説明

複数位置から複数のX線ビームを生成するための装置及び方法

マルチビームX線生成装置は、陰極上に所定のパターンで配置され、固定され個々に制御可能な複数の電子放出ピクセルを有した、固定電界放出陰極と、前記ピクセルの前記所定パターンに対応する、所定パターンで配置された複数の焦点を備えた、前記陰極の反対側に位置する陽極と、前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備える。別の構成は、その少なくとも一部に電子放出物質が配置された平面状の表面を有した固定電界放出陰極と、前記陰極の平面状の表面に対して空間を隔てて平行に設けられ、サイズの異なる複数の開口部を有したゲート電極と、前記陰極と空間を隔てて反対側に位置し、前記電子放出物質に合わせて複数の焦点を有する陽極と、前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備え、前記ゲート電極は、少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、前記陰極から放出された電子の少なくとも1つのビームを送出するように前記開口部を操作できるように、動作可能であるX線生成装置として実現される。関連する方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数位置からの複数のX線ビームを生成するための装置及び手法に関する。例えば、個々にアドレス可能な電子を放出する複数のピクセルを有する電界放出陰極を用いる方法及び装置に関する。ピクセルから放出される電子は陽極上のそれぞれ異なった焦点に向けられ、その結果、同じ装置の複数位置からの複数のX線ビームを生成することができる。
【背景技術】
【0002】
以下、様々な構成と手法を説明する。しかし、ここで説明することは先行技術の是認として解釈されるべきではない。それとは反対に、ここで説明することは適切な法の規定の下で先行技術と見なされないことを実証する権利を、適切に、出願人は明らかに有するのである。
【0003】
従来のX線管は陰極(カソード)、陽極(アノード)、及び、真空ハウジングを備える。陰極は正の陽極へ向けて電子を送出する負の電極である。陽極と陰極との間に加えられた電界を介して、陽極は電子を引きつけ、加速させる。陽極は、一般的には、タングステン、モリブデン、パラジウム、銀、及び、銅等の金属でできている。電子がターゲットへ突進するとき、そのエネルギーのほとんどは熱エネルギーへ変換される。そのエネルギーの一部はターゲットから放出されるX線光子に変換され、X線ビームを形成する。陰極及び陽極は真空チェンバー(真空槽)内に密閉される。この真空チェンバーは、Be(ベリリウム)等の原子番号の小さい元素から一般的に構成されるX線を透過するウィンドウを含む。
【0004】
X線管は、工業上或いは医療上の、イメージングや治療の用途に広く用いられている。全てのX線のイメージングは、異なる物質(材料)は異なるX線の吸収係数を有するという事実に基づいている。従来のX線のイメージング手法は3次元物体の2次元射影を生成する。そのような処理においては、X線ビーム方向における分解能が失われてしまう。
【0005】
「CAT(Computerized Axial Tomography)スキャニング」としても知られているコンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)のイメージングは、異なる物質によってX線の吸収が異なることに基づいているが、通常とは異なるイメージングを提供し、これは断層像として知られている。CTイメージングシステムは物体の断層像や「スライス」を生成する。異なった視角から取得された、同一物体に係る一連の射影画像を集めることにより、その物体の内部構造を所定の解像度で示す3次元画像を再現することができる。今日では、CT技術は、医療診断テストや、半導体プリント基板(PCBs:printed circuit boards)の検査等の工業上の非破壊検査や、爆発物の検出や、空港のセキュリティスキャン等に広く用いられている。
【0006】
半導体産業においては、プリント基板上の機構は小さくなりつつあり、また、多層構造の回路はさらに一般的なものになりつつある。このため、3次元検査を高速に実行可能な装置に対する要求が高まっている。しかし、今日の一般的な医療用CTスキャナのほとんどは、患者の周囲を回転する1つのX線管を使用し、処理工程において、1つのスライス画像を再現するために何百もの射影画像を取得することが必要である。医療用CTスキャナにおいて用いられるX線管は、1つの電子放出陰極と1つの焦点とを有する。工業上の検査、特にプリント基板(PCB)検査においては、狭い視野角の範囲から少数の射影画像しか取得されない。このような特別の目的のために、陽極表面上の複数の焦点から複数のX線ビームを生成するためのいくつかの装置がこれまでに開発されている。その目的は、X線管を機械的に動かすことなく、異なった視角からの複数の射影画像を生成することである。そのような装置は全て、電子を生成する熱陰極に基づいている。同じ陰極から生成された電子は、X線管の内部に設けられた複雑な電磁装置により、陽極の異なった場所に導かれる。この種の装置は一般的に図1のように図解される。この装置1000は、焦点の配置とステアリングコイル1004、1006を通過する電子eのビームを放出する熱陰極1002を備え、これにより、X線1010を生成する複数のX線放出焦点を有する陽極表面1008へビームeを導く。
【0007】
例えば、特許文献1には他の装置が開示されている。この装置は、案内が可能な電子ビームを生成するための陰極を有するX線源を備えている。制御装置は電子ビームをターゲット陽極上の所定位置に導く。ユーザは適切な所定位置を柔軟に選択することができる。検出器は、所定位置のそれぞれから検査対象を経由して伝達されたX線を受信し、所定位置のそれぞれに対応する画像を生成する。画像はデジタル化され、更に、関心のある領域の画像を生成するために結合されることもある。また、特許文献2、特許文献3に開示されているように、X線影グラフを固定ビデオスクリーン上で変換・視認される光学画像に変換する回転検出器と同期して、電子ビームは円形の走査パターンで管陽極上に偏向制御される。コンピュータシステムは、検査中の対象をサポートし、一連の関心領域を視野内に移動させる、自動位置決めシステムを制御する。高画質を保つため、コンピュータシステムは、電子ビーム偏向、光学システムの回転、システムの構造上の誤差の調整を更に制御する。そのような装置は一般的に図2のように図解される。例示的な装置2000は電子ビームeを生成する熱電子ビーム源2002を備える。電子ビームeは、管角度2008上にビームを導く焦点コイル2004、2006の配置を通過し、X線パターン2010を生成する。
【0008】
図3に模式的に示されているように、異なる角度から発せられるX線ビームを取得する第3の方法は、1つのX線ビーム管/源を機械的に回転させるものである。
【0009】
上述した手法でも目的を達成することはできるが、これらの単一の電子ビームに基づくX線検査は、解像度の限界や、視角の限界、コスト、効率性に関して、いくつかの欠点を有している。これらの従来の装置及び手法は、X線を生成し、異なる角度から複数のプリント基板(PCBs)の画像を取得するために、単一の電子源に依存しているという共通の欠点に苦しんでいる。このため、本質的に、これらは低速で、検査対象の物体について異なった角度から複数の画像を同時に生成することができない。また、これらは全て、X線源又はX線検出器のいずれかを機械的に動かす必要があり、これによりX線の焦点サイズ及びイメージングの品質において不一致が生ずることになってしまう。さらに、これらのX線システムは全て、温度に敏感で、長いウォームアップ時間を要し、作動と停止(on/off)を簡単に切り替えることができない、熱電子エミッタに依存している。このため、これらは簡単にプログラムすることができず、大量のエネルギーとX線システムの寿命を浪費してしまう。
【0010】
これまでに、電界放出型X線管の構想が研究されている。そのような装置においては、電界放出陰極が金属フィラメントと置き換えられる。電子の放出は、バイアス電圧がターゲットと陰極との間に適用される単純な2極管構成を介して実現することができる。放出のための閾値電界を電界が上回った場合に、電子が陰極から放出される。ゲート電極が陰極に非常に近接して設けられる、3極管構成を採用することもできる。そのような構成においては、ゲート電極と陰極との間にバイアス電界を適用するにより、電子が引きつけられる。そして、電界放出された電子は、ゲートと陽極との間の高電圧によって加速される。ここでは電子電流とエネルギーがそれぞれ独立に制御される。
【0011】
近年発見されたカーボン・ナノチューブは大きな電界増大因子(β)を有するため、スピント型チップ(Spindt-type tips)等の従来のエミッタと比較して放出のための閾値が低い電界が必要である。カーボン・ナノチューブは高電流において安定している。これまでに、個別の単一壁カーボン・ナノチューブからの1μA以上の安定した放出電流が観察されており、また、そのような物質を含んでいる肉眼で見える(macroscopic)陰極からの1A/cm2より大きい放出電流密度が報告されている。これらの特性は、電界放出X線装置のための電界エミッタとして、カーボン・ナノチューブを魅力的なものにしている。
【0012】
図4とそれに挿入されたものは、カーボン・ナノチューブ(CNT:carbon nanotube)陰極の、放出電流と電圧との典型的な関係を示している。図4は、1mA/cm2の電流密度に対して閾値電界が2V/μmである、古典的なFowler−Nordheim特性を示している。1μA/cm2を超える放出電流密度が容易に達成されている。カーボン・ナノチューブから電界放出された電子は、非常に狭いエネルギーと空間分布を有する。エネルギーの広がりは約0.5eVであり、電界に平行な方向に対する空間的広がりの角度は半角2〜5度である。冷陰極としてカーボン・ナノチューブを使用する潜在的可能性は、例えば、電界放出フラットパネル・ディスプレイ(FEDs:field emission flat panel display)や、発光素子、或いは、過電圧防止のための放電管等の装置において、これまでに実証されている。
【0013】
特許文献4は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、カーボン・ナノチューブに基づく電子エミッタ構造を開示している。
【0014】
特許文献5は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、高い放出電流密度を有するカーボン・ナノチューブの電界エミッタ構造を開示している。
【0015】
特許文献6は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、少なくとも部分的にはナノ構造を含む(nanostructure-containing)物質により形成された陰極を組み込むX線生成装置を開示している。
【0016】
特許文献7は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、固定され、個別に電気的にアドレス可能な複数の電界放出電子源を含む、X線を生成するための構造及び手法を開示している。
【0017】
特許文献8は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、圧電的、熱的、或いは、光学的な手段によって、電子放出電流を独立の制御することを可能にするX線生成装置を開示している。
【0018】
特許文献9は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、ナノ構造を含む物質を組み込んだ被覆電極の構成を開示している。
【0019】
特許文献10は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、少なくとも部分的にはナノ構造を含む物質に基づく電界放出陰極を組み込んだ電子機器を開示している。
【0020】
特許文献11は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、複数のアドレス可能な要素から形成された陰極を含むX線源を開示している。
【0021】
特許文献12は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、真空槽において陰極が処理された基板を備える、固体のX線源を有する造影システムを開示している。
【0022】
特許文献13は、ここでは全体として参照により組み込まれているが、冷電界放出陰極を含むX線生成装置を開示している。陰極の放出電流は様々手段により制御することが可能である。
【特許文献1】米国特許第5594770号公報
【特許文献2】米国特許第4926452号公報
【特許文献3】米国特許第4809308号公報
【特許文献4】米国特許(出願番号09/296,572、「カーボン・ナノチューブ電界エミッタ構造を備える装置及び装置を形成する処理」)
【特許文献5】米国特許(出願番号09/351,537、「薄膜カーボン・ナノチューブ電界エミッタ構造」)
【特許文献6】米国特許6553096号公報、「電界放出陰極を用いたX線生成手法」
【特許文献7】米国特許出願公開番号US−2002/0094064、「広域で個別にアドレス可能なマルチビームX線システムと、同じものを形成する方法」
【特許文献8】米国特許(出願番号10/358,160、「電子ビーム電流を制御する方法及び装置」)
【特許文献9】米国特許出願公開番号US−2002/0140336、「改善された電子放出及び燃焼の特性を有する被覆電極」
【特許文献10】米国特許(代理人明細書番号033627−003、「真空及び気体の電子機器のためのナノ物質に基づく電界放出陰極」)
【特許文献11】米国特許6385292号公報、「固体CTシステム及び方法」
【特許文献12】米国特許出願公開番号US−2002/0085674、「フラットパネルX線源を用いた造影装置」
【特許文献13】米国特許6456691号公報、「X線生成装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、異なった位置や放出角度から複数のX線ビームを同時に生成することができるX線イメージングシステムが強く求められる。ナノ構造を含む電界放出陰極を用いることにより、本発明は、そのようなマルチビームX線イメージングシステムを実現するための手法及び装置と、その使用のための手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、より効率的にマルチビームX線を生成し、より柔軟な操作性を備え、多数の機能を高度に統合して構成された装置及び手法が提供される。本発明によれば、異なった角度からスキャン対象の物体へ進んでいくX線ビームを提供可能なX線源が提供される。
【0025】
非破壊X線測定を行う装置も提供される。この装置は1又は複数の電界放出冷陰極を備える。ナノ構造を含む冷陰極から生成された電子は、ターゲット陽極におけるある所望の位置へ加速され、その結果、スキャン対象の物体への異なった角度からのX線ビームが生成される。スキャン対象の物体を経由して伝送されたX線を集めるために検出器が用いられ、これにより異なった角度からの画像が形成される。画像は、物体の内部構造を示す2次元又は3次元のイメージを再構成するために用いることができる。
【0026】
本発明においては、ナノ構造物質を有する冷電界放出陰極が、この発明においてX線を生成するための電子源として、X線管の中で用いられる。この新しいX線生成手法は、加熱素子が不要であり、室温で動作し、高い反復率でX線放射パルスを生成し、マルチビームX線源と携帯用のX線装置を可能にするという意味で、従来の熱電子に基づくX線源と比較して多くの利点を有している。
【0027】
本発明の第1の側面によれば、陰極上に所定のパターンで配置され、固定され個々に制御可能な複数の電子放出ピクセルを備えた、固定電界放出陰極と、前記ピクセルの前記所定パターンに対応する、所定パターンで配置された複数の焦点を備えた、前記陰極の反対側に位置する陽極と、前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備えることを特徴とするマルチビームX線生成装置が提供される。
【0028】
また、本発明の他の側面によれば、その少なくとも一部に電子放出物質が配置された平面状の表面を備えた固定電界放出陰極と、前記陰極の平面状の表面に対して空間を隔てて平行に設けられ、サイズの異なる複数の開口部を備えたゲート電極と、前記陰極と空間を隔てて反対側に位置し、前記電子放出物質に合わせて複数の焦点を備える陽極と、前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備え、前記ゲート電極は、少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、前記陰極から放出された電子の少なくとも1つのビームを送出するように前記開口部を操作できるように、動作可能であることを特徴とするX線生成装置が提供される。
【0029】
また、本発明の他の側面によれば、物体へ異なる位置からX線を照射することにより該物体をスキャンする方法であって、固定され個々に制御可能な複数の電子放出ピクセルを備えた固定電界放出陰極を提供する第1工程であって、該ピクセルは該陰極上に所定のパターンで配置される、第1工程と、前記陰極の反対側に陽極を設け、前記ピクセルの前記所定パターンに対応する所定のパターンで、該陽極に複数の焦点を設ける第2工程と、前記陽極及び陰極を真空槽で覆う第3工程と、1以上のピクセルを活性化させ、前記陽極の対応する焦点へ入射する放出電子のビームを生成し、それによりX線を生成し、該X線をスキャン対象の前記物体へ導く第4工程と、を備えることを特徴とする方法が提供される。
【0030】
また、本発明の他の側面によれば、物体へ異なる位置からX線を照射することにより該物体をスキャンする方法であって、平面の表面を備えた固定電界放出陰極を提供し、該平面の表面の少なくとも一部に電子放出物質を提供する第1工程と、前記陰極の前記平面の表面と空間を隔てて平行にゲート電極を設け、異なる大きさの複数の開口部を該ゲート電極に設ける第2工程と、前記陰極の反対側に陽極を設け、前記電子放出物質に合わせて該陽極に複数の焦点を設ける第3工程と、前記陽極及び陰極を真空槽で覆う第4工程と、少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、前記陰極から放出された電子の少なくとも1つのビームを送出するように、前記ゲート電極を操作する第5工程と、を備える方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る典型的な構成及び手法について、図面を参照して説明する。
【0032】
本発明に係る一実施形態においては、図5に示すように、X線源は、個別にアドレス可能な複数の電子放出要素、或いは、「ピクセル」11を有する電界放出陰極12を備える。図6に示すように、陰極12は平面形状を有する。陽極13は、真空槽14内で陰極12と有限の距離を隔てて、陰極12の反対側に位置する。陰極上のピクセル11からの電子の放出は、ゲート電極によって制御することができる。本実施形態及びその他において利用可能なゲート電極の可能な構成及び配置の詳細については後述する。X線源は、一つのゲート電極、又は、より好ましくは個々にアドレス可能な複数のユニットを有するゲート電極を備えてもよい。ただし、各ユニットは陰極12上の対応するピクセル11をそれぞれ制御する。前記ピクセル11と、それに対応するゲート電極上の制御ユニットとの間に適用される電界が閾値を超えたときに、放出ピクセル11から電子が放出される。陰極12と陽極13との間には高電圧が適用される。個々のピクセル11が起動されると、放出電子ビームは高圧の電界により加速され、十分な運動エネルギーを取得し、陽極13上の対応する位置に照射される。陽極13は、銅、タングステン、モリブデン、或いは、異なる金属の合金等の、あらゆる適切な金属により構成することができる。X線は、陽極の、電子が衝突する位置、いわゆる「焦点(focal spot)」において生成される。
【0033】
陽極13は複数の分離した焦点10を備え、各焦点は、異なった原子番号の金属、或いは、異なった合金を有する。放出電子が照射されると、焦点10はそれぞれ異なったエネルギー分布を有するX線を生成する。
【0034】
本実施形態においては、陽極13上のX線焦点10は、陰極12上の電子放出ピクセル11と1対1の関係を有する。このため、あるピクセル11が起動されると、陽極13上の対応する焦点からX線ビームが生成される。従って、異なった位置のピクセル11を起動することにより、陽極13上の異なった焦点10からX線ビームが生成されることになる。この結果、イメージングの用途において、X線生成装置の物理的な移動を伴わずに、異なった視角からのX線ビームを実現することができる。異なる位置のピクセルは、コンピュータによりプログラム制御することが可能であり、順番に、或いは、周波数、デューティサイクル(duty cycle)、ドウェル時間(dwell time、滞留時間)を所定の値に設定して動作させることが可能である。
【0035】
陰極12は、所定のパターンで配置された複数の放出ピクセル11を備えることができる。図6のように、ある特定の実施形態においては、放出ピクセル11は、有限の直径を有する円周に沿って配置される。各ピクセル11から放出された電子は、陽極13上の対応する焦点10に向かって進むことが可能である。ただし、陽極13上の焦点10は円周に沿って配置され、また、各焦点10は陰極上の電界放出ピクセル11と対応する。
【0036】
本発明の手法により構成された陰極は、好適には電界放出物質を組み込んでいる。より好適には、本発明の手法により形成された陰極は、ナノ構造を含む物質を組み込んでいる。「ナノ構造」物質という用語は、C60フラーレン等のナノ粒子、フラーレン型同心黒鉛粒子(fullerene-type concentric graphitic particles)、金属、CdSe,InP等の化合物半導体、Si,Ge,SiOx,Ge,Ox等のナノワイヤ/ナノロッド(nanowires/nanorods)、或いは、炭素,Bxy,Cx,By,Nz,MoS2,WS2等の単一又は複数の元素から成るナノチューブを含む、指定された物質の分野の当業者に用いられている。ナノ構造物質に共通する特徴の一つは、その基本的な要素(building blocks)である。1つのナノ粒子或いはカーボン・ナノチューブは、少なくとも1つの方向において500nm未満の大きさを有する。「ナノ構造を含む」という用語は、完全に、或いは、ほとんど完全にナノ構造物質からなる物質や、ナノ構造と他の種類の物質の両方からなり複合構造(composite construction)を形成している物質を包含する。本発明の手法により形成された陰極は、完全に上記のナノ構造を含む物質から形成することができる。或いは、陰極が基板や基材を有し、それに上述のナノ構造を含む物質を含む1以上の被覆層を設けるようにすることもできる。ナノ構造を含む物質の被覆は、陰極基板物質の表面に直接適用することができる。或いは、接着を促進する中間層を設けるようにしてもよい。例示的な実施形態においては、本発明の手法により形成された陰極は、単一壁カーボン・ナノチューブ、二重壁カーボン・ナノチューブ、多重壁カーボン・ナノチューブ又はそれらの混合を備えた高純度の物質から、少なくとも部分的に形成される。
【0037】
あるアプリケーションにおいて、例えば、より高い電流を生成することが可能で、より広い放出領域を有するピクセルが求められるような場合等においては、高いX線束が必要であり、焦点のサイズは重要ではない。図7に示すように、異なるサイズの放出領域110,111を有するピクセルを構成することができる。各電界放出ピクセル110,111の放出領域は所定のパターンに基づいて変化し、同じ電界が適用された状況においては、各ピクセルからの放出電流の合計はピクセルの放出領域に応じることになる。また、各ピクセルに同じ大きさ(amplitude)の電界を適用することにより、プログラム制御可能な強度を有する走査X線ビームを各焦点から放出することができる。図7に示すように、電界放出ピクセル集合111と電界放出ピクセル集合110とでは、放出領域が異なっている。適用される電界を不変に保ったまま、高いX線強度が求められるイベントにおいて、電界放出ピクセル集合110が使用される。
【0038】
図8、9に示すように、他の構成においては、陰極12上の複数の電界放出ピクセル11が所定のパターンに配置され、放出ユニットのグループにプログラム制御される。各放出ユニットは、図8のように、異なった直径b,c,dを有する放出ピクセルの小集合を備えるか、或いは、図9のように、クラスタ41,42を形成する。各放出ユニットから放出された電子は陽極上の対応する焦点へ導かれる。陽極上の焦点は、陰極上の放出ユニットと同じパターンに基づいて位置を決めることができる。
【0039】
図10に示すように、各ピクセル11から放出された電子ビームを集中させるために、絶縁体層11sから隔てられた多層電子ゲート又はコイル11gを、電子ビーム"e"の経路となる各ピクセル11の上面に設けることができる。これらのゲートに適切な電圧が適用され、或いは、電流がコイルを通過した場合、電子ビームが集中され、所定の角度で導かれる。
【0040】
本発明の手法により形成された、他の技術及び構成が図11に示されている。
【0041】
この実施形態においては、陰極55は、平面形状を有し、平面の表面全体又はその一部に配置された電子放出物質を備えている。ゲート電極52は、陰極55と有限の距離を隔てて、陰極55と平行に設けられている。陽極53は、陰極55と有限の距離を隔てて、陰極55の反対側に存在し、陽極53も陰極55も真空槽54に覆われている。ゲート電極52は、その中にメッシュグリッド51を配置することが可能な1以上の開口部を備える。また、陰極上の1以上の特定領域が、陽極53上の1以上の特定位置に向かって導かれる電界放出電子を生成する1以上の放出ピクセルとして選択可能なように、陰極55に対するメッシュグリッド51の位置を配置することができる。ピクセルと、対応するゲート電極52上の制御ユニットとの間に適用されている電界が所定値を超えた場合、放出ピクセルから電子が放出される。陰極と陽極の間に高電圧が適用される。個々のピクセルが起動されると、電子ビームは、高電圧により加速され、十分な運動エネルギーを取得して、陽極53上の対応する位置へ照射される。陽極53は、銅、タングステン、モリブデン、或いは異なる金属の合金等の、あらゆる適切な金属により構成することができる。
X線は、陽極の電子が衝突する位置(以下、「焦点」と呼ぶ)から生成される。
【0042】
メッシュグリッド51は、融解温度が高い、例えば、タングステン、モリブデン、或いは、ニッケル等の物質を用いて構成することができる。メッシュにおける開口部の大きさは、それを通過する放出電子電流の量に影響する。このため、メッシュ開口部のサイズがより大きくなれば、それを通過して陽極に衝突する放出電子がより多くなり、その逆も同様である。好適には、複数のメッシュグリッド51が利用される。グリッドのそれぞれは、同じ大きさのメッシュ開口部を有するようにすることができる。或いは、メッシュグリッドは異なった大きさの開口部を有するようにすることができる。
【0043】
メッシュグリッド51は、個々にアドレス可能なユニットの形で構成することができる。例えば、各グリッドは、他のグリッドとは独立に、開口、或いは、閉鎖を行うことができる。
【0044】
ゲート電極52は、モータユニットの制御されて軸56に沿って様々な速度で回転することができる。前記放出領域とそれに対応するゲート電極52上の制御ユニットとの間に適用される電界が閾値を超えると、放出領域から電子が放出される。ある速度でゲート52が回転する間に、陰極の放出環のあらゆる箇所から放出電流を生成することができる。連続的な、或いは、パルス状の電位が、選択されたメッシュグリッド51と陰極55との間に適用されているか否かに基づいて、走査X線ビームが陽極53上の対応する箇所50から、連続的に、或いは、パルス状に生成される。結果として、イメージングの目的において、異なった視角からのX線ビームが実現される。回転スピードと電極に適用される電圧パルスは、コンピュータによりプログラム制御することが可能であり、順番に、或いは、周波数、デューティサイクル、及び、ドウェル時間の少なくともいずれかを所定の値に設定して動作させることができる。
【0045】
装置の放出電子電流は、異なるサイズのメッシュ開口部を有するメッシュグリッドや、ゲート電極の回転速度、及び、メッシュグリッドに適用されるパルスの周波数やドウェル時間の少なくともいずれかを選択することにより制御することができる。
【0046】
各ピクセルから放出される電子ビームを制御するために、例えば、図12に示すように、ゲートの構造を使用することができる。少なくとも一つの絶縁スペーサ55sによって隔てられた1以上のゲート55gを適用してもよい。グリッド51は、それを通過する放出電子の流れを選択的に調整するために、ゲート55gの中に組み込んでもよい。
【0047】
図13に、X線検査の構成又はシステムの例示的な実施形態を示す。その構成は、上述の実施形態のいずれかに基づいて構成されたX線源151を備えている。X線源151により生成されたX線は、検査対象の物体152へ導かれる。検査対象の物体152は可動ステージ153に載置することができる。利用する場合、ステージ153は、好ましくは、x,y及びz方向に移動可能である。
【0048】
異なった位置における個別の検出器731,732の配置を含む、X線検出器が設けられている。物体152を通過するX線は検出器74に受信される。好適には、可動ステージ153を制御し、それにより物体152の位置や、検出器74、731、732の制御処理、及び、位置の少なくともいずれかを制御するために利用可能な制御装置が提供される。検出器74からのデータにつき、少なくとも受信、走査、及び、出力のいずれかを行う画像分析装置も組み込むことができる。
【0049】
本発明の他の実施形態においては、電界放出マルチビームX線源を利用する、超高速の、全て固定されたX線イメージング及び検査の手法及びシステムが構成される。このシステムの一例を図14に示す。回路基板70等の検査対象の物体72は、X線源14とX線検出器74との間に載置される。X線源14は、好適には、ここに開示された電界放出マルチビームX線源である。X線検出器74は、同一面の異なった位置に載置された検出器731,732のアレイや、ピクセルのマトリックスを有する領域検出器とすることができる。データを収集するために、X線源は起動される。陰極上の全ての電子放出ピクセルは同時に起動される。各ピクセルは、X線源の陽極13上の、対応する焦点101,102へ照射される電子ビームを生成する。陽極13上の焦点のそれぞれから生成されたX線は、異なる角度から、対応する検出器により記録される、物体の1つの画像を生成する。例えば、焦点101から生成されたX線ビームは、検出器732により記録される物体の1つの画像を生成する。焦点102から生成されたX線ビームは、検出器732により記録される物体の一つの画像を生成する。広領域の検出器が用いられる場合においては、731及び732は領域検出器の特定領域となる。
【0050】
陽極の異なった位置に異なった焦点が設けられるため、異なる焦点から放出されたX線ビームにより生成された物体の画像は、画像が生成される物体に対して異なった射影角度を有する。ある射影角度からははっきりとしない構造も、異なった焦点、つまり、異なった視角から放出されたX線ビームにより明らかにすることができる。陰極上の全ての電子放出ピクセルを起動することにより、全ての異なった焦点からX線ビームが同時に生成され、これにより同一物体の異なった射影画像を同時に収集することができる。状況に応じて、全ての射影画像がモニタ上に表示される。更に、イメージングと検査のシステムは、収集された異なった射影画像を用いて、検査対象の物体の内部構造を示す画像を再構成する、コンピュータ及びソフトウエアを備えるようにしてもよい。全ての射影画像は同時に収集されるため、システムは、物体の内部構造を示す画像を瞬時に再構成して表示することができる。これは、異なる射影画像を同時に収集しなければならない他の検査システムと比較して、有利な点である。本発明の能力は、物体を画像化することのできる割合を極めて増大させる。
【0051】
他の実施形態においては、各ピクセル101,102からのX線ビームは、対応するX線検出器上に、物体72中の平面70のX線画像を生成する。画像平面70は、X線源14の各ピクセル101,102からのX線ビームが交差する領域である。動作において、各ピクセル101,102は起動され、スキャン対象の物体へそれぞれ異なった方向からX線ビームを提供する。このため、物体の、異なった角度からのX線画像は、対応するX線検出器によって記録される。この情報はさらに2次元又は3次元画像を再構成するために用いられる。収集された画像データの再構成を行っている間、スキャンされた平面70上の構造は鮮明な画像を形成するのに対し、スキャンされた平面70の外部における物体72の構造は、検出器731,732において不鮮明な画像を生成する。物体72の内部でX線ビームが交差する位置を変化させることによって、異なった平面を検査のために選択することができる。これは、例えば、X線源14に対して物体72を移動させたり、或いは、ピクセル101,102を移動することによって物体72へ入射するX線の角度を変化させることで、実現することができる。
【0052】
このシステムのある特定の動作モードにおいては、全てのピクセルを同時に起動することができる。検出器アレイ731,732の異なった領域は、X線源14のある対応するピクセル101、102からのX線信号のみを収集するように、検出器アレイは配置及びプログラムされる。例えば、検出器アレイの領域732は、特定のピクセル101からのX線のみを収集し、領域731はピクセル102からのX線のみを収集する。全てのピクセルが同時に起動するようにプログラムした場合、検出器はスキャン平面の全てのX線画像を同時に収集する。これによりX線画像を瞬時に取得することができる。このイメージングの構成が図14に示されている。
【0053】
この発明の他の実施形態においては、データを収集するためにX線源14が起動される。陰極上の全ての電子放出ピクセルはプログラムされた順序で起動されるため、全てのピクセルではないが1以上のピクセルは同時に起動される。各ピクセルは、X線源14である陽極13上の対応する焦点101、102へ突進する電子ビームを生成する。陽極上の各焦点から生成されるX線は、対応する検出器に記録される、異なった角度から物体の1つの画像を生成する。X線検出器74は上述のように構成、及び、動作することができる。例えば、焦点101からX線ビームが生成された場合、物体の画像が検出器732に記録され、焦点102からX線ビームが生成された場合、物体の画像が検出器731に記録される。検出器731と検出器732は、異なった検出器とすることもできるし、1つの検出器アレイの異なった領域とすることもできるし、或いは、異なる場所に設置された同じ検出器とすることもできる。異なった焦点は陽極13の異なった位置に設けられるため、異なった焦点から放出されたX線ビームにより生成された物体の画像は異なった射影角度を有する。ある射影角度からははっきりとしない構造も、異なった焦点、つまり、異なった視角から放出されたX線ビームにより明らかにすることができる。陰極上の異なった電子放出ピクセルを起動することにより、全ての異なった焦点からX線ビームが生成され、これにより同一物体の異なった射影画像を収集することができる。
【0054】
或いは、図15のように、扇状に広がるX線のビーム81の拡散角度を、各焦点80からの所定の拡散角度に設定するために、システムは、更に、1つのコリメータ82又は一群のコリメータを備えるようにしてもよい。陽極上の各焦点からのX線ビームが画像形成される領域のみを照射し、焦点から放出されたX線光子は対応する検出器のみに到達するように、コリメータ82は設計される。
【0055】
上述の実施形態を参照して本発明を説明したが、所定の修正や改変は、この技術分野における通常の能力を有する者にとって明らかである。つまり、本発明は、添付された特許請求の範囲の範囲及び精神によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】複数のX線を形成するために電子ビームを操作する、従来の構成及び手法を示す模式図である。
【図2】複数のX線を生成するために電子ビームを操作する、他の従来の手法及び構成を示す模式図である。
【図3】物体をそれに対して複数の角度からX線でスキャンする、従来の構成及び手法を示す模式図である。
【図4】カーボン・ナノチューブに基づく陰極の、電圧に対する電流の特性に係るグラフである。
【図5】本発明の手法により形成された、複数の固定電子源を有するX線源を示す模式図である。
【図6】図5に示された構成の底面図である。
【図7】本発明の他の側面により形成された、複数の電子源を有するX線を生成する他の実施形態に係る底面図である。
【図8】本発明の更に他の側面による、複数の電子放出源に係る他の構成を示す模式図である。
【図9】本発明の手法により形成された、更に他の実施形態に係る底面又は平面を示す図である。
【図10】本発明の手法により形成された、多層ゲート構造を有する電子放出源またはピクセルを示す模式図である。
【図11】本発明の手法により形成された、回転するゲート構造を含む他の構成及び手法を示す模式図である。
【図12】本発明により形成されたゲート電極の構造を示す模式図である。
【図13】本発明によるX線源を組み込んだ検査の構成又はシステムを示す模式図である。
【図14】本発明の手法により形成された、断層撮影法(laminography)に基づいてマルチビームX線を提供する他の構成を示す模式図である。
【図15】本発明の手法により実行される多様な構成や手法と共に利用してもよい、X線コリメータ(collimator)装置を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極上に所定のパターンで配置され、固定され個々に制御可能な複数の電子放出ピクセルを備えた、固定電界放出陰極と、
前記ピクセルの前記所定パターンに対応する、所定パターンで配置された複数の焦点を備えた、前記陰極の反対側に位置する陽極と、
前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備えることを特徴とするマルチビームX線生成装置。
【請求項2】
前記陰極はナノ構造を含む物質を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ナノ構造を含む物質は、単一壁カーボン・ナノチューブを備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記陰極は平面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記陽極は平面形状を有することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記電界放出陰極を制御するために配置された、少なくとも1つのゲート電極を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのゲート電極は個々にアドレス可能な複数のゲート電極制御ユニットを備え、各ユニットは対応する電子放出ピクセルを制御するように配置されることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記焦点は、前記ピクセルから放出される電子が照射された場合、異なったエネルギー分布を有するX線を生成する物質を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
全てのピクセルに対して1つの焦点を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のピクセルを制御するようにプログラムされたコンピュータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記コンピュータは、
前記ピクセルを、順番に、所定の周波数、所定のデューティサイクル、及び、所定のドウェル時間の少なくともいずれかにおいて、起動するようにプログラムされていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ピクセルと対応する焦点は、円周に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記複数のピクセルは、第1の放出領域を有する少なくとも1つのピクセルと、第2の放出領域を有する少なくとも1つのピクセルと、を備え、
前記第1の放出領域は前記第2の放出領域よりも広いことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ピクセルと対応する焦点は、複数の同心円の円周に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ピクセルは少なくとも1つのクラスタ状に配置され、
前記少なくとも1つのクラスタは直接隣接した複数のピクセルを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項16】
各ピクセルは、各ピクセルから放出された電子のビームを集中させるために構成された、多層電子ゲート又はコイルを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記焦点により生成された前記X線ビームを集中させるために構成されたコリメータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項18】
X線検出器を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記検出器は複数の分離した検出要素を備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記検出器は、検出ピクセルのマトリクスを備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記検出器からの入力を収集し、前記入力から画像を構成する、コンピュータハードウェア及びソフトウェアを更に備えることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記画像を表示するモニタを更に備えることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
その少なくとも一部に電子放出物質が配置された平面状の表面を備えた固定電界放出陰極と、
前記陰極の平面状の表面に対して空間を隔てて平行に設けられ、サイズの異なる複数の開口部を備えたゲート電極と、
前記陰極と空間を隔てて反対側に位置し、前記電子放出物質に合わせて複数の焦点を備える陽極と、
前記陽極及び陰極を覆う真空槽と、を備え、
前記ゲート電極は、
少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、前記陰極から放出された電子の少なくとも1つのビームを送出するように前記開口部を操作できるように、動作可能であることを特徴とするX線生成装置。
【請求項24】
前記開口部は複数のメッシュグリッドを備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記ゲート電極は回転可能であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記メッシュグリッドは、タングステン、モリブデン、ニッケル、又は、それらの合金により形成されることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項27】
前記メッシュグリッドのそれぞれは、電気的に独立に制御可能であることを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項28】
前記ゲート電極の動作を制御するための制御ユニットを更に備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記ゲート電極が回転するスピード、前記ゲート電極に適用される電圧、前記陰極から放出される電子の登録位置へ移動される焦点の順序、及び、登録された特定の焦点に放出電子が保たれることが許される時間の少なくともいずれかを制御するためにプログラムされたコンピュータを更に備えることを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項30】
前記陰極はナノ構造を含む物質を備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記ナノ構造を含む物質は単一壁カーボン・ナノチューブを備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項32】
物体へ異なる位置からX線を照射することにより該物体をスキャンする方法であって、
固定され個々に制御可能な複数の電子放出ピクセルを備えた固定電界放出陰極を提供する第1工程であって、該ピクセルは該陰極上に所定のパターンで配置される、第1工程と、
前記陰極の反対側に陽極を設け、前記ピクセルの前記所定パターンに対応する所定のパターンで、該陽極に複数の焦点を設ける第2工程と、
前記陽極及び陰極を真空槽で覆う第3工程と、
1以上のピクセルを活性化させ、前記陽極の対応する焦点へ入射する放出電子のビームを生成し、それによりX線を生成し、該X線をスキャン対象の前記物体へ導く第4工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
前記第4工程では、
第1のピクセルが活性化され、それにより前記スキャン対象の物体へ第1の位置から入射する第1のX線が生成され、続けて、少なくとも第2のピクセルが活性化され、それにより前記スキャン対象の物体へ第2の位置から入射する第2のX線が生成されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第4工程では、
複数のピクセルが同時に活性化され、それにより前記スキャン対象の物体へ複数の位置から入射する複数のX線が生成されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
X線検出器を設定し、前記スキャン対象の物体を通過するX線が該検出器へ入射するようにする第5工程を更に備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記検出器は複数の分離された検出器を備えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記検出器は検出ピクセルのアレイを備えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記検出器からの入力を収集し、該入力から画像を構成する第6工程を更に備えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記構成された画像を表示する第7工程を更に備えることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記陰極はナノ構造を含む物質を備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ構造を含む物質は単一壁カーボン・ナノチューブを備えることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1及び第2工程では、円周に沿って前記ピクセル及び対応する焦点が配置されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記第1工程では、第1の放出領域を有する少なくとも1つのピクセルが提供され、第2の放出領域を有する少なくとも1つのピクセルが提供され、
前記第1の放出領域は前記第2の放出領域よりも広いことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記第1及び第2工程では、複数の同心円の円周に沿って前記ピクセルが配置されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記第1工程では、前記ピクセルが少なくとも1つのクラスタ状に配置され、
前記少なくとも1つのクラスタは直接隣接した複数のピクセルを備えることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項46】
物体へ異なる位置からX線を照射することにより該物体をスキャンする方法であって、
平面の表面を備えた固定電界放出陰極を提供し、該平面の表面の少なくとも一部に電子放出物質を提供する第1工程と、
前記陰極の前記平面の表面と空間を隔てて平行にゲート電極を設け、異なる大きさの複数の開口部を該ゲート電極に設ける第2工程と、
前記陰極の反対側に陽極を設け、前記電子放出物質に合わせて該陽極に複数の焦点を設ける第3工程と、
前記陽極及び陰極を真空槽で覆う第4工程と、
少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、前記陰極から放出された電子の少なくとも1つのビームを送出するように、前記ゲート電極を操作する第5工程と、を備える方法。
【請求項47】
前記ゲート電極の前記開口部は複数のメッシュグリッドを備えることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第5工程では、
少なくとも1つの焦点及びその登録位置から外れた位置へ、放出された電子の前記少なくとも1つのビームを送出するように、前記ゲート電極が回転されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記メッシュグリッドは、タングステン、モリブデン、ニッケル、又は、それらの合金により形成されることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記第2工程では、更に、前記ゲート電極の前記開口部が個別に開口又は閉鎖されることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記ゲート電極の動作をコンピュータで制御する第6工程を更に備えることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記第5工程では、前記ゲート電極が回転され、
前記第6工程では、前記ゲート電極が回転するスピードの制御、前記ゲート電極に適用される電圧の制御、前記陰極から放出される電子の登録位置へ移動される焦点の順序の制御、及び、登録された特定の焦点に放出電子が保たれることが許される時間の制御の少なくともいずれかが行われることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記陰極はナノ構造を含む物質を備えることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記ナノ構造を含む物質は、単一壁カーボン・ナノチューブを備えることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
検査対象の物体をスキャンするためのX線生成装置であって、
基板と、カーボン・ナノチューブを備えるナノ構造を含む物質の被覆層とを備えた、少なくとも1つのアドレス可能な陰極と、
少なくとも一つの陽極ターゲットと、を備えるX線生成装置。
【請求項56】
前記ナノ構造を含む物質は、単一壁カーボン・ナノチューブ、多重壁ナノチューブ、又はそれらの混合を含むことを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項57】
前記陰極は、前記ナノ構造を含む物質の被覆層に少なくとも部分的に覆われた、基板物質を備えることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項58】
前記基板と前記ナノ構造を含む物質の被覆層との間に接着を促進する中間層を更に備えることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項59】
ゲート電極を更に備えることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項60】
複数の陽極ターゲットを備えることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項61】
前記装置は携帯可能であることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項62】
前記陰極はナノ構造を含む物質の要素のアレイを備え、前記ナノ構造を含む要素のそれぞれは個別にアドレス可能であることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項63】
前記少なくとも1つの陰極と、前記少なくとも1つの陽極ターゲットは、真空槽に収容されていることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項64】
可動ステージを更に備えることを特徴とする請求項55に記載の装置。
【請求項65】
前記陰極は加熱器の支援により電子を放出することを特徴とする請求項55に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−504636(P2007−504636A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533406(P2006−533406)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/016434
【国際公開番号】WO2004/110111
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(504209172)シンテック,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Xintek,Inc.
【住所又は居所原語表記】7020 Kit Creek Road,Suite 280,P.O.Box 13788,Research Traiangle Park,North Carolina 27709,U.S.A. 
【Fターム(参考)】