説明

視覚センサ装置

【課題】 撮像素子による撮像に関与できない画素領域における不使用部分を低減して、解像度を向上させることが可能な視覚センサ装置を提供する。
【解決手段】 凸面鏡25は、周囲光Lを反射させる反射面Rを有する。撮像素子23は、反射面Rにて反射された前記周囲光Lを撮像する。撮像素子23の光軸Aに垂直な平面で切断した反射面Rの仮想稜線X,Vは長円形状である。凸面鏡25の反射面Rの一部R1は、回転体形状である。光学部材26は、周囲光Lが入射する入射面26aを有する透光性材料からなり、反射面Rが形成される凹部26bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲の周囲光を反射面にて反射させ、CCD(Charge Coupled
Device)等の撮像素子によって撮像する視覚センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、視覚センサが種々提案されており、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。斯かる視覚センサ1は、双曲面形状の凸面鏡2で周囲光を反射させ、CCD等の撮像素子3によって周囲の様子を撮像するものである(図10参照)。撮像素子3は回路基板4上に搭載されており、撮像素子3が搭載された回路基板4はケース体5の底壁部5aに配置されている。ケース体5の側壁部5bには、透光性材料からなる円筒状の筒体6が設けられており、この筒体6の内部に凸面鏡2が配置されている。筒体6の上部開口6aには蓋体7が配設されており、この蓋体7に凸面鏡2が固定されている。凸面鏡2は、双曲面形状になっており、前記双曲面形状の頂点を下向きにして、蓋体7から垂下するように配置されている。
【0003】
しかし、視覚センサ1は、部品数が多いため、安価に提供することができないという問題を有していた。つまり、透光性材料からなる筒体6は、光学的には何ら作用を有しないのであるから、この筒体6を無くすことができれば、部品数を低減できる。そこで、本願出願人は、部品数が少なく安価に製造することが可能な視覚センサ10を提案している(特許文献3参照)。
【0004】
斯かる視覚センサ10は、光学部材11と、ケース体12と、撮像素子13と、回路基板14と、反射層15とから構成されるものである(図11参照)。周囲光Lは、入射面16aから入光部16の内部に入射し、反射層15で反射され、導光部17によって撮像素子13に導かれる。反射層15で下方に反射された周囲光Lは、出射面17bから出て、撮像素子13によって撮像される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−160463号公報
【特許文献2】特開2000−128031号公報
【特許文献3】特開2005−109786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に入手可能な汎用の撮像素子3,13は、画素領域Sが長方形であるため、撮像素子3,13の画素領域Sに不使用部分Nがあった。つまり、視覚センサ1,10は、反射ミラー2または反射層15にて反射された周囲光Lが、撮像素子3,13の円形領域Yで結像するため、その円形領域Y以外の部分が、撮像素子3,13による撮像に関与できない不使用部分Nになり、画素領域Sの画素を全て使用することができないため、撮像素子3,13が出力する画像データの解像度が低いという問題を有していた。
【0007】
この問題を解決するため、例えば、画素領域Sが正方形である撮像素子を用いることが考えられるが、画素領域Sが正方形である撮像素子3,13を専用品として製造した場合は、撮像素子3,13を安価に入手することが困難になり、視覚センサ1,10が高価になる虞がある。
本発明は、撮像素子による撮像に関与できない画素領域における不使用部分を低減して、解像度を向上させることが可能な視覚センサ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、周囲光Lを反射させる反射面Rを有する凸面鏡25,35,65と、前記反射面Rにて反射された前記周囲光Lを撮像する撮像素子23,33と、を備えた視覚センサ装置20,30であって、前記撮像素子23,33の光軸Aに垂直な平面で切断した前記反射面Rの仮想稜線X,Vが長円形状であるものである。
【0009】
また、本発明は、前記凸面鏡25,35の前記反射面Rの一部R1は、回転体形状であるものである。
【0010】
また、本発明は、前記周囲光Lが入射する入射面26a,46aを有する透光性材料からなり、前記反射面Rが形成される凹部26b,46bを有する光学部材21,46を備えたものである。
【0011】
また、本発明は、前記凸面鏡35から前記撮像素子33までの間隔を調整するピント調整機構36と、前記ピント調整機構36を回動可能に保持する保持部材37と、を備えたものである。
【0012】
本明細書において、「長円」とは、「角丸長方形」及び「楕円」を含む概念である。
【発明の効果】
【0013】
凸面鏡は反射面にて反射された周囲光を長円形状で撮像素子に結像させることができ、撮像素子による撮像に関与できない不使用部分を低減して、解像度を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一実施形態を示す断面図。
【図2】同上実施形態を示す断面図。
【図3】同上実施形態を示す要部拡大図。
【図4】同上実施形態を示す撮像素子の正面図。
【図5】本発明の第二実施形態を示す断面図。
【図6】同上実施形態を示す断面図。
【図7】同上実施形態を示す撮像素子の正面図。
【図8】本発明の他の実施形態を示す要部拡大図。
【図9】同上他の実施形態を示す撮像素子の正面図。
【図10】従来例を示す断面図。
【図11】他の従来例を示す断面図。
【図12】従来例を示す撮像素子の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態について説明する。図1乃至図4は第一実施形態を示すものである。
【0016】
視覚センサ装置20は、光学部材21と、ケース体22と、撮像素子23と、回路基板24と、反射層25(凸面鏡)とを備えている。光学部材21は、中実な透光性樹脂(例えばポリカーボネート)からなるものであり、入光部26及び導光部27を有している。光学部材21の入光部26は、周囲光Lが入射する入射面26aと、反射層25が形成される凹部26bとを有している。光学部材21の凹部26bには、アルミニウム(Al)からなる反射層25が形成されている。反射層25は、蒸着等の方法によって凹部26bに所定の膜厚でコーティングされてなるものである。
【0017】
光学部材21の導光部27は、反射層25で反射された周囲光Lを撮像素子23に導くものであり、略円柱形状になっている。導光部27は、円筒形状の外周面27aと、レンズ31を介して撮像素子23に対向する出射面27bとを有している。レンズ31は凸レンズであり、レンズ31の光軸は撮像素子23の光軸Aと一致している。視覚センサ装置20は所定の視野範囲を有しており、前記視野範囲の周囲光Lは、入射面26aから入光部26の内部に入射し、反射層25で反射され、導光部27によって撮像素子23に導かれる。
【0018】
反射層25は、軸Pを中心として双曲線を180度だけ回転させた形状の回転体部R1と、前記双曲線を平行移動させた形状の平行移動体部R2と、からなっており、反射層25の稜線25aは、二つの半円形と、二つの長さの等しい平行線とからなる角丸長方形(Rounded Rectangle)になっている(図3参照)。撮像素子23の光軸Aに垂直な平面で反射層25を切断した反射面Rの仮想稜線Xは角丸長方形になっている。反射層25で反射された周囲光Lは、撮像素子23の長方形の画素領域Sにおいて、角丸長方形領域Zに結像される(図4参照)。
【0019】
ケース体22は、底壁部22aと、円筒状の側壁部22bとからなり、側壁部22bに光学部材21が固定されている。撮像素子23は長方形の画素領域Sを有しており、この画素領域Sのアスペクト比は4対3になっている。撮像素子23は、画素領域Sの長辺方向が反射面Rの仮想稜線Xの長軸方向と平行になり、画素領域Sの短辺方向が反射面Rの仮想稜線Xの短軸方向と平行になるように配置されている。撮像素子23は回路基板24上に実装され、ケース体22の底壁部22bに固定されている。光学部材26の上部には蓋体32が設けられている。
【0020】
図5及び図6は、第二実施形態を示すものである。第二実施形態の撮像素子33,反射層35は、夫々、第一実施形態の撮像素子23,反射層25と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0021】
視覚センサ装置30は、光学部材31と、撮像素子33と、回路基板34と、反射層35(凸面鏡)と、ピント調整機構36と、保持部材37とを備えている。光学部材31は、中実な透光性樹脂(例えばポリカーボネート)からなるものであり、入光部46及び導光部47を有している。光学部材31の入光部46は、周囲光Lが入射する入射面46aと、反射層35が形成される凹部46bとを有している。
【0022】
光学部材31の導光部47は、反射層35で反射された周囲光Lを撮像素子33に導くものであり、略円柱形状になっている。導光部37は、円筒形状の外周面37aと、レンズ51を介して撮像素子33に対向する出射面37bとを有している。レンズ51は凸レンズであり、レンズ51の光軸は撮像素子33の光軸Aと一致している。
【0023】
ピント調整機構36は、レンズホルダー52及び支持部材53からなる。レンズホルダー52は、有底円筒形状になっており、外周面に雄螺子部52aが形成されている。レンズホルダー52には、光軸A上に貫通孔52bが形成されている。支持部材53は、レンズホルダー52よりも径大な有底円筒形状になっており、雄螺子部52aに螺着される雌螺子部53aを有している。支持部材53には、貫通孔52bと同径な貫通孔53bが形成されている。ピント調整機構36によって、周囲光Lが撮像素子33に結像するように、反射層35から撮像素子33までの間隔を調整することができる。
【0024】
保持部材37は円筒形状の周壁37aを有しており、支持部材53が光軸Aを中心として回動可能に保持されている。保持部材37には、貫通孔52b,53bと同径な貫通孔37bが形成されている。撮像素子33は回路基板34上に実装され、この回路基板34は保持部材37に固定されている。
【0025】
ピント調整機構36によって、レンズホルダー52と支持部材53とを光軸Aを中心として相対的に回動させることによってピント調整を行うと、図7に示すように、角丸長方形領域Zの一部が撮像素子33の画素領域Sから外れてしまう虞がある。そこで、角丸長方形領域Zが撮像素子33の画素領域Sに完全に入るように、支持部材53と保持部材37とを相対的に回動させる。
【0026】
第一,第二実施形態によれば、反射層25,35の反射面Rにて反射された周囲光Lが、角丸長方形領域Zで撮像素子23,33の画素領域Sに結像するため、撮像素子23,33による撮像に関与できない不使用部分Nを低減して、解像度を向上させることが可能になる。且つ、画素領域Sが長方形である汎用の撮像素子23を用いることにより、撮像素子23,33を比較的安価に入手することができ、視覚センサ装置20,30が高価になる虞がない。
【0027】
本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、図8及び図9に示す他の実施形態の如く、撮像素子23,33の光軸Aに垂直な平面で反射層65を切断した反射面Rの仮想稜線Vが楕円であり、反射層65の反射面Rにて反射された周囲光Lを楕円領域Wで撮像素子23,33の画素領域Sに結像させても良く、本実施形態と同様な効果を得ることができる。また、凸面鏡は凹部26b,46bにコーティングされた反射層25,35であったが、例えば、金属薄板からなる反射部材を光学部材21,31にインサート成形しても良い。また、撮像手段はCCD等の撮像素子23,33であったが、例えば、CMOSカメラであっても良い。
【符号の説明】
【0028】
21 光学部材
23 撮像素子
25 反射層(凸面鏡)
26a 入射面
25b 凹部
31 光学部材
43 撮像素子
35 反射層(凸面鏡)
46a 入射面
45b 凹部
L 周囲光
R 反射面
A 光軸
X 仮想稜線
V 仮想稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲光を反射させる反射面を有する凸面鏡と、前記反射面にて反射された前記周囲光を撮像する撮像素子と、を備えた視覚センサ装置であって、前記撮像素子の光軸に垂直な平面で切断した前記反射面の仮想稜線が長円形状であることを特徴とする視覚センサ装置。
【請求項2】
前記凸面鏡の前記反射面の一部は、回転体形状であることを特徴とする請求項1に記載の視覚センサ装置。
【請求項3】
前記周囲光が入射する入射面を有する透光性材料からなり、前記反射面が形成される凹部を有する光学部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の視覚センサ装置。
【請求項4】
前記凸面鏡から前記撮像素子までの間隔を調整するピント調整機構と、前記ピント調整機構を回動可能に保持する保持部材と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の視覚センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−140007(P2010−140007A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190565(P2009−190565)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】