説明

複素環式誘導体

本発明は、変数が本明細書に記載されるように定義される式(I)による複素環式誘導体に関し、または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物に関する。本発明は、前記複素環式誘導体を含む医薬品組成物と、治療におけるそれらの使用、例えば統合失調症、うつ病、およびアルツハイマー病などの学習および記憶障害を含めたAMPA受容体によって媒介されるシナプス応答の増強が必要とされる精神疾患の治療または予防におけるそれらの使用にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環式誘導体、これらの化合物を含む医薬品組成物および治療におけるこれらの使用に関し、詳細には、統合失調症、うつ病、学習および記憶障害などの、AMPA受容体によって媒介されるシナプス応答の増強が必要とされる精神疾患の、治療用または予防用薬物を製造するためのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
L−グルタミン酸は、哺乳動物の中枢神経系(CNS)内に位置付けられた最も豊富な興奮性神経伝達物質である。L−グルタミン酸は、認知、気分および運動機能の制御において有意な役割を演じ、これらのプロセスは、精神および神経障害で不均衡である。グルタメートの生理学的効果は、2つの受容体ファミリー:代謝調節型(G−タンパク質結合)受容体およびイオンチャネル型(リガンド開口型イオンチャネル)受容体を通して媒介される。イオンチャネル型受容体は、細胞外L−グルタミン酸に対する高速シナプス応答の媒介に関与する。イオンチャネル型グルタミン酸受容体は、分子上のおよび薬学的な相違に基づいて3つのサブクラスに分類され、これらを選択的に活性化することが明らかにされていた小分子作動薬にちなんだ名称が付けられている:AMPA(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾール−プロピオン酸)、NMDA(N−メチル−D−アスパラギン酸)およびカイニン酸(2−カルボキシ−3−カルボキシメチル−4−イソプロペニルピロリジン)。脳生理学におけるAMPA受容体の重要性は広く認識されており、AMPA受容体は、CNS内で高速興奮性アミノ酸伝達の大部分を制御し、シナプス可塑性にも寄与して学習および記憶などの様々な生理学的プロセスで役割を演ずることも示されている。このため、統合失調症、うつ病およびアルツハイマー病を含めた様々な臨床的徴候に対するAMPA受容体の正のアロステリック調節物質の有用性に関する評価が高まりつつある。
【0003】
AMPA受容体サブユニットは、4種の異なる遺伝子(GluR1から4と呼ぶ。)によってコードされ、それぞれは、約900アミノ酸のタンパク質を表す。個々のサブユニットは、大型細胞外N−末端ドメイン、S1およびS2と命名されたドメインによって形成されたL−グルタミン酸に関する細胞外リガンド結合部位からなる。膜貫通ドメインは、リエントラントループM2と共に、3つの膜貫通領域、M1、M3およびM4からなる。次いでこの後に、長い細胞内C−末端ドメインが続く。4種のAMPA受容体サブユニット全ては、S2細胞外ドメインにおいて38アミノ酸コード化エキソンの交互スライシングが異なる(10未満のアミノ酸が異なっている。)、いわゆる「フリップ」および「フロップ」スプライスバリアントを含有する。AMPA受容体のさらなる不均一性は、RNA編集から生じ、GluR2サブユニットのポア領域(M2)に位置付けられたQ/R部位が、最も有意である。天然GluR2サブユニットの大部分が含むと考えられるRバリアントは、著しく低下したカルシウム透過性によって特徴付けられる。他のR/G編集部位は、GluR2、GluR3およびGluR4のS2ドメイン内に位置付けられ、G形態は、脱感作からの回復動態で加速を示す。
【0004】
脱感作および非活性化の動態は、グルタミン酸に対するシナプス応答の大きさおよび持続時間を制御するAMPA受容体の重要な機能的性質である。脱感作および非活性化のプロセスは、作動薬結合部位から離れて結合しているがそれでも作動薬結合に影響を及ぼす、AMPA受容体の正のアロステリック調節物質によって、または確かに、開口および/または脱感作に関連した受容体の作動薬媒介型構造変化によって、調節することができる。その結果、これらの性質を特異的に標的とし、グルタミン酸作動性シグナル伝達の低下に関連した広く様々なCNS障害の治療での治療可能性を有することになる、薬物を開発するために、引き続き努力がなされている。これらの状態は、加齢性記憶障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、精神病、精神病を伴う認知欠陥、注意欠陥障害および注意欠陥多動性障害を含む。
【0005】
AMPA受容体調節物質として働く、化合物の様々な構造的クラスが公知である(最近の概説として、G.Lynch、Current Opinion in Pharmacology、2006年、6、82−88頁参照)。例えば、アニラセタムに関連したいわゆるベンズアミド化合物(A.Araiら、J Pharmacol Exp.Ther.、2002年、30、1075−1085頁参照)、S−18689などのベンゾチアジアジン誘導体(B.Pirotte、J Med.Chem.、1998年、41、2946−2959頁参照)およびビアリールプロピルスルホンアミド誘導体(P.L.Ornsteinら、J Med.Chem.2000年、43、4354−4358頁参照)が存在する。AMPA受容体調節物質の別のクラスは、グルタミン酸調節物質として有用であるとして様々な複素環式化合物について詳述する、国際特許出願WO2005/040110およびWO2005/070916に開示された。これらのクラスのそれぞれの化合物は、AMPA受容体の様々な度合いの増強作用を示す。
【0006】
しかし、持続型AMPA受容体活性化は、てんかん発作およびその他の痙攣促進副作用を伴う(Yamada K.A.、Exp.Opin.Invest.Drugs 2000年、9、765−777頁)。その結果、有益な治療効果と望ましくない神経毒性作用との間が最適に切り離される、さらなるAMPA受容体調節物質が、依然として求められている。
【0007】
J.Chem.Res.、1999年、646頁は、軟体動物駆除および幼虫駆除活性を有する新規な置換チエノ[2,3−d]ピリミジオン誘導体およびその縮合生成物の合成に関する。しかし、そのような化合物がAMPA受容体調節物質として有用になり得ることは示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/040110号
【特許文献2】国際公開第2005/070916号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】G.Lynch、Current Opinion in Pharmacology、2006年、6、82−88頁
【非特許文献2】A.Araiら、J Pharmacol Exp.Ther.、2002年、30、1075−1085頁
【非特許文献3】B.Pirotte、J Med.Chem.、1998年、41、2946−2959頁
【非特許文献4】P.L.Ornsteinら、J Med.Chem.2000年、43、4354−4358
【非特許文献5】Yamada K.A.、Exp.Opin.Invest.Drugs 2000年、9、765−777頁
【非特許文献6】J.Chem.Res.、1999年、646頁
【発明の概要】
【0010】
(発明の要旨)
第1の態様において、本発明は、式Iによる複素環式誘導体
【0011】
【化1】

(式中、
Lは、(CHであり、ここで、mは1または2であり;
は、C1−4アルキル、C3−5シクロアルキル、C1−4アルキルオキシ、ハロゲンまたはCNであり、前記C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルおよびC1−4アルキルオキシは1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;
は、C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルまたはC1−4アルキルオキシであり、前記C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルおよびC1−4アルキルオキシは、OH、C1−4アルキルオキシおよびNR10から選択される置換基で置換されており;
−Xは独立してNまたはCRであり、ここで、RはHまたはメチルであり;
はNRまたはCHRであり、ここで、RはHまたはC1−4アルキルであり;
はNまたはCRであり、ここで、Rは、H、C1−4アルキル、C3−8シクロアルキルまたはC6−10アリールであり;
は、H、C1−4アルキルまたはC3−5シクロアルキルであり;
は、O、SまたはNRであり、ここで、Rは、HまたはC1−4アルキルであり;
は、NまたはCRであり、ここで、Rは、HまたはC1−4アルキルであり;
およびR10は独立して、H、またはO、SおよびNから選択される1−2個のヘテロ原子を含む5−9員ヘテロアリール環系で置換されていてもよいC1−4アルキルであり、またはRおよびR10はこれらが結合しているNと一緒になって、O、SおよびNから選択される別のヘテロ原子を含んでいてもよい4−6員飽和もしくは不飽和複素環を形成する。)
または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物に関する。
【0012】
本明細書で使用されるC1−4アルキルという用語は、1−4個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状アルキル基を表す。そのような基の例は、メチル、エチル、イソプロピルおよび第3級ブチルである。
【0013】
本明細書で使用されるC3−8シクロアルキルという用語は、3−8個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状の環状アルキル基を表す。そのような基の例は、シクロプロピル、シクロペンチルおよび2−メチルシクロヘキシルである。同様に、本明細書で使用されるC3−5シクロアルキルという用語は、3−5個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状の環状アルキル基を表す。そのような基の例は、シクロプロピルおよびシクロペンチルである。
【0014】
本明細書で使用されるC1−4アルキルオキシという用語は、1−4個の炭素原子を有する分岐状または非分岐状のアルキルオキシ基を表す。そのような基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシおよび第3級ブチルオキシである。
【0015】
本明細書で使用されるC6−10アリールという用語は、6−10個の炭素原子を有し、1個の環または一緒に縮合した2個の環、即ちその少なくとも一方が芳香族でなければならない環を含む、芳香族基を表す。そのような基の例には、フェニエルおよびナフチルが含まれる。
【0016】
本明細書で使用されるハロゲンという用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0017】
O、SおよびNから選択される1−2個のヘテロ原子を含む5から9員ヘテロアリール環系の例には、限定するものではないがフラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、インドール、インダゾールおよびベンズチオフェンが含まれる。
【0018】
O、SおよびNから選択される別のヘテロ原子を含んでいてもよい4から6員飽和または不飽和複素環の例には、限定するものではないがピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、ピリジン、ピペリジン、モルホリンおよびテトラヒドロピリジンが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される溶媒和物という用語は、溶媒および溶質(本発明では、式Iの化合物)によって形成された可変化学量論の複合体を指す。そのような溶媒は、溶質の生物活性を妨げることはできない。適切な溶媒の例には、限定するものではないが水、エタノールおよび酢酸が含まれる。
【0020】
本発明の一実施形態において、LはCHである。別の実施形態では、Lが(CHである。
【0021】
本発明のその他の実施形態において、Rは、C1−4アルキル、C1−4アルキルオキシ、ハロゲンまたはCNであり、前記C1−4アルキルおよびC1−4アルキルオキシは、1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい。その他の実施形態では、Rは、C1−4アルキルまたはCNであり、前記C1−4アルキルは、1−3個のハロゲンで置換されていてもよい。その他の実施形態では、Rが、イソプロピル、第3級ブチル、CNまたはトリフルオロメチルである。その他の実施形態では、Rがトリフルオロメチルである。
【0022】
本発明の別の実施形態において、Rは、OH、C1−4アルキルオキシおよびNR10から選択される置換基で置換されたC1−4アルキルである。その他の実施形態では、Rが、ヒドロキシ、C1−4アルキルオキシまたはNR10で置換されていてもよいメチルであり、ここで、RおよびR10は、先に定義された意味を有する。その他の実施形態では、RがヒドロキシメチルまたはCHNR10である。
【0023】
本発明の別の実施形態において、XおよびXはNであり、XはCRであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。その他の実施形態で、XおよびXはNであり、XはCHである。
【0024】
本発明の別の実施形態において、XおよびXはNであり、XはCRであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。
【0025】
本発明の別の実施形態において、XはCRであり、XおよびXはNであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。
【0026】
本発明の別の実施形態において、RはHまたはメチルである。その他の実施形態で、RはHである。
【0027】
本発明の別の実施形態において、YはNRであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。
【0028】
本発明の別の実施形態において、YはNである。その他の実施形態では、YがCRであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。
【0029】
本発明の別の実施形態において、YはOまたはSである。その他の実施形態では、YがSである。その他の実施形態では、YがCRであり、ここで、Rは、先に定義された意味を有する。
【0030】
本発明の別の実施形態において、YはNである。その他の実施形態では、YがCRであり、ここで、Rは、先に定義された通りである。
【0031】
本発明の別の実施形態において、RはHまたはC1−4アルキルである。別の実施形態では、RがHまたはメチルである。その他の実施形態では、RがHである。その他の実施形態では、YがNRであり、ここで、RはHまたはメチルである。その他の実施形態では、YがNRであり、ここで、RはHである。
【0032】
本発明の別の実施形態において、RはH、C1−4アルキル、C3−8シクロアルキルまたはC6−10アリールである。その他の実施形態では、RがH、メチルまたはフェニルである。その他の実施形態では、RがHまたはメチルである。その他の実施形態では、YがCRであり、ここで、RはHまたはメチルである。
【0033】
本発明の別の実施形態において、RはHまたはC1−4アルキルである。別の実施形態では、RがHまたはメチルである。
【0034】
本発明の別の実施形態において、RおよびRは独立して、Hまたはメチルである。その他の実施形態では、RおよびRがHである。
【0035】
本発明の別の実施形態において、RおよびR10は独立して、HまたはC1−4アルキルである。その他の実施形態では、RおよびR10は独立して、H、またはピロール、イミダゾール、チアゾール、ピリジン、インドールもしくはインダゾールで置換されたC1−4アルキルである。その他の実施形態では、RおよびR10は独立して、H、またはピロール、イミダゾール、チアゾール、ピリジン、インドールもしくはインダゾールで置換されたメチルである。
【0036】
本発明のその他の実施形態において、RおよびR10は、これらが結合しているNと一緒になって、ピペリジン、モルホリン、ピロールまたはイミダゾール環を形成する。
【0037】
本発明のその他の実施形態は、式IIによる複素環式誘導体である
【0038】
【化2】

(式中、R−Rおよびmは、先に定義された意味を有する。)。
【0039】
本発明のその他の実施形態は、式IIIによる複素環式誘導体である
【0040】
【化3】

(式中、R−Rおよびmは、先に定義された意味を有する。)。
【0041】
本発明のその他の実施形態は、式IVによる複素環式誘導体である
【0042】
【化4】

(式中、R−R、Rおよびmは、先に定義された意味を有する。)。
【0043】
本発明のその他の実施形態は、式Vによる複素環式誘導体である
【0044】
【化5】

(式中、R−Rおよびmは、先に定義された意味を有する。)。
【0045】
本発明の別の実施形態は、以下から選択される複素環式誘導体
【0046】
【化6】


または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の複素環式誘導体は、有機化学の分野で周知の方法によって調製される。例えば、J.March、「Advanced Organic Chemistry」第4版、John Wiley and Sonsを参照されたい。合成手順の間、関係ある分子のいずれかで感受性または反応性基を保護することが必要および/または望ましいと考えられる。これは、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutts「Protective Groups in Organic Synthesis」第2版、John Wiley and Sons、1991年に記載されているように、従来の保護基を用いて実現される。保護基は、当技術分野で周知の方法を使用して、従来の後続の段階で、必要に応じて除去される。
【0048】
一般式(I)の複素環式誘導体の合成は、以下のスキーム1−5で概説するように実現することができる。
【0049】
(4)などの複素環式誘導体は、スキーム1に示されるように調製される。クロロアセトニトリルおよびHClガスを適切な溶媒中に、例えばジオキサンに溶かしたものを用いて、アミノチオフェン誘導体(1)を処理することにより、クロロメチル誘導体(2)が得られる。カリウムtert−ブトキシドなどの塩基を例えばテトラヒドロフラン(THF)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶かしたものの存在下での、クロロメチル誘導体(2)とピラゾール誘導体(3)とのさらなる反応によって、付加物(4)が得られる。
【0050】
【化7】

【0051】
アミノチオフェン誘導体(1)およびピラゾール誘導体(3)は、供給業者から得られ、または当業者に公知の文献手順または文献手順の修正例によって調製される。例えば、スキーム2に概略的に示されるように、アミノチオフェン誘導体(1)は、ジエチルアミンまたはN−メチルモルホリンなどの有機塩基の存在下およびエタノールなどの適切な溶媒中での、エチル−2−シアノアセテート、ケトン(5)および硫黄の縮合によって調製される。
【0052】
【化8】

【0053】
置換アゾール誘導体は、スキーム3に示されるように調製してもよい。例えばトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムおよび酢酸を、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)などの適切な溶媒中に溶かしたものを使用した、アルデヒド(7)の還元的アミノ化は、アミン(8)をもたらす。あるいは、ジエチルエーテルなどの適切な溶媒中に溶かした適切なグリニャール試薬でアルデヒド(7)を処理することにより、ヒドロキシアルキル誘導体(9)が得られる。例えば、水素化ホウ素ナトリウムをジクロロメタンおよびエタノールなどの適切な溶媒中に溶かしたものを使用した、アルデヒド(7)の還元は、アルコール(10)をもたらす。(10)の複素環式コアは、水素化ナトリウムおよびヨードメタンをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの適切な溶媒中に溶かしたもので処理することによって、さらに生成することができ、その結果、N−メチル類似体(11)が得られる。
【0054】
【化9】

【0055】
タイプ(12)のアルデヒド誘導体は、スキーム4に示されるように調製してもよい。水素化アルミニウムリチウムなどの試薬をTHFなどの適切な溶媒に溶かしたものによる、タイプ(13)のエステルの還元は、アルコール(14)をもたらす。次いで二酸化マンガンまたは同様の試薬を、例えばアセトニトリル中に溶かしたもので酸化を行うことにより、アルデヒド(13)が得られる。同様に、適切なグリニャール試薬、例えば臭化メチルマグネシウムを、適切な溶媒中に、例えばTHF中に溶かしたものによるエステル(13)の処理は、ジアルキルアルコール(15)をもたらす。
【0056】
【化10】

【0057】
タイプ(19)のアルキルアミン誘導体は、スキーム5に図示されるように調製することができる。適切な塩基、例えばカリウムtert−ブトキシドを、例えばTHFに溶かしたものの存在下、アルコール(16)でクロロメチル誘導体(2)を処理することにより、中間体(17)が得られる。例えば、塩化メタンスルホニルを例えばピリジンに溶かしたものとの反応による、アルコールから適切な脱離基への変換の後、適切な塩基を適切な溶媒中に溶かしたものの存在下、例えばカリウムtert−ブトキシドをジメチルスルホキシドに溶かしたものの存在下で、アミンによる置換を行うことにより、所望のアルキルアミン誘導体(19)が得られる。
【0058】
【化11】

【0059】
本発明は、その範囲内に、例えば立体配置または幾何異性によって得られる、本発明による複素環式誘導体の全ての立体異性体も含む。そのような立体異性体は、鏡像異性体、ジアステレオマー、シスおよびトランス異性体などである。例えば、Rが1−ヒドロキシエチルである場合、化合物は1対の鏡像異性体として存在する。式Iの複素環式誘導体またはこの塩もしくは溶媒和物の個々の立体異性体の場合、本発明は、その他の立体異性体を実質的に含まない、即ち5%未満、好ましくは2%未満、特に1%未満のその他の立体異性体が付随する、前述の立体異性体を含む。任意の割合にある立体異性体の混合物、例えば実質的に当量の2種の鏡像異性体を含むラセミ混合物も、本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
キラル化合物の場合、純粋な立体異性体が得られる不斉合成の方法、例えばキラル誘導による合成、キラル中間体から始まる合成、エナンチオ選択的酵素変換、キラル媒体でのクロマトグラフィを使用した立体異性体の分離は、当技術分野で周知である。そのような方法は、Chirality In Industry(A.N.Collins、G.N.SheldrakeおよびJ.Crosby編、1992年;John Wiley)に記載されている。
【0061】
本発明の複素環式誘導体は、遊離塩基の形にあり、薬学的に許容される塩として、反応混合物から単離される。これらの塩は、有機または無機酸で前記遊離塩基を処理することによっても得られる。そのような酸の例には、限定するものではないが塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸およびアスコルビン酸が含まれる。
【0062】
本発明の複素環式誘導体は、非晶質形態としても存在する。多数の結晶質形態も可能である。これら物理的形態の全ても、本発明の範囲内に含まれる。
【0063】
溶媒和物の調製は、一般に公知である。したがって例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceutical Sci.、93(3)、601−611頁(2004年)は、抗真菌性フルコナゾールの酢酸エチル中ならびに水からの、溶媒和物の調製について記述している。溶媒和物、半溶媒和物および水和物などの同様の調製は、E.C.van Tonderら、AAPS PharmSciTech.、5(1)、article 12(2004年);およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.、603−604頁(2001年)に記述されている。典型的な、非限定的プロセスでは、本発明の化合物を、所望量の所望の溶媒(有機物または水またはこれらの混合物)に、周囲温度よりも高い温度で溶解し、この溶液を、結晶を形成するのに十分な速度で冷却し、次いでこの結晶を、標準的な方法によって単離することを含む。例えばI.R.分光法などの分析的技法は、溶媒和物(または水和物)として、結晶中に溶媒(または水)が存在することを示す。
【0064】
本発明は、天然に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって1個以上の原子が置換されている点以外は、本明細書に列挙されるものと同一である、本明細書に記述され特許請求の範囲に記載された化合物の同位体標識化合物も包含する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例には、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなど、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が含まれる。
【0065】
式Iの、ある同位体標識化合物(例えば、Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分配アッセイで有用である。トリチウム標識(即ち、H)および炭素−14(即ち、14C)同位体は、これらの調製および検出可能性を容易にするのに特に好ましい。さらに、重水素(即ち、H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性から得られるある治療上の利点をもたらすことができ(例えば、インビボ半減期の延長または投薬要件の減少)、したがって、ある状況では好ましいと考えられる。式Iの同位体標識化合物は、一般に、スキームおよび/または以下に示す実施例に開示されるものと同様の手順に従って、適切な同位体標識試薬を非同位体標識試薬の代わりに用いることにより、調製することができる。
【0066】
本発明の化合物のプロドラッグも、本発明の範囲内で企図される。プロドラッグは、対象に投与したときに代謝またはその他の化学的プロセスによって変換されて、式Iの複素環式誘導体またはこの溶媒和物もしくは塩をもたらす、薬物前駆体として働く化合物である。例えば、XがNHである場合、窒素基は、例えば対象に投与したときにアミドまたはカルバメートが元の遊離ヒドロキシル基に変換されることになるので、キャップすることができる。プロドラッグに関する考察が、T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems(1987年)the A.C.S. Symposium Series第14巻およびBioreversible Carriers in Drug Design、(1987年)Edward B.Rocheら、American Pharmaceutical Association and Pergamon Pressに示されている。プロドラッグの使用に関する考察は、T.HiguchiおよびW.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、the A.C.S. Symposium Series第14巻およびBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年によって示されている。
【0067】
他の態様において、本発明の複素環式誘導体および薬学的に許容される塩および溶媒和物は、治療に有用である。したがって本発明の複素環式誘導体は、AMPA受容体によって媒介されるシナプス応答の増強が必要とされる、精神疾患を治療しまたは予防するための薬物の製造に、有用である。特に、複素環式誘導体は、神経変性障害、認知または記憶障害、記憶および学習障害、注意障害、外傷、卒中、癲癇、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、精神病性障害、不安症、自閉症、神経症用薬剤から生ずる障害もしくは疾患、物質乱用、アルコール性精神障害、パーキンソン病、睡眠障害もしくはナルコレプシー、または断眠から生ずるその他の障害を治療する薬物の製造に有用である。本発明はさらに、前述の疾患または障害のいずれかの治療で使用される、複素環式誘導体を含む。
【0068】
本発明はさらに、本発明による複素環式誘導体または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物の有効量を、その必要がある対象に投与するステップを含む、うつ病または前述の障害のいずれかに罹患しておりまたは罹患し易いヒトを含めた哺乳動物を治療するための方法を含む。有効量または治療上有効な量とは、上述の疾患を阻害するのに有効な、したがって所望の治療的な、寛解性の、阻害的なまたは予防的な効果をもたらすのに有効な、本発明の化合物または組成物の量を意味する。
【0069】
治療効果を発揮することが求められる、本明細書で活性成分とも呼ばれる本発明の複素環式誘導体または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物の量は、当然ながら、特定の化合物、投与経路、レシピエントの年齢および状態、治療がなされる特定の障害または疾患に応じて変わることになる。
【0070】
上述の障害のいずれかに関して適切な一日量は、1日当たり、レシピエント(例えば、ヒト)の体重kg当たり0.001から50mgの範囲内にあり、好ましくは1日当たり、体重kg当たり0.01から20mgの範囲内にある。所望の用量は、1日の全体を通して適切な間隔を空けて投与される、多数回に分けたサブ用量として提示してもよい。
【0071】
活性成分を単独で投与することが可能であるが、活性成分は、医薬品組成物として提示することが好ましい。したがって、本発明は、本発明による複素環式誘導体を、Gennaroら、Remmington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott、Williams and Wilkins、2000年;(特に第5部:pharmaceutical manufacturing参照)に記載されているような、1種以上の薬学的に許容される添加物と混合して含む、医薬品組成物も提供する。「許容される」という用語は、組成物のその他の成分に対して適合性があり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。適切な添加物は、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版;A.WadeおよびP.J.Weller編、American Pharmaceutical Association、Washington、The Pharmaceutical Press、London、1994年に記載されている。組成物は、経口、経鼻、局所(経頬、舌下および経皮を含む。)、非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む。)または経直腸投与に適切なものを含む。
【0072】
本発明による複素環式誘導体および1種以上の薬学的に許容される1種以上の添加物の混合物は、錠剤などの固体投薬単位に圧縮されていてもよく、またはカプセルもしくは坐剤に加工されていてもよい。薬学的に適切な液体を用いることによって、化合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンの形をとる注射製剤として、またはスプレーとして、例えば鼻もしくはバッカルスプレーとして施用することもできる。投薬単位、例えば錠剤を作製する場合、充填剤、着色剤およびポリマー結合剤などの従来の添加剤の使用が考えられる。一般に、任意の薬学的に許容される添加剤を、使用することができる。本発明の化合物は、インプラント、パッチ、ゲルまたは即時および/または持続放出のための任意のその他の製剤で使用するのに適切である。
【0073】
一緒に医薬品組成物を調製することができ投与することができる適切な充填剤には、ラクトース、デンプン、セルロースおよびこれらの誘導体などが含まれ、またはこれらが適切な量で使用される混合物が含まれる。非経口投与の場合、プロピレングリコールやブチレングリコールなど、薬学的に許容される分散剤および/または湿潤剤を含有する水性懸濁液、等張性生理食塩液および滅菌注射液を使用してもよい。
【0074】
本発明はさらに、前述の医薬品組成物を、前記組成物に適切な包装材料と併せて含み、前記包装材料は、前述のように使用される組成物を使用するための、取扱説明書を含んでいる。
【0075】
本発明は、その範囲を限定するものではない以下の実施例によって、さらに例示される。
【実施例1】
【0076】
6−メチル−2−((4−((チアゾール−2−イルメチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0077】
a)(3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)メタノール
【0078】
【化12】

エチル3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(95.00g、0.456モル)を乾燥THF(1L)中に溶解し、得られた溶液をアセトン/氷浴中で冷却した。LiAlHのTHF(550mL、0.550モル)中1M溶液を温度<10℃を保持しながら30分間かけて添加した。次いで冷却を止め、反応混合物をRTで4時間撹拌した。反応混合物を再び冷却し、1:1のTHF:水の溶液(250mL)を冷却しながら(温度<20℃を維持)添加し、その後、5M HCl(160mL)を添加して、中性/pH6にした。EtOAc(1.5L)を添加し、この混合物を30分間撹拌し、次いで一晩静置した。得られた灰色の顆粒状固体を、ジカライトに通して濾過することにより除去し、EtOAcで洗浄した。合わせた濾液をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、その後、真空濃縮することにより、白色固体(76.00g、0.457モル、100%)が得られた。
1H NMR(400MHz、CDOD):δ4.61(s、2H)、7.75(s、1H)
【0079】
b)3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド
【0080】
【化13】

(3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)メタノール(54.00g、0.325モル)をトルエン(2L)中に懸濁した。MnO(113.00g、1.30モル)および4Åモレキュラーシーブ粉末(54.00g)を添加した。反応混合物を、ディーンスタークトラップを用い、窒素中、還流下で5.5時間撹拌した。得られた混合物を高温で濾過し、ケークを冷ました後に、1:1のDCM:MeOH溶液で洗浄した(3×500mL)。合わせた濾液を真空濃縮することにより、所望の生成物(54.00g、0.329モル、100%)が得られた。
1H NMR(400MHz、DMSO):δ8.72(s、1H)、9.91(s、1H)
【0081】
c)エチル2−アミノ−5−メチルチオフェン−3−カルボキシレート
【0082】
【化14】

プロピオンアルデヒド(29.00g、0.499モル)、エチル−2−シアノアセテート(56.50g、0.499モル)および硫黄(15.98g、0.499モル)をエタノール(275mL)中に混合した撹拌混合物を、30分間にわたり65℃に加熱し、それと共にジエチルアミン(36.50g、0.499モル)を1滴ずつ添加した。この混合物を、65℃で18時間撹拌し、次いで真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ−シリカゲルによる精製および10%EtOAc:イソヘキサンでの溶離によって、所望の生成物が黄色の油(69.00g、0.372モル、75%)として得られた。
MS(ESI):m/z 186[M+H]
【0083】
d)2−(クロロメチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【0084】
【化15】

HClガスを、エチル2−アミノ−5−メチルチオフェン−3−カルボキシレート(69.00g、0.372モル)およびクロロアセトニトリル(33.70g、0.447モル)をジオキサン(600mL)に混合した撹拌混合物中に、6時間バブリングした。次いで混合物を、約100mLの体積に真空濃縮して、水(1L)中に注ぎ、混合物をNHOHで塩基性化した。濾過および炉内乾燥により、灰色の固体(約60g)が得られた。粗製材料をジオキサン(1L)中に懸濁し、2時間加熱還流し、その後、真空濃縮した。この結果、標題の化合物が灰色の固体(57.88g、0.270モル、72%)として得られた。
MS(ES1):216m/z[M+H]
【0085】
e)1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド。
【0086】
【化16】

3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(3.82g、23.3mmol)および2−(クロロメチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−(3H)−オン(5.00g、23.3mmol)を、THF:DMF(180mL:20mL)中に懸濁し、カリウムtert−ブトキシド(5.23g、46.6mmol)を添加した。得られた混合物をRTで18時間撹拌した。次いでこの混合物をEtOAc(500mL)で希釈し、水(200mL)と共に振盪させた。分離した水相を希HCl溶液でpH5に酸性化し、有機層と共に再度振盪させた。次いで分離した有機物をブラインで洗浄し(2×200mL)、MgSOで乾燥し、その後、真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ−シリカゲルによる精製および50%イソヘキサン:EtOAc、次いでEtOAcによる溶離によって、所望の生成物が薄黄色の固体(4.65g、13.6mmol、58%)として得られた。
MS(ESI):341m/z[M−H]
【0087】
f)6−メチル−2−((4−((チアゾール−2−イルメチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0088】
【化17】

1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(0.55g、1.62mmol)およびチアゾール−2−イルメタナミン(925mg、8.10mmol)をDCM(11mL)に混合した混合物を、酢酸(1mL)でpH5に酸性化し、その後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.72g、8.10mmol)を添加した。得られた混合物をRTで一晩撹拌した。反応混合物をMeOHでクエンチ処理し、SCXカラムに通し、MeOH中に溶かした2MのNHで溶離した。サンプルを真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ−シリカゲルによる精製および3−5%MeOH:DCMでの溶離(リットル当たりDIPEAが3滴)の後、2回目のフラッシュカラムおよび3−4%MeOH:DCMでの溶離(リットル当たりDIPEAが3滴)によって、標題の生成物が白色固体(172mg、0.391mmol、24%)として得られた。
MS(ESI):441m/z[M+H]
【実施例2】
【0089】
2−((4−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0090】
a)2−(3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)プロパン−2−オール
【0091】
【化18】

エチル3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルボキシレート(649mg、3.12mmol)をTHF(6.50mL)中に溶かした撹拌溶液に、その温度が0℃以下に維持されるように、臭化メチルマグネシウム(2.57g、21.5mmol)を15分間にわたり1滴ずつ添加した。反応混合物を一晩撹拌し、RTにした。この段階での分析は、未反応の出発物質が存在することを示した。反応混合物をもう一度<10℃に冷却し、さらに臭化メチルマグネシウム(2.57g、21.5mmol)を15分間にわたり1滴ずつ添加し、得られた白色懸濁液をさらに24時間撹拌した。反応混合物を−5℃に冷却し、飽和NHCl溶液でクエンチ処理した。混合物を真空濃縮し、残留物をジエチルエーテルと水との間で分配した。有機層を分離し、飽和ブラインで洗浄し(×2)、MgSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮することにより、粗製生成物が黄色の油として得られ、これを静置して一部を凝固した。フラッシュカラムクロマトグラフィ−シリカゲルによる精製および40%EtOAc:イソヘキサンでの溶離によって、標題の生成物が白色固体(417mg、2.149mmol、69%)として得られた。
MS(ESI):193m/z[M−H]
【0092】
b)2−((4−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メトキシ)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0093】
【化19】

2−(3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)プロパン−2−オール(73mg、0.376mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(127mg、1.13mmol)をTHF(2mL)に混合した混合物を、約2分間撹拌した。この混合物に、2−(クロロメチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(81mg、0.376mmol)を添加し、得られた混合物を18時間撹拌した。得られた混合物を飽和NHCl溶液でクエンチ処理し、真空濃縮した。残留物をDCMと水との間で分配し、有機層を分離した。水層をさらにDCMで抽出し、合わせた有機物を飽和ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮することにより、薄黄色のガムが得られた。ガムを分取LCMSで精製することにより、生成物が白色固体(5mg、0.014mmol、4%)として得られた。
MS(ESI):371m/z[M−H]
【実施例3】
【0094】
2−((4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0095】
【化20】

2−(3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)エタノール(50mg、0.278mmol)、2−(クロロメチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(60mg、0.278mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(62mg、0.07mL、0.555mmol)をTHF(3mL)に混合した混合物を、75℃に4時間加熱した。反応混合物をRTまで冷まし、その後、濾過し、真空濃縮した。残留物を分取逆相HPLCで精製することにより、標題の化合物が白色固体(32mg、0.089mmol、32%)として得られた。
MS(ESI):359m/z[M+H]
【実施例4】
【0096】
2−((4−(1−ヒドロキシエチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0097】
【化21】

1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(100mg、0.292mmol)をジエチルエーテル(10mL)中に溶解し、ドライアイス/アセトン浴で−78℃に冷却した。反応は、窒素雰囲気中で行った。臭化メチルマグネシウム(35mg、0.292mmol)を1滴ずつ添加し、反応混合物をそのままRTに温め、2時間撹拌した。水を添加し、反応混合物をEtOAc中に抽出した(×3)。合わせたEtOAc層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮した。分取逆相HPLCで精製することにより、標題の生成物(8mg、0.023mmol、8%)が得られた。
MS(ESI):359m/z[M+H]
【実施例5】
【0098】
2−((4−(ヒドロキシメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0099】
【化22】

1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(100mg、0.292mmol)を1:1のDCM:MeOH溶液(2mL)中に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(33mg、0.876mmol)を添加した。30分後、混合物を、水(1mL)を添加することによってクエンチ処理し、次いで真空濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ−シリカゲルによる精製および3%MeOH:DCMでの溶離によって、白色固体が得られ、これをイソプロパノールから再結晶し、凍結乾燥することによって、標題の化合物が白色固体(28mg、0.081mmol、28%)として得られた。
MS(ESI):343m/z[M−H]
【実施例6】
【0100】
2−((4−(ヒドロキシメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−3,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0101】
【化23】

2−((4−(ヒドロキシメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−(3H)−オン(240mg、0.697mmol)をDMF(5mL)中に溶解した。NaH(17mg、0.708mmol)を添加し、反応混合物を60℃で1時間加熱し、次いでRTまで冷まし、その後、さらに氷/塩浴で0℃に冷却した。ヨードメタン(1.14g、0.50mL、8.03mmol)を一度に添加し、反応混合物をRTで1時間撹拌し、次いでそのままRTに温め、その後、一晩静置した。反応混合物を2M HClで酸性化し、EtOAc中に抽出した(×3)。EtOAcをブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮した。分取逆相HPLCでの精製によって、標題の生成物が白色固体(76mg、0.213mmol、31%)として得られた。
MS(ESI):359m/z[M+H]
【実施例7】
【0102】
6−メチル−2−((4−((ピリジン−3−イルメチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0103】
【化24】

3−(アミノメチル)ピリジン(47mg、0.438mmol)および1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(30mg、0.088mmol)をNMP(3mL)に溶かした溶液を、10%AcOHをNMP(200μl)に溶かしたものと一緒に、30分間振盪し、その後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(93mg、0.438mmol)を添加した。得られた混合物を一晩振盪させた。混合物を、1:1のAcOH:MeOH(200μl)を添加することによってクエンチ処理し、コットンウールに通して濾過し、分取LCMSによって精製した。次いで同じサンプルをSCXカートリッジ内に流下させ、7MのNHをMeOH(5mL)に溶かしたもので溶離することにより、標題の生成物が白色固体(27mg、0.063mmol、12%)として得られた。
MS(ESI):435m/z[M+H]
【実施例8】
【0104】
6−メチル−2−((4−((チアゾール−5−イルメチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)チエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0105】
【化25】

実施例7と同様の手法で、チアゾール−5−イル−メチルアミン塩酸塩(50mg、0.438mmol)を3−(アミノメチル)ピリジンの代わりに使用することにより、標題の化合物(7mg、0.015mmol、17%)が得られた。
MS(ESI):441m/z[M+H]
【実施例9】
【0106】
2−((4−(((1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0107】
【化26】

実施例7と同様の手法で、2−(アミノメチル)ベンズイミダゾール二塩酸塩水和物(65mg、0.438mmol)を3−(アミノメチル)ピリジンの代わりに使用することにより、標題の化合物(10mg、0.021mmol、24%)が得られた。
MS(ESI):474m/z[M+H]
【実施例10】
【0108】
2−((4−(((1H−イミダゾール−2−イル)メチルアミノ)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0109】
【化27】

実施例7と同様の手法で、1H−イミダゾール−2−イルメチルアミン(50mg、0.511mmol)を3−(アミノメチル)ピリジンの代わりに使用することにより、標題の化合物(8mg、0.019mmol、18%)が得られた。
MS(ESI):424m/z[M+H]
【実施例11】
【0110】
2−((4−(ヒドロキシメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチル−5−フェニルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0111】
a)1−((6−メチル−4−オキソ−5−フェニル−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド。
【0112】
【化28】

3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(100mg、0.609mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(137mg、1.22mmol)をTHF(3mL)中に懸濁した撹拌懸濁液に、2−(クロロメチル)−6−メチル−5−フェニルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(177mg、0.609mmol)を添加し、得られた溶液をRTで2日間撹拌した。反応混合物を水でクエンチ処理し、真空濃縮することにより、粗製生成物がベージュ色の固体(97mg、0.232mmol、38%)として得られた。この材料を、さらに精製することなく使用した。
【0113】
b)2−((4−(ヒドロキシメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチル−5−フェニルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0114】
【化29】

1−((6−メチル−4−オキソ−5−フェニル−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(97mg、0.232mmol)をDCM(2mL)およびMeOH(2mL)中に溶かした撹拌溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(26mg、0.696mmol)を添加し、混合物を一晩撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(53mg、1.39mmol)を添加し、混合物をさらに20時間撹拌した。反応混合物を水でクエンチ処理し、真空濃縮した。残留物を1:1のDMSO:MeCNに吸収させ、濾過し、分取LCMSで精製することにより、標題の生成物が白色固体(10mg、0.024mmol、10%)として得られた。
MS(ESI):421m/z[M+H]
【実施例12】
【0115】
2−((4−(2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0116】
a)2−(1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)メタンスルホネート
【0117】
【化30】

2−((4−(2−ヒドロキシエチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(1.99g、5.55mmol)を、ピリジン(0.44g、20mL、5.55mmol)中に完全に溶解し、アセトン/塩化ナトリウム/氷浴中で冷却した。内部温度を−10℃で維持した。塩化メシル(2.07g、1.40mL、18.1mmol)を少量ずつ添加し、温度を発熱させて0℃にした。混合物を、0℃で1時間撹拌し、脱イオン水を、固体が析出するまで添加した。反応混合物を濾過し、水で洗浄し、真空濃縮することにより、標題の化合物が薄黄色の固体(2.11g、4.83mmol、87%)として得られた。
MS(ESI):437m/z[M+H]
【0118】
b)2−((4−(2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【0119】
【化31】

2−(1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)エチルメタンスルホネート(150mg、0.344mmol)、1H−イミダゾール(23mg、0.344mmol)およびカリウムtert−ブトキシド(116mg、1.03mmol)を、DMS(3mL)中に溶解し、得られた混合物を、マイクロ波照射によって30分間70℃に加熱した。粗製混合物のLCMS分析は、不完全な反応であることを示し、したがって混合物を、マイクロ波照射によって1時間100℃に加熱した。混合物を濾過し、分取LCMSによって精製した。次いでサンプルをSCXカートリッジ内で流下させ、2MのNHをMeOHに溶かしたもので溶離することによって、標題の生成物(15mg、0.037mmol、11%)が得られた。
MS(ESI):409m/z[M+H]
【実施例13】
【0120】
N−((1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)メチル)アセトアミド。
【0121】
a)2−((4−(アミノメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0122】
【化32】

1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロエチル)−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(2.92mmol、1g)およびヒドロキシアルキルアミン塩酸塩(3.21mmol、0.223g)のエタノール(7mL)中溶液を、80℃に加熱し、この温度を3時間維持した。反応混合物を室温に冷まし、エーテルおよびヘプタンで希釈し、その後、得られた沈殿物を濾過によって収集した。得られた固体を酢酸(5mL)および亜鉛(7.79mmol、0.510g)に吸収させ、その全体を、超音波によって時々撹拌しながら、室温で3日間撹拌した。反応混合物をセライトに通して濾過し、パッドをMeOHで洗浄し、その後、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をMeOH中に溶解し、同じ溶媒で平衡にしたSCXカートリッジに適用し、その後、2N NH/MeOHで溶離することにより、薄黄色の固体(271mg、0.79mmol、50.6%)が得られた。
MS(ESI):344m/z[M+H]
【0123】
b)N−((1−((6−メチル−4−オキソ−3,4−ジヒドロチエノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)メチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−4−イル)メチル)アセトアミド。
【0124】
【化33】

2−((4−(アミノメチル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(0.087mmol、30mg)およびDIPEA(0.175mmol、0.029ml、22.59mg)のDCM(1mL)中溶液に、塩化アセチル(0.175mmol、0.012ml、13.72mg)を添加した。その全体を室温で一晩撹拌し、その後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を逆相HPLCで精製することによって、白色固体(8.7mg、23mmol、25.8%)が得られた。
MS(ESI):386m/z[M+H]
【実施例14】
【0125】
2−((3−(ヒドロキシメチル)−4−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0126】
a)メチル−4−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボキシレート
【0127】
【化34】

50mLの丸底フラスコに、水素化ナトリウム(3.24mmol、78mg)をEtO(5mL)を溶かしたものを添加した。p−トルエンスルホニルメチルイソシアニド(3.24mmol、634mg)および(E)−メチル−4,4,4−トリフルオロメチルブト−2−エノエート(3.24mmol、500mg)の混合物を、EtO:DMSO(15mL:7.5mL)が2:1の混合物に添加した。この混合物はやや温かくなり、これを30分間撹拌した。HO(10mL)を添加し、反応混合物をEtOで抽出した(3×20mL)。合わせたEtO層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去することにより、粗製生成物(590mg)が黄/オレンジ色の固体として得られた。フラッシュシリカクロマトグラフィカラム(溶離剤 1:4 EtOAc:ヘプタン)による精製によって、所望の生成物(154mg、0.797mmol、25%)が得られた。
H NMR(400MHz、MeOD):δ3.79(s、3H)、7.20(s、1H)、7.50(s、1H)
【0128】
b)2−((3−(ヒドロキシメチル)−4−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−1−イル)メチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン。
【0129】
【化35】

バイアルに、メチル−4−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボキシレート(0.129mmol、25mg)および水素化ナトリウム(油中60%分散液、0.432mmol、10.4mg)をDMF(2mL)に溶かしたものを添加した。2−(クロロメチル)−6−メチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン(0.129mmol、27.8mg)を添加した。反応物を65℃で3時間加熱し、次いで室温に冷まし、一晩静置した。HO(10mL)を添加し、反応混合物をEtOAcで抽出した(3×10mL)。合わせたEtOAc層をブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去することにより、粗製中間体が得られた。この中間体をTHF(5mL)に溶解し、LiAlHのTHF中溶液を添加した(2M、1.295mmol、0.65mL)。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いでMeOH(5mL)を慎重に添加し、次いで室温で30分間撹拌した。溶媒を減圧下で除去することにより、粗製生成物が得られ、これをHPLCで精製することにより、所望の生成物(2.5mg、7.3μmol、6%)が得られた。
MS(ESI):344m/z[M+H]
【実施例15】
【0130】
生物学的アッセイ
A:Ca2+流入蛍光アッセイ
本発明における化合物は、FLEXstation(Molecular Devices、Sunnyvale、CA製)などであるがこれらに限定するものではない当技術分野で標準的な技法を使用して、AMPA(GluR1)受容体の正の調節を通して媒介されたCa2+流入を測定する、生物学的アッセイを使用して試験することができる。蛍光プローブを使用する光学式読取りを用いて、細胞内イオン濃度または膜電位のイオンチャネル依存性変化を測定する。このアッセイは、グルタミン酸依存性Ca2+応答を生成するための、官能性ホモマーGluR1(i)AMPA受容体のCa2+コンダクタンスを利用する。イオンチャネルを通したCa2+の流入は、FLEXstationのFluo−3(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)などであるがこれに限定するものではないカルシウム感受性色素を使用して、細胞内Ca2+レベルの増加を通して間接的に測定される。正のAMPA受容体調節物質は、グルタミン酸の存在下で、FLEXstationのカルシウム感受性色素Fluo−3を使用して、細胞内Ca2+レベルの増加を通して間接的に測定することができる、イオンチャネルを通したCa2+の流入をもたらすことになる。
【0131】
HEK.GluR1(i)細胞を、10%fetaclone II、1%非必須アミノ酸および150μg/mLハイグロマイシンが補われたDMEM中に、37℃/5%COで維持した。アッセイの24時間前に、細胞をトリプシンで回収し、Costar 96ウェルクリアボトムブラックプレートにウェル当たり3.5×10の密度で播く。
【0132】
細胞に、5μMのfluo3−AMをDMEM培地に加えたものを、ハイグロマイシンが存在しない状態で添加し、37℃/5%COで1時間温置する。色素投入後、細胞を、0.625mMのプロベネシド(陰イオン交換タンパク質用阻害剤)を含有する低カルシウム溶液(10mM hepes、pH7.4、160mM NaCl、4.5mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、10Mmグルコース)200μlで1回洗浄して、色素を除去する。次いで低カルシウム溶液200μlを、各ウェルに添加する。Flexstationは、高カルシウム溶液(10mM Hepes、pH7.4、160mM NaCl、4.5mM KCl、20mM CaCl、1mM MgClおよび10mMグルコース)中50μlのグルタミン酸+/−試験化合物を各ウェルに添加し、次に起こる応答がFLEXstationでモニタされる。本発明の化合物は、0.3μMから30μMの範囲のEC50値を有するAMPA受容体の、正の調節を示す。例えば、実施例1は、1μMのEC50をもたらした。
【0133】
B:パッチクランプ記録法
パッチクランプ技法のホールセル記録(Hamillら、Pflugers Arch.1981年、39、85−100頁)を使用して、生後ラット皮質ニューロンからグルタミン酸によって誘発された電流を測定した。培養物を載せたガラスカバースリップを、倒立顕微鏡(Nikon、Kingston、UK)のステージ上に載置された記録チャンバ(Warner Instrument Corp.、Hamden、CT)に移した。記録チャンバは、1−2mlの細胞外溶液(145mM NaCl、5.4mM KCl、10mM HEPES、0.8mM MgCl、1.8 CaCl、10mMグルコースおよび30mMスクロース、1M NaOHでpH7.4に調製されたもの)を含有し、1ml/分の速度で常に精査された。記録は、Axopatch 200B増幅器(Axon Instruments Ltd.、Foster City、CA)を使用して、室温(20−22℃)で行った。
【0134】
データの獲得および解析は、Signalソフトウェア(Cambridge Electronic Design Ltd.、Cambridge、UK)を使用して行った。ピペットは、モデルP−87電極プラー(Sutter Instruments Co.、Novarto、CA)を使用して、GC120F−10ガラス(Harvard Apparatus、Edenbridge UK)から製造した。パッチ電極は、細胞内溶液(140mMグルコン酸カリウム、20mM HEPES、1.1mM EGTA、5mMホスホクレアチン、3mM ATP、0.3mM GTP、0.1mM Caca2、5mM MgCl、1M KOHでpH7.4に調節したもの)で満たした場合、3−5MQの間の典型的な抵抗を有していた。
【0135】
細胞を、−60mVの保持電位で電圧固定し、グルタミン酸(0.5mM)を、12チャネル半高速薬物適用デバイス(DAD−12、Digitimer Ltd.、Welwyn Garden city、UK)を使用して適用した。作動薬であるグルタミン酸を、30秒ごと1秒の割合で適用した。この応答は、ホールセル記録を使用して、時間と共に「低下」しなかった。適用と適用の間に生理食塩液を流し、それによって、系内のあらゆるデッドボリュームを一掃した。各適用ごとに、ベースラインおよび定常電流の差から定常電流をプロットし、300msにわたる範囲で平均した。
【0136】
細胞外溶液中の化合物の2種の溶液を作製し、その一方にグルタミン酸溶液を含ませ、他方には含めなかった。プロトコルは:10秒の化合物適用、1秒の化合物+グルタミン酸適用、次いで10秒の生理食塩液による洗浄、次いで10秒の遅延であった。化合物が可溶性ではない場合、0.5%DMSOを共溶媒として使用した。結果を、細胞外溶液における本発明の化合物の10pM濃度での、定常電流のパーセンテージの増加として表1に示す。この技法を使用すると、実施例1は、10μMでの定常電流に235±44%の増加を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによる複素環式誘導体
【化1】

(式中、
Lは、(CHであり、ここで、mは1または2であり;
は、C1−4アルキル、C3−5シクロアルキル、C1−4アルキルオキシ、ハロゲンまたはCNであり、前記C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルおよびC1−4アルキルオキシは1個以上のハロゲンで置換されていてもよく;
は、C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルまたはC1−4アルキルオキシであり、前記C1−4アルキル、C3−5シクロアルキルおよびC1−4アルキルオキシは、OH、C1−4アルキルオキシおよびNR10から選択される置換基で置換されており;
−Xは独立してNまたはCRであり、ここで、RはHまたはメチルであり;
はNRまたはCHRであり、ここで、RはHまたはC1−4アルキルであり;
はNまたはCRであり、ここで、Rは、H、C1−4アルキル、C3−8シクロアルキルまたはC6−10アリールであり;
は、H、C1−4アルキルまたはC3−5シクロアルキルであり;
は、O、SまたはNRであり、ここで、Rは、HまたはC1−4アルキルであり;
は、NまたはCRであり、ここで、Rは、HまたはC1−4アルキルであり;
およびR10は独立して、H、またはO、SおよびNから選択される1−2個のヘテロ原子を含む5−9員ヘテロアリール環系で置換されていてもよいC1−4アルキルであり、またはRおよびR10はこれらが結合しているNと一緒になって、O、SおよびNから選択される別のヘテロ原子を含んでいてもよい4−6員飽和もしくは不飽和複素環を形成する。)
または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
がCFである、請求項1に記載の複素環式誘導体。
【請求項3】
が、ヒドロキシまたはNR10で置換されていてもよいメチルである、請求項1または請求項2に記載の複素環式誘導体。
【請求項4】
およびXがNであり、ならびにXがCHである、請求項1から3のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項5】
がNRであり、ならびにRがHまたはメチルである、請求項1から4のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項6】
がCRであり、ならびにRがHまたはメチルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項7】
がHまたはメチルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項8】
がSである、請求項1から7のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項9】
がNである、請求項1から8のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項10】
mが1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項11】
【化2】


から選択される複素環式誘導体または薬学的に許容されるこの塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
治療で使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の複素環式誘導体を、1種以上の薬学的に許容される佐剤と混合して含む、医薬品組成物。
【請求項14】
AMPA受容体によって媒介されるシナプス応答の増強が必要とされる、精神疾患の治療または予防に使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の複素環式誘導体。

【公表番号】特表2011−503139(P2011−503139A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533556(P2010−533556)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065306
【国際公開番号】WO2009/062930
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】