説明

解砕整粒機

【課題】 原料をスクリーンの真上から供給できると共に、処理粉体をスクリーンの真下へ円滑に排出できる簡易な構成の解砕整粒機の提供。
【解決手段】 ケーシング3に保持されるスクリーン4は、上方へ開口する略逆円錐台形の容器状で、その周側壁21および底壁22が多孔部とされる。インペラ9を回転するための回転駆動材8は、回転駆動輪41とスポーク輪42とからなる。回転駆動輪41は、ベアリング7を介してケーシング3に保持される。回転駆動輪41は、円環状のプーリとして構成され、歯付きベルト49を介してモータにより回転駆動される。スポーク輪42は、回転駆動輪41の中央穴43に着脱可能にねじ込まれる外筒55と、この外筒55の中央穴59にアーム56を介して保持される内筒54とを備える。インペラ9は、回転駆動輪41の内筒54にシャフト64を保持され、スクリーン4内で回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体原料を解砕、粉砕、整粒または造粒するための解砕整粒機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品などの製造には、粉体の粒度の調整プロセスが必要なことが多く、そのため解砕整粒機が使用されている。解砕整粒機は、スクリーンと呼ばれる篩と、スクリーン内で回転されるインペラと呼ばれる羽根車とを備え、スクリーン内に供給された原料をインペラの回転によりスクリーンを通して、整粒や造粒などを行う装置である。
【0003】
このような解砕整粒機として、従来、下記各特許文献に開示されるものが提案されている。特許文献1に開示される発明では、インペラは、そのシャフトの上端部においてプーリにより回転駆動される。この場合、原料は、スクリーンの真上から供給できず、斜め上方から供給される。従って、原料の投入構造が複雑であると共に、原料によっては円滑に供給できないおそれがある。また、シャフトの真上に駆動機構を設けると、装置の高さが増し、コンパクトに構成できないのみならず、前後に他の装置を接続したい場合には、レイアウト上の制約が大きくなる。
【0004】
一方、特許文献2に開示される発明では、インペラは、そのシャフトの下端部においてかさ歯車により回転駆動される。この場合、原料はスクリーンの真上から供給できるが、処理後にはスクリーンの真下へは円滑に排出できない。しかも、排出した処理粉体が、駆動部に付着、堆積するおそれがある。また、スクリーンの底壁にシャフトを通す関係上、底壁に側壁と同様な多孔部を形成できず、その分だけ処理能力の点で不利である。さらに、シャフトの真下に駆動機構を設けると、装置の高さが増し、コンパクトに構成できないのみならず、前後に他の装置を接続したい場合には、レイアウト上の制約が大きくなる。
【0005】
特許文献3に開示される発明では、インペラのシャフトの中途部がプーリにより駆動される。この場合、装置の高さはコンパクトにできるが、シャフトは上下の軸承(12,13)で支持されており、構造が複雑であると共に、特にスクリーンの底壁を貫通してシャフトの下端部を支持する点で、上述した特許文献2に記載の発明と同様の課題が残る。
【特許文献1】特許第2637362号公報(段落番号0016−0019、図1)
【特許文献2】特許第2693375号公報(請求項1、段落番号0005、図1、図2、図6)
【特許文献3】実公昭37−26995号公報(考案の詳細な説明の欄、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、原料をスクリーンの真上から供給できると共に、スクリーンの真下に障害物がなく、処理粉体をスクリーンの真下へ円滑に排出できる簡易な構成の解砕整粒機を提供することにある。また、スクリーンの側壁だけでなく底壁にも多孔部を形成可能とすることで、処理能力の向上を図ることができる解砕整粒気を提供することを課題とする。また、好ましくは、分解洗浄が容易で、軸受部などへの粉体の進入を防止し、またインペラの羽先の変更が可能な解砕整粒機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、位置決めされたケーシングと、上方へ開口する容器状で、その構成壁に多孔部を有し、前記ケーシングに保持されるスクリーンと、円環状部を有し、その中央穴を前記スクリーンの上部開口と対応して配置され、前記中央穴を取り囲むよう設けられるベアリングを介して、前記円環状部にて前記ケーシングに対し回転可能に保持され、回転駆動される回転駆動材と、この回転駆動材の前記中央穴の中央部から前記円環状部へ放射状に設けられる複数のアームにて、前記中央穴の中央部にシャフトが保持され、前記回転駆動材を介して前記ベアリングのみで保持され、前記スクリーン内で回転されるインペラとを備えることを特徴とする解砕整粒機である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、インペラは、そのシャフトがスポーク状のアームを介して回転駆動材の円環状部の中央部に保持され、その円環状部のみにてケーシングに対しベアリングで回転可能に保持される。従って、スクリーンの上下にインペラの軸受部や駆動部を配置する必要がなく、原料をスクリーンの真上から供給できると共に、処理粉体をスクリーンの真下へ円滑に排出できる。また、スクリーンの上下にインペラの軸受部や駆動部を配置する必要がないので、スクリーンの形状がたとえば上方へ開口する略逆円錐台状または略円筒状の場合、その側壁だけでなく底壁にも多孔部を形成することができ、処理能力の向上を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記回転駆動材は、円環状の回転駆動輪と、その中央穴に着脱可能に保持されるスポーク輪とを備えて構成され、前記スポーク輪は、前記回転駆動輪の中央穴に着脱可能に設けられる外筒を備え、この外筒の中央穴に前記アームを介して前記インペラが保持されることを特徴とする請求項1に記載の解砕整粒機である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、回転駆動材を回転駆動輪とスポーク輪とから構成し、回転駆動輪とスポーク輪とを着脱可能に構成した。これにより、スポーク輪を取り外すことで、装置の洗浄を容易に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記回転駆動輪または前記外筒を上下から挟むよう設けられる前記ケーシングまたはそれに固定の部材と、前記回転駆動輪または前記外筒との上下の隙間から、内方へ空気を噴出して前記隙間を封止することを特徴とする請求項2に記載の解砕整粒機である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、回転駆動輪または外筒の上下から、回転駆動輪や外筒の径方向内側へ向けて空気を噴出させつつ運転することで、回転駆動輪の軸受部や駆動部などへの粉体の進入を防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記スポーク輪は、上方から供給される原料を下方の前記スクリーン内へ送り込むように、前記アームが断面略三角形状に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の解砕整粒機である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、回転するスポーク輪のアームの作用により、上方からの原料を下方のスクリーン内へ円滑に送り込むことができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記スポーク輪は、前記回転駆動輪の中央穴に着脱可能にねじ込まれる前記外筒と、この外筒の中央穴に前記アームを介して保持される内筒とを備えて構成され、前記インペラは、前記スクリーンの内側に沿う形状の羽根板と、この羽根板を取替可能に取り付けられる前記シャフトとを備え、前記シャフトは、下端部に径方向および下方へ開口した切込みが形成され、この切込みに前記羽根板を差し込まれて着脱可能に固定される一方、上端部を前記スポーク輪の内筒にはめ込まれて着脱可能に固定されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の解砕整粒機である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、回転駆動輪とスポーク輪とがねじにて着脱可能とされるので、着脱が容易である。また、インペラは、羽根板とシャフトとから構成され、シャフトの切込みに羽根板を差し込んで固定される。従って、羽根板の取り替えが容易であり、たとえば羽先の形状が異なる羽根板を、共通のシャフトに対し容易に付け替えることができる。羽先だけを取り替える構成とする場合には、羽先部が大きくなったり、構造が複雑となったりするが、羽根板として取り替える構成とすることで、そのような不都合を回避できる。
【0017】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記シャフトは、段付き丸棒状とされ、前記シャフトの下方大径部には、前記羽根板を取り付けるための前記切込みが、径方向および下方へ開口して形成されており、前記シャフトの上方小径部は、上端部がボルト部に形成されており、前記シャフトは、前記スポーク輪の内筒にはめ込まれ、この内筒を前記シャフトの段付き部との間で挟み込むよう前記ボルト部にナットが締め込まれ、前記シャフトの段付き部と前記内筒の下端部との間に介在させるスペーサの有無、厚さまたは枚数を変更することで、前記インペラの上下方向の設置高さを調整可能とされたことを特徴とする請求項5に記載の解砕整粒機である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、簡易な構成で容易に、スクリーンに対するインペラの位置調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成で、原料をスクリーンの真上から供給できると共に、スクリーンの真下に障害物がなく、処理粉体をスクリーンの真下へ円滑に排出することができる。また、スクリーンの側壁だけでなく底壁にも多孔部を形成することで、処理能力の向上を図ることも可能となる。また、実施の形態に応じて、分解洗浄が容易で、軸受部などへの粉体の進入を防止し、またインペラの羽先の変更を可能に構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の解砕整粒機について、実施例に基づきさらに詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の解砕整粒機の一実施例を示す図であり、図1は一部を断面にした概略正面図、図2は一部を切り欠いた概略平面図である。また、図3は、本実施例の解砕整粒機の主要部を示す縦断面図であり、図4は、その分解図である。
【0021】
本実施例の解砕整粒機1は、上下へ貫通して粉体処理路2を形成されるケーシング3と、このケーシング3に対し着脱可能に粉体処理路2に設けられるスクリーン4と、前記ケーシング3に下受け材5と上受け材6とを介して保持されるベアリング7と、このベアリング7により粉体処理路2の軸線まわりに回転可能に保持される回転駆動材8と、この回転駆動材8に着脱可能に保持されて前記スクリーン4内で回転されるインペラ9と、前記ケーシング3の蓋板10に固定され前記回転駆動材8の径方向内側上部に配置される上固定リング11とを主要部として備える。
【0022】
図1および図2に示すように、ケーシング3は、上方へ開口する中空容器であり、ケース本体12を備える。そして、このケース本体12は、上部に、外方への延出部13を水平に有する。ケース本体12の上部開口には、ケース蓋14が着脱可能に設けられる。一方、前記延出部13も、上方へ開口する中空状とされており、その上部開口には蓋板10がボルト15にて着脱可能に設けられる。
【0023】
このような構成のケーシング3は、ベース16に立設された支柱17の上端部に保持される。ベース16は、水平に配置され、その四隅にはキャスタ18が設けられる。このキャスタ18により、解砕整粒機1は移動可能とされる。
【0024】
図3および図4に示すように、ケーシング3には、前記延出部13の底壁19に、丸穴20が上下に貫通して形成される。この丸穴20と対応した位置にスクリーン4が設けられるなどして、その丸穴20の軸線に沿って粉体処理路2が形成される。
【0025】
スクリーン4は、上方へのみ開口する略逆円錐台形の筒状とされ、その周側壁21および底壁22は多孔部とされる。具体的には、スクリーン4は、上方へ行くに従って拡径する有底筒状とされ、その傾斜した周側壁21、および底壁22の略全域には、多数の小穴23,23,…が形成されている。さらに、スクリーン4は、略逆円錐台形の周側壁21の上端部に、上方へ延出して短円筒部24を有し、その上端部には外方へ延出してフランジ25を有する。
【0026】
スクリーン4は、スクリーン押え26により、ケーシング3に対し着脱可能に取り付けられる。ケーシング3へのスクリーン4の取り付けについて説明すると、まず、ケーシング3の前記底壁19の上面には、厚肉円筒状の下受け材5がボルト95で固定され、その中空穴27は前記底壁19の丸穴20と連続的に設けられる。下受け材5の内周側上部には、径方向内側への環状突出部28が一体形成されている。一方、スクリーン押え26は、下受け材5の中空穴27にはめ込まれる円筒状で、下端部には外方へのツバ部29を有する。従って、下受け材5の中空穴27に、下方からスクリーン4をはめ込んだ後、スクリーン押え26をはめ込めばよい。スクリーン押え26は、ケーシング3の底壁19にツバ部29が重ね合わされる。そして、ケーシング3の底壁19からツバ部29を貫通して下方へ突出するボルト30に蝶ナット31がねじ込まれて、ケーシング3に対しスクリーン4が着脱可能に保持される。これにより、スクリーン4は、そのフランジ25が下受け材5の環状突出部28とスクリーン押え26の上端部とに挟まれて保持される。
【0027】
ベアリング7は、同心円状に配置された略円筒状の内輪32と外輪33との間に、その周方向へ配列されて多数の転動体34が保持されて構成される。これにより、ベアリング7は、内輪32と外輪33とが転動体34を介して回転自在とされる。本実施例では、転動体34がボールから構成されるボールベアリングとされる。このような構成のベアリング7は、その軸線を粉体処理路2の軸線に沿って配置され、内輪32が下受け材5とそれに着脱可能に固定される上受け材6とにより保持される。
【0028】
厚肉円筒状の下受け材5の上部には、径方向外側へ行くに従って順に、第一円環状面35、第二円環状面36、第三円環状面37が、順次下方へ凹んでそれぞれ水平に形成されている。さらに、第三円環状面37には、円環状の凹溝38が形成されている。そして、下受け材5の第一円環状面35には、短円筒状の上受け材6が着脱可能に固定される。この上受け材6は、下受け材5の下面から上方へねじ込まれるボルト39により、下受け材5に対し着脱可能に固定される。
【0029】
ベアリング7の内輪32は、その内径が第一円環状面35と第二円環状面36との間の段付き部の直径に対応しており、その段付き部にはめ込まれて、下面を第二円環状面36に当接される。そして、その状態で、下受け材5の第一円環状面35に上受け材6が固定される。これにより、ベアリング7は、その内輪32が、下受け材5の第二円環状面36と、上受け材6の上部から径方向外側へ突出する円環状突出部40との間に挟み込まれて固定される。
【0030】
回転駆動材8は、本実施例では回転駆動輪41とスポーク輪42とから構成される。本実施例の回転駆動輪41は、プーリとして構成される。具体的には、回転駆動輪41は、厚肉短円筒状であり、その中央穴43,44の軸線を粉体処理路2の軸線と一致して配置される。回転駆動輪41の下面には、下方へ開口して円環状凹溝45が、前記中央穴43,44と同心に形成されている。この円環状凹溝45は、外周側の下部を大径部46とするように、段付きに形成されている。そして、この大径部46にベアリング7の外輪33が固定される。
【0031】
すなわち、ベアリング7は、その外輪33が円環状凹溝45の大径部46にはめ込まれた状態で、外輪押え47により回転駆動輪41に固定される。外輪押え47は、回転駆動輪41の外周側下面にボルト48で固定される円環状の部材である。これにより、ベアリング7は、その外輪33が、円環状凹溝45の段付き部と、外輪押え47との間に挟み込まれて固定される。なお、外輪押え47の径方向内側への延出部は、下受け材5の凹溝38との間でラビリンスシールを形成する。
【0032】
このようにして下受け材5にベアリング7を介してのみ回転駆動輪41が回転自在に保持される。そして、その状態では、回転駆動輪41の円環状凹溝45の内周側に、上受け材6が回転駆動輪41との間に僅かの隙間を保って配置される。
【0033】
回転駆動輪41は、歯付きベルト49を介してモータ50により回転駆動される。そのため、回転駆動輪41の外周面には、歯付きベルト49にかみ合う歯51が多数形成されている。また、図1および図2に示すように、ケース本体12内には、駆動軸を上方へ向けてモータ50が収容されており、その駆動軸の上端部には歯付きプーリ52が固定されている。そして、この歯付きプーリ52と回転駆動輪41との間に、歯付きベルト49が掛け回される。これにより、モータ50を回転させると、歯付きベルト49を介して、回転駆動輪41が回転される。
【0034】
回転駆動輪41の中央穴43,44は、段付き穴とされており、その軸線を粉体処理路2の軸線と一致して配置される。下側の小径穴43は、ネジ穴とされており、その直径は、スクリーン4のフランジ25と略同一とされる。上側の大径穴44には、僅かの隙間を保って、上固定リング11がはめ込まれる。この上固定リング11は、ケーシング3の蓋板10の下面に、ボルト53により固定される。なお、回転駆動輪41の上部は、上固定リング11との間だけでなく、蓋板10との間にも、僅かな隙間を空けて配置される。
【0035】
スポーク輪42は、同心円筒状に配置される内筒54と外筒55とを備える。内筒54は、その周方向複数箇所(図示例では三ヶ所)から径方向外側へ向けて放射状に設けられるスポーク状のアーム56により、外筒55と連結される。外筒55は、外周面がネジ部57(図5)とされており、回転駆動輪41のネジ穴43に着脱可能にねじ込まれて固定される。その際、外筒55の外周面下部に設けたツバ部58に、回転駆動輪41の下面が当接するまで、回転駆動輪41にスポーク輪42が下方からねじ込まれる。なお、インペラ9の回転時、スポーク輪42は、回転駆動輪41に対し締め込まれる方向へ力を受けることになる。
【0036】
ところで、外筒55の中央穴59は、上方へ行くに従って、縮径する傾斜面に形成されている。また、スポーク輪42は、上方から供給される原料を下方へ送り込むように、各アーム56の断面(アーム56の延出方向と直交する断面)が略三角形状に形成されるのが好ましい。具体的には、本実施例では、各アーム56は、図5に示すように、上面60が水平面とされる一方、回転方向基端面61が垂直面とされた断面略直角三角形状に形成される。これにより、アームの下面(回転方向先端面)62は、回転方向基端側(回転方向と逆側)へ行くに従って下方へ傾斜して形成される。従って、スポーク輪42が回転すると、アーム56の作用により、上方からの原料の下方への送り込みが助長される。
【0037】
図5は、スポーク輪42へのインペラ9の取付構造を示す分解斜視図である。また、図6は、インペラ9の取付状態の横断面図である。これらの図に示すように、スポーク輪42の内筒54には、インペラ9が着脱可能に保持される。本実施例のインペラ9は、羽根板63とシャフト64とを備える。羽根板63は、スクリーン4の断面形状に適合する略逆台形状の板材から構成される。羽根板63は、下端辺65と左右両側端辺66,66における羽先の断面形状が、本実施例では略半円形状とされている。羽根板63は、左右方向中央部に略矩形状の薄肉部67が形成されており、その薄肉部67の上部には略矩形状の切欠き68が上方へ開口して形成されている。また、薄肉部67の中央部には、板面と垂直に貫通穴69が形成されている。
【0038】
一方、シャフト64は、段付き丸棒状とされる。シャフト64の下方大径部70には、径方向および下方へ開口して切込み71が形成されている。この切込み71の厚さは、羽根板63の薄肉部67の厚さと対応している。また、シャフト64には、周側面の一部から径方向内側へ向けて、ボルト穴72が形成されている。このボルト穴72は、切込み71を垂直に横断すると共に、シャフト64の周側面への開口部が大径部73とされている。
【0039】
このような構成であるから、シャフト64の切込み71に羽根板63の薄肉部67をはめ込んで、シャフト64に羽根板63を着脱可能に固定することができる。シャフト64の切込み71に羽根板63の薄肉部67をはめ込んだ状態では、シャフト64のボルト穴72は、羽根板63の貫通穴69と対応して配置される。従って、その状態で、シャフト64のボルト穴72に六角穴付きボルト74をねじ込めば、そのボルト74が羽根板63を貫通して、シャフト64に羽根板63が保持される。ボルト74を十分ねじ込んだ状態では、ボルト74の頭部は、ボルト穴72の大径部73に収容される。
【0040】
一方、シャフト64の上方小径部75には、上端部にボルト部76が形成されている。スポーク輪42の内筒54にシャフト64の上部を下方からはめ込んで、座金77を介してボルト部76に袋ナット78を締めることで、スポーク輪42の内筒54にインペラ9を着脱可能に保持することができる。この際、シャフト64の段付き部と内筒54の下端部との間に、薄い座金状のスペーサ79を介在させることで、スクリーン4に対するシャフト64の上下方向の高さを調整することができる。すなわち、スペーサ79の有無、厚さまたは枚数のいずれか一以上を変更することで、インペラ9の上下方向の設置高さを調整することができる。
【0041】
再び図3および図4に基づき説明すると、蓋板10および上固定リング11には、上下方向へ貫通穴80を有している。この貫通穴80は、外筒55の上部開口と同等か僅かに小径に形成されている。また、蓋板10の上面には、前記貫通穴80と連続的に、略円筒状の原料投入筒81が設けられている。一方、ケーシング3の底壁19の下面には、処理粉体排出筒82が設けられている。
【0042】
ところで、下受け材5には、円環状中空部83が形成されると共に、周方向等間隔に複数の噴出路84が形成されている。各噴出路84は、上下方向へ沿って配置され、下端部が円環状中空部83と連通する一方、上端部が下受け材5の径方向内側上面へ開口する。また、円環状中空部83には、空気圧縮機(不図示)からの圧縮空気が送気管85を介して供給可能とされる。従って、解砕整粒機1の運転中、円環状中空部83へ圧縮空気を供給すれば、その圧縮空気は各噴出路84を介して、回転駆動輪41の下面と下受け材5の上面との隙間から、径方向内側へ噴出される。これにより、回転駆動輪41の軸受部や駆動部などへの粉体の進入を防止することができる。
【0043】
一方、蓋板10の上面にも、原料投入筒81を取り囲むように、補助材86により円環状中空部87が形成されている。そして、上固定リング11には、蓋板10を貫通して、周方向等間隔に複数の噴出路88が形成されている。各噴出路88は、上下方向へ沿って配置され、上端部が蓋板10を貫通して円環状中空部87と連通する一方、下端部が上固定リング11の径方向内側下面へ開口する。また、円環状中空部87には、空気圧縮機(不図示)からの圧縮空気が送気管89を介して供給可能とされる。従って、解砕整粒機1の運転中、円環状中空部87へ圧縮空気を供給すれば、その圧縮空気は噴出路88を介して、回転駆動材8(図示例ではスポーク輪42の外筒55)の上面と上固定リング11の下面との隙間から、径方向内側へ噴出される。これにより、回転駆動輪41の軸受部や駆動部などへの粉体の進入を防止することができる。
【0044】
以上の構成の解砕整粒機1は、粉体原料の解砕、粉砕、整粒または造粒などに用いられる。そのために、回転駆動材8(回転駆動輪41およびスポーク輪42)を介して、スクリーン4内でインペラ9を回転させた状態で、原料投入筒81から原料を投入すればよい。供給された原料は、回転するスポーク輪42のアーム56の作用により下方へ押し込まれ、スクリーン4内で回転するインペラ9の作用により、スクリーン4において解砕、整粒されて、スクリーン4から下方へ排出される。この際、スポーク輪42の外筒55の上下から径方向内側へ向けて圧縮空気を噴出させることで、回転駆動輪41の軸受部や駆動部などへの粉体の進入を防止することができる。
【0045】
ところで、スクリーン4に対するインペラ9の上下位置を調整するには、インペラ9のシャフト64の上端部にねじ込まれた袋ナット78を外すと共に、ケーシング3の底壁19にスクリーン押え26を保持する蝶ナット31を取り外せばよい。これにより、スクリーン押え26、スクリーン4およびインペラ9を下方へ取り外すことができ、スペーサ79を調整して再び組み付けることで、スクリーン4に対するインペラ9の位置調整を容易に行うことができる。
【0046】
また、本実施例の解砕整粒機1は、分解可能であるから、洗浄が容易である。特に接粉部(粉体に接触する部分)であるスポーク輪42は、回転駆動輪41にねじ込まれているだけであるから、その取り外しが容易で、洗浄を容易に行うことができる。また、スポーク輪42に対しインペラ9を取り外すことができ、そのインペラ9は、シャフト64と羽根板63との差し込み構造で着脱可能であるから、この点からも洗浄が容易である。しかも、シャフト64に対し、羽根板63を取り替え可能であるから、たとえば図6から図8に示すように、羽先形状の異なる羽根板63を共通のシャフト64に取り付けて使用することができる。
【0047】
本実施例の構成によれば、従来のようにスクリーン4の斜め上方から原料を供給する必要がなく、原料投入筒81をスクリーン4およびインペラ9の真上に設けることができる。また、スクリーン4で解砕、整粒された処理粉体は、スクリーン4の真下から障害物なしに排出される。また、スクリーン4には、周側壁21だけでなく底壁22も多孔部とできるので、解砕整粒機1の処理能力の向上を図ることもできる。
【0048】
また、本実施例のようにプーリ状の回転駆動材8でインペラ9を回転させる場合、回転駆動材8とその周囲の固定材(下受け材5、上受け材6、上固定リング11など)とに隙間を設ける必要がある。ところが、そのような構成の場合、回転駆動材8が回転すると、遠心力でその隙間から外方へ空気の流れができてしまい、その空気の流れにのって粉体が前記隙間へ入り込むおそれがある。ところが、本実施例では、その隙間から圧縮空気を内方へ噴出させておくことで、前記隙間への粉体の進入が防止される。
【0049】
また、羽先(羽根板63の端辺部)の形状は、処理する粉体により、断面が円形、矩形、三角形状など、各種のものが要求され得るし、長期の使用による摩耗により取り替えが要求されるが、本実施例では、インペラ9は、共通のシャフト64に対し羽根板63を取替可能としたので、そのような要求に応えることができる。しかも、単に羽先だけを交換しようとすると、構造が複雑で薄い歯の場合には対応できないが、シャフト64に対し羽根板63を差し込み構造とすることで、容易に対応することができる。
【0050】
本発明の解砕整粒機1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、スクリーン4は、略逆円錐台状としたが、略逆円錐状としたり、図9に示すように略円筒状としたりできる。スクリーン4を略円筒状とする場合、スクリーン4には、周側壁21だけでなく底壁22にも、多数の小穴23,23,…を形成することができる。なお、スクリーン4の形状変更に合わせて、インペラ9の形状も変更されることは言うまでもない。すなわち、羽根板63は、前記実施例では略台形状とされたが、図9では、略矩形状とされる。
【0051】
また、前記実施例では、回転駆動輪41は、ベルト49により駆動されるプーリとされたが、図10に示すように、歯車により駆動されてもよい。この場合、回転駆動輪41の外周部に歯車90が形成されており、その歯車90には周方向一部においてかさ歯車91にかみ合わされる。そして、モータ50の回転駆動力を、歯車92,93およびシャフト94を介して、かさ歯車91に伝達し、回転駆動輪41を回転駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の解砕整粒機の一実施例を示す概略正面図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1の解砕整粒機の概略平面図であり、一部を切り欠いて示している。
【図3】図1の解砕整粒機の主要部を示す縦断面図である。
【図4】図3の分解図である。
【図5】図1の解砕整粒機のスポーク輪へのインペラの取付構造を示す分解斜視図である。
【図6】図1の解砕整粒機のインペラの取付状態の横断面図である。
【図7】図6の変形例を示す図である。
【図8】図6のさらに別の変形例を示す図である。
【図9】図3の変形例を示す図である。
【図10】図1の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 解砕整粒機
2 粉体処理路
3 ケーシング
4 スクリーン
5 下受け材
6 上受け材
7 ベアリング
8 回転駆動材
9 インペラ
10 蓋板
11 上固定リング
19 底壁
21 周側壁(構成壁)
22 底壁(構成壁)
23 小穴
41 回転駆動輪
42 スポーク輪
43 中央穴
54 内筒
55 外筒(回転駆動輪41と共に回転駆動材8の円環状部を構成)
56 アーム
59 中央穴
63 羽根板
64 シャフト
70 下方大径部
71 切込み
75 上方小径部
76 ボルト部
78 ナット
79 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めされたケーシングと、
上方へ開口する容器状で、その構成壁に多孔部を有し、前記ケーシングに保持されるスクリーンと、
円環状部を有し、その中央穴を前記スクリーンの上部開口と対応して配置され、前記中央穴を取り囲むよう設けられるベアリングを介して、前記円環状部にて前記ケーシングに対し回転可能に保持され、回転駆動される回転駆動材と、
この回転駆動材の前記中央穴の中央部から前記円環状部へ放射状に設けられる複数のアームにて、前記中央穴の中央部にシャフトが保持され、前記回転駆動材を介して前記ベアリングのみで保持され、前記スクリーン内で回転されるインペラと
を備えることを特徴とする解砕整粒機。
【請求項2】
前記回転駆動材は、円環状の回転駆動輪と、その中央穴に着脱可能に保持されるスポーク輪とを備えて構成され、
前記スポーク輪は、前記回転駆動輪の中央穴に着脱可能に設けられる外筒を備え、この外筒の中央穴に前記アームを介して前記インペラが保持される
ことを特徴とする請求項1に記載の解砕整粒機。
【請求項3】
前記回転駆動輪または前記外筒を上下から挟むよう設けられる前記ケーシングまたはそれに固定の部材と、前記回転駆動輪または前記外筒との上下の隙間から、内方へ空気を噴出して前記隙間を封止する
ことを特徴とする請求項2に記載の解砕整粒機。
【請求項4】
前記スポーク輪は、上方から供給される原料を下方の前記スクリーン内へ送り込むように、前記アームが断面略三角形状に形成されている
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の解砕整粒機。
【請求項5】
前記スポーク輪は、前記回転駆動輪の中央穴に着脱可能にねじ込まれる前記外筒と、この外筒の中央穴に前記アームを介して保持される内筒とを備えて構成され、
前記インペラは、前記スクリーンの内側に沿う形状の羽根板と、この羽根板を取替可能に取り付けられる前記シャフトとを備え、
前記シャフトは、下端部に径方向および下方へ開口した切込みが形成され、この切込みに前記羽根板を差し込まれて着脱可能に固定される一方、上端部を前記スポーク輪の内筒にはめ込まれて着脱可能に固定される
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の解砕整粒機。
【請求項6】
前記シャフトは、段付き丸棒状とされ、
前記シャフトの下方大径部には、前記羽根板を取り付けるための前記切込みが、径方向および下方へ開口して形成されており、
前記シャフトの上方小径部は、上端部がボルト部に形成されており、
前記シャフトは、前記スポーク輪の内筒にはめ込まれ、この内筒を前記シャフトの段付き部との間で挟み込むよう前記ボルト部にナットが締め込まれ、
前記シャフトの段付き部と前記内筒の下端部との間に介在させるスペーサの有無、厚さまたは枚数を変更することで、前記インペラの上下方向の設置高さを調整可能とされた
ことを特徴とする請求項5に記載の解砕整粒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−274019(P2009−274019A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128191(P2008−128191)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(508145492)株式会社昭和化学機械工作所 (2)
【Fターム(参考)】