説明

角膜創傷治癒を促進する方法

ヒトにおける角膜創傷治癒の促進のための5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸およびアナログの局所的眼用使用が開示される。一局面において、本発明の化合物は、角膜創傷または角膜混濁を処置するために使用され得る。特定の局面において、上記角膜創傷または混濁は、糖尿病;屈折矯正手術に起因する角膜フォトアブレーション;化学熱傷;真菌感染、ウイルス感染もしくは細菌感染の二次的炎症;コンタクトレンズ装着;外傷性損傷;または局所的薬物療法/保存薬、放射線(UV光を含む)、全身性自己免疫疾患、涙液膜異常(涙液欠損、脂質またはムチン欠損)に起因する欠損;神経栄養性欠損;または特発性欠損の結果である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年2月25日に出願された米国仮特許出願第61/307,947号の利益を主張し、この出願の開示は本明細書において参照として具体的に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、角膜創傷治癒の促進のための化合物および方法に関する。特定の実施形態において、本発明は、角膜創傷または角膜混濁を処置するための、5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸およびそのアナログの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
角膜創傷は、眼に対する外傷から頻繁に生じる(例えば、自動車事故、労働災害、および武器によって引き起こされた創傷において起こり得る)。眼に対する創傷はまた、手術の不可避的結果(例えば、白内障手術、全層角膜移植、緑内障濾過手術、および屈折矯正手術(例えば、レーザー角膜剥離または放射状角膜切開術)として起こる。治癒しない角膜潰瘍はまた、非外傷性の病的原因(例えば、糖尿病または全身性自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群))から生じ得る。これら創傷の治癒は、頻繁に、外傷または手術の術後経過からのゆっくりかつ困難な、悪化した回復であり得る。
【0004】
現在の処置は、局所的または全身性の抗炎症性/免疫調節性薬物、保護コンタクトレンズ、および自家血清の使用を包含する(非特許文献1)。角膜潰瘍化/欠損/遅延した角膜創傷治癒を処置するために頻繁に使用される薬物処置、外科的介入、および物理的方法は、それほど有効ではなく、実質的に副作用を有するかまたは極めて不便である。例えば、炎症誘導性潰瘍化を処置するためのステロイドの使用は、増大したIOP、水晶体混濁化(lens opacification)副作用および上皮細胞移動(創傷閉鎖)の低下によって悪化させられ得る。強力な抗有糸分裂剤であるマイトマイシンCでの、屈折矯正手術後に時折観察される角膜混濁の処置は、表層基質ケラトサイト(anterior stromal keratocyte)密度を減少させ得、おそらく、上記角膜の長期間の健康状態に欠陥を生じさせる。本発明の化合物は、これら現在使用される処置よりも少ない副作用および/または増大した効力という利点を有し得る。
【0005】
従って、眼の創傷治癒、特に、角膜創傷の創傷治癒を促進する容易に適用可能な方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tuli,S.S.;Schultz,G.S.;Downer,D.M. 「Science and strategy for preventing and managing corneal ulceration」 Ocul.Surf.2007,5(1),23−39
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、角膜創傷治癒の促進のための組成物および方法を提供する。本発明の一実施形態によれば、5,6,7−トリヒドロキシヘプタン酸またはそのアナログは、局所的な眼への送達を介して、このような処置の必要な患者に投与される。
【0008】
一局面において、本発明の化合物は、角膜創傷または角膜混濁を処置するために使用され得る。特定の局面において、上記角膜創傷または混濁は、糖尿病;屈折矯正手術に起因する角膜フォトアブレーション;化学熱傷;真菌感染、ウイルス感染もしくは細菌感染の二次的炎症;コンタクトレンズ装着;外傷性損傷;または局所的薬物療法/保存薬、放射線(UV光を含む)、全身性自己免疫疾患、涙液膜異常(涙液欠損、脂質またはムチン欠損)に起因する欠損;神経栄養性欠損;または特発性欠損の結果である。
【0009】
本発明の具体的な好ましい実施形態は、特定の好ましい実施形態および特許請求の範囲の以下のより詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1である。
【図2】図2である。
【図3】図3である。
【図4】図4である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
別段示されなければ、すべての成分量は、%(w/v)ベースで示される。
【0012】
本発明の方法および組成物は、眼用に受容可能なキャリアおよび式Iの少なくとも1種の化合物:
【0013】
【化1】

【0014】
を包含し、ここで:
は、COR、CONR、またはCHORであり;
Rは、H、C1−6直鎖もしくは分枝状のアルキル、C3−6シクロアルキル、またはフェニルであるか、あるいはRは、式COのカルボン酸塩であり、ここでRは、Li、Na、K、または式NR1011のアンモニウム部分であり;
、Rは、独立して、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、またはOCであるが、ただし、多くてもR、Rのうちの一方のみが、OH、OCH、またはOCであり;
は、H、C(O)R12、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
、R、およびRは、独立して、H、CH、C、C(O)R12、またはCO13であるか;
あるいはRとRまたはRとRは一緒になって、カルボニル基(C=O)を構成し、従って、環式カーボネートを形成するか;
あるいはORは一緒になって、以下に示されるように、環式エステル(ラクトン)を形成し:
【0015】
【化2】

【0016】
−R11は、独立して、HまたはC1−6アルキルであり、各アルキル基は、必要に応じて、OHまたはOCH置換基を有し;
12は、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
13は、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
【0017】
【化3】

【0018】
は、OR置換基がR絶対配置またはS絶対配置:
【0019】
【化4】

を与えるように配置され得ることを示す。
【0020】
本発明の方法および眼用組成物における使用に好ましいのは、式Iの化合物であり:ここで
は、COR、CONR、CHOR、または式COのカルボン酸塩であり;
は、Li、Na、K、またはNHであり;
Rは、H、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニル、またはベンジルであり;
およびRのうちの一方は、Hであり、他方は、H、C1−5アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、またはOCであり;
は、H、COCH、またはCHであり;
上記ORを有する炭素における絶対立体化学は、以下に示されるとおりであり:
【0021】
【化5】

【0022】
、R、Rは、独立して、H、CH、またはCHCOであるか;
あるいはRとRまたはRとRは一緒になって、カルボニル基(C=O)を構成し、従って、環式カーボネートを形成するか;
あるいはORは一緒になって、以下に示されるような環式エステル(ラクトン):
【0023】
【化6】

【0024】
を形成する。
【0025】
本発明の方法および眼用組成物における使用に特に好ましい化合物は、化合物1〜7である。化合物1は、例えば、Cayman Chemical Company(Ann Arbor,MI)およびEnzo Life Sciences(Plymouth Meeting,PA)から市販されている。化合物2〜7は、以下の実施例1〜6に記載されるように調製され得る。
【0026】
【化7】

【0027】
本発明の化合物は、角膜創傷または角膜混濁を処置するために使用され得る。上記角膜創傷または角膜混濁としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:糖尿病;屈折矯正手術に起因する角膜フォトアブレーション;化学熱傷;真菌感染、ウイルス感染もしくは細菌感染の二次的炎症;コンタクトレンズ装着;外傷性損傷;または局所的薬物療法/保存薬、放射線(UV光を含む)、全身性自己免疫疾患、涙液膜異常(涙液欠損、脂質またはムチン欠損)に起因する欠損;神経栄養性欠損;または特発性欠損から生じる角膜創傷または混濁。
【0028】
特定の実施形態において、式Iの化合物は、局所的な眼への投与のための眼用に受容可能なキャリア中で投与される。上記組成物は、当該分野で公知の方法に従って処方される。上記組成物は、1種より多くの式Iの化合物を含み得る。さらに、上記組成物は、式Iの化合物以外の第2の薬物を含み得る。
【0029】
本発明の組成物は、式Iの化合物の眼用に有効な量を含む。本明細書で使用される場合、「眼用に有効な量」とは、角膜創傷治癒を促進するのに十分な量を意味する。一般に、本発明の組成物は、0.01%〜3%の式Iの化合物を含む。好ましくは、本発明の組成物は、0.1%〜1%の式Iの化合物を含む。
【0030】
本発明に従って投与される上記組成物はまた、種々の他の成分(界面活性剤、等張剤、緩衝剤、保存薬、共溶媒および増粘剤(viscosity building agent)が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0031】
種々の等張剤が、上記組成物の張度を調節するために、好ましくは、眼用組成物のために天然の涙液の張度を調節するために、使用され得る。例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、デキストロースおよび/またはマンニトールは、生理学的張度に近づけるために上記組成物に添加され得る。等張剤のこのような量は、添加される特定の剤に依存して変動する。しかし、一般に、上記組成物は、最終組成物が眼用に受容可能な浸透圧重量モル濃度(一般に、約150〜450mOsm、好ましくは、250〜350mOsm)を有するようになるのに十分な量の等張剤を有する。
【0032】
適切な緩衝系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸)は、貯蔵条件下でのpH変動を妨げるように、上記組成物に添加され得る。特定の濃度は、使用される剤に依存して変動する。しかし、好ましくは、上記緩衝剤は、pH5.5〜8の範囲内の標的pHを維持するように選択される。
【0033】
潤滑するか、「濡ら」すか、内因性の涙液の粘稠度に近づけるか、天然の涙液増大を補助するか、または別の方法で眼への投与の際のドライアイ症状および状態の一時的な軽減を提供するように設計される他の化合物は、当該分野で公知であり、本発明の組成物中に含まれ得る。このような化合物は、上記組成物の粘度を増強し得、これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:モノマーポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール);ポリマーポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、デキストラン(例えば、デキストラン70));水溶性タンパク質(例えば、ゼラチン);およびビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポピドン)およびカルボマー(例えば、カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974P)。
【0034】
局所的眼病用生成物は、代表的には、複数用量形態でパッケージされる。保存薬は、代表的には、使用の間の微生物汚染を防ぐために必要とされる。適切な保存薬としては、以下が挙げられる:塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、ベンゾドデシニウムブロミド、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1、または当業者に公知の他の剤。このような保存薬は、代表的には、0.001〜1.0% w/vのレベルで使用される。本発明の単位用量組成物は、滅菌されているが、代表的には、保存薬を含まず、保存処理がされていない(unpreserved)。
【0035】
本発明の方法における使用のための代表的な点眼処方物は、以下に提供される。
【0036】
【表1】

本明細書で引用される参考文献は、これらが本明細書に示されるものを捕捉する例示的手順または他の詳細を提供する程度まで、具体的に参考として援用される。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含められる。以下に示す実施例において開示される技術は、本発明者らが本発明の実施において十分に機能することを発見した技術を代表し、よって、その実施のための好ましい態様を構成すると考えられ得ることは、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に鑑みて、多くの変更が、開示される具体的実施形態において行われ得、それでもなお、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似の結果が得られることを認識するはずである。
【0038】
(実施例1:化合物2の合成)
2Mのメタノール中アンモニア(methanolic ammonia)中の化合物1の溶液を、マイクロ波反応器を使用して、密封チューブの中で、85℃へと1時間にわたって加熱する。室温へと冷却した後、上記溶液をエバポレートし、その残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製して、アミド2を得る。
【0039】
【化8】

【0040】
(実施例2:化合物3の合成)
33%のエタノール中メチルアミン中の化合物1の溶液を、マイクロ波反応器を使用して、密封チューブの中で、85℃へと1時間にわたって加熱する。室温へと冷却した後、上記溶液をエバポレートし、その残渣を、シリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製して、N−メチルアミド3を得る。
【0041】
【化9】

【0042】
(実施例3:化合物4の合成)
【0043】
【化10】

【0044】
1M LiOH(0.5mL,0.5mmol)を含むMeOH(2.1mL)中のメチルエステル化合物1(20mg,0.104mmol)の溶液を、120℃において6分間にわたってマイクロ波ヒーターで加熱した。上記反応系を濃縮し、その残渣を、7:3(v:v) 0.05M HCl:アセトニトリルで溶出する、10mm直径×18cm高さのC18逆相シリカゲルカラムでクロマトグラフィーにかけて、濃縮後に粗製の白色固体を得た(40.9mg)。上記固体を、熱CHCN(2×2mL)ですすぎ、その濾液を濃縮して、ラクトン4を得た(7.8mg,47%)。13C NMR (150 MHz, dmso-d6) δ 171.12 (C), 79.86 (CH), 72.44 (CH), 62.03 (CH2), 29.39 (CH2), 21.67 (CH2), 17.55 (CH2).
(実施例4:化合物5の合成)
【0045】
【化11】

【0046】
水性MeOH中の、メチルエステル化合物1の溶液を、3当量の水酸化リチウムの存在下で加熱して還流した。6時間後、上記反応系を室温へと冷却し、上記溶液のpHを、70−9 メッシュスルホン酸樹脂MP(Novabiochem/EMD Biosciences(10394 Pacific Center Court,San Diego,CA 92121)から市販される)を添加することによって、6へと調節する。上記溶液を、0.2μM ポリ−テトラフルオロエチレン(terfluoroethylene)シリンジフィルタを通して濾過し、濃縮して、白色固体としてカルボン酸リチウム5を得た。1H NMR (D2O, 400 MHz) δ 3.69-3.64 (m, 1H), 3.55-3.47 (m, 3H), 2.16-2.12 (m, 2H), 1.67-1.64 (m, 1H), 1.54-1.48 (m, 2H), 1.38-1.34 (m, 1H). 13C NMR (D2O, 100 MHz) δ 183.46 (C), 74.61 (CH), 71.67 (CH), 62.49 (CH2), 37.26 (CH2), 31.55 (CH2), 22.04 (CH2).
(実施例5:化合物6の合成)
【0047】
【化12】

p−トルエンスルホン酸一水和物を、2−デオキシ−D−リボース、ドライエライト(drierite)、および2−メトキシ−2−プロペンのDMF溶液に添加して、固体NaCOでクエンチしてクロマトグラフィーによる精製後、ラクトール8を得る。8と、触媒性安息香酸の存在下、THF中での、8とPhP=CHCOEtとのウィッティッヒ反応から、エノエート(enoate)9が得られ、これを、エタノール中触媒性Pd/Cの存在下、水素雰囲気下で10へと還元する。5分間にわたるエタノール中の0.1N HClを使用する10の脱保護、続いて、NaHCO水溶液でのクエンチにより、シリカゲルクロマトグラフィー精製の後に6を得る。
【0048】
(実施例6:化合物7の合成)
【0049】
【化13】

触媒性安息香酸の存在下、THF中での、ラクトール8(実施例5を参照のこと)とPhP=CHCO−i−Cとのウィッティッヒ反応から、エノエート11が得られ、これを、イソプロパノール中触媒性Pd/Cの存在下、水素雰囲気下で12へと還元する。5分間にわたるイソプロパノール中の0.1N HClを使用する12の脱保護、続いて、NaHCO水溶液でのクエンチから、シリカゲルクロマトグラフィー精製の後に7を得る。
【0050】
(実施例7:角膜損傷のラットモデルにおける化合物1および化合物5の効力)
(方法)
(角膜上皮創傷生成)
雌性Lewisラット(175〜200g)を、キシラジン/ケタミンカクテル(それぞれ、5mg/kgおよび50mg/kg)で麻酔した。3mmトレフィンを使用して、角膜中心の表面に、3mm直径の円形の境界線を画定した。1mm鋼鉄製バー(steel burr)を先端に備えた角膜さびリングリムーバー(corneal rust ring remover)(AlgerbrushII Alger Co.)を使用して、上記確立した3mm境界線内で基底膜まで角膜上皮を除去した。上皮除去の直後に、2% フルオレセインナトリウム(Alcon)で角膜を局所的に染色し、平衡食塩水(BSS)で洗浄し、時間0時間の画像を獲得した。24時間後に、動物を再び麻酔し、時間24時間の画像を獲得した。
【0051】
(薬物処置)
時間0の画像を獲得した直後に、試験物品(5μl)を眼の表面に局所投与した。24時間の研究時間の最初の8時間の間、2時間ごとに動物は局所投与を受けた。ヒアルロン酸(HA)の0.4%溶液を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)中に調製した。化合物1および化合物5をPBS中に調製し、使用するまで−70℃で貯蔵した。投与の間には、化合物を4℃で貯蔵した。
【0052】
(角膜フルオレセイン染色/画像分析)
麻酔したラット(時間0:キシラジン/ケタミン;時間24時間:5% イソフルランガス)。上皮細胞がない角膜の領域を、2% フルオレセインナトリウム溶液(Alcon)の局所付与によって染色し、10秒後に、BSSで徹底的にすすいだ。染色した眼の画像を、画像視野のほぼ全体が角膜で埋まるように、マクロ撮影用クローズアップレンズ(macro and close−up lens)を備えたCanonデジタルカメラで集めた。Novoflex Cold Light Source Macrolight Plus illuminatorで、連続のフラッシュ照射を提供した。上記連続源を使用して、上記Canonカメラのビデオ出力の助けを借りて、眼に焦点を合わせた。フラッシュランプ照射器およびカメラレンズシステムに取り付けられたリングライトは、角膜表面の同期化されかつ均一な照射を提供した。眼を照射し、フルオレセイン励起(482±35nm)および発光(536±40nm)のために設計した一連のフィルタを通して画像を取り込んだ。
【0053】
2個の画像ファイルを、各露出について記録した(画像ディスプレイのために使用されるJPGフォーマットRGB(赤−緑−青)ファイルおよび生のセンサデータを含むCanon生ファイル)。上記生データを、16ビットポータブルグレーマップファイルへと抽出し、これをその後、モザイク除去機能(demosaic function)で加工処理して、フルオレセイン情報を含む緑色画素のみの画像を作製した。円形関心領域(ROI)を、角膜の中心に合わせ、RatOSIWound v 2.0ソフトウェア(Alcon)を使用して、自動分析を行った。自動分析は、上皮創傷を示す単一の大きなスポットのフルオレセイン総陽性領域を計算した。24時間での%閉鎖(図1および図3におけるグラフの縦座標軸に「%閉鎖 24時間」として示される)は、以下のように計算し、また決定した:
【0054】
【数1】

完全に治癒した(すなわち、検出可能な欠損なし;図2および図4のグラフの縦座標軸に「治癒 24時間 n=10」として示される)眼の数を、数/10の眼として正規化した。
【0055】
データを、95 % 信頼区間において、ANOVAとDunnett事後検定を使用して分析した。
【0056】
(結果)
化合物1および化合物5を、0.1%〜3% w/v 濃度範囲に対していくつかの用量で評価した。
【0057】
【化14】

【0058】
特に、化合物1の0.5%用量および1%用量、ならびに化合物5の1%用量は、%創傷閉鎖および完全に治癒した眼の正規化した数に関しては陽性コントロール0.4% HAと同程度に有効であった。これらデータを図1〜4にまとめる。
【0059】
本発明およびその実施形態は、詳細に記載されてきた。しかし、本発明の範囲は、本明細書に記載される任意のプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法、および/または工程の特定の実施形態に限定されるとは意図されない。種々の改変、置換、および変更は、本発明の趣旨および/または本質的特徴から逸脱することなく、開示された材料に対して行われ得る。よって、当業者は、本明細書に記載される実施形態と実質的に同じ機能を発揮するかまたは実質的に同じ結果を達成する後の改変、置換、および/または変更が、本発明のこのような関連する実施形態に従って利用され得ることを、本開示から容易に認識する。従って、以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示されるプロセス、製造、組成物、化合物、手段、方法および/または工程に対するそれらの範囲内にの改変、置換、および変更を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とするヒトにおける角膜創傷治癒を促進するか、または角膜混濁を処置する方法であって、該方法は、式Iの少なくとも1種の化合物:
【化15】


の治療上有効量を含む局所的眼用処方物で、罹患した個体を処置する工程を包含し、ここで:
は、COR、CONR、またはCHORであり:
Rは、H、C1−6直鎖もしくは分枝状のアルキル、C3−6シクロアルキル、またはフェニルであるか、
あるいはRは、式COのカルボン酸塩であり、ここでRは、Li、Na、K、または式NR1011のアンモニウム部分であり;
、Rは、独立して、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、またはOCであるが、ただし、多くてもR、Rのうちの一方のみが、OH、OCH、またはOCであり;
は、H、C(O)R12、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
、R、およびRは、独立して、H、CH、C、C(O)R12、またはCO13であるか;
あるいはRとRまたはRとRは一緒になって、カルボニル基(C=O)を構成し、従って、環式カーボネートを形成するか;
あるいはORは一緒になって、以下に示されるように、環式エステル(ラクトン)を形成し:
【化16】


−R11は、独立して、HまたはC1−6アルキルであり、各アルキル基は、必要に応じて、OHまたはOCH置換基を有し;
12は、H、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
13は、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、またはフェニルであり;
【化17】


は、OR置換基がR絶対配置またはS絶対配置:
【化18】

を与えるように配置され得ることを示す、方法。
【請求項2】
前記処置は、式Iの化合物での処置を包含し、ここで:
は、COR、CONR、CHOR、または式COのカルボン酸塩であり;
は、Li、Na、K、またはNHであり;
Rは、H、C1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニル、またはベンジルであり;
およびRのうちの一方は、Hであり、他方は、H、C1−5アルキル、C3−6シクロアルキル、ベンジル、フェニル、OH、OCH、またはOCであり;
は、H、COCH、またはCHであり;
ORを有する炭素における絶対立体化学は、以下に示されるとおりであり
【化19】


、R、Rは、独立して、H、CH、またはCHCOであるか;
あるいはRとRまたはRとRは一緒になって、カルボニル基(C=O)を構成し、従って、環式カーボネートを形成するか;
あるいはORは一緒になって、以下に示されるような環式エステル(ラクトン):
【化20】


を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式Iの化合物は、以下からなる群:
【化21】

より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記角膜創傷または角膜混濁は、糖尿病;屈折矯正手術に起因する角膜フォトアブレーション;化学熱傷;真菌感染、ウイルス感染もしくは細菌感染の二次的炎症;コンタクトレンズ装着;外傷性損傷;局所的薬物療法/保存薬に起因する欠損;放射線(UV光を含む)に起因する欠損;全身性自己免疫疾患に起因する欠損;涙液膜異常に起因する欠損;神経栄養性欠損;または特発性欠損の結果である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記局所的眼用処方物は、界面活性剤;等張剤;緩衝剤;保存薬;共溶媒;および増粘剤からなる群より選択される1種以上の成分を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記式Iの化合物の治療上有効な量は、0.01〜3%の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記式Iの化合物の治療上有効な量は、0.1〜1%の間である、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−521230(P2013−521230A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555171(P2012−555171)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026175
【国際公開番号】WO2011/106599
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(508185074)アルコン リサーチ, リミテッド (160)
【Fターム(参考)】