説明

角ブロックの表面研削装置

【課題】角ブロックの表面研削処理時に加わる衝撃やストレスを減少させ、生産性を向上させる。
【解決手段】多角柱のブロック状ワーク14を研削加工するものにおいて、ワーク14を支持して所定の軸20を中心に回転駆動させる。研削刃24は、回転軸をワークの所定の軸20とほぼ直交する方向に向けて、ワークのエッジ22に対して側面を接触させて、当該エッジを研削加工する。研削刃24の側面がエッジ22に接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、ワーク14の所定の軸20の方向とが一致する部分を生じさせるように研削刃24の側面とエッジ22の研削面の関係を位置決めする。その後研削刃24をワーク14の所定の軸20の方向に相対移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池のセルを製造するための多結晶インゴットを角ブロックに切断した後、表面を要求される平坦度に研削する角ブロックの表面研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池のセルは、シリコンのインゴットをスライスして製造される。円柱状の単結晶インゴットを製造してから、横断面が正方形の角ブロックに研削加工して、表面研削処理後にスライスする(特許文献1参照)。また、多結晶インゴットを角ブロックに切断し、表面研削処理後にスライスする。前者は効率の良い太陽電池に使用され、後者は低コストの太陽電池に使用される。いずれも、ほぼ正方形の薄板状にスライスして太陽電池セルを得る。インゴットは高価なため、電池の性能を保持できる限り、セルの厚みが薄ければ薄いほど生産コストを下げることができる。しかし、セルの厚みを薄くするとスライス加工時に割れやすい。角ブロックを表面研削して欠陥の無いものをスライスすることで、歩留まりを高めるようにしている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−216672号公報
【特許文献1】特開平10−58332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
角ブロックの表面研削処理時に衝撃やストレスが加わると表面に微小なクラックが発生する。このクラックはスライス加工時やスライス加工後のセルの割れの原因になる。従って、角ブロックの表面研削処理のための設備に対してより高い技術と精度が要求されている。しかしながら、太陽電池の普及には、より低コストで生産性を高めることも要求されており、いずれの要求も満たす生産設備の開発が求められている。
【0005】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、角ブロックの表面研削処理時に加わる衝撃やストレスを十分に減少させ、さらに生産性を向上させる角ブロックの表面研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
多角柱のブロック状ワークを研削加工するものにおいて、前記ワークを支持して所定の軸を中心に回転駆動する回転支持装置と、回転軸を前記ワークの所定の軸とほぼ直交する方向に向け、前記所定の軸に平行なワークのエッジに対して側面を接触させて、当該エッジを研削加工する回転円盤状の研削刃と、前記研削刃の側面が前記エッジに接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、前記ワークの所定の軸の方向とが一致する部分を生じさせるように前記研削刃の側面と前記エッジの研削面の関係を位置決めする研削刃位置決め装置と、前記研削刃を前記ワークの所定の軸の方向に相対移動させるトラバーサとを備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の角ブロックの表面研削装置において、前記研削刃位置決め装置は、前記研削刃の側面を、前記ワークのエッジに円弧状の軌跡を描くように接触させ、前記トラバーサは、前記研削刃をその円弧の接線方向に相対移動するように制御することを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0008】
〈構成3〉
構成1または2に記載の角ブロックの表面研削装置において、前記回転支持装置は、前記エッジの研削中に、前記ワークを前記所定の軸を中心に回転させて、前記研削刃は前記エッジ表面が前記所定の軸を中心とする円弧を形成するように研削することを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0009】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、前記ワークの側面を研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記研削刃の回転軸と前記ワークの所定の軸とが同一平面上に位置するようにし、前記ワークの側面を前記所定の軸に垂直な方向に前記ワークの側面を横切るように、前記研削刃の側面が接触させる位置に前記研削刃を位置決めすることを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0010】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、前記研削刃位置決め装置は、各回転軸をほぼ同一直線上に配置した一対の研削刃をその側面が互いに対向するように配置し、回転支持装置は、前記一対の研削刃の間に、前記所定の軸を前記直線と直角に交わる方向に向けてワークを支持し、前記ワークのエッジを研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記一対の研削刃の回転軸を前記ワークの所定の軸から前記回転刃の半径とほぼ等しい距離だけ離して、前記研削刃の側面が前記エッジに接触するように位置決めし、前記ワークの側面を研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記一対の研削刃の回転軸と前記ワークの所定の軸とが同一平面上に位置するようにして、前記研削刃の側面が前記ワークの側面に接触するように位置決めすることを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0011】
〈構成6〉
構成1乃至5のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、前記研削刃を回転駆動する駆動モータと、この駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、前記負荷トルクが予め指定された範囲を越えたときは、前記トラバーサによる相対移動速度を遅くし、前記負荷トルクが予め指定された範囲を下回るときは、前記トラバーサによる相対移動速度を速くするように制御する研削制御装置を備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0012】
〈構成7〉
構成5または6に記載の角ブロックの表面研削装置において、互いに対向するように配置された前記一対の研削刃を回転駆動する一対の駆動モータと、これらの駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、一対の駆動モータの負荷トルクの差が予め指定された閾値を越えたときは、前記研削刃位置決め装置は、負荷トルクの低いほうの研削刃を前記ワークに相対的に接近させ、もしくは、負荷トルクの高いほうの研削刃を前記ワークから相対的に遠ざけるように、研削刃をその回転軸の方向に移動する位置制御を行うことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【0013】
〈構成8〉
構成1乃至7のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、前記研削刃を回転駆動する駆動モータと、この駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、前記負荷トルクが予め指定された閾値以下のときは、研削を停止するとともに、前記ワークの研削方向の誤りを通知する警報信号を出力する研削制御装置を備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【発明の効果】
【0014】
〈構成1の効果〉
研削刃の側面がエッジに接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、ワークの所定の軸の方向とが一致する部分を生じさせるようにすると、エッジの部分に加える衝撃を最小にして、回転円盤状の研削刃で研削ができる。従って、研削面のマイクロクラックを減少させ、研削速度も向上できる。
〈構成2の効果〉
ワークのエッジを、接線方向に移動する円弧状に研削すると、研削刃がエッジの部分に加える衝撃を小さくできる。
〈構成3の効果〉
いわゆるR面取り研削をすることができる。
〈構成4の効果〉
同じ研削刃を、エッジの研削だけでなく側面の研削にも使用できる。
〈構成6の効果〉
研削面の粗さによって、研削刃を回転駆動する駆動モータの負荷トルクが変動する。トラバーサによる相対移動速度を調整すれば、エッジも面も無理な力を加えずに均一に研削できる。
〈構成7の効果〉
ワークを挟んで対向する研削刃の負荷トルクを等しく一定にするように制御すると、ワークの両面の研削深さを均等にすることができる。
〈構成8の効果〉
ワークの研削方向に誤りがあると、通常より負荷トルクが大きく下回る。これを検出して警報を出力し、不良製品の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は実施例1の角ブロックの表面研削装置主要部を示す斜視図である。
【図2】(a)は円柱状の単結晶インゴットの例を示す斜視図、(b)は多結晶インゴットの例を示す斜視図である。
【図3】従来の表面研削装置の主要部斜視図である。
【図4】本発明の研削刃による研削の効果を示すための角ブロックと切断刃の斜視図である。
【図5】(a)は本発明の研削刃による研削の軌跡を示し、(b)は従来の研削刃による研削の軌跡を示す角ブロックの拡大側面図である。
【図6】研削処理を実行する装置の全体図である。
【図7】駆動モータを支持する位置決め機構の側面図である。
【図8】本発明の装置の制御動作例を示す説明図である。
【図9】(a)は単結晶インゴットの端面図、(b)と(c)はそれぞれエッジ研削動作を示す角ブロックの端面図である。
【図10】角ブロックの研削深さ制御方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は実施例1の角ブロックの表面研削装置主要部を示す斜視図である。
ここでは、正四角柱のブロック状ワーク14を研削加工する例を示す。図のように、ワーク14は、端面に垂直で4本のエッジ22に平行な所定の軸20を中心に、回転駆動されるように支持されている。ワーク14が正多角柱の場合には、所定の軸20とは柱の中心の対称軸のことをいう。
【0018】
このワーク14のエッジ22とワークの側面23とを要求される平坦度に研削する。研削刃24は、回転軸をワーク14の所定の軸20とほぼ直交する方向に向けて支持されている。研削刃24の側面26は砥石により構成されている。この図では、研削刃24は、ワーク14のエッジ22に対して側面26を接触させており、この状態で回転して、エッジ22を研削加工する。
【0019】
この実施例では、研削刃24の側面26がエッジ22に接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、ワーク14の所定の軸20の方向とが一致する部分を生じさせるように、研削刃24の側面26とエッジ22の研削面の関係を位置決めする。この部分は図4で詳細に説明する。研削刃24は、回転しながらワーク14の所定の軸20の方向に相対移動される。この装置の場合には、ワーク14を図の矢印50と反対の方向に移動させることにより、相対的に研削刃24を図の矢印50方向にトラバースさせている。
【0020】
なお、エッジ22の研削のことを面取りと総称するが、半導体インゴットの面取りには、R面取り研削とC面取り研削の2種類の方法がある。図1の(a)はR面取り研削方法を示し、図1の(b)はC面取り研削方法を示す。図2を用いてその違いを説明する。
【0021】
図2は、表面研削処理の対象となる角ブロックの説明図で、図2(a)は円柱状の単結晶インゴットの例を示す斜視図である。また、図2(b)は多結晶インゴットの例を示す斜視図である。
円柱状の単結晶インゴット12は、曲面の一部を残して、図の破線のように周囲を切り落とし、ほぼ正四角柱のワークを得る。破線の部分はバンドソー等で切断するので、鋸刃の切断面の粗さを改善するように、研削をする必要がある。残された曲面の一部が図1で説明したエッジ22に相当する。
【0022】
単結晶インゴット12から切り出したワーク14のエッジ22は図2(a)の一点鎖線の方向の縦断面からみたとき、長手方向にかなり大きく波打っている。従って数ミリメートル以上削り落とすことにより平坦化する。また、少しでも材料の無駄を減らすために、図1(a)に示すように、エッジ22を所定の軸20に垂直な断面からみたとき、曲面になるように研削する。即ち、研削刃24は、エッジ22の表面が所定の軸20を中心とする円弧を形成するように研削する。これを、R面取り研削と呼んでいる。このR面取り研削を行うために、図1(a)に示すように、ワーク14を所定の軸20を中心に回転させながら、研削刃の側面26をエッジ22に接触させて研削をする。
【0023】
一方、多結晶インゴットは型の中で溶融して固めて製造される。これは図2(b)の破線に示すようにほぼ正四角柱に切断してワークを得る。この場合には、図1の(b)に示すように、エッジ22を、所定の軸20に垂直な断面からみたときに直線的に研削する。直角のコーナーを45度傾斜した面で切り落とす。これをC面取り研削と呼んでいる。いずれの場合にも、エッジ22が面取りされた図2(c)に示すようなワークを得るのであるが、エッジ22の部分に違いがあり、その加工方法にも相異が生じる。図1(b)に示すように、C面取り研削では、ワーク14を回転させず、研削刃の側面26をエッジ22に接触させて、ワーク14を所定の軸20の方向に相対移動させる。
【0024】
図1に示したいずれの場合にも、研削刃24の側面26がエッジ22に接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、ワーク14の所定の軸20の方向とが一致する部分を生じさせるようにすると、研削中にエッジ22の部分に加える衝撃を最小にして、回転円盤状の研削刃24を用いた研削ができる。これにより、研削面のマイクロクラックを減少させ、研削速度も向上できる。
【0025】
図3は従来の表面研削装置の主要部斜視図である。
この図を用いて、実施例1の技術と従来技術との比較を行う。従来技術でも、始めに、図1の場合と同様に、ワーク14を所定の軸20を中心に回転できるように支持する。この状態で、ワーク14のエッジ22を研削する。このとき、研削刃24の回転軸51はワーク14の所定の軸20とほぼ直交する方向に向けられている。そして、研削刃24の側面26をエッジ22に接触させて研削加工をする。全てのエッジ22の研削を終了すると、その後図3(c)に示すように、ワーク14の側面23の研削を実行する。研削刃24はその回転軸51の方向に移動可能に支持され、ワーク14は研削される面を研削刃24の方向に向けるように、順次回転される。
【0026】
図4と図5は、本発明の研削刃24による研削の効果を示す説明図である。
図4の(a)は本発明の研削刃による研削の軌跡を示し、図5(a)はその研削面の拡大図である。図4の(b)は従来の研削刃による研削の軌跡を示し、図5(b)はその研削面の拡大図である。
本発明では、図4(a)と図5(a)に示すように、研削刃24の側面を、ワーク14のエッジ22に円弧状の軌跡32を描くように接触させる。研削刃24は、その円弧の接線34方向に相対移動される。
【0027】
一方、従来の装置は、図4(b)に示すように、研削刃24による研削の軌跡は、エッジ22の方向に対してほぼ直交する。研削後にエッジ22の部分に生じたマイクロクラックの程度を比較してみた。その結果から、本発明の方法のほうが、研削刃24がエッジ22の部分に加える衝撃を十分に小さくできることが分かった。即ち、エッジ22の方向に直角に応力が加わるよりも、エッジ22の方向に平行に応力が加わるほうがエッジ22の、エッジ22と側面23の境界部分の欠けを大幅に減少させることができた。しかも、図4(a)に示すように、本発明の場合には、エッジ22に対してその長手方向に向けてカンナを当てるように研削をするので、研削刃24とエッジ22とが接触する面積が従来に比べて広くなり、応力も緩和されることからより検索速度を速めることもできた。
【実施例2】
【0028】
図6は、上記のように研削処理を実行する装置の全体図である。
図のように、テーブル55の上に回転支持装置16が配置されており、この回転支持装置16がワーク14を支持する。トラバーサ30は、テーブル55を移動させることにより、研削刃24をワーク14の所定の軸の方向に相対移動させる。各回転軸をほぼ同一直線上に配置した一対の研削刃24は、その側面が互いに対向するように配置されて、それぞれ駆動モータ36により駆動される。回転支持装置16は、一対の研削刃24の間に、所定の軸を研削刃24の回転軸と直角に交わる方向に向けてワーク12を支持している。
【0029】
研削制御装置40は、装置各部を制御するととともに、研削刃24の位置決めをする装置として機能する。研削制御装置40は、最初に駆動モータ36の位置決めをし、かつ、回転支持装置16を起動してワーク14のエッジ22の位置決めをする。その後、駆動モータ36を起動して研削刃24によるエッジの研削を開始する。このとき、回転支持装置16やトラバーサ30の動作を研削処理に同期させる。また、駆動モータ36の研削負荷を測定するために、トルク検出器38が設けられている。研削制御装置40は、操作バネル46の操作によりその動作条件を設定される。
【0030】
操作バネル46には、インゴットデータと、面取りの種別と、運転速度と、動作モニタデータが表示される。また、操作バネル46には、管理者が運転速度を装置を増減できる速度制御ボタンや、各種の条件を数値で入力できる数字ボタンが表示されている。これらは、いわゆるタッチパネル式の制御ボタン構造とされている。
【0031】
インゴットデータには、インゴットが単結晶か多結晶かの区別やインゴットの寸法などが表示される。面取りの種別には、R面取りかC面取りかという区別が表示される。これは、インゴットの区別を示すデータとの関係で自動的に設定されて表示される。運転速度は、駆動モータ36の回転速度、回転支持装置16の回転速度、トラバーサ30のトラバース速度等を示すデータである。いずれの条件も、タッチバネル式のボタンにより、管理者が最適値に調整できる。
【0032】
図7は、駆動モータ36を支持する位置決め機構の側面図である。
この位置決め機構が、ワーク14を挟んで両側に一対配置される。そして、研削刃24は、ワーク12の側面を研削するときには図の実線の位置にあり、ワーク12のエッジを研削するときには図の破線の位置にある。従来は、駆動モータ36の回転軸の方向にのみ研削刃24の位置を変更できたのであるが、このように、駆動モータ36を上下方向に移動できるよう、油圧装置57を新たに追加した。
【実施例3】
【0033】
図8は、本発明の装置の制御動作例を示す説明図である。
図には、駆動モータ36と研削刃24の側面とワーク14の端面のみを示した。図6の装置は、図8(a)に示すように、ワーク14の両側に配置した一対の研削刃24により、ワーク14の対角にある一対のエッジ22を同時に研削する。即ち、ワーク14のエッジを研削する場合には、研削刃位置決め装置は、一対の研削刃24の回転軸をワーク14の所定の軸から回転刃の半径とほぼ等しい距離だけ離して、研削刃24の側面がエッジに接触するように位置決めする。左右対称に研削刃24を配置してほぼ等しい圧力を加えながら同時に同方向に研削刃24を回転駆動すると、ワーク14の一対のエッジにはほぼ等しい応力がバランス良く加わる。これにより、ワーク14を支持する装置にもワーク14を偏心させるような力が加わらず、均等な研削ができる。
【0034】
また、一対のエッジの研削が終了すると、図8(b)に示すように、ワーク14を90度回転させて、残りの一対の研削を実行する。全てのエッジの研削が終了すると、今度は図8(c)に示すように、ワーク14のワークの側面23を研削刃24に対向させる。即ち、ワーク14の側面を研削する場合には、研削刃位置決め装置は、一対の研削刃24の回転軸とワーク14の所定の軸とが同一平面上に位置するようにして、研削刃24の側面がワーク14の側面23に接触するように位置決めする。そして、図8(d)に示すようにして、一対のワークの側面23の研削処理を実行する。同じことを残りのワークの側面23ついて実行して全ての研削処理を終了する。
【0035】
なお、溶融シリコンを垂直に引き上げながら製造される単結晶インゴットは、図2(a)に示すように端面は円形であるが、その軸方向にみると、直径が大きく変動して図2(a)の円Aのような側面をしている。単結晶インゴット12をその軸を通る面で2分すると、断面形状は左右対称になる。従って、図8に示したように左右一対のエッジの研削を同時にすると、研削刃24の負荷トルクはほぼ左右同時に増減する。
【実施例4】
【0036】
一般に荒れた面を研削するときには、ワークの側面23に加わる負荷トルクは大きい。比較的滑らかな面を研削するときは負荷トルクは小さい。図2(a)の円Aの例で言えば、山の高い盛り上がった部分、即ち、半径が大きい部分を研削するときは負荷トルクが大きく、半径が小さい部分を研削するときは負荷トルクが小さくなる。そして、半径の大きい部分はより多く研削をする必要がある。
【0037】
そこで、図6に示したようにトルク検出器38を設けて、負荷トルクを測定し、研削制御装置40は、負荷トルクが予め指定された範囲を越えたときは、トラバーサ30による相対移動速度を遅くし、負荷トルクが予め指定された範囲を下回るときは、トラバーサ30による相対移動速度を速くするように制御する。これにより、エッジに無理な力を加えずに均一に研削処理ができる。なお、様々な要因によって、ワーク14の側面23にも凹凸があったり、平坦度にむらがあったりする。
【0038】
従って、ワークの側面23を研削するときも全く同様に、トラバーサ30による相対移動速度を制御するとよい。これにより、ワークの側面23にも無理な力を加えずに均一に研削処理ができる。しかも、図4(a)に示したエッジ22に円弧状の軌跡を描くような研削方法と同様に、研削刃24に強い急激な負荷が加わらないので、研削刃24の長寿命化を図ることもできる。
【実施例5】
【0039】
図9は図6の装置の新たな機能を示し、(a)は単結晶インゴットの端面図、(b)と(c)はそれぞれエッジ研削動作を示す角ブロックの端面図である。
単結晶シリコンインゴット12は、立方体の結晶格子構造を持ち、格子に平行な方向に割れやすいという特徴がある。従って、最もストレスの加わるエッジの部分の研削時に格子に平行な方向の力が加わらないようにしている。
【0040】
具体的には、図9(b)に示す格子縞の方向に結晶格子が向くように図9(a)に示した一点鎖線の切断面を選択する。従って、インゴット12には予め図9(a)の矢印60の位置に目印を付けておく。ところが、この目印が消えていたり、作業ミス等により、図9(c)に示すような方向に結晶格子が向いていることがある。図9(c)のような状態で切削加工をすると、エッジの部分に割れが生じやすく製品化できない。従って、このように切断された角ブロックは不良品として除去しなければならない。
【0041】
ここで、図6に示した装置のトルク検出器38が有効に機能する。図9(b)の状態よりも、図9(c)の状態のほうが、研削時の負荷トルクが低い。そこで、トルク検出器38の出力を監視し、負荷トルクが閾値以下のときは研削を中止して、結晶格子の方向を確認する。結晶格子を肉眼でただちに確認することはできないが、既知の様々な方法で確認をして、該当する角ブロックを不良品と判定すればよい。
【実施例6】
【0042】
図10は角ブロックの研削深さ制御方法を示す説明図である。
互いに対向するように配置された一対の研削刃24を回転駆動して、ワーク14を両側から挟み付けるように研削をする場合に、研削負荷にバランスがとれていれば、既に実施例2で説明したような効果が得られる。ところが、例えば、図10(a)に示すように、一対の研削刃24とワーク14のの研削面との間の距離が不均衡だと、ワーク14の一方の面を削りすぎたり他方の面に研削不足が生じたりする。
【0043】
ここで、図6に示した装置のトルク検出器38が有効に機能する。即ち、一対の駆動モータ36の負荷トルクの差が予め指定された閾値を越えたときは、研削刃位置決め装置が、研削刃24をその回転軸の方向(矢印62方向)に移動させる。具体的には、負荷トルクの低いほうの研削刃24をワークに相対的に接近させる。あるいは、負荷トルクの高いほうの研削刃をワークから相対的に遠ざける。このように、ワークを挟んで対向する研削刃の負荷トルクを等しく一定にするように制御すると、ワークの両面の研削深さを均等にすることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 角ブロックの表面研削装置
12 インゴット
14 ワーク
16 回転支持装置
20 所定の軸
22 エッジ
23 ワークの側面
24 研削刃
26 研削刃の側面
28 研削刃位置決め装置
30 トラバーサ
32 円弧状の軌跡
34 円弧の接線
36 駆動モータ
38 トルク検出器
40 研削制御装置
46 操作バネル
50 矢印
51 回転軸
55 テーブル
57 油圧装置
60 矢印
62 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角柱のブロック状ワークを研削加工するものにおいて、
前記ワークを支持して所定の軸を中心に回転駆動する回転支持装置と、
回転軸を前記ワークの所定の軸とほぼ直交する方向に向け、前記所定の軸に平行なワークのエッジに対して側面を接触させて、当該エッジを研削加工する回転円盤状の研削刃と、
前記研削刃の側面が前記エッジに接触して研削するときに生じる研削応力の方向と、前記ワークの所定の軸の方向とが一致する部分を生じさせるように前記研削刃の側面と前記エッジの研削面の関係を位置決めする研削刃位置決め装置と、
前記研削刃を前記ワークの所定の軸の方向に相対移動させるトラバーサとを備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項2】
請求項1に記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記研削刃位置決め装置は、前記研削刃の側面を、前記ワークのエッジに円弧状の軌跡を描くように接触させ、前記トラバーサは、前記研削刃をその円弧の接線方向に相対移動するように制御することを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記回転支持装置は、前記エッジの研削中に、前記ワークを前記所定の軸を中心に回転させて、前記研削刃は前記エッジ表面が前記所定の軸を中心とする円弧を形成するように研削することを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記ワークの側面を研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記研削刃の回転軸と前記ワークの所定の軸とが同一平面上に位置するようにし、前記ワークの側面を前記所定の軸に垂直な方向に前記ワークの側面を横切るように、前記研削刃の側面が接触させる位置に前記研削刃を位置決めすることを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記研削刃位置決め装置は、各回転軸をほぼ同一直線上に配置した一対の研削刃をその側面が互いに対向するように配置し、回転支持装置は、前記一対の研削刃の間に、前記所定の軸を前記直線と直角に交わる方向に向けてワークを支持し、
前記ワークのエッジを研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記一対の研削刃の回転軸を前記ワークの所定の軸から前記回転刃の半径とほぼ等しい距離だけ離して、前記研削刃の側面が前記エッジに接触するように位置決めし、
前記ワークの側面を研削する場合には、前記研削刃位置決め装置は、前記一対の研削刃の回転軸と前記ワークの所定の軸とが同一平面上に位置するようにして、前記研削刃の側面が前記ワークの側面に接触するように位置決めすることを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記研削刃を回転駆動する駆動モータと、この駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、前記負荷トルクが予め指定された範囲を越えたときは、前記トラバーサによる相対移動速度を遅くし、前記負荷トルクが予め指定された範囲を下回るときは、前記トラバーサによる相対移動速度を速くするように制御する研削制御装置を備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の角ブロックの表面研削装置において、
互いに対向するように配置された前記一対の研削刃を回転駆動する一対の駆動モータと、これらの駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、一対の駆動モータの負荷トルクの差が予め指定された閾値を越えたときは、
前記研削刃位置決め装置は、負荷トルクの低いほうの研削刃を前記ワークに相対的に接近させ、もしくは、負荷トルクの高いほうの研削刃を前記ワークから相対的に遠ざけるように、研削刃をその回転軸の方向に移動する位置制御を行うことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の角ブロックの表面研削装置において、
前記研削刃を回転駆動する駆動モータと、この駆動モータの負荷トルクを検出するトルク検出器と、前記負荷トルクが予め指定された閾値以下のときは、研削を停止するとともに、前記ワークの研削方向の誤りを通知する警報信号を出力する研削制御装置を備えたことを特徴とする角ブロックの表面研削装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−125986(P2011−125986A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288934(P2009−288934)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(509240941)齊藤精機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】