説明

親水性不織布を含む吸収性物品

本発明は、不織布の表面に化学的に結合されたポリマーによって親水性にされる、不織布を含む吸収性物品に関する。
さらに、本発明は、不織布に形成可能な親水性繊維を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の表面に化学的に結合されたポリマーによって親水性にされる、不織布を含む吸収性物品に関する。
【0002】
さらに、本発明は、不織布に形成可能な親水性繊維を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
おむつ及び成人用失禁製品のような使い捨て吸収性物品は、当該技術分野において周知である。このような使い捨て物品は、着用者によってそれらに沈着される尿及び糞便物質を集め、保持する。
【0004】
合成繊維で製造される不織布は、吸収性物品中に、例えばトップシート材料として、又は吸収性コアの貯蔵層を包むコアラップとして通常は適用される。このような不織布は、通常は疎水性である。しかし、衛生用製品における多くの適用にとって、親水性の不織布を有することが必要である。それ故に、不織布は、適宜処理されることが必要である。
【0005】
不織布に親水性を付与するための通常の方法は、親水性界面活性剤で不織布の表面をコーティングすることである。このコーティングは不織布と界面活性剤との間をきつい化学結合にしないので、界面活性剤は、吸収性物品が濡らされると使用中に洗い流される可能性がある。液体が染み透る時間の減少は、不織布が界面活性剤でコーティングされている場合に、所望の効果である。液体が染み透るとは、液体が不織布を通ることをいい、液体が染み透る時間とは、特定の量の液体が不織布を通るのにかかる時間をいう。しかし、コーティングされた不織布が液体にさらされる時に界面活性剤が洗い流されると、次の流れ出しにおける染み透る時間は再び増加する。このことは、これらの不織布を含むおむつの使用中に、性能の低下を生じさせる。さらに、それと同時に、液体が染み透る時間が界面活性剤の使用に起因して減少すると、不織布と接触した液体の表面張力は減少する。この減少はおむつ中の尿漏れを増加させるため、望ましくない。一方、染み透る時間を減少させる界面活性剤はまた、洗い流される表面張力も下げる。
【0006】
典型的な界面活性剤の例は、PCT国際公開特許第WO93/04113、名称「吸収性フォーム材料を親水性化するための方法(Method for hydrophilizing absorbent foam materials)」、及びPCT国際公開特許第WO95/25495、名称「吸収性コアのための流体獲得及び分配部材(Fluid acquisition and distribution member for absorbent core)」に記載されている。
【0007】
不織布に親水性を付与するための別の可能性は、コロナ及びプラズマ処理を適用することによる。
【0008】
プラズマは、ガス又は液体媒体をイオン化することによって得ることができる、ガスのイオン化形態である。プラズマは、種々の材料間の接着性を高めるために、有機材料及び無機材料を処理するために広く使用される。低い表面エネルギーを持つ化学的に不活性な表面を持つポリマーは、結合性及び接着性を持つ良好なコーティングを不可能にする。従って、これらの表面は、他の基質、コーティング、接着剤、及び印刷インクとの結合を受け入れ可能なように処理される。プラズマを生産するための方法は、米国特許第6,118,218号、名称「周囲圧力で定常状態のグロー−放出プラズマ(Seady-state glow-discharge plasma at atmospheric pressure)」に記載されている。
【0009】
コロナ放電は、空気がイオン化を生じるのに十分な高い電位にさらされる場合に生じる電気的な事象であり、それにより、空気が電気絶縁体から電気の伝導体に変化する。
【0010】
しかし、コロナ及びプラズマ処理は、材料を貯蔵する際に、コーティングの耐久性を低くし、すなわち時間経過にともなって親水性が減少する。
【0011】
PCT国際公開特許WO00/16913、名称「持続的に湿潤可能な、液体透過性のウェブ(Durably wettable,liquid pervious webs)」及びPCT国際公開特許WO00/16914、名称「遠隔プラズマ重合方法を用いて調製された、持続的に湿潤可能な、液体透過性のウェブ(Durably wettable,liquid pervious webs prepared using a remote plasma polymerization process)」は、プラズマ重合方法によって適用される親水性のコーティングを有するウェブを開示している。しかし、この方法の欠点は、非常にゆっくりであり、連続では行うことができずバッチ方法が必要なため、商業的適用が制約される。
【0012】
従って、貯蔵時に耐久性があり、濡らされた時に容易に洗い流されず、洗い流される表面張力を減少させずに、複数回液体にさらされる場合に液体がすばやく染み透ることが可能な、不織布の親水性コーティングが必要とされる。
【0013】
親水性モノマーを化学的にグラフト化する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第5,830,604、名称「ポリマー性シート及びそれを用いた電気化学装置(Polymeric sheet and electrochemical device using the same)」(レイモンド(Raymond)らに発行);米国特許第5,922,417号、名称「ポリマー性シート(Polymeric sheet)」(レイモンド(Raymond)らに発行);及びPCT国際公開特許WO98/58108、名称「不織布処理(Non-woven fabric treatment)」はすべて、バッテリーのような電気化学装置におけるセパレーターとして使用するための不織布を製造するための方法に言及している。
【0014】
EP1164157A1、名称「ポリマー性材料を改質する方法及びそれらの使用(Method of modifying polymeric material and use thereof)」は、活性化処理及び親水性ポリマー処理をこの順序で行う工程を備えた、ポリマー性材料を改質する方法を開示している。この方法は、任意に、活性化処理の前に行われる溶媒処理をさらに含み、及び/又は親水性ポリマー処理の後に行われるモノマーグラフト化をさらに含む。この方法の欠点は、非常に複雑であり、多くの工程を備えることである。さらに、水溶性ポリマーで不織布を処理することにより、このような不織布が水にさらされた場合、水の表面張力が下がる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の1つは、耐久性を持つ親水性コーティングを有する不織布を含む吸収性物品を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的の1つは、洗い流されない親水性コーティングを有する不織布を含む、吸収性物品を提供することである。
【0017】
さらに、本発明の1つの目的は、数回の流れ出しの後でさえ染み透る時間が短い不織布を含み、同時に水性液体と接触した場合に表面張力を下げない、吸収性物品を提供することである。
【0018】
本発明のなおさらなる目的は、所望の特性を有する吸収性物品に適した、不織布を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、貯蔵時に耐久性があり、不織布が濡らされた時に洗い流されず、同時に表面張力を高め、染み透る性質を高める、親水性コーティングを有する不織布を含む吸収性物品を提供する。
【0020】
前記吸収性物品は、実質的に液体透過性のトップシートと、実質的に液体不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間の吸収性コアとを備え、吸収性物品は不織布を含み、この不織布は、a)複数の繊維を含み、b)本明細書中で記載されている試験方法に従って食塩水溶液で濡らされた場合、少なくとも65mN/mの表面張力を有し、c)本明細書中に記載されている方法に従って、液体の5度目の流れ出しにおいて、液体の染み透る時間が5秒未満となるようになっており、d)前記不織布に含まれる前記複数の繊維の少なくとも一部の表面に化学的にグラフト化された親水性モノマー分子およびラジカル重合開始剤分子の少なくとも一部を含むポリマーを含み、ラジカル重合開始剤分子の量は前記モノマー分子の2重量%まで、さらに好ましくは1重量%までとなるようになっていることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明は、吸収性物品を製造するのに適した複数の繊維を処理するための方法に関する。
【0022】
この方法は、a)複数の繊維を準備する工程と、b)親水性モノマー及びラジカル重合開始剤を含有する水溶液を準備する工程と、c)前記複数の繊維を前記水溶液と接触させる工程と、d)2秒までの時間、前記複数の繊維をUV照射にさらす工程とを備える。
【0023】
この方法は、親水性モノマーと、繊維の表面に共重合された水溶液のラジカル重合開始剤分子の少なくともフラグメントとを有する複数の繊維を生じさせる。
【0024】
吸収性物品に含まれる複数の繊維は、吸収性物品が使用される前に長期間保管された場合でさえ、親水性を保つ。さらに、親水性コーティングは、多くの従来のコーティングの場合のように、吸収性物品の使用中にそれほど洗い流されることはない。このことは、親水性ポリマーが化学的に繊維にグラフト化され、表面に単にゆるく固着しているだけではないという事実に起因する。それ故に、吸収性物品に含まれる複数の繊維の親水性は、非常に耐久性がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(定義)
本明細書は、本発明を特に指摘し且つ明白に請求する特許請求の範囲で完結するが、本発明は、同類の構成要素が同じ参照番号を与えられている添付の明細書と併せて、以下の図面によってさらによく理解できると考えられている。
【0026】
本明細書で使用する次の用語は、次の意味を有する。
【0027】
「吸収性物品」とは、液体を吸収及び収容するデバイスを指し、より具体的には、着用者の身体に対して又はそれに近接して配置されて、身体から排出された様々な排泄物を吸収及び収容するデバイスを指す。吸収性物品としては、おむつ、成人失禁用ブリーフ、トレーニングパンツ、おむつホルダー及びおむつライナー、衛生ナプキン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「使い捨て」とは、一般に洗濯又は他の方法で復元若しくは再使用されることを意図しない(すなわち、1回の使用後に廃棄、及び好ましくはリサイクル、堆肥化、又はさもなければ環境に適合する方法で処理されることを意図する)物品を説明するために本明細書で用いる。
【0029】
「配置された」とは、ある要素が他の要素と共に一体構造体として、又はもう1つの要素に接合した別個の要素として、特定の場所又は位置で形成される(接合して配置される)ことを意味するために使用される。
【0030】
「おむつ」とは、乳幼児及び失禁症者により胴体下部の周りで一般に着用される吸収性物品を指す。
【0031】
「固着した」又は「接合した」は、1つの要素を他の要素に直接付着させることによりその要素が他の要素に直接固定される構成と、1つの要素を中間部材に付着させて次に中間部材を他の要素に付着させることによりその要素が他の要素に間接的に固定される構成とを包含する。
【0032】
「含む」及び「含んでいる」は、次に続くもの、例えば構成要素の存在を指定する、制限のない用語であるが、当技術分野で既知の、又は本明細書で開示した、他の機構、要素、工程、若しくは構成要素の存在を排除しない。
【0033】
「親水性」という用語は、これらの繊維上に沈着した水性液体(例えば、水性体液)によって濡らされることができる繊維又は繊維の表面について表している。親水性及び湿潤性は、典型的には、流体、例えば、不織布を通る流体の接触角及び染み透る時間の観点から規定される。この点については、アメリカ化学会誌(the American Chemical Society)の出版物(1964年版権)、名称「接触角、湿潤性、及び接着(Contact Angle,Wettability,and Adhesion)」(ロバート・F・グールド(Robert F.Gould)編集)にて詳細に説明されている。繊維、又は繊維の表面は、液体と繊維若しくはその表面との間の接触角が90度未満の時、又は液体が繊維の表面全体に自然に広がる傾向がある時に流体によって濡らされている(すなわち、親水性)といわれ、通常は両方の条件が共存する。逆に、接触角が90度より大きい場合及び液体が繊維の表面全体に自然に広がらない場合は、繊維又は繊維の表面は疎水性とみなされる。
【0034】
「繊維」及び「フィラメント」という用語は、交換可能に使用される。
【0035】
「不織布」及び「不織布ウェブ」という用語は、交換可能に使用される。
【0036】
「複数の繊維」という用語は、繊維又はフィラメント並びに不織布をいう。
【0037】
(吸収性物品)
図1は、本発明に従う吸収性物品の好ましい実施形態としてのおむつ20の平面図である。おむつはそのその全体が、非収縮状態(すなわち、弾性による収縮なし)で示される。構造の一部を切り欠いて、おむつ20の下層構造7をより明瞭に示している。着用者に接触するおむつ20の部分が、読者に向いている。図1のおむつ20のシャーシ22は、おむつ20の本体を含む。シャーシ22は、液体透過性のトップシート24及び/又は液体不透過性のバックシート26を含む外側カバーを備える。また、シャーシは、トップシート24とバックシート26との間に包まれた吸収性コア28のほとんど又は全てを含んでもよい。シャーシは、好ましくは、サイドパネル30、レッグカフ32及び腰部機構34をさらに備える。レッグカフ及び腰部機構は、典型的には、弾性部材33を備える。おむつ20の1つの末端部は、おむつ20の前腰部領域36として構成されている。反対側の末端部は、おむつ20の後腰部領域38として構成されている。おむつ20の中間部は、前腰部領域36と後腰部領域38との間を長手方向に延びる、股部領域37として構成されている。股部領域37は、おむつ20を着用した時に、ほぼ着用者の脚の間に配置されるおむつ20の部分である。腰部領域36及び38は、好ましくは後腰部領域38に固着した締着部材40と前腰部領域36に固着したランディング領域42とを有する締着装置を備えてもよい。おむつ20は、長手方向軸100及び横断方向軸110を有する。おむつ20の周囲は、おむつ20の外側縁部によって画定され、長手方向縁部44はおむつ20の長手方向軸100にほぼ平行をなし、末端縁部46は、おむつ20の横断方向軸110とほぼ平行をなす。
【0038】
一体型吸収性物品の場合、シャーシ22は、複合おむつ構造体を形成するように付加された他の機構と共に、おむつの主要構造体を含む。トップシート24とバックシート26と吸収性コア28は、様々な周知の構成で組み立てることができるが、好ましいおむつの構成が、米国特許第5,569,234号、名称「使い捨てプルオン・パンツ(Disposable Pull-On Pant)」(ブエル(Buell)ら、1996年10月29日発行);及び米国特許第6,004,306号、名称「多方向延伸性サイドパネルを有する吸収性物品(Absorbent Article With Multi-Directional Extensible Side Panels)」(ロブル(Roble)ら、1999年12月21日発行)に概ね記載されている。
【0039】
図1のトップシート24は、全体的に又は部分的に伸縮性とするか又は短縮させて、トップシート24と吸収性コア28との間に空隙空間を提供することができる。伸縮性又は短縮させたトップシートを含む例示的な構造は、米国特許第5,037,416号、名称「弾性的延伸性のトップシートを有する使い捨て吸収性物品」(アレン(Allen)ら、1991年8月6日発行);及び米国特許第5,269,775号、名称「使い捨て吸収性物品のための三等分トップシート及びこのような三等分トップシートを有する使い捨て吸収性物品(Trisection Topsheets for Disposable Absorbent Articles and Disposable Absorbent Articles Having Such Trisection Topsheets)」(フリーランド(Freeland)ら、1993年12月14日発行)にさらに詳細に記載されている。
【0040】
図1のバックシート26は、一般に、バックシート26とトップシート24との間の吸収性コア28と共に配置されるおむつ20の部分である。バックシート26は、トップシート24と接合してもよい。バックシート26は、吸収性コア28に吸収されて物品20内に収容された排出物が、おむつ20と接触することがあるベッドシーツ及び下着などの他の外部物品を汚すことを防止する。好ましい実施形態では、バックシート26は、液体(例えば尿)に対して実質的に不透過性であり、不織布と厚さ約0.012mm(0.5ミル)〜約0.051mm(2.0ミル)の熱可塑性フィルムなどの薄いプラスチックフィルムとの積層体を含む。好適なバックシートフィルムとしては、インディアナ州テレホート(Terre Haute)のトレドガーインダストリーズ社(Tredegar Industries Inc.)により製造され、X15306、X10962、及びX10964の商品名で販売されるものが挙げられる。他の好適なバックシート材料は、おむつ20から蒸気を逃すと同時に、依然として排出物がバックシート26を通過するのを防止する通気性材料を含んでもよい。代表的な通気性材料としては、織布ウェブ、不織布ウェブ、フィルムコーティング不織布ウェブのような複合材料、及びESPOIR NOの名称で日本の三井東圧株式会社(Mitsui Toatsu Co.)により製造されるような、またEXXAIREの名称でテキサス州ベイシティー(Bay City)のエクソンケミカル社(EXXON Chemical Co.)により製造されるような微小多孔性フィルムなどがある。ポリマーブレンドを含む好適な通気性複合材料が、HYTRELブレンドP18−3097の名称でオハイオ州シンシナティ(Cincinnati)のクロペイ社(Clopay Corporation)から入手可能である。
【0041】
図1の吸収性コア28は、一般に、トップシート24とバックシート26との間に配置されている。吸収性コア28は、概ね圧縮性であって、体型に合いやすく、着用者の皮膚に対して非刺激性であり、尿などの液体及び他のある種の身体滲出物を吸収して保持できるものであれば、いかなる吸収性材料でも含むことができる。吸収性コア28は、エアフェルトと一般に呼ばれる粉砕木材パルプなどの、使い捨ておむつ及び他の吸収性物品に普通に使用される、種々多様な液体吸収性材料を含むことができる。他の好適な吸収性材料の例としては、捲縮セルロース詰め物、コフォームを含むメルトブローンポリマー、化学的に剛化、改質、若しくは架橋されたセルロース繊維、ティッシュラップ及びティッシュラミネートを含むティッシュ、吸収性フォーム、吸収性スポンジ、超吸収性ポリマー、吸収性ゲル材料、又は他のいかなる既知の吸収性材料、又はこれらの材料の組み合わせなどが挙げられる。吸収性コア28は、微量(通常10%未満)の非液体吸収性材料、例えば、接着剤、ワックス、油などをさらに含んでもよい。
【0042】
吸収性アセンブリとして使用するための例示的な吸収性構造は、米国特許第4,834,735号、名称「低密度及び低い坪量の獲得区域を有する高密度吸収性部材(High Density Absorbent Members Having Lower Density and Lower Basis Weight Acquisition Zones)」(アレマリー(Alemary)ら、1989年5月30日発行);及び米国特許第5,625,222号、名称「非常に高い水/油比を有する高内相エマルジョンから作られた水性流体のための吸収性フォーム材料(Absorbent Foam Materials For Aqueous Fluids Made From high Internal Phase Emulsions Having Very High Water-To-Oil Ratios)」(デスマライス(DesMarais)ら、1997年7月22日発行)に記載されている。
【0043】
おむつ20はまた、前及び後耳パネル、ウエストキャップ機構、並びに弾性部などを含む当技術分野で既知の他の機構を含み、よりよい適合性、収容性、及び美的特質を提供することができる。このような追加の機構は当該技術分野で周知であり、米国特許第3,860,003号、名称「使い捨ておむつ用の収縮可能なサイド部分(Contractable side portions for disposable diaper)」(ブエル(Buell)ら、1975年1月14日発行)、及び米国特許第5,151,092号、名称「予備配列された弾力的な可撓性ヒンジを有する動的に弾性的なウエスト機構を有する吸収性物品(Absorbent Article With Dynamic Elastic Feature Having A Predisposed Resilient Flexural Hinge)」(ブエル(Buell)ら、1992年9月29日発行)に記載されている。
【0044】
おむつ20を着用者の周りの位置に保持するために、腰部領域36及び38は、好ましくは後腰部領域38に固着した締着部材40を含む締着装置を備えていてもよい。好ましい実施形態では、締着装置は、前腰部領域36に固着したランディング領域42をさらに備える。締着部材は、前腰部領域36に固着され、好ましくはランディング領域42に固着され、足の開口部と物品の腰を形成する。
【0045】
本発明のおむつ20は、再び締めることが可能な締着装置を有するか、あるいはパンツ型のおむつの形態で提供されてもよい。
【0046】
締結装置及びそのいかなる構成要素も、そのような使用に好適ないかなる材料をも含むことができ、それにはプラスチック、フィルム、フォーム、不織布ウェブ、織布ウェブ、紙、積層体、繊維強化プラスチックなど、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。締結装置を作り上げる材料は、可撓性であるのが好ましい。可撓性は、締結装置が身体形状に順応し、従って締結装置が着用者の皮膚を刺激する又は傷つける可能性を低減できるように設計される。
【0047】
図2は、横断方向軸110に沿った図1の断面図を示す。着用者に面する側から、おむつはトップシート24、吸収性コア28の構成要素、及びバックシート26を備える。吸収性コアは、好ましくは、着用者に面する上側獲得層52と下側獲得層54とを備えた獲得システム50を含む。好ましい実施形態の1つでは、上側獲得層が不織布を含み、下側獲得層が、好ましくは、化学的に剛化され、撚り合わされ、巻かれた繊維、表面積の大きな繊維、及び熱可塑性の結合繊維の混合物を含む。別の好ましい実施形態では、両方の獲得層が、好ましくは親水性の不織布材料から準備される。獲得層は、好ましくは貯蔵層60に直接接触している。
【0048】
貯蔵層60は、好ましくはコアラップ材料によって包まれる。好ましい1つの実施形態では、コア用ラップ材料は、最上層56及び最下層58を備える。最上層56及び最下層58は、不織布材料から準備されることができる。1つの好ましい材料は、スパンボンドされ、メルトブローンされ、さらにスパンボンドされた層を備える、いわゆるSMS材料である。最上層56及び最下層58は、2以上の別個のシート材料から準備されてもよく、あるいは単一シートの材料から準備されてもよい。このような単一シートの材料は、例えばC折りで、貯蔵層60の周りに巻き付けられてよい。
【0049】
貯蔵層60は、典型的には、超吸収体、吸収性ゲル材料と混合した、繊維材料を備える。上で吸収性コア28に適切とされる他の材料もまた備えられていてもよい。
【0050】
本発明によれば、好ましくは、吸収性物品のトップシート24及び/又は上側コアラップ層56及び/又は下側コアラップ層58は、以下に非常に詳細に記載されている親水性不織布から作られる。さらに、本発明の親水性不織布は、好ましくは、獲得材料52及び/又は54として吸収性コア28中で使用される。
【0051】
(不織布)
「不織布」は、摩擦及び/又は粘着及び/又は接着により結合された、方向を有して又はランダムに配向された繊維で製造された、シート、ウェブ、又はバット(batt)であり、紙、及び織り製品、編み製品、タフテッド製品、ステッチで結合した組み込み結合糸若しくはフィラメント、又は湿式粉砕によるフェルト製品(さらなるニードル加工の有無を問わず)は除く。
【0052】
繊維は天然又は合成起源であってもよい。それらは基本的な若しくは連続したフィラメントでもよいし、又はその場で形成されてもよい。
【0053】
不織布は、メルトブローイング、スパンボンディング、カーディングのような多くの方法によって形成することができる。不織布の坪量は、通常は、1平方メートルあたりのグラム数で表される(g/m)。
【0054】
市販の繊維は、約0.001mm未満から約0.2mmを超える値までの範囲の直径を有し、いくつかの異なる形態:短繊維(ステープル繊維又は細断繊維として知られる)、連続単繊維(フィラメント又はモノフィラメント)、連続フィラメントの撚っていない束(麻くず(tow))、及び連続フィラメントの撚り束(編み糸)で提供される。繊維は、その起源、化学構造、又はその両方によって分類される。それらは、編んでロープ及び縄索類にすることもでき、フェルト(不織布若しくは不織布地とも呼ばれる)にすることもでき、織って若しくは編んで織物にすることもでき、又は高強度繊維の場合には、複合物、すなわち2つ以上の異なる材料から製造される製品で、補強材として使用することもできる。
【0055】
不織布は、天然に製造された繊維(天然繊維)、人によって製造された繊維(合成繊維若しくは人工繊維)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。天然繊維の例には、羊毛、絹、毛皮、及び毛髪のような動物繊維、セルロース、綿、亜麻、リネン、及び麻のような植物繊維、並びにある種の天然に生じる鉱物繊維が挙げられるが、これらに限定されない。合成繊維は、天然繊維由来のものであることもできるし、天然繊維由来でないものであることもできる。天然繊維由来の合成繊維の例には、レーヨン及びリオセルが挙げられるが、これらに限定されず、その両方が天然多糖類繊維であるセルロース由来である。天然繊維由来でない合成繊維は、他の天然資源又は鉱物資源に由来し得る。天然資源由来ではない合成繊維の例には、デンプンのような多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。鉱物資源からの繊維の例には、石油由来のポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維及びポリエステルのようなポリオレフィン繊維、並びにガラス及びアスベストのようなシリケート繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
不織布ウェブは、繊維及びウェブがほぼ同時に形成される直接押出成形によって形成することができるか、又は明確に後の時点でウェブ内に配置できる予め形成された繊維によって形成することもできる。直接押出成形の例には、通常は層を形成する、スパンボンディング、メルトブローイング、溶媒紡糸、電界紡糸、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用する時、「スポンバンド繊維」という用語は、複数の精密な、通常は環状のスピナレットの毛管からフィラメントとして溶融熱可塑性材料を押し出すことによって形成される、小さな直径の繊維をいう。スパンボンド繊維は収集面に沈着する時冷却され、概して粘着性はない。スパンボンド繊維は一般的に連続的である。
【0058】
本明細書で使用する「メルトブロー繊維」という用語は、溶融熱可塑性材料を融解した糸又はフィラメントとして複数の精密な、通常は環状の金型(die)毛管を通して、溶融熱可塑性材料のフィラメントを弱めてその直径を減少させる収束高速ガス(例えば空気)の流れに押し出すことによって形成される繊維をいう。その後、高速ガス流によって、メルトブロー繊維は移動し、収集表面上に沈着し、無作為に分配された(disbursed)メルトブロー繊維のウェブを形成する。
【0059】
「レイイング」法の例には、湿式レイイング及び乾式レイイングが挙げられる。乾式レイイング法の例には、通常は層を形成する、エアレイイング、カーディング、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上述の方法を組み合わせると、一般にハイブリッド又は複合体と呼ばれる不織布が生成される。組み合わせの例には、通常は層状に、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)、スパンボンド−カーディング(SC)、スパンボンド−エアレイド(SA)、メルトブローン−エアレイド(MA)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。直接押出成形を含む組み合わせは、直接押出成形方法とほぼ同時点で(例えば、SA及びMAのスピンフォーム及びコフォーム)、又はその後の時点で組み合わせることができる。上述の例では、各方法によって一層以上の個々の層を形成することができる。例えば、SMSは、三層の「sms」ウェブ、五層「ssmms」ウェブ、又はこれらの妥当な任意の変形形態を意味することができ、小文字は個々の層を表し、大文字は類似の隣接層をまとめて表している。
【0060】
不織布ウェブ中の繊維は、通常は重なり合う接合部のいくつかで、1つ以上の隣接繊維に接合している。これには、各層内での繊維接合、及び一層より多くの層がある時の層間での繊維接合が含まれる。繊維は、機械的な絡合、化学結合、又はこれらの組み合わせによって接合することができる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、不織布は、ポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレン(PET)で作られる。別の実施形態では、不織布は、PP及びPETからなる2成分繊維で作られる。
【0062】
コアラップ材料として使用するために、不織布は、好ましくは、スパンボンド及びメルトブローンプロセス(SMMS)の組み合わせによって作られ、坪量は、好ましくは0.06Pa(7g/m)〜0.29Pa(30g/m)、より好ましくは0.07Pa(8g/m)〜0.19Pa(20g/m)、さらにより好ましくは0.07Pa(8gm)〜0.14Pa(15gm)である。
【0063】
貯蔵層中のトップシート材料として使用するために、不織布は、好ましくはスパンボンド繊維を含む。トップシートの坪量は、好ましくは0.09(10)〜0.29Pa(30g/m)、より好ましくは0.14Pa(15g/m)〜0.19Pa(20g/m)である。別の実施形態では、トップシートは、0.09Pa(10g/m)〜0.24Pa(25g/m)、より好ましくは0.14Pa(15g/m)〜0.19Pa(20g/m)の好ましい坪量を有するカード不織布を含む。
【0064】
吸収性コア中の獲得材料としての適用のために、不織布は、好ましくはカーディング方法によって作られ、坪量は、好ましくは0.19(20)〜1.96Pa(200g/m)、より好ましくは0.39(40)〜0.98Pa(100g/m)、さらにより好ましくは約0.58Pa(60g/m)である。材料は、例えば、樹脂透過熱接着方法、又は空気透過熱接着方法によってさらに結合される。
【0065】
(永久親水性不織布を作るための方法)
本発明の方法は、複数の繊維の処理についてである。不織布に形成される場合、複数の繊維は、吸収性物品のために特に適している。この方法は比較的安価な化学物質を含むため、非常に経済的である。さらに、この方法は非常に速い。少なくとも200m/分、より好ましくは少なくとも300m/分、さらにより好ましくは少なくとも400m/分のライン速度で進行可能である。
【0066】
本発明による複数の繊維を処理するための方法は、以下の工程を備える。
【0067】
工程a)
複数の繊維を準備する。繊維は、天然繊維(例えば、羊毛、絹、セルロース、綿)、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル又はポリアミドのような樹脂で作られる人工繊維又は合成繊維であることができる。繊維は、典型的には、約0.001mm未満〜約0.2mm超過の範囲の直径を有する。
【0068】
工程b)
親水性モノマー及びラジカル重合開始剤を含む水溶液を準備する。
【0069】
好ましくは、水溶液中のモノマー分子対開始剤分子の比は、少なくとも50対1である。より好ましくはこの比は少なくとも100対1であり、さらにより好ましくは少なくとも500対1であり、最も好ましくはこの比は少なくとも1000対1である。
【0070】
水溶液は、ラジカル的に重合可能な親水性モノマーを含む。好ましくは、モノマーは、一般式RC=CRに従う少なくとも1つの不飽和二重結合を含有し、R及びRは好ましくは水素原子である。より好ましくは、親水性モノマーは、酸又は塩基と反応して塩を形成可能な基を含む。適切なモノマーの例は、アクリル酸及びその誘導体(例えば、メタクリル酸、エチルアクリル酸)、スチレンスルホン酸及びその誘導体、酢酸ビニル、無水マレイン酸及びビニルピリジンである。本発明の好ましい実施形態では、アクリル酸又はその塩はモノマーとして使用される。
【0071】
水溶液は、ラジカル重合開始剤をさらに含む。好ましくは、開始剤は、光で活性化されると反応性ラジカルを形成可能である。好適なラジカル重合開始剤の例は、ベンゾフェノン及びその誘導体、過酸化ベンゾイル又はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0072】
好ましくは、水溶液は、溶媒中の親水性モノマーの単独重合を減らす薬剤をさらに含む。このような薬剤の例は、鉄−II−塩、銅−II−塩(例えば、鉄−II−硫酸塩)又はこれらの混合物である。薬剤分子の少なくとも3倍を超える、より好ましくは少なくとも5倍を超える開始剤が水溶液中に存在すべきである。
【0073】
任意に、水溶液は、水溶液による複数の繊維の濡れを向上させるために、界面活性剤及び/又は有機溶媒をさらに含む。しかし、重合に干渉しない、それらの界面活性剤のみが適用されるべきである。好適な有機溶媒の例は、異なる長さ及び異なる分枝度のアルキル鎖を有する種々のアルコールである。
【0074】
工程c)
複数の繊維を、親水性モノマー及びラジカル重合開始剤を含む水溶液と接触させる。親水性モノマーは、ラジカル重合プロセスを受けることが可能である。水溶液は、親水性モノマーの単独重合を減らす薬剤をさらに含んでもよい。さらに、水溶液は、界面活性剤及び/又は有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0075】
複数の繊維上に水溶液を均一に適用するために、キスロールコーティング又はスプレーが特に適切である。両方の方法が、当該技術分野において周知である。
【0076】
キスロールコーティングにおいて、水溶液は適切な浴中に保持される。回転するシリンダー又はこの方法に適した任意の他の装置は、溶液を少なくともその表面の一部と接触させる。従って、水溶液はシリンダーの表面に広げられる。複数の繊維は、シリンダーと接触させられるが、シリンダーはすでにその表面に広げられた水溶液を有する。この方法において、複数の繊維上に適用される水溶液の量は容易に制御可能であり、複数の繊維が水溶液に浸されるのを防ぐことが可能である。
【0077】
従って、繊維表面にグラフト化されたポリマーのアドオンレベルは制御可能であり、これは複数の繊維が水溶液の浴と直接接触する方法においては困難である。さらに、この方法に必要な水溶液の量は、最小限まで減らすことができる。
【0078】
キスロールコーティングの代わりに、水溶液もまた、複数の繊維の表面上に噴霧することができる。キスロールコーティングのように、噴霧は水溶液のアドオンレベルを低く、容易に制御可能であり、これは本発明において好ましい。
【0079】
本発明による好ましい溶媒は、UV照射に対して透過性であり、照射にさらされた場合に分離され得る(abstactable)原子は存在せず、繊維の特性に悪影響を与えない。適切な溶媒の例は水である。
【0080】
工程d)
複数の繊維を水溶液と接触させた後に、複数の繊維をUV照射にさらす。
【0081】
本発明の好ましい実施形態では、UV−A(315〜400nm)及び/又はUV−C(200〜280nm)を放射する標準的な中圧水銀灯(medium mercury lamp)が使用される。適切なランプは、例えば、IST Metz GmbH(ニュウチンゲン(Neurtingen)、ドイツ)から入手できる。好ましいランプは、160W/cm〜200W/cmでランプの長さのエネルギー入力によって特徴付けられる。
【0082】
反応を行うのに必要とされるエネルギーレベルは、特定のモノマー化学、必要とされるアドオンレベル、繊維の厚さ、ライン速度及び不織布とエネルギー源との距離に依存する。
【0083】
好ましい実施形態では、複数の繊維は、繊維の溶融、燃焼又は他の破損なしに、できるだけUV照射源から小さな距離で配置される。
【0084】
高用量のUV照射及び複数の繊維表面上に適用される比較的低い量の水溶液に起因して、複数の繊維をUV照射に2秒まで、より好ましくは1秒まで、さらにより好ましくは0.5秒までさらすと十分である。
【0085】
複数の繊維をUV照射にさらす工程は、好ましくは、不活性ガス雰囲気、例えば窒素下で行われ、反応媒体に酸素が接触するのを減らす。
【0086】
ラジカル重合開始剤は、好ましくは、光で活性化されると反応性ラジカルを形成可能なものである。形成されるラジカルは、その時モノマー及び/又は複数の繊維と反応し、複数の繊維の表面に化学的に固着したポリマーを生成する。いくつかのポリマーは、複数の繊維に対して結合せずに、水溶液中にも存在する。複数の繊維に結合したポリマー鎖は、直鎖又は分枝であることができるが、好ましくは互いに架橋していない。
【0087】
この方法は、水溶液中でラジカル重合開始剤を使用することを含むため、これらのラジカル重合開始剤分子の少なくともフラグメントは、一連の重合プロセスにおいて繊維表面に化学的にグラフト化されたポリマー鎖の少なくとも一部に存在する。開始剤分子は、分子内の共有結合を均一分解することによりフラグメント化されラジカルを生成し、これにより重合を開始することができる。開始剤分子のフラグメント化は、UV照射によって開始される。重合により、親水性モノマーと、繊維の表面に共重合された水溶液のラジカル重合開始剤分子のフラグメントとを少なくとも有する複数の繊維を生じる。しかし、水溶液におけるように、親水性モノマーの量は、ラジカル重合開始剤分子の量よりもかなり多く、ほんの少量のラジカル重合開始剤分子が、繊維表面に化学的にグラフト化されたポリマー鎖の一部となる。
【0088】
親水性ポリマーは、繊維の表面全体を覆う必要はないことが理解される。
【0089】
繊維表面及び/又は未反応の親水性モノマー及び/又はラジカル重合開始剤分子に化学的にグラフト化されていないそのようなポリマーは、化学的に結合することなく、複数の繊維の表面にまだ存在している可能性がある。それ故に、複数の繊維の洗浄は、繊維表面に化学的にグラフト化されないそれらの分子を除去するためにUV照射の後に任意に行われる。この方法のために準備される複数の繊維が不織布ではなく個々の繊維又はフィラメントである場合、これらの個々の繊維又はフィラメントは不織布へと形成されてもよい。この場合において、洗浄工程は、複数の繊維が不織布へと形成される前又は後に行うことができる。
【0090】
吸収性物品に特に適した親水性繊維を受け入れるために、複数の繊維上の0.3重量%〜10重量%のアドオンレベルが好ましい。より好ましくは、0.3重量%〜5.0重量%のアドオンレベルであり、さらにより好ましくは0.3重量%〜1.5重量%のアドオンレベルである。本明細書で使用する時、「アドオンレベル」という用語は、繊維の重量に対する、繊維表面に化学的にグラフト化されたポリマーの重量をいう。
【0091】
本発明の1つの実施形態では、この方法のために準備される複数の繊維は不織布ではなく、個々の繊維又はフィラメントである。この実施形態では、個々の繊維又はフィラメントは、プロセスの任意の点、例えば、複数の繊維を水溶液と接触させる前、又は複数の繊維をUV照射にさらした後で、さらなるプロセス工程において不織布へと形成されることができる。この場合において、以下に述べられる任意の洗浄工程も行われ、繊維からの不織布の作製は、この洗浄工程の前又は後に行うことができる。個々の繊維又はフィラメントを不織布へと形成するさらなるプロセス工程は、少なくとも第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維を含んでもよく、第1の複数の繊維は前記第2の複数の繊維とは異なる。この違いは、例えば、水溶液中の異なる親水性モノマー又は異なるラジカル重合開始剤に起因する可能性がある。この違いは、複数の繊維をUV照射に異なった状態で(例えば、異なる照射時間)さらすことにさらに起因する可能性がある。本発明の1つの実施形態では、第1の複数の繊維のみが、親水性モノマー分子及び繊維の表面に化学的にグラフト化されたラジカル重合開始剤分子の少なくとも一部を含むポリマーを有するように処理される。この実施形態では、異なる複数の繊維から形成される不織布は、処理された繊維及び未処理の繊維を含む。
【0092】
本発明の別の実施形態では、この方法のために準備される複数の繊維は不織布である。
【0093】
本発明の吸収性物品は、親水性モノマーと、不織布の繊維の表面に共重合されたラジカル重合開始剤分子の少なくともフラグメントとを有する不織布を含む。ポリマーにおいて、ラジカル重合開始剤分子の量は、モノマー分子の2重量%まで、より好ましくは1重量%までである。
【0094】
複数の繊維の少なくとも一部の表面に化学的にグラフト化された親水性モノマー分子は、請求項1の吸収性物品に含まれ、好ましくは、一般式RC=CRに従う少なくとも1つの不飽和二重結合を含有し、ここで、R及びRは好ましくは水素原子である。より好ましくは、モノマーは、酸又は塩基と反応して塩を形成可能な基を含む。本発明の好ましい実施形態では、親水性モノマーは、アクリル酸又はその塩である。適切なポリマーの例は、アクリル酸及びその誘導体(例えば、メタクリル酸、エチルアクリル酸)、スチレンスルホン酸及びその誘導体、酢酸ビニル、無水マレイン酸及びビニルピリジンである。本発明の好ましい実施形態では、アクリル酸又はその塩の1つはモノマーとして使用される。
【0095】
本発明によれば、不織布は、親水性モノマーと、繊維(処理された繊維)の表面に対して共重合したラジカル重合開始剤とを有する繊維のみを含んでもよい。
【0096】
別の実施形態では、不織布は、少なくとも第1の複数の繊維及び第2の複数の繊維を含み、これらの両方は、上述の方法に従って処理されてある。第1の複数の繊維は、第2の複数の繊維とは異なる。この違いは、異なるアドオンレベル、異なる親水性モノマー、又は異なるラジカル重合開始剤に起因する可能性がある。
【0097】
本発明のさらに別の実施形態では、不織布は、処理された繊維と、それらの表面に化学結合したポリマーを含まない未処理の繊維とのブレンドを含んでもよい。好ましくは処理された繊維の量は、不織布の繊維の総量の少なくとも10%である。より好ましくは処理された繊維の量は繊維の総量の少なくとも25%、さらにより好ましくは処理された繊維の量は少なくとも50%であり、最も好ましくは処理された繊維の量は少なくとも70%である。
【0098】
この親水性コーティングに起因して、不織布は複数の流れ出しにおいて液体がすばやく染み透る。コーティングが繊維に化学的に固着するため、不織布が水性溶媒にさらされる時、その大部分は洗い流されない。それ故に、不織布が水溶液にさらされる時に、大きな表面張力の低下は起こらない。染み透ること及び表面張力は、以下に詳細に記載されている試験を用いて決定される。処理された不織布から水性の洗い流しの表面張力は、少なくとも65mN/m、より好ましくは少なくとも68mN/m、さらにより好ましくは少なくとも71mN/mである。処理された不織布を液体が染み透る時間は、食塩水5mLを含む各流れ出しを用いて、液体の5度目の流れ出しにおいて5秒未満である。より好ましくは液体の染み透る時間は、液体の5度目の流れ出しにおいて4.5秒未満であり、さらにより好ましくは5度目の流れ出しにおいて4.0秒未満であり、最も好ましくは5度目の流れ出しにおいて3.5秒未満である。従って、親水性コーティングが使用中にそれほど洗い流されないため、液体が染み透ることは、何回かの流れ出しの後でさえ維持される。
【0099】
本発明の不織布を含む吸収性物品は、保存時に高い耐久性を有する。少なくとも10週間の保存の後、より好ましくは少なくとも20週間の保存の後、1度以上の流れ出しの後の染み透る時間は、10%を超えて、より好ましくは5%を超えて減少しない。
【0100】
本明細書中に引用され、プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Company)に譲渡される全ての特許文献は、本明細書中に参考として組み入れられる。
【0101】
(試験方法)
(表面張力の決定)
表面張力(単位:mN/m)は、以下の試験に従って決定される。
【0102】
(装置)
装置:クルスGmbH、ドイツ(Kruss GmbH,Germany)によって提供されるK10張力計又は等価物。容器の上昇スピードは4mm/分であるべきである。液体表面の高さは、プレート又はリングを用いる時自動的に感知されるべきである。この装置は、サンプルの位置を自動的に正しい高さに調整することができなければならない。試験の精度は±0.1mN/mであるべきである。
【0103】
(手順)
1.生理食塩水40mL(脱イオン水中に0.9重量%のNaCl)をきれいに洗ったビーカーに注ぐ。
2.白金リング又は白金プレートを用いて表面張力を試験する。表面張力は、20℃で71〜72mN/mであるべきである。
3.脱イオン水及びイソプロパノールでビーカーを洗浄し、それを数秒間ガスバーナーで熱して蒸発させる。室温に平衡化するまで待つ。
4.10枚の60×60mm試験不織布片をきれいに洗ったビーカーに入れる。不織布は、少なくとも0.09Pa(10g/m)の坪量を有するべきである。
5.生理食塩水40mL(脱イオン水中に0.9重量%のNaCl)を添加する。
6.界面活性剤を含まないきれいなプラスチック棒で10秒間攪拌する。
7.不織布を含む溶液を5分間放置する。
8.再び10秒間攪拌する。
9.界面活性剤を含まないきれいなプラスチック棒で不織布を溶媒から取り出す。
10.溶液を10分間放置する。
11.白金プレート又は白金リングを用いて表面張力を試験する。
【0104】
(染み透りの決定)
試験は、エダナ(Edana)法150.3−96(1996年2月)の液体の染み透る時間に基づいて行われる。エダナ(Edana)法と比較した主な変更として、以下に記載されている試験は、1度目の流れ出しだけではなく次に続く数回の流れ出しを測定する。
【0105】
(装置)
リスター染み透り装置(Lister Strike Through Equipment):
− 磁気バルブで固定した漏斗:排出速度は3,5(±0.25)秒で25mL。
− 染み透り用プレート:25mm厚のアクリルガラスで構築される。プレートの全重量は500gでなければならない。電極は非腐蝕性材料のものであるべきである。電極はプレートの底部で切り込まれた断面の溝(4.0mm×7.0mm)にセットされ、急速に固まるエポキシ樹脂で固定される。
− ベースプレート:約125mm×125mmの正方形のアクリルガラス
・漏斗を支えるためのリングスタンド
・0.01秒まで測定する電子タイマー
・50mL容量のビュレット
・コア濾紙アールストローム(Ahlstrom)グレード989又はその等価物(平均の染み透る時間1.7秒±0.3秒、寸法:10×10cm)
【0106】
(手順)
1.必要な数だけ12.5cm×12.5cmのサンプルを慎重に切断し、サンプルの端でのみサンプルに触る。
2.コア濾紙10層を取る。
3.ベースプレート上の濾紙10層の組に1個のサンプルを置く。このサンプルは、(吸収性物品において適用される場合)使用者の皮膚に面するように意図される不織布の側が最上部にくるように、濾紙の上に配置されるべきである。
4.試験片の中心の上に染み透り用プレートの中心を合わせて、プレートをその上に置く。
5.プレート上にビュレット及び漏斗を中心に置く。
6.電極がタイマーに接続していることを確実にする。タイマーのスイッチを入れ、時計を0にセットする。
7.ビュレットを食塩水溶液(脱イオン水中に0.9重量%のNaCl)で満たす。
8.漏斗の排出バルブを閉じたままで、ビュレットから漏斗に5.0mLの液体(=1回の流れ出し)を流す。
8.漏斗の磁気バルブを開け、5.0mLの液体を排出させる。液体の最初の流れが電気回路を完成させ、タイマーが開始する。液体がパッドに浸透し、染み透り用プレートの電極のレベルより下に落ちた時に停止する。
9.電子タイマーに示されている時間を記録する。
10.60秒間待ち、6番に戻って2度目、3度目及びそれに続く任意の流れ出しを行うが、それぞれの流れ出しは5mLの液体を含む。
11.報告:1度目、2度目及びそれに続く任意の流れ出しの時間(秒)
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】上側層を部分的に切り欠いた、使い捨ておむつの平面図。
【図2】図1に示される使い捨ておむつの断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に液体透過性のトップシートと、実質的に液体不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間の吸収性コアとを備えた吸収性物品であって、
吸収性物品は不織布を含み、
この不織布は、
a)複数の繊維を含み、
b)食塩水溶液で濡らされた場合、少なくとも65mN/mの表面張力を有し、
c)液体の5度目の流れ出しにおいて、液体が染み透る時間が5秒未満となるようになっており、
d)前記不織布に含まれる前記複数の繊維の少なくとも一部の表面に化学的にグラフト化された親水性モノマー分子およびラジカル重合開始剤分子の少なくとも一部を含むポリマーを含み、前記ラジカル重合開始剤分子の量が前記モノマー分子の2重量%まで、さらに好ましくは1重量%までとなるようになっている、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記不織布が、少なくとも第1の複数の繊維と第2の複数の繊維とを含み、前記第1の複数の繊維が前記第2の複数の繊維とは異なる、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記第1の複数の繊維のみがそれらの表面にグラフト化された親水性ポリマーを有する、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収性物品を少なくとも10週間保存した後、前記不織布の1度目の流れ出し及び5度目の流れ出しの後の染み透る時間が5%を超えて減少しない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記重合した親水性モノマーが、少なくとも1つの不飽和二重結合を含む分子を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記重合した親水性モノマーが、塩を形成する酸又は塩基と反応可能な基を含む分子を含む、請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記重合した親水性モノマーがアクリル酸又はその塩を含む、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記ポリマーが、少なくとも前記第1の複数の繊維上に0.3重量%〜10重量%付加する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ポリマーが、前記第1及び第2の複数の繊維に、0.3重量%〜10重量%の範囲の重量%で添加される、請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記トップシートが前記不織布を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収性コアが、前記不織布を含むコアラップ材料を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
吸収性物品を製造するのに適した複数の繊維を処理するための方法であって、
a)複数の繊維を準備する工程と、
b)親水性モノマー及びラジカル重合開始剤を含む水溶液を準備する工程と、
c)前記複数の繊維を前記水溶液と接触させる工程と、
d)2秒までの時間、前記複数の繊維をUV照射にさらす工程と、
を備えた方法。
【請求項13】
前記複数の繊維が不織布である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の繊維が個々のフィラメントであり、
前記方法が、前記複数の繊維を不織布内に形成するさらなる工程を備えた、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、少なくとも第1の複数の繊維と第2の複数の繊維とを使用し、前記第1の複数の繊維が前記第2の複数の繊維とは化学的に異なることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の複数の繊維が、請求項11に記載の方法に従って処理されていない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記モノマーのホモ重合を減らすための薬剤をさらに含み、前記薬剤は前記水溶液に添加される、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記複数の繊維がUV照射にさらされた後に、洗浄工程をさらに備えた、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項12〜18のいずれか一項に記載された方法を備えた吸収性物品を製造するための方法。
【請求項20】
請求項11〜18のいずれか一項に記載された方法に従って製造される吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−519316(P2006−519316A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541898(P2004−541898)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/030825
【国際公開番号】WO2004/031471
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】