説明

触媒で被覆されたディーゼル粒子フィルター、その製造方法、およびその使用

フィルター上に堆積させた、白金とパラジウムを有する酸化触媒を有するディーゼル粒子フィルターが記載されている。HC吸蔵成分としてゼオライトを酸化触媒に添加混合することによって、炭化水素、および一酸化炭素の反応を明らかに改善することができる。さらにこの粒子フィルターは、入口側から出発して長さの一部までゼオライト不含の第二の触媒によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス浄化のための、触媒で被覆されたディーゼル粒子フィルター、該フィルターの被覆方法、およびその使用に関する。
【0002】
粒子フィルターは、粒子形態の排ガス成分、特に煤煙粒子を内燃エンジンの排ガスから濾別することができ、そのため排ガスの大気中への排出を防止することができる。このために基本的には、表面フィルター、およびまた深層フィルターを使用することができる。表面フィルターは通常、セラミック素材、例えば炭化ケイ素、コージライト、アルミニウムチタナート、またはムライトから成る。このフィルターによって、濾過レベルは95%以上に達する。表面フィルターに代えて、煤煙粒子を分離するための開放構造も使用することができる。これらの開放構造とは、まず第一にセラミックの発泡体、または金属製の針金を編んだものから成るフィルターである。これらの開放系フィルターシステムの濾過効率は、典型的な表面フィルターより明らかに僅少である(<70%)。
【0003】
しかしながら内燃エンジンの排ガスにおいて粒子フィルターを稼働させる際のそもそもの難関は、煤煙粒子の濾過ではなく、使用されるフィルターの周期的な再生である。酸素による煤煙の着火および燃焼のために要求される550℃以上の温度は、現代の乗用車のディーゼルエンジンにおいては通常、完全負荷で運転する場合のみ達成可能なので、フィルターの閉塞を防止するためには、濾過された煤煙粒子を酸化させるための付加的な処置がどうしても必要である。この際一般的には、受動的な加熱処置と、積極的な加熱処置とが区別される。積極的な処置の場合、粒子フィルターの温度を上昇させるために例えば、電気式加熱器(例えばグロープラグまたはマイクロ波加熱器)、または燃料で稼働されるバーナーを使用する。このような積極的な処置は常に、より高い燃料必要量と並行して現れる。この理由から、市販で得られる多くのシステムにおいては受動的な処置が好ましい。受動的なシステムの場合、触媒の使用によって煤煙粒子の燃焼のために必要とされる着火温度を下げる。これは二つの異なるコンセプトによって達成することができる。1のコンセプトは、有機金属の燃料添加剤、例えば燃料と共に燃焼され、かつ均一系触媒として細かく分散して金属クラスターの形で煤煙層に堆積させるセリウム化合物、および鉄化合物を使用することである。添加剤ベースのシステムに代わるのは、触媒活性材料による粒子フィルターの被覆である。
【0004】
触媒処置による煤煙着火温度の低下は一般的に、エンジンのすべての運転条件においてフィルターの完全な再生を保証するには充分ではないので、今日の実地においては通常、受動的処置と積極的処置との組み合わせを用いる。粒子フィルターと上流に設置された酸化触媒との組み合わせが、特に有用と実証されている。他のエンジン処置(パーシャルスロットル)と組み合わせて付加的な燃料を噴射することによって、燃焼しなかった燃料と一酸化炭素がディーゼル酸化触媒に到達し、かつその場所で触媒により反応して二酸化炭素と水になる。この際放出される反応熱によって、排ガス、ひいては後接続された粒子フィルターをも加熱する。触媒によるフィルターの被覆または燃料添加剤の使用による、煤煙着火温度の低下と組み合わせて、必要となる噴射量を減らすことができ、かつエンジンのマップにおけるほぼあらゆる運転点でフィルターを再生することができる。
【0005】
触媒により被覆された粒子フィルターを有する排ガス後処理システムの第一の再生においては、たいてい1または2の前接続された酸化触媒の後、車両の底部にフィルターを設置する。これに対して新規の排ガス後処理システムの場合は、フィルターを可能な限りエンジンの後側に近接して組み込む。この限定された構造空間のため、およびコストの低減のために、この場合酸化触媒を部分的に、または完全にフィルター上に施与する。エンジン近くに設置されたこのようなフィルターは、一酸化炭素(CO)、および炭化水素(HC)に対して法律で定められた限界値を、要求される走行距離にわたって遵守するために、相応して高い酸化能力を有さなければならない。このほか付加的に、全走行時間にわたって活性なフィルター再生の間、噴射される炭化水素を反応させ、煤煙着火温度を得るために必要とされる発熱を生成することができなければならない。これに加えて触媒活性のある被覆は、このようなフィルターをエンジンの近くで使用するために高い熱的安定性を有さなければならない。
【0006】
今日までディーゼル乗用車には、白金によるフィルター被覆がもっぱら使用されている。白金とパラジウムによる被覆は、同様に公知である(DE 102004040549 A1)。白金とパラジウムによる被覆は、非常に良好な温度安定性によって特徴付けられるが、白金のみによる触媒被覆より、新しい状態での活性が低い。白金とパラジウムを含む被覆は基本的に、すでにかなり前から記載されている。硫黄による被毒に対してPt/Pd被覆の許容度が明らかに低いため、ひいては並行して現れる触媒活性の低下が原因で、ディーゼル乗用車に排ガス触媒でパラジウムを使用することは長い間妨げられていた。しかしながら硫化は高温下で可逆の被毒であるため、周期的に活性に再生させるシステム、例えばディーゼル粒子フィルターの場合には、触媒被覆の貴金属中心を再生の間に同時に脱硫する。こうして本来の酸化活性を回復させる。
【0007】
WO02/26379A1はとりわけ、2の重なり合った触媒層を含む煤煙フィルターを記載している。第一の層はフィルターの流入路上に存在し、かつ一酸化炭素と炭化水素を酸化させるための成分を含む。これらの成分はその表面に堆積させた白金族金属を有する担体材料から成り、この際担体材料は酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、およびゼオライトから成る群から選択されており、かつ白金族金属は、白金、パラジウム、およびロジウムから選択されている。第二の層は第一の層上に施与され、かつ煤煙の着火温度を低下させるための成分、とりわけ少なくとも1の酸素を吸蔵する化合物と、少なくとも1の白金族金属を含む。
【0008】
本発明の課題は、一酸化炭素と炭化水素に対して改善された反応を有する触媒で被覆されたディーゼル粒子フィルターの提供であり、加えて該フィルターは、フィルター再生を頻繁に繰り返した場合においても高い老化安定性を有する。
【0009】
この課題は、独立請求項に記載された、触媒により被覆された粒子フィルターによって解決される。フィルターの好ましい実施形態、ならびにフィルターの被覆方法、およびその使用は、従属請求項に記載する。
【0010】
この粒子フィルターは、排ガスのための入口側と出口側とを有し、かつ軸方向の長さを有する。このフィルターはその全長において、担体材料上に触媒活性成分として白金族金属を含む第一の触媒によって被覆されている。このフィルターは、白金族金属のための担体材料が酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびこれらの混合物、またはこれらの混合酸化物から成る群から選択されていることと、第一の触媒が付加的に炭化水素を吸蔵するための少なくとも1のゼオライトを含むこととによって特徴付けられる。さらにこの粒子フィルターは、入口側から出発して長さの一部までゼオライト不含の第二の触媒によって被覆されている。
【0011】
排ガスの酸性成分と排ガスの最高温度に対して充分に安定的であるために、第一の触媒に使用されるゼオライトは、好ましくは10より大きいモジュール(Al23に対するSiO2のモル比)を有する。適切なゼオライトは例えば、モルデン沸石、シリカライト、Y−ゼオライト、ZSM−5 ゼオライト、およびβ−ゼオライト、またはこれらの混合物であり、この際ゼオライトは、10〜400の酸化アルミニウムに対する二酸化ケイ素のモル比を有する。ゼオライトの他にまた別の材料、例えば活性炭を使用することもできる。
【0012】
約200℃以下の低い排ガス温度でのエンジン運転段階の間、ゼオライトは排ガス中に含まれる炭化水素を吸蔵する。この低い排ガス温度においては、活性な触媒の貴金属中心による炭化水素の酸化は不可能であるため、このことは重要である。このような運転段階は現代の乗用車のディーゼルエンジンにおいてはコールドスタートの間、およびアイドリング段階の間、ならびに市街地交通において起こる。約200℃以上の温度においてはこれとは逆に、炭化水素の脱着が超過する。しかしながらこれらのより高い触媒温度においては、貯蓄成分から放出された炭化水素を触媒活性中心によって反応させ、二酸化炭素と水にすることができる。
【0013】
触媒活性を向上させるため、ゼオライトは白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム)、または遷移金属(例えば鉄、銅、セリウム)によって付加的に触媒活性にされていてよい。白金族金属による活性化のために、例えば溶解性前駆体化合物の水溶液によってゼオライトを含浸することができる。含浸後ゼオライトを乾燥させ、か焼し、かつ場合によっては還元する。ゼオライトへの貴金属負荷量は、ゼオライトと白金族金属との全質量に対して好ましくは0.1〜10質量%である。
【0014】
遷移金属(鉄、銅、およびセリウム)によって交換されたゼオライトを使用する場合、アンモニウム型の、またはナトリウム型のゼオライトを遷移金属とのイオン交換によってドープする。この際イオン交換を溶液中、またはいわゆる固体イオン交換として実施することができる。遷移金属による負荷量は、全質量に対して好ましくは約1〜15質量%である。
【0015】
第一の触媒は、少なくとも1または複数の白金族金属、好ましくは白金対パラジウムが1:10〜20:1、好ましくは1:1〜10:1、とりわけ2:1の質量比を有する白金とパラジウムとの組み合わせを含む。白金族金属のための担体材料として適しているのは、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびこれらの混合物、またはこれらの混合酸化物である。この際担体材料は、希土類酸化物、アルカリ土類酸化物、または二酸化ケイ素によるドープによって熱的に安定化されていることができる。従って例えば酸化アルミニウムの場合、酸化バリウム、酸化ランタン、または二酸化ケイ素によるドープによってγ−酸化アルミニウムからα−酸化アルミニウムへの転位温度を、約950℃から最大1100℃に高める。この際、ドープされた元素の濃度は酸化物として計算して、および安定化された酸化アルミニウムの全質量に対して通常1〜40質量%である。酸化セリウムを担体材料として使用する場合、セリウム/ジルコニウムの混合酸化物を使用するのが有利である。と言うのも、この混合酸化物は通常、純粋な酸化セリウムよりも高い温度安定性を有するからである。セリウム/ジルコニウムの混合酸化物の安定性は、酸化プラセオジム、または酸化ネオジムによるドープによってさらにまた改善することができる。これに加えてセリウム/ジルコニウムの混合酸化物はまた、有利な酸素吸蔵特性を有し、これは最大酸素容量、およびまた酸素吸蔵と酸素放出の動力学に関連する。
【0016】
粒子フィルターは、入口側から出発してその長さの一部まで第二の触媒によって被覆されている。この第二の触媒は、触媒活性を有する貴金属に関して、およびまた使用される担体材料に関して第一の触媒と同様であっても異なっていてもよい。好ましくは、付加的な被覆のために、第一の触媒と同一の組成を有する触媒を使用する。しかしながら第二の触媒はゼオライトを含まない。第二の触媒の長さは、フィルター支持体の全長の5〜80%であり、好ましくは10〜50%であってよい。
【0017】
フィルターの入口側からの第二の触媒の施与は、触媒活性成分の濃度の段階付けにつながる。フィルターの前部には、より多くの触媒活性を有する成分が存在する。このことは特に、エンジン近くに設置された、内部に組み込まれた酸化触媒を有するディーゼル粒子フィルターの場合、有利である。と言うのも、頻繁に使用される炭化ケイ素のフィルター支持体は大きな熱量を有し、かつ認証のために指示されたテストサイクル、例えばNEDC(=New European Driving Cycle)において軸方向に激しい温度勾配を有するからである。このためより長いディーゼル粒子フィルター(>150mm)を使用する場合はとりわけ、一酸化炭素と炭化水素の反応のために必要とされる温度は、全テストサイクルの間中ずっと、下流に設置された、フィルターの後部では通常得られない。従って、均一に被覆されたフィルターの場合、貴金属の一部はほんのわずかに、それどころかそもそも全く、一酸化炭素と炭化水素の反応に寄与しないであろう。この理由から、特にエンジン近くに設置されたフィルターの場合は、上流側にはより高い貴金属負荷量を有する帯域、および出口側にはより低い貴金属負荷量を有する領域が存在するように、貴金属を粒子フィルターの長さにわたって段階的に配置することが有利である。ただし、フィルターの排出側で約0.1g/lの最小貴金属濃度を下回ることは避けなければならない。と言うのも、そうしなければ活性なフィルター再生において、いわゆる二次放出、すなわち一酸化炭素と炭化水素の漏出の危険が存在するからである。
【0018】
ディーゼル粒子フィルターを被覆する場合には特に、被覆によって動圧を可能な限り上昇させないように注意しなければならない。触媒材料を基本的にフィルター支持体の多孔性の壁面に堆積させれば、被覆による動圧の上昇を僅少に保つことができることが判明した。この目的のためには、様々な方法を用いることができる:
・水溶液に懸濁させてある固体の粉末材料の形での導入、この際粉末材料の平均粒子直径は基本的に、フィルター支持体の平均細孔直径より小さくなければならない
・ゾルの形での導入
・後の担体材料を前駆体溶液の形で導入し、該前駆体を最後のか焼によって初めて最終的な形に変える。
【0019】
固体粉末材料の形での触媒材料の導入は、触媒活性と温度安定性につながり、これらの特性はその他二つの被覆方法を明らかに上回っている。これに対して後の担体材料の前駆体の、溶液の形での導入は、被覆された粒子フィルターの動圧性に関して明らかな利点を有しており、従ってとりわけ限界の支持体(より低い細孔率、より小さい平均細孔直径)を使用する際、適切な被覆方法である。
【0020】
固体の粉末材料を使用する場合、この材料を例えば水中に懸濁させ、かつ均質化するため、および規定された粒径分布を調整するために粉砕する。この際粉砕を、懸濁液中の最大粒径が10μm未満であるように実施する。これは通常、直径d50が2μm未満の場合である。この僅少な粒径だけが、触媒をほぼ完全に支持体の細孔に堆積させることを可能にする。懸濁液中で使用される担体材料は通常、すでに懸濁液への導入前に白金族金属によって活性化されている。しかしながらまた、触媒活性を有する白金族金属の、溶解させた前駆体化合物を、担体材料の懸濁液に初めて加えるという可能性も存在する。さらにはまた、担体材料をフィルター支持体上に施与後、溶解させた白金族金属前駆体によって、フィルターを事後に含浸することもできる。
【0021】
粉砕による粒子直径の調整を、触媒材料とゼオライトに対して、好ましくは別々に行うのが望ましいことが判明した。触媒材料とゼオライトは、異なる硬度を有する。個別の粉砕によってのみ、両方の材料に対して同等の粒径分布を保証することができる。従ってフィルターの被覆のために、まず2の別々の懸濁液を作成する。第一の懸濁液は、貴金属(例えば白金、パラジウム)で活性化されている担体材料を含む。第二の懸濁液はゼオライトを含む。ゼオライトは、好ましくは先行する工程段階において含浸、またはイオン交換によって貴金属でドープする。しかしまた、貴金属を適切な前駆体化合物によってゼオライト懸濁液に入れることもできる。その後両方の懸濁液において、粉砕により個別に2μm未満の平均粒子直径d50を調整する:d90の値は、最大5〜6μmであるのが望ましい。本来の被覆工程の直前に両方の懸濁液を混合し、かつ均質化する。
【0022】
第一の触媒も第二の触媒も、ゼオライトを含んでいてよい。しかしながらエンジン近くに設置されたディーゼル粒子フィルターに対しては、ゼオライトがフィルターの全長にわたって均一に分散されていれば、有利に製造された。この場合、第一の触媒のみがゼオライトを含む。この時に第二の触媒は、粒子フィルターの前部において触媒活性を有する貴金属の濃度を高めるためだけに役立つ。このような配置の場合、とりわけ瞬間的な条件、例えばNEDCにおいて、炭化ケイ素から成るフィルター支持体では特に著しい、軸方向の、フィルターにおける温度プロフィールを最適に利用することができる。
【0023】
第一と第二の触媒へのゼオライトの分散は、被覆されたフィルターの排ガスの背圧形成に影響を与える。ゼオライトが第二の触媒にのみ導入されていると、ゼオライトが第一の触媒とともにフィルターの全長にわたって均一に施与されている時より、動圧は明らかに高い。これに対して第一と第二の触媒におけるゼオライトの使用は、ゼオライトによる全負荷量が同一の場合、第一の触媒にのみゼオライトを配置するのに比較して、動圧性において有意な差異を示さなかった。
【0024】
基本的に炭化水素に対する吸蔵容量は、ゼオライトの増加量と共に増える。しかしながらゼオライトの最大使用可能量は、使用されるフィルター支持体の細孔率と平均細孔直径により左右される。通常のゼオライト負荷量は、細孔率の低い支持体(<50%)の場合は5g/l(フィルター体積)から、細孔率の高い支持体(>50%)の場合は約50g/lである。貴金属によりドープされた担体材料に対するゼオライトの比は、本発明による粒子フィルターにおいては好適には0.1〜10である。
【0025】
ディーゼル粒子フィルターには、公知のフィルター支持体が適している。好ましくは、炭化ケイ素、コーディライト、アルミニウムチタナート、またはムライトから成る、いわゆるウォールフローフィルターを使用する。触媒材料およびゼオライトを、フィルター支持体の細孔に最適に堆積させることを可能にするため、フィルターの材料は40〜80%の細孔率、および9〜30μmの平均細孔直径を有する連続気孔構造(Offenporige Struktur)を有するべきだろう。
【0026】
そこで本発明を、以下の実施例と図を用いてより詳しく説明する。異なる被覆を有する複数のディーゼル粒子フィルターを製造し、かつエンジンテストベンチで、ならびに試験車両でヨーロッパ試験サイクルNEDCにおいてその浄化性能について試験した。フィルターは新しい状態において、および熱水による老化後、(10%のH2O、10%のO2、残分はN2から成る雰囲気;16時間、750℃でチャンバー炉内で)測定した。
【0027】
使用される支持体とはその都度、46.5cm-1(300cpsi)のセル密度、および0.3mm(12mil)の流路壁厚を有する炭化ケイ素から成るフィルターである。使用されるフィルター材料の細孔率は60%であり、平均細孔直径は20μmであった。フィルター体は152.4mmの長さを有していた。
【0028】
動圧測定
ゼオライトを有する粒子フィルターの負荷の影響を評価するために、3の異なる担体酸化物とゼオライトによって負荷された粒子フィルターの動圧を、動圧装置において、150〜300m3/hの貫流量で測定した。
【0029】
フィルター1は負荷しなかった。フィルター2は酸化アルミニウム懸濁液により被覆を得、乾燥とか焼の後に約30g/lの負荷濃度を有していた。フィルター3は酸化アルミニウムによって、およびY−ゼオライトとβ−ゼオライトとから成るゼオライト混合物(混合比1:1)によって被覆した。酸化アルミニウムとゼオライトは、酸化アルミニウムとゼオライトの平均粒子直径が2μm未満になるまで、本発明により別々に粉砕した。フィルター3の負荷量は30g/lの酸化アルミニウム、および10g/lのゼオライト混合物であった。
【0030】
動圧装置による測定は、純粋な酸化アルミニウム懸濁液によるフィルター2の被覆が、被覆されていないフィルター1に比較して約15〜20%、動圧を高めたことを示した。これに対してフィルター3における10g/lのみのゼオライトの添加は、被覆されていない支持体に比較して約50%高められた背圧につながった。
【0031】
比較例(フィルターV)
フィルター支持体をまずフィルターの全長にわたって均質に、安定化されたγ−酸化アルミニウム上に担持されたPt/Pd触媒により被覆した。被覆懸濁液を、平均粒子直径が2μm未満になるまで粉砕した。これにより触媒材料を、被覆においてフィルター支持体の細孔中にほぼ完全に堆積させた。この第一の触媒層のPt/Pdの比は、2:1であり、かつ貴金属負荷量は2.12g/l(60g/ft3)であった。第二の被覆工程において、フィルター長さの半分にわたって同様に2.12(60g/ft3)の貴金属含分によって、かつ同一のPt/Pd比で第二の触媒層を施与した。これにより生じた比較フィルターVの貴金属総負荷量は、約90g/ft3、もしくは3.18g/lであった。第二の触媒層もまた、主にフィルター支持体の細孔内に堆積させた。
【0032】
実施例1(フィルターF1):
第二のフィルター支持体を、本発明による触媒で被覆した。この際まずフィルターを、フィルターの全長にわたって60g/ft3の貴金属負荷量で被覆した。しかしながら比較例とは異なり本発明による被覆は、2:1の比のPt/Pdで覆われ、安定化されたγ−酸化アルミニウムに対して付加的に、Y−ゼオライトとβ−ゼオライトとから成るゼオライト混合物(混合比1:1)も含んでいた。被覆懸濁液への添加前に、両方のゼオライトを僅少な量のPt(0.5質量%)によって含浸でドープした。γ−酸化アルミニウム対ゼオライト混合物の比は、約1:1であった。この後さらなる被覆工程においてフィルターの入口側を76.2mmの長さまで同一の被覆懸濁液を使用して、2.12g/lの貴金属により付加的に被覆した。従ってフィルターF1上における貴金属PtとPdの全濃度は、2:1のPt/Pd比で3.18g/l(90g/ft3)であった。
【0033】
新しい状態での、および熱水炉による老化後の、両方のフィルターの触媒活性試験を、EUROIV準拠の乗用車においてポンプ−ノズル噴射システムを有する103kW、2.0lのディーゼルエンジンによって実施した。この際、フィルターをエンジン近くに設置し、かつ前接続されたディーゼル酸化触媒無しでNEDC(New European Driving Cycle)試験サイクルにおいて測定した。この結果を、自動車の未処理放出量も含め、表1にまとめた。
【0034】
NEDCにおける放出によってはっきりとわかるのは、ゼオライトをHC吸蔵成分としてフィルターF1で使用することによって、新しい状態においても激しい熱による老化(16時間、790℃)後でも、HC放出量を有意に低下させたということである。注目すべきは、CO放出量に対しても同様のことが当てはまることである。老化後、約30%以上のCO放出量の減少が見られた。
【0035】
実施例2(フィルターF2、およびF3)
実施例1(フィルター1)と同様に、2のさらなるフィルター支持体を3.18g/lの貴金属負荷量で被覆した。フィルターF2ではフィルターF1とは異なり、第一の触媒層のみにおいて20g/lのゼオライト量を、フィルターの全長にわたって施与した。フィルターF3には、第二の触媒層のみによってゼオライトを施与した。使用されたゼオライトは、実施例1のようにY−ゼオライトとβ−ゼオライトとから成る混合物(混合比1:1)である。両方に使用されるゼオライトは、その都度0.5質量%のPtでドープされていた。
【0036】
フィルターF2とF3の触媒活性を同様に、新しい状態で、および熱水炉による老化後、EUROIV準拠の乗用車においてポンプ−ノズル噴射システムを有する103kW、2.0lのディーゼルエンジンによって実施した。この結果を同様に、表1に示した。
【0037】
とりわけ790℃での熱水による老化後、NEDCにおいて放出された炭化水素、およびまたCO放出について、フィルターF2とF3に対して改善された放出能力が示される。フィルターの全長にわたってHC吸蔵成分を使用することが有利であると実証される。第一と第二の触媒にゼオライト量を分散させることは、第一の触媒のみにゼオライトを使用するのに比べて、利点が示されない。第二の触媒のみにゼオライトを使用することは、NEDCにおける炭化水素と一酸化炭素の放出の点でより有効性が低い。F1に比較してHC放出量は約60%高まり、CO放出量は約18%上昇する。それにもかかわらず、フィルター入口の「高負荷」帯域におけるゼオライトの使用はまた、比較例のフィルターVに比べてNEDCにおける有害物質放出量の有意な減少をもたらす。
【0038】
表1:NEDCにおけるCOおよびHCの未処理の放出量と、バッグへの放出量(EUROIV準拠のディーゼルの乗用車 103kW、2.0l)
【表1】

【0039】
実施例3(フィルターF4、F5、F6、F7):
さらなる試験プログラムにおいて、触媒で被覆された4つの粒子フィルターを異なるゼオライト量で被覆した。F4〜F7までのこの4つのフィルターを、フィルターF1と同様に製造した。この際フィルターを、まずフィルターの全長にわたって均一に、2.12g/l(60g/ft3に相当)の貴金属負荷量で被覆した。第二の被覆工程において、76.2mmの長さにわたる帯域を有するフィルターを、付加的に2.12g/lの貴金属によって、90g/ft3の貴金属総負荷量(Pt/Pd=2:1)が生じるように被覆した。担体酸化物(安定化されたγ−酸化アルミニウム)の量を一定に保つ一方、4つのフィルターを異なるゼオライト量(10〜40g/l)で被覆し、この際第一の触媒に対しても、また第二の触媒に対しても、フィルターF1と同様に50%のY−ゼオライトと、50%のβ−のゼオライトとから成る同一のゼオライト混合物を使用した。この際、ゼオライト上のPt濃度は0.5質量%であった。表2は、本発明によるF4〜F7の4つのフィルターの組成を示す。
【0040】
ゼオライト含分に左右される本発明によるフィルターのHC吸蔵容量を試験するために、コモンレールの噴射システムを有する4気筒のディーゼルモーター(2.2l、100kW)を用いて吸蔵試験を実施した。吸蔵試験は、約110℃のフィルター入口温度を有する一定のエンジン運転点で実施した。触媒前の、および触媒後のHC放出量を、FID分析器(AMA 2000、Pierburg)を用いて記録した。吸蔵試験はその都度、触媒後のHC濃度が、約10分間継続して一定の値になるまで行なった。吸蔵されたHC量は、触媒前のHC濃度と、触媒後のHC濃度とから算出した:
表2に示された結果によれば明らかに、吸蔵されたHC量はゼオライトの使用によって急激に増加した。すでに10g/lのゼオライトの使用が、吸蔵試験で吸蔵される炭化水素量の2.5倍の向上につながる。個々の触媒においてゼオライト含分をさらに増やせば、HC吸蔵容量は継続的に増加する。ゼオライト含分が25g/l以上で初めて、飽和作用が現れるようだ。
【0041】
表2:フィルターF4〜F7に対する貴金属含分とゼオライト負荷量、ならびにエンジンテストベンチにおけるHC吸蔵試験の間に、吸蔵されたHC量
【表2】

【0042】
HC吸蔵成分による炭化水素の吸蔵は、活性を有する触媒の酸化中心への炭化水素種の吸着を低減させる。このことによってまた、一酸化炭素の反応にも肯定的に作用する。
【0043】
フィルター支持体の細孔にゼオライトを堆積させることにより、フィルターの動圧への悪影響が充分に抑制される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスのための入口側と出口側、および軸方向の長さを有し、触媒活性成分として白金族金属を担体材料上に含む第一の触媒により被覆されている、ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための粒子フィルターにおいて、
白金族金属のための前記担体材料が酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、およびこれらの混合物、またはこれらの混合酸化物から成る群から選択されていることと、第1の触媒が付加的に、炭化水素を吸蔵するための少なくとも1のゼオライトを含み、かつ粒子フィルターが入口側から出発して長さの一部までゼオライト不含の第二の触媒によって被覆されていることを特徴とする、ディーゼルエンジンの排ガスを処理するための粒子フィルター。
【請求項2】
ゼオライトが10〜400の二酸化ケイ素に対する酸化アルミニウムのモル比を有する、モルデン沸石、シリカライト、Y−ゼオライト、ZSM−5 ゼオライト、およびβ−ゼオライト、またはこれらの混合物から成る群から、前記ゼオライトが選択されていることを特徴とする、請求項1に記載の粒子フィルター。
【請求項3】
前記ゼオライトが遷移金属イオンによって交換されていることを特徴とする、請求項2に記載の粒子フィルター。
【請求項4】
遷移金属として鉄、銅、もしくはセリウム、またはこれらの混合物が存在することを特徴とする、請求項3に記載の粒子フィルター。
【請求項5】
前記ゼオライトがH型、またはNa型で存在し、かつ同様に、白金族金属の濃度がゼオライトの全質量に対して0.1〜10質量%の少なくとも1の白金族金属によって触媒活性にされていることを特徴とする、請求項2に記載の粒子フィルター。
【請求項6】
両方の触媒が白金族金属として白金とパラジウムを1:10〜20:1の質量比で含むことを特徴とする、請求項1に記載の粒子フィルター。
【請求項7】
第1の触媒中のドープされたゼオライトに対する、白金族元素を含めた担体酸化物の質量比が、0.1〜10であることを特徴とする、請求項1に記載の粒子フィルター。
【請求項8】
前記触媒が基本的に粒子フィルターの細孔に堆積していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の粒子フィルター。
【請求項9】
前記粒子フィルターが、壁面が40〜80%の細孔率の、および9〜30μmの平均細孔直径の連続気孔構造を有するセラミック材料から成るウォールフローフィルターであることを特徴とする、請求項1に記載の粒子フィルター。
【請求項10】
両方の触媒を懸濁液被覆の形で粒子フィルター上に施与することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の粒子フィルターの製造方法。
【請求項11】
いずれの個々の触媒の被覆のためにもまず、1の懸濁液が白金族金属で活性化された担体材料を含み、かつ第二の懸濁液がゼオライトを含む、その都度2の懸濁液を製造し、かつ両方の懸濁液を2μm未満の平均粒子直径に粉砕し、かつフィルターを被覆する直前に相互に混合し、かつ均質化させることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
ディーゼルエンジンの排ガス中の一酸化炭素、炭化水素、および煤煙粒子を低減させるための、請求項1から11までのいずれか1項に記載の粒子フィルターの使用。

【公表番号】特表2010−501326(P2010−501326A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525032(P2009−525032)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058550
【国際公開番号】WO2008/022967
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】