説明

触媒、排ガス浄化触媒、及び触媒の製造方法

【課題】 耐久性に優れた触媒を提供する。
【解決手段】 粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、触媒、排ガス浄化触媒、及び触媒の製造方法に関し、特に内燃機関から排出される排ガスを浄化する排ガス浄化用の触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガス規制は世界的に拡大している。このため、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属粒子を多孔体酸化物であるアルミナ(Al)等の担体に担持させ、さらに耐火性無機担体等にコーティングした触媒が、燃料改質触媒、自動車排ガス浄化触媒を目的として開発が進められ、使用されている。そして、排ガスの規制強化に対応して自動車1台あたりに使用される触媒量が増加していることから、自動車1台あたりに使用される貴金属量も増加し、自動車のコストが増加するという問題がある。また、昨今のエネルギ資源問題、二酸化炭素排出に伴う地球温暖化問題の解決する手段として注目されている燃料電池技術においても触媒として貴金属が使用されているため、資源枯渇の問題がある。このため、触媒に使用する貴金属量を減らす必要がある。
【0003】
貴金属の触媒活性は、貴金属表面で反応が進む接触反応であるため、貴金属の持つ表面積にほぼ比例する。このため、少ない貴金属量から最大限の触媒活性を得るためには、粒径が小さく高比表面積の貴金属粒子を作製し、その粒径を維持しつつ多孔質体等の担体上に均一に分散させることが望ましい。しかしながら、貴金属粒径1[nm]以下の微粒子の場合には、貴金属粒子の表面反応性が高く、貴金属粒子は大きな表面エネルギを持っているため非常に不安定である。このため、貴金属粒子は互いに接近して凝集(シンタリング)しやすい。特に、Ptは加熱すると凝集が著しいことから、担体上に分散担持してもPtが凝集して粒径が大きくなり、触媒活性が低下する。自動車用の触媒は通常800〜900[℃]、場合によっては1000[℃]を越える高温にさらされるため、微粒子の状態で触媒活性を維持するのは困難である。このため、貴金属粒子の凝集は、少ない貴金属量で排ガス浄化触媒を成立させる上での最大の難点となっている。
【0004】
貴金属粒子の凝集を防止するためには、貴金属粒子の表面エネルギを下げることが考えられる。しかし、表面エネルギを抑えるためには貴金属粒子の粒径を50[nm]、100[nm]等の大きな粒子にする必要があり、この粒径の場合には触媒活性自体を失う問題がある。
【0005】
そこで、例えば、平均粒径が1〜100[nm]の第一担体粒子に貴金属を担持し、次いで第一担体粒子と同等以上及び/又は同等未満の平均粒径を有する第二担体粒子を混合することにより、貴金属粒子の凝集を抑制した排ガス浄化触媒が提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−249198公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、貴金属担持濃度が耐火性無機担体にコーティング可能な量にすると耐久後の貴金属粒子径が大きくなりすぎるため活性低下が大きい。逆に、貴金属担持濃度を触媒性能低下が少ない量にすると、耐火性無機担体へのコーティングが不可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、第1の発明である触媒は、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、を有することを要旨とする。
【0008】
また、第2の発明である触媒の製造方法は、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末を作製するアルミナ微粉末作製工程と、アルミナ微粉末を水中で分散する分散工程と、分散工程の後にアルミナ微粉末に貴金属塩を担持させる担持工程と、担持工程の後に、さらにアルミナ微粉末と同量以上の第二担体を混合する混合工程と、混合工程の後に100〜150[℃]の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程の後に500[℃]未満の温度で焼成する焼成工程と、を有することを要旨とする。
【0009】
さらに、第3の発明である排ガス浄化触媒は、第1の発明である触媒がコーティングされた耐火性無機担体とを有する排ガス浄化触媒であって、耐火性無機担体容量1[L]当たりの触媒のコート量が600[g]以下であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、この触媒では、アルミナ上の貴金属全てが凝集しても粒径が10[nm]以下の大きさになる量のみをアルミナに担持しているため、熱耐久によりアルミナ上の貴金属全てが凝集しても触媒性能が著しく低下することはない。このため、貴金属の使用量を減らしても触媒作製時の触媒活性能が維持され、かつ、耐火性無機担体へのコーティングが可能な触媒が得られる。
【0011】
第2の発明によれば、アルミナに、アルミナ上の貴金属が凝集しても粒径が10[nm]以下の大きさになる量のみを均一に分散担持させることが可能となる。
【0012】
第3の発明によれば、耐久性があり、触媒活性が維持された排ガス浄化触媒が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る触媒、排ガス浄化触媒、及び触媒の製造方法の詳細を、図1〜図5を用いて説明する。
【0014】
(触媒)
本発明の実施の形態に係る触媒について説明する。本実施の形態に係る触媒1は、図1(a)に示すように、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ2と、アルミナ2上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属3と、を有することを特徴とする。この触媒1では、アルミナ2上の全ての貴金属3が凝集しても粒径が10[nm]以下の大きさになる量のみを担持しているため、熱耐久によりアルミナ2上の貴金属3全てが凝集しても触媒性能が著しく低下することはない。このため、貴金属の使用量を減らしても触媒作製時の触媒活性能が維持され、かつ、耐火性無機担体へのコーティングが可能な触媒が得られる。
【0015】
この触媒1では、熱耐久によりアルミナ2上に担持された貴金属3全てが凝集して一つの粒子になった場合に、図1(b)に示すように、熱耐久後の触媒11を構成するアルミナ12上に担持された貴金属13の粒径は10[nm]以下である。アルミナ上に担持された貴金属の粒径が10[nm]以下の場合には、貴金属の表面エネルギと触媒活性のバランスが保たれ、さらに加熱した場合でも貴金属が凝集しにくく、耐久性を維持することができる。このため、本実施の形態に係る触媒では、熱耐久後であっても触媒作製時と比べて大幅に触媒活性が低下することがない。なお、貴金属は、粒径が5[nm]より小さくなると著しく融点が下がり、貴金属が溶けて凝集しやすくなる。一方、貴金属の粒径は小さいほど転化率が高く触媒としての機能が高いが、粒径が大きい場合には貴金属の触媒活性が低下する。このため、貴金属の凝集と触媒活性のバランスを検討すると、熱耐久後の貴金属の粒径は10[nm]以下であれば良く、好ましくは3[nm]〜8[nm]であり、特に好ましくは2[nm]〜5[nm]である。
【0016】
ここで、一例として、図2に、アルミナに対する貴金属の担持濃度が0.3[%]及び3[%]のときのアルミナに担持した貴金属の表面積とNO転化率との関係を示す。図2のAは、触媒作製時、つまり熱耐久前の貴金属の担持濃度が3[%]のときのNO転化率を示している。ここでは、貴金属の粒径は1.5[nm]である。図2のBは、熱耐久前のアルミナへの貴金属の担持濃度が0.3[%]のときのNO転化率を示している。ここでは、貴金属の粒径が1.5[nm]である。図2のCは、図2A及びBで示した触媒に400[℃]の熱耐久をかけた後のNO転化率を示している。図2のCに示すように、図2Aに示す触媒は、熱耐久前のNO転化率は90[%]以上を示し高性能であるが、熱耐久後には60[%]以下にまで性能が低下する。この原因として、図2Aに示す触媒は熱耐久により貴金属の粒径が1.5[nm]から60[nm]程に粗大化して貴金属の表面積が下がることが考えられる。図2Aに示す触媒に対し、貴金属担持濃度が図2Aに示す触媒の1/10である図2Bに示す触媒では、熱耐久前のNO転化率は70[%]程度であるが、熱耐久後のNO転化率は50[%]程度であり、図2に示す触媒ほど大きく性能が低下しない。この図2Bに示す触媒では、貴金属担持濃度が1/10であり、熱耐久後の粒径が1.5[nm]から5[nm]程度に抑えられたため、触媒性能が著しく低下することはないと考えられる。このように、この触媒では、少ない貴金属量で耐久性に優れた触媒を得ることが可能となる。
【0017】
また、本実施の形態に係る触媒は、作製した触媒をさらに700[℃]で3[時間]焼成した後の貴金属粒径が10[nm]以下であることが好ましい。この場合には、焼成後であっても触媒性能が著しく低下せず、耐久性に優れた触媒を得ることが可能となる。なお、貴金属粒径が10[nm]より大きい場合には、貴金属の触媒活性が低下するため好ましくない。
【0018】
この数字の根拠を、一例をあげて説明する。比表面積200[m/g]のアルミナ上のPt粒子が凝集しても粒径が5[nm]となる場合、貴金属担持濃度を0.05[重量%]とすると、触媒量が100[g]の場合、この触媒中には0.05[g]のPtが存在することになる。この場合のPtのモル数は2.6×10−4[mol]となる。粒径が5[nm]のPt粒子中には約6000個程のPt原子が存在するので、100[g]の触媒量中には粒径が5[nm]のPt粒子が2.6×10−4個存在する。このPt粒子をアルミナ中に均一に分散させる場合、粒径5[nm]のPt粒子が占有する面積は、アルミナ表面積200×触媒量100/粒径5[nm]のPt粒子に含まれるPt原子数約6000より、およそ77000[nm]となる。この面積を1つの球体が有すると考えると、その球体の直径は、77000=4πrから計算するとアルミナの粒径は約500[nm]となる。
【0019】
なお、貴金属は、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)の群から選ばれる少なくとも1種以上の貴金属であることが好ましく、2種以上の貴金属、例えば、PtとRhとを混合してアルミナに担持させても良い。
【0020】
また、アルミナは、さらに、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Zr(ジルコニウム)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)の群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を有することが好ましく、2種以上の元素を混合して使用しても良い。貴金属使用量を減らすためには、遷移元素等で貴金属の触媒活性を補助する方法も有効である。遷移元素の中でも、Co、Mn、Fe、Ni等の元素、その他Ce、La等の希土類元素、さらにZr、Mg等の元素は、貴金属の触媒活性作用を補助する元素として特に有効である。これらの遷移元素は、遷移属元素単独では触媒活性は低いが、遷移元素を貴金属と共存させることにより遷移元素の触媒活性が向上するため、貴金属使用量を減らしても触媒活性を維持することが可能となる。また、Ce、La、Zrは触媒反応に有効なOの活性化に寄与し、MgはHCの被毒を抑える効果がある。その他、これらの元素は、担体であるアルミナの耐熱性を上げる効果もある。
【0021】
さらに、この触媒は、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、セリア−ジルコニア複合酸化物の群から選ばれる少なくとも1種以上の第二担体を有することが好ましく、2種以上の第二担体を混合して使用しても良い。本発明の実施の形態に係る触媒では、熱耐久後に一つのアルミナ粒子上に一つの貴金属粒子が存在することになる。しかし、さらに高温に加熱することにより、担体であるアルミナ同士が焼結し、さらに凝集が進む可能性がある。そこで、触媒がアルミナ同士の焼結を抑制する緩衝材として第二担体を有することにより、第一担体である貴金属が担持されたアルミナ同士の接触が抑制され、アルミナ同士の焼結による貴金属の凝集を抑制することができる。
【0022】
このように、本実施の形態に係る触媒では、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、を有することで、アルミナ上の全ての貴金属が凝集しても粒径が10[nm]以下の大きさになる貴金属量のみを担持しているため、熱耐久によりアルミナ上の貴金属全てが凝集しても触媒性能が著しく低下することはない。このため、貴金属の使用量を減らしても触媒作製時の触媒活性能が維持され、かつ、耐火性無機担体へのコーティングが可能な触媒が得られる。
【0023】
(触媒の製造方法)
次に、本発明の実施の形態に係る触媒の製造方法の実施の形態について説明する。この触媒の製造方法は、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末を作製するアルミナ微粉末作製工程と、アルミナ微粉末を水中で分散する分散工程と、分散工程の後にアルミナ微粉末に貴金属塩を担持させる担持工程と、担持工程の後に、さらにアルミナ微粉末と同量以上の第二担体を混合する混合工程と、混合工程の後に100〜150[℃]の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程の後に500[℃]未満の温度で焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
本発明の実施の形態に係る触媒の製造方法では、アルミナを水中で分散する分散工程の前に、アルミナを微粉末に粉砕する工程があるため、アルミナが均一な微粉末になる。このため、貴金属をアルミナ微粉末各々に均一に担持させることができる。また、アルミナに貴金属を担持させた後にアルミナ微粉末と同量以上の第二担体を混合しているため、第一担体であるアルミナ同士の接触確率が減少し、アルミナ同士の焼結による貴金属の凝集を抑制することができる。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態に係る触媒の製造方法の概略的な工程を説明する図である。まず、アルミナをボールミルにより粉砕して粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末作製し(アルミナ微粉末作製工程)、その後アルミナ微粉末を水中に分散させる(工程20:分散工程)。ここでは、アルミナとして、一般的な高比表面積アルミナが使用可能である。次に、アルミナ微粉末が分散された水中に貴金属塩水溶液を投入し、混合する。この工程により、アルミナ微粉末に貴金属塩が担持される(工程21:担持工程)。水溶性の貴金属塩としては、ジニトロジアミンPt、テトラアンミンPt、硝酸Pd及び硝酸Rh等が使用できる。次に、さらに第二担体を、アルミナ微粉末との重量比が1:1となるように加え、さらに混合する(工程22:混合工程)。そして、混合液を100〜150[℃]の温度で乾燥させる(工程23:乾燥工程)。この乾燥工程では、水分を除去できれば良い。このため、乾燥のために必要とされる温度は最低100[℃]以上である。ただし、温度を高くしすぎると乾燥が急速に進み、アルミナ細孔内に担持された貴金属がアルミナの表面に析出するおそれがあるため、乾燥工程は150[℃]以下で行うことが好ましい。さらに、乾燥工程の後に、500[℃]未満の温度で焼成する(工程24:焼成工程)。アルミナに担持された貴金属は塩の状態であるため、陰イオンを焼成によって飛ばし、貴金属をメタルの状態にする必要がある。陰イオンを焼成によって飛ばすためには、450〜500[℃]程度の温度が必要である。しかし、500[℃]以上の温度になると、貴金属の凝集が始まる。このため、焼成工程では、焼成温度は500[℃]未満とすることが好ましい。なお、焼成温度が400[℃]以下の場合には、貴金属をアルミナ上に固定することが十分ではないため、焼成温度は450〜500[℃]であることがより好ましい。
【0026】
なお、アルミナ微粉末作製工程は、粒径20〜30[μm]のアルミナ微粉末をボールミル中で湿式粉砕する工程であることが好ましい。アルミナをボールミル中で湿式粉砕することにより、粒径30〜1000[nm]に粉砕したアルミナ微粉末の分散状態を保つことが可能となり、アルミナ微粉末上に貴金属を分散担持させることが可能となる。
【0027】
また、焼成工程(工程24)の後に、さらに、500〜700[℃]の温度で3[時間]焼成する高温焼成工程(工程25)を有しても良い。この高温焼成工程により、アルミナ上に担持された貴金属の粒径を予め2〜5[nm]に制御することができる。そして、貴金属の粒径を予め2〜5[nm]とすることにより、貴金属の凝集の初期速度を低下させることができる。このため、貴金属のこれ以上の凝集を抑制することができる。
【0028】
さらに、アルミナ微粉末に貴金属塩を担持させる担持工程(工程21)の前に、触媒に担持されたパラジウムと貴金属の重量比が1:50〜1:10となるようにアルミナ微粉末にパラジウムを担持させるパラジウム担持工程を有し、さらに、アルミナ微粉末に貴金属塩水溶液を投入した後に還元剤を加えて、アルミナ微粉末に担持したパラジウム上に貴金属を析出させる析出工程を加えても良い。
【0029】
図4は、本発明の別の実施の形態に係る触媒の製造方法の概略的な工程を説明する図である。まず、アルミナをボールミルにより粉砕して粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末作製し(アルミナ微粉末作製工程)、その後アルミナ微粉末を水中に分散させる(工程30:分散工程)。ここでは、アルミナとして、一般的な高比表面積アルミナが使用可能である。次に、アルミナ微粉末が分散された水中にパラジウム塩水溶液を投入し、アルミナに担持されたパラジウムと貴金属の重量比が1:50〜1:10となるようにアルミナ微粉末にパラジウムを担持させる(工程31:パラジウム担持工程)。次に、パラジウム担持アルミナ微粉末が分散された水中に貴金属塩水溶液を投入し、混合する(工程32)。水溶性の貴金属塩としては、ジニトロジアミンPt、テトラアンミンPt、硝酸Pd及び硝酸Rh等が使用できる。次に、この混合液に還元剤を加え、アルミナ微粉末上に担持されたパラジウム上に貴金属塩を析出させる(工程33:析出工程)。ここで、還元剤としては、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウムなどが使用可能である。次に、さらに第二担体を、アルミナ微粉末と重量比が1:1となるように加え、混合する(工程34:混合工程)。そして、混合液を100〜150[℃]の温度で乾燥させる(工程35:乾燥工程)。さらに、乾燥工程の後に、500[℃]未満の温度で焼成する(工程36:焼成工程)。なお、アルミナ微粉末作製工程は、粒径20〜30[μm]のアルミナ微粉末をボールミル中で湿式粉砕する工程であることが好ましい。また、焼成工程(工程36)の後に、さらに、500〜700[℃]の温度で3[時間]焼成する高温焼成工程を加えても良い。
【0030】
本発明の別の実施の形態に係る触媒の製造方法では、パラジウムを予めアルミナ上に担持させ、これを核として用いることにより、その後に担持させる貴金属をパラジウム上に選択的に析出させることが可能となる。そして、貴金属がパラジウム上に析出した場合の貴金属の粒径は2〜5[nm]となるため、触媒性能の高い触媒が得られる。また、貴金属をパラジウム上に析出させることで、パラジウムが貴金属のアンカーとしての作用を発揮する。このため、貴金属の凝集を防ぐことができる。なお、パラジウムと貴金属との重量比が1:50より小さい場合には、パラジウムが貴金属の核としての機能を発揮しない。また、パラジウムと貴金属との重量比が1:10より大きい場合には、貴金属の粒径が大きくなるため、触媒性能が下がり好ましくない。
【0031】
本発明の実施の形態に係る触媒のさらに別の製造方法として、逆ミセル法を用いて触媒を製造する方法があげられる。逆ミセル法とは、有機溶媒中に界面活性剤と触媒活性成分である貴金属元素等を有する水溶液とを混合し、有機溶媒中に界面活性剤が集合して内部に貴金属元素等を有する水溶液を保持した逆ミセルを形成し、逆ミセル内部で貴金属を沈殿あるいは還元により析出させることにより貴金属を微粒子化する方法である。逆ミセルの径は、界面活性剤と水の比率で概ね決まり、所定の大きさに制御することが可能である。そして、最終生成物は逆ミセルの大きさを越えることができないため、逆ミセルの大きさ以下の微粒子を制御性良く作ることが可能となり、貴金属の粒径を1〜10[nm]、好ましくは3[nm]〜8[nm]、特に好ましくは2[nm]〜5[nm]の大きさに制御することが可能となる。さらには、触媒全体の大きさを制御することが可能となる。
【0032】
図5は、本発明のさらに別の実施の形態に係る触媒の製造方法の概略的な工程を説明する図である。まず、有機溶媒中に界面活性剤と水とを混合して混合溶液を調整する(工程40:混合溶液調製工程)。ここでは、有機溶媒としては、シクロヘキサン、シクロヘプタン、オクタノール、イソオクタン、n−ヘキサン、n−デカン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが使用可能である。また、これらの2種以上の混合溶液を用いても良い。界面活性剤としては、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテルなどが使用可能である。この混合溶液中にアルミニウム塩水溶液を加えて攪拌し、内部にアルミニウム塩及び水を含有する逆ミセルを形成する(工程41:アルミニウム塩含有工程)。また、アルミニウム塩としては、酢酸塩、硝酸塩、アルミニウムアルコキシド等が使用可能である。次に、混合溶液中に貴金属塩水溶液を混合し、逆ミセル内に貴金属塩を含有させる。そして、混合溶液中に還元剤を加え、逆ミセル内に含有されている貴金属塩を還元してメタル化して析出させ、逆ミセル内に貴金属メタル及びアルミニウム塩を含む溶液を得る(工程42:析出工程)。還元剤としては、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウム等が使用可能である。また、これらの2種以上の混合溶液を用いても良い。
【0033】
次に、別の容器において、工程40と同様に、有機溶媒中に界面活性剤と水とを混合して混合溶液を調整する(工程43:混合溶液調製工程)。次に、工程41と同様に、この混合溶液中にアルミニウム塩水溶液を加えて攪拌し、内部にアルミニウム塩及び水を含有する逆ミセルを形成する(工程44:アルミニウム塩含有工程)。そして、ここで得られた混合溶液を、工程42で得られた溶液に加え、混合する(工程45)。そして、この逆ミセルを含む有機溶媒の混合溶液中にアルコールを添加して攪拌し、逆ミセルを崩壊させる(工程46)。逆ミセルの崩壊により、貴金属とアルミナ複合した微粒子と、アルミニウム塩の微粒子を含む沈殿物が得られる。なお、アルコールとして、例えば、メタノール、エタノールなどを使用することが可能である。次に、得られた沈殿物をメンブランフィルタでろ過後、アルコール及び水を用いて洗浄し、沈殿物に含まれる例えば界面活性剤等の不純物を除去する(工程47)。さらに、120[℃]にて一昼夜乾燥する(工程48)。乾燥した後、400[℃]で1[時間]、空気気流中で焼成し(工程49)、目的の触媒を得ることができる。
【0034】
本発明の実施の形態に係る触媒のさらに別の製造方法では、貴金属とアルミナを逆ミセル内で同時に析出させることにより、貴金属をアルミナ中で均一に分散させた触媒を得ることが可能となる。なお、逆ミセル内部で貴金属はアルミナに包接された状態で析出する。このため、逆ミセルを崩壊後得られた沈殿を焼成して触媒を得た場合に、貴金属の一部がアルミナ中に埋没された状態でアルミナに担持された状態が得やすくなる。このため、アルミナが貴金属のアンカーとして作用するため貴金属の凝集を抑えることができる。また、加熱後であっても触媒作製時の状態を維持することができるため、耐久性に優れた触媒を得ることが可能となる。
【0035】
また、別容器でアルミニウム塩を含有する逆ミセルを含む逆ミセル溶液を調整し、この逆ミセル溶液を、貴金属とアルミナを含有する逆ミセルを含む逆ミセル溶液と混合することによりこれら逆ミセルを崩壊させて沈殿を形成させた際に、貴金属とアルミナの複合微粒子の表面に第二担体として別のアルミナを配置することが可能となる。このため、本発明の実施の形態に係る触媒では、一つのアルミナ粒子上に一つの貴金属粒子が存在し、さらに、アルミナ同士の焼結を抑制する緩衝材として第二担体であるアルミナを有することにより、貴金属が担持された第一担体であるアルミナ同士の接触が抑制され、アルミナ同士の焼結による貴金属の凝集を抑制することができる。さらに、逆ミセル法により触媒を製造しているため、アルミナ及び貴金属の粒径を制御することができる上、触媒全体の大きさを制御することができる。なお、第二担体として後から加えるアルミナは、アルミナに限らず、チタニア、セリア、ジルコニア、セリア−ジルコニア複合酸化物等を用いても良い。
【0036】
また、必要により、アルミナは、さらに、Ce、La、Zr、Co、Mn、Fe、Ni、Mgの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を有しても良い。なお、触媒中にこの元素を添加する方法は、触媒を調製した後に上記元素を含浸により添加する方法の他、逆ミセルを調製する際に、上記元素を貴金属やアルミナと同様に析出させる方法を用いても良い。さらに、焼成工程(工程49)の後に、さらに、500〜700[℃]の温度で3[時間]焼成する高温焼成工程を加えても良い。
【0037】
このように、本発明における触媒の製造方法によれば、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、を有する触媒が得られ、貴金属量を減らしても触媒性能が維持された、耐久性に優れた触媒を得ることが可能となる。
【0038】
(排ガス浄化触媒)
次に、本発明に係る排ガス浄化触媒の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る排ガス浄化触媒は、上記した触媒と、この触媒がコーティングされた耐火性無機担体とを有する排ガス浄化触媒であって、この耐火性無機担体容量1[L]当たりの触媒のコート量が600[g]以下であることを特徴とする。従来の排ガス浄化触媒では、耐火性無機担体容量1[L]あたりの触媒のコート量が600[g]以下である場合には充分な触媒活性が得られないが、上述したように、粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、を有する触媒の場合には、貴金属の使用量を減らした場合であっても充分な触媒活性を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例1〜実施例27、比較例1〜比較例6により本発明の実施の形態に係る触媒、排ガス浄化用触媒及び触媒の製造方法をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。これらの実施例は、本発明に係る触媒、排ガス浄化用触媒及び触媒の製造方法の有効性を調べたものであり、異なる材料にて調整した触媒及び排ガス浄化用触媒の例を示したものである。
【0040】
<試料の調製>
(実施例1)Pt(0.1%)/Al+Al
実施例1では、アルミナを湿式粉砕した後に貴金属としてPtをアルミナに担持させ、その後第二担体としてアルミナを混合して調整した(図3の方法)。
【0041】
まず、アルミナ180[g]と水1610[g]を磁性ボールミルに投入し、7[時間]粉砕してアルミナの平均粒径を0.4[μm]とした(工程20:アルミナ微粉末作製工程及び分散工程)。ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。10分後に8[%]ジニトロジアミンPt水溶液2.3[g]を投入し、混合した(工程21:担持工程)。次に、アルミナ180[g]と水1610[g]を別の磁性ボールミルに投入し、7[時間]粉砕して平均粒径0.4[μm]のアルミナ微粉末を調整した(第二担体)。ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。第二担体と、工程21で得られたアルミナ微粉末とを、重量比が1:1となるようにはかり取って2[時間]混合後(工程22:混合工程)、120[℃]の乾燥機で1昼夜乾燥した(工程23:乾燥工程)。その後400[℃]で焼成し、Pt(0.1[%])/AlとAlの混合粉末を得た(工程24:焼成工程)。得られた触媒の、COガス吸着法により求めたPt粒径は0.5[nm]であった。次に、触媒を700[℃]で3[時間]焼成した(工程25:高温焼成工程)。焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.6[nm]であった。
【0042】
(実施例2)Pt(0.1%)/Al+TiO
実施例2では、実施例1の第二担体のAlをTiOに変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.2[nm]であった。
【0043】
(実施例3)Pt(0.1%)/Al+CeO
実施例3では、実施例1の第二担体のAlをCeOに変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.6[nm]であった。
【0044】
(実施例4)Pt(0.1%)/Al+ZrO
実施例4では、実施例1の第二担体のAlをZrOに変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.6[nm]であった。
【0045】
(実施例5)Pt(0.1%)/Al+Ce−Zr複合体
実施例5では、実施例1の第二担体のAlをCeO:ZrO重量比3:1の複合酸化物に変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.3[nm]であった。
【0046】
(実施例6)Pd(0.1%)/Al+Al
実施例6では、実施例1の工程21において、ジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Pd水溶液に変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のPd粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPd粒径は9.0[nm]であった
(実施例7)Rh(0.1%)/Al+Al
実施例7では、実施例1の工程21において、ジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Rh水溶液に変えた以外は同様に処理した。触媒作製時のRh粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたRh粒径は9.1[nm]であった
(実施例8)Pt(0.1%)/Ce(10%)−Al+Al
実施例8では、アルミナをCe(金属重量比で10[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.5[nm]であった。
【0047】
(実施例9)Pt(0.1%)/Zr(5%)−Al+Al
実施例9では、アルミナをZr(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.4[nm]であった。
【0048】
(実施例10)Pt(0.1%)/La(5%)−Al+Al
実施例10では、アルミナをLa(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.2[nm]であった。
【0049】
(実施例11)Pt(0.1%)/Ce(10%),Zr(5%),La(5%)−Al+Al
実施例11では、アルミナをCe(金属重量比で10[%])、Zr(同5[%])、La(同5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.1[nm]であった。
【0050】
(実施例12)Pt(0.1%)/Mg(3%)−Al+Al
実施例12では、アルミナをMg(金属重量比で3[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.8[nm]であった。
【0051】
(実施例13)Pt(0.1%)/Fe(5%)−Al+Al
実施例13では、アルミナをFe(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.8[nm]であった。
【0052】
(実施例14)Pt(0.1%)/Ni(5%)−Al+Al
実施例14では、アルミナをNi(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.8[nm]であった。
【0053】
(実施例15)Pt(0.1%)/Co(5%)−Al+Al
実施例15では、アルミナをCo(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.8[nm]であった。
【0054】
(実施例16)Pt(0.1%)/Mn(5%)−Al+Al
実施例16では、アルミナをMn(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.8[nm]であった。
【0055】
(実施例17)Pt(0.1%)/Ce(10%),Zr(5%),La(5%),Co(5%)−Al+Al
実施例17では、アルミナをCe(金属重量比で10[%])、Zr(同5[%])、La(同5[%])、Co(同5[%])担持アルミナに変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.5[nm]であった。
【0056】
(実施例18)Pd(0.1%)/Ce(10%),Zr(5%),La(5%)−Al+Al
実施例18では、アルミナをCe(金属重量比で10[%])、Zr(同5[%])、La(同5[%])、Co(同5[%])担持アルミナに変え、工程21においてジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Pd水溶液に変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は8.8[nm]であった。
【0057】
(実施例19)Rh(0.1%)/Zr(5%)−Al+Al
実施例19では、アルミナをZr(金属重量比で5[%])担持アルミナに変え、工程21においてジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Rh水溶液に変えた以外は実施例1と同様に処理した。触媒作製時のPt粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.2[nm]であった。
【0058】
(実施例20)Pt(0.1%)/Al+Al+500℃×3時間焼成 実施例20では、実施例1の工程24の焼成工程の後、500[℃]で3[時間]焼成した(工程25:高温焼成工程)触媒作製時のPt粒径は2.0[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は9.0[nm]であった。
【0059】
(実施例21)Pt(0.1%)/Al+Al+600℃×3時間焼成
実施例21では、実施例1の工程24の焼成工程の後、600[℃]で3[時間]焼成した(工程25:高温焼成工程)触媒作製時のPt粒径は3.5[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は8.8[nm]であった。
【0060】
(実施例22)Pt(0.1%)/Al+Al+700℃×3時間焼成
実施例22では、実施例1の工程24の焼成工程の後、700[℃]で3[時間]焼成した(工程25:高温焼成工程)触媒作製時のPt粒径は4.8[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は8.7[nm]であった。
【0061】
(実施例23)Pt(0.05%)/Al+Al
実施例23では、アルミナを湿式粉砕した後に貴金属としてPtをアルミナに担持させ、その後第二担体としてアルミナを混合して調整した(図3の方法)。
【0062】
まず、アルミナ180[g]と水1610[g]を磁性ボールミルに投入し、3[時間]粉砕してアルミナの平均粒径を0.7[μm]とした(工程20:アルミナ微粉末作製工程及び分散工程)。ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。10分後に8[%]ジニトロジアミンPt水溶液1.3[g]を投入し、混合した(工程21:担持工程)。次に、アルミナ180[g]と水1610[g]を別の磁性ボールミルに投入し、3[時間]粉砕して平均粒径0.7[μm]のアルミナ微粉末を調整した(第二担体)。ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。第二担体と、工程21で得られたアルミナ微粉末とを、重量比が1:1となるようにはかり取って2[時間]混合後(工程22:混合工程)、120[℃]の乾燥機で1昼夜乾燥した(工程23:乾燥工程)。その後400[℃]で焼成し、Pt(0.05[%])/AlとAlの混合粉末を得た(工程24:焼成工程)。得られた触媒の、COガス吸着法により求めたPt粒径は0.4[nm]であった。次に、触媒を700[℃]で3[時間]焼成した(工程25:高温焼成工程)。焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.1[nm]であった。
【0063】
(実施例24)Pt(0.3%)/Al+Al
実施例24では、平均粒子径200[nm]のアルミナを水に分散し(固形分10[%])、この溶液に8[%]ジニトロジアミンPt水溶液6.8[g]を投入し、混合した(工程21)。工程21で得られた粉末と、水に分散した平均粒子径200[nm]のアルミナ(固形分10[%])を重量比で1:1となるようにはかり取り、2[時間]混合した(工程22)。その後、120[℃]の乾燥機で1昼夜乾燥した(工程23)。次に、400[℃]で焼成し、Pt(0.3%)/AlとAlの混合粉末を得た(工程24:焼成工程)。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたPt粒径は0.8[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は9.7[nm]であった。
【0064】
(実施例25)Pt(0.1%),Pd(0.01%)/Al+Al
実施例25では、アルミナにPdを担持させた後に貴金属をアルミナに担持させ、その後第二担体としてアルミナを混合して調整した(図4の方法)。
【0065】
まず、アルミナ180[g]と水1610[g]を磁性ボールミルに投入し、7[時間]粉砕してアルミナの平均粒子径を0.4[μm]とした(工程30:分散工程)。次に、アルミナに8[%]の硝酸Pdを担持濃度が0.01[%]となるように担持した(工程31:パラジウム担持工程)。Pd担持ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。その後、10分後に8[%]ジニトロジアミンPt水溶液2.3[g]を投入し、混合した(工程32)。次に、0.107[g]のNaBHを投入し、さらに2[時間]攪拌した(工程33:析出工程)。次に、アルミナ180[g]と水1610[g]を別の磁性ボールミルに投入し、7[時間]粉砕してアルミナの平均粒子径を0.4[μm]とした。ボールはジルコニアボールを使い、ボール径を1[mm]とした。ここで得られたアルミナ粉末と、工程33で得られた粉末とを重量比で1:1となるようにはかり取り、さらに2[時間]混合し(工程34:混合工程)、120[℃]の乾燥機で1昼夜乾燥した(工程35:乾燥工程)。その後、400[℃]で1[時間]焼成して、Pt(0.1[%])/Al+Alの混合粉末を得た(工程36:焼成工程)。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたPt粒径は2.4[nm]であった。また、焼成後のCOガス吸着法により求めたPt粒径は8.0[nm]であった。
【0066】
(実施例26)Pt (0.3%)/Al
実施例26では、逆ミセル法により調整した(図5の方法)。
【0067】
まず、シクロヘキサン5[L]、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル330[g]を混合して混合溶液を調整した(界面活性剤/溶媒比=0.15[mol/L])(工程40:混合溶液調製工程)。次に、調製した混合溶液に、硝酸Al36.79[g]、水38.08[mL]を加え(水/界面活性剤比=4)、これを2[時間]攪拌し、逆ミセル内にAlイオンを含む有機溶媒の混合溶液を調製した(工程41:アルミニウム塩含有工程)。攪拌後、混合溶液に8[%]のジニトロジアミンPt水溶液 0.178[g]を加えた。攪拌後、還元剤としてNaBH0.0083[g]を投入し、さらに2[時間]攪拌して、逆ミセル内にPtメタル及び硝酸Alを含む溶液を得た(NaBH/(Pt+硝酸Al)の重量比=?)(工程42:析出工程)。
【0068】
別の容器でシクロヘキサン5[L]、ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニルエーテル330[g]を混合して混合溶液を調整した(界面活性剤/溶媒比=0.15[mol/L])(工程43:混合溶液調製工程)。次に、調製した混合溶液に硝酸Al36.79[g]、水 38.08[mL]を加え(水/界面活性剤比=4)、これを2[時間]攪拌し、逆ミセル内部にアルミニウム塩及び水を含有する逆ミセルを形成した(工程44:アルミニウム塩含有工程)。攪拌後、工程42で得られた混合溶液と混合して、攪拌した(工程45)。攪拌後、混用溶液にメタノールを500[mL]投入してさらに2[時間]攪拌して逆ミセルを崩壊させた後(工程46)、溶液をメンブランフィルタで濾過した。その後、濾過して得られた沈殿物をエタノール及び水で洗浄した後(工程17)、沈殿物を120[℃]で一昼夜乾燥し(工程48)、400[℃]で1[時間]焼成して粉末を得た(工程49)。得られた粉末のPt粒径は2.2[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は8.2[nm]であった。
【0069】
(実施例27)排ガス浄化触媒
実施例17で得られた触媒52.9[g]、実施例19で得られた触媒10.5[g]、アルミナ5.4[g]、アルミナゾル6.2[g]、水69[g]、硝酸6[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し、触媒スラリを得た。得られた触媒スラリをコーデェライト質モノリス担体(0.119[L]、400[セル])に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて120[℃]で乾燥した後、400[℃]で1[時間]焼成し、コート層400.0[g/L]の排ガス浄化触媒を得た。得られた排ガス浄化触媒中のPt量は0.14[g/L]、Rh量は0.028[g/L]だった。
【0070】
(比較例1)Pt(0.1%)/Al+Al
比較例1では、含浸法を用いて触媒を作製した。まず、比表面積200[m/g]のアルミナに8[%]ジニトロジアミンPt水溶液2.3[g]を投入し、混合した。次に、同量のアルミナを測り取り、さらに混合して2[時間]攪拌後、120[℃]の乾燥機で1昼夜乾燥した。次に、400[℃]で1[時間]焼成して、Pt(0.1%)/Al+Alの混合粉末を得た。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたPt粒径は0.6[nm]であった。また、焼成後のPt粒径は20.4[nm]であった。
【0071】
(比較例2)Pd(0.1%)/Al+Al
比較例2では、含浸法を用いて触媒を作製した。なお、比較例1と異なる点は、ジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Pd水溶液に変えた点である。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたPd粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のPd粒径は22.6[nm]であった。
【0072】
(比較例3)Rh(0.1%)/Al+Al
比較例3では、含浸法を用いて触媒を作製した。なお、比較例1と異なる点は、ジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Rh水溶液に変えた点である。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたRh粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のRh粒径は19.3[nm]であった。
【0073】
(比較例4)Pt(0.1%)/Ce(10%),Zr(5%),La(5%)−Al+Al
比較例4では、含浸法を用いて触媒を作製した。なお、比較例1と異なる点は、Ptを担持させるアルミナを、Ce(金属重量比で10[%])、Zr(同5[%])、La(同5[%])担持アルミナに変えた点である。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたRh粒径は0.6[nm]であった。また、焼成後のRh粒径は18.4[nm]であった。
【0074】
(比較例5)Rh(0.1%)/Zr(5%)−Al+Al
比較例5では、含浸法を用いて触媒を作製した。なお、比較例1と異なる点は、ジニトロジアミンPt水溶液を硝酸Rh水溶液に変えた点、及びRhを担持させるアルミナをZr(金属重量比で5[%])担持アルミナに変えた点である。触媒作製時のCOガス吸着法により求めたRh粒径は0.5[nm]であった。また、焼成後のRh粒径は18.1[nm]であった。
【0075】
(比較例6)排ガス浄化触媒
比較例4で得られた触媒52.9[g]、比較例5で得られた触媒10.5[g]、アルミナ5.4[g]、アルミナゾル6.2[g]、水69[g]、硝酸6[g]を磁性ボールミルに投入し、混合粉砕し、触媒スラリを得た。得られた触媒スラリをコーデェライト質モノリス担体(0.119[L]、400[セル])に付着させ、空気流にてセル内の余剰のスラリを取り除いて120℃で乾燥した後、400[℃]で1[時間]焼成し、コート層400.0[g/L]の排ガス浄化触媒を得た。得られた排ガス浄化触媒中のPt量は0.14[g/L]、Rh量は0.028[g/L]だった。
【0076】
ここで、上記試料調製によって得られた試料は、以下の方法によって評価された。
【0077】
<耐久試験>
触媒粉末の耐久試験は、得られた触媒を、貴金属がPtである場合(実施例1〜5、8〜17、20〜26、比較例1、4)は酸素雰囲気下、貴金属がPd、Rhである場合(実施例6、7、18、19、比較例2、3、5)は還元雰囲気下で700[℃]で3[時間]焼成することにより行った。また、コーデェライト質モノリス担体に触媒をコーティングした場合は(実施例27、比較例6)、酸素雰囲気と還元雰囲気とを1分ごとにきりかえながら700[℃]で3[時間]焼成することにより行った。
【0078】
<転化率の評価法>
表1に示すモデルガスにより、室温から400[℃]まで10[℃/分]で昇温したときの50[%]転化率温度を求めた。なお、50[%]転化率温度の測定条件は、酸素量と還元剤量とが等しいストイキの組成とし、反応ガス流量40[L/分]とした。
【表1】

【0079】
<CO吸着量の測定法>
CO吸着量の測定には、日本ベル株式会社製 金属分散度測定装置BEL−METAL−3を用い、以下の手順に従った測定した。試料は、He100[%]ガス気流中にて、10[℃/min]で400[℃]まで昇温し、次に、400[℃]、O2100[%]ガス気流中にて、15分間酸化処理を行った。そして、He100[%]ガスにて5分間パージし、400[℃]、H240[%]/Heバランスガス気流中にて15分間還元処理を行った。次に、He100[%]ガス気流中にて50[℃]まで降温した。そして、CO10[%]/Heバランスガスをパルス的に流入させて、CO吸着量を求めた。
【0080】
上記した実施例1〜実施例26、比較例1〜比較例5における、貴金属種、担持濃度、第一担体、第二担体、焼成温度、耐久前貴金属粒径、及び耐久後貴金属粒径を下表2〜4に、また、実施例27及び比較例6における耐久後の50[%]転化率温度[℃]を下表5に示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0081】
表2より、Ptの担持濃度が0.1 [%]のときは、比較例1及び比較例4で得られた触媒は、耐久前の粒径が小さいが耐久後には30倍以上にも大きくなった。これに対し、実施例1〜5、8〜17、20〜26のいずれにおいても耐久後の貴金属粒径は20倍以下であり、比較例と比較して耐久性があることがわかった。また、表3及び4より、貴金属としてPdやRhを用いた場合にもPtのときと同様の効果が得られることがわかった。また、表5の結果より、実施例27で得られた触媒は比較例に対して50[%]転化率温度が顕著に低く、より低温で排ガス浄化性能が発揮される触媒が得られたことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る触媒の作製時の状態を示す説明図である。(b)本発明の実施の形態に係る触媒の耐久後の状態を示す説明図である。
【図2】貴金属の表面積とNO転化率との関係を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る触媒の製造方法を説明する工程図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る触媒の別の製造方法を説明する工程図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る触媒のさらに別の製造方法を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0083】
1 触媒
2 アルミナ
3 貴金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が30〜1000[nm]であるアルミナと、
前記アルミナ上に担持濃度0.001〜0.3[重量%]で担持された貴金属と、
を有することを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記触媒を700[℃]で3[時間]焼成した後の貴金属粒径が10[nm]以下であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記貴金属は、Pt、Pd、Rhの群から選ばれる少なくとも1種以上の貴金属であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記アルミナは、さらに、Ce、La、Zr、Co、Mn、Fe、Ni、Mgの群から選ばれる少なくとも1種以上の元素を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された触媒。
【請求項5】
さらに、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、セリア−ジルコニア複合酸化物の群から選ばれる少なくとも1種以上の第二担体を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された触媒。
【請求項6】
粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末を作製するアルミナ微粉末作製工程と、
前記アルミナ微粉末を水中で分散する分散工程と、
前記分散工程の後に前記アルミナ微粉末に貴金属塩を担持させる担持工程と、
前記担持工程の後に、さらに前記アルミナ微粉末と同量以上の第二担体を混合する混合工程と、
前記混合工程の後に100〜150[℃]の温度で乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に500[℃]未満の温度で焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項7】
粒径が30〜1000[nm]であるアルミナ微粉末を作製するアルミナ微粉末作製工程と、
前記アルミナ微粉末を水中で分散する分散工程と、
触媒に担持されたパラジウムと貴金属の重量比が1:50〜1:10となるように前記アルミナ微粉末にパラジウムを担持させるパラジウム担持工程と、
前記パラジウム担持工程の後に貴金属塩水溶液と還元剤を加え、前記アルミナ微粉末に担持されたパラジウム上に貴金属塩を析出させる析出工程と、
前記析出工程の後に、さらに前記アルミナ微粉末と同量以上の第二担体を混合する混合工程と、
前記混合工程の後に100〜150[℃]の温度で乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程の後に500[℃]未満の温度で焼成する焼成工程と、
を有することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項8】
前記アルミナ微粉末作製工程は、粒径20〜30[μm]のアルミナ微粉末をボールミル中で湿式粉砕する工程であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記焼成工程の後に500〜700[℃]の温度で3[時間]焼成する高温焼成工程を有することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載された触媒の製造方法。
【請求項10】
有機溶媒中に界面活性剤と水とを混合して混合溶液を調整する混合溶液調製工程と、
前記混合溶液中にアルミニウム塩水溶液を加え、内部にアルミニウム塩を含有する逆ミセルを形成するアルミニウム塩含有工程と、
さらに、前記混合溶液中に貴金属塩水溶液を混合し、前記逆ミセル内で貴金属を析出させる析出工程と、
を有することを特徴とする触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された触媒と、
前記触媒がコーティングされた耐火性無機担体と、を有する排ガス浄化触媒であって、
前記耐火性無機担体容量1[L]当たりの前記触媒のコート量が600[g]以下であることを特徴とする排ガス浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−181484(P2006−181484A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378105(P2004−378105)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】