相対的増幅を修飾する上述した方法の有効性を示す。実施例3は、2種の標的を組み合わせて使用する場合に、おそらくはヒト個体群における癌性腫瘍の異種性の性質のため、前哨リンパ節中の転移乳癌細胞の検出能力の改善を示す。
【0140】
個々のバイオプシーサンプルのサイズは非常に可変性であり、核酸検出の測定値のいずれかにおいて、もともとの可変性の相を追加する。この単純なサイズ可変性を修正するために一つのアプローチは、内部標準化のために内在性対照遺伝子を使用することである。従って、例えば、乳癌転移についての2標的アッセイは、3遺伝子(各標的遺伝子+1つの内在性対照遺伝子)を用いた多重化アッセイデザインを必要とする。
【0141】
実施例3において示されるように、前哨リンパ節における乳癌転移検出の具体的な例について、多重化PCR検出キットにおいて有用である可能性がある標的遺伝子の多数の組合せが存在する。しかしながら、すべての組合せが実用的であるという訳ではない。いくつかの潜在的標的遺伝子が、正常リンパ節組織においては高度に発現されており、従って診断ツールとしては望ましくない用途である。究極的には診断キット中に含まれるものとして選択される標的遺伝子はまた、実際の臨床サンプルにおいて(ブートストラップ解析において例示されるような)高い正確度標準を満たしていなければならず、そして正常な個体群および疾患個体群の中の緊密な分布およびこれらの個体群感の明確な分離を示す。追加の分類には、ゲノムDNA増幅の可能性を排除するために高度にcDNA-特異的なプライマーを設計する能力が含まれ、そして発現が、手術中の状況下においてアッセイの結果をタイムリーに送達することができる程に十分に高い範囲である。これらすべての分類を最高に満たす組合せは、PIPおよびTACSTD1の組合せである。
【0142】
望ましい発現レベルよりも若干低いにもかかわらず、患者サンプル中に極めて厳密に分布しているため、β-GUSを内在性対照遺伝子として選択した。このことは、内在性対照についての選択プロセスにおける最高の重要度の分類であると考えられる。その他の分類には、高度にcDNA-特異的なそして高発現レベルのプライマーを設計する能力が含まれる。その他の内在性対照遺伝子は、潜在的にこの診断キット中で使用することができる。しかしながら、β-GUSよりも高い発現レベルを有すると考えられるすべての可能性もまた、試験した患者の個体群において幅広く分布していた。
【0143】
発現レベルが非常に高い内在性対照遺伝子が、患者において厳密な分布を有すると同定された場合、内在性対照遺伝子がいつも標的遺伝子のいずれかよりも存在量が多いと推測することができる、診断キットをデザインすることができる。その様な理論的な状況下において、アッセイデザインは、本開示において記載されるものから単純化することができ、より伝統的に許容された方法を使用することができる。このことは、より頑健なアッセイのデザインについての潜在性を有する可能性がある。しかしながら、本発明においては、その様な状況は同定されず、そして推測的な知見を未知サンプルについて仮定することはできなかった。この場合において、内在性対照遺伝子のいずれかまたは1つの標的遺伝子所定のサンプルのいずれかにおいて、最高の存在度である可能性があった。従って、二元的停止方法を、非常に効率的で正確なPCR反応が、多重化アッセイフォーマットで同時的に生じることを可能にした。
【0144】
実施例3中に開示された患者のデータから、2種の標的遺伝子の相対的発現レベルが、約5.5 Ct(〜45-倍)の範囲で変化するこの診断キットにおける用途を選択した。実施例4において、より高いレベルの内在性対照の存在下における2種の標的の直線のダイナミック・レンジが、少なくとも6 Ct、または64倍であることが示された。このように、停止させるさらなるストラテジーは、本明細書中で開示される二元的な停止ストラテジー以外に必要なかった。
【0145】
ここで本発明を十分に記載したが、当業者にとって、幅広い、そして均等な条件、製剤、そして本発明の範囲またはいずれかのその態様に影響を与えないその他のパラメータの範囲内で行うことができることが、理解される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、サイトケラチン7(CK7)マーカー(SEQ ID NO: 1)のcDNA配列のリストである。
【図2】図2は、サイトケラチン19(CK19)マーカー(SEQ ID NO: 2)のcDNA配列のリストである。
【図3】図3は、マンマグロビン1(MGB1)マーカー(SEQ ID NO: 3)のcDNA配列のリストである。
【図4】図4は、マンマグロビン2(MGB2)マーカー(SEQ ID NO: 4)のcDNA配列のリストである。
【図5】図5は、プロラクチン誘導性タンパク質(PIP)マーカー(SEQ ID NO: 5)のcDNA配列のリストである。
【図6】図6は、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達分子1(TACSTD1)マーカー(SEQ ID NO: 6)のcDNA配列のリストである。
【図7】図7は、乳癌患者の原発腫瘍、腫瘍陽性リンパ節、および良性リンパ節における、CK7、CK19、MGB1、MGB2、PIP、およびTACSTD1の発現レベルを示す散布図である(CK7 - 菱形;CK19 - 四角;MGB1 - 薄い三角;MGB2 - 白抜き三角;PIP - アスタリスク;およびTACSTD1 - 棒)。
【図8】図8A-Oは、乳癌患者のリンパ節における良性細胞および悪性細胞を区別するための2マーカーシステムの能力を示す散布図を提供する(陰性- 薄い灰色の丸;陽性- 濃い灰色の丸)。
【図9−1】図9Aは、原発腫瘍、良性リンパ節および陽性リンパ節において観察された個々の遺伝子発現についてのリンパ節の二次スクリーニングセットから得られたデータを提供する。水平線は、レシーバー-オペレーター特性曲線解析により計算された最も正確なカットオフ値を示す。個々のマーカーの分類特性は、以下の表Gにおいて報告される。
【図9−2】図9B-Eは、線形識別決定則(linear discriminator decision rule)を使用した、潜在的な2マーカー組み合わせについての遺伝子発現に対する二次スクリーニングセットデータを提供する。個々のマーカーの場合と同様に、黒線は、最も正確な特徴を生成する二次スクリーニングセットデータから生成された決定則を示す。マーカー組み合わせの分類特性は、表Gにおいて報告される。
【図9−3】図9F-Iは、等確率等高線統計的解析を適用する、潜在的な2マーカー組み合わせについての遺伝子発現に対する二次スクリーニングセットデータを提供する。等確率曲線は、良性リンパ節において、2マーカーについて観察された平均発現値周辺で生成された。このことは、CK19とMGB1のマーカー組み合わせがリンパ節を正確に特徴づけるのに対して(表Gを参照)、これらのマーカー について良性リンパ節において見いだされた幅広い発現分布が、決定則を適用する際に、オプティミズムを増大することを示す。この解析方法により、TACSTD1およびPIPのマーカー組み合わせは、より確信的にリンパ節を特徴づける。
【図10−1】図l0Aは、陰性リンパ節および陽性リンパ節において観察された個々の遺伝子発現についての、SLNの確認セットから得られたデータを提供する。水平線は、二次スクリーニングセットから得られたデータから計算された決定則を示す。個々のマーカーの分類特性は、表Hにおいて報告される。
【図10−2】図10B-Gは、すべての可能性のあるマーカー対について線形識別決定則を使用して、2マーカーの組み合わせについての遺伝子発現に対する確認セットデータを提供する。個々のマーカーの場合と同様に、黒線は、最も正確な特徴付けを生成する二次スクリーニングセットデータから生成された決定則を示す。マーカー組み合わせの分類特性は、表Hに報告される。
【図10−3】図10H-Mは、二次スクリーニングセットデータから生成された等確率等高線を使用して解析された確認セットデータを提供する。一つ以外のすべての陽性のリンパ節について観察された相対発現レベルは、0.999信頼性等高線の十分に外側であった。いくつかの陽性リンパ節は、ただ一つのマーカーについて陽性であり(左上または右下四分円中に位置する赤い十字)、2マーカーアッセイが高い特異性を維持しつつ感度を高めることを示す。
【図11】図11A-Bは、完全に自動化された、リンパ節の2-マーカーQRT-PCR解析の結果を提供する。線形決定則解析(図11A)または等確率等高線解析(図11B)のいずれかにより、このアッセイは、評価した18個すべてのリンパ節を正確に特徴づけた(9個は陰性、9個は陽性)。
【図12】図12は、β-GUSプライマーの性能に対するアニーリング温度の作用を示すグラフである。
【図13】図13は、PIP PCR性能に対するアニーリング温度の作用を示すグラフである。
【図14】図14は、TACSTD1 PCR性能に対するアニール温度の作用を示すグラフである。
【図15】図15は、標的性能に対する温度の作用を示すグラフである。
【図16】図16は、実施例4に記載したβ-GUS、PIP、TACSTD1の三重化アッセイの直線ダイナミックレンジを示すグラフである。
【図17】図17は、“次のステージへ進む”をオフにしたGeneXpert(登録商標)でのMDA-MB-453全RNAテストを示すグラフである。
【図18】図18は、“次のステージへ進む”をオンにしたGeneXpert(登録商標)でのMDA-MB-453全RNAテストを示すグラフである。
【図19】図19は、“次のステージへ進む”をオフにしたGeneXpert(登録商標)でのヒトリンパ節全RNAテストを示すグラフである。
【図20】図20は、“次のステージへ進む”をオンにしたGeneXpert(登録商標)でのヒトリンパ節全RNAテストを示すグラフである。
【図21】図21は、ANSプロセスの一態様を実施するためのシステムの一態様を示す。
【図22】図22は、ANSプロセスの一態様のフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物中、2またはそれ以上の増幅段階において、第一の核酸配列を増幅させて第一のアンプリコンを生成し、および第二の核酸を増幅して第二のアンプリコンを生成することを含む、多重化核酸増幅反応方法であって、
各増幅段階は1またはそれ以上のPCRサイクルを含み、
各PCRサイクルは変性工程、アニーリング工程、そしてアニーリング工程と同一温度で行ってもよい伸長工程を含み、
第一のアンプリコンは第一のTmを有しそして第二のアンプリコンは第一のTmとは異なる第二のTmを有し、ここで2またはそれ以上の増幅段階は、異なるアンプリコン変性条件を有し、それにより第一のアンプリコンと第二のアンプリコンとの相対的蓄積を調節する、
前記多重化核酸増幅反応方法。
【請求項2】
反応混合物中の第一および第二のアンプリコンの蓄積をモニタリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の蛍光指示薬が、第一のアンプリコンの蓄積の結果として反応混合物中で蓄積され、そして第二の異なる蛍光指示薬が、第二のアンプリコンの蓄積の結果として反応混合物中に蓄積される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
増幅が、蛍光5'エンドヌクレアーゼアッセイである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物が、第一または第二のアンプリコンに対して特異的なモレキュラービーコンまたはスコービオンプローブを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物が、異なるTmを有する第一のプライマーセットと第二のプライマーセットとを含有し、そして増幅反応が異なるプライマーアニーリング条件を有する2種類の段階を含み、それにより、第一のプライマーセットと第二のプライマーセットとにより生成されるアンプリコンの相対的蓄積を、2種類の段階の間で調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第三の核酸配列が増幅されて、第三のアンプリコンを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第四の核酸配列が増幅されて、第四のアンプリコンを生成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
(a) 第一の反応段階における1またはそれ以上のリポーターをモニターする工程〔1またはそれ以上のリポーターの蓄積は、反応混合物中の1またはそれ以上のアンプリコンの蓄積に対応する〕;そして
(b) 1またはそれ以上のリポーターが閾値レベルを越えた場合には、第二の反応段階に進行させる工程;
にしたがって、サイクル反応プロトコルをコンピュータ装置により調節するサーマルサイクラー中で増幅反応を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
反応を次の段階に進行させる場合に、反応プロトコルを変化させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
閾値を越えた後、次の段階に進む前に、1またはそれ以上の追加のサイクルを行うことをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
モニターしたリポーターのどれも閾値を越えない場合、反応を終了させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
次の段階に進んだ後、固定数のサイクルで反応を終了させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
異なるリポーターの閾値越えが、同一の段階で起こるか、または別の段階で起こる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
サーマルサイクラーが、反応混合物中での蛍光指示薬の蓄積をモニターするように構成された励起用レーザーおよび蛍光検出装置を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
患者のリンパ節由来の核酸サンプル中における腫瘍関連カルシウムシグナル伝達分子1(TACSTD1)、プロラクチン誘導性タンパク質(PIP)、および内在性対照mRNAの発現レベルを定量することを含む、患者のリンパ節中に乳癌細胞が存在することの指標となるマーカーの発現を同定する方法。
【請求項17】
腫瘍関連カルシウムシグナル伝達分子1(TACSTD1)、プロラクチン誘導性タンパク質(PIP)、および内在性対照mRNAの発現レベルを測定する核酸サンプルに対する多重化QRT-PCR反応を行うことを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1またはそれ以上の以下のプライマーまたはプローブ:
CTGGGACTTTTACACCAACAGAACT(SEQ ID NO: 5、塩基333〜357);
GCAGATGCCTAATTCCCGAA(SEQ ID NO: 12);
TGCAAATTGCAGCCGTCGTTGATGT(SEQ ID NO: 5、塩基386〜405);
TCATTTGCTCAAAGCTGGCTG(SEQ ID NO: 6、塩基348〜368);
GGTTTTGCTCTTCTCCCAAGTTT(SEQ ID NO: 13);
AAATGTTTGGTGATGAAGGCAGAAATGAATGG(SEQ ID NO: 6、塩基371〜402);
GCAGATGCCTAATTCCC(SEQ ID NO: 15);
AGCCCATCATTGTTCTG(SEQ ID NO: 16);
GCGGCTCCAGCTCCTGTTCAG(SEQ ID NO: 17);
GGCGCATTATGATCTTCCGAGTGTTGTC(SEQ ID NO: 18);
CCAGCCCTGCCACCCTGCTCCTG(SEQ ID NO: 5;塩基65〜87);
GGGAATGTCAAAATTCTTT(SEQ ID NO: 19);
GCGCGTTCGGGCTTCTGCTT(SEQ ID NO: 20);
GCGAGTTTTCACAGACACATTCTTCCTGAG(SEQ ID NO: 21);
CGCGGCGACGGCGACTTTTGC(SEQ ID NO: 6;塩基220〜240);
AGTTTACGGCCAGCTTG(SEQ ID NO: 22);
CTCATTTGGAATTTTGCCGAT(SEQ ID NO: 23);
CCGAGTGAAGATCCCCTT(SEQ ID NO: 24);
TGAACAGTCACCGACGAGAGTGCTGG(SEQ ID NO: 25);そして
TTTGTTGTCTCTGCCGAGT(SEQ ID NO: 26);
を多重化方法において使用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a) 包装材料;
(b) 第一のプライマー対および第二のプライマー対を含有する、包装材料中に含まれる容器〔ここで、多重化PCRアッセイにおいて、第一のPCRプライマー対が、第一のTmを有するアンプリコンを生成し、そして第二のPCRプライマー対が、第一のTmとは異なる第二のTmを有するアンプリコンを生成する〕;そして
(c) 反応混合物中で第一の核酸配列を増幅して第一のアンプリコンを生成すること、および第二の核酸を増幅して第二のアンプリコンを生成すること、を含む、多重化核酸増幅方法を記載した指示書〔ここで、第一のアンプリコンが第一のTmを有し、そして第二のアンプリコンが第一のTmとは異なる第二のTmを有し、そして、反応には異なるアンプリコン変性条件を有する2種類のプロトコルを含む2段階が含まれ、それにより第一のアンプリコンと第二のアンプリコンとの相対的蓄積が調節される〕;
を含むキット。
【請求項20】
腫瘍関連カルシウムシグナル伝達分子1(TACSTD1)、プロラクチン誘導性タンパク質(PIP)、および内在性対照mRNAに対して特異的なアンプリコンを生成するためのプライマーを含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
1またはそれ以上の以下のプライマーまたはプローブ:
CTGGGACTTTTACACCAACAGAACT(SEQ ID NO: 5、塩基333〜357);
GCAGATGCCTAATTCCCGAA(SEQ ID NO: 12);
TGCAAATTGCAGCCGTCGTTGATGT(SEQ ID NO: 5、塩基386〜405);
TCATTTGCTCAAAGCTGGCTG(SEQ ID NO: 6、塩基348〜368);
GGTTTTGCTCTTCTCCCAAGTTT(SEQ ID NO: 13);
AAATGTTTGGTGATGAAGGCAGAAATGAATGG(SEQ ID NO: 6、塩基371〜402);
GCAGATGCCTAATTCCC(SEQ ID NO: 15);
AGCCCATCATTGTTCTG(SEQ ID NO: 16);
GCGGCTCCAGCTCCTGTTCAG(SEQ ID NO: 17);
GGCGCATTATGATCTTCCGAGTGTTGTC(SEQ ID NO: 18);
CCAGCCCTGCCACCCTGCTCCTG(SEQ ID NO: 5;塩基65〜87);
GGGAATGTCAAAATTCTTT(SEQ ID NO: 19);
GCGCGTTCGGGCTTCTGCTT(SEQ ID NO: 20);
GCGAGTTTTCACAGACACATTCTTCCTGAG(SEQ ID NO: 21);
CGCGGCGACGGCGACTTTTGC(SEQ ID NO: 6;塩基220〜240);
AGTTTACGGCCAGCTTG(SEQ ID NO: 22);
CTCATTTGGAATTTTGCCGAT(SEQ ID NO: 23);
CCGAGTGAAGATCCCCTT(SEQ ID NO: 24);
TGAACAGTCACCGACGAGAGTGCTGG(SEQ ID NO: 25);および
TTTGTTGTCTCTGCCGAGT(SEQ ID NO: 26);
を含む、請求項19に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図8L】
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【図8M】
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【図8N】
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【図8O】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10I】
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【図10J】
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【図10K】
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【図10L】
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【図10M】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−515393(P2008−515393A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532597(P2007−532597)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/033516
【国際公開番号】WO2006/034215
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)
【Fターム(参考)】