説明

西洋わさび抽出物およびそれを含む皮膚用外用剤

【課題】従来技術では、副作用や牛海綿状脳症などのリスクという問題がある。従って、本発明の目的は、安全性に優れた西洋わさび抽出物、チロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤を提供することにある。
【解決手段】アブラナ科の耐年性多年草植物である西洋わさび(ワサビダイコン、Cochlearia armoracia L.)から、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用を有する西洋わさび抽出物と、その抽出物を含むチロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用、抗酸化作用に優れた薬剤に関する。さらに詳しくは、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用、抗酸化作用を有するシミ、ソバカス等の色素沈着を予防、改善に有効な抽出物、チロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シミ、ソバカス等皮膚への色素沈着は、紫外線を浴びることによりメラニンを合成するメラノーマ細胞内のチロシナーゼ活性が上昇し、メラニンを盛んに産生することに起因する。このメラニンは、動植物界に広く分布しているが、脊髄動物においては、メラノサイト中の細胞質顆粒メラノソームで、チロシンがチロシナーゼにより酸化されて、ドーパ、ドーパキノンが生合成され、更にドーパキノンは紫外線による自動酸化によってインドールキノン等になり、複雑な経路を経てメラニンが生合成されることが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
従来、色素沈着、シミ、ソバカス等の予防・治療には、ハイドロキノン等の化学合成品を有効成分とする美白剤(特許文献1)を外用する処置が行なわれてきた。しかしながら、ハイドロキノン等の化学合成品は、皮膚刺激、アレルギー性等の副作用の危険性がある。また、コウジ酸(特許文献2)も美白剤として利用されているが、発がん性及び遺伝毒性との関係が示唆されている。このように、化学合成された美白剤には少なからず副作用などのリスクがある。
【0004】
副作用の危険性の少ない薬剤として、安全性の高い天然原料からの抽出物を有効成分とする美白剤の検討も行われている。例えば、動物からの美白剤として、ウシの胎盤から抽出した胎盤エキス(特許文献3)などがある。しかし、ウシが原料として使用されることから、牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)の影響が懸念されている。
【0005】
植物からの美白剤も探索されているが、不用意に植物を選択し抽出物を得ようとすると植物毒の大半をしめるアルカロイドなどが混入するおそれがある。アルカロイドは、窒素を含むアルカリ性の分子で、神経ホルモンそっくりであるため、神経線維の末端部に入り込んで神経の作用を狂わせて、毒性を発揮する。そのため、植物の選択や有効成分の抽出方法には注意が必要である。
【0006】
安全な植物の選択として、特に食品用などに使用される植物、たとえば、西洋わさびなどが考えられるが、西洋わさびの抽出エキスがメラニン産生抑制作用をもつこと、そしてこれを有効成分として含有せしめて美白剤を作り出すことは、現在、当業者に知られていない。なお、西洋わさびは食用として根が用いられ葉は捨てられているので、葉の有効利用が期待されている。
【0007】
【非特許文献1】機能性化粧品の開発(シーエムシー出版、2000年2月10日発行)
【特許文献1】特開平06-256150
【特許文献2】特開平06-016532
【特許文献3】特開2001-253831
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術では、副作用や牛海綿状脳症などのリスクという問題がある。従って、本発明の目的は、安全性に優れた美白剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非常に意外なことに、食品用植物である西洋わさびの抽出物が、チロシナーゼ阻害作用、メラニン産生抑制作用、抗酸化作用を有することを見い出し、さらに、これを有効成分として含有せしめた美白剤が、例えば皮膚用外用剤として有効であることを見い出し本発明を完成したものである。
【0010】
また、本発明者らは、上記有効成分を含有する西洋わさびの抽出物が、西洋わさびの根茎のみではなく、西洋わさびの葉や茎又は種々の残渣からも得られることを見い出した。西洋わさびは、通常、食用として根茎のみが用いられ、葉や茎はもとよりある種の酵素を抽出して得られる根茎残渣はそのまま捨てられる場合が多く、本発明を利用することにより廃材の有効利用が期待される。
【0011】
即ち、本発明者らは上記知見を元に鋭意検討した結果、以下に示すような手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
1.チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用を有することを特徴とする西洋わさび抽出物。
2.西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物、及び/又は西洋わさびの根の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする1の西洋わさび抽出物。
3.西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする
1または2の西洋わさび抽出物
4.1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤。
5.1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。
6.1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
7.6の美白剤を含有することを特徴とする皮膚用外用剤。
8.さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする7の皮膚用外用剤。
9.西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
10.西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物及び/又は、西洋わさびの根茎の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする9の美白剤。
11.西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする9または10の美白剤。
12.さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする9〜11のいずれかの美白剤。
13.西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚用外用剤。
14.西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物及び/又は、西洋わさびの根茎の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする13の皮膚用外用剤。
15.西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする13または14の皮膚用外用剤。
16.さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする13〜15のいずれかの皮膚用外用剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、安全性に優れた植物由来のチロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用に優れた、西洋わさび抽出物、チロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤を提供することができる。また、バイオマス利用による地球環境の保全効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、美白剤とは、シミ、ソバカス等の予防又は治療に有効な皮膚用化粧品素材を言い、医薬部外品としてのローション、乳液、クリーム、パック剤、石鹸等の薬用化粧品および医薬品としてのローション、乳液、クリーム、軟膏等の皮膚外用剤を含むものである。
【0014】
本発明で用いた西洋わさびは、好ましくはCochlearia armoracia L.由来の西洋わさびである。その根茎を摺りおろして、ローストビーフの薬味として辛味料に使用する用途が知られているが、この葉の抽出物がチロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤として有効であるということは全く知られていない。
【0015】
西洋わさびからの有効成分の抽出において、植物体全体から抽出操作を行ってもよい。また、植物体を根茎、茎、葉と分別して抽出操作を行ってもよいし、それぞれを組み合わせて抽出操作を実施してもよい。また、通常西洋わさび根茎からは、ある種の酵素を抽出されることが知られているが、酵素を抽出した後に得られ、廃棄されるところの残渣から抽出してもよい。本発明では、使用わさびの根茎、茎、葉のうち、特に葉に有効成分があることを見いだしているので、好ましくは葉から抽出操作を行うのがよい。西洋わさびは、その根茎を摺りおろして、ローストビーフの薬味として辛味料に使用する用途が知られているが、葉は捨てられているので、その有効利用が期待されている。西洋わさびの葉を利用することで、西洋わさびの生産者や、バイオマス分野の産業に大きく貢献することが期待できる。
【0016】
西洋わさびの植物体は、生の状態、凍結された状態、凍結乾燥された状態のいずれから抽出操作を行ってもよい。好ましくは、生の状態から抽出作業を行うのがよい。生または凍結された西洋わさびから抽出作業を行う場合には、まず、破砕をしても良い。破砕にはミキサー、ホモジナイザー、乳鉢などを用いて破砕すればよい。凍結乾燥されたものは、凍結乾燥操作後、粉状に破砕しても良い。
【0017】
破砕された植物体は溶媒を用いて、抽出操作を行う。抽出方法として、室温,冷却又は加熱した状態で含浸させて抽出する方法、水蒸気蒸留などの蒸留法を用いて抽出する方法、圧搾して抽出物を得る圧搾法、超臨界流体又は亜臨界流体を用いて抽出する方法などを用いてもよく、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行っても良い。好ましくは、細かく裁断した原料1gに対して、5〜100mlの溶媒を用い、1時間から1か月間、好ましくは1〜5日間、室温或いは加熱下で行うことが望ましい。
【0018】
抽出に用いられる溶媒は、有効成分が効果的に抽出される溶媒であれば特に限定されるものではないが、水または、エタノール等の低級アルコールのように水と混和する有機溶媒、またはそれらの混液、または水と混和しない有機溶媒たとえば酢酸エチル等を用いてもよい。そのほかにも例を挙げるならば、メタノール,イソプロパノール,イソブタノール,n-ヘキサノール,メチルアミルアルコール,2-エチルブタノール,n-オクチルアルコール等の1価アルコール類、グリセリン,エチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノエチルエーテル,トリエチレングリコール,1,3-ブチレングリコール,へキシレングリコール等の多価アルコール又はその誘導体、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,メチル-n-プロピルケトン等のケトン類,酢酸イソプ
ロピル等のエステル類、エチルエーテル,イソプロピルエーテル,n-ブチルエーテル等のエーテル類、スクワラン,ワセリン,パラフィンワックス,パラフィン油などの炭化水素類、オリーブ油,小麦胚芽油,米油,ゴマ油,マカダミアンナッツ油,アルモンド油,ヤシ油等の植物油脂、牛脂,豚脂,鯨油等の動物油脂などが例示される。また、リン酸緩衝生理食塩水等の無機塩類を添加した極性溶媒、界面活性剤を添加した溶媒を用いることもでき、特に限定されない。
【0019】
また、段階的に抽出操作を行っても良い。たとえば、エタノール等の低級アルコールのように水と混和する有機溶媒で抽出操作を行い、エバポレーターなどで濃縮し、水と混和しない有機溶媒たとえば酢酸エチル等と水を加え、有機層と水層に分離しても良い。この場合、有機層にも水層にもチロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用、抗酸化作用がある成分が抽出されるので、用途別に利用しても構わない。例えば、水層の成分は、洗顔用途、化粧水用途及び入用剤用途など水と親和性が必要な美白剤が所望される場合に利用が期待でき、また、有機層のものはクリーム及び乳液など油と親和性が必要な美白剤が所望される場合に利用が期待できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
このようにして得られた西洋わさびの抽出物は、そのまま用いることもできるが、その効果を失わない範囲で、脱臭や脱色などの精製操作を加えたりして用いてもよい。また、抽

出物中の有効成分の濃度を高めるために、所望により、得られた抽出物を更に、濃縮、液液分配、吸着クロマトグラフィー、順相もしくは逆相クロマトグラフィー等の手段に付すことも可能である。これらの抽出物や精製物又は分画物は、これらから溶媒を除去することによって乾固物とすることもでき、さらに、アルコールなどの溶媒に可溶化した形態、或いは乳剤の形態で用いることができる。
【0021】
西洋わさびの抽出物に、他のチロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用などを有する薬剤を併用しても構わない。他の薬剤と併用することで相乗効果が期待できる。併用する場合は、安全性の高い薬剤を併用するのが好ましい。より好ましくは、天然由来の薬剤または天然由来の薬剤を模倣した薬剤を併用するのが好ましい。例えば、アスコルビン酸などは、天然に存在し食品用途にも利用されているので、比較的併用しやすい。本発明で使用しても差し支えないL−アスコルビン酸及びその塩又はその誘導体としては、例えばL−アスコルビン酸モノステアレート,L−アスコルビン酸モノパルミテート,L−アスコルビン酸モノオレエート等のアスコルビン酸モノアルキル若しくはモノアルケニルエステル類、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル,L−アスコルビン酸-2-硫酸エステル等のアスコルビン酸モノエステル誘導体、L−アスコルビン酸ジス
テアレート,L−アスコルビン酸ジパルミテート,L−アスコルビン酸ジオレエート等のL−アスコルビン酸ジアルキル若しくはジアルケニルエステル誘導体、L−アスコルビン酸トリステアレート,L−アスコルビン酸トリパルミテート,L−アスコルビン酸トリオレエート等のL−アスコルビン酸トリアルキル若しくはトリアルケニルエステル誘導体、L−アスコルビン酸トリリン酸エステル等のL−アスコルビン酸トリエステル誘導体等を挙げることが出来る。これらのL−アスコルビン酸及びその塩又はその誘導体のうち、特に好ましいものは、L−アスコルビン酸,L−アスコルビン酸リン酸エステル及びこれらの塩である。コケモモ由来のアルブチンも天然するので比較的安全と考えられるので、併用しても差し支えない。アルブチンの構造を模倣したものまたはその誘導体と併用してもよい。
【0022】
本発明における西洋わさび抽出物は、そのまま、チロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤として使用することができ、更に通常の化粧料、医薬部外品等に用いられる成分、例えば油性成分、界面活性剤、紫外線防御剤、低級アルコール、多価アルコール、防菌防腐剤、保湿剤、粉体、着色料、香料、水溶性高分子、緩衝材等をその剤形にあわせ、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することも可能である。この場合、当該抽出物は、チロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤の全組成中に、抽出に用いた植物の乾燥固形分として0.0001〜20重量%、特に0.01〜10重量%配合するのが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0023】
油性成分の例としては、例えばアボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等;炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等;高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤があるが、特に制限されるものではなく、通常の化粧料に使用されるものであれば、いずれのものも使用することができる。以下に具体的に例示すると、アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩、アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩、N−アシルアミノ酸系活性剤等;カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等;非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、アルカノールアミド、糖エーテル、糖アミド等;両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。界面活性剤を用いる場合の配合量としては、化粧料の総量に対して0.1〜20質量%が好ましく、更に好ましくは0.5〜10質量%である。界面活性剤は1種以上を用いることが可能である。
【0025】
紫外線防御剤としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸アミル等の安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイ
ルメタン等のジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の紫外線散乱剤が挙げられる。
【0026】
上記のヒドロキシ酸及びその塩並びにそれらの誘導体としては、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸カリウムナトリウム、グリコール酸等が挙げられる。グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、β−グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、3−サクシニルオキシグリチルレチン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
アルコール類としてはエタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる
【0028】
防菌防腐剤としては、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール等、抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、トリクロサン、感光素、フェノキシエタノール等がある。
【0029】
保湿剤としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸等のムコ多糖類又はそれらの塩、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ケラチン等のタンパク質又はそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、プロリン、テアニン、ヒドロキシプロリン、オルチニン、シトルリン、ピロリドンカルボン酸等のアミノ酸誘導体又はその塩、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース、イノシトール、グルコース、ペンタエリスリトール、果糖、蔗糖及びそのエステル、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、ムチン、尿素、リン脂質、糖脂質、セラミド等が挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンを用いても良い。保湿剤を配合することによって、肌あれ改善効果並びに保湿効果を付与し、使用感の良好な皮膚外用剤が得られる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることが好ましい。
【0030】
本発明で用いる粉体、着色料の例としては、通常の化粧料に使用されるものであれば、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、天然色素等があげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、シリコーンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる粉体で、これらの粉体も前記同様に本発明の効果を妨げない範囲で、粉体の複合化や一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤等で処理したものも使用することができる。例えば、フッ素化合物処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理などによって事前に表面処理されていてもいなくてもかまわないし、必要に応じて一種、又は二種以上の表面処理を併用することができる。本発明ではこれらの粉体の1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
水溶性高分子としては通常の化粧料に使用されるものが用いられ、例えば寒天、アルゲコロイド、グアーガム、カラギーナン、ローカストビーンガム等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、プルラン等の微生物系高分子、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子、デンプン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子、アルギン酸系高分子、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、ポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト等の無機系水溶性高分子等がある。また、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の皮膜形成剤も含まれる。水溶性高分子を加えることによって、皮膜形成能による皮膚からの水分蒸散の抑制又は水分保持能による保湿性が保たれ、使用感の良好な皮膚外用剤が得られる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤の用途としては特に限定は無いがスキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、紫外線防御製品等が好ましいものとして挙げられる。例えば、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料、エッセンスなどの基礎化粧料、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、口紅などのメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、ボディーパウダー、育毛剤、デオドラント、脱毛剤、石鹸、ボディーシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水などが挙げられる。また、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線防御剤を配合したサンスクリーン剤、ファンデーションなどもあげられる。また、本発明の皮膚外用剤の剤型は任意であり、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等に適用が可能である。
【0033】
本発明では、西洋わさび抽出物中に、新鮮重1gの葉から抽出した抽出物中に約0.1〜10mgのポリフェノールが含有されることを見出している。ポリフェノールとは、多くの物質の総称で、これらの中心となるものは、フラボノイドと呼ばれる、化学構造が似ている一連の物質である。フラボノイド系には、フラバノール(カテキン類)、フラボン類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバン類、フラバノン類、カルコン類、アントシアニン類などがある。フラボノイド系以外にも、フェニルプロパノイド系、リグナン系、クマリン系、クルクミン類を含むジアリルペプタノイド系、カプサイシン系などがある。そのほかにも多くのポリフェノールがある。
【0034】
これらのポリフェノールには、抗酸化作用、抗変異原性、抗がん性、血圧上昇抑制作用、血糖抑制作用、抗アレルギー作用、抗菌・抗ウイルス作用などがあることが知られている。特に、ポリフェノールの抗酸化作用は、活性酸素を減らすことで注目されている。これらについては、ポリフェノール全体に共通する構造である複数の水酸基(-OH)が関係していると言われている。この部分が非常に酸化しやすく、共存する他の物質より先にポリフェノールが酸化するため、他の物質の酸化が遅らせるといわれている。またポリフェノールの種類によって反応のしやすさが異なるため、必ずしも1種類のポリフェノールで全ての活性酸素を減らすのは容易ではないことがいわれている。
【0035】
本発明では、西洋わさび抽出物にチロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用があることを見出している。これらの作用の一機序として、西洋わさびに含まれるポリフェノールの関与が推測される。メラニン色素は表皮基底層及び毛根部、外毛根鞘に存在する色素細胞(メラノサイト)内の小器官であるメラノソームで生成される。メラニン色素の生成過程は、色素細胞(メラノサイト)内でチロシンにチロシナーゼが活性作用して、チロシンが酸化され、ドーパ、ドーパキノンに変換、更に自動酸化しドーパクロム、5,6-ジヒドロキシインドールを経て重合し、最終的にメラニン色素になる。かくして生成されたメラニンは、色素細胞(メラノサイト)の樹枝状突起から基底細胞に分泌され、基底細胞が分裂し、有棘細胞となると共に上昇し角質層に達する。さらにこのメラニンに紫外線が照射されると、既存のメラニンが酸化され、一時的に黒くなることも報告されている。西洋わさび抽出物にふくまれるポリフェノールが、これらのメラニン色素の生成過程における酸化反応工程を阻害し、チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用を示すことが推測される。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0037】
メラニン生成抑制試験方法
メラニン生成抑制試験はマウスのメラノーマ細胞を用いて、次の様に行った。先ず、10%(v/v)牛胎児血清を含むDMEM培地で、5%(v/v)炭酸ガスに調整した炭酸ガスインキュベーターで37℃で1×105個になるよう培養したB16メラノーマ細胞500μlを、24穴細胞培養プレートに播種し、次いでこのプレートに、エタノールに溶解した250mg/ml〜0.025mg/mlの試料を0.5μl添加した。同条件でさらに4日間培養した後その白色化度を顕微鏡下で肉眼で評価し、メラニン生成抑制能の指標とした。
【0038】
チロシナーゼ活性阻害試験方法
Anal.Biochem.,179,375(1989)の方法に従って、被検液750μlにプロリン溶液(80mM、pH7.6リン酸緩衝液に溶解)750μl及びピロカテコール溶液(4mM、pH7.6リン酸緩衝液に溶解)750μlを加え、更に酵素チロシナーゼ溶液(pH6.8リン酸緩衝液に溶解)を終濃度20U/mlになるよう添加し、反応液全量が1mlになるようpH6.8リン酸緩衝液を添加した上で速やかに混合し、直ちに525nmにおける吸光度を測定開始し、反応開始時の測定値(D1)及び反応後10秒時の測定値(D2)を求めた。即ちD1を100%阻害と換算してD2測定時の阻害率を求め(式1)チロシナーゼ活性阻害の指標とした。
【0039】
【数1】

【0040】
抗酸化作用試験方法
抽出液について、ラジカル消去活性を測定した。すなわち、安定なラジカルであるDPPHを0.5Mになるようエタノールにて調製し、試験管中に0.5ml分注、これに0.1M Tris-HCl(pH7.4)バッファーを0.4ml及びこのバッファーで種々の濃度に調製した抽出物溶解液0.1mlを混合し、常温暗所にて20分反応後517nmにおける吸光度を測定し、この値をAとした。また、強力なラジカルスカベンジャーであるTroloxをエタノールで100mMに調製し、これを抽出物溶解液の代わりに0.1ml添加し同様に反応させた反応液の吸光度を測定し、この値をBとした。さらに、抽出物溶解液の代わりに0.1M Tris-HCl(pH7.4)バッファーを0.1ml添加したブランクの吸光度を測定し、これをCとした。抽出物のラジカル消去率を式2で求めた。
【0041】
【数2】

【0042】
ポリフェノール含量の測定方法
ポリフェノール測定装置PA-20(東洋紡エンジニアリング社製)を用いて、抽出物に含まれる総ポリフェノール含量を測定した。方法は、PA-20のマニュアルに従い実施した。検体は50μl使用した。
【0043】
西洋わさび(葉及び根茎)抽出物の調製
西洋わさび葉及び根茎それぞれ100gずつを細かく裁断し、エタノール1000mlを加えて室温下、24時間抽出し抽出液を濾別した。残渣はさらにエタノール200mlを加えて、同様に再抽出した。抽出液を集めて減圧濃縮し、溶媒を留去した後、水20mlおよび酢酸エチル80mlを加え、これを分液ロートに移して激しく振とうした後静置して2層に分離し、上層の酢酸エチル層を集めた。これを無水硫酸ナトリウムで乾燥した後減圧濃縮し、西洋わさび葉抽出物1.367g及び根茎抽出物0.2gを得た。
【0044】
実施例1 メラニン生成抑制試験
前記のメラニン生成抑制試験方法で、西洋わさび葉抽出物について、種々の濃度でメラニン生成抑制を測定した。結果を表1に示す。本発明の抽出物は、終濃度25μg/ml以上の範囲で、実用化に充分な++(白色化度大)のメラニン生成抑制効果を示した。このことは、本発明の抽出物が、優れたメラニン生成抑制効果と美白効果と高い安全性を兼ね備えた、有用なメラニン生成抑制成分および美白成分であることを示すものである。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2 チロシナーゼ活性阻害
西洋わさび葉抽出物及び標準品アルブチン(合成品)について、チロシナーゼ酵素阻害活性を、前記のチロシナーゼ活性阻害試験方法にしたがって調べた。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2の結果から、アルブチンと天然の西洋わさび葉抽出液からなる本発明のチロシナーゼ阻害剤は、ほぼ同等の濃度でチロシナーゼ酵素活性を抑制した。
【0049】
実施例3 抗酸化作用
西洋わさび葉抽出物について、前記の抗酸化作用試験方法にしたがい、抗酸化試験を実施した。抗酸化試験の結果を図1に示す。葉抽出物は、アルブチンより強い抗酸化作用を示した。根茎抽出物にも、わずかながら抗酸化作用が認められた。
【0050】
実施例4 ポリフェノール含量の測定
ポリフェノール測定装置PA-20(東洋紡エンジニアリング社製)を用いて、抽出物に含ま
れる総ポリフェノール含量を測定したところ、新鮮重1gの葉から抽出した抽出物中に約2mgのポリフェノールが含まれていることが確認された。
【0051】
実施例5 クリームの製造
以下に示す組成のクリームを常法により製造した。
得られたクリームは、美白効果に優れたものであり、シミ、ソバカス等の色素沈着症を改善することができた。
【0052】
(組成) (重量%)
ステアリン酸 2.5
ステアリルアルコール 6.0
還元ラノリン 2.5
スクワレン 6.0
オクチルデカノール 6.5
ポリエチレンセグリコール 4.0
香料 0.1
防腐剤、酸化防止剤 適量
プロピレングリコール 4.5
西洋わさび抽出液 1.0
精製水 全体で100となる量
【0053】
実施例6 ローションの製造
以下に示す組成のローションを常法により製造した。
得られたローションは、美白効果に優れたものであり、シミ、ソバカス等の色素沈着症を改善することができた。
【0054】
(組成) (重量%)
ステアリン酸 0.5
セタノール 2.0
ワセリン 2.5
ラノリンアルコール 2.5
流動パラフィン 9.0
ポリエチレンセグリコール 2.5
香料 0.1
グリセリン 3.5
プロピレングリコール 4.5
トリエタノールアミン 1.0
西洋わさび抽出液 2.0
精製水 全体で100となる量
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、安全性に優れた植物由来のチロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用に優れたチロシナーゼ阻害剤、メラニン生成抑制剤、美白剤、皮膚用外用剤を提供することができ、産業界に大きく寄与することが期待される。また、バイオマスを利用することから、バイオマス産業界にも大きく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】抗酸化試験の結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシナーゼ阻害作用、メラニン生成抑制作用及び/又は抗酸化作用を有することを特徴とする西洋わさび抽出物。
【請求項2】
西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物及び/又は、西洋わさびの根茎の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の西洋わさび抽出物。
【請求項3】
西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする請求項1または2に記載の西洋わさび抽出物
【請求項4】
請求項1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ阻害剤。
【請求項5】
請求項1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。
【請求項6】
請求項1乃至3の西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項7】
請求項6の美白剤を含有することを特徴とする皮膚用外用剤。
【請求項8】
さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする請求項7に記載の皮膚用外用剤。
【請求項9】
西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする美白剤。
【請求項10】
西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物及び/又は、西洋わさびの根茎の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項9に記載の美白剤。
【請求項11】
西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする請求項9または10に記載の美白剤。
【請求項12】
さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の美白剤。
【請求項13】
西洋わさび抽出物を有効成分として含有することを特徴とする皮膚用外用剤。
【請求項14】
西洋わさび抽出物が、西洋わさびの葉の抽出物、西洋わさびの茎の抽出物及び/又は、西洋わさびの根茎の抽出物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項13に記載の皮膚用外用剤。
【請求項15】
西洋わさびが、Cochlearia armoracia L.由来の西洋わさびであることを特徴とする請求項13または14に記載の皮膚用外用剤。
【請求項16】
さらに、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体、並びに/もしくは、アルブチン及び/又はアルブチン誘導体を含有することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の皮膚用外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−232806(P2006−232806A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268401(P2005−268401)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】