説明

角度測定器および角度測定器を備えているプレス装置

【課題】曲げ加工される板材の曲げ角度を高精度で測定することができ、しかも、既存のプレス装置であっても追加装備して板材の曲げ角度を的確に測定することができる汎用性に優れた角度測定器を備えたプレス装置を提供する。
【解決手段】固定金型と可動金型と、両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を測定する角度測定器とを備えている。固定金型を支持する機台に、角度測定器を板材に対して接近ないし離反する向きに案内するガイド構造と、角度測定器をガイド構造に沿って往復駆動する駆動機構を設ける。角度測定器は、板材の曲げ変位に追随して回動する接触体と、接触体の回動を直線動作に変換する動作変換機構と、動作変換機構で変換された直線的な変位を検出して角度信号を出力するリニアセンサーを含む。ガイド構造は、そのガイド中心軸線が可動金型の移動中心軸線に対して所定角度だけ傾斜する状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば折り曲げ加工されたプレス成形品の曲げ角度を測定する角度測定器および角度測定器を備えているプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の角度測定器として、特許文献1の角度検出装置が公知である。そこでは、水平状態からV字状に折り曲げられる板材に追随できるよう追跡部材をばねで移動付勢し、追跡部材の先端に設けた、首振り自在な棒状の接触部材を板材の曲げ角度の変化に追随させている。接触部材の傾斜角度の変化は、巻掛伝動機構を介してロータリーエンコーダーに入力されて角度変換される。
【0003】
上記の角度検出装置は、V字状に折り曲げられた板材の外面に接触部材を接当させて、板材の曲げ角度を測定するが、V字状の板材の内面の角度を計測する角度測定器が提案されている(特許文献2)。そこでは、菱形に組まれたリンクのうち、下半側の2個のリンクをV字状の板材の内面に接当させ、この接当状態において上半側の2個のリンクを連結するピンの上方移動量を差動トランスで検知して、V字状の板材の折曲げ角度を測定している。
【0004】
【特許文献1】特公平1−24572号公報(第3頁5欄7〜15行、第1図)
【特許文献2】特開2001−74406号公報(段落番号0056〜0057、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の角度検出装置においては、接触部材の回転変位を巻掛伝動機構を介してロータリーエンコーダーに伝動して角度検出を行なう。そのため、角度検出精度はロータリーエンコーダーの分解能に依存するしかなく、充分な測定精度が得られにくい。分解能の高いロータリーエンコーダーはあるが、その外形寸法が大きいため、プレス金型の近傍に配置される角度検出装置に適用するのには不向きである。特許文献2の角度測定器は、プレス装置の可動金型の内部に組み込んである。そのため、角度測定器と可動金型をひとまとめにして導入する必要があり、そのコストが嵩む。また、既存のプレス装置に角度測定器を追加して板材の曲げ角度を測定することができず汎用性に欠ける。
【0006】
本発明の目的は、測定精度を高精度化しながら全体を小形化することができる角度測定器を提供することにある。
本発明の目的は、曲げ加工される板材の曲げ角度を高精度で測定することができ、しかも、既存のプレス装置であっても追加装備して板材の曲げ角度を的確に測定することができる汎用性に優れた角度測定器を備えたプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る角度測定器は、回動可能に支持される接触体と、接触体の回動変位を直線変位に変換する動作変換機構と、動作変換機構で変換された直線変位を検出して角度信号を出力するリニアセンサーと、各部材を支持するベースとを備えている。動作変換機構は、接触体に連動して回転する計測ローラーおよびガイドローラーと、両ローラーに巻き掛けられる金属ベルトとを含む。リニアセンサーは、金属ベルトの直線移行部に介装される検出ロッドと、ベースに固定されて、検出ロッドの直線変位を電気信号に変換する検出ヘッドとで構成してある。
【0008】
接触体は、測定対象に外接する一対の接触子と、一対の接触子を支持するホルダーとで構成し、計測ローラーのローラー軸にホルダーを固定する。
【0009】
金属ベルトは、計測ローラーおよびガイドローラーに巻き掛けられる巻掛部と、両巻掛部から対向状に連出される一対の連結部とを一体に備えている。両巻掛部を両ローラーに巻き掛けた状態において、一対の連結部の間に検出ロッドの両端を固定する。ガイドローラーを回転自在に支持するローラー枠を、テンションばねで計測ローラーから遠ざかる向きへ移動付勢する。
【0010】
動作変換機構を構成する各部材をベースの一側に配置し、ベースの他側に接触体を配置する。動作変換機構を構成する各部材の外面を、ベースの一側に装着したカバーで覆う。
【0011】
本発明に係る角度測定器を備えているプレス装置は、固定金型と可動金型と、両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を測定する角度測定器とを備えている。固定金型を支持する機台に、角度測定器を板材に対して接近ないし離反する向きに案内するガイド構造と、角度測定器をガイド構造に沿って往復駆動する駆動機構とを備えている。角度測定器は、板材の曲げ変位に追随して回動する接触体と、接触体の回動変位を直線変位に変換する動作変換機構と、動作変換機構で変換された直線変位を検出して角度信号を出力するリニアセンサーとを含む。角度測定器が両金型で折り曲げられる板材を指向する向きに、ガイド構造のガイド中心軸線を傾斜させる。
【0012】
機台の左右両側に、角度測定器と、ガイド構造と、駆動機構とを配置する。以て、両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を、一対の角度測定器で同時に測定する。
【0013】
駆動機構は、流体圧シリンダーと、流体圧シリンダーで昇降操作される第1テーブルと、角度測定器を支持する第2テーブルと、第1テーブルの昇降動作を増幅して第2テーブルに伝動する平行リンク機構とを含む。ガイド構造のスライダーに角度測定器を固定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の角度測定器では、接触体の回動変位を動作変換機構で直線変位に変換し、動作変換機構の直線移行部に設けた検出ロッドの直線変位を検出ヘッドで検出することにより測定対象の角度を測定できるようにした。このように、リニアセンサーを検出要素にして角度測定を行なうと、ロータリーエンコーダーを検出要素とする従来の角度測定器に比べて、高い分解能で角度測定を行なえる。また、検出ロッドと検出ヘッドとで構成したリニアセンサーは、ロータリーエンコーダーに比べて構造が簡単であるため、無理なく小形化でき、コストも少なくて済む。さらに、計測ローラーおよびガイドローラーと、両ローラーに巻き掛けられる金属ベルトで回動変位を直線変位に変換し、金属ベルトの直線移行部に検出ロッドおよび検出ヘッドを配置するので、機器配置に無駄がなく、角度測定器を小形化できる。したがって本発明の角度測定器によれば、ロータリーエンコーダーを検出要素とする従来の角度測定器に比べて、測定精度の高精度化と小形化とを同時に実現できることとなる。
【0015】
測定対象に外接する一対の接触子と、一対の接触子を支持するホルダーとで接触体を構成し、ホルダーを計測ローラーのローラー軸に固定する角度測定器によれば、測定対象に対して一対の接触子が接触する状態で角度測定を行なうことになる。このように、測定対象の2箇所に接触子を接触させて角度測定を行なうと、測定対象の表面の撓みや局部的な凹凸など表面状態に影響されることなく接触体を安定した状態で測定対象に接触でき、したがって測定結果の信頼度を向上できる。また、ホルダーを計測ローラーのローラー軸に直接固定するので、接触体の回動を計測ローラーに対して遅滞なくしかも正確に伝動して、角度測定を的確に行なえる。
【0016】
一対の巻掛部と、一対の連結部などで金属ベルトを構成し、ガイドローラーを支持するローラー枠をテンションばねで計測ローラーから遠ざかる向きへ移動付勢する動作変換機構によれば、常に金属ベルトを両ローラーに密着させて両者間のずれを解消できる。したがって、計測ローラーと金属ベルトとの間の伝動ロスを一掃し、さらに金属ベルトの温度ひずみの影響を排除して、計測ローラーの変位量と検出ロッドの変位量を正確に比例させて、測定精度をさらに向上できる。
【0017】
動作変換機構を構成する各部材をベースの一側に配置し、各部材の外面をベースの一側に装着したカバーで覆う角度測定器によれば、精密さが要求される動作変換機構およびリニアセンサーをカバーで防護し、さらに、塵埃やオイルなどで汚染されるのを防止できる。したがって、劣悪な作業環境下で角度測定器を使用するような場合であっても、角度測定器による角度測定を適正に、しかも安定した状態で行なえる。また、ベースの他側に接触体を配置するので、接触体の清掃等のメンテナンスを容易に行なえる。
【0018】
本発明に係るプレス装置においては、上記の角度測定器を駆動機構でガイド構造に沿って往復駆動できるようにし、角度測定器が両金型で折り曲げられる板材を指向する向きに、ガイド構造のガイド中心軸線を傾斜させた。角度測定を行なうときは、固定金型に載置した板材の下面に角度測定器の接触体を接触させて、角度測定器の零点設定を行なう。次ぎに、板材の曲げ変化に追随して角度測定器を移動させ、曲げ加工終了時の板材の傾斜面に接触体を接触させて板材の曲げ角度を測定する。このように、本発明のプレス装置によれば、固定金型を支持する機台に角度測定器や駆動機構などを設けて板材の曲げ角度を測定するので、既存のプレス装置であっても測定器を追加装備して曲げ角度を的確に測定できる。
【0019】
上記のように、ガイド構造のガイド中心軸線を傾斜させると、折り曲げられた板材の傾斜面に対して接触体をより小さな進出ストロークで接触させることができるので、ガイド構造および駆動構造を小形化することができる。また、ガイド中心軸線を傾斜させることにより、接触体の回動領域のうち、中立位置の一側の回動領域で零点設定をし、中立位置の他側の回動領域で曲げ角度の測定を行なうことができる。したがって、接触体の回動領域を有効に利用して板材の曲げ角度を測定でき、その分だけ角度測定器を小形化しながら測定レンジを拡大できる。以上により、板材の曲げ角度を高精度で測定でき、しかも小形化できる汎用性に優れた角度測定器を備えたプレス装置を提供できる。
【0020】
機台の左右両側に角度測定器、ガイド構造、駆動機構を配置し、両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を一対の角度測定器で同時に測定すると、一対の傾斜面で挟まれた板材Wの折り曲げ角度をより正確に測定することができる。この点、従来のプレス装置では、V字形の板材の一対の傾斜面が均等に折り曲げられていることを前提にして、片方の斜面しか測定しておらず正確性に欠ける。また、板材の左右の傾斜面の角度を左右の角度測定器で個別に測定するので、左右の傾斜面の曲げ角度の過不足を個々に測定して板材の加工状況の詳細を確認し、曲げ成形品の生産性の向上に寄与することができる。
【0021】
流体圧シリンダーで第1テーブルを昇降操作し、第1テーブルの昇降動作を平行リンク機構で増幅して第2テーブルに伝動する駆動機構によれば、ピストンストロークが小さな流体圧シリンダーを使用しながら、角度測定器の往復ストロークを拡大できる。したがって、より小形の流体圧シリンダーを用意すればよく、その分だけ駆動機構をコンパクトにまとめて、角度測定のための全体構造を小形化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例) 図1ないし図9は本発明に係る角度測定器を備えているプレス装置の実施例を示す。図1ないし図3においてプレス装置は、機台1上に載置固定される固定金型2と、固定金型2に対して下降ないし上昇変位する可動金型3とを有する。機台1の左右両側には、両金型2・3で折り曲げられた板材Wの曲げ角度を測定する角度測定器4と、角度測定器4を板材Wに対して接近ないし離反する向きに案内するガイド構造5と、角度測定器4をガイド構造5に沿って往復駆動する駆動機構6とが設けてある。
【0023】
図2においてガイド構造5は、対向配置した側枠9の一方に固定されるガイドブロック10と、ガイドブロック10で往復スライド自在に案内されるスライダー11とで構成する。スライダー11に角度測定器4が取付台12を介して固定してある(図3参照)。ガイド構造5は、そのガイド中心軸線Pが両金型2・3で折り曲げられる板材Wを指向する向きに傾斜する状態で配置する。具体的には、可動金型3の移動中心軸線に対して25度傾斜する状態で配置する。これにより、角度測定器4が上昇するほど可動金型3に接近できることとなる。
【0024】
図3において駆動機構6は、両側枠9に固定されるエアシリンダー(流体圧シリンダー)14と、エアシリンダー14で昇降操作される下方の第1テーブル15、および上方の第2テーブル16と、両テーブル15・16の前後に配置される一対の平行リンク機構17などで構成する。第1テーブル15はエアシリンダー14のピストンロッド18に固定してある。平行リンク機構17は、第1テーブル15の昇降動作を増幅して第2テーブル16に伝動するために設けられており、X字状に連結された4個のリンク棒20・21・22・23と、スライドピン25・26・27・28、および固定ピン29などで構成する。
【0025】
図4に向かって下段左側のリンク棒20の傾斜下端に設けた固定ピン29は、側枠9で軸支する。また、下段右側のリンク棒21の傾斜下端に装着したスライドピン25は、側枠9に設けた横長のガイド溝31でスライド自在に案内する。同様に、上段右側のリンク棒23の傾斜上端に装着したスライドピン28は、第2テーブル16に設けた横長のガイド溝32でスライド自在に案内する。リンク棒21・23を連結するスライドピン26と、上段左側のリンク棒22の傾斜上端に装着したスライドピン27は、それぞれ側枠9に設けた縦長のガイド溝33でスライド自在に案内する。リンク棒21・23を連結するスライドピン26は第1テーブル15に連結する。
【0026】
上記のように平行リンク機構17を構成することにより、第2テーブル16に固定した角度測定器4を図2に示す下方の待機位置と、図1に示す測定位置との間で昇降操作することができる。待機位置と測定位置との間の第2テーブル16の昇降ストロークは、ピストンロッド18の昇降ストロークの約2倍に増幅される。
【0027】
図5ないし図8に角度測定器4の詳細構造を示す。角度測定器4は、板材Wの曲げ変位に追随して回動する接触体35と、接触体35の回動を直線動作に変換する動作変換機構36と、動作変換機構36で変換された直線変位を検出するリニアセンサー37と、これらの部材を支持するハウジング38などで構成する。ハウジング38は、取付台12に固定されるベース40と、ベース40の前面側に被せ付けられるカバー41とで構成してあり、これら両者40・41で形成される区室内に動作変換機構36とリニアセンサー37とが収容してある。
【0028】
動作変換機構36は、区室の上方に配置される計測ローラー42と、区室の下方に配置されるガイドローラー43と、両ローラー42・43に巻き掛けられる金属ベルト44と、金属ベルト44に所定の緊張力を付与するテンションばね45などで構成する。計測ローラー42にはローラー軸46が一体に形成してあり、このローラー軸46をベース40に設けた軸受構造で軸支することにより、計測ローラー42が回転自在に支持されている。軸受構造は、ベース40に装着されるベアリング48と、ベース40の後面に固定される軸受ブロック49と、軸受ブロック49に装着されるベアリング50とで構成する。接触体35は、ベース40と軸受ブロック49との間の隙間に配置されてローラー軸46に固定してある。これにより、接触体35がローラー軸46と共に回動するとき、計測ローラー42は接触体35に連動して回転できる。
【0029】
ガイドローラー43は、ローラー枠52で軸53を介して回転自在に軸支してある。金属ベルト44に適度の緊張力を付与するために、ローラー枠52はL字状に折り曲げられた板ばね製のテンションばね45に装着されて、計測ローラー42から遠ざかる向きへ付勢してある。ガイドローラー43の直径寸法は、計測ローラー42の直径寸法と同じで6mmに設定してある。
【0030】
図7に金属ベルト44の詳細構造を示す。金属ベルト44は、剛性に富む薄鋼板を素材にして形成してあり、計測ローラー42に巻き掛けられる広幅の巻掛部55と、ガイドローラー43に巻き掛けられる幅狭の巻掛部56と、両巻掛部55・56から対向状に連出される一対の連結部57・58を備えている。計測ローラー42側の巻掛部55の幅方向中央部分には固定片60が一体に形成され、その先端部にビス穴が開口してある。
【0031】
自由状態における金属ベルト44は平坦になっており、計測ローラー42およびガイドローラー43に巻き付けることにより、前記巻掛部55・56がローラー周面に沿って湾曲する。両巻掛部55・56が湾曲する状態で、各連結部57・58の端部に検出ロッド64の両端をビス61で固定し、さらに固定片60をビス62で計測ローラー42に締結することにより、金属ベルト44を両ローラー42・43に張り渡すことができる。
【0032】
リニアセンサー37は非接触式のポテンショメーターからなり、丸軸状の検出ロッド64と、検出ロッド64の直線変位を電気信号に変換する検出ヘッド65とを備えている。検出ヘッド65はヘッド取付ブロック66を介してベース40に固定してある。図5および図6において符号75は検出ヘッド65から導出される信号ケーブルであり、信号ケーブル75はベース40に設けたケーブル穴からハウジング38の外部に導出してある。先に説明したテンションばね45の基端はヘッド取付ブロック66に固定してある。
【0033】
接触体35は、板材Wに外接する一対の接触子68と、一対の接触子68を支持するホルダー69とで構成する。図6に示すように、ホルダー69はローラー軸46に固定される逆三角形状の取付壁70と、取付壁70の突端から後向きに突設される庇状の装着座71とを一体に備えており、装着座71の左右端寄りに接触子68が固定してある。接触体35を中立位置へ復帰付勢するために、取付壁70の下端とベース40に固定したピンとの間に引っ張りコイルばねからなる復帰ばね72が設けてある。
【0034】
以上のように構成した角度測定器4は、計測ローラー42の中心とガイドローラー43の中心を結ぶ線が、ガイド構造5のガイド中心軸線Pの延長上にあって、ガイド中心軸線Pと同じ角度で傾斜するように第2テーブル16に固定してある。また、自由状態における接触体35は、復帰ばね72で中立位置に保持されて、左右の接触子68の中心を結ぶ線がガイド中心軸線Pと直交する状態になっている。図8に示すように接触体35は、中立位置から時計回転方向と反時計回転方向へ回動でき、いずれの方向へも最大で25度ずつ回動できる。計測ローラー42とガイドローラー43の中心間距離は30mmであり、このことから理解できるように角度測定器4の全体はコンパクトにまとめられて小形化してある。
【0035】
固定金型2と可動金型3で折り曲げられた板材Wの曲げ角度の測定は、以下のようにして行なう。まず、角度測定器4を図2に示すように待機位置に保持した状態で、固定金型2の上端面に板材Wを載置し、前後方向および左右方向の位置決めを行なう。この状態で、駆動機構6を作動させて、角度測定器4をガイド構造5に沿って上昇移動させる。このとき、角度測定器4はガイド中心軸線Pと同じ向きに傾いているので、中立位置において上方に位置する接触子68のみが板材の下面で受け止められる。さらに角度測定器4を上昇変位させると、接触体35は復帰ばね72の張力に抗しながら時計回転方向へ回動し、図4に示すように一対の接触子68が板材Wの下面に同時に接当する。
【0036】
接触体35の回動動作は、計測ローラー42と金属ベルト44を介して直線変位に変換され、検出ロッド64に伝えられる。このとき検出ヘッド65から出力される信号によって、接触体35の零点を設定する。なお、エアシリンダー14による押し上げ力は、板材Wをその重量に打ち勝って押し上げる力より小さく設定してあり、したがって、接触体35の零点を設定する際に、板材Wが固定金型2から浮き離れることはない。
【0037】
上記の状態において、図9に示すように可動金型3を下降移動させることにより、板材Wを固定金型2で規定される角度に沿ってV字状に折り曲げることができる。このとき、角度測定器4は板材Wの曲げ変化に追随して駆動機構6で上昇操作される。その結果、接触体35はローラー軸46を中心にして、中立位置を越えて反時計回転方向へ回動し、一対の接触子68が板材Wの傾斜面に接当する。このときの検出ロッド64の位置を検出ヘッド65で検出することにより、接触体35の零点からの回動角度を特定し、板材Wの折曲げ角度θを測定できる。V字状に折り曲げられた板材Wの傾斜面の角度は、左右の角度測定器4によって個別に測定するので、一対の傾斜面で挟まれた板材Wの折り曲げ角度を正確に測定することができる。角度測定が終了したら、左右の角度測定器4を待機位置へ復帰させて、折り曲げられた板材Wを金型から取り出す。
【0038】
ガイド構造5のガイド中心軸線Pは、角度測定器4が両金型2・3で折り曲げられる板材Wを指向する向きに傾斜させてある。そのため、より小さな往復ストロークで接触体35を板材Wの傾斜面に接触させることができ、その分だけガイド構造5および駆動機構6を小形化することができる。また、ガイド中心軸線Pを傾斜させることにより、接触体35の回動領域のうち、中立位置の一側の回動領域で零点設定をし、中立位置の他側の回動領域で曲げ角度の測定を行なうことができる。したがって、接触体35の回動領域を有効に利用して板材Wの曲げ角度を測定でき、角度測定器4を小形化することに寄与できる。
【0039】
上記の実施例では、テンションばね45を板ばねで形成したが、その必要はなく、引っ張りばねや圧縮ばねでテンションばね45を形成してもよい。また、ガイドローラー43のローラー枠52をテンションばね45で移動付勢する代わりに、金属ベルト44の直線移行部の中間位置にテンションばね45を介装して金属ベルト44に直接に緊張力を付与することができる。接触子68は球体である必要はなく、丸軸で構成することができる。ガイド構造5は実施例で説明した構造である必要はなく、要は角度測定器4を往復スライド自在に案内できる構造であればよい。エアシリンダー14に換えて油圧シリンダーを適用することができる。リニアセンサー37は接触式のポテンショメーターであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】プレス装置に適用した角度測定器の正面図である。
【図2】角度測定器の駆動構造を示す正面図である。
【図3】角度測定器の駆動構造を示す側面図である。
【図4】零点設定時の角度測定器の状態を示す正面図である。
【図5】角度測定器の縦断正面図である。
【図6】図5におけるA−A線断面図である。
【図7】金属ベルトの斜視図である。
【図8】図6におけるB−B線断面図である。
【図9】接触体による角度測定状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
2 固定金型
3 可動金型
4 角度測定器
5 ガイド構造
6 駆動機構
14 流体圧シリンダー
15 第1テーブル
16 第2テーブル
17 平行リンク機構
35 接触体
36 動作変換機構
37 リニアセンサー
42 計測ローラー
43 ガイドローラー
44 金属ベルト
45 テンションばね
64 検出ロッド
65 検出ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に支持される接触体と、前記接触体の回動変位を直線変位に変換する動作変換機構と、前記動作変換機構で変換された直線変位を検出して角度信号を出力するリニアセンサーと、前記各部材を支持するベースとを備えており、
前記動作変換機構が、前記接触体に連動して回転する計測ローラーおよびガイドローラーと、前記両ローラーに巻き掛けられる金属ベルトとを含み、
前記リニアセンサーが、前記金属ベルトの直線移行部に介装される検出ロッドと、前記ベースに固定されて、前記検出ロッドの直線変位を電気信号に変換する検出ヘッドとで構成してある角度測定器。
【請求項2】
前記接触体が、測定対象に外接する一対の接触子と、前記一対の接触子を支持するホルダーとで構成されており、
前記計測ローラーのローラー軸にホルダーが固定してある請求項1に記載の角度測定器。
【請求項3】
前記金属ベルトが、前記計測ローラーおよびガイドローラーに巻き掛けられる巻掛部と、前記両巻掛部から対向状に連出される一対の連結部とを一体に備えており、
前記両巻掛部を前記両ローラーに巻き掛けた状態において、前記一対の連結部の間に前記検出ロッドの両端が固定されており、
前記ガイドローラーを回転自在に支持するローラー枠が、テンションばねで前記計測ローラーから遠ざかる向きへ移動付勢してある請求項1または2に記載の角度測定器。
【請求項4】
前記動作変換機構を構成する各部材が前記ベースの一側に配置され、前記ベースの他側に前記接触体が配置されており、
前記動作変換機構を構成する各部材の外面が、前記ベースの一側に装着したカバーで覆ってある請求項2または3に記載の角度測定器。
【請求項5】
固定金型と可動金型と、前記両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を測定する角度測定器とを備えているプレス装置であって、
前記固定金型を支持する機台に、前記角度測定器を前記板材に対して接近ないし離反する向きに案内するガイド構造と、前記角度測定器を前記ガイド構造に沿って往復駆動する駆動機構とを備えており、
前記角度測定器は、前記板材の曲げ変位に追随して回動する接触体と、前記接触体の回動変位を直線変位に変換する動作変換機構と、前記動作変換機構で変換された直線変位を検出して角度信号を出力するリニアセンサーとを含み、
角度測定器が前記両金型で折り曲げられる板材を指向する向きに、前記ガイド構造のガイド中心軸線が傾斜させてある角度測定器を備えているプレス装置。
【請求項6】
前記機台の左右両側に、前記角度測定器と、前記ガイド構造と、前記駆動機構とが配置されており、
前記両金型で折り曲げられた板材の曲げ角度を、前記一対の角度測定器で同時に測定することを特徴とする請求項5に記載の角度測定器を備えているプレス装置。
【請求項7】
前記駆動機構が、流体圧シリンダーと、前記流体圧シリンダーで昇降操作される第1テーブルと、前記角度測定器を支持する第2テーブルと、前記第1テーブルの昇降動作を増幅して前記第2テーブルに伝動する平行リンク機構とを含み、
前記ガイド構造のスライダーに前記角度測定器が固定してある請求項5または6に記載の角度測定器を備えているプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−43918(P2010−43918A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207399(P2008−207399)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】