説明

角度検出装置及び方法

【課題】測距センサの精度に関係なくスクリーンの傾斜角度を良好な精度で求めることが可能な角度検出装置及び方法を提供する。
【解決手段】画像を投射する投影装置とスクリーン間の距離を測定する1つの測距センサを備え、該測距センサを回転させて測距センサの検出方向を複数の方向へ指向させる。そして、測距センサから検出方向毎に得られる投影装置とスクリーン間の距離データ、及び検出方向間の角度から、投影装置の投射光軸と垂直な方向に対するスクリーンの傾斜角度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投影装置の投射光軸と垂直な方向に対するスクリーンの傾斜角度を検出するための角度検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクタ等の投影装置は、液晶関連技術の急速な進展に伴う小型化・高性能化により、画像投射を目的とする用途も拡大し、家庭内でのディスプレイ型のテレビジョン受像機に代わる大型の表示装置としても注目されている。
【0003】
しかしながら、投影装置はディスプレイ型のテレビジョン受像機と異なり、表示面がスクリーンや壁であるため、投影装置の投射光軸と投射面との相対関係によって投影画像に歪みが生じる問題がある。
【0004】
そのため、投影装置の投射光軸と垂直な方向に対するスクリーン(投射面)の傾斜角度を検出するための様々な方法が検討されている。
【0005】
例えば特許文献1には、第1の色の光のみを透過する第1の撮像レンズ及び第2の色の光のみを透過する第2の撮像レンズを投射レンズに並んで水平方向に配置し、スクリーン上に投射された輝点から第1の撮像レンズを透過して入射した第1の色の反射光の位置と同じ輝点から第2の撮像レンズを透過して入射した第2の色の反射光の位置とから該輝点までの距離を算出し、スクリーン上の所定の位置に投射された2つの輝点までの距離の差から投射面の傾斜角度を算出する構成が記載されている。
【特許文献1】特開2005−250159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に記載された構成では、特定色の光のみを透過する第1の撮像レンズ及び第2の撮像レンズ、並びに第1の色の入射光の位置及び第2の色の入射光の位置を検出する光学的位置検出素子が必要であるため、投影装置のコストを低減することが困難であるという問題がある。
【0007】
そこで、比較的安価な測距センサ(例えば赤外線測距センサや超音波測距センサ)を用いて、投影装置とスクリーン間の距離を測定することによりスクリーンの傾斜角度を求める方法が検討されている。その場合、一般的には図5に示すように投影装置(プロジェクタ)に複数の測距センサを等間隔で配置し、各測距センサから得られるプロジェクタとスクリーン間の距離の差からスクリーンの傾斜角度を求める構成が考えられる。
【0008】
しかしながら、通常、スクリーンの傾斜角度を求めるには各測距センサの測定誤差を数mm以内にする必要があるが、赤外線測距センサや超音波測距センサ等ではそこまでの絶対精度を得ることができない。また、複数の測距センサを用いる場合、各測距センサの特性バラツキを補正する必要があり、各測距センサの配置間隔にも高い精度が要求される。そのため、赤外線測距センサや超音波測距センサ等のように比較的精度が低い測距センサを用いてスクリーンの傾斜角度を良好な精度で求めるのは困難であった。
【0009】
本発明は上記したような従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、測距センサの精度に関係なくスクリーンの傾斜角度を良好な精度で求めることが可能な角度検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の角度検出装置は、画像を投射する投影装置とスクリーン間の距離を測定する1つの測距センサと、
前記測距センサを回転させる回転装置と、
前記回転装置により前記測距センサの検出方向を複数の方向へ指向させ、前記測距センサから前記検出方向毎に得られる前記投影装置と前記スクリーン間の距離データ、及び前記検出方向間の角度から、前記投影装置の投射光軸と垂直な方向に対する前記スクリーンの傾斜角度を算出する制御回路と、
を有する。
【0011】
一方、本発明の角度検出方法は、画像を投射する投影装置とスクリーン間の距離を測定する1つの測距センサを回転させて前記測距センサの検出方向を複数の方向へ指向させ、
前記測距センサから前記検出方向毎に得られる前記投影装置と前記スクリーン間の距離データ、及び前記検出方向間の角度から、前記投影装置の投射光軸と垂直な方向に対する前記スクリーンの傾斜角度を算出する方法である。
【0012】
上記のような角度検出装置及び方法では、利用する測距センサが1つであるため、複数の測距センサを用いてスクリーンの傾斜角度を求める構成に比べて、各測距センサの特性バラツキを補正する必要や各測距センサを精度よく設置する必要がない。
【0013】
また、スクリーンの傾斜角度は、投影装置とスクリーンが正対しているときに得られる距離データと、投影装置とスクリーンが正対していないときに得られる距離データとの差で表すことが可能であり、本発明では1つの測距センサを用いてこれらの距離データを得ているため、算出するスクリーンの傾斜角度が測距センサの絶対精度に影響されることがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、利用する測距センサが1つであるため、複数の測距センサを用いてスクリーンの傾斜角度を求める構成に比べて、各測距センサの特性バラツキを補正する必要や各測距センサを精度よく設置する必要がない。
【0015】
また、測距センサに高い精度を必要としないため、測距センサの精度に影響されることなく、スクリーンの傾斜角度を良好な精度で求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明の角度検出装置の一構成例を示すブロック図である。
【0018】
なお、以下では、投影装置としてプロジェクタを例に説明するが、本発明はプロジェクタに限らず、画像を投射する映写機や投影装置を含む各種の装置(例えば投影装置付の顕微鏡)にも適用可能である。
【0019】
図1に示すように、本発明の角度検出装置は、スクリーン1とプロジェクタ2間の距離を測定する測距センサ3と、測距センサ3を回転させる回転装置4と、測距センサ3で測定されたスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データ及び測距センサ3の回転角度からプロジェクタ2の投射光軸と垂直な方向に対するスクリーン1の傾斜角度を算出する制御回路5とを有する構成である。測距センサ3、回転装置4及び制御回路5は、例えばプロジェクタ2に内蔵される。
【0020】
回転装置4は、不図示のモータを含む回転機構及び角度検出器を備え、制御装置5の指示により測距センサ3を回転させ、測距センサ3の検出方向を、例えばプロジェクタ2の投射光軸を基準に所定の角度で指向させる。
【0021】
制御回路5は、CPUと、CPUの処理で必要な情報が格納される記憶装置と、CPUに本発明の処理を実行させるためのプログラムが記録された記録媒体とを備え、記録媒体に格納されたプログラムにしたがってCPUにより回転装置4の動作を制御すると共に測距センサ3で測定された距離データ及び測距センサ3の回転角度からスクリーン1の傾斜角度を算出する。記録媒体13は、磁気ディスク、半導体メモリ、光ディスクあるいはその他の記録媒体であってもよい。なお、制御回路5は、上述したCPUを備えた構成に限らず、例えば記憶素子と多数の論理ゲートから成るLSI(Large Scale Integration)等でも実現可能である。
【0022】
本発明の角度検出装置は、赤外線測距センサや超音波測距センサ等の測距センサ3を1つ備え、制御装置5の指示にしたがって回転装置4により、例えば赤外線の発光点と受光点の中心を軸に測距センサ3を回転させ、測距センサ3の検出方向を複数の方向へ指向させる。そして、制御装置5は、測距センサ3から検出方向毎に得られるスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データをそれぞれ保存し、測距センサ3の回転角度(測距センサ3の検出方向間の角度)と距離データとを用いて、プロジェクタ2の投射光軸と垂直な方向に対するスクリーン1の傾斜角度を算出する。
【0023】
次に本発明のスクリーン1の傾斜角度の測定原理について図2及び図3を用いて説明する。
【0024】
図2はスクリーンとプロジェクタが正対している場合の距離データの関係を示す模式図であり、図3はスクリーンとプロジェクタが正対していない場合の距離データの関係を示す模式図である。
【0025】
以下では、測距センサ3の検出方向をプロジェクタ2の投射光軸へ指向させたときに得られる距離データと、測距センサ3の検出方向を投射光軸に対して角度αだけ回転させたときに得られる距離データとを用いてスクリーン1の傾斜角度を算出する例を説明する。
【0026】
スクリーン1の傾斜角度を算出する場合、測距センサ3を必ずしもプロジェクタ2の投射光軸へ指向させる必要はなく、測距センサ3で測定する2つの検出方向間の角度とそれぞれの距離データとを得ることができれば、測距センサ3はどのような方向へ指向させてもよい。
【0027】
図2に示すようにスクリーン1とプロジェクタ2が正対しているとき、測距センサ3をプロジェクタ2の投射光軸に指向させたときに得られるスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データをCとし、測距センサ3を投射光軸に対して角度αだけ回転させたときに得られるスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データをAとする。また、回転前のスクリーン1上の反射点(測距センサ3から送出された赤外線や超音波等の反射点)と回転後のスクリーン1上の反射点間の距離をBとする。
【0028】
一方、図3に示すように、スクリーン1とプロジェクタ2が正対していないとき、測距センサ3を投射光軸に対して角度αだけ回転させたときに得られるスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データをA’とする。なお、図3では、スクリーン1がプロジェクタ2の投射光軸を中心に傾斜しているため、測距センサ3をプロジェクタ2の投射光軸に指向させたときに得られるスクリーン1とプロジェクタ2間の距離データは図2と同様にCとなる。このとき、図3に示す距離A’と図2に示した距離Aには距離差a(a=A’−A)が発生する。すなわち、図3に示すスクリーンの傾斜角度θは、プロジェクタ2とスクリーン1が正対しているときに得られる距離データと、プロジェクタ2とスクリーン1が正対していないときに得られる距離データとの差で表すことができる。
【0029】
そこで、図3に示すように、測距センサ3の回転後のスクリーン1上の反射点を含むプロジェクタ2の投射光軸と垂直な方向の仮想投射面を想定し、その仮想投射面とプロジェクタ2間の距離をC’とし、回転前の仮想投射面上の反射点と回転後の仮想投射面上の反射点間の距離をB’とすると、距離C’及び距離B’は以下の式(1)、(2)のようになる。
【0030】
C'=A'cosα…(1)
B'=A'sinα…(2)
また、距離C’と距離Cの差をC’’とすると、
C’’=C’−C…(3)
であり、スクリーン1の傾斜角度θは、
θ=arctan(C''/B')…(4)
で表すことができる。
【0031】
したがって、上記(1)式〜(4)式よりスクリーン1の傾斜角度θは、
θ=arctan{cotα−(C/A'sinα)}…(5)
で求めることができる。
【0032】
上述したように、スクリーン1の傾斜角度θは、プロジェクタ2とスクリーン1が正対しているときに得られる距離データと、プロジェクタ2とスクリーン1が正対していないときに得られる距離データとの差で表すことができる。本発明では、1つの測距センサ3を用いてこれらの距離データを得ているため、算出するスクリーン1の傾斜角度θが測距センサ3の絶対精度に影響されることがない。したがって、測距センサ3の精度に影響されることなく、スクリーン1の傾斜角度θを良好な精度で求めることができる。
【0033】
次に本発明の角度検出装置の処理手順について図4を用いて説明する。
【0034】
図4は本発明の角度検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、まず制御装置5は、回転装置4を制御して測距センサ3の検出方向を初期方向である、例えばプロジェクタ2の投射光軸へ指向させる(ステップS1)。続いて、その検出方向における測距センサ3の測定値を読み込み、距離データCとして記憶装置に保存する(ステップS2)。
【0036】
次に、制御装置5は、回転装置4を制御して測距センサ3を回転させ、測距センサ3の検出方向をプロジェクタ2の投射光軸(初期方向)に対して角度αの方向へ指向させる(ステップS3)。続いて、その検出方向における測距センサ3の測定値を読み込み、距離データA'として記憶装置に保存する(ステップS4)。
【0037】
次に、制御装置5は、記憶装置に保存した距離データC及び距離データA'を読み出し、上記(5)式を用いてスクリーン1の傾斜角度θを算出する(ステップS5)。
【0038】
算出したスクリーン1の傾斜角度θは、例えば不図示の表示装置等で表示することで利用者にスクリーン1の傾斜角度の補正を促してもよく、プロジェクタ2から投射する画像の歪みを補正するために用いてもよい。
【0039】
なお、単にプロジェクタ2とスクリーン1が正対しているか否かを検出したい場合は、例えば、測距センサ3をプロジェクタ2の投射光軸を基準に正方向及び負方向に(図1〜3の左右方向)それぞれ同一の角度で回転させ、回転後の検出方向で得られる2つの距離データが同じであるか否かを判定すればよい。
【0040】
本発明によれば、利用する測距センサ3が1つであるため、複数の測距センサを用いてスクリーンの傾斜角度を求める構成に比べて、各測距センサの特性バラツキを補正する必要や各測距センサを精度よく設置する必要がない。
【0041】
また、測距センサ3に高い精度を必要としないため、測距センサ3の精度に影響されることなく、スクリーン1の傾斜角度θを良好な精度で求めることができる。
【0042】
なお、図1〜図3では、測距センサ3の検出方向を、図の左右方向(鉛直方向と直交する方向)に指向させてプロジェクタ2から見てスクリーン1の左右の奥行き方向の傾斜角度θを求める例を示しているが、測距センサ3の検出方向を、図の平面と直交する方向、すなわち鉛直方向に指向させれば、プロジェクタ2から見てスクリーン1の上下の奥行き方向の傾斜角度を求めることができる。
【0043】
また、図1〜図3では、スクリーン上の2点間の距離データと回転角度αからスクリーン1の傾斜角度θを求める例を示したが、本発明は3点以上の距離データとその回転角度からスクリーン1の傾斜角度θを求めることも可能である。
【0044】
例えば、上記と同様に測距センサ3の検出方向をプロジェクタ2の投射光軸へ指向させて距離データCを取得し、その後、測距センサ3の検出方向を投射光軸に対して角度α単位で複数方向へ指向させて距離データをそれぞれ取得する。そして、回転後に得られる複数の距離データA’と距離データC及び対応する回転角度nα(n=±1、±2、±3、・・・)を用いて測距センサ3の検出方向毎のスクリーン1の傾斜角度θをそれぞれ算出し、それらの算出値を平均化すればよい。このように複数の距離データ及び回転角度を用いてスクリーン1の傾斜角度θを求めれば、より精度の高い値が得られる。なお、3点以上の距離データ及び回転角度を用いてスクリーン1の傾斜角度を求める場合、算出した複数の傾斜角度の差異からスクリーン1のゆがみを検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の角度検出装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】スクリーンとプロジェクタが正対している場合の距離データの関係を示す模式図である。
【図3】スクリーンとプロジェクタが正対していない場合の距離データの関係を示す模式図である。
【図4】本発明の角度検出装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】従来の角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1 スクリーン
2 プロジェクタ
3 測距センサ
4 回転装置
5 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投射する投影装置とスクリーン間の距離を測定する1つの測距センサと、
前記測距センサを回転させる回転装置と、
前記回転装置により前記測距センサの検出方向を複数の方向へ指向させ、前記測距センサから前記検出方向毎に得られる前記投影装置と前記スクリーン間の距離データ、及び前記検出方向間の角度から、前記投影装置の投射光軸と垂直な方向に対する前記スクリーンの傾斜角度を算出する制御回路と、
を有する角度検出装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記測距センサの検出方向を一方向に指向させたときに得られる距離データをCとし、前記測距センサの検出方向を他方向に指向させたときに得られる距離データをA’とし、該2つの検出方向間の回転角度をαとしたとき、
前記スクリーンの傾斜角度θを
θ=arctan{cotα−(C/A'sinα)}
で求める請求項1記載の角度検出装置。
【請求項3】
画像を投射する投影装置とスクリーン間の距離を測定する1つの測距センサを回転させて前記測距センサの検出方向を複数の方向へ指向させ、
前記測距センサから前記検出方向毎に得られる前記投影装置と前記スクリーン間の距離データ、及び前記検出方向間の角度から、前記投影装置の投射光軸と垂直な方向に対する前記スクリーンの傾斜角度を算出する角度検出方法。
【請求項4】
前記測距センサの検出方向を一方向に指向させたときに得られる距離データをCとし、前記測距センサの検出方向を他方向に指向させたときに得られる距離データをA’とし、該2つの検出方向間の回転角度をαとしたとき、
前記スクリーンの傾斜角度θを
θ=arctan{cotα−(C/A'sinα)}
で求める請求項3記載の角度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8650(P2008−8650A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176522(P2006−176522)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(300016765)NECディスプレイソリューションズ株式会社 (289)
【Fターム(参考)】