説明

複数回転用可能な埋設控え筋コン止め工法

【課題】埋設控え筋を設け複数回転用可能なコン止薄鋼板を提供する。
【解決手段】コン止鋼板1を複数回転用可能とするためにコン止鋼板1裏側に取り外しが可能なようにナットとワッシャーをセットとして組した詳細とした埋設控え筋4を設けることで解決した。鋼板の重量をできるだけ小さくするため鋼板を1.2mmとしたためその曲げ剛性を大きくするために鋼板頭部を折り曲げ加工部2を施し薄鋼板の曲げ剛性を高めた。また剥離しやすくするためまた剥離後のコンクリートの補修を必要としないため、コン止鋼板裏側に工場で剥離剤を塗布し、また剥離時の鋼板の損傷を少なくするために躯体鉄骨13と接触する鋼板脚部には傾斜を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コン止め工法はスラブとなる生コンクリートを打設する際、スラブ端部は生コンクリート流出を塞き止める何がしかの型枠が必要となる。特に鉄骨大梁からハネ出す場合は外部に仮受け小梁を設け使い捨てのコンパネによる型枠工法は無駄が多く、外足場も必要とし狭隙空間では施工が問題となっていたのが従来のコン止め工法の技術分野である。
【背景技術】
【0002】
従来、スラブに生コンクリートを打設する際、スラブ端部からの生コンクリート流出を塞き止める型枠工法は外部から仮受け小梁に支えられる型枠を必要としコンクリート硬化後はこれら仮受け小梁及びコンパネ型枠等を使い捨てていた。外部からの仮受け小梁を設ける従来のコン止め工法は狭隙での施工が出来ないことと外部からの作業のため危険を伴い、また生コンクリート打設後の取り外し手間また片付け手間、償却と無駄が多い工法で、これらを改良する事は今まで見捨てられてきた技術背景である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスラブ端部に設ける生コンクリート流出を塞き止める型枠工法は外部からの仮受け小梁および型枠を設ける施工は作業上危険を伴うのみならず、狭隙での施工が出来ない場合もあり、こうした点を改良することが大きな一つの課題である。
【0004】
従来のコン止め工法は生コンクリート打設後の仮設材の取り外し手間また片付け手間、償却と無駄が多い工法で、これらに考慮を払うことが今まで見捨てられてきた。これらを緩和・軽減するためにコン止め鋼板を複数回転用可能とすることも一つの課題である。
【0005】
コン止め鋼板を複数回転用可能とするためにコン止め鋼板を軽くすることも大切である。ただコン止め鋼板には生コンクリートの打設時の静水圧と生コンクリートの重量を薄鋼板では支持しきれない点をどのように克服するかも課題となる。
【0006】
コン止め鋼板を複数回転用可能とするためにコンクリート硬化後のコン止め鋼板の取り外しを容易ならしむる事、コン止め鋼板の損傷を出来るだけ少なくすること、またコン止め鋼板取り外し後のコンクリート補修を殆ど不要とする事も大きな課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の使い捨て生コン止め型枠工法の無駄を省き、また足場を組んだ仮受け小梁を設けない複数回転用可能な埋設控え筋コン止め工法の提案がこれら課題を解決するための手段である。この課題を解決するための手段の埋設控え筋とは「図1」、「図2」の図面符号4に示すもので、この控え筋は生コンクリートの静水圧および重量を受けるために従来の仮受け小梁の代わりにコン止め立ち上がり部鋼板裏側に控え筋をねじ止めしかつ躯体鉄骨側はショートビード・フレア溶接で止められており、コンクリート硬化後は「図3」の図面符号10に示すねじ止めのナットを外しコン止め鋼板を複数回転用可能とした。
【0008】
コン止め鋼板を複数回転用可能とし取り外しを容易ならしめるために「図4」に示すようにコン止め鋼板脚部の躯体鉄骨に接する部分に長さ20mm、勾配1/4の傾斜を付けた。
【0009】
コン止め鋼板は面積が大きいのでそれ自身の重量が重くなるために板厚としては1.2−1.6mmとし重量を10kg/ピースに押さえた。そのため生コンクリート静水圧による外側への孕みを押さえる為に「図4」にしめすようにコン止め鋼板の頭部を内側または外側に直角に曲げ薄鋼板の曲げ剛性を高めた詳細としている。
【0010】
コン止め鋼板として薄いことが前提となるのでこの薄鋼板を複数回転用可能とするためには剥離性が良くないとコン止め鋼板を取り外す際に鋼板の損傷も危惧されまた剥離後のコンクリートの補修が必要となる。このためコン止め鋼板の内側には工場で剥離剤「水溶性樹脂エマルジョン」を塗布したコン止め鋼板用いた。
【発明の効果】
【0011】
本コン止め工法の採用により、従来の外側施工と違い内側施工で作業に伴う危険も無くなり、コン止め薄鋼板を繰り返し転用することでコスト・ダウンにも繋がる。剥離剤塗布コン止め鋼板の採用により現場での作業と比較し作業性も増し、コンクリートの補修も必要でなくこれらも発明の効果である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 ハネ出しの無い場合の埋設型控え筋とコン止め鋼板の基本取り合い詳細図
【図2】 ハネ出しが100−300mm程度の埋設型控え筋、支え棒鋼とコン止め鋼板の基本取り合い詳細図
【図3】 埋設控え筋とコン止め固定ピース詳細図
【図4】 コン止め鋼板頭部および脚部の折り曲げ加工詳細図
【発明を実施するための形態】
【0013】
スラブ端部の生コンクリート流出を塞き止めるコン止め工法には二つのタイプが考えられる。この二つのタイプは従来のコン止め工法また本発明のコン止め工法に係わらず共通したスラブ端部の詳細である。これらについて以下に詳述する。
【0014】
一つは「図1」に示すスラブ端部が躯体鉄骨フランジ縁までハネ出さないタイプである。この場合のコン止めに懸かる力は打設時の生コンクリートの静水圧のみでこの力は打設コンクリートの深さ、すなわちスラブ厚さに比例する。この力に対してはコン止めの鋼板厚さの曲げ剛性で充分取りきれるが、不測の打設時流動力を考え「図1」に示す図面符号4の埋設控え筋9φ程度を設けた。
【0015】
一つは「図2」に示すスラブ端部が躯体鉄骨フランジ縁から100−300mm程度ハネ出すタイプである。この場合は打設時の生コンクリート静水圧の他にハネだし部分の生コンクリートの重量が下向きに作用しコン止め控え筋に曲げ力が作用するので控えの筋の径は12φ以上とした。ただハネだし部分が200−300mmの場合はこの控え筋に懸かる曲げ力が大きいためこの控え筋の曲がり部に「図2」の図面符号9に示す支え棒鋼12φ程度を設け控え筋に懸かる曲げ力を緩和する詳細とした。
【0016】
上記二つの本コン止め工法としてはコン止め薄鋼板を複数回転用可能とするために「図3」に示すようにコンクリート硬化後、取り外しが可能なように「図3」の図面符号10、12に示すナットとワッシャーをセットとして組した詳細とした。ワッシャーは薄鋼板の曲部変形の押さえにも役立っている。
【0017】
本工法のコン止め鋼板は使い捨てではなく複数回転用可能とするため取り外し時の薄鋼板が損傷しないようまた取り外しが容易ならしむるようコン止め鋼板が躯体鉄骨梁に接する部分は「図4」の図面符号3に示すように長さ20mm、勾配1/4程度の傾斜を設けた。
【実施例1】
【0018】
打設スラブ端部が鉄骨梁フランジ外端部までのいわゆるスラブのハネ出しの無い場合は「図1」に示すような詳細とした。薄鋼板の頭部は外側もしくは内側に20mm程度直角に曲げ加工し薄鋼板の曲げ剛性を高め生コンクリートの静水圧による横力に耐えられるようにした。控え筋の径は最小で9φとした。鋼板に止めるナットは控え筋の径9φに見合うM10とした。
【実施例2】
【0019】
打設スラブ端部が鉄骨梁フランジ外端部から100−300mmハネ出す場合は「図2」に示すような詳細とした。薄鋼板の頭部は外側もしくは内側に20mm程度直角に曲げ加工し薄鋼板の曲げ剛性を高め生コンクリートの静水圧と生コンクリートの重量による力に耐えられるようにした。控え筋の径は最小で12φ程度とした。鋼板に止めるナットは控え筋の径に見合うM16とした。コン止め薄鋼板が躯体鉄骨梁に接触する部分は取り外しが容易ならしむるよう同じような勾配の傾斜を付けた。
【符号の説明】
【0020】
1 ・・・コン止め薄鋼板
2 ・・・コン止め鋼板頭部曲げ加工
3 ・・・コン止め鋼板脚部曲げ加工
4 ・・・埋設控え筋
5 ・・・コン止め固定ピース
6 ・・・両側ショートビード・フレア溶接
7 ・・・打設生コンクリート
8 ・・・フラット・デッキ
9 ・・・支え棒鋼
10 ・・・取り外し控え筋ナット
11 ・・・埋設控え筋ナット
12 ・・・取り外しワッシャー
13 ・・・躯体鉄骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明のコン止め工法は生コンクリートの静水圧と重量を受ける為にコン止め鋼板裏側に埋設控え筋を設けたコン止め工法で従来の使い捨て型枠仮受け小梁コン止め工法の無駄を省きコストダウンと工期短縮を計る事を特徴とし、コン止め鋼板を複数回転用可能とするようコンクリート硬化後取り外し可能なネジ止めナットを組した足場を必要としない埋設控え筋コン止め工法。
【請求項2】
コン止め鋼板が生コンクリートの打設時の静水圧と重さに耐えるよう薄鋼板の曲げ剛性を高めるためコン止め鋼板頭部に内側もしくは外側に直角に折り曲げ加工部を設けたことを特徴とする詳細のコン止め鋼板。
【請求項3】
コン止め鋼板を複数回転用可能とするために、コン止め鋼板の取り外し時に損傷無く容易に取り外しが可能なよう躯体鉄骨梁に接する部分の鋼板先端に折り曲げ加工により傾斜を付けることを特徴とする詳細のコン止め鋼板。
【請求項4】
コン止め鋼板の内側は生コンクリートの充填性がよくコンクリートの付着し難く取り外し施工性のよいまた取り外し後におけるコンクリート補修を殆ど不要とするようコン止め鋼板作成時に工場で前もって剥離剤「水溶性樹脂エマルジョン」を塗布したコン止め鋼板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−241662(P2011−241662A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123482(P2010−123482)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(510149851)株式会社八幡工業 (2)
【Fターム(参考)】