説明

視覚表示装置

【課題】周囲の全方位から立体観察することが可能な観察装置や、見る角度や個々別人よって異なる観察像を表示可能な表示装置に適した視覚表示装置。
【解決手段】中心軸1に同心に回転対称な主光学系2が配置され、中心軸1に同心な円周上に複数の同一構成の副光学系3が並列して配置され、主光学系2と各副光学系3とにより構成される合成光学系の射出瞳4が主光学系2の副光学系3側とは反対側であって中心軸1に対して副光学系3とは反対側に位置し、各副光学系3の主光学系2とは反対側にそれぞれ表示素子の表示面5が配置され、各合成光学系による表示面5の像6が中心軸1近傍に結像され、かつ、各合成光学系の射出瞳4が中心軸1に同心に略連続的に形成される視覚表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚表示装置に関し、特に、周囲の全方位から眼鏡等を用いることなく立体観察することが可能な観察装置や、見る角度や個々別人よって異なる観察像を表示可能な表示装置に適した視覚表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、視野角制限フィルターを備えたスクリーンを中心軸の周りで回転させながら、例えば1つの物体を360°周辺方向から見た映像をそのスクリーン上に投影することにより、任意の方向から観察する場合に見る方向により観察画像が変化し、立体表示が可能な表示装置が特許文献1〜3において知られている。
【特許文献1】特開2005−221690号公報
【特許文献2】特開2006−10852号公報
【特許文献3】特開2006−11367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3において知られている従来例の場合、視野角制限フィルターを備えたスクリーンを機械的に回転させる機構が必要であり、また、特定の方向から見る場合にその方向において観察可能な画像を断続的にしか見ることができない。さらに、表示素子やスクリーン面を回転させることなく、また、眼鏡等を用いることなく裸眼で立体視が可能で、さらに、周辺の360°どの方向からでも観察することが可能な表示装置は存在しなかった。
【0004】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械的な複雑な回転機構や眼鏡等を用いなくても、周囲の全方位から立体観察することが可能な観察装置や、見る角度や個々別人よって異なる観察像を表示可能な表示装置に適した視覚表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の視覚表示装置は、中心軸に同心に回転対称な主光学系が配置され、中心軸に同心な円周上に複数の同一構成の副光学系が並列して配置され、主光学系と各副光学系とにより構成される合成光学系の射出瞳が主光学系の副光学系側とは反対側であって中心軸に対して副光学系とは光路上反対側に位置し、各副光学系の主光学系とは反対側にそれぞれ表示素子の表示面が配置され、各合成光学系による表示面の像が中心軸近傍に結像され、かつ、各合成光学系の射出瞳が中心軸に同心に略連続的に形成されることを特徴とするものである。
【0006】
この場合に、前記表示面には、同一物体について複数の視点から撮影された映像を表示して立体観察可能にすることができる。
【0007】
また、複数の平面表示素子を回転対称に配置することで前記表示面を構成することができる。
【0008】
また、2次元的に構成された表示素子を丸めて3次元的に構成することで前記表示面を構成することができる。
【0009】
また、前記主光学系の少なくとも1つの面は、回転対称軸を含む縦断面と回転対称軸と直交する横断面での曲率が異なることが望ましい。
【0010】
また、前記主光学系の少なくとも1つの面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するようにすることができ、その場合に、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有するものとすることができる。
【0011】
また、前記主光学系の外径の半分をRsとするとき、
10mm<Rs ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。
【0012】
また、光線が通過しない領域に遮光部材が配置されていることが望ましい。
【0013】
また、前記表示面全体を前記副光学系側とは反対側全方位から照明する照明装置を備えているものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明の視覚表示装置においては、機械的な複雑な回転機構や眼鏡等を用いなくても、周辺から観察したときに視差のある画像を観察することにより立体像を観察することが可能な視覚表示装置を提供することができる。また、見る角度や見る方向によって異なる観察像を表示可能な視覚表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施例に基づいて本発明の視覚表示装置について説明する。
【0016】
本発明の視覚表示装置の基本原理は、中心軸に同心に回転対称な主光学系が配置され、中心軸に同心な円周上に複数の同一構成の副光学系が並列して配置され、主光学系と各副光学系とにより構成される合成光学系の射出瞳が主光学系の副光学系側とは反対側であって中心軸に対して副光学系とは反対側に位置し、各副光学系の主光学系とは反対側にそれぞれ表示素子の表示面が配置され、各合成光学系による表示面の像が中心軸近傍に結像され、かつ、各合成光学系の射出瞳が中心軸に同心に略連続的に形成されるものである。
【0017】
中心軸に対してその周囲から中心軸方向を観察する光学系の場合、従来の回転対称で像面が中心軸に直交する光学系では、光線を大きく屈曲させる必要があり、周辺からの観察像の歪みが大きく発生してしまい、比較的大きな観察領域をとることはできなかった。
【0018】
一方、特許文献1〜3に開示されているスクリーンに投影する方法では、スクリーンを回転させる必要があった。
【0019】
そこで、本発明では、中心軸周辺のどの方向からも拡大結像光学系として機能する回転対称な光学系を回転対称軸(中心軸)を上下方向としてとして配置し、観察方向は回転対称軸と略垂直な水平方向の全方位から観察可能なようにすることが最大の特徴である。
【0020】
このような構成により、回転対称軸を上下方向として、水平方向のどの方向からでも拡大観察光学系(視覚表示装置)として機能させることに成功したものである。
【0021】
以下、図面を参照にして説明する。図13は、後記する本発明の実施例1の視覚表示装置の光学系の中心軸に沿ってとった断面図(a)とその光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図(b)であり、図14は図13(a)の主要部の拡大図であり、図15は図13(b)の主要部の拡大図であり、図16は、光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。なお、図13〜図15においては、一部の副光学系3、表示面5しか図示していない。
【0022】
以下、これら図13〜図16を参照にして、本発明の視覚表示装置を説明する。
【0023】
本発明の視覚表示装置の光学系は、中心軸1に同心に回転対称な主光学系2が配置される。この主光学系2は、この実施例の場合、球体(ボールレンズ)を用いているが、正パワーを持った単体の屈折体に限定されず、反射光学系あるいは反射屈折光学系、複合光学系何れでもよく、要件としては、中心軸1に向かって進む光束に正のパワーを与え、かつ、中心軸1に対して回転対称な形状を持っていることである。
【0024】
そして、特に図16から明らかなように、中心軸1に同心な円周上に複数の同一構成の副光学系3が並列して配置される。この副光学系3も、単体の屈折体に限定されず、反射光学系あるいは反射屈折光学系、複合光系何れでもよく、要件としては、正又は負のパワーを有し、主光学系2と合成したときに、副光学系3に配置された絞り、この実施例では、副光学系3の主光学系2に面した第1面の周囲の開口が絞りを構成するが、その絞りの主光学系2の像である射出瞳4が、中心軸1を挟んで副光学系3とは反対側に形成されることである。複数の同一構成の副光学系3が中心軸1に同心な円周上に並列配置されているので、各合成光学系の射出瞳4は中心軸1に同心に並列配置される。各射出瞳4の大きさとしては、並列配置されたときにその円周上に略連続的に繋がるようにする。
【0025】
そして、各副光学系3の主光学系2とは反対側であって、主光学系2と副光学系3からなる合成光学系の中心軸1位置と共役な位置に、表示素子の表示面5が配置されている。そのため、表示面5の拡大像6が中心軸1近傍に結像される。図13〜図16の実施例の場合は虚像として結像される。
【0026】
このような構成であるので、観察者はその眼を何れかの射出瞳4位置近傍に持って行くと、その射出瞳4を形成する合成光学系(主光学系2と副光学系3)の像面に配置された表示面5のその合成光学系によって中心軸1近傍に結像された実像そのもの、あるいは、その実像の主光学系2の中心軸1より観察側の光学的部分によって形成された虚像(実施例1ではこの虚像、実施例2、3では実像そのもの)を拡大像6として観察することができる。そして、主光学系2と副光学系3からなる合成光学系は、中心軸1を中心としてその周りに一定角度毎に配置されているのに等しいため、中心軸1を上下方向として設定すると、中心軸1の周囲の360°のどの方向から観察しても、観察者の眼が位置する射出瞳4に対応した位置の表示面5(中心軸1を挟んでその射出瞳4と反対側の表示面5)の表示像の拡大像6を観察できる。
【0027】
ところで、中心軸1を上下方向として設定した場合、水平方向からの観察に対して副光学系3が邪魔にならないように、その観察方向より下側に副光学系3を配置することが重要である。例えば、観察方向と表示面5の高さを同一平面内に配置することが、最もシンプルな配置となるが、中心軸1を挟んで反対側(観察側)の表示面5が邪魔になり、観察像を観察することが不可能になってしまう。そこで、副光学系3を観察方向より下側に配置すると同時に、副光学系3により小さい表示面5の映像を拡大して主光学系2方向へ投影し、その主光学系2で拡大像として結像する構成をとることにより、表示面5を持つ表示素子に邪魔されずに大きな観察像(拡大像)6を小さい表示面5で表示することが可能となる。
【0028】
さらに、複数の同一の副光学系3を同心に配置して、副光学系3の開口(絞り)を中心軸1と同心に並列して配置する。並列して同心に配置された開口(絞り)は、主光学系2により観察者が観察する領域に拡大投影され、中心軸1に同心に略連続的に射出瞳4が並列されることにより、広い観察領域を形成することができる。並列の連続して投影された射出瞳4により、拡散板等を用いることなく、広い観察領域を確保することが可能となる。さらに、表示面5の像は副光学系3により拡大され、さらに主光学系2により中心軸1近傍に拡大投影される。観察者はこの拡大投影された像6を観察することになり、大きい観察像を観察することが可能となる。
【0029】
さらに、拡大像6を中心軸1近傍に配置するようにすると、少なくとも2つの合成光学系により投影された観察像6の輻輳と両眼の輻輳点とを一致させることが可能となり、融像しやすい立体表示が可能となる。
【0030】
さらに好ましくは、表示面5各々には同一物体について複数の視点から撮影された映像を表示するようにすることが望ましい。すなわち、図1に示すように、物体100についての視差画像は、全周360°を例えば16分割する場合には、22.5°毎に物体100を回転させてカメラ101で撮影された静止画でもよいし、CG等で作成した3次元物体を同様に22.5°毎に視点を回転させた生成した動画でもよい。さらに、16台のカメラを中心点に向けて設置した撮像装置からの動画でもよい。
【0031】
このようにして作成した16視点の静止画や動画は、図2に物体100についての16個の画像を並べて示すように、16視点の映像となる。このような映像を全体の表示面(表示素子)15が円錐状の場合には、図3に示すように、撮影された角度順に円錐状に同心となるように表示する。実際には、合成光学系の結像により上下左右が反転するので、予め上下左右を反転させた映像として表示する。さらに、全体の表示面(表示素子)15が円筒状の場合は、図4に示すように、撮影された角度順に円筒状になるように表示する。
【0032】
このような視差画像を中心軸の周りで撮影された角度順に各表示面5に配置すると、図5に示すように、隣接した射出瞳4に観察者の左右の眼球EL、ERが位置するとき、左右の眼球EL、ERに両眼視差像の拡大像6が見えることになり、撮影した物体100の立体像が見えることになる。
【0033】
ここで、観察位置での副光学系3の絞りが投影された射出瞳4と観察者の左右の眼球EL、ERの位置については、図6に示すように、少なくとも、眼幅の標準が65mmなので、本発明の視覚表示装置の光学系50の投影された射出瞳4も65mm間隔となることが望ましい。また、射出瞳4の形状は、図5に示すような正方形に限らず、楕円や長方形でも可能である。
【0034】
また、図6に示すように、観察位置を明視の距離30cmとすると、標準眼幅65mmであるから、本発明の視覚表示装置の光学系50の1つの合成光学系による観察領域は、12.37°以上あることがが好ましい。さらに、観察者Eが頭を動かした場合は、図7に示すように、順次隣の合成光学系による観察領域へ移っていって、やがて360°の全方位からの立体映像を観察することが可能となる。また、機械的に光学系50を回転させて全方位の立体映像を観察をすることも可能であるし、各表示面5の表示映像を電子的に切り替えて全方位からの立体映像を観察するようにすることも可能である。
【0035】
なお、各表示面5に配置する画像として上記のような視差画像を角度順に配置したものに限定されず、例えば、ある角度を境にして全く別の画像とすることで、見る角度や個々別人よって異なる像が観察可能になる。
【0036】
以上の本発明の視覚表示装置の主光学系2、副光学系3、表示面(表示素子)15、拡大像6のイメージを図8の模式図に示す。
【0037】
さらに好ましくは、複数の平面表示素子を回転対称に配置することで各表示面5を構成することができる。これにより、特殊な表示素子を新たに製作することなく、汎用の表示素子で各々の表示面5を構成することが可能となり、安価に装置を構成することが可能となる。
【0038】
さらに好ましくは、2次元的に構成された表示素子を丸めて3次元的に構成することで表示面5を構成することが可能である。近年フレキシブルな基板上に形成されたLCD又は有機EL等の表示素子があり、これらのフレキシブルな2次元表示素子を円筒状や円錐状に丸めて表示面5として使うことにより、安価に同心で3次元的に配置された表示素子を提供することが可能となる。
【0039】
また、主光学系2の少なくとも1つの面は、回転対称軸(中心軸)1を含む縦断面と回転対称軸1と直交する横断面での曲率が異なるように構成されていることが望ましい。本発明の視覚表示装置は、回転対称軸を挟んで映像表示領域と観察領域が存在する全方位光学系であるため、一平面内に映像表示領域と観察領域を配置すると、映像表示領域で観察像が遮られてしまう。これを避けるために、映像表示領域から観察領域に到達する光束を主光学系2の回転対称軸1に対して斜めになるようにする必要がある。そのため、主光学系2に対して副光学系3を偏心して配置することになり、偏心収差が発生する。これを少なくするためには、主光学系2の少なくとも1つの面は、回転対称軸(中心軸)1を含む縦断面と回転対称軸1と直交する横断面での曲率が異なるように構成することにより、この偏心収差を補正することが可能となる。
【0040】
さらに好ましくは、主光学系2の少なくとも1面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸1の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、さらに偏心収差、例えば偏心により発生するコマ収差を補正することが可能となる。
【0041】
さらに好ましくは、主光学系2の少なくとも1面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸1の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することにより、さらに自由度の高い収差補正を行うことが可能となり、収差補正上好ましい。
【0042】
さらに好ましくは、主光学系2の外径(回転対称軸1に直交する方向の外径)の半分をRsとするとき、
10mm<Rs ・・・(1)
なる条件を満足することが望ましい。下限の10mmを越えると、観察像が小さくなってしまい、臨場感のある観察をすることが困難になってしまう。
【0043】
さらに好ましくは、
20mm<Rs ・・・(1−1)
なる条件を満足することが臨場感を得るためには好ましい。
【0044】
なお、以下に説明する実施例1〜3のRsは次の通りである。
【0045】
実施例 1 2 3
Rs(mm) 15.00 30.00 27.43
ところで、本発明の視覚表示装置においては、副光学系3各々に対応して表示面5が配置されるが、各表示面5を並列させた全体の表示面15は、上記のように、円筒状や円錐状になる。これを1個の表示素子で構成してもよいし、複数の平面表示素子を回転対称に配置して構成してもよい。そして、何れの場合も、その円筒面又は円錐面の内面に表示面5を配置するようにしてもよいし、外面に表示面5を配置するようにしてもよい。図9に、全体の表示面(表示素子)15を円筒状にする場合を例にとり、表示面5をその内面に配置した場合(a)と外面に配置した場合(b)とを図示する。
【0046】
ところで、本発明の視覚表示装置の回転対称な光学系の光線が通過しない領域に遮光部材を配置することが望ましい。図10はその一例の中心軸1に沿ってとった断面図であり、線光源12と集光光学系13からなり、立体的に配置されている全体の表示面15を全方位から照明する照明装置も共に示してある。この例においては、回転対称な反射鏡からなる主光学系2からの表示光を制限する遮光部材11と、線光源12から集光光学系13を経て表示素子15と副光学系3に到る照明光を制限する遮光部材11が、図示のように中心軸1を中心に対称に配置される。
【0047】
なお、図10において、照明装置は、中心軸1に沿って配置された線光源12と、円筒状の表示面15の背後に配置され、中心軸1を含む断面図内では正パワーを持ち中心軸1の周りで回転対称な偏心配置のリング状集光光学系13とからなり、中心軸1を含む断面図内で線光源12の一点から出た照明光は表示面15を略平行に照明しており、ケーラー照明になっていて、むらのない照明を行っている。しかも、線光源12から出た照明光は中心軸1を含む断面内にのみ制限され、サジタル断面の光が存在しないので、フレアーの原因となる光がな。そのため、むらが少なくコントラストの良い拡大像が観察可能になる。
【0048】
図11は、照明装置として、中心軸1を中心とするサークル状のリング状発光体16を用い、そのリング状発光体16から放射された照明光を中心軸1を含む断面内で表示素子15方向に集光するリング状反射鏡17をリング状発光体16の内側に中心軸1を中心に配置し、外側の周囲に中心軸1を含む断面図内では正パワーのフレネルレンズ形状で中心軸1の周りで回転対称なリング状集光光学系13’を中心軸1を中心に配置して、円筒状の表示素子15を内側から集光照明する例を示す図である。そして、この構成では、観察像のコントラストを上げるために、表示面15から射出する光線を中心軸1を含む断面内に制限するように、視野角制限フィルターあるいはルーバー18のような手段をリング状発光体16と表示面15の間に配置することが好ましい。
【0049】
ところで、中心軸1上の点から出た照明光はメリジオナル断面(中心軸1を含む断面)内に制限される。そこで、図12に示すように、中心軸1の一点に点光源19を配置し、その点光源19からの放射光を中心軸1の別の点に集光するような中心軸1に同心で回転対称なリング状反射鏡20を点光源19の周囲に配置し、その反射光路中に表示素子15を配置して照明装置を構成すると、図10の場合と同様に、メリジオナル断面内に制限された照明光のみで表示素子15を照明でき、コントラストの良い像が観察可能になる。なお、図12の場合は、副光学系は図示を省いてあり、主光学系2は、中心軸1に沿って配置した2枚のリング状反射鏡で構成されている。
【0050】
以下に、本発明の視覚表示装置の光学系の実施例1〜3を説明する。これら光学系の構成パラメータは後記する。これら実施例の構成パラメータは、例えば図14、図15に示すように、物体面を拡大像6の面とし、拡大像6と共役な像面を表示面5とし、物体面6から射出瞳4を通り(反対に延長して光線が射出瞳4を通り)、像面5に向かう光線が主光学系2の光学面21、22と絞り面と副光学系3の光学面31、32とを経て像面5に至る逆光線追跡の結果に基づくものである。
【0051】
座標系は、逆光線追跡において、例えば図14に示すように、物体面6の中心(中心軸1上に位置する。)を偏心光学系の偏心光学面の原点とし、中心軸1の像面5と反対側の方向をY軸正方向とし、図14の紙面内をY−Z平面とする。そして、図14の像面5側の方向をZ軸正方向とし、Y軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をX軸正方向とする。
【0052】
偏心面については、その面が定義される座標系の上記光学系の原点の中心からの偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX,Y,Z)と、光学系の原点に定義される座標系のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする各面を定義する座標系の傾き角(それぞれα,β,γ(°))とが与えられている。その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。なお、面の中心軸のα,β,γの回転のさせ方は、各面を定義する座標系を光学系の原点に定義される座標系のまずX軸の回りで反時計回りにα回転させ、次に、その回転した新たな座標系のY軸の回りで反時計回りにβ回転させ、次いで、その回転した別の新たな座標系のZ軸の回りで時計回りにγ回転させるものである。
【0053】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合には面間隔が与えられており、その他、面の曲率半径、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。
【0054】
なお、拡張回転自由曲面は、以下の定義で与えられる回転対称面である。
【0055】
まず、Y−Z座標面上で原点を通る下記の曲線(d)が定められる。
【0056】
Z=(Y2 /RY)/[1+{1−(C1 +1)Y2 /RY2 1 /2
2 Y+C3 2 +C4 3 +C5 4 +C6 5 +C7 6
+・・・・+C2120+・・・・+Cn+1 n +・・・・
・・・(d)
次いで、この曲線(d)をX軸正方向を向いて左回りを正として角度θ(°)回転した曲線F(Y)が定められる。この曲線F(Y)もY−Z座標面上で原点を通る。
【0057】
その曲線F(Y)をZ正方向に距離R(負のときはZ負方向)だけ平行移動し、その後にY軸の周りでその平行移動した曲線を回転させてできる回転対称面を拡張回転自由曲面とする。
【0058】
その結果、拡張回転自由曲面はY−Z面内で自由曲面(自由曲線)になり、X−Z面内で半径|R|の円になる。
【0059】
この定義からY軸が拡張回転自由曲面の軸(回転対称軸)となる。
【0060】
ここで、RYはY−Z断面での球面項の曲率半径、C1 は円錐定数、C2 、C3 、C4 、C5 …はそれぞれ1次、2次、3次、4次…の非球面係数である。
【0061】
なお、Y軸に平行な軸を中心軸に持つ円錐面は拡張回転自由曲面の1つとして与えられ、RY=∞,C1 ,C2 ,C3 ,C4 ,C5 ,…=0とし、θ=(円錐面の傾き角)、R=(X−Z面内での底面の半径)として与えられる。
【0062】
また、後記の構成パラメータ中にデータの記載されていない非球面に関する項は0である。屈折率、アッベ数については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。各面の偏心は、上記のように、基準面からの偏心量で表わす。
【0063】
実施例1の視覚表示装置の光学系の中心軸1に沿ってとった断面図(a)とその光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図(b)を図13に、図13(a)の主要部の拡大図を図14に、図13(b)の主要部の拡大図を図15に示す。そして、光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図を図16に示す。なお、図13〜図15においては、一部の副光学系3、表示面5しか図示していない。また、この実施例の光学系全体の横収差図を図17に示す。この横収差図において、中央に示された角度は、(水平方向画角、垂直方向の画角)を示し、その画角におけるY方向(メリジオナル方向)とX方向(サジタル方向)の横収差を示す。なお、マイナスの画角は、水平方向画角については、Y軸正方向を向いて右回りの角度、垂直方向画角については、X軸正方向を向いて右回りの角度を意味する。以下、同じ。
【0064】
本実施例は、主光学系2が中心を中心軸1上に位置しその周りで回転対称な正パワーを持つ球体(ボールレンズ)からなり、かつ、中心軸1に同心な円周上に30個並列配置される同一構成の副光学系3が像面5側に平面を持つ凸平正レンズからなり、その副光学系3の主光学系2に面した第1面31の周囲の開口が絞りを構成しており、その絞りの主光学系2による像が、中心軸1を挟んで各副光学系3とは反対側に射出瞳4を形成している。30個の同一構成の副光学系3が中心軸1に同心な円周上に並列配置されているので、主光学系2と各副光学系3とからなる合成光学系の射出瞳4は、中心軸1に同心に並列配置されている。そして各射出瞳4の大きさとしては、並列配置されたときにその円周上に略連続的に繋がるようになっている。
【0065】
各副光学系3の第2面32に面して中心軸1位置と共役な位置に表示面5が配置されていて、副光学系3の正パワー(その第2面32と第1面31の合成屈折力)と主光学系2の第2面22の正パワーとの合成パワーによりその表示面5の実像が中心軸1近傍に結像される。そして、その実像は、主光学系2の第1面21を経て同様に中心軸1近傍に位置する拡大虚像6として結像され、その拡大像6は中心軸1を挟んで表示面5とは反対側から観察可能になる。
【0066】
このような構成であるので、観察者が眼を何れかの射出瞳4位置近傍に持って行くと、その射出瞳4を形成する合成光学系(主光学系2と副光学系3)によってその像面に配置された表示面5の中心軸1近傍に結像された拡大像6を観察することができる。そして、主光学系2と副光学系3からなる合成光学系は、中心軸1を中心としてその周りに12°毎に配置されていることになるため、中心軸1を上下方向として設定すると、中心軸1の周囲の360°のどの方向から観察しても、観察者の眼が位置する射出瞳4に対応した位置の表示面5(中心軸1を挟んでその射出瞳4と反対側の表示面5)の表示像の拡大像6を観察することができる。
【0067】
なお、この実施例において、表示面5は平面としているが、全体の表示面は裁頭円錐面の形状をしており、これを1個の表示素子で構成してもよいが、30個の平面表示素子を裁頭角錐(三十角錐)の各側面に回転対称に配置して構成してもよい。
【0068】
この実施例1の仕様は、
射出瞳径 φ65mm
表示面の大きさ X4.50mm×Y5.00mm
像の大きさ □10mm×10mm
である。
【0069】
実施例2の視覚表示装置の光学系の主要部の中心軸1に沿ってとった断面図を図18に、その主要部の光学系内の光路を示す中心軸1に沿う方向に見た平面図を図19に示す。そして、光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図を図20に示す。なお、図18〜図19においては、一部の副光学系3、表示面5しか図示しておらず、また、射出瞳4(図13)は欄外になるため、図示は省く。この実施例の光学系全体の横収差図を図21に示す。
【0070】
本実施例は、主光学系2が奇数次項を含む曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面からなり正パワーを持つ反射面21からなり、かつ、中心軸1に同心な円周上に30個並列配置される同一構成の副光学系3が凸面の第1面31と中心軸1を中心軸とする円筒面の第2面32とからなるレンズからなり、その副光学系3の主光学系2に面した第1面31の周囲の開口が絞りを構成しており、その絞りの主光学系2による像が、中心軸1を挟んで各副光学系3とは反対側に射出瞳4(図示されていない。)を形成している。30個の同一構成の副光学系3が中心軸1に同心な円周上に並列配置されているので、主光学系2と各副光学系3とからなる合成光学系の射出瞳4は、中心軸1に同心に並列配置されている。そして各射出瞳4の大きさとしては、並列配置されたときにその円周上に略連続的に繋がるようになっている。
【0071】
各副光学系3の第2面32と同一面の円筒面に表示面5が配置されていて、その表示面5と中心軸1が共役となっていて、副光学系3のレンズと主光学系2の反射面21との合成パワーにより表示面5の実像が拡大像6として中心軸1近傍に結像され、その拡大像6は中心軸1を挟んで表示面5とは反対側から観察可能になる。
【0072】
このような構成であるので、観察者が眼を何れかの射出瞳4位置近傍に持って行くと、その射出瞳4を形成する合成光学系(主光学系2と副光学系3)によってその像面に配置された表示面5の中心軸1近傍に結像された拡大像6を観察することができる。そして、主光学系2と副光学系3からなる合成光学系は、中心軸1を中心としてその周りに12°毎に配置されていることになるため、中心軸1を上下方向として設定すると、中心軸1の周囲の360°のどの方向から観察しても、観察者の眼が位置する射出瞳4に対応した位置の表示面5(中心軸1を挟んでその射出瞳4と反対側の表示面5)の表示像の拡大像6を観察することができる。
【0073】
なお、この実施例において、表示面5は円筒面の外面としており、これを1個の表示素子で構成してもよいが、30個の平面表示素子を三十角柱の各側面に回転対称に配置して構成してもよい。
【0074】
この実施例2の仕様は、
射出瞳径 φ65mm
表示面の大きさ X2.00mm×Y1.96mm
像の大きさ □10mm×10mm
である。
【0075】
実施例3の視覚表示装置の光学系の主要部の中心軸1に沿ってとった断面図を図22に、その光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図を図23に示す。なお、射出瞳4(図13)は欄外になるため、図示は省く。この実施例の光学系全体の横収差図を図24に示す。
【0076】
本実施例は、主光学系2を中心軸1を含む断面内で2回内面反射するプリズム形状をした中心軸1に同心に回転対称な反射屈折光学系から構成した例であり、主光学系2はトーリック面からなる屈折面の第1面21、奇数次項を含む曲線を中心軸1の周りで回転させて得られる拡張回転自由曲面からなり正パワーを持つ反射面の第2面22、第1面21が兼ねる全反射面の第3面23、トーリック面からなる屈折面の第4面24からなり、逆追跡の順に、光線は第1面21で屈折され、第2面22で反射され、第3面23っでさらに全反射され、第4面24から主光学系2外に出る。そして、主光学系2の第4面24に面して、中心軸1に同心な円周上に30個の同一構成の副光学系3が並列配置されている。副光学系3は相互に偏心配置の両凸レンズからなる。そして、その副光学系3の主光学系2に面した第1面31の近傍の開口が絞りを構成しており、その絞りの主光学系2による像が、中心軸1を挟んで各副光学系3とは反対側に射出瞳4(図示されていない。)を形成している。30個の同一構成の副光学系3が中心軸1に同心な円周上に並列配置されているので、主光学系2と各副光学系3とからなる合成光学系の射出瞳4は、中心軸1に同心に並列配置されている。そして各射出瞳4の大きさとしては、並列配置されたときにその円周上に略連続的に繋がるようになっている。
【0077】
各副光学系3の第2面32に面して平面の表示面5が配置されており、その表示面5と中心軸1が共役となっていて、副光学系3と主光学系2との合成パワーにより表示面5の実像が拡大像6として中心軸1近傍に結像され、その拡大像6は中心軸1を挟んで表示面5とは反対側から観察可能になる。
【0078】
このような構成であるので、観察者が眼を何れかの射出瞳4位置近傍に持って行くと、その射出瞳4を形成する合成光学系(主光学系2と副光学系3)によってその像面に配置された表示面5の中心軸1近傍に結像された拡大像6を観察することができる。そして、主光学系2と副光学系3からなる合成光学系は、中心軸1を中心としてその周りに12°毎に配置されていることになるため、中心軸1を上下方向として設定すると、中心軸1の周囲の360°のどの方向から観察しても、観察者の眼が位置する射出瞳4に対応した位置の表示面5(中心軸1を挟んでその射出瞳4と反対側の表示面5)の表示像の拡大像6を観察することができる。
【0079】
なお、この実施例において、表示面5は平面としているが、全体の表示面は裁頭円錐面の形状をしており、これを1個の表示素子で構成してもよいが、30個の平面表示素子を裁頭角錐(三十角錐)の各側面に回転対称に配置して構成してもよい。
【0080】
この実施例3の仕様は、
射出瞳径 φ65mm
表示面の大きさ X2.60mm×Y2.66mm
像の大きさ □10mm×10mm
以下に、上記実施例1〜3の構成パラメータを示す。なお、以下の表中の“ERFS”は拡張回転自由曲面を、“RS”は反射面を示す。
【0081】

実施例1
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞
1 ∞(瞳面) 偏心(1)
2 15.00 偏心(2) 1.5163 64.1
3 -15.00 偏心(3)
4 ∞(絞り面) 偏心(4)
5 4.18 偏心(4) 1.5163 64.1
6 ∞ 偏心(5)
像 面 ∞ 偏心(6)
偏心(1)
X 0.00 Y 150.00 Z -300.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y 6.71 Z -13.42
α -26.57 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y -6.71 Z 13.42
α -26.57 β 0.00 γ 0.00
偏心(4)
X 0.00 Y -9.84 Z 19.68
α -26.57 β 0.00 γ 0.00
偏心(5)
X 0.00 Y -16.92 Z 33.84
α -26.57 β 0.00 γ 0.00
偏心(6)
X 0.00 Y -17.14 Z 34.28
α -34.88 β 0.00 γ 0.00 。
【0082】

実施例2
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞
1 ∞(瞳面) 偏心(1)
2 ERFS[1] (RS) 偏心(2)
3 ∞(絞り面) 偏心(3)
4 -2.20 偏心(3) 1.5163 64.1
5 ERFS[2] 偏心(4)
像 面 ERFS[2] 偏心(4)
ERFS[1]
RY -32.87
θ -2.00
R 30.00
4 1.2542 ×10-4
5 -8.3933 ×10-7
ERFS[2]
RY ∞
θ 0.00
R 10.56
偏心(1)
X 0.00 Y 109.00 Z -300.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y -10.90 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y -15.19 Z 15.00
α 21.24 β 0.00 γ 0.00
偏心(4)
X 0.00 Y -16.61 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00 。
【0083】

実施例3
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞
1 ∞(瞳面) 偏心(1)
2 ERFS[1] 偏心(2) 1.5163 64.1
3 ERFS[2] (RS) 偏心(3) 1.5163 64.1
4 ERFS[1] (RS) 偏心(2) 1.5163 64.1
5 ERFS[3] 偏心(4)
6 ∞(絞り面) 偏心(5)
7 2.87 偏心(5) 1.5163 64.1
8 -8.86 偏心(6)
像 面 ∞ 偏心(7)
ERFS[1]
RY -2543.21
θ -40.00
R 16.06
ERFS[2]
RY -48.97
θ -5.00
R 27.44
4 1.8573 ×10-5
5 4.8136 ×10-6
ERFS[3]
RY 25.60
θ -70.58
R 15.32
偏心(1)
X 0.00 Y 110.00 Z -300.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(2)
X 0.00 Y -14.39 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(3)
X 0.00 Y -10.91 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(4)
X 0.00 Y -20.45 Z 0.00
α 0.00 β 0.00 γ 0.00
偏心(5)
X 0.00 Y -22.18 Z 14.58
α -107.20 β 0.00 γ 0.00
偏心(6)
X 0.00 Y -26.01 Z 13.10
α -96.52 β 0.00 γ 0.00
偏心(7)
X 0.00 Y -27.36 Z 12.36
α -124.88 β 0.00 γ 0.00 。
【0084】
ところで、以上の実施例1〜3においては、中心軸1を上下方向とした場合に、観察方向は、水平方向でなく、若干上から下を見下ろす角度であったが(俯角が実施例1〜3でそれぞれ26°、20°、20°)、これを略水平方向にする実施例の図18に対応する図を図25に示す。この実施例は、上記実施例2の構成において、中心軸1を含む断面内で観察方向を略水平にするための偏角プリズムとして作用する中心軸1を中心に回転対称な回転対称プリズム体35を主光学系2(図の場合は、反射面21)の副光学系3側とは反対側に配置したものである。図25に示すように、断面楔形を中心軸1の周りに回転して得られる回転対称プリズム体35を付加することにより、観察角度を略水平方向にすることが可能である。さらに、この回転対称プリズム体35を構成する面を拡張回転自由曲面で構成し、メリジオナル断面(中心軸1を含む断面)でのみパワーを与えるようにすることも可能である。
【0085】
図26は、図25の実施例の回転対称プリズム体35の代わりに、そのプリズム面を中心軸1の周りで回転対称なフレネルプリズム面とした回転対称フレネルプリズム体36を使用して、同様に観察方向を略水平方向にした実施例の図18に対応する図である。その回転対称フレネルプリズム体36の中心軸1を含む断面の形状は、図27(a)に示すようになっている。ただし、図27(a)は図26のA部の拡大断面図である。また、観察方向を略水平方向にするのではなく、見上げるような角度(仰角)にするために、図27(b)に部分断面図を示すように、この回転対称フレネルプリズム体36として、回転対称フレネル反射プリズム体36’を使用することもできる。この回転対称フレネル反射プリズム体36’は、観察光を屈折するだけでなく、微細な輪帯面で反射させて偏角作用を行わせるものである。
【0086】
以上のような回転対称フレネルプリズム体36を本発明の視覚表示装置の光学系に使用することにより、付加する光学素子を薄くすることが可能となり、軽量化のために好ましいものである。
【0087】
また、図26、図27のような観察方向を変えるための透過素子のみに限ることなく、主光学系2を構成する他の反射面、例えば実施例2の反射面21を回転対称なリニアフレネル反射面で構成することも可能である。この場合に、奇数次項を含む曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成されるリニアフレネル反射面で構成することがさらに好ましいことは言うまでもない。回転対称なリニアフレネル反射面を構成する方法の一例を図28に示す。シート状の反射コーティング38をフレネル面に施したリニアフレネルレンズ(1次元方向にのみパワーを持つフレネルレンズ)37を、図28(a)に断面図、図28(c)に斜視図を示すように、パイプ状の円管39の内面に1次元フレネル面が円周方向に向くように接着するようにしてもよいし、図28(b)に断面図、図28(c)に斜視図を示すように、内面に反射コーティング38を施したパイプ状の円管39の内面にリニアフレネルレンズ37を1次元フレネル面が円周方向に向くように接着するようにしてもよい。
【0088】
なお、本発明の視覚表示装置の以上のような光学系において、中心軸1の周りで回転対称な光学系(主光学系2+副光学系3)はそのまま用いることにより、光学系の周辺の360°の全ての方向から表示面(表示素子)15の表示面(像面)5の拡大像6を観察できるが、その光学系を中心軸1を含む断面で切断して2分の1、3分の1、3分の2等にすることにより、中心軸1の周りの180°、120°、240°等の角度範囲で拡大像6を観察できるようにしてももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の視覚表示装置の光学系の表示面に配置する視差画像の撮影方法を説明するための図である。
【図2】図1の撮影方法で撮影された視差画像の例を示す図である。
【図3】円錐状の全体の表示面への視差画像の表示のさせ方を示す図である。
【図4】円筒状の全体の表示面への視差画像の表示のさせ方を示す図である。
【図5】本発明の視覚表示装置の光学系の隣接した射出瞳に観察者の左右の眼球を位置させる様子を示す図である。
【図6】観察者の左右の眼球の眼幅と本発明の視覚表示装置の光学系の隣接した射出瞳の間隔とを示す図である。
【図7】観察者が頭を動かした場合に順次隣の合成光学系による観察領域へ移っていく様子を示す図である。
【図8】本発明の視覚表示装置の主光学系、副光学系、表示面(表示素子)、拡大像のイメージを示す模式図である。
【図9】全体の表示面(表示素子)を円筒状にする場合に各表示面をその内面に配置する場合(a)と外面に配置する場合(b)とを示す図である。
【図10】本発明の視覚表示装置の光学系の光線が通過しない領域に遮光部材を配置する例を示す断面図である。
【図11】本発明の視覚表示装置の照明装置の一例を示す断面図である。
【図12】本発明の視覚表示装置の照明装置の他の例を示す斜視図である。
【図13】本発明の実施例1の視覚表示装置の光学系の中心軸に沿ってとった断面図(a)とその光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図(b)である。
【図14】図13(a)の主要部の拡大図である。
【図15】図13(b)の主要部の拡大図である。
【図16】実施例1の光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図17】実施例1の光学系全体の横収差図である。
【図18】本発明の実施例2の視覚表示装置の光学系の主要部の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図19】図18の主要部の光学系内の光路を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図20】実施例2の光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図21】実施例2の光学系全体の横収差図である。
【図22】本発明の実施例3の視覚表示装置の光学系の主要部の中心軸に沿ってとった断面図である。
【図23】実施例3の光学系全体を示す中心軸に沿う方向に見た平面図である。
【図24】実施例3の光学系全体の横収差図である。
【図25】観察方向を略水平方向にする1実施例の図18に対応する図である。
【図26】観察方向を略水平方向にするのに回転対称フレネルプリズム体を使用する実施例の図18に対応する図である。
【図27】回転対称フレネルプリズム体の詳細を説明するための断面図である。
【図28】回転対称なリニアフレネル反射面を構成する方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0090】
1…中心軸
2…主光学系
3…副光学系
4…射出瞳
5…表示面(像面)
6…拡大像(物体面)
11…遮光部材
12…線光源
13…リング状集光光学系
13’…リング状集光光学系
15…全体の表示面(表示素子)
16…リング状発光体
17…リング状反射鏡
18…視野角制限フィルター(ルーバー)
19…点光源
20…リング状反射鏡
21、22、23、24…主光学系の光学面
31、32…副光学系の光学面
35…回転対称プリズム体
36…回転対称フレネルプリズム体
36’…回転対称フレネル反射プリズム体
37…リニアフレネルレンズ
38…反射コーティング
39…パイプ状の円管
50…視覚表示装置の光学系(本発明)
100…物体
101…カメラ
EL、ER…眼球
E…観察者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に同心に回転対称な主光学系が配置され、中心軸に同心な円周上に複数の同一構成の副光学系が並列して配置され、主光学系と各副光学系とにより構成される合成光学系の射出瞳が主光学系の副光学系側とは反対側であって中心軸に対して副光学系とは反対側に位置し、各副光学系の主光学系とは光路上反対側にそれぞれ表示素子の表示面が配置され、各合成光学系による表示面の像が中心軸近傍に結像され、かつ、各合成光学系の射出瞳が中心軸に同心に略連続的に形成されることを特徴とする視覚表示装置。
【請求項2】
前記表示面には、同一物体について複数の視点から撮影された映像を表示して立体観察可能にしたことを特徴とする請求項1項記載の視覚表示装置。
【請求項3】
複数の平面表示素子を回転対称に配置することで前記表示面が構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の視覚表示装置。
【請求項4】
2次元的に構成された表示素子を丸めて3次元的に構成することで前記表示面が構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の視覚表示装置。
【請求項5】
前記主光学系の少なくとも1つの面は、回転対称軸を含む縦断面と回転対称軸と直交する横断面での曲率が異なることを特徴とする請求項1から4の何れか1項記載の視覚表示装置。
【請求項6】
前記主光学系の少なくとも1つの面は、対称面を持たない任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項記載の視覚表示装置。
【請求項7】
前記主光学系の少なくとも1つの面は、奇数次項を含む任意形状の曲線を回転対称軸の周りで回転させて形成される回転対称な形状を有することを特徴とする請求項6記載の視覚表示装置。
【請求項8】
前記主光学系の外径の半分をRsとするとき、
10mm<Rs ・・・(1)
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の視覚表示装置。
【請求項9】
光線が通過しない領域に遮光部材が配置されていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項記載の視覚表示装置。
【請求項10】
前記表示面全体を前記副光学系側とは反対側全方位から照明する照明装置を備えていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項記載の視覚表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−279115(P2007−279115A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101737(P2006−101737)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】