説明

触媒のクラック発生検知装置

【課題】触媒以外の部材で生じたAE波の信号を除外し、正確な触媒由来のAE信号に基づきクラック検知を行うことができるクラック発生検知装置を提供する。
【解決手段】クラック発生検知装置は、触媒1に接触する接触部材と、該接触部材を介して触媒1からのAE信号を検出するAEセンサ12とを備えるメインAE信号検出部10と、触媒1には非接触であって該触媒1の周辺部材に接触する接触部材と、該接触部材を介して周辺部材からのAE信号を検出するAEセンサ22とを備えるサブAE信号検出部20と、検知部30とを備えている。検知部30は、メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号と、サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号とを比較することにより、触媒1において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒1にクラックが発生したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティックエミッション(以下、AEと称する)法を用いて触媒のクラックの発生を検知するクラック発生検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される内燃機関には、排ガスを浄化する排気浄化装置が設けられる。内燃機関の一例であるディーゼルエンジンには、例えば、排ガスの有害成分(CO、HC、NOx等)を浄化するモノリス触媒等と、排ガスに含まれる微粒子を捕捉することを主目的としたパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter。以下、DPFと称する)等とが設けられる。
【0003】
従来から、排気浄化装置の異常を検出する異常検出装置が知られている。特許文献1および2には、DPFを備えた内燃機関の排気浄化装置において、DPFの目詰まりや配管の亀裂等を検出することを目的とした異常検出装置が開示されている。特許文献1および2に開示された異常検出装置では、DPFの入口側と出口側とにおける排ガスの圧力差を計測し、その圧力差に基づいて異常を検出する。
【0004】
DPFには、捕捉された微粒子が堆積する。DPFに目詰まりを生じると、上記圧力差は大きくなる。したがって、上記圧力差を計測することにより、DPFの目詰まりを容易に検出することができる。また、配管に亀裂が生じた場合にも、上記圧力差は大きく変化する。そのため、上記圧力差を計測することにより、配管の亀裂を容易に検出することができる。
【0005】
一方、モノリス触媒では、クラックが発生しても、そのクラックが大規模なものでない限り、上記圧力差はさほど変化しない。したがって、上記圧力差に基づく検知方法では、触媒のクラックを検知することは難しい。したがって、従来、クラックの発生を検知するためには、触媒を装置から取り外し、その外観を観察するか、あるいは必要に応じて一部を切断して、その内部を観察しなければならなかった。
【0006】
本願発明者は、触媒を装置から取り外さなくてもクラックの発生を検知できるよう、AE法を応用して触媒のクラックの発生を検知することを考えた。特許文献3および4には、AE法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−157200号公報
【特許文献2】特開2005−226519号公報
【特許文献3】特開平01−161146号公報
【特許文献4】特開平08−062337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クラックが発生すると、弾性歪みエネルギーが解放され、弾性波が発生する。AE法では、検知対象物にセンサを貼り付け、このセンサで弾性波(AE波)を検出することによって、クラックの発生を検知する。
【0009】
本発明者は、上記AE波に基づいてクラックの発生を検知するために、図10に示すような構成のクラック発生検知装置110を考えている。かかるクラック発生検知装置110は、AEセンサ102とガイドシャフト104と検知部130を備えている。ガイドシャフト104は、触媒1のケース3と断熱材2を貫通した貫通孔4に挿入されており、コイルスプリングなどの付勢部材106によって触媒1側へ付勢された状態で、一端104aにおいて触媒1に接触している。そして、ガイドシャフト104の他端104bは、弾性波を検出するAEセンサ102に接触している。
この構成のクラック発生検知装置110では、触媒1で生じたAE波が、ガイドシャフト104を伝達し、AEセンサ102で信号化され、AE信号として検知部130に送信される。そして、検知部130は、送信されたAE信号に基づいて触媒1においてクラックが発生しているか否かを検知する。この構成のクラック発生検知装置110によれば、触媒1で生じたAE波に基づいてクラックの有無を判断できるため、クラックの発生が非破壊的に検知できる。
【0010】
さらに、本発明者は、上記構成のクラック発生検知装置110の改良の余地について検討を重ね、次の課題を見出した。上記構成のクラック発生検知装置110では、触媒1を密封するために、ガイドシャフト104を収容するホルダ107が、一端107aにおいて触媒1のケース3に接触している。このため、上記構成のクラック発生検知装置100では、ホルダ107を介してガイドシャフト104がケース3に間接的に接触する。例えば、触媒1が内燃機関の排気通路に設置されている場合、内燃機関の稼働に伴い各部位で機械的振動が起こり、それがケース3、ホルダ107、ガイドシャフト104を通じてAEセンサ102に伝わるため、AEセンサ102で作成したAE信号に、触媒1以外の部材で生じたAE波の信号が含まれることになり、誤測定の原因となり得る。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、触媒以外の部材で生じたAE波の信号を除外し、正確な触媒由来のAE信号に基づきクラック検知を行うことができるクラック発生検知装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を実現するべく、本発明によって以下の構成のクラック発生検知装置が提供される。即ち、ここで開示されるクラック発生検知装置は、内燃機関の排ガスを浄化する触媒にクラックが発生したことを検知するクラック発生検知装置である。このクラック発生検知装置は、メインAE信号検出部とサブAE信号検出部とを備えている。メインAE信号検出部は、上記触媒に接触する接触部材と、該接触部材を介して上記触媒からのAE信号を検出するAEセンサとを備えている。また、サブAE信号検出部は、上記触媒には非接触であって該触媒の周囲に配置されている周辺部材に接触する接触部材と、該接触部材を介して上記周辺部材からのAE信号を検出するAEセンサとを備えている。
また、ここで開示されるクラック発生検知装置は、上記メインAE信号検出部および上記サブAE信号検出部とそれぞれ電気的に接続される検知部を備えている。ここで、上記検知部は、上記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号と上記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号とを比較することにより、上記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の好ましい一態様では、上記周辺部材は上記触媒を収容するケースである。
【0013】
ここで開示されるクラック発生検知装置では、触媒には非接触であって該触媒の周囲に配置されている周辺部材に接触する接触部材を備えるサブAE信号検出部から、上記周辺部材(例えば、触媒のケースや該ケースに接触する他の部材)に由来するAE信号であるサブAE信号を検出する。そして、このクラック発生検知装置の検知部は、メインAE信号検出部で検出されたメインAE信号と上記サブAE信号とを比較することにより、触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。すなわち、周辺部材由来のAE信号及び触媒由来のAE信号を含むメインAE信号と、周辺部材由来のAE信号からなるサブAE信号を比較することによって、触媒において弾性波(AE波)が生じたことを検知でき、この比較によって得られた特性値に基づいて触媒にクラックが生じているか否かの判定を行うことができるため、周辺部材由来のAE波に起因する誤測定を防止し、より正確な触媒のクラック検知を行うことができる。
【0014】
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の好ましい一態様では、上記検知部は、所定時間内において上記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号のヒット数と、該所定時間内において上記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号のヒット数とを比較する。これにより、上記検知部は、上記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号のヒット数と、該サブAE信号のヒット数との差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。
上記「ヒット数」とは、図4に示すような波形信号であるAE信号を1ヒットとカウントし、所定時間内に当該ヒットが入力された数(入力信号数)を示す特性値である。一般的に、AE信号のヒット数は、触媒にクラックが発生することにより増加する傾向がある。
上記構成のクラック発生検知装置では、「比較により得られた特性値」として、メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数との差を採用している。このメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数との差は、触媒において生じた弾性波(AE波)を信号化した場合のヒット数を反映しているため、かかる特性値に基づいてクラック検知の判定を行うことによって、より正確なクラック検知を行うことができる。
【0015】
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の好ましい一態様では、上記検知部は、所定時間内において上記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号に基づいて得られるAE信号強度の発生回数と、該所定時間内において上記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号に基づいて得られるAE信号強度の発生回数とを比較する。これにより、上記検知部は、上記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号強度の発生回数と、該サブAE信号強度の発生回数の差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。
上記「AE信号強度の発生回数」とは、所定時間内に得られたAE信号の時系列メインAE波形の形状から算出されるAE信号強度であって所定の閾値を超える振幅を有することで選択された値であり、AEカウントと称されることもある。一般的に、「AE信号強度の発生回数」は、触媒にクラックが発生することにより増加する傾向がある。
上記構成のクラック発生検知装置によれば、「比較により得られた特性値」として、メインAE信号強度の発生回数とサブAE信号強度の発生回数との差を採用している。このメインAE信号強度の発生回数とサブAE信号強度の発生回数との差は、触媒において生じた弾性波(AE波)を信号化した場合の信号強度の発生回数を反映しているため、かかる特性値に基づいてクラック検知の判定を行うことによって、より正確なクラック検知を行うことができる。
【0016】
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の好ましい一態様では、上記検知部は、所定時間内において上記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号に基づいて得られるメインAE信号エネルギー値と、所定時間内において上記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号に基づいて得られるサブAE信号エネルギー値とを比較する。これにより、上記検知部は、上記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号エネルギー値と、該サブAE信号エネルギー値との差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。
上記「AE信号のエネルギー値」とは、所定時間内に得られたAE信号の時系列メインAE波形の形状から算出される値であって、該時系列メインAE波形における所定の閾値を超える振幅部分の積分値として求められる。一般的に、AE信号のエネルギー値は、触媒に生じるクラックの面積との間に相関関係を有している。
上記構成のクラック発生検知装置によれば、「比較により得られた特性値」として、メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギーとの差を採用している。このメインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギーとの差は、触媒において生じた弾性波(AE波)を信号化した場合の該信号のエネルギー値を反映しているため、かかる特性値に基づいてクラック検知の判定を行うことによって、より正確なクラック検知を行うことができる。
【0017】
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の好ましい一態様では、上記メインAE信号検出部と上記サブAE信号検出部とが隣接して配置されている。例えば、サブAE信号検出部とメインAE信号検出部とは、非接触であり、且つ、所定の間隔(典型的には100mm以下、好ましくは1mm〜50mm、例えば30mm)を設けて配置されているとよい。
上記構成のクラック発生検知装置によれば、メインAE信号とサブAE信号とに含まれる周辺部材由来のAE信号を実質的に同一となる程度まで近似させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置および該クラック発生検知装置を適用した内燃機関の排気通路を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置を模式的に示す部分断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置のメインAE信号検出部及びサブAE信号検出部として用いられるウェーブガイドの部分断面図。
【図4】AE信号検出部によって検出されるAE信号の一例を模式的に示す図。
【図5】メインAE信号M、サブAE信号S及び触媒由来の弾性波の信号(差分信号)Tを模式的に示す図。
【図6】本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置の検知部の制御を説明するフローチャート。
【図7】本発明の他の実施形態に係るクラック発生検知装置の検知部の制御を説明するフローチャート。
【図8】本発明の他の実施形態に係るクラック発生検知装置の検知部の制御を説明するフローチャート。
【図9】所定の最高温度から触媒を急冷した際に検出された、メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数とを示すグラフ。
【図10】クラック発生検知装置の一例を示した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0020】
ここでは、先ず、本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置を適用した内燃機関の排気通路の概略を、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るクラック発生検知装置100と、クラック発生検知装置100を適用した内燃機関200の排気通路210を模式的に示した図である。
【0021】
<全体構成の概略>
内燃機関200は、例えばディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの一般的なエンジンである。内燃機関200には排気通路210が接続されている。排気通路210には、小型酸化触媒としての触媒1と、排気浄化触媒としての触媒220とが設けられている。内燃機関200から排出された排ガスGは、触媒1及び触媒220に向かって排気通路210内を流れる。
触媒1及び触媒220は、内燃機関200から排出された排ガスGを浄化する。触媒1は触媒220の活性化を促すものであり、触媒220の上流側に配置されている。触媒1の種類は特に限定されない。触媒1は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)等の貴金属が担持されたモノリス触媒であってもよい。また、触媒1は、貴金属が担持されたDPF等であってもよい。
また、触媒1の上流には、排気通路210内に燃料Fを噴射する燃料噴射弁230が配置されている。また、内燃機関200や燃料噴射弁230は、ECU(Engine Control Unit)240に接続されている。ECU240は、内燃機関200や燃料噴射弁230の稼働を電気的に制御している。
【0022】
<クラック発生検知装置の構成>
ここで開示されるクラック発生検知装置100は、上記内燃機関200の排ガスGを浄化する触媒1にクラックが発生したことを検知するために用いられる。このクラック発生検知装置100は、メインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20と検知部30を備えている。また、図1に示す構成では、検知部30に外部伝達手段250が接続されており、触媒1にクラックが発生したことが検知された場合、外部伝達手段250によってその旨が通知される。以下、図2及び図3を参照しながら、ここで開示されるクラック発生検知装置100の詳細について説明する。図2は、図1におけるクラック発生検知装置100を拡大した部分断面図である。なお、図示の関係上、図1では、メインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20は、排ガスGの流れる方向に沿って並べて配置しているが、図2では、円筒形の触媒1の周方向に沿ってメインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20を並べて配置している。図3は、図2におけるメインAE信号検出部10及びサブAE信号検出部20として用いたウェーブガイドを模式的に示す部分断面図である。
【0023】
1.メインAE信号検出部
ここで開示されるメインAE信号検出部は、触媒に接触する接触部材と、該接触部材を介して触媒からのメインAE信号を検出するAEセンサとを備えている。メインAE信号検出部は、上記接触部材と上記AEセンサとを備え、メインAE信号を検出できるような構成を有していればよく、具体的な構成や配置位置は特に限定されない。
図2に示す構成では、触媒1の周辺部材である断熱材2とケース3を貫通する貫通孔5が設けられており、当該貫通孔5にメインAE信号検出部10が取り付けられている。
【0024】
1−1.メインAE信号検出部の接触部材
メインAE信号検出部の接触部材は触媒に接触する。ここで、接触部材とは、弾性波(AE波)が生じる部材に接触しており、当該弾性波を後述のAEセンサに伝導する部材を指す。
図2に示す構成のメインAE信号検出部10では、断熱材2とケース3を貫通する貫通孔5にガイドシャフト14が挿入されており、このガイドシャフト14の一端14aが触媒1に接触している。メインAE信号検出部10のガイドシャフト14の一端14aは、曲面状に形成されていると好ましい。これによって、ガイドシャフト14との摩擦により触媒1の表面に傷が付くのを防止できる。
一方、ガイドシャフト14は、他端14bにおいてAEセンサ12と接触している。図2に示す構成のガイドシャフト14では、プレート状に広がった他端14bとプレート15との間にAEセンサ12を挟持している。メインAE信号検出部10のガイドシャフト14は、触媒1で生じる弾性波(AE波)をAEセンサ12に伝導するため、接触部材として機能する。このガイドシャフト14は、弾性波(AE波)を伝導可能な棒状の部材であり、例えば、ステンレス、アルミニウムなどから構成されているとましい。
【0025】
また、図3に示すように、ガイドシャフト14は、軸方向に摺動可能な状態で、筒状部材であるホルダ17の貫通孔17aに挿通されている。ホルダ17の貫通孔17a内には、付勢部材としてのコイルスプリング16が収容されており、ガイドシャフト14を一端14a側に向かって付勢している。
また、触媒1を密封するために、上記ホルダ17の一端17bが触媒1のケース3と接触している。このため、メインAE信号検出部10のガイドシャフト14は、触媒1の周辺部材であるケース3にホルダ17を介して間接的に接触している。このため、触媒1の周辺部材(例えば、ケース3や該ケース3に接触する他の部材)の振動に由来する弾性波が生じると、当該弾性波がケース3、ホルダ17を介してガイドシャフト14に伝導し、AEセンサ12に伝えられる。
【0026】
1−2.メインAE信号検出部のAEセンサ
AEセンサは、上記接触部材を介して伝導されたAE波の信号を検出するセンサである。ここで、AEセンサとしては、弾性波(例えば、数十kHz〜2MHz程度の振動波)を検出し、電気信号に変換する素子によって構成されているとよい。かかる素子としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛系の圧電セラミックス)等を好適に用いることができる。
上述のように、図2に示す構成のクラック発生検知装置100では、AEセンサ12は、プレート状に広がった他端14bとプレート15との間に挟持されている。このとき、プレート15とAEセンサ12との間に緩衝材が配置されていると好ましい。これにより、プレート15の振動や、プレート15を伝導するその他部材の振動などに起因する弾性波(AE波)がメインAE信号検出部10で検出されることを防止できる。
メインAE信号検出部のAEセンサは、触媒からのAE信号を検出し、メインAE信号に変換する。具体的には、メインAE信号検出部10のAEセンサ12は、上記ガイドシャフト14を伝導してきた弾性波(AE波)を検出し、メインAE信号に信号化する。
ここで、メインAE信号12には、触媒1由来のAE波の信号の他に、ホルダ17を介してガイドシャフト14に伝導された周辺部材の振動に由来するAE波の信号が含まれ得る。
【0027】
1−3.支持部材
また、ここで開示されるクラック発生検知装置のメインAE信号検出部は、上記接触部材や上記AEセンサの他に、支持部材を備えていると好ましい。図2及び3に示す構成のメインAE信号検出部10では、ガイドシャフト14を支持する支持部材18が、ホルダ17の貫通孔17a内における両端部に配置されている。当該支持部材18を配置することにより、ガイドシャフト14の径方向へのがたつきを防止し、AE波をAEセンサ12まで正確に伝達させることができる。
この支持部材としては、例えば、ワッシャ、ボールプランジャ、軸受けなどを用いることができる。特に、挿通孔にガイドシャフト14を挿通させることによって、ガイドシャフト14を支持する筒状部材からなる軸受けを用い、その内周面にフッ素系樹脂等からなるコーティング層を形成するとより好ましい。かかる構成の軸受けでガイドシャフト14を支持すると、筒状部材の内周面とガイドシャフト14とが接触しても、ガイドシャフト14の軸方向の摺動が阻害されにくいため、支持部材18とガイドシャフト14との間のクリアランスを少なくすることができる。これによって、ガイドシャフト14の軸方向の摺動を十分に確保した上で、径方向へのがたつきをより少なくすることができる。
【0028】
2.サブAE信号検出部
サブAE信号検出部は、接触部材と、該接触部材を介して周辺部材からのサブAE信号を検出するAEセンサとを備えている。上記メインAE信号検出部と同様に、サブAE信号検出部も、接触部材とAEセンサとを備え、サブAE信号を検出できるような構成を有していればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
また、サブAE信号検出部は、AEセンサまで弾性波が伝導するときの減衰特性が上記メインAE信号検出部と実質的に同じになるように構成すると好ましい。例えば、メインAE信号検出部とサブAE信号検出部の構成を同じにすることにより、サブAE信号検出部の減衰特性とメインAE信号検出部の減衰特性を実質的に同じにすることができる。図2及び図3に示すように、ここで開示されるクラック発生検知装置100では、メインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20とが略同じ構成を有している。以下の説明において、サブAE信号検出部について説明を省略している事項については、上記メインAE信号検出部と同じ構成であるものとする。
【0029】
また、サブAE信号検出部は、上記メインAE信号検出部に隣接して配置されていると好ましい。具体的には、サブAE信号検出部とメインAE信号検出部とは、非接触であり、且つ、所定の間隔を空けて配置されていると好ましい。サブAE信号検出部とメインAE信号検出部との距離は、典型的には100mm以下、好ましくは1mm〜50mm、例えば30mmに設定するとよい。このように、メインAE信号検出部とサブAE信号検出部とを配置すると、メインAE信号とサブAE信号とに含まれる周辺部材由来のAE信号を実質的に同一となる程度まで近似させることができる。図2に示す構成では、メインAE信号検出部10を取り付ける貫通孔5の近傍に、ケース3のみを貫通した貫通孔6が設けられている。サブAE信号検出部20は、この貫通孔6に取り付けられており、メインAE信号検出部10に隣接している。
なお、サブAE信号検出部とメインAE信号検出部とは、必ずしも隣接している必要はなく、ある程度の距離を設けて配置してもよい。例えば、サブAE信号検出部20は、メインAE信号検出部10の位置から見て、筒状のケース2の周方向における反対側にサブAE信号検出部が配置されていてもよい。
【0030】
サブAE信号検出部の接触部材は、触媒には非接触であって該触媒の周囲に配置されている周辺部材に接触している。ここで、「触媒には非接触」とは、触媒由来のAE波がサブAE信号検出部の接触部材に実質的に伝達されないような構成を指すものである。また、「周辺部材に接触」とは、周辺部材由来のAE波がサブAE信号検出部の接触部材に伝達されるような構成を指すものである。
図2に示す構成のクラック発生検知装置100では、サブAE信号検出部20のガイドシャフト24は、上記貫通孔6内に挿入されているが、触媒1や断熱材2に接触していない。一方で、サブAE信号検出部20のホルダ27は、触媒1の周辺部材であるケース3に接触しており、当該ホルダ27を介して、ガイドシャフト24が触媒1の周辺部材(ケース3)に間接的に接触している。このように、サブAE信号検出部20の接触部材は、触媒1には非接触であり、且つ、周辺部材に接触している。
なお、図2に示す構成のサブAE信号検出部20では、ガイドシャフト24の一端24aは、触媒1に直接接触しないため、曲面状に形成されていない。かかる態様は本発明を限定するものではなく、サブAE信号検出部20のガイドシャフト24も一端24aを曲面状に形成してもよい。
【0031】
サブAE信号検出部のAEセンサには、上記メインAE信号検出部のAEセンサと同じ構成を有するAEセンサを用いることができる。図2に示す構成のサブAE信号検出部20では、触媒1の周辺部材(例えば、ケース3や該ケース3に接触する他の部材)の振動に由来するAE波が、ケース3から上記接触部材(ガイドシャフト24,ホルダ27)に伝導し、AEセンサ22に到着する。サブAE信号検出部20のAEセンサ22は、到着した弾性波(AE波)をサブAE信号に変換する。
【0032】
3.検知部
検知部は、CPUなどからなる演算部と、不揮発性メモリーなどからなる記憶部などを備えており、予め設定されたプログラムに沿って種々の電子的な演算処理を行なうことで、触媒のクラック検知における種々の判定を行う。
検知部は、メインAE信号検出部およびサブAE信号検出部とそれぞれ電気的に接続されている。図2に示す構成のクラック発生検知装置100では、検知部30に入力部が設けられており、メインAE信号検出部10のAEセンサ12とサブAE信号検出部20のAEセンサ22とに接続されている信号線11が検知部30の入力部に接続されている。このとき、各AEセンサ12,22と検知部30との間は、信号を増幅させる増幅器や、ノイズ成分を除去するためのフィルター回路等を設けてもよい。これらの装置を設けることによって、より正確な信号を検知部30に送信することができる。
【0033】
ここで開示されるクラック発生検知装置の検知部は、メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号と、サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号とを比較することにより、触媒において弾性波が生じたことを検知できるように構成されている。図2に示す構成のクラック発生検知装置100では、上記「メインAE信号とサブAE信号との比較」処理を行う比較部32が、検知部30に設けられている。
【0034】
上述したように、メインAE信号検出部10で検出されるメインAE信号には、触媒1由来のAE波の信号と、周辺部材由来のAE波の信号とが含まれる。一方、サブAE信号検出部20で検出されるサブAE信号には、周辺部材由来のAE波の信号が含まれる。例えば、比較部32は、図5に示すようなメインAE信号MとサブAE信号Sとが検出された場合、これらのAE信号を比較することによって、触媒において生じた弾性波の信号である差分信号Tを求める。
【0035】
また、検知部は、上記比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。上記特性値としては、AE信号を解析することにより得られる種々の値を用いることができる。後に詳しく説明するが、特性値の例としては、「AE信号のヒット数」、「AE信号強度の発生回数」、「AE信号エネルギー値」などが挙げられる。
図2に示す構成のクラック発生検知装置100の検知部30には、比較により得られた上記差分信号Tの特性値に対して判定を行う判定部34が設けられている。判定部34には、差分信号Tの特性値に対する基準値が予め設定されている。判定部34は、上記差分信号Tの特性値が、上記基準値を上回っている場合に、触媒1にクラックが発生したと判定する。
【0036】
また、ここで開示されるクラック発生検知装置の検知部は、触媒にクラックが発生するおそれのある状態である「クラック検出範囲の状態」が生じているか否かを判定し、該「クラック検出範囲の状態」が生じている場合に、上述のクラック検知を開始させる検知開始判定部を備えていてもよい。このように、「クラック検出範囲の状態」においてのみクラックの検知を試みることによって、無駄な検知を省略することができ、効率の良い検知を行うことが可能となる。
検知開始判定部は、検知部に設けられていてもよいし、検知部とは別に設けられていてもよい。図2に示す構成のクラック発生検知装置100では、検知部30に検知開始判定部36が設けられている。
【0037】
上記検知開始判定部が判定する「クラック検出範囲の状態」としては、例えば、「燃料の噴射が停止された状態」、「アクセル開度が急激に小さくなった状態」、「触媒の温度が急激に低下した状態」などが挙げられる。上述の何れの状態が生じた場合でも触媒にクラックが生じやすくなる。なお、検知開始判定部は、上述の各々の状態のうち一つのみを判定してもよいし、複数の状態を複合して判定を行ってもよい。
【0038】
図1に示すように、排気通路210に設けられた触媒1に、クラック発生検知装置100が適用されている場合、上記「クラック検出範囲の状態」として「燃料Fの噴射が停止した状態」を採用することができる。燃料Fの噴射が停止すると、触媒1の温度が急激に低下しやすくなり、クラックが生じやすくなる。したがって、このような状態が生じたときに、クラックの検知を開始することで、効率の良い検知を行うことが可能となる。
また、図1に示す構成の場合、上記「クラック検出範囲の状態」として「アクセルの開度が急激に小さくなった状態」を設定することもできる。アクセル開度が急激に小さくなると、内燃機関200からの排ガスGの供給量が低下し、触媒1の温度が急激に低下しやすくなり、クラックが生じやすくなる。したがって、このような状態が生じたときに、クラックの検知を開始することで、効率の良い検知を行うことが可能となる。
また、図1に示す構成の装置が車両に搭載されている場合、上記「クラック検出範囲の状態」として、「車両の走行速度が急激に低下した状態」を設定できる。車両の走行速度が急激に低下すると、内燃機関200からの排ガスGの供給量が低下するため、触媒1の温度が急激に低下しやすくなり、クラックが生じやすくなる。したがって、このような状態が生じたときに、クラックの検知を開始することによって、効率の良い検知を行うことが可能となる。
また、触媒1に温度センサを取り付けているならば、上記「クラック検出範囲の状態」として「触媒の温度が急激に低下した状態」を設定できる。この場合、温度センサで測定した触媒の温度が急激に低下したときに、クラックの検知を開始することによって、効率の良い検知を行うことが可能となる。
【0039】
<クラック発生検知装置の制御>
次に、図2に示す構成のクラック発生検知装置100の検知部30がクラック検知を行うときの制御の一例について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。図6に示すように、検知部30は、「クラック検出範囲の判定(S10)」、「AE信号の検出開始(S20)」、「差分信号の計算(S30)」、「差分信号の判定(S40)」、「クラック発生の検知(S50)」のステップを経て触媒1で発生したクラックを検知する。
【0040】
A.クラック検出範囲の判定(S10)
ここでは、先ず、検知開始判定部36が、「クラック検出範囲の状態」が生じているか否かを判定する(S10)。これによって、触媒1にクラックが生じやすくなっている状態においてのみ検知を行うことができる。このときの判定結果がNOであれば、ステップS10に戻り、「クラック検出範囲の状態」が生じるまで監視を続ける。一方、判定結果がYESであった場合、ステップS20に進む。
なお、このステップS10を設けると、無駄な検知を省略することができ、効率の良い検知を行うことが可能となる。しかし、ステップS10を省略した場合でも触媒1に発生したクラックを好適に検知することができるため省略してもよい。
【0041】
B.AE信号の検出開始(S20)
ステップS20に進むと、検知開始判定部36が比較部32に測定開始信号を送信する。測定開始信号を受信した比較部32は、メインAE信号検出部10から入力されたメインAE信号と、サブAE信号検出部20から入力されたサブAE信号の検出を開始する。このとき、比較部32には検出時間が予め定められており、当該検出時間が継続している間は信号を検出し続ける。検出時間が終了すると、比較部32は、ステップS30に進み、差分信号の計算を開始する。
【0042】
C.差分信号の計算(S30)
ステップS30では、検知部30の比較部32が、メインAE信号とサブAE信号の差分信号を計算する。具体的には、図5に示すように、比較部32が、メインAE信号MとサブAE信号Sとを比較することにより、触媒1において弾性波が生じたことが検知され、触媒において生じた弾性波の信号(差分信号)Tが得られる。また、この比較により差分信号に基づく特性値が得られる。この差分信号に基づく特性値は、判定部34に送信され、判定部34が差分信号の判定(S40)を開始する。
【0043】
D.差分信号の判定(S40)
ステップS40では、判定部34が、比較部32における比較により得られた差分信号の特性値についての判定を行う(S40)。具体的には、判定部34は、予め定められた基準値と上記比較により得られた特性値とを対比し、該特性値が基準値を上回っているか否かを判定する。ステップS40における判定の結果がNOであれば、処理はステップS10に戻り、再びステップS10以降の処理を繰り返す。一方、判定結果がYESであれば、処理はステップS50に進む。
【0044】
E.クラック発生の検知(S50)
ステップS50に処理が進むと、検知部30は、触媒にクラックが発生したと判定し、クラック検知信号を作成する。このクラック検知信号は、外部伝達手段250に送信される。外部伝達手段250は、クラック検知信号に基づいて触媒1でクラックが発生した旨を通知する。
【0045】
ここで開示されるクラック発生検知装置100では、メインAE信号検出部10において触媒由来のAE波の信号と、周辺部材由来のAE波の信号とを含むメインAE信号が検出され、サブAE信号検出部20において周辺部材由来のAE波の信号を含むサブAE信号が検出される。検知部30は、上記メインAE信号と上記サブAE信号とを比較することにより、触媒において弾性波が生じたことを検知するとともに、該比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する。すなわち、メインAE信号とサブAE信号を比較することによって、触媒において生じた弾性波(AE波)を反映した差分信号を求め、この差分信号の特性値に基づいて触媒にクラックが生じているか否かの判定を行うことができるため、周辺部材由来のAE波に起因する誤測定を防止し、より正確な触媒のクラック検知を行うことができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態に係るクラック発生検知装置について説明した。次に、本発明に係る他の実施形態について説明する。
【0047】
例えば、検知部は、上記「メインAE信号とサブAE信号との比較」として、所定時間内におけるメインAE信号のヒット数Nと、所定時間内におけるサブAE信号のヒット数Nとを比較してもよい。検知部は、当該ヒット数Nの比較により、触媒において弾性波が生じたことを検知することができる。この場合、メイン・サブのAE信号のヒット数Nの差を「比較により得られた特性値」として採用し、当該ヒット数Nの差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定することができる。
【0048】
上記「ヒット数N」とは、図4に示すような波形信号であるAE信号を1ヒットとカウントし、所定時間内に当該ヒットが入力された数(入力信号数)を示す特性値である。このヒット数Nを算出する場合、AE信号の強度Sに対する閾値Thを予め定めておき、当該閾値Thを超えた強度Sを有する信号が所定時間内に記録された数をカウントすると好ましい。一般的に、AE信号のヒット数Nは、触媒にクラックが発生することにより増加する傾向があるため、測定されたヒット数Nと所定の基準値とを比較することにより、触媒にクラックが生じているか否かを判定できる。なお、ヒット数Nを測定する際に強度Sに対して定める閾値Thは、測定状況(ノイズ等)を考慮して適宜変更することができる。例えば、20db〜50db(好ましくは30db〜40db)の範囲内にある値に設定するとよい。この実施形態において、上記ヒット数Nを測定する際の単位時間は、5秒〜120秒(好ましくは10秒〜60秒)の範囲内の値に設定するとよい。また、上記強度Sに対する閾値Thを40dbに設定した場合、「メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数との差」に対する基準値は、0回/秒(上記所定時間内に少なくとも1回)〜30回/秒(好ましくは、4回/秒〜10回/秒)の範囲内の値に設定するとよい。
【0049】
図2に示す構成のクラック発生検知装置100において、メインAE信号とサブAE信号のヒット数Nを比較することによりクラックを検知する制御について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。この場合、検知部30は、図7に示すように、「クラック検出範囲の判定(S10)」、「AE信号の検出開始(S20)」、「ヒット数の計算(S22)」「ヒット数の差分の計算(S32)」、「ヒット数の差分の判定(S42)」、「クラック発生の検知(S50)」のステップを経て触媒1で発生したクラックを検知する。
【0050】
A−1.クラック検出範囲の判定(S10)
ここでは、上述した実施形態と同様に、検知開始判定部36が、「クラック検出範囲の状態」が生じているか否かを判定する(S10)。このときの判定結果がNOであれば、ステップS10に戻り、判定結果がYESであった場合、ステップS20に進む。なお、この実施形態においても、ステップS10を省略することができる。
【0051】
B−1−1.AE信号の検出開始(S20)
このステップS20においても、上述の実施形態と同様の処理を採用できる。具体的には、ステップS20では、検知開始判定部36が比較部32に測定開始信号を送信し、測定開始信号を受信した比較部32が、メインAE信号とサブAE信号の検出を開始する。ここで、比較部32は、検出したメイン・サブのAE信号に基づいてヒット数Nを計算する(S22)。
【0052】
B−1−2.ヒット数の計算(S22)
ステップS22では、検知部30の比較部32が、メインAE信号に基づいてメインAE信号のヒット数Nを計算し、サブAE信号に基づいてサブAE信号のヒット数Nを計算する。ここで、比較部32には、メイン・サブのAE信号に対して同じ値の閾値Thが予め定められている。そして、所定時間内に当該閾値Thを超えた信号(ヒット)の数をカウントすることによって、所定時間内におけるメインAE信号のヒット数Nと、所定時間内におけるサブAE信号のヒット数Nを算出する。次に、比較部32は、算出されたメインAE信号のヒット数およびサブAE信号のヒット数の差分を計算する(S32)。
【0053】
C−1.ヒット数の差分の計算(S32)
ステップS32では、比較部32が、メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数とを比較することにより、触媒1で生じた弾性波の信号(差分信号)が得られる。また、この比較により、差分信号に基づく特性値として「メインAE信号のヒット数と該サブAE信号のヒット数との差」が得られる。具体的には、比較部32は、上記工程(S32)で算出されたメインAE信号のヒット数と、サブAE信号のヒット数との差を算出する。このように、触媒1由来のAE信号および周辺部材由来のAE信号が含まれるメインAE信号のヒット数と、周辺部材由来のAE信号が含まれるサブAE信号のヒット数との差を求めると、比較により得られた差分信号のヒット数が得られる。比較部32により得られたヒット数の差(差分信号Tのヒット数)は、検知部30の判定部34に送信され、判定部34がステップS42の判定を開始する。
【0054】
D−1.ヒット数の差分に基づく判定(S42)
ステップS42では、判定部34が、比較部32で得られたメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数の差分(差分信号のヒット数)が、所定の基準値を上回っているか否かの判定を行う(S42)。具体的には、判定部34は、上記ヒット数の差が所定の基準値を上回っているか否かを判定する。ステップS42における判定の結果がNOであれば、処理はステップS10に戻り、再びステップS10以降の処理を繰り返す。一方、判定結果がYESであれば、処理はステップS50に進む。
【0055】
E−1.クラック発生の検知(S50)
ステップS50に処理が進むと、検知部30は、触媒にクラックが発生したと判定し、クラック検知信号を作成し、外部伝達手段250に触媒1でクラックが発生した旨を通知させる。
【0056】
上記構成のクラック発生検知装置では、「比較により得られた特性値」として、メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数との差を採用している。このメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数との差は、触媒において生じた弾性波(AE波)の信号のヒット数を反映している。AE信号のヒット数は、触媒にクラックが発生することにより増加する傾向があるため、かかる特性値に基づいてクラック検知の判定を行うことによって、より正確なクラック検知を行うことができる。
【0057】
さらに、検知部は、上記「メインAE信号とサブAE信号との比較」として、メインAE信号のエネルギー値Eと、サブAE信号エネルギー値Eとを比較してもよい。検知部は、当該エネルギー値Eの比較により、触媒において弾性波が生じたことを検知することができる。この場合、メイン・サブのAE信号のエネルギー値の差を「比較により得られた特性値」として採用し、当該エネルギー値Eの差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定することができる。
【0058】
上記「エネルギー値E」とは、図4に示すような波形信号であるAE信号において、所定時間内に得られたAE信号の時系列メインAE波形の形状から算出される値であって、該時系列メインAE波形における所定の閾値を超える振幅部分の積分値(図4中の斜線部分)として求められる。一般的に、AE信号の信号エネルギー値Eは、触媒に生じるクラックの面積との間に相関関係を有しているため、AE信号の信号エネルギー値Eと、所定の基準値とを比較することによって、触媒1にクラックが生じているか否かを判定できる。なお、エネルギー値Eを測定する際に強度Sに対して定める閾値Thは、測定状況(ノイズ等)を考慮して適宜変更することができる。例えば、20db〜50db(好ましくは30db〜40db)の範囲内にある値に設定するとよい。また、上記エネルギー値Eを測定する際の単位時間は、5秒〜120秒(好ましくは10秒〜60秒)の範囲内の値に設定するとよい。この実施形態において、φ100×L100の触媒基材を触媒1として用いた場合、「メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値との差」に対する基準値は、4×10〜4×10(好ましくは、1×10〜4×10)の範囲内の値に設定するとよい。
【0059】
図2に示す構成のクラック発生検知装置100においてメインAE信号とサブAE信号の間でエネルギー値Eを比較することによりクラックを検知する制御について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。この場合、検知部30は、図8に示すように、「クラック検出範囲の判定(S10)」、「AE信号の検出開始(S20)」、「エネルギー値の計算(S24)」「エネルギー値の差分の計算(S34)」、「エネルギー値の差分に基づく判定(S44)」、「クラック発生の検知(S50)」のステップを経て触媒1で発生したクラックを検知する。
【0060】
A−2.クラック検出範囲の判定(S10)
ここでは、上述した実施形態と同様に、検知開始判定部36が、「クラック検出範囲の状態」が生じているか否かを判定する(S10)。このときの判定結果がNOであれば、ステップS10に戻り、判定結果がYESであった場合、ステップS20に進む。なお、この実施形態においても、ステップS10を省略することができる。
【0061】
B−2−1.AE信号の検出開始(S20)
このステップS20においても、上述の実施形態と同様の処理を採用できる。具体的には、ステップS20では、検知開始判定部36が比較部32に測定開始信号を送信し、測定開始信号を受信した比較部32が、メインAE信号とサブAE信号の検出を開始する。ここで、比較部32は、検出したメイン・サブのAE信号のエネルギー値を計算する(S24)。
【0062】
B−2−2.エネルギー値の計算(S24)
ステップS24では、検知部30の比較部32が、メインAE信号に基づいてメインAE信号エネルギー値を計算し、サブAE信号に基づいてサブAE信号エネルギー値を計算する。ここでは、比較部32には、メイン・サブのAE信号に対して同じ値の閾値Thが予め定められている。そして、所定時間内において、予め定められた閾値Thを超えた信号の絶対値を所定の持続時間にわたって積分することによって、メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値を算出する。次に、比較部32は、メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値の差分を計算する(S34)。
【0063】
C−2.エネルギー値の差分の計算(S34)
ステップS34では、比較部32が、メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値とを比較することにより、触媒1で生じた弾性波の信号(差分信号)が得られる。また、この比較により、差分信号に基づく特性値として「メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値との差」が得られる。具体的には、比較部32は、上記工程(S34)で算出されたメインAE信号エネルギー値と、サブAE信号エネルギー値との差を求める。このように、触媒1由来のAE信号および周辺部材由来のAE信号が含まれるメインAE信号のエネルギー値と、主として周辺部材由来のAE信号で構成されるサブAE信号のエネルギー値との差を求めると、比較により得られる差分信号のエネルギー値が得られる。比較部32において得られた差分信号のエネルギー値は、検知部30の判定部34に送信され、判定部34がステップS44の判定を開始する。
【0064】
D−1.エネルギー値の差分に基づく判定(S44)
ステップS44では、判定部34が、比較部32において得られたメインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギー値の差(差分信号のエネルギー値)が、所定の基準値を上回っているか否かの判定を行う。ステップS44における判定の結果がNOであれば、処理はステップS10に戻り、再びステップS10以降の処理を繰り返す。一方、判定結果がYESであれば、処理はステップS50に進む。
【0065】
E−1.クラック発生の検知(S50)
ステップS50に処理が進むと、検知部30は、触媒にクラックが発生したと判定し、クラック検知信号を作成し、外部伝達手段250に触媒1でクラックが発生した旨を通知させる。
【0066】
上記構成のクラック発生検知装置によれば、「比較により得られた特性値」として、メインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギーとの差を採用している。このメインAE信号エネルギー値とサブAE信号エネルギーとの差は、触媒において生じた弾性波(AE波)の信号のエネルギー値を反映している。AE信号のエネルギー値は、触媒に生じるクラックの面積との間に相関関係を有しているため、かかる特性値に基づいてクラック検知の判定を行うことによって、より正確なクラック検知を行うことができる。
【0067】
さらに、検知部は、上記「メインAE信号とサブAE信号との比較」として、メインAE信号強度の発生回数と、サブAE信号強度の発生回数とを比較してもよい。検知部は、当該信号強度の発生回数の比較により、触媒において弾性波が生じたことを検知することができる。この場合、メイン・サブのAE信号強度の発生回数の差を「比較により得られた特性値」として採用し、当該信号強度の発生回数の差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定することができる。
【0068】
上記「AE信号強度の発生回数」とは、図4に示すような波形信号であるAE信号において、所定時間内に得られたAE信号の時系列メインAE波形の形状から算出されるAE信号強度であって所定の閾値を超える振幅を有することで選択された値であり、AEカウントと称されることもある。一般的に、AE信号強度の発生回数Cは、触媒にクラックが発生することにより増加する傾向があるため、AE信号強度の発生回数と所定の基準値とを比較することにより、触媒にクラックが生じているか否かを判定できる。
【0069】
図2に示す構成のクラック発生検知装置100において、メインAE信号とサブAE信号との間で、強度の発生回数を比較することによりクラックを検知する制御について説明する。
【0070】
例えば、メインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20において、図5に示すようなメインAE信号MとサブAE信号Sが検出された場合、検出部30の比較部32は、所定時間おけるメインAE信号MとサブAE信号Sの強度の発生回数を測定する。ここでは、比較部32には、メイン・サブのAE信号に対して同じ値の閾値Thが予め定められている。そして所定時間t1内において、予め定められた閾値Thを超えた強度Sを有する振幅の数をカウントすることによって、メインAE信号強度の発生回数と、サブAE信号強度の発生回数を算出する。
【0071】
そして、メインAE信号Mの強度の発生回数と、サブAE信号Sの強度の発生回数を比較することにより、触媒で生じた弾性波の信号(差分信号)を得る。また、この比較により、差分信号に基づく特性値として「メインAE信号の強度の発生回数と該サブAE信号の強度の発生回数との差」が得られる。具体的には、比較部32は、算出したメインAE信号強度の発生回数と、サブAE信号強度の発生回数との差を求める。このように、触媒1由来のAE信号および周辺部材由来のAE信号が含まれるメインAE信号強度の発生回数と、主として周辺部材由来のAE信号で構成されるサブAE信号強度の発生回数との差を求めると、比較により得られる差分信号の強度の発生回数が得られる。比較部32において得られた差分信号強度の発生回数は、検知部30の判定部34に送信される。
【0072】
次に、検知部30の判定部34が、比較部32において得られたメインAE信号強度の発生回数と、サブAE信号強度の発生回数の差(差分信号強度の発生回数)が、所定の基準値を上回っているか否かの判定を行う。メインAE信号強度の発生回数とサブAE信号強度の発生回数の差が、上記基準値を下回った場合には、AE信号の検出を再開する。一方、上記基準値を上回った場合、検知部30は、触媒にクラックが発生したと判定し、クラック検知信号を作成し、外部伝達手段250に触媒1でクラックが発生した旨を通知させる。
【0073】
<実施例>
次に、本発明に関する実施例を説明する。なお、以下で説明する実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。
【0074】
この実施例では、内燃機関200の排気通路210に配置された触媒1(図1参照)に、図2に示す構成のクラック発生検知装置を適用している。そして、触媒1を所定の最高温度まで加熱した後に急冷した際に、クラック発生検知装置においてメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数とを検出し、該メイン・サブのAEセンサのヒット数を比較した。
【0075】
[AE波検出部]
上述のように、この実施例では、クラック発生検知装置として図2に示す構成のクラック発生検知装置100を用いている。メインAE信号検出部10では、ガイドシャフト14が触媒1に接触しており、触媒1由来のAE波がAEセンサ12に伝えられる。また、ガイドシャフト14は、ホルダ17を介してケース3に間接的に接触しており、ケース3の振動に由来するAE波もAEセンサ12に伝えられる。
一方、サブAE信号検出部20では、ガイドシャフト24が触媒1に接触していない。また、サブAE信号検出部20のガイドシャフト24は、ホルダ27を介してケース3に間接的に接触しており、サブAE信号検出部20のAEセンサ22には触媒1の周辺部材(ケース3やケース3に接触する他の部材)の振動に由来するAE波が伝えられる。
また、メインAE信号検出部10とサブAE信号検出部20との間隔は、30mm程度である。
【0076】
[加熱処理]
ここでは、内燃機関200の排気通路210に配置された触媒1に対して、排ガスGと燃料Fを供給することによって、触媒1の入口面が所定の目標温度に昇温するまで加熱した。そして、触媒1が目標温度まで昇温した後に、燃料Fの供給を停止させることによって、上記入口面の温度が250℃になるまで触媒1を急冷した。本実施例では、この加熱→急冷のサイクルを、目標温度を変えて9回繰り返した。
本実施例の加熱処理における触媒1の温度スケジュールは以下のとおりである。
目標温度 急冷後の温度
1回目: 900℃ → 250℃
2回目: 950℃ → 250℃
3回目:1000℃ → 250℃
4回目:1050℃ → 250℃
5回目:1100℃ → 250℃
6回目:1050℃ → 250℃
7回目:1000℃ → 250℃
8回目: 950℃ → 250℃
9回目: 900℃ → 250℃
【0077】
[ヒット数]
上記各々の温度スケジュールの急冷時に、メイン・サブのAE信号検出部10,20においてAE信号を検出した。そして、メイン・サブのAE信号の「ヒット数」を算出した。ヒット数を算出するにあたっては、メイン・サブのAE信号の強度Sに対する閾値を40dbに定め、該閾値を超えたAE信号を1ヒットとした。そして、各々の温度スケジュールにおいて触媒1の入口面の温度が250℃になるまでの時間に計測されたヒットの数をカウントし、各々の温度スケジュールにおけるメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数を算出した。このときの算出結果を表1および図11に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1及び図9に示すように、メインAE信号のヒット数は、目標温度を1050℃以上に設定した4〜6回目のサイクルにおいて増加した。このことから、高温から急冷されることによって触媒1に生じたクラックに由来するAE波がメインAE信号に含まれていると考えられる。
一方、目標温度を低く設定した1〜3,7〜9回目のサイクルにおいても、メインAE信号のヒット数が確認された。また、このサイクルでは、メインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数とが近似していた。このため、メインAE信号とサブAE信号の両方に、周辺部材の振動に由来したAE信号が含まれていると解される。
以上のことから、メインAE信号検出部10では触媒由来のAE波の信号と、周辺部材由来のAE波の信号とを含むメインAE信号が検出されており、サブAE信号検出部20では周辺部材由来のAE波の信号を含むサブAE信号が検出されていることが分かった。そして、このメインAE信号のヒット数とサブAE信号のヒット数とを比較し、当該比較により得られたメインAE信号とサブAE信号のヒット数の差を求めれば、触媒1に生じたクラックを真に反映したAE信号のヒット数を算出できることが分かった。
【符号の説明】
【0080】
触媒 1
断熱材 2
ケース 3
メインAE信号検出部 10
メインAE信号検出部のAEセンサ 12
メインAE信号検出部のガイドシャフト 14
メインAE信号検出部の付勢部材 16
メインAE信号検出部のホルダ 17
メインAE信号検出部の支持部 18
サブAE信号検出部 20
サブAE信号検出部のAEセンサ 22
サブAE信号検出部のガイドシャフト 24
サブAE信号検出部の付勢部材 26
サブAE信号検出部のホルダ 27
サブAE信号検出部の支持部 28
検知部 30
比較部 32
判定部 34
検知開始判定部 36
クラック発生検知装置 100
内燃機関 200
排気通路 210
燃料噴射弁 230
ECU 240
外部伝達手段 250

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを浄化する触媒にクラックが発生したことを検知するクラック発生検知装置であって、
前記触媒に接触する接触部材と、該接触部材を介して前記触媒からのAE信号を検出するAEセンサとを備えるメインAE信号検出部と、
前記触媒には非接触であって該触媒の周囲に配置されている周辺部材に接触する接触部材と、該接触部材を介して前記周辺部材からのAE信号を検出するAEセンサとを備えるサブAE信号検出部と、
前記メインAE信号検出部および前記サブAE信号検出部とそれぞれ電気的に接続される検知部と、
を備えており、
ここで、前記検知部は、前記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号と、前記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号とを比較することにより、前記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた特性値が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する、クラック発生検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、
所定時間内において前記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号のヒット数と、該所定時間内において前記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号のヒット数とを比較することにより、前記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号のヒット数と、該サブAE信号のヒット数との差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する、請求項1に記載のクラック発生検知装置。
【請求項3】
前記検知部は、
所定時間内において前記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号に基づいて得られる該所定時間内における時系列メインAE波形の形状から算出されるAE信号強度であって所定の閾値を超える振幅を有することで選択されるメインAE信号強度の発生回数と、該所定時間内において前記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号に基づいて得られる該所定時間内における時系列サブAE波形の形状から算出されるAE信号強度であって所定の閾値を超える振幅を有することで選択されるサブAE信号強度の発生回数とを比較することにより、前記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号強度の発生回数と、該サブAE信号強度の発生回数の差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する、請求項1に記載のクラック発生検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、
所定時間内において前記メインAE信号検出部から入力されたメインAE信号に基づいて得られる該所定時間内における時系列メインAE波形の形状から算出されるAE信号エネルギー値であって該時系列メインAE波形における所定の閾値を超える振幅部分の積分値として求められるメインAE信号エネルギー値と、該所定時間内において前記サブAE信号検出部から入力されたサブAE信号に基づいて得られる該所定時間内における時系列サブAE波形の形状から算出されるAE信号エネルギー値であって該時系列サブAE波形における所定の閾値を超える振幅部分の積分値として求められるサブAE信号エネルギー値とを比較することにより、前記触媒において弾性波が生じたことを検知し、且つ、該比較により得られた該メインAE信号エネルギー値と、該サブAE信号エネルギー値との差が所定の基準値を上回っている場合に触媒にクラックが発生したと判定する、請求項1に記載のクラック発生検知装置。
【請求項5】
前記メインAE信号検出部と前記サブAE信号検出部とが隣接して配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクラック発生検知装置。
【請求項6】
前記周辺部材は前記触媒を収容するケースである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のクラック発生検知装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−29389(P2013−29389A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164849(P2011−164849)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】